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▶ テーイー・アウトモティーフェ(ハイデルベルク)ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

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  • 特許-導管のコーティング方法及び導管 図1
  • 特許-導管のコーティング方法及び導管 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】導管のコーティング方法及び導管
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/22 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
C23C14/22 Z
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021112132
(22)【出願日】2021-07-06
(65)【公開番号】P2022019596
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】20185920.4
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504117534
【氏名又は名称】テーイー・アウトモティーフェ(ハイデルベルク)ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー チャヒツチャル
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シン
【審査官】富永 泰規
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-343767(JP,A)
【文献】特表2008-540771(JP,A)
【文献】特開2020-105619(JP,A)
【文献】特開平11-022867(JP,A)
【文献】特開2004-232010(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0041063(US,A1)
【文献】特表2004-510571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
C23C 16/00-16/56
C23C 24/00-30/00
F16L 9/00-11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導管(1)をコーティングする方法、特に自動車導管、好ましくは燃料用又は油圧油用又はその両方用の導管をコーティングする方法であって、
金属製内管(2)を使用し、
前記金属製内管(2)の外面に、少なくとも1つの金属層(3)が設けられ、
その直後に、前記金属層(3)に少なくとも1つの接着層(5)が、物理蒸着工程又は化学蒸着工程又はその両方によって実行されるプラズマコーティングにより塗布され、
その直後に、前記導管(1)に少なくとも1つの外層(7)が設けられ、
前記金属層(3)は、アルミニウム、亜鉛、アルミニウム合金、亜鉛合金からなる群のうち少なくとも1つの金属を含み、
前記金属層(3)は、前記内管(2)に50μm~200μmの層厚で塗布され、
前記接着層(5)は、均一な組成、かつ、一定な層厚で塗布され、前記層厚は、10nm~700nmの範囲であり、
前記外層(7)が少なくとも1つのポリアミド又は少なくとも1つのポリオレフィンからなる
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記金属層(3)は、溶融めっき塗工により、前記内管(2)に塗布される
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法であって、
前記プラズマコーティングは、接着剤を用いて常圧又は大気圧にて実施される
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法であって、
プラズマコーティング装置(6)は、プラズマコーティングに使用され、
前記プラズマコーティング装置(6)に、前記接着層(5)の材料が粉末状で供給される
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法であって、
前記接着層(5)の材料は、プラズマコーティング装置(6)で気相に変換され、
前記材料は、その後、固体状で前記導管(1)上に蒸着される
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法であって、
前記金属層(3)と前記接着層(5)との間に、クロムフリー中間層(4)が点在することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項に記載の方法であって、
クロムフリー中間層(4)は、少なくとも1つのリン酸塩処理剤を有するか、少なくとも1つのリン酸塩処理剤からなるか、又は、実質的に少なくとも1つのリン酸塩処理剤からなる
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6又は7のいずれか1項に記載の方法であって、
クロムフリー中間層(4)は、0.2~1μmの層厚で塗布される
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法であって、
前記外層(7)は、0.2~3mmの層厚で塗布される
