(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】λ/4型電波吸収体
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20240430BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240430BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20240430BHJP
H01Q 17/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
H05K9/00 M
B32B7/022
B32B7/025
H01Q17/00
(21)【出願番号】P 2021509398
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2020012757
(87)【国際公開番号】W WO2020196420
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2019057848
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019082842
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 幸子
(72)【発明者】
【氏名】澤田石 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】武藤 勝紀
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-117073(JP,A)
【文献】特開2018-147999(JP,A)
【文献】特開2011-249613(JP,A)
【文献】特開2003-198179(JP,A)
【文献】特開平10-219006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 1/00-43/00
H01Q 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗膜、誘電体層、及び反射層を有し、且つ前記誘電体層が自己修復性[直径0.5mmの針を電波吸収体の反射層側とは反対の表面から吸収体に垂直に差し込み電波吸収体の裏面まで貫通させ、貫通から10秒後に抜き取り、室温にて7日間静置し、静置後、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK8710、キーエンス社製、またはその同等品)により、電波吸収体の孔を開けた側の互いに5μm離れた任意の1000点における孔の深さを測定し、その平均値(孔の平均深さ)から、電波吸収体における誘電体層及び反射層以外の層の厚みを引いた値が、誘電体層の厚み(誘電体層が複数の層からなる場合その厚みの和)の4/5よりも小さい、という性質]を有する、λ/4型電波吸収体。
【請求項2】
前記誘電体層のせん断貯蔵弾性率が8×10
5Pa以下である、請求項1に記載のλ/4型電波吸収体。
【請求項3】
前記誘電体層が粘着剤である、請求項1又は2に記載のλ/4型電波吸収体。
【請求項4】
前記誘電体層のガラス転移温度が-80~30℃である、請求項1~3のいずれかに記載のλ/4型電波吸収体。
【請求項5】
前記誘電体層がゲル分率40~80%の粘着剤を含む誘電体層である、請求項1~4のいずれかに記載のλ/4型電波吸収体。
【請求項6】
前記誘電体層の比誘電率が1~10である、請求項5に記載のλ/4型電波吸収体。
【請求項7】
前記粘着剤が、炭素数2~14であるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有する共重合体を含有する、請求項5又は6に記載のλ/4型電波吸収体。
【請求項8】
前記共重合体が、オレフィン系重合体に由来する構成単位を有する、請求項7に記載のλ/4型電波吸収体。
【請求項9】
前記粘着剤が、平均粒径5~150μmの微粒子を重量比率で0.15~15%含有する、請求項5~8のいずれかに記載のλ/4型電波吸収体。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれかのλ/4型電波吸収体を含む、ミリ波レーダー。
【請求項11】
抵抗膜及び誘電体層を有し、且つ前記誘電体層が自己修復性[直径0.5mmの針を抵抗膜の誘電体層側とは反対の表面側から電波吸収体用部材に垂直に差し込み電波吸収体用部材の裏面まで貫通させ、貫通から10秒後に抜き取り、室温にて7日間静置し、静置後、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK8710、キーエンス社製、またはその同等品)により、電波吸収体用部材の孔を開けた側の互いに5μm離れた任意の1000点における孔の深さを測定し、その平均値(孔の平均深さ)から、電波吸収体用部材における誘電体層以外の層の厚みを引いた値が、誘電体層の厚み(誘電体層が複数の層からなる場合その厚みの和)の4/5よりも小さい、という性質]を有する、λ/4型電波吸収体用部材。
【請求項12】
支持体、抵抗膜、及びゲル分率が40~80%の粘着剤を含む誘電体層を含む、
請求項11に記載のλ/4型電波吸収体用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、λ/4型電波吸収体等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やスマートフォン等の携帯通信機器の普及が急速に進んでおり、また自動車等において多くの電子機器が搭載されるようになり、これらから発生する電波・ノイズを原因とする電波障害、他の電子機器の誤動作等の問題が多発している。このような電波障害、誤動作等を防止する方策として、各種の電波吸収体が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
λ/4型電波吸収体は、使用されるデバイスの部位によっては、曲面に対する長期に亘る追従性が要求される。本発明者は、研究を進める中で、従来のλ/4型電波吸収体は、曲面に対しての追従性が低く、低温などの過酷な状況において長期にわたって屈曲した場合に、材料の疲労による断裂が発生し、λ/4型電波吸収体としての性能を維持できなくなる場合が多い点に、着目した。また、本発明者は、研究を進める中で、自動車等の用途では、温度変化環境にさらされるので、温度変化環境における耐久性への要求が高まっている点に着目した。
【0005】
特許文献1には、曲面部位における使用に適したλ/4型電波吸収体について提案されているものの、低温などの過酷な状況における折り曲げ耐性(低温折り曲げ耐性)についてまでは検討されていない。
【0006】
そこで、本発明は、低温折り曲げ耐性がより高いλ/4型電波吸収体を提供することを課題とする。好ましくは、本発明は、さらに温度変化環境における耐久性をも備えるλ/4型電波吸収体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、研究を進める中で、誘電体層の、カッター等の鋭利なもので亀裂を発生させた後の修復性に着目し、これを最適化することにより低温折り曲げ耐性を向上させることができることを見出した。そして、この知見に基づいて一層鋭意研究を進めた結果、本発明者は、抵抗膜、誘電体層、及び反射層を有し、且つ前記誘電体層が自己修復性[直径0.5mmの針を電波吸収体の反射層側とは反対の表面から吸収体に垂直に差し込み電波吸収体の裏面まで貫通させ、貫通から10秒後に抜き取り、室温にて7日間静置し、静置後、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK8710、キーエンス社製、またはその同等品)により、電波吸収体の孔を開けた側の互いに5μm離れた任意の1000点における孔の深さを測定し、その平均値(孔の平均深さ)から、電波吸収体における誘電体層及び反射層以外の層の厚みを引いた値が、誘電体層の厚み(誘電体層が複数の層からなる場合その厚みの和)の4/5よりも小さい、という性質]を有する、λ/4型電波吸収体、であれば、上記課題を解決できることを見出した。
さらに、本発明者は、抵抗膜、ゲル分率が40~80%の粘着剤を含む誘電体層、及び反射層を含む、λ/4型電波吸収体、であれば、低温折り曲げ耐性のみならず、温度変化環境における耐久性をも備えることを見出した。
本発明者はこれらの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0009】
項1. 抵抗膜、誘電体層、及び反射層を有し、且つ前記誘電体層が自己修復性[直径0.5mmの針を電波吸収体の反射層側とは反対の表面から吸収体に垂直に差し込み電波吸収体の裏面まで貫通させ、貫通から10秒後に抜き取り、室温にて7日間静置し、静置後、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK8710、キーエンス社製、またはその同等品)により、電波吸収体の孔を開けた側の互いに5μm離れた任意の1000点における孔の深さを測定し、その平均値(孔の平均深さ)から、電波吸収体における誘電体層及び反射層以外の層の厚みを引いた値が、誘電体層の厚み(誘電体層が複数の層からなる場合その厚みの和)の4/5よりも小さい、という性質]を有する、λ/4型電波吸収体。
