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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】固体撮像装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20240430BHJP
   H04N 25/70 20230101ALI20240430BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H01L27/146 F
H01L27/146 D
H04N25/70
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021511378
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2020011455
(87)【国際公開番号】W WO2020203222
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2019067588
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川原 雄基
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/212175(WO,A1)
【文献】米国特許第10204950(US,B1)
【文献】国際公開第2018/174090(WO,A1)
【文献】特開2019-033136(JP,A)
【文献】特開2018-201005(JP,A)
【文献】特開2018-088488(JP,A)
【文献】国際公開第2017/187957(WO,A1)
【文献】特開2012-178457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 25/70
H01L 31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面に設けられた格子状の第1トレンチと、前記第1トレンチの底部に沿って設けられた第2トレンチとを備える第1半導体基板と、
前記第1半導体基板に設けられた複数の光電変換素子と、
を備え、
前記光電変換素子それぞれは、
前記第1半導体基板における前記第1トレンチ及び前記第2トレンチで区画された素子領域内に設けられ、入射光を光電変換して電荷を発生させる光電変換領域と、
前記素子領域内において前記光電変換領域を囲む第1半導体領域と、
前記第1トレンチの底部で前記第1半導体領域と接触する第1コンタクトと、
前記第1トレンチ内で前記第1コンタクトと接触する第1電極と、
前記素子領域内であって前記第1半導体領域と接する領域に設けられ、前記第1半導体領域と同じ第1導電型を備える第2半導体領域と、
前記素子領域内における前記第2半導体領域と接する領域であって前記第2半導体領域と前記第1面との間に設けられ、前記第1導電型と反対の第2導電型を備える第3半導体領域と、
前記第3半導体領域と接するように前記第1面に設けられた第2コンタクトと、
前記第2コンタクトと接する第2電極と、
を備え、
前記第1コンタクトの前記第1面からの高さは、前記第3半導体領域の前記第1面からの高さと異なる
固体撮像装置。
【請求項2】
前記第1コンタクトの前記第1面からの前記高さは、前記第3半導体領域の前記第1面からの前記高さよりも高い請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記第1コンタクトと前記第1電極とは、オーミック接触を形成する請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記第1コンタクトと前記第1電極との接触部分に設けられたシリサイド層をさらに備える請求項3に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記第1コンタクトは、前記第1半導体領域の外周を囲むように前記第1半導体領域と接触する請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記第1コンタクトは、前記第1半導体領域の外周の一部で当該第1半導体領域と接触する請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記第2トレンチの内部に設けられた遮光膜をさらに備える請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項8】
前記遮光膜は、前記第1電極と同じ材料である請求項7に記載の固体撮像装置。
【請求項9】
前記遮光膜は、前記第1半導体領域と接触する請求項7に記載の固体撮像装置。
【請求項10】
前記遮光膜と前記第1半導体領域との間に設けられた絶縁膜をさらに備える請求項7に記載の固体撮像装置。
【請求項11】
前記第2トレンチは、前記第1トレンチの底面から前記第1半導体基板における前記第1面とは反対側の第2面まで達し、
前記遮光膜は、前記第1トレンチの前記底面から前記第1半導体基板の前記第2面まで達する
請求項7に記載の固体撮像装置。
【請求項12】
前記複数の光電変換素子の前記第1電極に対して一対一に接続された複数の配線をさらに備える請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項13】
前記複数の光電変換素子のうちの一部の光電変換素子の前記第1電極に対して接続された配線をさらに備える請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項14】
前記複数の光電変換素子のうち、最外周に位置する光電変換素子の前記第1電極に対して接続された配線をさらに備える請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項15】
前記第1半導体基板における前記第1面とは反対の第2面側に前記素子領域ごとに設けられ、入射光を前記光電変換領域に集光するオンチップレンズをさらに備える請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項16】
前記第1半導体基板における前記第1面とは反対の第2面側に前記素子領域ごとに設けられ、特定の波長を透過するカラーフィルタをさらに備える請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項17】
前記光電変換素子それぞれの前記第2電極に接続され、前記光電変換素子それぞれで発生した電荷を読み出す読出し回路をさらに備える請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項18】
前記読出し回路は、前記第1半導体基板とは異なる第2半導体基板に設けられ、
前記第1半導体基板と前記第2半導体基板とは、貼り合わされている
請求項17に記載の固体撮像装置。
【請求項19】
固体撮像装置と、
入射光を前記固体撮像装置の受光面に結像する光学系と、
前記固体撮像装置を制御するプロセッサと、
を備え、
前記固体撮像装置は、
第1面に設けられた格子状の第1トレンチと、前記第1トレンチの底部に沿って設けられた第2トレンチとを備える第1半導体基板と、
前記第1半導体基板に設けられた複数の光電変換素子と、
を備え、
前記光電変換素子それぞれは、
前記第1半導体基板における前記第1トレンチ及び前記第2トレンチで区画された素子領域内に設けられ、入射光を光電変換して電荷を発生させる光電変換領域と、
前記素子領域内において前記光電変換領域を囲む第1半導体領域と、
前記第1トレンチの底部で前記第1半導体領域と接触する第1コンタクトと、
前記第1トレンチ内で前記第1コンタクトと接触する第1電極と、
前記素子領域内であって前記第1半導体領域と接する領域に設けられ、前記第1半導体領域と同じ第1導電型を備える第2半導体領域と、
前記素子領域内における前記第2半導体領域と接する領域であって前記第2半導体領域と前記第1面との間に設けられ、前記第1導電型と反対の第2導電型を備える第3半導体領域と、
前記第3半導体領域と接するように前記第1面に設けられた第2コンタクトと、
前記第2コンタクトと接する第2電極と、
を備え、
前記第1コンタクトの前記第1面からの高さは、前記第3半導体領域の前記第1面からの高さと異なる
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体撮像装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光電変換により発生した電荷をなだれ増倍(アバランシェ増幅ともいう)によって増幅して電気信号として出力するSPAD(Single Photon Avalanche Diode)が開発されている。アバランシェ増幅とは、PN接合の不純物拡散領域において電界により加速された電子が格子原子と衝突してその結合手を切り、これにより新たに発生した電子がさらに別の格子原子と衝突してその結合子を切ることを繰り返すことで電流が増倍されていく現象である。
【0003】
このようなSPADは、発光部から出射した光が物体で反射して帰ってくるまでの時間から物体までの距離を測定する測距装置や、入射光の光量を電気信号に変換する固体撮像装置等に応用することが可能である。
【0004】
アバランシェ増幅によって生じる大きな電流をSPAD画素内から排出するためには、低抵抗且つオーミック接触のコンタクトを形成することが望ましい。半導体基板に形成された不純物拡散領域に対して低抵抗且つオーミック接触のコンタクトを形成する方法としては、接触部に高濃度不純物領域を形成することが一般的に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-41746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、アバランシェ増幅を発生させるほどの電界強度を得るには、PN接合に逆バイアス方向の高電圧を印加する必要があるが、PN接合領域からコンタクトまでの距離が近いと、これらの間に強い電界が形成されてトンネル効果が発生してしまう。このようなトンネル効果が発生すると、光電変換により発生した電子-正孔対がトンネル電流によってすぐさま再結合してしまうため、アバランシェ増幅を発生させることができないという課題が発生する。
【0007】
また、トンネル効果の発生を回避するためには、2つのコンタクト間の距離を広げる方法が考えられるが、その場合、画素サイズが大きくなり、解像度が低下してしまうという課題が発生する。
【0008】
そこで本開示では、解像度の低下を抑制しつつ安定してアバランシェ増幅を発生させることが可能な固体撮像装置及び電子機器を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本開示に係る一形態の固体撮像装置は、第1面に設けられた格子状の第1トレンチと、前記第1トレンチの底部に沿って設けられた第2トレンチとを備える第1半導体基板と、前記第1半導体基板に設けられた複数の光電変換素子とを備え、前記光電変換素子それぞれは、前記第1半導体基板における前記第1トレンチ及び前記第2トレンチで区画された素子領域内に設けられ、入射光を光電変換して電荷を発生させる光電変換領域と、前記素子領域内において前記光電変換領域を囲む第1半導体領域と、前記第1トレンチの底部で前記第1半導体領域と接触する第1コンタクトと、前記第1トレンチ内で前記第1コンタクトと接触する第1電極と、前記素子領域内であって前記第1半導体領域と接する領域に設けられ、前記第1半導体領域と同じ第1導電型を備える第2半導体領域と、前記素子領域内における前記第2半導体領域と接する領域であって前記第2半導体領域と前記第1面との間に設けられ、前記第1導電型と反対の第2導電型を備える第3半導体領域と、前記第3半導体領域と接するように前記第1面に設けられた第2コンタクトと、前記第2コンタクトと接する第2電極とを備え、前記第1コンタクトの前記第1面からの高さは、前記第3半導体領域の前記第1面からの高さと異なる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る固体撮像装置を搭載した電子機器の概略構成例を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係るイメージセンサの概略構成例を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態に係るSPAD画素の概略構成例を示す回路図である。
図4】第1の実施形態に係るカラーフィルタのレイアウト例を示す図である。
図5】第1の実施形態に係るイメージセンサの積層構造例を示す図である。
図6】第1の実施形態に係るSPAD画素の光入射面と垂直な面の断面構造例を示す垂直断面図である。
図7図6におけるA-A面の断面構造例を示す水平断面図である。
図8】第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を示すプロセス断面図である(その1)。
図9】第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を示すプロセス断面図である(その2)。
図10】第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を示すプロセス断面図である(その3)。
図11】第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を示すプロセス断面図である(その4)。
図12】第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を示すプロセス断面図である(その5)。
図13】第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を示すプロセス断面図である(その6)。
図14】第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を示すプロセス断面図である(その7)。
