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特許7480124金属薄板部材を結合して金属薄板スタックを形成するための方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】金属薄板部材を結合して金属薄板スタックを形成するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20240430BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
H01F41/02 B
H02K15/02 F
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021513185
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2019074141
(87)【国際公開番号】W WO2020053230
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】102018122047.2
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520269008
【氏名又は名称】フェストアルピーネ オートモーティヴ コンポーネンツ デッティンゲン ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】voestalpine Automotive Components Dettingen GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Daimlerstrasse 29, 72581 Dettingen an der Erms, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハインリヒ ブアシー
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン ランクスヴァイアト
(72)【発明者】
【氏名】アクセル ライナー ナン
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-030706(JP,A)
【文献】特表2016-506313(JP,A)
【文献】特開2005-348456(JP,A)
【文献】特表2018-518591(JP,A)
【文献】特開昭57-003560(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0082773(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0314563(US,A1)
【文献】国際公開第2018/216565(WO,A1)
【文献】米国特許第04103195(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/02
H01F 1/18
H01F 1/147
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属薄板部材(40)を結合して金属薄板スタック(46)を形成するための方法であって、
硬化可能なポリマー接着剤層を備えた上面(17)および/または下面(18)を有する金属薄板帯材(12)を連続的に塗布装置(15,15’)を通して搬送し、該塗布装置(15,15’)内で、活性剤を含む流体(16,16’)を前記接着剤層に塗布し、
塗布された前記流体(16,16’)を乾燥させ、
乾燥した活性剤によって被覆された前記金属薄板帯材(12)を連続的に帯材貯蔵器(20)に供給し、
前記金属薄板帯材(12)を前記帯材貯蔵器(20)からタイミング制御式の分離装置(30)に供給し、該分離装置(30)内において金属薄板部材(40,41,42)を前記金属薄板帯材(12)から分離して互いに上下に積層し、
分離されて互いに上下に積層された前記金属薄板部材(40)を、前記活性剤によって被覆された前記接着剤層を用いて互いに結合して金属薄板スタック(46)を形成する、方法。
【請求項2】
前記硬化可能なポリマー接着剤層が、前記上面(17)および前記下面(18)に異なる層厚で被着されている前架橋されたエポキシ-バックラックを含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記エポキシ-バックラックは、前記上面(17)および前記下面(18)において異なる強さで前架橋されている、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記帯材貯蔵器(20)は非連続的な帯材貯蔵器である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記帯材貯蔵器(20)は連続的な帯材貯蔵器である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記活性剤を含む前記流体(16,16’)を液体として塗布する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記活性剤を含む前記液体を液体噴流としてまたはローラを用いて前記金属薄板帯材に塗布する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記活性剤を含む前記流体(16,16’)をエアロゾルとして塗布する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記金属薄板帯材を、前記活性剤を含むエアロゾルを通して搬送する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記金属薄板帯材に塗布された前記流体(16,16’)を、空気、例えば高温空気の供給または相対空気湿分が減らされた空気の供給によって乾燥させる、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記金属薄板帯材を乾燥時に加熱する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記金属薄板帯材を乾燥後に冷却する、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