項2. 前記誘電体層のせん断貯蔵弾性率が8×105Pa以下である、項1に記載のλ/4型電波吸収体。
項3. 前記誘電体層が粘着剤である、項1又は2に記載のλ/4型電波吸収体。
項4. 前記誘電体層のガラス転移温度が-80~30℃である、項1~3のいずれかに記載のλ/4型電波吸収体。
項5. 前記誘電体層がゲル分率40~80%の粘着剤を含む誘電体層である、項1~4のいずれかに記載のλ/4型電波吸収体。
項6. 前記誘電体層の比誘電率が1~10である、項5に記載のλ/4型電波吸収体。
項7. 前記粘着剤が、炭素数2~14であるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有する共重合体を含有する、項5又は6に記載のλ/4型電波吸収体。
項8. 前記共重合体が、オレフィン系重合体に由来する構成単位を有する、項7に記載のλ/4型電波吸収体。
項9. 前記粘着剤が、平均粒径5~150μmの微粒子を重量比率で0.15~15%含有する、項5~8のいずれかに記載のλ/4型電波吸収体。
項10. 抵抗膜、ゲル分率が40~80%の粘着剤を含む誘電体層、及び反射層を含む、λ/4型電波吸収体。
項11. 項1~10のいずれかのλ/4型電波吸収体を含む、ミリ波レーダー。
項12. 抵抗膜及び誘電体層を有し、且つ前記誘電体層が自己修復性[直径0.5mmの針を抵抗膜の誘電体層側とは反対の表面側から電波吸収体用部材に垂直に差し込み電波吸収体用部材の裏面まで貫通させ、貫通から10秒後に抜き取り、室温にて7日間静置し、静置後、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK8710、キーエンス社製、またはその同等品)により、電波吸収体用部材の孔を開けた側の互いに5μm離れた任意の1000点における孔の深さを測定し、その平均値(孔の平均深さ)から、電波吸収体用部材における誘電体層以外の層の厚みを引いた値が、誘電体層の厚み(誘電体層が複数の層からなる場合その厚みの和)の4/5よりも小さい、という性質]を有する、λ/4型電波吸収体用部材。
項13. 支持体、抵抗膜、及びゲル分率が40~80%の粘着剤を含む誘電体層を含む、λ/4型電波吸収体用部材。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低温折り曲げ耐性がより高いλ/4型電波吸収体を提供することができる。また好ましい態様においては、温度変化環境における耐久性を備えるλ/4型電波吸収体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のλ/4型電波吸収体の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明のλ/4型電波吸収体の一例を示す概略断面図である。
【
図3】上方の図は、本発明のλ/4型電波吸収体用部材の一例を示す概略断面図である。下方は、該部材が接するように配置される、反射層として機能し得る被着体の一例を示す概略断面図である。
【
図4】本発明のλ/4型電波吸収体の用途の一例(粘着剤を介して筐体上に配置されてなる形態の一例)を示す概略断面図である
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0013】
本発明は、その一態様において、抵抗膜、誘電体層、及び反射層を有し、且つ前記誘電体層が自己修復性[直径0.5mmの針を電波吸収体の反射層側とは反対の表面から吸収体に垂直に差し込み電波吸収体の裏面まで貫通させ、貫通から10秒後に抜き取り、室温にて7日間静置し、静置後、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK8710、キーエンス社製、またはその同等品)により、電波吸収体の孔を開けた側の互いに5μm離れた任意の1000点における孔の深さを測定し、その平均値(孔の平均深さ)から、電波吸収体における誘電体層及び反射層以外の層の厚みを引いた値が、誘電体層の厚み(誘電体層が複数の層からなる場合その厚みの和)の4/5よりも小さい、という性質]を有する、λ/4型電波吸収体、に関する。また、本発明は、その一態様において、抵抗膜、ゲル分率が40~80%の粘着剤を含む誘電体層、及び反射層を含む、λ/4型電波吸収体、に関する。本明細書において、これらをまとめて、「本発明の電波吸収体」と示すこともある。以下に、これについて説明する。
【0014】
<1.特性>
本発明の電波吸収体は、その一態様において、誘電体層が自己修復性[直径0.5mmの針を電波吸収体の反射層側とは反対の表面から吸収体に垂直に差し込み電波吸収体の裏面まで貫通させ、貫通から10秒後に抜き取り、室温にて7日間静置し、静置後、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK8710、キーエンス社製、またはその同等品)により、電波吸収体の孔を開けた側の互いに5μm離れた任意の1000点における孔の深さを測定し、その平均値(孔の平均深さ)から、電波吸収体における誘電体層及び反射層以外の層の厚みを引いた値が、誘電体層の厚み(誘電体層が複数の層からなる場合その厚みの和)の4/5よりも小さい、という性質]を有する、という特性を備える。この特性を備えることにより、十分な低温折り曲げ耐性を発揮することが可能である。より具体的には、例えば、低温条件において長時間屈曲させた場合において、誘電体層における亀裂の発生を抑制し、λ/4型電波吸収体としての性能を高いレベルで維持することが可能である。
【0015】
自己修復性は、後述するように、誘電体層の貯蔵弾性率、ゲル分率、Tg、分子量、モノマー組成等により、調整することが可能である。
【0016】
<2.構成>
本発明の電波吸収体は、抵抗層を含む抵抗膜、誘電体層、及び反射層を有する、という構成を備える。以下に、各構成について説明する。
【0017】
<2-1.抵抗膜>
抵抗膜は、電波吸収体において抵抗層として機能し得る層を含む限り特に制限されない。
【0018】
抵抗膜の表面抵抗値は、特に制限されない。抵抗膜の表面抵抗値は、例えば100~800Ω/□である。該範囲の中でも、好ましくは150~750Ω/□、より好ましくは200~600Ω/□である。また、該表面抵抗値は、ある態様においては、例えば100~1000Ω/□、好ましくは200~700Ω/□、より好ましくは250~600Ω/□である。
【0019】
本明細書において、表面抵抗値は、表面抵抗計(MITSUBISHI CHEMICALANALYTECH社製、商品名「Loresta-EP」)を用いて、4端子法により測定することができる。また非破壊式(渦電流法)シート抵抗測定器(EC-80P(ナプソン株式会社製)、又はその同等品)を用いても測定できる。
【0020】
抵抗膜の厚みは、特に制限されない。抵抗膜の厚みは、例えば1~200nm、好ましくは2~100nm、より好ましくは2~50nmである。また、該厚みは、ある態様においては、例えば5~100nm、好ましくは7~70nm、より好ましくは10~50nmである。
【0021】
抵抗膜の層構成は特に制限されない。抵抗膜は、1種単独の層から構成されるものであってもよいし、2種以上の層が複数組み合わされたものであってもよい。
【0022】
<2-1-1.抵抗層>
抵抗層の抵抗値は、特に制限されない。抵抗層の抵抗値は、例えば100~800Ω/□である。該範囲の中でも、好ましくは150~750Ω/□、より好ましくは200~600Ω/□である。また、該抵抗値は、ある態様においては、例えば100~1000Ω/□、好ましくは200~700Ω/□、より好ましくは250~600Ω/□である。
【0023】
抵抗層の厚みは、特に制限されない。抵抗層の厚みは、例えば1~200nm、好ましくは2~100nm、より好ましくは2~50nmである。また、該厚みは、ある態様においては、例えば2~100nm、好ましくは3~70nm、より好ましくは5~50nmである。
【0024】
抵抗層の層構成は特に制限されない。抵抗層は、1種単独の抵抗層から構成されるものであってもよいし、2種以上の抵抗層が複数組み合わされたものであってもよい。
【0025】
抵抗層としては、典型的には、ITO含有抵抗層、モリブデン含有抵抗層等が挙げられる。以下に、これらについて説明する。
【0026】
<2-1-1-1.ITO含有抵抗層>
抵抗層としては、例えば酸化インジウムスズ(以下「ITO」とする)が用いられる。なかでも、非晶質構造が極めて安定であり、高温多湿の環境下においても抵抗層のシート抵抗の変動を抑えることができる点から、1~40重量%のSnO2、より好ましくは2~35重量%のSnO2を含有するITOを含有するものが好ましく用いられる。上記ITOの含有量は抵抗層中、例えば50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、通常100質量%未満である。
【0027】
<2-1-1-2.モリブデン含有抵抗層>
