(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】移動端末試験装置とそのBand filter設定方法
(51)【国際特許分類】
H04W 24/06 20090101AFI20240430BHJP
H04W 88/02 20090101ALI20240430BHJP
H04M 1/24 20060101ALI20240430BHJP
H04B 17/17 20150101ALI20240430BHJP
H04B 17/29 20150101ALI20240430BHJP
【FI】
H04W24/06
H04W88/02 150
H04M1/24 B
H04B17/17
H04B17/29 200
(21)【出願番号】P 2021186409
(22)【出願日】2021-11-16
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒山 昌豊
(72)【発明者】
【氏名】森田 淳樹
(72)【発明者】
【氏名】島川 展明
(72)【発明者】
【氏名】狩野 大樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 大祐
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓海
【審査官】齋藤 浩兵
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-121085(JP,A)
【文献】国際公開第2014/021391(WO,A1)
【文献】特開2018-201067(JP,A)
【文献】特開2006-033007(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0002584(US,A1)
【文献】MediaTek Inc.,Report of [AT109bis-e][049][TEI16] Need for Gap (Mediatek)[online],3GPP TSG RAN WG2 #109bis-e R2-200xxxx,2020年04月30日,Internet<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_109bis-e/Docs/R2-2004159.zip>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 1/24
H04B 17/17
H04B 17/29
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5G NRの基地局を擬似して移動端末(10)を試験する移動端末試験装置(1)であって、
前記移動端末と接続する際に、通信可能な周波数帯域として設定されたバンドをBand filterとして設定して前記移動端末に送信
し、Band filterの設定モードとして手動設定モードが設定されていた場合には、前記移動端末と接続する際に、前記通信可能な周波数帯域として設定されたバンドからBand filterとして設定するバンドをユーザーに選択させる制御部(6)を備える移動端末試験装置。
【請求項2】
5G NRの基地局を擬似して移動端末(10)を試験する移動端末試験装置(1)のBand filter設定方法であって、
通信可能な周波数帯域を設定させるステップと、
前記移動端末と接続する際に、前記通信可能な周波数帯域として設定されたバンドをBand filterとして設定して前記移動端末に送信するステップと、
Band filterの設定モードとして手動設定モードが設定されていた場合には、前記移動端末と接続する際に、前記通信可能な周波数帯域として設定されたバンドからBand filterとして設定するバンドをユーザーに選択させるステップと、を備えるBand filter設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末の試験を行なう移動端末試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やデータ通信端末等の移動しながら通信を行なう移動端末を開発した場合、この開発した移動端末が正常に通信を行なえるか否かを試験する必要がある。このため、実際の基地局の機能を擬似する擬似基地局として動作する試験装置に試験対象の移動端末を接続し、試験装置と移動端末との間で通信を行ない、この通信の内容を確認する試験を行なっている。
【0003】
また、移動通信システムにおいては、5G(5th Generation)無線方式である5G NR(New Radio)のサービスが開始されている。
【0004】
5G NRでは、5G回線はU-Plane(User plane:ユーザーデータ信号)に特化し、C-Plane(Control Plane:通信の制御信号)はLTE(Long Term Evolution)回線を用いて送受信するNSA(Non-Standalone)と、LTEと連携せずに5G NR単独で動作するSA(Stand Alone)の仕様が規定されている。
【0005】
特許文献1には、NSAの試験を、LTEの基地局として動作する移動端末試験装置と、NRの基地局として動作する移動端末試験装置とを使って試験する移動端末試験システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
5G NRでは、LTEに比べ、対応する周波数帯域が増加しており、すべての周波数帯域を接続可能とすると、移動端末の処理が間に合わなくなることが予想されたため、基地局と移動端末が接続するとき、基地局が移動端末に対して接続可能な周波数帯域を知らせる「Band filter」を設定し、接続可能な周波数帯域を制限することができるようになっている。
【0008】
