(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】剛性のある保護用空洞ケーシング
(51)【国際特許分類】
A41D 31/28 20190101AFI20240430BHJP
A41D 13/015 20060101ALI20240430BHJP
A42B 3/06 20060101ALI20240430BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
A41D31/28
A41D13/015
A42B3/06
B32B27/12
(21)【出願番号】P 2021500962
(86)(22)【出願日】2019-02-13
(86)【国際出願番号】 EP2019053504
(87)【国際公開番号】W WO2020011404
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-02-07
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】519224306
【氏名又は名称】マット プロダクト アンド テクノジー,エスエル.
(74)【代理人】
【識別番号】100081053
【氏名又は名称】三俣 弘文
(72)【発明者】
【氏名】カデンス バリャリン ハヴィエル
(72)【発明者】
【氏名】マテウ コディナ,ザビエル
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-544669(JP,A)
【文献】特表2016-508088(JP,A)
【文献】特開2016-198985(JP,A)
【文献】特開2003-71942(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0273911(US,A1)
【文献】米国特許第5012950(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/015、31/00、31/28
A42B3/00-7/00
A42C1/00-2/00
B29B11/16、15/08-15/14
B29C70/16
B32B1/00-43/00
C08J5/04-5/10、5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性のある保護用空洞ケーシング(30)において、
第1熱可塑性材料(11)のマトリックスからなる剛性のある第1層(10)と、第2熱可塑性材料(21)のマトリックスからなる剛性のある第2層(20)を有し、
前記第1熱可塑性材料(11)のマトリックスはその内部に埋設された長繊維布(12)の層を有し、前記長繊維布(12)は、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維からなる群から選択され、前記第1層(10)の総重量の45%~60%を構成し、
前記第2層(20)は、前記第1層(10)の外側に重ねて配置され、前記第1層(10)の外面を完全に覆い、前記第2熱可塑性材料(21)のマトリックスは前記長繊維布(12)を有さず、前記保護用空洞ケーシング(30)の総重量の2%~10%を構成し、前記保護用空洞ケーシング(30)に平滑な表面を提供し、
前記第1熱可塑性材料(11)と第2熱可塑性材料(21)は、共に前駆繊維を含有し、それぞれ第1融点と第2融点を有し、前記第2融点は第1融点より高く、
前記第1熱可塑性材料(11)は、前記第1融点以上前記第2融点以下の温度で加熱する製造プロセスの間、前記第2熱可塑性材料(21)を構成する前記前駆繊維の間に入り込み、前記第1層(10)と第2層(20)は一体性のある剛性構造を提供する
ことを特徴とする剛性のある保護用空洞ケーシング。
【請求項2】
剛性のある保護用空洞ケーシング(30)において、
第1熱可塑性材料(11)のマトリックスからなる剛性のある第1層(10)と、第2熱可塑性材料(21)のマトリックスからなる剛性のある第2層(20)を有し、
前記第1熱可塑性材料(11)のマトリックスは、その内部に埋設された長繊維布(12)の層を有し、前記長繊維布(12)は、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維からなる群から選択され、前記第1層(10)の総重量の45%~60%を構成し、
前記第2層(20)は、前記第1層(10)の外側に重ねて配置され、前記第1層(10)の外面を完全に覆い、前記第2熱可塑性材料(21)のマトリックスは前記長繊維布(12)を有さず、前記保護用空洞ケーシング(30)の総重量の2%~10%を構成し、前記保護用空洞ケーシング(30)に平滑な表面を提供し、