抵抗層としては、耐久性、シート抵抗の調整が容易である観点から、モリブデンを含有する抵抗層が好ましく用いられる。モリブデンの含有量の下限は特に限定されないが、より耐久性を高める観点から、5重量%が好ましく、7重量%がより好ましく、9重量%が更に好ましく、11重量%がより更に好ましく、13重量%が特に好ましく、15重量%が非常に好ましく、16重量%が最も好ましい。また、上記モリブデンの含有量の上限は、表面抵抗値の調整の容易化の観点から、30重量%が好ましく、25重量%がより好ましく、20重量%が更に好ましい。
【0028】
上記抵抗層は、モリブデンを含有している場合、さらにニッケル及びクロムを含有することがより好ましい。抵抗層にモリブデンに加えてニッケル及びクロムを含有することでより耐久性に優れた電波吸収体とすることができる。ニッケル、クロム及びモリブデンを含有する合金としては、例えば、ハステロイB-2、B-3、C-4、C-2000、C-22、C-276、G-30、N、W、X等の各種グレードが挙げられる。
【0029】
上記抵抗層がモリブデン、ニッケル及びクロムを含有する場合、モリブデンの含有量が5重量%以上、ニッケルの含有量が40重量%以上、クロムの含有量が1重量%以上であることが好ましい。モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量が上記範囲であることで、より耐久性に優れた電波吸収体とすることができる。上記モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量は、モリブデン含有量が7重量%以上、ニッケル含有量が45重量%以上、クロム含有量が3重量%以上であることがより好ましい。上記モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量は、モリブデン含有量が9重量%以上、ニッケル含有量が47重量%以上、クロム含有量が5重量%以上であることが更に好ましい。上記モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量は、モリブデン含有量が11重量%以上、ニッケル含有量が50重量%以上、クロム含有量が10重量%以上であることがより更に好ましい。上記モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量は、モリブデン含有量が13重量%以上、ニッケル含有量が53重量%以上、クロム含有量が12重量%以上であることが特に好ましい。上記モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量は、モリブデン含有量が15重量%以上、ニッケル含有量が55重量%以上、クロム含有量が15重量%以上であることが非常に好ましい。上記モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量は、モリブデン含有量が16重量%以上、ニッケル含有量が57重量%以上、クロム含有量が16重量%以上であることが最も好ましい。また、上記ニッケルの含有量は、80重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることがより好ましく、65重量%以下であることが更に好ましい。上記クロム含有量の上限は、50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましく、35重量%以下であることが更に好ましい。
【0030】
上記抵抗層は、上記モリブデン、ニッケル及びクロム以外の金属を含有してもよい。そのような金属としては、例えば、鉄、コバルト、タングステン、マンガン、チタン等が挙げられる。上記抵抗層がモリブデン、ニッケル及びクロムを含有する場合、上記モリブデン、ニッケル及びクロム以外の金属の合計含有量の上限は、抵抗層の耐久性の観点から、好ましくは45重量%、より好ましくは40重量%、更に好ましくは35重量%、より更に好ましくは30重量%、特に好ましくは25重量%、非常に好ましくは23重量%である。上記モリブデン、ニッケル及びクロム以外の金属の合計含有量の下限は、例えば1重量%以上である。
【0031】
上記抵抗層が鉄を含有する場合、抵抗層の耐久性の観点から、含有量の好ましい上限は25重量%、より好ましい上限は20重量%、更に好ましい上限は15重量%であり、好ましい下限は1重量%である。上記抵抗層がコバルト及び/又はマンガンを含有する場合、抵抗層の耐久性の観点から、それぞれ独立して、含有量の好ましい上限は5重量%、より好ましい上限は4重量%、更に好ましい上限は3重量%であり、好ましい下限は0.1重量%である。上記抵抗層がタングステンを含有する場合、抵抗層の耐久性の観点から、含有量の好ましい上限は8重量%、より好ましい上限は6重量%、更に好ましい上限は4重量%であり、好ましい下限は1重量%である。
【0032】
上記抵抗層は、ケイ素及び/又は炭素を含有してもよい。抵抗層がケイ素及び/又は炭素を含有する場合、上記ケイ素及び/又は炭素の含有量は、それぞれ独立して、1重量%以下であることが好ましく0.5重量%以下であることがより好ましい。また、抵抗層がケイ素及び/又は炭素を含有する場合、上記ケイ素及び/又は炭素の含有量は、0.01重量%以上であることが好ましい。
【0033】
<2-1-2.バリア層>
耐久性の観点から、抵抗膜はさらにバリア層を含むことが好ましい。バリア層は、抵抗層の少なくとも一方の表面上に配置される。バリア層が片面のみの場合、バリア層は、好ましくは、誘電体層側とは反対側の表面上に配置される。バリア層について以下に詳述する。
【0034】
バリア層は、抵抗層を保護し、その劣化を抑えることができる層である限り、特に制限されない。バリア層の素材としては、例えば金属化合物、半金属化合物、好ましくは金属又は半金属の酸化物、窒化物、窒化酸化物等が挙げられる。バリア層は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、上記素材以外の成分が含まれていてもよい。その場合、バリア層中の上記素材量は、例えば80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、通常100質量%未満である。
【0035】
バリア層が含む金属元素としては、例えばチタン、アルミニウム、ニオブ、コバルト、ニッケル等が挙げられる。バリア層が含む半金属元素としては、例えばケイ素、ゲルマニウム、アンチモン、ビスマス等が挙げられる。
【0036】
上記酸化物としては、例えばMOX[式中、Xは式:n/100≦X≦n/2(nは金属又は半金属の価数である)を満たす数であり、Mは金属元素又は半金属元素である。]で表される化合物が挙げられる。
【0037】
上記窒化物としては、例えばMNy[式中、Yは式:n/100≦Y≦n/3(nは金属又は半金属の価数である)を満たす数であり、Mは金属元素又は半金属元素である。]で表される化合物が挙げられる。
【0038】
上記窒化酸化物としては、例えばMOXNy[式中、XとYは、n/100≦X、n/100≦Y、かつ、X+Y≦n/2(nは金属又は半金属の価数である)であり、Mは金属元素又は半金属元素である。]で表される化合物が挙げられる。
【0039】
上記酸化物又は窒化酸化物の酸化数Xに関しては、例えばMOx又はMOxNyを含む層の断面を、FE-TEM-EDX(例えば、日本電子社製「JEM-ARM200F」)により元素分析し、MOx又はMOxNyを含む層の断面の面積当たりのMとOとの元素比率からXを算出することにより、酸素原子の価数を算出することができる。
【0040】
上記窒化物又は窒化酸化物の窒素化数Yに関しては、例えばMNy又はMOxNyを含む層の断面を、FE-TEM-EDX(例えば、日本電子社製「JEM-ARM200F」)により元素分析し、MNy又はMOxNyを含む層の断面の面積当たりのMとNとの元素比率からYを算出することにより、窒素原子の価数を算出することができる。
【0041】
バリア層の素材の具体例としては、SiO2、SiOx、Al2O3、MgAl2O4、CuO、CuN、TiO2、TiN、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)等が挙げられる。
【0042】
バリア層の厚みは、特に制限されない。バリア層の厚みは、例えば0.1~40nm、好ましくは0.5~30nm、より好ましくは1~20nmである。該厚みは、ある態様においては、例えば1~200nm、好ましくは1~100nm、より好ましくは1~20nmである。該厚みは、生産性の観点からは、10nm以下であることが好ましい。
【0043】
バリア層の層構成は特に制限されない。バリア層は、1種単独のバリア層から構成されるものであってもよいし、2種以上のバリア層が複数組み合わされたものであってもよい。
【0044】
<2-2.誘電体層>