このように、Band filterをかけることで、移動端末が接続できる周波数帯域を制限し、不必要な周波数帯域での処理を削減して、移動端末の処理の高速化を図っている。
【0009】
しかしながら、移動端末試験装置において、Band filterの設定を、移動端末との接続のたびに設定するのでは、試験を効率的に進められないおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は、Band filterの設定を自動的に行なうことにより、効率良く試験を行なうことができる移動端末試験装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の移動端末試験装置は、5G NRの基地局を擬似して移動端末を試験する移動端末試験装置であって、前記移動端末と接続する際に、通信可能な周波数帯域として設定されたバンドをBand filterとして設定して前記移動端末に送信し、Band filterの設定モードとして手動設定モードが設定されていた場合には、前記移動端末と接続する際に、前記通信可能な周波数帯域として設定されたバンドからBand filterとして設定するバンドをユーザーに選択させる制御部を備えるものである。
【0012】
この構成により、移動端末と接続する際に、通信可能な周波数帯域として設定されたバンドがBand filterとして設定されて移動端末に送信され、Band filterの設定モードとして手動設定モードが設定されていた場合には、移動端末と接続する際に、通信可能な周波数帯域として設定されたバンドからBand filterとして設定するバンドがユーザーに選択される。このため、移動端末との接続のたびにBand filterの設定を行なう必要が無く、手動設定モードでは利用可能なバンドからユーザーの設定したいバンドをBand filterに設定させることができ、試験に柔軟に対応しつつ効率良く試験を行なうことができる。
【0017】
また、本発明のBand filter設定方法は、5G NRの基地局を擬似して移動端末を試験する移動端末試験装置のBand filter設定方法であって、通信可能な周波数帯域を設定させるステップと、前記移動端末と接続する際に、前記通信可能な周波数帯域として設定されたバンドをBand filterとして設定して前記移動端末に送信するステップと、Band filterの設定モードとして手動設定モードが設定されていた場合には、前記移動端末と接続する際に、前記通信可能な周波数帯域として設定されたバンドからBand filterとして設定するバンドをユーザーに選択させるステップと、を備えるものである。
【0018】
この構成により、移動端末と接続する際に、通信可能な周波数帯域として設定されたバンドがBand filterとして設定されて移動端末に送信され、Band filterの設定モードとして手動設定モードが設定されていた場合には、移動端末と接続する際に、通信可能な周波数帯域として設定されたバンドからBand filterとして設定するバンドがユーザーに選択される。このため、移動端末との接続のたびにBand filterの設定を行なう必要が無く、手動設定モードでは利用可能なバンドからユーザーの設定したいバンドをBand filterに設定させることができ、試験に柔軟に対応しつつ効率良く試験を行なうことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、Band filterの設定を自動的に行なうことにより、効率良く試験を行なうことができる移動端末試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る移動端末試験装置の要部のブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る移動端末試験装置のBand filter送信処理の手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る移動端末試験装置について詳細に説明する。
【0022】
図1において、本発明の一実施形態に係る移動端末試験装置1は、擬似基地局として同軸ケーブル等を介して有線で移動端末10とRF(無線周波数)信号を送受信するようになっている。なお、移動端末試験装置1は、アンテナを介して無線で移動端末10とRF信号を送受信するようにしてもよい。
【0023】
移動端末試験装置1は、擬似基地局部2と、シナリオ処理部3と、操作部4と、表示部5と、制御部6とを含んで構成されている。
【0024】
擬似基地局部2は、シナリオ処理部3の制御により、移動端末10との間でRF信号を送受信する。擬似基地局部2は、移動端末10との通信の状態などを制御部6に出力する。
【0025】
擬似基地局部2は、5G NRの規格に従って5G NRの通信を移動端末10との間で行なえるようになっている。
【0026】
シナリオ処理部3は、制御部6からの指示により、記憶されているシナリオを読み出して、そのシナリオに基づいて擬似基地局部2に、報知情報を送信させたり、移動端末10との間で通信シーケンスを実行させたりする。
【0027】
操作部4は、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力機器で構成され、操作入力されたシナリオの生成に必要な情報などを制御部6に出力する。表示部5は、液晶ディスプレイ等の画像表示機器で構成され、シナリオの生成に必要な情報を入力させる画像や試験中の状態を示す画像などを表示する。
【0028】
制御部6は、操作部4に入力された指示に従って、試験シナリオの作成画面を表示部5に表示させて試験シナリオの生成に必要な情報を入力させたり、試験シナリオの作成画面において操作部4に入力された情報に基づいて試験シナリオを生成したりする。また、制御部6は、操作部4に入力された指示に従って、シナリオ処理部3に指示を送信して、記憶装置に記憶された試験シナリオに基づいて試験を実行させたり、シナリオ処理部3から送信される各レイヤの状態や移動端末10との通信の状態などの情報に基づいて表示部5に試験中の状態などを表示させたりする。