図15】第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を示すプロセス断面図である(その8)。
図16】第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を示すプロセス断面図である(その9)。
図17】第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を示すプロセス断面図である(その10)。
図18】第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を示すプロセス断面図である(その11)。
図19】第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を示すプロセス断面図である(その12)。
図20】第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を示すプロセス断面図である(その13)。
図21】第1の実施形態の第1の変形例に係るSPAD画素の光入射面と垂直な面の断面構造例を示す垂直断面図である。
図22】第1の実施形態の第2の変形例に係るSPAD画素の光入射面と並行な面の断面構造例を示す水平断面図である。
図23】第1の実施形態の第3の変形例に係るSPAD画素の光入射面と垂直な面の断面構造例を示す垂直断面図である。
図24】第1の実施形態の第4の変形例に係るSPAD画素の光入射面と垂直な面の断面構造例を示す垂直断面図である。
図25】第1の実施形態に係るアノードに対する接続配線の一例を示す図である。
図26】第1の実施形態の第5の変形例に係るアノードに対する接続配線の一例を示す図である。
図27】第1の実施形態の第5の変形例に係るアノードに対する接続配線の他の一例を示す図である。
図28】第1の実施形態の第5の変形例に係るアノードに対する接続配線のさらに他の一例を示す図である。
図29】第2の実施形態に係るSPAD画素の光入射面と垂直な面の断面構造例を示す垂直断面図である。
図30】第3の実施形態に係るSPAD画素の光入射面と垂直な面の断面構造例を示す垂直断面図である。
図31】第4の実施形態に係るSPAD画素の光入射面と垂直な面の断面構造例を示す垂直断面図である。
図32】第5の実施形態に係るSPAD画素の光入射面と垂直な面の断面構造例を示す垂直断面図である。
図33】第6の実施形態に係るSPAF画素の平面レイアウト例を示す平面図である。
図34】第6の実施形態に係るSPAD画素の光入射面と垂直な面の断面構造例を示す垂直断面図である。
図35】第7の実施形態に係るSPAD画素の光入射面と垂直な面の断面構造例を示す垂直断面図である。
図36】第8の実施形態に係るSPAD画素の光入射面と垂直な面の断面構造例を示す垂直断面図である。
図37】本技術を適用した固体撮像素子を利用した撮像装置および電子機器の構成を説明する図である。
図38】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図39】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
図40】内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図41】カメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の一実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0012】
また、以下に示す項目順序に従って本開示を説明する。
1.第1の実施形態
1.1 電子機器
1.2 固体撮像装置
1.3 SPAD画素
1.4 SPAD画素の概略動作例
1.5 カラーフィルタのレイアウト例
1.6 固体撮像装置の積層構造例
1.7 SPAD画素の断面構造例
1.8 アノードコンタクトとカソードコンタクト及び/又はN+型半導体領域との位置関係
1.9 製造方法
1.10 作用・効果
1.11 変形例
1.11.1 第1の変形例
1.11.2 第2の変形例
1.11.3 第3の変形例
1.11.4 第4の変形例
1.11.5 第5の変形例
2.第2の実施形態
3.第3の実施形態
4.第4の実施形態
5.第5の実施形態
6.第6の実施形態
7.第7の実施形態
8.第8の実施形態
9.電子機器への適用例
10.移動体への応用例
11.内視鏡手術システムへの応用例
【0013】
1.第1の実施形態
まず、第1の実施形態に係る固体撮像装置及び電子機器について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
1.1 電子機器
図1は、第1の実施形態に係る固体撮像装置を搭載した電子機器の概略構成例を示すブロック図である。図1に示すように、電子機器1は、例えば、撮像レンズ30と、固体撮像装置10と、記憶部40と、プロセッサ50とを備える。
【0015】
撮像レンズ30は、入射光を集光してその像を固体撮像装置10の受光面に結像する光学系の一例である。受光面とは、固体撮像装置10における光電変換素子が配列する面であってよい。固体撮像装置10は、入射光を光電変換して画像データを生成する。また、固体撮像装置10は、生成した画像データに対し、ノイズ除去やホワイトバランス調整等の所定の信号処理を実行する。
【0016】
記憶部40は、例えば、フラッシュメモリやDRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等で構成され、固体撮像装置10から入力された画像データ等を記録する。
【0017】
プロセッサ50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等を用いて構成され、オペレーティングシステムや各種アプリケーションソフトウエア等を実行するアプリケーションプロセッサや、GPU(Graphics Processing Unit)やベースバンドプロセッサなどが含まれ得る。プロセッサ50は、固体撮像装置10から入力された画像データや記憶部40から読み出した画像データ等に対し、必要に応じた種々処理を実行したり、ユーザへの表示を実行したり、所定のネットワークを介して外部へ送信したりする。
【0018】
1.2 固体撮像装置
図2は、第1の実施形態に係るCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)型の固体撮像装置(以下、単にイメージセンサという)の概略構成例を示すブロック図である。ここで、CMOS型のイメージセンサとは、CMOSプロセスを応用して、または、部分的に使用して作成されたイメージセンサである。なお、本実施形態では、半導体基板における素子形成面とは反対側の面が光入射面である、いわゆる裏面照射型のイメージセンサ10を例示するが、裏面照射型に限定されず、素子形成面が光入射面である、いわゆる表面照射型とすることも可能である。
【0019】
図2に示すように、イメージセンサ10は、SPADアレイ部11と、タイミング制御回路15と、駆動回路12と、出力回路13とを備える。
【0020】
SPADアレイ部11は、行列状に配列する複数のSPAD画素20を備える。複数のSPAD画素20に対しては、列ごとに画素駆動線LD(図面中の上下方向)が接続され、行ごとに出力信号線LS(図面中の左右方向)が接続される。画素駆動線LDの一端は、駆動回路12の各列に対応した出力端に接続され、出力信号線LSの一端は、出力回路13の各行に対応した入力端に接続される。
【0021】
駆動回路12は、シフトレジスタやアドレスデコーダなどを含み、SPADアレイ部11の各SPAD画素20を、全画素同時や列単位等で駆動する。そこで、駆動回路12は、少なくとも、SPADアレイ部11内の選択列における各SPAD画素20に、後述するクエンチ電圧V_QCHを印加する回路と、選択列における各SPAD画素20に、後述する選択制御電圧V_SELを印加する回路とを含む。そして、駆動回路12は、読出し対象の列に対応する画素駆動線LDに選択制御電圧V_SELを印加することで、フォトンの入射を検出するために用いるSPAD画素20を列単位で選択する。
【0022】
駆動回路12によって選択走査された列の各SPAD画素20から出力される信号(検出信号という)V_OUTは、出力信号線LSの各々を通して出力回路13に入力される。出力回路13は、各SPAD画素20から入力された検出信号V_OUTを画素信号として、外部の記憶部40又はプロセッサ50へ出力する。
【0023】
タイミング制御回路15は、各種のタイミング信号を生成するタイミングジェネレータ等を含み、タイミングジェネレータで生成された各種のタイミング信号を基に、駆動回路12及び出力回路13を制御する。
【0024】
1.3 SPAD画素
図3は、第1の実施形態に係るSPAD画素の概略構成例を示す回路図である。図3に示すように、SPAD画素20は、受光素子としてのフォトダイオード21と、フォトダイオード21にフォトンが入射したことを検出する読出し回路22とを備える。フォトダイオード21は、そのアノードとカソードとの間に降伏電圧(ブレークダウン電圧)以上の逆バイアス電圧V_SPADが印加されている状態でフォトンが入射すると、アバランシェ電流を発生する。
【0025】
読出し回路22は、クエンチ抵抗23と、デジタル変換器25と、インバータ26と、バッファ27と、選択トランジスタ24とを備える。クエンチ抵抗23は、例えば、N型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor。以下、NMOSトランジスタという)で構成され、そのドレインがフォトダイオード21のアノードに接続され、そのソースが選択トランジスタ24を介して接地されている。また、クエンチ抵抗23を構成するNMOSトランジスタのゲートには、当該NMOSトランジスタをクエンチ抵抗として作用させるために予め設定されているクエンチ電圧V_QCHが、駆動回路12から画素駆動線LDを介して印加される。
【0026】
本実施形態において、フォトダイオード21はSPADである。SPADは、そのアノードとカソードとの間に降伏電圧(ブレークダウン電圧)以上の逆バイアス電圧が印加されるとガイガーモードで動作するアバランシェフォトダイオードであり、1つのフォトンの入射を検出可能である。
【0027】
デジタル変換器25は、抵抗251とNMOSトランジスタ252とを備える。NMOSトランジスタ252は、そのドレインが抵抗251を介して電源電圧VDDに接続され、そのソースが接地されている。また、NMOSトランジスタ252のゲートには、フォトダイオード21のアノードとクエンチ抵抗23との接続点N1の電圧が印加される。
【0028】
インバータ26は、P型のMOSFET(以下、PMOSトランジスタという)261とNMOSトランジスタ262とを備える。PMOSトランジスタ261は、そのドレインが電源電圧VDDに接続され、そのソースがNMOSトランジスタ262のドレインに接続されている。NMOSトランジスタ262は、そのドレインがPMOSトランジスタ261のソースに接続され、そのソースが接地されている。PMOSトランジスタ261のゲート及びNMOSトランジスタ262のゲートには、それぞれ抵抗251とNMOSトランジスタ252のドレインとの接続点N2の電圧が印加される。インバータ26の出力は、バッファ27に入力される。
【0029】
バッファ27は、インピーダンス変換のための回路であり、インバータ26から出力信号を入力すると、その入力した出力信号をインピーダンス変換し、検出信号V_OUTとして出力する。
【0030】
選択トランジスタ24は、例えば、NMOSトランジスタであり、そのドレインがクエンチ抵抗23を構成するNMOSトランジスタのソースに接続され、そのソースが接地されている。選択トランジスタ24は、駆動回路12に接続されており、選択トランジスタ24のゲートに駆動回路12からの選択制御電圧V_SELが画素駆動線LDを介して印加されると、オフ状態からオン状態に変化する。
【0031】
1.4 SPAD画素の概略動作例
図3に例示した読出し回路22は、例えば、以下のように動作する。すなわち、まず、駆動回路12から選択トランジスタ24に選択制御電圧V_SELが印加されて選択トランジスタ24がオン状態となっている期間、フォトダイオード21には降伏電圧(ブレークダウン電圧)以上の逆バイアス電圧V_SPADが印加される。これにより、フォトダイオード21の動作が許可される。
【0032】
一方、駆動回路12から選択トランジスタ24に選択制御電圧V_SELが印加されておらず、選択トランジスタ24がオフ状態となっている期間、逆バイアス電圧V_SPADがフォトダイオード21に印加されないことから、フォトダイオード21の動作が禁止される。
【0033】
選択トランジスタ24がオン状態であるときにフォトダイオード21にフォトンが入射すると、フォトダイオード21においてアバランシェ電流が発生する。それにより、クエンチ抵抗23にアバランシェ電流が流れ、接続点N1の電圧が上昇する。接続点N1の電圧がNMOSトランジスタ252のオン電圧よりも高くなると、NMOSトランジスタ252がオン状態になり、接続点N2の電圧が電源電圧VDDから0Vに変化する。そして、接続点N2の電圧が電源電圧VDDから0Vに変化すると、PMOSトランジスタ261がオフ状態からオン状態に変化すると共にNMOSトランジスタ262がオン状態からオフ状態に変化し、接続点N3の電圧が0Vから電源電圧VDDに変化する。その結果、バッファ27からハイレベルの検出信号V_OUTが出力される。
【0034】
その後、接続点N1の電圧が上昇し続けると、フォトダイオード21のアノードとカソードとの間に印加されている電圧が降伏電圧よりも小さくなり、それにより、アバランシェ電流が止まって、接続点N1の電圧が低下する。そして、接続点N1の電圧がNMOSトランジスタ452のオン電圧よりも低くなると、NMOSトランジスタ452がオフ状態になり、バッファ27からの検出信号V_OUTの出力が停止する(ローレベル)。
【0035】