誘電体層は、電波吸収体において目的の波長に対して誘電体として機能し得るものであり、ある態様においては、前述の通り自己修復性[直径0.5mmの針を電波吸収体の反射層側とは反対の表面から吸収体に垂直に差し込み電波吸収体の裏面まで貫通させ、貫通から10秒後に抜き取り、室温にて7日間静置し、静置後、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK8710、キーエンス社製、またはその同等品)により、電波吸収体の孔を開けた側の互いに5μm離れた任意の1000点における孔の深さを測定し、その平均値(孔の平均深さ)から、電波吸収体における誘電体層及び反射層以外の層の厚みを引いた値が、誘電体層の厚み(誘電体層が複数の層からなる場合その厚みの和)の4/5よりも小さい、という性質]を有する限り、特に制限されない。誘電体層としては、特に制限されないが、例えば樹脂シート、粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、自己修復性をより発現させ易いという観点から、粘着剤が好ましい。
【0045】
また、誘電体層は、ある態様においては、ゲル分率が40~80%の粘着剤を含む誘電体層を含む。この構成により、温度変化環境における耐久性を発揮することができる。該ゲル分率は、好ましくは50~80%、より好ましくは50~75%である。
【0046】
誘電体層の比誘電率は、特に制限されない。誘電体層の比誘電率は、例えば1~20である。該比誘電率は、電波吸収性等の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2以上、更により好ましくは2.1以上である。該比誘電率は、広帯域の電波吸収性が向上する観点から、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは5以下である。該比誘電率は、ある態様においては、例えば0.5~10、好ましくは0.8~7、より好ましくは1~5である。
【0047】
誘電体層の比誘電率は、ネットワークアナライザー、空洞共振器などを用いて10GHzにおける比誘電率を空洞共振器摂動法により測定することができる。
【0048】
誘電体層の厚みは、特に制限されないが、例えば50~2000μm、好ましくは100~1000μm、より好ましくは200~800μmである。該厚みは、ある態様においては、例えば200~800μmであり、温度変化環境における耐久性等の観点から、好ましくは300~700μm、より好ましくは400~600μmである。
【0049】
誘電体層の厚みは、Nikon DIGIMICROSTANDMS-11C+Nikon DIGIMICRO MFC-101によって測定することができる。
【0050】
誘電体層のせん断貯蔵弾性率は、自己修復性を特に発現させ易いという観点から、1×104~8×105Paであることが好ましい。該せん断貯蔵弾性率は、より好ましくは
2×104~7×105Pa、さらに好ましくは3×104~6×105Paである。
【0051】
せん断貯蔵弾性率は、以下の方法により測定することができる。
【0052】
動的粘弾性測定装置(ARES-G2(TA Instruments社製)、又はその同等品)を用い、周波数10Hz、温度範囲-100℃~250℃、昇温速度5℃/minにて測定した値である。
【0053】
誘電体層のガラス転移温度は、低温領域においても自己修復性を特に発現させ易いという観点から、-80~0℃であることが好ましい。該ガラス転移温度は、より好ましくは-75~-1℃、さらに好ましくは-70~-2℃である。
【0054】
ガラス転移温度は、以下の方法により測定することができる。
動的粘弾性測定装置(ARES-G2(TA Instruments社製)、又はその同等品)を用い、周波数10Hz、温度範囲-100℃~250℃、昇温速度5℃/minにて測定を行い、ガラス転移温度Tgを算出する。
【0055】
誘電体層の層構成は特に制限されない。誘電体層は、1種単独の誘電体層から構成されるものであってもよいし、2種以上の誘電体層が複数組み合わされたものであってもよい。例えば、粘着剤のみからなる誘電体層、粘着性を有しない誘電体層と粘着剤からなる誘電体層とが積層されてなる誘電体層が挙げられる。後者の場合、自己修復性をより発現させやすいという観点、温度変化環境における耐久性の観点等から、粘着剤からなる誘電体層の厚みは、誘電体層全体の厚み100%に対して、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは99%以上であり、100%未満である。
【0056】
<2-2-1.粘着剤>
粘着剤としては、特に制限されず、例えばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、フッ素系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、耐候性に優れる観点、温度変化環境における耐久性の観点等から、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0057】
アクリル系粘着剤としては、特に制限されるものではないが、自己修復性を発現させやすい点、電波吸収体に適する比誘電率と厚みを両立することができるという観点から、以下のアクリル系粘着剤が好ましい:
炭素数2~14であるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有する(メタ)アクリレート共重合体を含有するアクリル系粘着剤。
【0058】
以下に、該アクリル系粘着剤について詳述する。
【0059】
炭素数が2~14のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(アミル)(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチ(メタ)ルアクリレート、イソオクチ(メタ)ルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(ドデシル(メタ))アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0060】
上記炭素数が2~14のアルキル(メタ)アクリレートの内、ガラス転移温度(Tg)の調整、相溶性等の点から、炭素数が4~10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好適に用いられる。上記炭素数が2~14のアルキル(メタ)アクリレートは単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0061】
なお、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味する。
【0062】
上記(メタ)アクリレート共重合体中における、炭素数が2~14のアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量は、60~99.9重量%であることが好ましく、80~99.9重量%であることがより好ましい。
【0063】
上記(メタ)アクリレート共重合体は、更に極性基含有ビニルモノマーに由来する構成単位を含有することが好ましい。極性基含有ビニルモノマーに由来する構成単位を有することで、共重合体のTgや粘着性等の調整、更には、粘着剤の凝集力や粗面接着性を向上させることができる。上記極性基含有ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン等のスチレン系モノマー;酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のビニル基を含有するカルボン酸;前記ビニル基を有するカルボン酸の無水物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等の水酸基を有するビニルモノマー;(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルラウリロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等の窒素含有ビニルモノマー等が挙げられる。
【0064】
上記極性基含有ビニルモノマーは単独で用いられてもよいし、2種類以上併用されてもよい。
【0065】
上記(メタ)アクリレート共重合体中における極性基含有ビニルモノマーに由来する構成単位の含有量は、得られる粘着剤の柔軟性の観点、剥離力の観点等から、0.1~20重量%であることが好ましい。
【0066】
上記(メタ)アクリレート共重合体は、更に架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有することが好ましい。架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有することで、アクリル系粘着剤のゲル分率の調製が容易となる。架橋性官能基を有するモノマーとしては、多官能(メタ)アクリレート、極性基含有ビニルモノマーの極性基と反応する官能基を複数有する化合物等が挙げられる。このようなモノマーとしては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトシキ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトシキ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化グリセリルトリアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、液状水素化1,2ポリブタジエンアクリレート等が挙げられる。なかでも、分子量が400以上のもの、さらに好ましくは800以上のものを含有することで得られる粘着剤の接着性と凝集力とのバランスに優れる。