前記第1熱可塑性材料(11)と第2熱可塑性材料(21)は、共に前駆繊維を含有し、それぞれ第1融点と第2融点を有し、前記第2融点は第1融点より低く、
前記第2熱可塑性材料(21)は、前記第2融点以上前記第1融点以下の温度で加熱する製造プロセスの間、前記第1熱可塑性材料(11)を構成する前記前駆繊維の間に入り込み、前記第1層(10)と第2層(20)は一体性のある剛性構造を提供する
ことを特徴とする剛性のある保護用空洞ケーシング。
【請求項3】
前記第1熱可塑性材料(11)は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート又はポリアミドのいずれかであり、
前記第2熱可塑性材料(21)は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート又はポリアミドのいずれかである
ことを特徴とする請求項1又は2記載の保護用空洞ケーシング。
【請求項4】
前記第1熱可塑性材料(11)と第2熱可塑性材料(21)は、同じプラスチック材料である
ことを特徴とする請求項1又は2記載の保護用空洞ケーシング。
【請求項5】
前記長繊維布(12)は、不織布である
ことを特徴とする請求項1-4のいずれかに記載の保護用空洞ケーシング。
【請求項6】
前記長繊維布(12)は、織布である
ことを特徴とする請求項1-4のいずれかに記載の保護用空洞ケーシング。
【請求項7】
前記長繊維布(12)は、その表面が処理されてその粗さを増大させて、前記第2熱可塑性材料(21)との接着性を改善している。
ことを特徴とする請求項1-6のいずれかに記載の保護用空洞ケーシング。
【請求項8】
前記長繊維布(12)の層は、前記第1層(10)の厚さ方向に対し中央にあり、その両側に前記第1熱可塑性材料(11)製の同一厚さのコーティング層を有する
ことを特徴とする請求項
1-7のいずれかに記載の保護用空洞ケーシング。
【請求項9】
前記第1層(10)は追加の補強領域を有し、
前記補強領域は、前記第1層(10)の追加の補強領域以外の部分より多い量の長繊維布(12)の層を備えている
ことを特徴とする請求項
1-8のいずれかに記載の保護用空洞ケーシング。
【請求項10】
前記保護用空洞ケーシング(30)は、ユーザーの頭部が入るアクセス開口部(31)と視覚確保するバイザー開口部(32)を有する空洞の形状をした本体であり、
前記追加の補強領域は、前記バイザー開口部(32)の周りの領域と前記アクセス開口部(31)の周りの領域を含む
ことを特徴とする請求項
9記載の保護用空洞ケーシング。
【請求項11】
前記保護用空洞ケーシングは、ユーザーの頭部が入るアクセス開口部(31)と視覚確保するバイザー開口部(32)を有するヘルメット、防弾チョッキ、膝パッド、肘パッド、肩パッド、ブーツとスケート、スーツケース、車両、航空機、船舶の構成部品、ラケット、自転車のフレーム、スキーとスノーボード、サーフボード、ウエイクボード、水中スポーツ用品、風力タービン要素のいずれかである
ことを特徴とする請求項
1-9のいずれかに記載の保護用空洞ケーシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性のある保護用空洞ケーシングに関する。この保護用空洞ケーシングの一例は、保護用ヘルメット・シェル、防弾チョッキ、ブーツ、身体防具、膝パッド、肘パッド、手首プロテクター、スーツケース等である。
【背景技術】
【0002】
剛性のある保護用空洞ケーシングは、外部からの衝撃を受け止め、その応力を衝撃面より広い領域に分散させる硬い要素(構成部品)である。これにより、その内部に収納されているものがなんであれ、それに与える衝撃が引き起こす損傷を軽減する。このケーシングは他の機能例えば耐摩耗性も有する。
【0003】
通常、他の柔らかい又は変形可能な材料(その一例は発泡体や詰め物である)製の層が、ケーシングとその空洞(中空)内の保護すべき中身との間に挟まれる。この他の層は、事故に際し、衝撃から起きるエネルギーをできるだけ吸収し変形して減速距離を伸ばす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱可塑性材料の射出成形プロセスにより製造されたシェルを具備する多数のヘルメットが、知られている。その材料の流動性故に、金型に容易に射出可能であり、熱可塑性材料が金型の隅々まで確実に完全に充填され、厚さ数mmの一体型(monolithic)シェルを形成する。
【0005】
通常、このタイプのシェルの製造にあたっては、加熱により固化する熱可塑性材料が使われ、成形後シェルが硬化し、金型から引き抜くことができる。
【0006】