金属薄板部材(40)を結合して金属薄板スタック(46)を形成するための装置であって、
硬化可能なポリマー接着剤層を備えた上面(17)および/または下面(18)を有している金属薄板帯材(12)を連続的に供給するための供給装置(11,13)と、
活性剤を含む流体(16,16’)を前記金属薄板帯材(12)の前記接着剤層に塗布するための塗布装置(15,15’)と、
塗布された前記流体(16,16’)を乾燥させるための乾燥装置(19,19’)と、
前記金属薄板帯材(12)から金属薄板部材(40,41,42)を分離するためのタイミング制御式の分離装置(30)と、
分離された前記金属薄板部材(40)を積み重ね、該金属薄板部材(40)を結合して金属薄板スタック(46)を形成するための積重ね兼スタッキング装置(43,44,45)と
を備える装置において、
前記塗布装置(15,15’)と前記分離装置(30)との間に帯材貯蔵器(20)が配置されていることを特徴とする、装置。
【請求項14】
前記帯材貯蔵器(20)は、バックラックおよび乾燥した活性剤によって被覆された前記金属薄板帯材(12)のコイル(50)を収容するように形成されている、請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記帯材貯蔵器(20)は、バックラックおよび乾燥した活性剤によって被覆された前記金属薄板帯材(12)の動的に可変の帯材ループ(21)を生じさせるように形成されている、請求項13記載の装置。
【請求項16】
前記塗布装置(15,15’)は、耐食性の材料製のスプレーノズルを備えた少量潤滑装置を備えている、請求項13から15までのいずれか1項記載の装置。
【請求項17】
互いに上下に積み重ねられた多数の金属薄板部材(40)を含む金属薄板スタック(46)であって、前記金属薄板部材(40)の間に接着層が形成されており、該接着層は、架橋されたエポキシ-バックラックと、前記エポキシ-バックラックに塗布された、活性剤としての乾燥したイミダゾールの誘導体を含んでいる、金属薄板スタック(46)。
【請求項18】
前記架橋されたエポキシ-バックラックは、ビスフェノール-A-エピクロロヒドリン樹脂系をベースとしており、かつ/または前記活性剤は、2-エチル-4-メチル-イミダゾールを含んでいる、請求項17記載の金属薄板スタック(46)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属薄板部材を結合して金属薄板スタックを形成するための方法および装置ならびに相応に製造された金属薄板スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
互いに結合された金属薄板部材、特に金属薄片から成る金属薄板スタックは、例えば従来の中実の鉄心の代わりに、電気モータのような電気機械のロータおよび/またはステータの磁心として使用される。このような磁心の薄片スタックは、極めて薄い多数の電気金属薄板から製造されている。電気金属薄板は、磁界の伝導時および強化時に優れた特性を有している特殊な合金から成っている。薄片スタックでは、個々の金属薄片は互いに絶縁されている。薄片スタックから形成されたこれらの磁心は、電気エネルギから運動エネルギへの変換時にその効率に影響を及ぼす、電気モータの最も重要なコンポーネントの一部である。この場合、金属薄板の組成および応力フリー、その電気抵抗の値、および絶縁の完全性は、重要な影響ファクタである。これらの影響ファクタは、特に金属薄板相互の面状のまたは点状の結合の方法と、加工品質、例えば打抜きばりとによって顕著に決定される。
【0003】
金属薄片を接合してスタックを形成することは、電気機械製作では「スタッキング」と呼ばれる。スタックは、最初は互いに移動可能な多数の金属薄板が互いに結合されて形成される整然とした積層体である。金属薄板を結合してスタックを形成することは、例えばねじ締結によってまたは外側からスタックに当て付けられるクランプを用いて達成される。このような結合形態は結合の解離を可能にするが、このような結合手段によって、電気機械の性能は、通常、例えば結合手段の領域での電気的な短絡または外乱磁界によってマイナスの影響を受ける。
【0004】
知られている別の結合方法は溶接である。この場合、金属薄板は、熱によってかつ素材結合式に結合される。打ち抜かれて積み重ねられた薄片は、装置内に押し込まれ、外径部において、薄片平面に直行するように方向付けられた複数の溶接シームによって接合される。しかしながら、溶接は、薄片およびその絶縁層を損傷し、過電流損失を高めることがあり、または磁界に影響を及ぼすことがある。確かに構造上の自由度は、溶接シームによってほとんど制限されないが、このようにして製造されたスタックは、破損なしにはもはや分解することができない。
【0005】
別の結合方法として、いわゆる打抜きスタッキングが知られている。打抜きスタッキングでは、電気金属薄板が機械行程において原材料から打ち抜かれ、積層体上に下ろされ、積層体に結合される。打抜き時および/または下ろし時もしくは結合時に、電気金属薄板において、隣接した電気金属薄板の結合部と協働する機械的な結合部が生じる。これらの結合部は、凸部または突子とも呼ばれる隆起部であり、これらの隆起部は、電気金属薄板に押込み成形される。絶縁被覆層が変形部の領域で損傷することがあるので、短絡を排除することができない。さらに、結合部は、構造上の制限を有しており、局部的な結合手段に基づいて磁界に影響を及ぼす。
【0006】