【0067】
上記(メタ)アクリレート共重合体中における架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は0.02~5重量部が好ましく、さらには0.05~2重量部が好ましい。
【0068】
アクリル系粘着剤としては、温度変化環境における耐久性、電波吸収体に適する比誘電率と厚みを両立することができるという観点等から、特に好ましくは、構成(1)を備えるアクリル系粘着剤が挙げられ、より好ましくは(1)に加え、(2)~(3)の内の1つ又は2つを備えるアクリル系粘着剤が挙げられる:
(1)炭素数2~14であるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有する(メタ)アクリレート共重合体を含有する。
(2)オレフィン系重合体に由来する構成単位を有する(メタ)アクリレート共重合体を含有する。
(3)平均粒径5~150μmの微粒子を重量比率で0.15~15%含有する。
【0069】
このようなアクリル系粘着剤は、例えば、炭素数2~14であるアルキル(メタ)アクリレート、末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体、平均粒径5~150μmの微粒子等を含む重合性組成物を光重合することによって得ることができる。
【0070】
また、同様の観点から、アクリル系粘着剤として、特に好ましくは(a)炭素数が2~14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、極性基含有ビニルモノマーとを含み、アクリル系モノマーを主成分とするモノマー成分と、末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体と、光重合開始剤とを含有してなる重合性組成物を光重合して得られたアクリル系共重合体を含むアクリル系粘着剤等が挙げられる。
【0071】
上記(メタ)アクリレート共重合体は、オレフィン系重合体に由来する構成単位を含有することが好ましい。
【0072】
上記オレフィン系重合体に由来する構成単位における、ポリオレフィン系重合体の具体例としては、エチレン-ブチレン共重合体、エチレンープロピレン共重合体、エチレン共重合体、ブチレン共重合体等が挙げられる。
【0073】
上記(メタ)アクリレート共重合体中の上記オレフィン系重合体に由来する構成単位の含有量は、0.01~30重量%が好ましく、特に好ましくは、0.1~25重量%さらに好ましくは0.5~20重量%である。上記オレフィン系重合体に由来する構成単位の含有量が上記範囲であることで接着性が一層向上する。また、ゲル分率の調整が容易になる。
【0074】
上記(メタ)アクリレート共重合体が、オレフィン系重合体に由来する構成単位を含有する場合、上記構成単位に由来するモノマーと、末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体とを重合することで合成することができる。
【0075】
末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体としては、末端に他の重合性モノマーと共重合可能な二重結合と、上記ポリオレフィン系重合体を主骨格として有するポリマー構造とを有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0076】
末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体の市販品としては、例えば、クレイトン・ポリマージャパン社製「クレイトン・リキッド・ポリマーL-1251」及び「クレイトン・リキッド・ポリマーL-1253」(主骨格がエチレン-ブチレン共重合体)等が挙げられる。
【0077】
上記(メタ)アクリレート共重合体は、更に、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0078】
上記(メタ)アクリレート共重合体を合成するには、上記構成単位の由来となるモノマーと必要に応じて他の成分、例えば末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体、添加剤等を含有する重合性組成物を重合開始剤の存在下にて、重合させればよい。重合方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、エマルジョン重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。中でも、後述する種々の添加剤の分散性に優れることから光重合が好ましい。
【0079】
上記重合開始剤は特に限定されないが、光重合開始剤が好適に用いられる。光重合開始剤としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシー2-プロピル)ケトン[商品名:ダロキュアー2959、メルク社製]などのケトン系;α-ヒドロキシ-α、α-ジメチル-アセトフェノン[商品名:ダロキュア1173、メルク社製]、メトキシアセトフェン、2,2-ジメトキシー2-フェニルアセトフェン[商品名:イルガキュア651、チバガイギー社製]、2-ヒドロキシー2-シクロヘキシルアセトフェノン[商品名:イルガキュア184、チバガイギー社製]などのアセトフェノン系;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系;その他、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナートなどが挙げられる。
【0080】
これら光重合開始剤の添加量は、上記構成単位の由来となるモノマー成分100重量部に対して、好ましくは0.01~5重量部であり、より好ましくは0.03~1.0重量部である。
【0081】
光開始剤の添加量は、重合転化率の低下を抑制し、得られる重合体のモノマー臭を抑制するという観点から、0.01重量部以上であることが好ましい。また、ラジカル発生量を抑制し、アクリル系共重合体の分子量の低下を防ぎ、良好な凝集力を得るという観点から、5重量部以下であることが好ましい。
【0082】
光重合における光照射に用いられるランプ類としては、特に限定されないが、光の波長が400nm以下に発光分布を有するものが用いられ、具体的には、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウエーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。この中でもケミカルランプは開始剤の活性波長領域の光を効率よく発光すると共に、重合性組成物中の開始剤以外の成分の光吸収が少ないため、内部まで光が透過するので効果的である。
【0083】
上記ランプによる光重合物組成物への光照射強度は目的製品の性能毎に適宜制御されるものであり、一般的に使用されるアセトフェノン基を有する開列型の開始剤を配合した場合、開始剤の光分解に有効な波長領域(開始剤によって異なるが、通常365nm~420nmの光が用いられる)の光強度は0.1~100mW/cm2が好ましい。
【0084】
上記(メタ)アクリレート共重合体を含有するアクリル系粘着剤は、粘着付与樹脂が配合されていてもよい。上記粘着付与樹脂をアクリル系粘着剤に添加する方法としては、重合性組成物を重合した後に、他の添加剤と共に添加してもよいが、予め重合性組成物に添加した後に、光を照射して重合することが好ましい。
【0085】
粘着付与樹脂を重合性組成物に添加して重合する場合、重合速度の低下や、分子量の低下が生じる場合があるので、水添テルペン樹脂、水添ロジン、不均化ロジン樹脂、石油樹脂等の重合阻害性の低い粘着付与樹脂が好適に用いられる。
【0086】
特に、接着力が高くなるため、水添石油樹脂を接着付与樹脂として用いることが望ましい。
【0087】
上記粘着付与樹脂の軟化点は特に限定されないが、凝集力の観点から120℃以上であることが好ましい。
【0088】
粘着付与樹脂の添加量は上記(メタ)アクリレート共重合体100重量部に対して好ましくは3~50重量部であり、更に好ましくは5~40重量部である。粘着付与樹脂の添加量が上記範囲であることで、接着力に優れるものとすることができる。また粘着剤の耐熱性や柔軟性にも優れる。
【0089】
上記(メタ)アクリレート共重合体を含有するアクリル系粘着剤は、好ましくは、接着性を高め、かつ凝集力を高めるために平均粒径が5~150μmの微粒子を含有することが望ましい。上記微粒子は好ましくは、アクリル系粘着剤において均一に分散される。
【0090】
上記微粒子としては、ガラスバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン等の無機質中空粒子、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、フェノール樹脂等からなる有機質中空粒子、ガラスビーズ、シリカビーズ、合成雲母等の無機質微粒子、ポリアクリル酸エチル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の有機質微粒子が挙げられる。