しかし、この解決方法では長い強化繊維(又は布)を含めることはできない。その理由は、長繊維を、射出プロセスで金型内に適正な分布を保証しながら導入できないからである。
【0007】
シェルの製造プロセスは特許文献1に開示されている。同文献によれば、シェルを製造する為に、金型の内側に外側層と内側層を配置することからなる。外側層は短繊維の熱可塑性材料のマトリックスにより形成され、内側層は強化用の長繊維の熱可塑性材料のマトリックスにより形成されている。
【0008】
そして、開示された製品において、同文献は、短繊維で形成されるベール(veil)(垂れた布)からなる外側層の存在を述べている。
【0009】
短繊維は、最終製品において不規則で不均一な表面仕上げ(以下「表面」と総称する)を形成/生成してしまい、固化したシェルに対し、研磨砂吹きつけと研磨の最終ステップを必要とし、この為製品の価格を上げてしまう。
【0010】
特許文献2,3は、長繊維による強化を含む熱可塑性材料のマトリックスからなるケーシングを開示する。
【文献】EP2808160
【文献】US7062795
【文献】EP2439068
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、剛性のある保護用空洞ケーシングに関する。このケーシングは、その外部からの衝撃から空洞内部の収容物を保護するものである。かくして、ケーシングは、事故時に衝撃を吸収し破損に耐え、この衝撃により発生する力をできるだけ広い範囲に分散し、空洞スペース内の内容物への損傷のリスクを低減し、保護を提供する。
【0012】
更にケーシングはその内側に変形可能な材料を有する。この材料は、衝撃時の減速距離を伸ばし、この変形により衝撃から起きるエネルギーをできるだけ吸収する役割を果たす。
【0013】
本発明の剛性のある保護用空洞ケーシングは、第1熱可塑性材料(以下「第1材料」とも称する)のマトリックスからなる第1剛性層(以下「第1層」とも称する)を有する。このマトリックスは、内部に長繊維の織り地(以下「長繊維布」と総称する)の層を有する。
【0014】
熱可塑性ポリマーは、熱安定性ポリマーより、流動性が低く従って成形が困難である。しかし、衝撃に対してはより優れた機械的特性を示す。その理由で通常、空洞のケーシングは、金型内への熱可塑性材料の射出手段により、熱可塑性ポリマーから製造される。この為、同一モデルの工業用の大量生産にとっては、製品単価を安くできる。
【0015】
しかし、長繊維を第1材料のマトリックス内に含めることにより、空洞のケーシングの第1層の製造が射出成形プロセスの手段で実行することが不可能になる。その理由は、長繊維の適正な分布(correct disribution)が確保できなくなるからである。長繊維の適正な分布は、空洞ケーシングの全ての部分に適正な耐性(correct resistance)を確保するために必須だからである。
【0016】
上記が、長繊維布を第1材料に含めると射出プロセスが使えなくなる理由である。この長繊維は、第1材料が固化する前に、金型(モールド)内に適正に分布しなげればならない。この射出成形プロセスを除外しても、熱安定性プラスチックよりも、優れた弾性、耐性、柔軟性を有する熱可塑性ポリマーの使用が提案されている。
【0017】
第1熱可塑性マトリックス内に含有された長繊維は、大きな耐性を示し、衝撃の際、第1熱可塑性マトリックスの破損を回避でき、この各衝撃力をケーシングのより広い範囲に分散できる。これにより、少量の材料の軽いケーシングを用いて、長繊維を含有しないケーシングよりも同じか若しくはそれ以上の耐性能を達成できる。
【0018】
本発明のケーシングは、従来技術で知られていない、第1層の外側に重なりあって第2剛性層(以下「第2層」とも称する)を有する。この第2層は、第2熱可塑性材料のマトリックスから形成される。この第2層は、前記ケーシングの総重量の2%~10%を含む。第1層の長繊維は、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維からなる群から選択され、前記第1層の総重量の45%~60%を含む。
【0019】
第1層の外側にあり重なり合った第2層は、第1層にその耐性を改善する完全なコーティングを提供し、長繊維の存在により第1層の外部表面に発生させた不完全部分を滑らかにし、外観を改善し、ケーシングの更なる研磨の必要性を無くする。
【0020】
更に、第2層は、第1層の表面に残っていた長繊維を完全にカバーし、長繊維を覆い、シェルの耐摩耗性を改善する。
【0021】