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
燃料用又は油圧油用又はその両方用の自動車導管であって
記導管(1)は、金属製内管(2)を有し、
前記金属製内管(2)上に、金属層(3)が設けられており、
前記金属層(3)はアルミニウム、亜鉛、アルミニウム合金、亜鉛合金からなる群のうち少なくとも1つの金属を含み、
前記金属層は、50μm~200μmの層厚を有し、
前記金属層(3)上に、接着層(5)が存在しており、
前記接着層(5)は、物理気相蒸着又は化学気相蒸着又はその両方の形態のプラズマコーティングであり、
前記接着層(5)は、均一な組成と一定の層厚を有し、前記層厚は、10nm~700nmの範囲であり、
前記接着層(5)上に、外層(7)が存在しており、前記外層(7)が少なくとも1つのポリアミド又は少なくとも1つのポリオレフィンからなる
ことを特徴とする導管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導管をコーティングする方法、特に自動車導管、好ましくは燃料用又は油圧油用又はその両方用の導管をコーティングする方法に関する。この方法では、金属製内管を使用し、金属製内管の外面に少なくとも1つの金属層が設けられ、その直後にこの金属層に少なくとも1つの接着層が塗布され、その直後に導管に少なくとも1つの外層が設けられる。本発明は、更に、これに対応する導管に関し、好ましくは、燃料用又は油圧油用又はその両方用の導管に関する。
【背景技術】
【0002】
上に記載した種類の方法は、実用上、様々な実施形態で知られている。ここでは、接着層の塗布は、概して湿式化学法の骨子の範囲で行われる。また、ここでは、接着層は、溶剤中に溶解したものが使用される。この点に関して、公知の手段は、環境面及び健康面に対する批判を受けている。公知の方法は、コーティング対象の表面のために、複雑な前処理手段及び洗浄手段を必要とする。湿式化学法の骨子の範囲では、接着剤塗布のために、比較的込み入ったパラメータ設定に注力しなければならず、具体的には、特に、温度、pH値、成分の混合比が挙げられる。全体として、公知の手段は比較的複雑であり、従って高価でもある。この点について改善が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の根底にある技術的な課題は、冒頭に記載した種類の方法であって、上で言及した欠点を効果的に回避可能な方法を示すことである。更に、本発明の根底にある技術的な課題は、対応する導管を示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
技術的な課題を解決するために、本発明は、導管をコーティングする方法、特に自動車導管、好ましくは燃料用又は油圧油用又はその両方用の導管をコーティングする方法を示す。本方法は、金属製内管を使用し、金属製内管の外面に少なくとも1つの金属層が設けられ、その直後に金属層に少なくとも1つの接着層が塗布され、その直後に導管に少なくとも1つの外層が設けられるものであって、少なくとも接着層はプラズマコーティングにより塗布される。
【0005】
一方で、本発明は、接着層をプラズマコーティングにより塗布することを、比較的容易に且つ手間をかけずに行うことができるという知見に基づいている。先行技術から又は実用において公知である複雑なパラメータ設定は、排除される。本発明における方法は、環境面及び健康面に関して言えば、以前から公知である方法に勝る利点も特徴としている。接着層は非常に均一に塗布可能であり、欠陥があれば工程中にある程度は予め除外される。接着層は、一定の薄い層厚で、再生可能に塗布することができる。更に、本発明における方法、又は、本発明におけるコーティングは、比較的低コストであることも特徴としている。
【0006】
本発明によれば、金属製内管の外面に、少なくとも1つの金属層が塗布される。本発明の特に推奨される実施形態の一つにおいては、金属層は、「アルミニウム、亜鉛、アルミニウム合金、亜鉛合金」からなる群のうち少なくとも1つの金属を含む。ここで、亜鉛合金として、特にいわゆるガルファン(商標)が使用され、この事例には亜鉛-アルミニウム合金が含まれる。この亜鉛-アルミニウム合金は、大部分又は90%超が亜鉛からなり、その他、アルミニウムと、少量の希土類金属又は少量の貴金属又はその両方とからなる。この合金は、約3~7%w/w、好ましくは4~6%w/w、特に5%w/wのアルミニウムを含有する。この合金は、好ましくは92%w/w超の亜鉛を含有する。
【0007】
本発明における方法の推奨される実施形態においては、金属層は、溶融めっき塗工により、金属製内管に塗布される。ここで、金属製内管は、外側から金属で湿潤されるよう、金属層の融解金属を通過させて案内することができる。金属層は、好ましくは内管に50~200μmの層厚で塗布される。
【0008】
本発明によれば、接着層は、金属層を用いてコーティングされた金属製内管に、プラズマコーティングにより塗布される。接着層をこのように塗布することは、10nm~10μm、好ましくは10nm~1μm、特に10~700nmの層厚で最も良好に行われる。プラズマコーティングは接着剤を用いて常圧又は大気圧にて実施することが有益であると分かった。プラズマコーティングは、物理蒸着工程又は化学蒸着工程又はその両方によって実施されることは本発明の範囲内である。
【0009】
プラズマコーティング装置は、プラズマコーティングに使用するのに最良であり、プラズマコーティング装置に、接着層の材料が粉末状で供給される。接着層の材料はプラズマコーティング装置内で気相に変換され、この材料は、その後、固体状で導管上に蒸着されることは本発明の範囲内である。
【0010】