【0091】
上記微粒子は、アクリル系粘着剤中に重量比率で0.15%以上15%以下の割合で含有されることが好ましい。上記微粒子の含有量であることで、接着性がより向上すると共に好適な凝集力の発現を可能とする。より好ましい容積比率は0.2%以上5%未満である。
【0092】
上記微粒子をアクリル系粘着剤に添加する方法としては、重合性組成物を重合した後に、他の添加剤と共に添加しても良いが、より均一に分散し、添加効果を高めるためには、予め重合性組成物に添加した後に、光を照射して重合することが好ましい。
【0093】
上記(メタ)アクリレート共重合体を含有するアクリル系粘着剤は、製造時の重合性組成物の粘度を上げ、微粒子の分散を保持するために、親水性シリカのようなチキソトロピー付与材をさらに含有することが望ましい。
【0094】
上記(メタ)アクリレート共重合体を含有するアクリル系粘着剤には必要に応じて、各種の添加剤が添加されても良い。上記添加剤としては、例えば、可塑剤、軟化剤、顔料、染料などが挙げられる。
【0095】
上記(メタ)アクリレート共重合体を含有するアクリル系粘着剤はゲル分率が40 ~80%であることが好ましい。
上記ゲル分率が上記範囲であることで、粘着剤の凝集力、接着力が向上する。また、本発明の特性である自己修復性がより発現しやすい。さらに、温度変化環境における耐久性を発揮することができる。ゲル分率の下限はより好ましくは50%、さらに好ましくは55%、更により好ましくは60%である。ゲル分率の上限は、より好ましくは75%であり、更に好ましくは70%である。
【0096】
上記ゲル分率は、次のようにして測定することができる。まず、粘着剤の重量Aを測定する。この粘着剤を40℃のテトラヒドロフランに48時間浸漬した後、不溶解分を200メッシュの金網で濾過、室温で2日間風乾し、不溶解分の乾燥重量Bを測定する。下記の式よりゲル分率を算出する。
ゲル分率(%)=(B/A)×100…(1)
A:アクリル系粘着テープの重量。
B:40℃のテトラヒドロフランに48時間浸漬後のアクリル系粘着テープの不溶解分の乾燥重量。
【0097】
<2-2-2.樹脂シート>
樹脂シートは、樹脂を素材として含むシート状のものである限り、特に制限されない。樹脂シートは、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、樹脂以外の成分が含まれていてもよい。その場合、樹脂シート中の樹脂の合計量は、例えば50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、通常100質量%未満である。
【0098】
樹脂としては、特に制限されず、例えばエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル、ウレタン、アクリル、アクリルウレタン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、エポキシ等の合成樹脂や、ポリイソプレンゴム、ポリスチレン・ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン・プロピレンゴムおよびシリコーンゴム等の合成ゴム材料を樹脂成分として用いることが好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上の組合せで使用することができる。
【0099】
<2-3.反射層>
反射層は、電波吸収体において電波の反射層として機能し得るものである限り、特に制限されない。反射層としては、特に制限されないが、例えば金属膜が挙げられる。
【0100】
金属膜は、金属を素材として含む層である限り、特に制限されない。金属膜は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、金属以外の成分が含まれていてもよい。その場合、金属膜中の金属の合計量は、例えば30質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上、非常に好ましくは99質量%以上であり、通常100質量%未満である。
【0101】
金属としては、特に制限されず、例えばアルミニウム、銅、鉄、銀、金、クロム、ニッケル、モリブデン、ガリウム、亜鉛、スズ、ニオブ、インジウム等が挙げられる。また、金属化合物、例えばITO等も、金属膜の素材として使用することができる。これらは1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0102】
反射層の厚みは、特に制限されない。反射層の厚みは、例えば1μm以上500μm以下、好ましくは2μm以上200μm以下、より好ましくは5μm以上100μm以下である。
【0103】
反射層の層構成は特に制限されない。反射層は、1種単独の反射層から構成されるものであってもよいし、2種以上の反射層が複数組み合わされたものであってもよい。
【0104】
<2-4.支持体>
本発明の電波吸収体は、さらに支持体を有することが好ましい。これにより、抵抗膜を保護することができ、電波吸収体としての耐久性を高めることが可能である。支持体は、シート状のものである限り、特に制限されない。支持体としては、特に制限されないが、例えば樹脂基材が挙げられる。
【0105】
樹脂基材は、樹脂を素材として含む基材であって、シート状のものである限り、特に制限されない。樹脂基材は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、樹脂以外の成分が含まれていてもよい。例えば、比誘電率を調整する観点から酸化チタン等が含まれていてもよい。
その場合、樹脂基材中の樹脂の合計量は、例えば80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、通常100質量%未満である。
【0106】
樹脂としては、特に制限されず、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン樹脂、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上の組合せで使用することができる。
【0107】
これらの中でも、生産性や強度の観点から、好ましくはポリエステル系樹脂、より好ましくはポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0108】
支持体の比誘電率は、特に制限されない。支持体の比誘電率は、例えば1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~10、さらに好ましくは1~5である。
【0109】
支持体の比誘電率は、誘電体層の比誘電率と同様にして測定できる。
【0110】
支持体の厚みは、特に制限されない。支持体の厚みは、例えば5μm以上500μm以下、好ましくは10μm以上300μm以下、より好ましくは20μm以上300μm以下である。
【0111】
支持体の層構成は特に制限されない。支持体は、1種単独の支持体から構成されるものであってもよいし、2種以上の支持体が複数組み合わされたものであってもよい。
【0112】
<2-5.層構成>
本発明の電波吸収体における各層は、電波吸収性能を発揮することができる順に配置される。一例として、抵抗膜、誘電体層、及び反射層は、この順に配置される。
【0113】
さらに、本発明の電波吸収体が支持体を有する場合、一例として、支持体、抵抗膜、誘電体層、及び反射層は、この順に配置される。
【0114】
本発明の電波吸収体においては、支持体、抵抗膜、誘電体層、及び反射層以外に、他の層を含むものであってもよい。他の層は、支持体、抵抗膜、誘電体層、及び反射層それぞれの層の、どちらか一方の表面上に配置され得る。
【0115】
<3.製造方法>
本発明の電波吸収体は、その構成に応じて、様々な方法、例えば公知の製造方法に従って又は準じて得ることができる。例えば、支持体上に抵抗膜、誘電体層、及び反射層を順に積層させる工程を含む方法により、得ることができる。
【0116】
積層方法は特に制限されない。
【0117】
抵抗膜は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、パルスレーザーデポジション法等により行うことができる。これらの中でも、膜厚制御性の観点から、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法としては、特に限定されないが、例えば、直流マグネトロンスパッタ、高周波マグネトロンスパッタ及びイオンビームスパッタ等が挙げられる。また、スパッタ装置は、バッチ方式であってもロール・ツー・ロール方式であってもよい。
【0118】
誘電体層や反射層は、例えば誘電体層が有する粘着性を利用して、積層することができる。
【0119】
<4.λ/4型電波吸収体用部材>