このように、読出し回路22は、フォトダイオード21にフォトンが入射してアバランシェ電流が発生し、これによりNMOSトランジスタ452がオン状態になったタイミングから、アバランシェ電流が止まってNMOSトランジスタ452がオフ状態になるタイミングまでの期間、ハイレベルの検出信号V_OUTを出力する。出力された検出信号V_OUTは、出力回路13に入力される。
【0036】
1.5 カラーフィルタのレイアウト例
上述したように、各SPAD画素20のフォトダイオード21に対しては、特定波長の光を選択的に透過させるカラーフィルタが配置される。図4は、第1の実施形態に係るカラーフィルタのレイアウト例を示す図である。
【0037】
図4に示すように、カラーフィルタアレイ60は、例えば、カラーフィルタ配列における繰返しの単位となるパターン(以下、単位パターンという)61が2次元格子状に配列した構成を備える。
【0038】
各単位パターン61は、例えば、赤色(R)の波長成分の光を選択的に透過するカラーフィルタ115Rと、緑色(G)の波長成分の光を選択的に透過する2つのカラーフィルタ115Gと、青色(B)の波長成分の光を選択的に透過するカラーフィルタ115Bとの計4つのカラーフィルタより構成された、いわゆるベイヤー配列の構成を備えている。
【0039】
なお、本開示において、カラーフィルタアレイ60は、ベイヤー配列に限定されない。例えば、単位パターンが3×3画素のX-Trans(登録商標)型のカラーフィルタ配列や、4×4画素のクワッドベイヤー配列や、RGB三原色それぞれのカラーフィルタに加えて可視光領域に対してブロードな光透過特性を持つカラーフィルタ(以下、クリア又はホワイトともいう)を含む4×4画素のホワイトRGB型のカラーフィルタ配列など、種々のカラーフィルタ配列を採用することが可能である。
【0040】
1.6 固体撮像装置の積層構造例
図5は、第1の実施形態に係るイメージセンサの積層構造例を示す図である。図5に示すように、イメージセンサ10は、受光チップ71と回路チップ72とが上下に積層された構造を備える。受光チップ71は、例えば、フォトダイオード21が配列するSPADアレイ部11を備える半導体チップであり、回路チップ72は、例えば、図3に示す読出し回路22が配列する半導体チップである。なお、回路チップ72には、タイミング制御回路15や駆動回路12や出力回路13などの周辺回路が配置されてもよい。
【0041】
受光チップ71と回路チップ72との接合には、例えば、それぞれの接合面を平坦化して両者を電子間力で貼り合わせる、いわゆる直接接合を用いることができる。ただし、これに限定されず、例えば、互いの接合面に形成された銅(Cu)製の電極パッド同士をボンディングする、いわゆるCu-Cu接合や、その他、バンプ接合などを用いることも可能である。
【0042】
また、受光チップ71と回路チップ72とは、例えば、半導体基板を貫通するTSV(Through-Silicon Via)などの接続部を介して電気的に接続される。TSVを用いた接続には、例えば、受光チップ71に設けられたTSVと受光チップ71から回路チップ72にかけて設けられたTSVとの2つのTSVをチップ外表で接続する、いわゆるツインTSV方式や、受光チップ71から回路チップ72まで貫通するTSVで両者を接続する、いわゆるシェアードTSV方式などを採用することができる。
【0043】
ただし、受光チップ71と回路チップ72との接合にCu-Cu接合やバンプ接合を用いた場合には、Cu-Cu接合部やバンプ接合部を介して両者が電気的に接続される。
【0044】
1.7 SPAD画素の断面構造例
図6は、第1の実施形態に係るSPAD画素の光入射面と垂直な面の断面構造例を示す垂直断面図である。図7は、図6におけるA-A面の断面構造例を示す水平断面図である。なお、図6では、フォトダイオード21の断面構造に着目している。
【0045】
図6に示すように、SPAD画素20のフォトダイオード21は、例えば、受光チップ71を構成する半導体基板101に設けられる。半導体基板101は、例えば、光入射面から見た形状が格子状の素子分離部110により、複数の素子領域に区画されている(例えば、図7参照)。フォトダイオード21は、素子分離部110により区画された各素子領域に設けられている。なお、素子分離部110には、後述する第1トレンチ内のアノード電極122及び絶縁膜109が含まれてもよい。
【0046】
各フォトダイオード21は、光電変換領域102と、P型半導体領域104と、N-型半導体領域103と、P+型半導体領域105と、N+型半導体領域106と、カソードコンタクト107と、アノードコンタクト108とを備える。
【0047】
光電変換領域102は、例えば、N型のウェル領域又は低い濃度のドナーを含む領域であり、入射光を光電変換して電子-正孔対(以下、電荷という)を発生させる。
【0048】
P型半導体領域104は、例えば、P型のアクセプタを含む領域であり、図6及び図7に示すように、光電変換領域102を囲む領域に設けられる。このP型半導体領域104は、後述するアノードコンタクト108に逆バイアス電圧V_SPADが印加されることで、光電変換領域102で発生した電荷をN-型半導体領域103へ導くための電界を形成する。
【0049】
N-型半導体領域103は、例えば、光電変換領域102よりも高い濃度のドナーを含む領域である。このN-型半導体領域103は、図6及び図7に示すように、光電変換領域102の中央部分に配置され、光電変換領域102で発生した電荷を取り込んでP+型半導体領域105へ導く。なお、N-型半導体領域103は必須の構成ではなく、省略されてもよい。
【0050】
P+型半導体領域105は、例えば、P型半導体領域104よりも高い濃度のアクセプタを含む領域であり、その一部がP型半導体領域104と接触している。また、N+型半導体領域106は、例えば、N-型半導体領域103よりも高い濃度のドナーを含む領域であり、P+型半導体領域105と接触している。
【0051】
これらP+型半導体領域105及びN+型半導体領域106は、PN接合を形成し、流れ込んだ電荷を加速してアバランシェ電流を発生させる増幅領域として機能する。
【0052】
カソードコンタクト107は、例えば、N+型半導体領域106よりも高い濃度のドナーを含む領域であり、N+型半導体領域106と接触する領域に設けられている。
【0053】
アノードコンタクト108は、例えば、P+型半導体領域105よりも高い濃度のアクセプタを含む領域である。このアノードコンタクト108は、P型半導体領域104の外周と接触する領域に設けられている。アノードコンタクト108の幅は、例えば、40nm(ナノメートル)程度であってよい。このように、アノードコンタクト108をP型半導体領域104の外周全体にわたって接触させることで、光電変換領域102に均一な電界を形成することが可能となる。
【0054】
また、アノードコンタクト108は、図6及び図7に示すように、半導体基板101の表面(図面中、下面)側に素子分離部110に沿って格子状に設けられたトレンチ(これを以下、第1トレンチという)の底面に設けられている。このような構造により、後述するように、アノードコンタクト108の形成位置が、カソードコンタクト107及びN+型半導体領域106の形成位置に対して、高さ方向にずらされている。
【0055】
半導体基板101の表面(図面中、下面)側は、絶縁膜109により覆われている。第1トレンチ内における絶縁膜109の膜厚(基板幅方向の厚さ)は、アノード-カソード間に印加する逆バイアス電圧V_SPADの電圧値にも依るが、例えば、150nm程度であってもよい。
【0056】
絶縁膜109には、半導体基板101表面のカソードコンタクト107及びアノードコンタクト108を露出させる開口が設けられており、それぞれの開口に、カソードコンタクト107と接触するカソード電極121及びアノードコンタクト108と接触するアノード電極122が設けられている。
【0057】
各フォトダイオード21を区画する素子分離部110は、半導体基板101を表面から裏面にかけて貫通するトレンチ(これを以下、第2トレンチという)内に設けられている。第2トレンチは、半導体基板101の表面側において第1トレンチと繋がっている。第2トレンチの内径は、第1トレンチの内径よりも狭く、それにより形成される段差部分に、アノードコンタクト108が形成されている。
【0058】
各素子分離部110は、第2トレンチの内側面を覆う絶縁膜112と、第2トレンチ内を埋める遮光膜111とを備える。絶縁膜112の膜厚(基板幅方向の厚さ)は、アノード-カソード間に印加する逆バイアス電圧V_SPADの電圧値にも依るが、例えば、10nm~20nm程度であってもよい。また、遮光膜111の膜厚(基板幅方向の厚さ)は、遮光膜111に使用する材料等に依存するが、例えば、150nm程度であってもよい。
【0059】
ここで、遮光膜111及びアノード電極122に遮光性を有する導電材料を用いることで、遮光膜111とアノード電極122とを同一工程で形成することが可能となる。さらに、カソード電極121にも遮光膜111及びアノード電極122と同じ導電材料を用いることで、遮光膜111とアノード電極122とカソード電極121とを同一工程で形成することが可能となる。
【0060】
このような遮光性を有する導電材料には、例えば、タングステン(W)などを用いることができる。ただし、タングステン(W)に限定されず、アルミニウム(Al)やアルミニウム合金や銅(Cu)など、可視光や素子ごとに必要な光を反射又は吸収する性質を持つ導電材料であれば、種々変更されてよい。
【0061】
ただし、第2トレンチ内の遮光膜111には、導電材料に限定されず、例えば、半導体基板101よりも高い屈折率を備える高屈折率材料や、半導体基板101よりも低い屈折率を備える低屈折率材料などを用いることも可能である。
【0062】
また、カソード電極121に用いる材料には、遮光性が要求されないため、遮光性を有する導電材料に代えて、銅(Cu)などの導電材料が用いられてもよい。
【0063】
なお、本実施形態では、第2トレンチが半導体基板101を表面側から貫通する、いわゆるFFTI(Front Full Trench Isolation)型の素子分離部110を例示するが、これに限定されず、第2トレンチが半導体基板101を裏面及び/又は表面側から貫通するFTI(Full Trench Isolation)型や、第2トレンチが半導体基板101の表面又は裏面から中腹にかけて形成されたDTI(Deep Trench Isolation)型又はRDTI(Reverse Deep Trench Isolation)型の素子分離部を採用することも可能である。
【0064】
第2トレンチが半導体基板101を裏面側から貫通するFTI型とした場合には、第2トレンチ内には、半導体基板101の裏面側から遮光膜111の材料が埋め込まれてもよい。
【0065】
カソード電極121及びアノード電極122の上部は、絶縁膜109の表面(図面中、下面)に突出している。絶縁膜109の表面(図面中、下面)には、例えば、配線層120が設けられている。
【0066】
配線層120は、層間絶縁膜123と、層間絶縁膜123中に設けられた配線124とを備える。配線124は、例えば、絶縁膜109の表面(図面中、下面)に突出しているカソード電極121と接触している。なお、図6では省略されているが、配線層120には、アノード電極122と接触する配線も設けられている。
【0067】
配線層120の表面(図面中、下面)には、例えば、銅(Cu)製の接続パッド125が露出している。この接続パッド125は、配線124の一部であってもよい。その場合、配線124も銅(Cu)製である。
【0068】
配線層120の表面は、回路チップ72における配線層130が接合される。配線層130は、層間絶縁膜131と、層間絶縁膜131中に設けられた配線132とを備える。配線132は、半導体基板141に形成された読出し回路22等の回路素子142と電気的に接続されている。したがって、半導体基板101のカソード電極121は、配線124、接続パッド125及び135、並びに、配線132を介して、図3に示す読出し回路22に接続されている。
【0069】
また、配線層130の表面(図面中、上面)には、例えば、銅(Cu)製の接続パッド135が露出している。この接続パッド135を、受光チップ71の配線層120表面に露出している接続パッド125と接合(Cu-Cu接合)することで、受光チップ71と回路チップ72とが電気的及び機械的に接続される。
【0070】
この接続パッド135は、配線132の一部であってもよい。その場合、配線132も銅(Cu)製である。
【0071】
また、半導体基板101の裏面(図面中、上面)には、ピニング層113と、平坦化膜114とが設けられている。さらに、平坦化膜114上には、SPAD画素20ごとのカラーフィルタ115及びオンチップレンズ116が設けられている。
【0072】
ピニング層113は、例えば、所定濃度のアクセプタを含む酸化ハフニウム(HfO)膜や酸化アルミニウム(Al)膜より構成された固定電荷膜である。平坦化膜114は、例えば、酸化シリコン(SiO)や窒化シリコン(SiN)などの絶縁材料で構成された絶縁膜であり、上層のカラーフィルタ115やオンチップレンズ116を形成される面を平坦化するための膜である。
【0073】
以上のような構造において、カソードコンタクト107とアノードコンタクト108との間にブレークダウン電圧以上の逆バイアス電圧V_SPADを印加すると、P型半導体領域104とN+型半導体領域106との間の電位差により、光電変換領域102で発生した電荷をN-型半導体領域103へ導く電界が形成される。加えて、P+型半導体領域105とN+型半導体領域106との間のPN接合領域に、進入した電荷を加速してアバランシェ電流を発生させる強電界が形成される。それにより、フォトダイオード21のアバランシェフォトダイオードとしての動作が許可される。
【0074】
1.8 アノードコンタクトとカソードコンタクト及び/又はN+型半導体領域との位置関係
つづいて、本実施形態におけるアノードコンタクト108とカソードコンタクト107及び/又はN+型半導体領域106との位置関係について説明する。
【0075】