一実施例によれば、第1熱可塑性材料は、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリエチレン(polyethylene)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)又はポリアミド(polyamide)のいずれかであり、第2熱可塑性材料は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート又はポリアミドのいずれかである。
【0022】
ポリプロピレンは、作業性が良く、良好な耐摩耗性を示し、共用の添加剤を必要とするだけである。この添加剤は、その溶融状態での流動性を改善し、衝撃と紫外線放射に対する耐性を改善するが、塗装は困難となる。
【0023】
これに対し、ポリエチレンは、融点が低く、塗装が極めて容易である。しかし、ポリプロピレンにより得られたのと同等な耐衝撃性能を達成するには、添加剤のより正確な成分組成が必要である。
【0024】
第1熱可塑性材料と第2熱可塑性材料は、同じ又は違うプラスチック材料でもよい、その理由は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートは、第1層と第2層の間の適正な接着を達成するために、互いに融和性のある(compatible)プラスチックである。
【0025】
第1と第2の熱可塑性材料が異なる融点を持っていてもよい。これにより、製造プロセスの間、一方の低融点の熱可塑性材料は溶けるが、他方の高融点の熱可塑性材料は溶けない。これにより、一方の溶けた材料が、溶ける前の他方の熱可塑性材料を構成する前駆繊維(段落0029に記載されている)の間に入り込み易くする。これにより一体性がある耐性のある組立体が得られる。
【0026】
異なる融点は、異なるプラスチック材料を用いること、或いは、同一材料を用いるが異なる添加剤(異なる融点を与える)を入れることにより、達成される。
【0027】
長繊維は、不織布と織布の両方であり得る。前者は長繊維がランダムに分布しており、後者は長繊維が横糸と縦糸で整然と分布している。
【0028】
一実施例においては、長繊維は、表面が処理されてその粗さを増大させている。これにより、熱可塑性マトリックスとの接着性を改善している。
【0029】
第1熱可塑性材料と第2熱可塑性材料は、その添加剤内にグラフェン粒子又は繊維(「前駆繊維」と称する)を含む。これにより、抵抗力を増している。
【0030】
第1層は追加の補強領域を有し、この補強領域は、ケーシングの第1層の残り(即ち追加の補強領域以外の部分)よりも多い数の長繊維布の層を備えている。
【0031】
ケーシングがヘルメットのシェルの場合、追加の補強領域は、バイザー開口の周りの領域と、アクセス開口の周りの領域とを含む。それらの部分は、その形状故に、シェルの他の領域より弱いか、必要とされる機械的剛性と柔軟性が、ヘルメットの強度基準故に、大きい必要があるからである。
【0032】
他の応用においては、追加の補強領域は、開口の周りと、機械的応力が大きい部分に集中させるのが好ましい。
【0033】
特許請求の範囲に記載した値の幅は製品における最終値では最適ではないかも知れない。そして本発明の適用ができ、最終値が適用可能(均等的に)となる。この場合も本発明の範囲に入る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施例によるケーシングがヘルメット・シェルの場合を表す斜視図。
【
図2】本発明の一実施例によるケーシングを構成する様々な要素を表す斜視図。
【
図3】本発明のケーシングを組み込んだローラー・スケート靴の斜視図。
【
図4】本発明のケーシングを組み込んだアイス・スケート靴の斜視図。
【
図5】本発明のケーシングをその壁に有するスーツ・ケースの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
添付した図面は、剛性のある保護用空洞ケーシング30を示す。
【0036】
図1は本発明の一実施例を示す。同実施例において、ケーシング30は、アクセス開口部31とバイザー開口部32を有するシェルを具備するヘルメットである。アクセス開口部31は、ユーザの頭がシェル内に挿入される為のものあり、バイザー開口部32を介してユーザは良好な視界が得られる。
【0037】
図3,4は本発明の他の実施例を示す。同実施例において、ケーシング30は、それぞれローラー・スケート靴とアイス・スケート靴であり、これらの靴のシェルはアクセス開口部31を具備する。アクセス開口部31は、ユーザの足がシェル内に入る為のものである。シェルは、足を包囲し保護する。靴の一部は、他の材料例えばテキスタイル材料で形成されている。
【0038】
図5は本発明の他の実施例を示す。同実施例において、ケーシング30は、スーツケースのシェルを構成する。
【0039】