本発明は、その一態様において、抵抗膜及び誘電体層を有し、且つ前記誘電体層が自己修復性[直径0.5mmの針を抵抗膜の誘電体層側とは反対の表面側から電波吸収体用部材に垂直に差し込み電波吸収体用部材の裏面まで貫通させ、貫通から10秒後に抜き取り、室温にて7日間静置し、静置後、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK8710、キーエンス社製、またはその同等品)により、電波吸収体用部材の孔を開けた側の互いに5μm離れた任意の1000点における孔の深さを測定し、その平均値(孔の平均深さ)から、電波吸収体用部材における誘電体層以外の層の厚みを引いた値が、誘電体層の厚み(誘電体層が複数の層からなる場合その厚みの和)の4/5よりも小さい、という性質]を有する、λ/4型電波吸収体用部材、に関する。また、本発明は、その一態様において、支持体、抵抗膜、及びゲル分率が40~80%の粘着剤を含む誘電体層を含む、λ/4型電波吸収体用部材、に関する。λ/4型電波吸収体用部材は、被着体に接するように配置することによりλ/4型電波吸収体用を形成するための部材である。抵抗膜、誘電体層、自己修復性、その他の構成については、本発明のλ/4型電波吸収体に関する説明と同様である。
【0120】
<5.用途>
本発明の電波吸収体は、自動車、道路、人の相互間で情報通信を行う高度道路交通システム(ITS)や自動車衝突防止システムに用いるミリ波レーダーにおいて、電波干渉抑制やノイズ低減の目的で用いることができる。この観点から、本発明は、その一態様において、本発明の電波吸収体を含む、ミリ波レーダーに関する。
【0121】
また、その他の用途として、例えば光トランシーバや、次世代移動通信システム(5G)、近距離無線転送技術等における電波対策部材としても利用できる。
【0122】
本発明の電波吸収体が対象とする電波の周波数は、例えば1~150GHz、好ましくは10~100GHzであり、より好ましくは50~90GHZ、さらに好ましくは65~90GHzである。
【実施例】
【0123】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0124】
(1)粘着剤の製造
(参考例1)
2-エチルヘキシルアクリレート85重量部、ブチルアクリレート15重量部、アクリル酸5重量部、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(IRGACURE(登録商標)651、BASF)0.15重量部、ヘキサンジオールジアクリレート0.15重量部を均一に混合して作成した。この重合性組成物に窒素をパージして溶存酸素を除去した。ついで、離型処理した50μm厚のPETフィルムの離型処理面上に塗工し、さらに離型処理した50μm厚のPETフィルムの離型処理面が上記塗工により形成された粘着剤層に面するように、かつ粘着剤層の厚みが0.5mmとなるように離型処理したPETフィルムに重ね合わせて、被覆側のPETフィルムにおける紫外線照射強度が5mW/cm2となるようにケミカルランプのランプ強度を調整し、15分間紫外線を照射し、粘着剤層の厚さが0.5mmの粘着テープを得た。
【0125】
(参考例2)
2-エチルヘキシルアクリレート85重量部、ブチルアクリレール15重量部、アクリル酸15重量部、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(IRGACURE(登録商標)651、BASF)0.15重量部、ヘキサンジオールジアクリレート0.15重量部を均一に混合して作成した。この重合性組成物に窒素をパージして溶存酸素を除去した。ついで、離型処理した50μm厚のPETフィルムの離型処理面上に塗工し、さらに離型処理した50μm厚のPETフィルムの離型処理面が上記塗工により形成された粘着剤層に面するように、かつ粘着剤層の厚みが0.5mmとなるように離型処理したPETフィルムに重ね合わせて、被覆側のPETフィルムにおける紫外線照射強度が5mW/cm2となるようにケミカルランプのランプ強度を調整し、15分間紫外線を照射し、粘着剤層の厚さが0.5mmの粘着テープを得た。
【0126】
(参考例3)
温度計、攪拌機、冷却管、紫外線照射装置及び粘度計を備えた反応器に、2-エチルヘキシルアクリレートを45質量部、イソボルニルアクリレートを30質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレートを25質量部、粘着付与樹脂(アルコンP-140、荒川化学社製)を30重量部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド0.05質量部、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(IRGACURE(登録商標)651、BASF)0.05質量部加え、窒素ガスをパージして溶存酸素を除去した。粘度(BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度25℃)が約4Pa・sになるまで反応器内に紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合した粘着剤組成物を作製した。得られた粘着剤組成物の溶液に光重合開始剤(IRGACURE(登録商標)651、BASF社製)を0.05質量部加えて攪拌した。得られた溶液を離型ポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面上に塗工し、さらに離型ポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面が上記塗工により形成された粘着剤層に面するように、かつ粘着剤層の厚みが0.5mmとなるように離型ポリエチレンテレフタレートフィルムに重ね合わせて、ケミカルランプにて照度2mW/cm2の紫外線を360秒間照射して粘着剤層の厚さが0.5mmの粘着テープを得た。
【0127】
(参考例4)
温度計、攪拌機、冷却管、紫外線照射装置及び粘度計を備えた反応器に、2-エチルヘキシルアクリレートを45質量部、イソボルニルアクリレートを30質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレートを25質量部、粘着付与樹脂(アルコンP-140、荒川化学社製)を40重量部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド0.05質量部、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(IRGACURE(登録商標)651、BASF)0.05質量部加え、窒素ガスをパージして溶存酸素を除去した。粘度(BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度25℃)が約4Pa・sになるまで反応器内に紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合した粘着剤組成物を作製した。得られた粘着剤組成物の溶液に光重合開始剤(IRGACURE(登録商標)651、BASF社製)を0.05質量部加えて攪拌した。得られた溶液を離型ポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面上に塗工し、さらに離型ポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面が上記塗工により形成された粘着剤層に面するように、かつ粘着剤層の厚みが0.5mmとなるように離型ポリエチレンテレフタレートフィルムに重ね合わせて、ケミカルランプにて照度2mW/cm2の紫外線を360秒間照射して粘着剤層の厚さが0.5mmの粘着テープを得た。
【0128】
(2)λ/4型電波吸収体の製造1
(実施例1)
支持体として、厚み125μmの酸化チタンを練りこんだポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(比誘電率3.4)を用意した。
【0129】
上記PETフィルム上に表面抵抗値331Ω/□の抵抗膜(=バリア層1/抵抗層/バリア層2)を次の通りに形成した。上記PETフィルム上にケイ素ターゲットを使い、出力1.0kW、Arガス流量100sccm及び酸素ガス流量10sccmを導入して圧力0.12Paの条件でDCパルススパッタリングを行うことにより、二酸化ケイ素からなるバリア層を形成した(バリア層1:厚さ3.5nm)。次いで、このバリア層上にDCパルススパッタリングにより、表面抵抗値331Ω/□の抵抗層を形成した。スパッタリングはハステロイC276をターゲットに用い、出力0.4kW、Arガス流量100sccmで導入して圧力0.12Paとなるように調整して行った。次いで、抵抗層上にケイ素ターゲットを使い、出力1.0kW、Arガス流量100sccm及び酸素ガス流量10sccmを導入して圧力0.12Paの条件でDCパルススパッタリングを行うことにより、二酸化ケイ素からなるバリア層を形成した(バリア層2:厚さ2.2nm)。
【0130】
次いで、形成した抵抗膜上に、粘着剤(参考例1)からなる誘電体(厚み0.4mm)を積層し、その上に厚さ10μmのアルミニウムからなる反射層を積層してλ/4型電波吸収体を得た。
【0131】
(実施例2~3及び比較例2)
抵抗膜の表面抵抗値を変更し、且つ粘着剤を変更する(実施例2:参考例2、実施例3:参考例3、比較例2:参考例4、)以外は、実施例1と同様にして、λ/4型電波吸収体を得た。