上述したように、本実施形態では、アノードコンタクト108が、半導体基板101の表面側に形成された第1トレンチの底部に配置される。これにより、本実施形態では、アノードコンタクト108が、カソードコンタクト107及びN+型半導体領域106よりも半導体基板101の表面(図面中、下面)から深い位置に配置される。すなわち、本実施形態では、半導体基板101の表面(図面中、下面)を基準とした場合、アノードコンタクト108の形成位置が、カソードコンタクト107及びN+型半導体領域106の形成位置に対して、高さ方向にずれている。
【0076】
言い換えれば、アノードコンタクト108の半導体基板101の表面からの高さは、N+型半導体領域106の半導体基板101の表面からの高さとは異なる。具体例では、アノードコンタクト108の半導体基板101の表面からの高さは、N+型半導体領域106の半導体基板101の表面からの高さよりも高い。
【0077】
このように、アノードコンタクト108の形成位置とカソードコンタクト107及びN+型半導体領域106の形成位置とを高さ方向にずらずことで、SPAD画素20の横方向(入射面と平行な方向)のサイズを大きくすることなく、アノードコンタクト108からカソードコンタクト107及び/又はN+型半導体領域106までの距離を長くすることが可能となる。
【0078】
それにより、画素サイズを増加させることなくトンネル効果の発生を抑制することが可能となるため、解像度の低下を抑制しつつ安定してアバランシェ増幅を発生させることが可能となる。
【0079】
1.9 製造方法
つづいて、本実施形態に係るイメージセンサ10の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明では、受光チップ71の製造方法に着目する。
【0080】
図8図20は、第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を示すプロセス断面図である。
【0081】
本製造方法では、まず、図8に示すように、全体的に低い濃度のドナーを含む半導体基板101における所定の領域にドナー及びアクセプタを適宜イオン注入することで、光電変換領域102を区画するP型半導体領域104の一部(P型半導体領域104a)と、N-型半導体領域103と、P+型半導体領域105と、N+型半導体領域106とを形成する。なお、イオン注入は、例えば、半導体基板101の表面(図面中、上面)から行なわれてよい。また、イオン注入後には、イオン注入時のダメージ回復及び注入されたドーパントのプロファイル改善のためのアニーリングが1回又は複数回に分けて実行されてよい。
【0082】
次に、図9に示すように、半導体基板101の表面に、格子状の開口A1を有するマスクM1を形成し、このマスクM1の上から半導体基板101を例えばRIE(Reactive Ion Etching)などの異方性ドライエッチングにより彫り込むことで、隣接するSPAD画素20の境界部分に沿った格子状の第1トレンチT1を形成する。なお、第1トレンチT1の深さは、その底面が少なくともP+型半導体領域105の下面よりも深いレベルに位置し、且つ、P型半導体領域104aに達する深さであってよい。
【0083】
なお、第1トレンチT1の半導体基板101表面からの深さが深いほど、アノードコンタクト108からN+型半導体領域106及びカソードコンタクト107までの距離を確保することが好ましい。ただし、第1トレンチT1を深くしすぎると、プロセス精度が悪化して歩留りが低下する可能性がある。したがって、第1トレンチT1の深さは、必要以上のプロセス精度を確保できる範囲内で深く設定されるとよい。
【0084】
次に、図10に示すように、マスクM1を除去した後、例えば、スパッタリングやCVD(Chemical Vapor Deposition)法などの成膜技術を用いることで、半導体基板101の表面及び第1トレンチT1の内表面を覆う絶縁膜109Aを形成する。なお、絶縁膜109Aには、酸化シリコン(SiO)や窒化シリコン(SiN)や炭化シリコン(SiC)や酸化アルミニウム(Al)などの絶縁材料を用いることができる。また、絶縁膜109Aは、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。上述したように、アノード電極122には高電圧の逆バイアス電圧V_SPADが印加されるため、絶縁膜109Aに高い耐圧性能を要求されることを鑑みると、絶縁膜109Aの材料には、酸化シリコン(SiO)などの高い耐圧性能を備える絶縁材料を用いることが好適である。
【0085】
次に、図11に示すように、第1トレンチT1内の絶縁膜109A表面が形成するトレンチT11の底面を基板厚方向に彫り込むことで、半導体基板101の表面側から裏面付近にまで達する第2トレンチT2を形成する。なお、第2トレンチT2の形成には、例えば、半導体基板101に対して十分に高い選択比を得られる異方性ドライエッチングを用いることができる。それにより、第1トレンチT1の内側面及び半導体基板101の上面に形成された絶縁膜109Aをマスクとして用いつつ半導体基板101における素子分離部110が形成される格子状の領域をエッチングすることが可能となる。
【0086】
次に、図12に示すように、第1トレンチT1内の絶縁膜109Aを例えばウェットエッチングなどの等方性エッチングにより薄膜化することで、第1トレンチT1の底部にP型半導体領域104aの外周部分を露出させる。その際、半導体基板101の表面上の絶縁膜109Aが薄膜化されてもよい。
【0087】
次に、図13に示すように、N+型半導体領域106の上方に開口A2を有するマスクM2を絶縁膜109A上に形成し、このマスクM2の上から絶縁膜109Aを例えばRIEなどの異方性ドライエッチングによりエッチングすることで、半導体基板101上面の一部を露出させる開口A3を形成する。
【0088】
次に、図14に示すように、マスクM2を除去した後、例えば、CVD法などの成膜技術を用いることで、絶縁膜109A上、開口A3の内側面及び底面、並びに、第1トレンチT1及び第2トレンチT2の内表面を覆う絶縁膜109Bを等方的に形成する。以降の説明では、絶縁膜109Aと絶縁膜109Bとをまとめて、絶縁膜109とする。また、開口A3内の絶縁膜109B表面が形成するトレンチをトレンチT4とし、トレンチT3内の絶縁膜109B表面が形成するトレンチをトレンチT5とする。
【0089】
なお、絶縁膜109Bは、省略されてもよい。絶縁膜109Bを省略した場合、その詳細については後述する第1の変形例において触れるが、アノードコンタクト108に加えて、第2トレンチT2内においてもアノード電極122とP型半導体領域104aとを接触させることが可能となるため、低抵抗のコンタクトを実現することが可能となる。
【0090】
一方、絶縁膜109Bを形成した場合、後述するコンタクト形成時のイオン注入によって半導体基板101が受けるダメージを低減することが可能となる。
【0091】
次に、図15に示すように、N+型半導体領域106の上方に位置するトレンチT4を覆うマスクM3を形成し、このマスクM3及び絶縁膜109の上からアクセプタを高濃度にイオン注入する。その際、マスクM3及び絶縁膜109がマスクとして機能することで、絶縁膜109の膜厚が薄い領域であるトレンチT5の底部、言い換えれば、P型半導体領域104の上部外周(例えば、図7参照)に、高濃度のアクセプタを含むアノードコンタクト108が形成される。
【0092】
次に、図16に示すように、マスクM3を除去した後、例えば、格子状に形成されたトレンチT5を覆うマスクM4を形成し、このマスクM4及び絶縁膜109の上からドナーを高濃度にイオン注入する。その際、マスクM4及び絶縁膜109がマスクとして機能することで、絶縁膜109の膜厚が薄い領域であるトレンチT4の底部、言い換えれば、N+型半導体領域106の上に位置する半導体基板101の一部に、高濃度のドナーを含むカソードコンタクト107が形成される。
【0093】
なお、アノードコンタクト108及びカソードコンタクト107の形成には、イオン注入法に限定されず、固相拡散やプラズマドーピング等の種々の方法を用いることが可能である。
【0094】
次に、図17に示すように、マスクM4を除去した後、例えば、絶縁膜109の表面を全面エッチバックすることで、トレンチT4底部の絶縁膜109を除去してカソードコンタクト107を露出させるとともに、トレンチT5底部の絶縁膜109を除去してアノードコンタクト108を露出させる。
【0095】
その際、その詳細については後述する第2の変形例において触れるが、フォトリソグラフィなどを用いて所定の開口パターンを有するマスクを形成しておくことで、絶縁膜109を除去してアノードコンタクト108を露出させる領域を制限してもよい。
【0096】
絶縁膜109を全面エッチバックする場合、アノードコンタクト108とアノード電極122との接触面積を確保することが可能となるため、低抵抗のコンタクトを形成することができる。また、アノードコンタクト108とアノード電極122とをP型半導体領域104aの外周を囲むように接触させることが可能となるため、光電変換領域102に均一な電界を形成することが可能となる。
【0097】
一方、絶縁膜109を除去する領域を制限する場合、アノードコンタクト108とアノード電極122との接触部分を制御することが可能となるため、光電変換領域102に形成される電界の分布を制御すること等が可能となる。
【0098】
なお、本実施形態において、絶縁膜109を薄膜化した後に第2トレンチT2内に残る絶縁膜109は、素子分離部110の絶縁膜112として利用される。
【0099】
つづいて、カソードコンタクト107及びアノードコンタクト108の露出した表面に例えばチタニウム(Ti)/窒化チタニウム(TiN)膜を成膜し、その状態で500℃~800℃程度のアニーリングを行なう。それにより、カソードコンタクト107及びアノードコンタクト108それぞれの露出した表面において、シリコン(Si)とチタニウム(Ti)とが反応してチタンシリサイド層が形成される。
【0100】
このように、カソードコンタクト107及びアノードコンタクト108の表面(接触面)をシリサイドすることで、カソードコンタクト107とカソード電極121との接触、及び、アノードコンタクト108とアノード電極122との接触をオーミック接触することが可能となるため、それらの接続を低抵抗化することが可能となる。それにより、アノードコンタクト108とアノード電極122との接触面積を小さくすることが可能となるため、画素サイズを縮小して解像度を上げることが可能となる。
【0101】
なお、Ti/TiN膜の代わりに、Co/TiN膜が用いられてもよい。その場合でも、カソードコンタクト107及びアノードコンタクト108それぞれの表面(接触面)にコバルトシリサイド層が形成されるため、カソードコンタクト107とカソード電極121と、及び、アノードコンタクト108とアノード電極122とをオーミック接触させることが可能となる。
【0102】
その他、チタンシリサイドやコバルトシリサイドに代えて、ニッケルシリサイド等、種々のシリサイドを用いることでも、カソードコンタクト107とカソード電極121と、及び、アノードコンタクト108とアノード電極122とをオーミック接触させることが可能である。
【0103】
次に、図18に示すように、例えば、リフトオフ法などを用いることで、第1トレンチT1内に遮光膜111を形成するとともに、トレンチT4内にカソードコンタクト107と接触するカソード電極121を形成し、さらに、第2トレンチT2内にアノードコンタクト108と接触するアノード電極122を形成する。
【0104】
遮光膜111、カソード電極121及びアノード電極122の材料には、上述したように、タングステン(W)の他、アルミニウム(Al)やアルミニウム合金や銅(Cu)など、可視光や素子ごとに必要な光に対して反射又は吸収する性質を持つ種々の導電材料を用いることが可能である。
【0105】
遮光膜111と、カソード電極121及びアノード電極122とに同じ材料を用いた場合、これらを一括に形成することが可能である。一方、遮光膜111と、カソード電極121及びアノード電極122とに異なる材料を用いた場合、先に遮光膜111を形成し、その後、リフトオフ法などを用いて、カソード電極121及びアノード電極122を形成する。
【0106】
次に、カソード電極121及びアノード電極122が形成された絶縁膜109上に、カソード電極121に接続された配線124と、アノード電極122に接続された配線126と、層間絶縁膜123とを含む配線層120を形成する。また、層間絶縁膜123の表面に露出する銅(Cu)製の接続パッド125及び127を形成する。
【0107】
次に、図19に示すように、半導体基板101を裏面から薄厚化することで、第2トレンチT2内の遮光膜111が半導体基板101の裏面に達するように、第2トレンチT2を貫通させる。半導体基板101の薄厚化には、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)などが用いられてよい。
【0108】
次に、半導体基板101の裏面全体にアクセプタをイオン注入する。これにより、図20に示すように、光電変換領域102を囲むP型半導体領域104が完成する。
【0109】
その後、半導体基板101の裏面に、ピニング層113、平坦化膜114、カラーフィルタ115及びオンチップレンズ116を順次形成することで、イメージセンサ10における受光チップ71が形成される。そして、別途用意した回路チップ72と受光チップ71とを貼り合わせることで、図6に例示したような断面構造を備えるイメージセンサ10が作製される。
【0110】
1.10 作用・効果
以上のように、本実施形態では、アノードコンタクト108の位置とカソードコンタクト107及び/又はN+型半導体領域106の位置とが高さ方向にずらされている。それにより、本実施形態によれば、SPAD画素20の横方向(入射面と平行な方向)のサイズを大きくすることなく、アノードコンタクト108からカソードコンタクト107及び/又はN+型半導体領域106までの距離を長くすることが可能となる。その結果、画素サイズを増加させることなくトンネル効果の発生を抑制することが可能となるため、解像度の低下を抑制しつつ安定してアバランシェ増幅を発生させることが可能となる。
【0111】
1.11 変形例
つづいて、第1の実施形態に係るSPAD画素20の変形例について、幾つか具体例を挙げて説明する。
【0112】
1.11.1 第1の変形例