本発明の剛性のある保護用空洞ケーシングの一例は、ブーツ、足首ブレース、膝パッド、肘パッド、手首保護具、防弾チョッキ、ケース、カバーである。しかしこれらには限定されない。
【0040】
ケーシング30がヘルメット・シェルの場合は、アクセス開口部31とバイザー開口部32は、両方とも、シェルの内部空洞の最大寸法より小さい。その結果、シェルの製造は、複雑な外側金型と同じく複雑な内側金型を必要とする。内側金型は拡張可能又は膨張可能である。
【0041】
同じことが、上記した他のケーシング30にも当てはまる。この場合、内部空洞へのアクセス開口は、内部の最大寸法より小さく、その製造には複雑な金型を必要とする。
【0042】
ケーシング30に適合する材料は第1層10からなる。この第1層10は、添加剤でドープしたポリプロピレンからなる第1熱可塑性材料11のマトリックスから構成される。この添加剤は、衝撃と紫外線に対する耐性を改善し溶融状態での流動性を改善する。
【0043】
第1熱可塑性材料11のマトリックスには、長繊維布12の層が含まれる。長繊維布12の層は繊維ストリップを構成する(
図2)。
【0044】
繊維ストリップは、前記繊維の層でケーシング30の表面全面を覆うように分散している。補強領域には、繊維製の複数の重なり合った層が含まれ、補強領域の耐性を上げている。ケーシング30がシェルの場合は、補強領域は、アクセス開口部31とバイザー開口部32の周囲に対応している。ケーシング30の他の実施例においては、この補強領域は、シェルのあらゆる開口の隣接領域にも対応している。
【0045】
強化用の長繊維布12の総重量は、第1層の45%以上65%以下である。この総重量の残りは、第1熱可塑性材料11に対応している。
【0046】
長繊維布12により形成される繊維(即ち布)は、第1層10の厚さの中心にある。この繊維は、両側にほぼ等しい厚さの第1熱可塑性材料11を有する。
【0047】
他の実施例(図示せず)においては、長繊維布12は、ランダムに絡み合った不織布の形状に配置され、織布で得られるのと同様な効果を達成する。
【0048】
第1熱可塑性材料11のマトリックスに埋設された長繊維布12の存在により、シェルの第1層10の表面にキズが生成されることがあるので、表面は、第2熱可塑性材料21のマトリックスで一体に構成される外部コーティングの第2層20を含む。この第2熱可塑性材料21のマトリックスも、この実施例では、ポリプロピレンであり、強化繊維を欠く。第2層は、シェルの総重量の10%以下、2%以上である。
【0049】
第2実施例は、第1層10又は第2層20を、融点がポリプロピレンより低いポリエチレンで置き換えると、第1実施例と同じである。
【0050】
第3実施例は、ポリエチレンを第1材料と第2材料(両方とも低融点を必要とする)として使用すると、第1実施例と同じである。
【0051】
別の構成として、ポリプロピレンを第1材料としてポリエチレンテレフタレートを第2材料として使用するか、或いは、ポリエチレンテレフタレートを第1材料と第2材料の両方として使用する。
【0052】
他の実施例では、第1材料と第2材料の一方又は両方が、ポリアミドである。
【0053】
更に、第1熱可塑性材料11と第2熱可塑性材料21の両方が、少量のグラフェン粒子又は繊維又は布を、シェルの耐性を増加させる添加剤として含有してもよい。
【0054】
第1熱可塑性材料11と第2熱可塑性材料21として使用される製品にかかわらず、両方の材料11,21が異なる融点を有するのが好ましい。異なる融点は、添加剤又は前記材料の選択により達成される。これにより、製造プロセスをより良く制御可能となり、層の統合が改善される。
【0055】
一実施例に記載された本発明を構成する様々な部品は、他の実施例に記載された部品と自由に組み合わせることができる。ただしこの組み合わせは、本明細書に明示されていなくても、この組み合わせに不利益が存在しない限り、可能である。
【0056】
説明されているアイテムのいずれも、ケーシングの内壁を押す膨張可能なバッグをその内側に含む金型内に同じケーシングを形成することにより、製造可能である。更に、金型を加熱する手段、加熱用オーブン内に膨張可能なバッグを有する金型組み立て体の装置も提供できる。
【0057】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。用語「又は」に関して、例えば「A又はB」は、「Aのみ」、「Bのみ」ならず、「AとBの両方」を選択することも含む。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
【符号の説明】
【0058】
10:第1剛性層
11:第1熱可塑性材料製
12:長繊維布
20:第2剛性層
21:第2熱可塑性材料製
30:ケーシング
31:アクセス開口部
32:バイザー開口部