本発明によれば、接着層に外層が塗布される又は接着層より上に外層が塗布される。本発明の好適な実施形態において、この外層は、少なくとも1つのポリマーからなる又は実質的に少なくとも1つのポリマーからなる。ポリマーは、好ましくは、少なくとも1つのポリアミド、又は、少なくとも1つのポリオレフィン、又はその両方を含む。ある実施形態においては、外層は、ポリアミドからなり又は実質的にポリアミドからなる。本発明の別の実施形態においては、外層は、ポリオレフィンからなり又は実質的にポリオレフィンからなる。
【0011】
本発明の、推奨される実施形態は、金属層と接着層との間にクロムフリー中間層が点在することを特徴とする。クロムフリー中間層は、少なくとも1つのリン酸塩処理剤を有し、且つ、別の実施形態では、クロムフリー中間層は、少なくとも1つのリン酸塩処理剤からなる又は実質的に少なくとも1つのリン酸塩処理剤からなることが有益であると分かった。本発明のある実施形態においては、クロムフリー中間層は封止層として設計されており、この層は、好ましくは少なくとも1つのポリマーを有する。ポリマーは、特にポリビニルポリマーを含む。好適な実施形態の一つにおいては、クロムフリー中間層又は封止層は、0.2~1μmの層厚で塗布されることを特徴としている。
【0012】
このクロムフリー中間層に、好ましくは少なくとも1つのポリマーからなる外層が塗布されることは本発明の範囲内である。大いに推奨される本発明の実施形態においては、外層は0.2~3mm、特に1~3mmの層厚で塗布される。
【0013】
技術的な課題を解決するために、本発明は更に、導管、特に自動車導管、好ましくは燃料用又は油圧油用又はその両方用の導管を教示する。この導管は、金属製内管を有し、金属製内管上に金属層が設けられており、金属層上に接着層が存在しており、導管は外層を付加的に有し、接着層はプラズマコーティングにより塗布される。
【0014】
ある実施形態においては、金属製内管は、多重壁管、特に二重壁管を含む。ここで、多重壁管又は二重壁管を生成するために、金属テープ、特にスチールテープが管内へ巻き上げられることは本発明の範囲内である。
【0015】
本発明は、金属層と外層との間に接着層を塗布することが非常に特別な利点をもたらすという知見に基づいている。また、このプラズマコーティングは、非常に容易に且つ手間をかけずに実施可能である。本発明では、湿式化学法における実用において公知の複雑な手段を、完全に排除することができる。この点について、公知の手段に関連する環境問題及び健康問題も回避できる。本発明では、複雑なパラメータ設定は、完全に排除される。プラズマコーティングを用いて塗布される接着層は、再生可能に均一な態様で且つ一定の層厚で塗布することができる。これらの手段は、比較的経済的であり、それにもかかわらず効果的且つ正確に実施することができる。
【0016】
以下で、図面を基に本発明をより詳細に記載するが、図面は例示的実施形態を示すものにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明における方法に基づいてコーティングされた導管の斜視図である。
図2図1の切欠Aの拡大図である。
図3】本発明における方法に適したプラズマコーティング装置の好適な実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
これらの図は、本発明における方法に基づいてコーティングされた導管1を示す。例示的実施形態においては、自動車導管を対象とすることができることが好ましく、この自動車導管は、燃料用又は油圧油用又はその両方に使用されるものであることが好ましい。導管1は、金属製内管2を有し、例示的実施形態においては、スチール管として設計されていることが好ましい。この金属製内管2には、金属層3が設けられ、例示的実施形態においては、アルミニウム層として設計されていることが好ましい。アルミニウム層は、溶融めっき法で金属製内管2に塗布することができる。特に、アルミニウム層でなくガルファン製の金属層3を、金属製内管2に塗布することができる。
【0019】
好適な実施形態において及び例示的実施形態において、クロムフリー中間層4が、金属層3又はアルミニウム層に塗布され、ある実施形態においては、クロムフリー中間層はリン酸塩処理剤を有することができる。例示的実施形態において、金属層3の層厚は、50~150μmとすることができる。また、例示的実施形態において、クロムフリー中間層4の層厚は、0.2~1μmとすることができる。
【0020】
接着層5が、クロムフリー中間層4に塗布される。本発明によれば、この接着層5は、プラズマコーティングにより塗布されるものであり、具体的には、特に、図3に示すプラズマコーティング装置6を用いて塗布されることが好ましい。例示的実施形態においては、接着層5の層厚は、最も良好には2~8μmとすることができる。接着層5が導管1に塗布された後、外層7が塗布されることが好ましく、この外層7は、好ましくは及び例示的実施形態においては、ポリアミドからなる又は実質的にポリアミドからなる。例示的実施形態においては、外層7の層厚は、1~2mmとすることができる。
【0021】
図3は、プラズマコーティング装置6の好適な実施形態を示しており、このプラズマコーティング装置6を用いて、好ましくは、接着層5はプラズマコーティングにより導管1に塗布される。プラズマコーティング装置6の電極8及びガス供給部9が見られる。プラズマコーティング装置6は、チャネル10を有し、このチャネル10を通して、接着層5の材料を粉末状で供給することができる。その際、材料は、装置6を用いて気相に変換され、最終的に接着層5として固体状で導管1に塗布される。
図3では、プラズマコーティング装置6のプラズマジェット11も示されている。
図1
図2
図3