図21は、第1の変形例に係るSPAD画素の光入射面と垂直な面の断面構造例を示す垂直断面図である。
【0113】
図21に示すように、第1の変形例に係るSPAD画素20aでは、第1の実施形態において図6等を用いて説明した断面構造と同様の構造において、第2トレンチ(第2トレンチT2に相当)内の絶縁膜112(絶縁膜109Bに相当)が省略されている。
【0114】
このように、素子分離部110における絶縁膜112を省略することで、第1の実施形態でも触れたように、アノードコンタクト108に加えて、第2トレンチ内においてもアノード電極122とP型半導体領域104aとを接触させることが可能となるため、低抵抗のコンタクトを実現することが可能となる。
【0115】
1.11.2 第2の変形例
図22は、第2の変形例に係るSPAD画素の光入射面と並行な面の断面構造例を示す水平断面図である。なお、図22は、図7と対応する面である。
【0116】
図22に示すように、第2の変形例に係るSPAD画素20bは、第1の実施形態において図7等を用いて説明した断面構造と同様の構造において、アノードコンタクト108Aの形成領域が、P型半導体領域104の外周の一部でP型半導体領域104と接触するように制限されている。具体例では、アノードコンタクト108Aの形成領域が、素子分離部110によって区切られた矩形領域の四隅に制限されている。
【0117】
このように、アノードコンタクト108Aの形成領域を制限することで、第1の実施形態でも触れたように、アノードコンタクト108とアノード電極122との接触部分を制御することが可能となるため、光電変換領域102に形成される電界の分布を制御すること等が可能となる。
【0118】
1.11.3 第3の変形例
図23は、第3の変形例に係るSPAD画素の光入射面と垂直な面の断面構造例を示す垂直断面図である。
【0119】
図23に示すように、第3の変形例に係るSPAD画素20cでは、第1の実施形態において図6等を用いて説明した断面構造と同様の構造において、P+型半導体領域105A及びN+型半導体領域106Aが、第1トレンチ内に形成された絶縁膜109に接するまで広がっている。
【0120】
このように、P+型半導体領域105A及びN+型半導体領域106Aを第1トレンチで挟まれた領域全体に拡大することで、アバランシェ増幅を発生させる領域を広げることが可能となるため、量子効率を向上することが可能となる。
【0121】
また、P+型半導体領域105Aを第1トレンチで挟まれた領域全体に拡大することで、アノードコンタクト108付近で発生した電荷が直接、N+型半導体領域106A又はカソードコンタクト107へ流れ込むことを防止できるため、アバランシェ増幅に寄与しない電荷を低減して量子効率を向上することも可能となる。
【0122】
1.11.4 第4の変形例
図24は、第4の変形例に係るSPAD画素の光入射面と垂直な面の断面構造例を示す垂直断面図である。
【0123】
図24に示すように、第4の変形例に係るSPAD画素20dでは、第1の実施形態において図6等を用いて説明した断面構造と同様の構造において、第1トレンチが拡径されることで、第1トレンチ内の絶縁膜109Dが少なくともP+型半導体領域105Aと接する程度に広がっている。
【0124】
このように、第1トレンチを拡径して絶縁膜109DをP+型半導体領域105Aと接触させることで、アノードコンタクト108付近で発生した電荷が直接、N+型半導体領域106A又はカソードコンタクト107へ流れ込むことを防止できるため、アバランシェ増幅に寄与しない電荷を低減して量子効率を向上することが可能となる。
【0125】
1.11.5 第5の変形例
第5の変形例では、上述した実施形態及びその変形例におけるアノードに対する接続配線について、幾つか例を挙げる。なお、以下の説明では、簡略化のため、第1の実施形態をベースとした場合を例示する。
【0126】
図25は、第1の実施形態に係るアノードに対する接続配線の一例を示す図である。図25に示すように、第1の実施形態では、各SPAD画素20アノード電極122に対して、一対一に、逆バイアス電圧V_SPADを印加するための配線152が接続されていた。
【0127】
ただし、例えば、図7を参照しても分かるように、アノード電極122は、複数のSPAD画素20間で連続している。例えば、SPADアレイ部11に配列する全てのSPAD画素20で電気的に繋がっている。
【0128】
そのため、各SPAD画素20アノード電極122に対して一対一に配線152を設ける構成は必須ではない。
【0129】
例えば、図26に例示するように、1つ置きのSPAD画素20に対して配線152を設けたり、図27に例示するように、2つ置きのSPAD画素20に対して配線152を設けたりするなど、配線152の配置を間引きすることも可能である。
【0130】
若しくは、図28に例示するように、SPADアレイ部11の最外周に位置するSPAD画素20Zのうちの少なくとも1つに対して配線152を設け、その他のSPAD画素20及び20Zに対しては配線152を設けない構成とすることも可能である。
【0131】
このように、配線152を間引きすることで、配線パターンを簡略化することが可能となるため、製造プロセスの簡略化や製造コストの削減等を実現することが可能となる。
【0132】
なお、上述した実施形態及びその変形例では、カソードをN型とし、アノードをP型とした場合を例示したが、このような組合せに限定されず、カソードをP型とし、アノードをN型とするなど、種々変形することが可能である。
【0133】
2.第2の実施形態
次に、第2の実施形態に係る固体撮像装置及び電子機器について、図面を参照して詳細に説明する。
【0134】
上述した第1の実施形態及びその変形例に係るSPAD画素20、20a、20b、20c及び20dは、カラー画像などの画像データを取得する撮像装置としての電子機器1に限定されず、例えば、物体までの距離を測定する測距装置としての電子機器にも用いることが可能である。
【0135】
図29は、第2の実施形態に係るSPAD画素の光入射面と垂直な面の断面構造例を示す垂直断面図である。図29に示すように、SPAD画素220は、第1の実施形態において図6等を用いて説明した断面構造と同様の構造において、カラーフィルタ115が省略された構造を備える。
【0136】
このように、SPAD画素220を測距装置としての電子機器に用いた場合でも、第1の実施形態と同様に、アノードコンタクト108の位置とカソードコンタクト107及び/又はN+型半導体領域106の位置とを高さ方向にずらすことで、SPAD画素220の横方向(入射面と平行な方向)のサイズを大きくすることなく、アノードコンタクト108からカソードコンタクト107及び/又はN+型半導体領域106までの距離を長くすることが可能となる。その結果、画素サイズを増加させることなくトンネル効果の発生を抑制することが可能となるため、解像度の低下を抑制しつつ安定してアバランシェ増幅を発生させることが可能となる。
【0137】
その他の構成、動作及び効果は、上述した実施形態又はその変形例と同様であってよいため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0138】
3.第3の実施形態
次に、第3の実施形態に係る固体撮像装置及び電子機器について、図面を参照して詳細に説明する。
【0139】
上述した実施形態及びその変形例では、第2トレンチが半導体基板101を表面側から裏面側まで貫通するFFTI型の素子分離部110を例示したが、上述したように、素子分離部110は、FFTI型に限定されるものではない。
【0140】
図30は、第3の実施形態に係るSPAD画素の光入射面と垂直な面の断面構造例を示す垂直断面図である。図30に示すように、SPAD画素320は、第1の実施形態において図6等を用いて説明した断面構造と同様の構造において、FFTI型の素子分離部110がDTI型の素子分離部310に置き換えられた構造を備える。
【0141】
DTI型の素子分離部310は、半導体基板101の表面側(図面中、下面側)から裏面に達しない程度に形成された第2トレンチ内に、第2トレンチの内側面及び底面を覆う絶縁膜312と、内表面が絶縁膜312で覆われた第2トレンチ内を埋める遮光膜311とを備える。
【0142】
このような素子分離部310は、例えば、第2トレンチを浅く形成したり、厚い半導体基板101を使用したりすることで実現することができる。
【0143】
このように、本実施形態によれば、半導体基板101の表面側から形成されたDTI型の素子分離部310が用いられる。これにより、半導体基板101を裏面側から薄厚化する工程を容易化することが可能となる。
【0144】
また、半導体基板101の表面側から形成されたDTI型の素子分離部310を用いることで、半導体基板101の裏面側において、P型半導体領域104がSPAD画素320ごとに分離されない構造となる。それにより、P型半導体領域104とアノードコンタクト108との間のコンタクト抵抗のばらつきによるSPAD画素320ごとの電界のかかり方のばらつきが抑制されて、SPAD画素320ごとの電界が平準化されるため、イメージセンサ10の歩留りを向上することも可能となる。
【0145】
その他の構成、動作及び効果は、上述した実施形態又はその変形例と同様であってよいため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0146】
4.第4の実施形態
次に、第4の実施形態に係る固体撮像装置及び電子機器について、図面を参照して詳細に説明する。
【0147】
図31は、第4の実施形態に係るSPAD画素の光入射面と垂直な面の断面構造例を示す垂直断面図である。図31に示すように、SPAD画素420は、例えば、第3の実施形態において図30を用いて説明したSPAD画素320と同様の構成において、第2トレンチの底部にアノードコンタクト408が設けられた構造を備える。
【0148】
このような構造によれば、アノード電極122と電気的に連続する遮光膜311が、第2トレンチ底部のアノードコンタクト408を介して、半導体基板101の裏面側で、P型半導体領域104と電気的に接続される。それにより、P型半導体領域104とアノードコンタクト108との間のコンタクト抵抗をより低減できるとともに、コンタクト抵抗のばらつきを抑制することも可能となるため、SPAD画素320ごとの電界のかかり方のばらつきをさらに抑制することが可能となる。その結果、SPAD画素320ごとの電界がさらに平準化されるため、イメージセンサ10の歩留りをより向上することが可能となる。
【0149】
その他の構成、動作及び効果は、上述した実施形態又はその変形例と同様であってよいため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0150】
5.第5の実施形態
次に、第5の実施形態に係る固体撮像装置及び電子機器について、図面を参照して詳細に説明する。
【0151】
上述した第3及び第4の実施形態では、半導体基板101の表面側から形成された第2トレンチ内に設けられたDTI型の素子分離部310を例示した。これに対し、第5の実施形態では、半導体基板101の裏面側から形成された第2トレンチ内に設けられたRDTI型の素子分離部を例示する。
【0152】
図32は、第5の実施形態に係るSPAD画素の光入射面と垂直な面の断面構造例を示す垂直断面図である。図32に示すように、SPAD画素520は、例えば、第3の実施形態において図30を用いて説明した断面構造と同様の構造において、FFTI型の素子分離部110がRDTI型の素子分離部510に置き換えられるとともに、アノードコンタクト108がアノードコンタクト508に置き換えられた構造を備える。
【0153】
RDTI型の素子分離部510は、半導体基板101裏面側(図面中、上面側)から表面に達しない程度に形成された第2トレンチ内に、第2トレンチの内側面及び底面を覆う絶縁膜512と、内表面が絶縁膜512で覆われた第2トレンチ内を埋める遮光膜511とを備える。
【0154】
このような構造によれば、アノード電極122と素子分離部510とが分離されるため、アノード電極122の裏面全体にアノードコンタクト508を形成することが可能となる。それにより、P型半導体領域104とアノードコンタクト108との間のコンタクト抵抗をより低減することが可能となるため、より特性の良好なSPAD画素520を実現することが可能となる。
【0155】
また、第2トレンチを半導体基板101の裏面側から形成することが可能であるため、例えば、第3又は第4の実施形態に係るDTI型の素子分離部310を形成する場合と比較して、素子分離部510の形成工程を容易化することが可能となる。
【0156】
その他の構成、動作及び効果は、上述した実施形態又はその変形例と同様であってよいため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0157】
6.第6の実施形態
次に、第6の実施形態に係る固体撮像装置及び電子機器について、図面を参照して詳細に説明する。
【0158】
上述した実施形態及びその変形例では、例えば、ベイヤー配列のカラーフィルタアレイ60を構成する1つのカラーフィルタ115R、115G又は115Bに対して、1つのフォトダイオード21を設けた場合を例示した。ただし、アバランシェフォトダイオードを用いてフォトンカウンティングを行なう場合、一回のアバランシェ増幅時に複数のフォトンが1つのフォトダイオード21に入射したとしても、そのフォトンの入射は一回分としてカウントされる。そのため、入射したフォトンの数をより正確にカウントするためには、1つのフォトダイオードが占める面積を小さくする方が好適である。また、照度が高い場合には、1つのフォトダイオードが占める面積を小さくすることで、各SPAD画素20のダイナミックレンジを拡大することが可能である。
【0159】
そこで第6の実施形態では、図33に例示するように、SPAD画素20R、20G及び20B(以下、SPAD画素20R、20G及び20Bを区別しない場合、その符号を20とする)をそれぞれ複数(本例では、2×2画素の4つ)のSPAD画素620R、620G又は620B(以下、SPAD画素620R、620G及び620Bを区別しない場合、その符号を620とする)に分割する。若しくは、複数のSPAD画素620、620G又は620Bで1つのカラーフィルタ115R、115G又は115Bを共有する。