【0132】
(比較例1)
実施例1と同様にして、PETフィルム上に表面抵抗値340Ω/□の抵抗膜(=抵抗層)を形成した。次いで、形成した抵抗膜上に粘着テープ(アクリル両面粘着テープ、厚み30μm、比誘電率2.6)を介して厚み0.4mm且つ比誘電率のポリカーボネートからなる誘電体を積層し、更に誘電体上に同じ粘着テープを介して厚さ10μmのアルミニウムからなる反射層を積層してλ/4型電波吸収体を得た。
(3)λ/4型電波吸収体の製造2
【0133】
(実施例4~12、比較例3)
(3-1)誘電体層材料の調製
下記の表1に記載の配合(A~I)に従い、重合性組成物をディゾルバーにて均一に混合して作製した。この重合性組成物に窒素をパージして溶存酸素を除去した。ついで、離型処理した50μm厚のPETフィルム上に厚さ0.5mmのスペーサーを設置し上記重合性組成物を離型処理PET上に展開したのち、このPETフィルムを折り曲げて、離型処理面が重合性組成物に接するように被覆した。
【0134】
この状態で被覆側のPETフィルムにおける紫外線照射強度が5mW/cm2となるようにケミカルランプのランプ強度を調整し、15分間紫外線を照射し、粘着剤層の厚さが500μmの粘着テープA~Iを得た。
【0135】
上記で得られた粘着テープを用いて、以下のようにしてゲル分率を測定した。結果を表1に示す。
【0136】
先ず、ポリエチレンテレフタレート(PET)製離型フィルムを剥離した粘着テープの重量Aを測定した。この粘着テープを40℃のテトラヒドロフランに48時間浸漬した後、不溶解分を200メッシュの金網で濾過、室温で2日間風乾し、不溶解分の乾燥重量Bを測定した。下記の式よりゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=(B/A)×100…(1)
A:アクリル系粘着テープの重量。
B:40℃のテトラヒドロフランに48時間浸漬後のアクリル系粘着テープの不溶解分の乾燥重量。
【0137】
【0138】
エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート:日本化薬社製、商品名「SR502」数平均分子量692
液状水素化1,2ポリブタジエンアクリレート:日本曹達社製、商品名「TEAI-1000」、数平均分子量2250
末端に重合性結合を有するオレフィン重合体:クレイトン・ポリマージャパン社製、商品名「HPVM-L1253」
ガラスバルーン:東海工業社製、商品名「CEL-STAR・Z-20」、平均粒径67μm、真密度0.17~0.23g/m2
2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン:チバガイギー社製、商品名「イルガキュア651」
親水性シリカ:日本アエロジル社製、商品名「アエロジルA-200」
粘着付与樹脂:水添石油樹脂、軟化点100℃品、荒川化学社製、商品名「アルコンP-100」。
【0139】
(3-2)λ/4型電波吸収体の製造
(実施例4)
支持体として、厚み125μmのポリエチレンテレフタレート(白色PET)フィルム(比誘電率3.4)(帝人フィルムソリューション社製、U2L92W)を用意した。
【0140】
上記PETフィルム上に抵抗膜(バリア層1/抵抗層/バリア層2)を次の通りに形成した。まず、DCパルススパッタリングによりArとO2の比率を1:1に調整したがガスを導入して、0.2Paになるように調整し、SiO2層(バリア層1:厚さ1nm)を成膜した。続いて、バリア層1上に、DCパルススパッタリングにより厚み10nm且つ表面抵抗値340Ω/□の抵抗層を形成した。スパッタリングはハステロイC-276をターゲットに用い、出力0.4kW、Arガス流量100sccmで導入して圧力0.12Paとなるように調整して行った。最後に、バリア層1と同様にしてバリア層2(厚さ1nm)を形成した。
【0141】
次いで、形成した抵抗膜上に厚み500μmの粘着テープA(誘電率2.5)からなる誘電体を積層し、更に誘電体上に厚さ30μmの銅からなる反射層を積層して、λ/4型電波吸収体を得た。
【0142】
(実施例5~12)
表1に記載の通りに誘電体層の種類を変更する以外は実施例4と同様にしてλ/4型電波吸収体を得た。
【0143】
(比較例3)
抵抗膜上に粘着テープ(アクリル両面粘着テープ、厚み30μm、比誘電率3.0)を介して厚み400μm且つ比誘電率2.6のポリカーボネートからなる誘電体を積層し、更に誘電体上に上記粘着テープを介して厚さ30μmの銅からなる反射層を積層する以外は、実施例4と同様にしてλ/4型電波吸収体を得た。
【0144】
(4)誘電体層のせん断貯蔵弾性率の測定
参考例とポリカーボネートのせん断貯蔵弾性率を動的粘弾性測定装置(ARES-G2(TA Instruments社製)、又はその同等品)を用い、周波数10Hz、温度範囲-100℃~250℃、昇温速度5℃/minにて測定した。
【0145】
(5)誘電体層のガラス転移温度の測定
動的粘弾性測定装置(ARES-G2(TA Instruments社製)、又はその同等品)を用い、周波数10Hz、温度範囲-100℃~250℃、昇温速度5℃/minにて測定を行い、ガラス転移温度Tgを算出した。
【0146】
(6)誘電体層の自己修復性の測定
直径0.5mmの針を電波吸収体の支持体の誘電体に面する側とは反対の表面から吸収体に垂直に差し込み電波吸収体の裏面まで貫通させた。貫通から10秒後に抜き取り、室温にて7日間静置した。静置後、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK8710、キーエンス社製、またはその同等品)により、電波吸収体の孔を開けた側の互いに5μm離れた任意の1000点における孔の深さを測定し、その平均値を孔の平均深さとした。孔の平均深さから、支持体の厚みと抵抗膜の厚みとを引いた値が、誘電体層の厚み(誘電体層が複数の層からなる場合その厚みの和)の4/5よりも小さければ、「自己修復性がある」と判断する。
【0147】
(7)電波吸収性の評価及び低温折り曲げ耐性試験後の電波吸収性
ネットワークアナライザー MS4647B(アンリツ社製)、フリースペース材料測定置 BD1-26.A(キーコム社製)を用いて電波吸収測定装置を構成した。この電波吸収測定装置を用いて、得られたλ/4型電波吸収体の55~90GHz帯での電波吸収量をJIS R1679に基づいて測定し、低温折り曲げ耐性試験前の電波吸収性を評価した。なお、λ/4型電波吸収体は、電波入射方向が垂直入射かつ基材側からの入射となるようにセットした。
【0148】
その後、電波吸収体を曲率半径2mmに折り曲げた状態で-18℃で24時間保持した。折り曲げ解放後、25℃下に1時間静置したのち、低温折り曲げ耐性試験前の電波吸収性評価と同様にして、電波吸収性を評価した。
【0149】
得られた吸収量について、以下の評価基準にて電波吸収性能を評価した。
◎:測定範囲(55~90GHz)における電波吸収量の最大値が25dB以上
○:測定範囲における電波吸収量の最大値が25dB未満、20dB以上
×:測定範囲における電波吸収量の最大値が20dB未満。
【0150】
(8)ヒートサイクル(HC)試験、並びに該試験前後の電波吸収性能及び表面抵抗の測定
実施例4~12及び比較例3については、更にヒートサイクル(HC)試験を行った。ヒートサイクル試験(HC試験)の条件は-40℃にて30分放置し、次に125℃に昇温して30分放置を1セットとして、1000セット実施した。
【0151】
(8-1)HC試験前後の表面抵抗の測定
表面抵抗の測定は、表面抵抗計(MITSUBISHI CHEMICAL ANALYTECH社製、商品名「Loresta-EP」)を用いて、4端子法により測定した。
【0152】
(8-2)HC試験前後の電波吸収性能の測定
電波吸収性能は、ネットワークアナライザー MS4647B(アンリツ社製)、フリースペース材料測定置 BD1-26.A(キーコム社製)を用いて電波吸収測定装置を構成して測定した。この電波吸収測定装置を用いて、λ/4型電波吸収体の55~90GHz帯での電波吸収量をJIS R1679に基づいて測定し、79GHzにおける電波吸収量(dB)と、最大電波吸収量を示す周波数(ピーク位置)とを測定した。なお、λ/4型電波吸収体は、電波入射方向が垂直かつ、基材側からの入射となるようにセットした。
【0153】
HC試験後の電波吸収性能と、ピーク位置のずれについて以下の基準で評価した。
[HC試験後の電波吸収性能]
○:HC試験後の79GHzにおける電波吸収量が20dB以上
×:HC試験後の79GHzにおける電波吸収量20dB未満。
[ピーク位置のずれ]
◎:HC試験前後でのピーク位置のズレが2GHz未満
○:HC試験前後でのピーク位置のズレが2GHz以上~5GHz未満
×:HC試験前後でのピーク位置のズレが5GHz以上。
【0154】
(8-3)積層の剥がれの有無
ヒートサイクル試験後の電波吸収体を目視にて確認し、積層体に浮きや剥がれが発生していない場合を「無」、発生していた場合を「有」として評価した。
【0155】
(9)結果
結果を表2及び表3に示す。
【0156】
【0157】
【符号の説明】
【0158】
1 支持体
2 抵抗膜
3 誘電体層
4 反射層
5 粘着剤層
6 筐体