【0029】
ここで、移動端末試験装置1は、移動端末10と通信を行なうための通信モジュールが設けられた図示しないコンピュータ装置によって構成される。このコンピュータ装置は、それぞれ図示しないCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、ハードディスク装置などの記憶装置と、入出力ポートと、タッチパネルとを有する。
【0030】
このコンピュータ装置のROM及びハードディスク装置には、コンピュータ装置を移動端末試験装置1として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータ装置は、移動端末試験装置1として機能する。
【0031】
このように、本実施形態において、シナリオ処理部3、制御部6は、CPUによって構成され、擬似基地局部2は、通信モジュールによって構成される。
【0032】
このような構成の移動端末試験装置1において、5G NRに対応した移動端末10を試験する場合、制御部6は、5G NRの擬似基地局としてのパラメータや試験の信号シーケンスなどをユーザーに設定させ、試験シナリオを作成して記憶装置に記憶させる。
【0033】
制御部6は、例えば、擬似基地局部2で通信可能な周波数帯域としてのバンドを、「Operation Band」として擬似基地局のパラメータに設定させる。制御部6は、複数のバンドを「Operation Band」として設定させてもよい。
【0034】
制御部6は、5G NRに対応した移動端末10と接続する際、移動端末10に「Band filter」を送信するようになっている。
【0035】
制御部6は、擬似基地局としてのパラメータとして、Band filterの設定モードとして、自動設定モードと手動設定モードのいずれかを選択させる。
【0036】
制御部6は、自動設定モードが設定されている場合には、移動端末10と接続する際、移動端末10に送信するBand filterに、「Operation Band」に設定されたバンドを設定して送信させる。
【0037】
制御部6は、手動設定モードが設定されている場合には、例えば、表示部5に「Operation Band」に設定されたバンドを表示させ、その中からBand filterに設定させるバンドを選択させ、選択されたバンドをBand filterに設定して送信させて、移動端末10と接続する。制御部6は、手動設定モードが設定されている場合に、操作部4から入力されたバンドをBand filterに設定して送信させて、移動端末10と接続するようにしてもよい。
【0038】
以上のように構成された本実施形態に係る移動端末試験装置によるBand filter送信処理について、
図2を参照して説明する。なお、以下に説明するBand filter送信処理は、5G NRに対応した移動端末10との接続が選択されると実行される。
【0039】
ステップS1において、制御部6は、Band filterの設定モードが自動設定モードであるか否かを判定する。
【0040】
Band filterの設定モードが自動設定モードであると判定した場合には、制御部6は、ステップS4の処理を実行する。Band filterの設定モードが自動設定モードでないと判定した場合には、制御部6は、ステップS2の処理を実行する。
【0041】
ステップS2において、制御部6は、ユーザーにBand filterを設定させる。ステップS2の処理を実行した後、制御部6は、ステップS3の処理を実行する。
【0042】
ステップS3において、制御部6は、設定されたBand filterを移動端末10に送信する。ステップS3の処理を実行した後、制御部6は、Band filter送信処理を終了する。
【0043】
ステップS4において、制御部6は、Operation Bandに設定されたバンドをBand filterに設定して移動端末10に送信する。ステップS4の処理を実行した後、制御部6は、Band filter送信処理を終了する。
【0044】
このように、上述の実施形態では、制御部6は、Band filterの設定モードとして、自動設定モードが設定されている場合には、移動端末10と接続する際、移動端末10に送信するBand filterに、「Operation Band」に設定されたバンドを設定して送信させる。
【0045】
これにより、移動端末10との接続のたびにBand filterの設定をする必要が無く、効率良く試験を行なうことができる。
【0046】
また、制御部6は、Band filterの設定モードとして、手動設定モードが設定されている場合には、Band filterに設定させるバンドを入力させ、入力されたバンドをBand filterに設定して送信させて、移動端末10と接続する。
【0047】
これにより、ユーザーの設定したいバンドをBand filterに設定させることができ、試験に柔軟に対応することができる。
【0048】
また、制御部6は、Band filterの設定モードとして、手動設定モードが設定されている場合に、「Operation Band」に設定されたバンドを表示し、その中からBand filterに設定させるバンドを選択させ、選択されたバンドをBand filterに設定して送信する。
【0049】
これにより、ユーザーの設定したいバンドを「Operation Band」に設定されたバンドから選択させて設定することができ、利用可能なバンドからユーザーの設定したいバンドをBand filterに設定させることができ、試験に柔軟に対応しつつ効率良く試験を行なうことができる。
【0050】
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0051】
1 移動端末試験装置
2 擬似基地局部
3 シナリオ処理部
4 操作部
5 表示部
6 制御部
10 移動端末