【0160】
このように、1つのSPAD画素20を複数のSPAD画素620に分割することで、1つのSPAD画素620あたりの面積を縮小することが可能となるため、入射したフォトンの数をより正確にカウントすることが可能となる。また、1つのフォトダイオードが占める面積が縮小されるため、各SPAD画素20のダイナミックレンジを拡大することも可能となる。
【0161】
なお、図34に例示するように、1つのSPAD画素20を分割したSPAD画素620間には、素子分離部110を設けなくてもよい。その場合、素子分離部110の代わりに、P型半導体領域104がSPAD画素620間に配置されてよい。それにより、素子分離部110を設ける場合と比較して画素ピッチを縮小することが可能となるため、イメージセンサ10をより小型化することが可能となる。
【0162】
その他の構成、動作及び効果は、上述した実施形態又はその変形例と同様であってよいため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0163】
7.第7の実施形態
次に、第7の実施形態に係る固体撮像装置及び電子機器について、図面を参照して詳細に説明する。
【0164】
上述した第6の実施形態では、1つのSPAD画素20から分割した複数のSPAD画素620間にP型半導体領域104を配置した場合を例示したが、このような構造に限定されない。
【0165】
例えば、図35に例示するように、隣接するSPAD画素620にトレンチを設け、このトレンチ内を絶縁膜710で埋め込んだ構造とすることも可能である。
【0166】
このような構造によれば、隣接するSPAD画素620間での光のクロストークを抑制することが可能となるため、入射したフォトンの数をより正確にカウントすることが可能となる。
【0167】
その他の構成、動作及び効果は、上述した実施形態又はその変形例と同様であってよいため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0168】
8.第8の実施形態
次に、第8の実施形態に係る固体撮像装置及び電子機器について、図面を参照して詳細に説明する。
【0169】
上述した実施形態及びその変形例における素子分離部110及び510は、図36に例示するように、半導体基板101に限られず、例えば、カラーフィルタ115上まで貫通していてもよい。
【0170】
このように、素子分離部110がカラーフィルタ115を貫通してその上部に突出している構造とすることで、隣接するSPAD画素20間のクロストークを低減することが可能となる。
【0171】
その他の構成、動作及び効果は、上述した実施形態又はその変形例と同様であってよいため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0172】
9.電子機器への適用例
上述した固体撮像素子は、例えば、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像装置、撮像機能を備えた携帯電話機、または、撮像機能を備えた他の機器といった各種の電子機器に適用することができる。
【0173】
図37は、本技術を適用した電子機器としての撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【0174】
図37に示される撮像装置8201は、光学系8202、シャッタ装置8203、固体撮像素子8204、駆動回路8205、信号処理回路8206、モニタ8207、およびメモリ8208を備えて構成され、静止画像および動画像を撮像可能である。
【0175】
光学系8202は、1枚または複数枚のレンズを有して構成され、被写体からの光(入射光)を固体撮像素子8204に導き、固体撮像素子8204の受光面に結像させる。
【0176】
シャッタ装置8203は、光学系8202および固体撮像素子8204の間に配置され、駆動回路1005の制御に従って、固体撮像素子8204への光照射期間および遮光期間を制御する。
【0177】
固体撮像素子8204は、上述した固体撮像素子を含むパッケージにより構成される。固体撮像素子8204は、光学系8202およびシャッタ装置8203を介して受光面に結像される光に応じて、一定期間、信号電荷を蓄積する。固体撮像素子8204に蓄積された信号電荷は、駆動回路8205から供給される駆動信号(タイミング信号)に従って転送される。
【0178】
駆動回路8205は、固体撮像素子8204の転送動作、および、シャッタ装置8203のシャッタ動作を制御する駆動信号を出力して、固体撮像素子8204およびシャッタ装置8203を駆動する。
【0179】
信号処理回路8206は、固体撮像素子8204から出力された信号電荷に対して各種の信号処理を施す。信号処理回路8206が信号処理を施すことにより得られた画像(画像データ)は、モニタ8207に供給されて表示されたり、メモリ8208に供給されて記憶(記録)されたりする。
【0180】
このように構成されている撮像装置8201においても、上述した固体撮像素子8204に代えて、固体撮像装置10を適用することにより、全画素で低ノイズによる撮像を実現させることが可能となる。
【0181】
10.移動体への応用例
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0182】
図38は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システム7000の概略的な構成例を示すブロック図である。車両制御システム7000は、通信ネットワーク7010を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図38に示した例では、車両制御システム7000は、駆動系制御ユニット7100、ボディ系制御ユニット7200、バッテリ制御ユニット7300、車外情報検出ユニット7400、車内情報検出ユニット7500、及び統合制御ユニット7600を備える。これらの複数の制御ユニットを接続する通信ネットワーク7010は、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、LAN(Local Area Network)又はFlexRay(登録商標)等の任意の規格に準拠した車載通信ネットワークであってよい。
【0183】
各制御ユニットは、各種プログラムにしたがって演算処理を行うマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータにより実行されるプログラム又は各種演算に用いられるパラメータ等を記憶する記憶部と、各種制御対象の装置を駆動する駆動回路とを備える。各制御ユニットは、通信ネットワーク7010を介して他の制御ユニットとの間で通信を行うためのネットワークI/Fを備えるとともに、車内外の装置又はセンサ等との間で、有線通信又は無線通信により通信を行うための通信I/Fを備える。図38では、統合制御ユニット7600の機能構成として、マイクロコンピュータ7610、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660、音声画像出力部7670、車載ネットワークI/F7680及び記憶部7690が図示されている。他の制御ユニットも同様に、マイクロコンピュータ、通信I/F及び記憶部等を備える。
【0184】
駆動系制御ユニット7100は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット7100は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。駆動系制御ユニット7100は、ABS(Antilock Brake System)又はESC(Electronic Stability Control)等の制御装置としての機能を有してもよい。
【0185】
駆動系制御ユニット7100には、車両状態検出部7110が接続される。車両状態検出部7110には、例えば、車体の軸回転運動の角速度を検出するジャイロセンサ、車両の加速度を検出する加速度センサ、あるいは、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、ステアリングホイールの操舵角、エンジン回転数又は車輪の回転速度等を検出するためのセンサのうちの少なくとも一つが含まれる。駆動系制御ユニット7100は、車両状態検出部7110から入力される信号を用いて演算処理を行い、内燃機関、駆動用モータ、電動パワーステアリング装置又はブレーキ装置等を制御する。
【0186】
ボディ系制御ユニット7200は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット7200は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット7200には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット7200は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0187】
バッテリ制御ユニット7300は、各種プログラムにしたがって駆動用モータの電力供給源である二次電池7310を制御する。例えば、バッテリ制御ユニット7300には、二次電池7310を備えたバッテリ装置から、バッテリ温度、バッテリ出力電圧又はバッテリの残存容量等の情報が入力される。バッテリ制御ユニット7300は、これらの信号を用いて演算処理を行い、二次電池7310の温度調節制御又はバッテリ装置に備えられた冷却装置等の制御を行う。
【0188】
車外情報検出ユニット7400は、車両制御システム7000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット7400には、撮像部7410及び車外情報検出部7420のうちの少なくとも一方が接続される。撮像部7410には、ToF(Time Of Flight)カメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラ及びその他のカメラのうちの少なくとも一つが含まれる。車外情報検出部7420には、例えば、現在の天候又は気象を検出するための環境センサ、あるいは、車両制御システム7000を搭載した車両の周囲の他の車両、障害物又は歩行者等を検出するための周囲情報検出センサのうちの少なくとも一つが含まれる。
【0189】
環境センサは、例えば、雨天を検出する雨滴センサ、霧を検出する霧センサ、日照度合いを検出する日照センサ、及び降雪を検出する雪センサのうちの少なくとも一つであってよい。周囲情報検出センサは、超音波センサ、レーダ装置及びLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)装置のうちの少なくとも一つであってよい。これらの撮像部7410及び車外情報検出部7420は、それぞれ独立したセンサないし装置として備えられてもよいし、複数のセンサないし装置が統合された装置として備えられてもよい。
【0190】
ここで、図39は、撮像部7410及び車外情報検出部7420の設置位置の例を示す。撮像部7910,7912,7914,7916,7918は、例えば、車両7900のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部のうちの少なくとも一つの位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部7910及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として車両7900の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部7912,7914は、主として車両7900の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部7916は、主として車両7900の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0191】
なお、図39には、それぞれの撮像部7910,7912,7914,7916の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲aは、フロントノーズに設けられた撮像部7910の撮像範囲を示し、撮像範囲b,cは、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部7912,7914の撮像範囲を示し、撮像範囲dは、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部7916の撮像範囲を示す。例えば、撮像部7910,7912,7914,7916で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両7900を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0192】
車両7900のフロント、リア、サイド、コーナ及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930は、例えば超音波センサ又はレーダ装置であってよい。車両7900のフロントノーズ、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7926,7930は、例えばLIDAR装置であってよい。これらの車外情報検出部7920~7930は、主として先行車両、歩行者又は障害物等の検出に用いられる。
【0193】
図38に戻って説明を続ける。車外情報検出ユニット7400は、撮像部7410に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像データを受信する。また、車外情報検出ユニット7400は、接続されている車外情報検出部7420から検出情報を受信する。車外情報検出部7420が超音波センサ、レーダ装置又はLIDAR装置である場合には、車外情報検出ユニット7400は、超音波又は電磁波等を発信させるとともに、受信された反射波の情報を受信する。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、降雨、霧又は路面状況等を認識する環境認識処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、車外の物体までの距離を算出してもよい。
【0194】
また、車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等を認識する画像認識処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに対して歪補正又は位置合わせ等の処理を行うとともに、異なる撮像部7410により撮像された画像データを合成して、俯瞰画像又はパノラマ画像を生成してもよい。車外情報検出ユニット7400は、異なる撮像部7410により撮像された画像データを用いて、視点変換処理を行ってもよい。
【0195】
車内情報検出ユニット7500は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット7500には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部7510が接続される。運転者状態検出部7510は、運転者を撮像するカメラ、運転者の生体情報を検出する生体センサ又は車室内の音声を集音するマイク等を含んでもよい。生体センサは、例えば、座面又はステアリングホイール等に設けられ、座席に座った搭乗者又はステアリングホイールを握る運転者の生体情報を検出する。車内情報検出ユニット7500は、運転者状態検出部7510から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。車内情報検出ユニット7500は、集音された音声信号に対してノイズキャンセリング処理等の処理を行ってもよい。
【0196】
統合制御ユニット7600は、各種プログラムにしたがって車両制御システム7000内の動作全般を制御する。統合制御ユニット7600には、入力部7800が接続されている。入力部7800は、例えば、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチ又はレバー等、搭乗者によって入力操作され得る装置によって実現される。統合制御ユニット7600には、マイクロフォンにより入力される音声を音声認識することにより得たデータが入力されてもよい。入力部7800は、例えば、赤外線又はその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、車両制御システム7000の操作に対応した携帯電話又はPDA(Personal Digital Assistant)等の外部接続機器であってもよい。入力部7800は、例えばカメラであってもよく、その場合搭乗者はジェスチャにより情報を入力することができる。あるいは、搭乗者が装着したウェアラブル装置の動きを検出することで得られたデータが入力されてもよい。さらに、入力部7800は、例えば、上記の入力部7800を用いて搭乗者等により入力された情報に基づいて入力信号を生成し、統合制御ユニット7600に出力する入力制御回路などを含んでもよい。搭乗者等は、この入力部7800を操作することにより、車両制御システム7000に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりする。
【0197】
記憶部7690は、マイクロコンピュータにより実行される各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、及び各種パラメータ、演算結果又はセンサ値等を記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。また、記憶部7690は、HDD(Hard Disc Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等によって実現してもよい。
【0198】
汎用通信I/F7620は、外部環境7750に存在する様々な機器との間の通信を仲介する汎用的な通信I/Fである。汎用通信I/F7620は、GSM(登録商標)(Global System of Mobile communications)、WiMAX(登録商標)、LTE(登録商標)(Long Term Evolution)若しくはLTE-A(LTE-Advanced)などのセルラー通信プロトコル、又は無線LAN(Wi-Fi(登録商標)ともいう)、Bluetooth(登録商標)などのその他の無線通信プロトコルを実装してよい。汎用通信I/F7620は、例えば、基地局又はアクセスポイントを介して、外部ネットワーク(例えば、インターネット、クラウドネットワーク又は事業者固有のネットワーク)上に存在する機器(例えば、アプリケーションサーバ又は制御サーバ)へ接続してもよい。また、汎用通信I/F7620は、例えばP2P(Peer To Peer)技術を用いて、車両の近傍に存在する端末(例えば、運転者、歩行者若しくは店舗の端末、又はMTC(Machine Type Communication)端末)と接続してもよい。
【0199】
専用通信I/F7630は、車両における使用を目的として策定された通信プロトコルをサポートする通信I/Fである。専用通信I/F7630は、例えば、下位レイヤのIEEE802.11pと上位レイヤのIEEE1609との組合せであるWAVE(Wireless Access in Vehicle Environment)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、又はセルラー通信プロトコルといった標準プロトコルを実装してよい。専用通信I/F7630は、典型的には、車車間(Vehicle to Vehicle)通信、路車間(Vehicle to Infrastructure)通信、車両と家との間(Vehicle to Home)の通信及び歩車間(Vehicle to Pedestrian)通信のうちの1つ以上を含む概念であるV2X通信を遂行する。
【0200】
測位部7640は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号(例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号)を受信して測位を実行し、車両の緯度、経度及び高度を含む位置情報を生成する。なお、測位部7640は、無線アクセスポイントとの信号の交換により現在位置を特定してもよく、又は測位機能を有する携帯電話、PHS若しくはスマートフォンといった端末から位置情報を取得してもよい。
【0201】
ビーコン受信部7650は、例えば、道路上に設置された無線局等から発信される電波あるいは電磁波を受信し、現在位置、渋滞、通行止め又は所要時間等の情報を取得する。なお、ビーコン受信部7650の機能は、上述した専用通信I/F7630に含まれてもよい。
【0202】
車内機器I/F7660は、マイクロコンピュータ7610と車内に存在する様々な車内機器7760との間の接続を仲介する通信インタフェースである。車内機器I/F7660は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)又はWUSB(Wireless USB)といった無線通信プロトコルを用いて無線接続を確立してもよい。また、車内機器I/F7660は、図示しない接続端子(及び、必要であればケーブル)を介して、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface、又はMHL(Mobile High-definition Link)等の有線接続を確立してもよい。車内機器7760は、例えば、搭乗者が有するモバイル機器若しくはウェアラブル機器、又は車両に搬入され若しくは取り付けられる情報機器のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。また、車内機器7760は、任意の目的地までの経路探索を行うナビゲーション装置を含んでいてもよい。車内機器I/F7660は、これらの車内機器7760との間で、制御信号又はデータ信号を交換する。
【0203】
車載ネットワークI/F7680は、マイクロコンピュータ7610と通信ネットワーク7010との間の通信を仲介するインタフェースである。車載ネットワークI/F7680は、通信ネットワーク7010によりサポートされる所定のプロトコルに則して、信号等を送受信する。
【0204】
統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、各種プログラムにしたがって、車両制御システム7000を制御する。例えば、マイクロコンピュータ7610は、取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット7100に対して制御指令を出力してもよい。例えば、マイクロコンピュータ7610は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行ってもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行ってもよい。
【0205】
マイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、車両と周辺の構造物や人物等の物体との間の3次元距離情報を生成し、車両の現在位置の周辺情報を含むローカル地図情報を作成してもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される情報に基づき、車両の衝突、歩行者等の近接又は通行止めの道路への進入等の危険を予測し、警告用信号を生成してもよい。警告用信号は、例えば、警告音を発生させたり、警告ランプを点灯させたりするための信号であってよい。
【0206】
音声画像出力部7670は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図38の例では、出力装置として、オーディオスピーカ7710、表示部7720及びインストルメントパネル7730が例示されている。表示部7720は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。表示部7720は、AR(Augmented Reality)表示機能を有していてもよい。出力装置は、これらの装置以外の、ヘッドホン、搭乗者が装着する眼鏡型ディスプレイ等のウェアラブルデバイス、プロジェクタ又はランプ等の他の装置であってもよい。出力装置が表示装置の場合、表示装置は、マイクロコンピュータ7610が行った各種処理により得られた結果又は他の制御ユニットから受信された情報を、テキスト、イメージ、表、グラフ等、様々な形式で視覚的に表示する。また、出力装置が音声出力装置の場合、音声出力装置は、再生された音声データ又は音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して聴覚的に出力する。
【0207】
なお、図38に示した例において、通信ネットワーク7010を介して接続された少なくとも二つの制御ユニットが一つの制御ユニットとして一体化されてもよい。あるいは、個々の制御ユニットが、複数の制御ユニットにより構成されてもよい。さらに、車両制御システム7000が、図示されていない別の制御ユニットを備えてもよい。また、上記の説明において、いずれかの制御ユニットが担う機能の一部又は全部を、他の制御ユニットに持たせてもよい。つまり、通信ネットワーク7010を介して情報の送受信がされるようになっていれば、所定の演算処理が、いずれかの制御ユニットで行われるようになってもよい。同様に、いずれかの制御ユニットに接続されているセンサ又は装置が、他の制御ユニットに接続されるとともに、複数の制御ユニットが、通信ネットワーク7010を介して相互に検出情報を送受信してもよい。
【0208】
なお、図1を用いて説明した本実施形態に係る電子機器1の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを、いずれかの制御ユニット等に実装することができる。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体を提供することもできる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0209】
以上説明した車両制御システム7000において、図1を用いて説明した本実施形態に係る電子機器1は、図38に示した応用例の統合制御ユニット7600に適用することができる。例えば、電子機器1の記憶部40及びプロセッサ50は、統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610、記憶部7690、車載ネットワークI/F7680に相当する。ただし、これに限定されず、車両制御システム7000が図1におけるホスト80に相当してもよい。
【0210】
また、図1を用いて説明した本実施形態に係る電子機器1の少なくとも一部の構成要素は、図38に示した統合制御ユニット7600のためのモジュール(例えば、一つのダイで構成される集積回路モジュール)において実現されてもよい。あるいは、図1を用いて説明した本実施形態に係る電子機器1が、図38に示した車両制御システム7000の複数の制御ユニットによって実現されてもよい。
【0211】
11.内視鏡手術システムへの応用例
また、本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0212】
図40は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0213】
図40では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0214】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0215】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0216】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0217】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0218】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0219】
光源装置11203は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0220】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0221】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0222】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0223】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0224】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0225】
図41は、図40に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0226】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0227】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0228】
撮像部11402は、撮像素子で構成される。撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(Dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0229】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0230】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0231】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0232】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0233】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0234】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0235】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0236】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0237】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0238】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0239】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0240】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0241】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0242】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、内視鏡11100や、カメラヘッド11102の撮像部11402等に適用され得る。撮像部11402等に本開示に係る技術を適用することにより、解像度の低下を抑制しつつ高輝度の画像データを取得することが可能となる。
【0243】
なお、ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0244】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の技術的範囲は、上述の実施形態そのままに限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、異なる実施形態及び変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0245】
また、本明細書に記載された各実施形態における効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、他の効果があってもよい。
【0246】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
第1面に設けられた格子状の第1トレンチと、前記第1トレンチの底部に沿って設けられた第2トレンチとを備える第1半導体基板と、
前記第1半導体基板に設けられた複数の光電変換素子と、
を備え、
前記光電変換素子それぞれは、
前記第1半導体基板における前記第1トレンチ及び前記第2トレンチで区画された素子領域内に設けられ、入射光を光電変換して電荷を発生させる光電変換領域と、
前記素子領域内において前記光電変換領域を囲む第1半導体領域と、
前記第1トレンチの底部で前記第1半導体領域と接触する第1コンタクトと、
前記第1トレンチ内で前記第1コンタクトと接触する第1電極と、
前記素子領域内であって前記第1半導体領域と接する領域に設けられ、前記第1半導体領域と同じ第1導電型を備える第2半導体領域と、
前記素子領域内における前記第2半導体領域と接する領域であって前記第2半導体領域と前記第1面との間に設けられ、前記第1導電型と反対の第2導電型を備える第3半導体領域と、
前記第3半導体領域と接するように前記第1面に設けられた第2コンタクトと、
前記第2コンタクトと接する第2電極と、
を備え、
前記第1コンタクトの前記第1面からの高さは、前記第3半導体領域の前記第1面からの高さと異なる
固体撮像装置。
(2)
前記第1コンタクトの前記第1面からの前記高さは、前記第3半導体領域の前記第1面からの前記高さよりも高い前記(1)に記載の固体撮像装置。
(3)
前記第1コンタクトと前記第1電極とは、オーミック接触を形成する前記(1)又は(2)に記載の固体撮像装置。
(4)
前記第1コンタクトと前記第1電極との接触部分に設けられたシリサイド層をさらに備える前記(3)に記載の固体撮像装置。
(5)
前記第1コンタクトは、前記第1半導体領域の外周を囲むように前記第1半導体領域と接触する前記(1)~(4)の何れか1項に記載の固体撮像装置。
(6)
前記第1コンタクトは、前記第1半導体領域の外周の一部で当該第1半導体領域と接触する前記(1)~(4)の何れか1項に記載の固体撮像装置。
(7)
前記第2トレンチの内部に設けられた遮光膜をさらに備える前記(1)~(6)の何れか1項に記載の固体撮像装置。
(8)
前記遮光膜は、前記第1電極と同じ材料である前記(7)に記載の固体撮像装置。
(9)
前記遮光膜は、前記第1半導体領域と接触する前記(7)又は(8)に記載の固体撮像装置。
(10)
前記遮光膜と前記第1半導体領域との間に設けられた絶縁膜をさらに備える前記(7)又は(8)に記載の固体撮像装置。
(11)
前記第2トレンチは、前記第1トレンチの底面から前記第1半導体基板における前記第1面とは反対側の第2面まで達し、
前記遮光膜は、前記第1トレンチの前記底面から前記第1半導体基板の前記第2面まで達する
前記(7)~(10)の何れか1項に記載の固体撮像装置。
(12)
前記第2トレンチは、前記第1トレンチの底部から前記第1半導体基板における前記第1面とは反対側の第2面に向けて設けられ、
前記第2トレンチの底部と前記第2面とは、離間している
前記(7)~(10)の何れか1項に記載の固体撮像装置。
(13)
前記第2トレンチの前記底部に設けられ、前記第1版胴体基板の前記第2面側で前記第1半導体領域と接触する第3コンタクトをさらに備え、
前記遮光膜は、前記第2トレンチの前記底部で前記第3コンタクトに接触する
前記(12)に記載の固体撮像装置。
(14)
前記第2トレンチは、前記第1半導体基板における前記第1面とは反対側の第2面から前記第1トレンチの底部に向けて設けられ、
前記第2トレンチの底部と前記第1トレンチの底部とは、離間している
前記(7)~(10)の何れか1項に記載の固体撮像装置。
(15)
前記複数の光電変換素子の前記第1電極に対して一対一に接続された複数の配線をさらに備える前記(1)~(14)の何れか1項に記載の固体撮像装置。
(16)
前記複数の光電変換素子のうちの一部の光電変換素子の前記第1電極に対して接続された配線をさらに備える前記(1)~(14)の何れか1項に記載の固体撮像装置。
(17)
前記複数の光電変換素子のうち、最外周に位置する光電変換素子の前記第1電極に対して接続された配線をさらに備える前記(1)~(14)の何れか1項に記載の固体撮像装置。
(18)
前記第1半導体基板における前記第1面とは反対の第2面側に前記素子領域ごとに設けられ、入射光を前記光電変換領域に集光するオンチップレンズをさらに備える前記(1)~(17)の何れか1項に記載の固体撮像装置。
(19)
前記第1半導体基板における前記第1面とは反対の第2面側に前記素子領域ごとに設けられ、特定の波長を透過するカラーフィルタをさらに備える前記(1)~(18)の何れか1項に記載の固体撮像装置。
(20)
前記第1半導体基板における前記第1面とは反対の第2面側に設けられ、特定の波長を透過するカラーフィルタをさらに備え、
前記カラーフィルタは、2つ以上の前記素子領域で共有され、
前記第2トレンチは、前記カラーフィルタを共有しない素子領域間に設けられている
前記(1)~(18)の何れか1項に記載の固体撮像装置。
(21)
前記カラーフィルタを共有しない素子領域間に設けられた第3トレンチ内を埋める絶縁膜をさらに備える前記(20)に記載の固体撮像装置。
(22)
前記第1半導体基板における前記第1面とは反対の第2面側に前記素子領域ごとに設けられ、特定の波長を透過するカラーフィルタをさらに備え、
前記遮光膜は、前記カラーフィルタを貫通している
前記(7)に記載の固体撮像装置。
(23)
前記光電変換素子それぞれの前記第2電極に接続され、前記光電変換素子それぞれで発生した電荷を読み出す読出し回路をさらに備える前記(1)~(22)の何れか1項に記載の固体撮像装置。
(24)
前記読出し回路は、前記第1半導体基板とは異なる第2半導体基板に設けられ、
前記第1半導体基板と前記第2半導体基板とは、貼り合わされている
前記(23)に記載の固体撮像装置。
(25)
固体撮像装置と、
入射光を前記固体撮像装置の受光面に結像する光学系と、
前記固体撮像装置を制御するプロセッサと、
を備え、
前記固体撮像装置は、
第1面に設けられた格子状の第1トレンチと、前記第1トレンチの底部に沿って設けられた第2トレンチとを備える第1半導体基板と、
前記第1半導体基板に設けられた複数の光電変換素子と、
を備え、
前記光電変換素子それぞれは、
前記第1半導体基板における前記第1トレンチ及び前記第2トレンチで区画された素子領域内に設けられ、入射光を光電変換して電荷を発生させる光電変換領域と、
前記素子領域内において前記光電変換領域を囲む第1半導体領域と、
前記第1トレンチの底部で前記第1半導体領域と接触する第1コンタクトと、
前記第1トレンチ内で前記第1コンタクトと接触する第1電極と、
前記素子領域内であって前記第1半導体領域と接する領域に設けられ、前記第1半導体領域と同じ第1導電型を備える第2半導体領域と、
前記素子領域内における前記第2半導体領域と接する領域であって前記第2半導体領域と前記第1面との間に設けられ、前記第1導電型と反対の第2導電型を備える第3半導体領域と、
前記第3半導体領域と接するように前記第1面に設けられた第2コンタクトと、
前記第2コンタクトと接する第2電極と、
を備え、
前記第1コンタクトの前記第1面からの高さは、前記第3半導体領域の前記第1面からの高さと異なる
電子機器。
【符号の説明】
【0247】
1 電子機器
10 固体撮像装置
11 SPADアレイ部
12 駆動回路
13 出力回路
15 タイミング制御回路
20、20a、20b、20c、20d、220、20B、20G、20R、620B、620G、620R SPAD画素
21 フォトダイオード
22 読出し回路
23 クエンチ抵抗
24 選択トランジスタ
25 デジタル変換器
251 抵抗
26 インバータ
27 バッファ
30 撮像レンズ
40 記憶部
50 プロセッサ
60 カラーフィルタアレイ
61 単位パターン
71 受光チップ
72 回路チップ
101、141 半導体基板
102 光電変換領域
103 N-型半導体領域
104、104a P型半導体領域
105、105A P+型半導体領域
106、106A N+型半導体領域
107 カソードコンタクト
108、108A、408、508 アノードコンタクト
109、109A、109B、109D 絶縁膜
110、310、510 素子分離部
111、311、511 遮光膜
112、312、512、710 絶縁膜
113 ピニング層
114 平坦化膜
115、115R、115G、115B カラーフィルタ
116 オンチップレンズ
120、130 配線層
121 カソード電極
122 アノード電極
123、131 層間絶縁膜
124、132 配線
125、135 接続パッド
142 回路素子
252、262 NMOSトランジスタ
261 PMOSトランジスタ
A1、A2、A3 開口
LD 画素駆動線
LS 出力信号線
M1、M2、M3、M4 マスク
T1 第1トレンチ
T2 第2トレンチ
T3、T4、T5、T11 トレンチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
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図40
図41