さらに、結合手段としての接着剤の使用が知られている。接着スタッキングとして知られているこの方法では、多くの場合、熱硬化可能な溶融接着剤塗料が使用され、これらの溶融接着剤塗料によって電気金属薄板が被覆される。溶融接着剤塗料によって、通常、原材料、いわば無端の金属薄板帯材が被覆される。溶融接着剤によって被覆された金属薄板帯材から個々の薄片が分離された後で、薄片は互いに方向付けられ、重なり合うように下ろされて、積層体を形成する。まだ互いに結合されていない金属薄板のこの積層体は、次いで、多くの場合30~150分である所定の時間にわたって、溶融接着剤の反応温度へと加熱される。反応温度は、通常、150~250℃である。熱作用中に積層体には、押圧装置によって平方mm当たり2~6ニュートンの圧力が加えられる。次いで、最長60分持続する冷却段階が続く。確かに溶融接着剤の使用によって、個々の薄片の全面的でかつ耐久性のある結合部が、金属構造または絶縁層の損傷なしに得られるが、焼付け工程および冷却工程は、極めて時間がかかり、ゆえに、連続的な大量生産への組込みは困難を伴ってしか可能でない。
【0007】
この欠点は、国際特許出願である国際公開第2014/089593号に記載された、金属薄板スタックを製造するためのほぼ連続的な方法によって克服され、この公知の方法では、個々の金属薄板部材または金属薄片を、少なくとも部分的に硬化可能なポリマー接着層によって被覆されている金属薄板帯材から分離し、スタックに積層し、圧力下で互いに素材結合式に結合する。この方法では、熱硬化可能な溶融接着塗料によって予め被覆された電気金属薄板帯材が、コイルから繰り出され、打抜き装置に供給され、電気金属薄板帯材から金属薄片が打ち抜かれ、互いに向かい合っている接着剤被覆された側で金属薄片スタックに積層される。打抜き装置の上側工具の圧力下で、互いに向かい合っている接着剤被覆された表面の素材結合式の結合部が形成される。
【0008】
金属薄板スタックの製造時における所要時間および所要エネルギを、特に溶融接着剤の硬化に関して短縮または節減するために、上に述べた国際特許出願である国際公開第2014/089593号には、金属薄板部材または金属薄片の打抜き前に、水と、熱可塑性のかつ/または架橋可能な定着剤、例えばポリビニルアルコールとの混合物を塗布することが提案される。国際公開第2014/089593号によれば、混合物はさらに、溶融接着剤と定着剤との間の化学反応を改善するために、例えば2-メチルイミダゾールのような水溶性の反応促進剤を含んでいてよい。定着剤混合物の塗布は、国際公開第2014/089593号の方法では、打抜き工具の直ぐ上流に設けられたスプレー装置を介して行われるので、スプレー装置と打抜き装置との間にはさらに、被着された混合物を乾燥させる乾燥装置が配置されており、これによって、水性の定着剤混合物による帯材搬送装置または打抜き装置の汚れを阻止することができる。打抜き装置自体にもさらに、溶融接着剤塗料/定着剤被覆層に蒸気を供給する活性化装置と、熱活性化のための加熱装置とが設けられている。打抜き工具において金属薄片を打ち抜き、次いで、打ち抜かれた金属薄片をしばしば手動でスタックに積層し、プレスし、別体の炉で硬化させる、金属薄板スタックの接着スタッキングの従来の方法とは異なり、国際公開第2014/089593号に記載された方法は、電気金属薄板スタックのほぼ連続的な製造を可能にしており、この方法では、連続的な電気帯材がコイルから繰り出され、打抜き装置に供給され、硬化された電気金属薄板スタックが打抜き工具から離脱する。それにもかかわらず、この方法は、電気金属薄板帯材が打抜き装置のタイミングで停止され、かつ、さらに搬送される点において、タイミング制御されている。しかしながら、タイミング制御された帯材搬送に基づいて、定着剤混交物を必要な均一性をもって塗布することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ゆえに、本発明の根底にある技術的な課題は、国際公開第2014/089593号に記載された方法を改良して、打抜き工程前に被着された補助被覆層の品質が、特に被覆層の層厚および均一性に関して改善されるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この技術的な課題は、本発明の請求項1の方法によって解決される。本発明に係る方法の好適な発展形態は、従属請求項の対象である。
【0011】
したがって、本発明は、金属薄板部材を結合して金属薄板スタックを形成するための方法であって、硬化可能なポリマー接着剤層を備えた上面および/または下面を有する金属薄板帯材を連続的に塗布装置を通して搬送し、この塗布装置内において、活性剤を含む流体を接着剤層に塗布し、次いで、塗布された流体を乾燥させ、その後、乾燥した活性剤によって被覆された金属薄板帯材を連続的に帯材貯蔵器に供給する方法に関する。次いで、金属薄板帯材を帯材貯蔵器からタイミング制御式の分離装置に供給し、この分離装置内において金属薄板部材を金属薄板帯材から分離して互いに上下に積層する。最後に、分離されて互いに上下に積層された金属薄板部材を、個々の金属薄板部材の間に位置していて活性剤によって被覆された接着剤層を用いて互いに結合して金属薄板スタックを形成する。
【0012】
つまり、本発明によれば、ポリマー接着剤層のための活性剤を含んでいる流体の塗布と、金属薄板部材を金属薄板帯材から分離する分離装置との間に、帯材貯蔵器を設けることが提案され、これによって、帯材貯蔵器の上流における金属薄板帯材の搬送を、特に活性剤を含む流体の塗布時に連続的に行うことができ、これに対して、帯材貯蔵器の下流では、分離装置のタイミングでの金属薄板帯材のタイミング制御された搬送が可能になる。塗布装置を通して行われる金属薄板帯材の連続的な搬送に基づいて、活性剤を含む流体層の品質を最適化することができる。なぜなら、等しい厚さでかつ均一な被覆は、タイミング制御された作動時よりも連続的な作動時に簡単だからである。同時に、金属薄板部材の分離を高い精度で行うことができる。なぜなら、分離装置の領域では、分離装置自体のタイミングでの金属薄板帯材のタイミング制御された搬送が可能になるからである。
【0013】
本発明に係る方法において使用される金属薄板帯材は、好ましくは、典型的には粒子非配向性の金属薄板または粒子配向性の金属薄板として製造することができる鉄・ケイ素合金から成る電気金属薄板である。粒子非配向性の電気金属薄板は、その等方向の磁気特性のお陰で、主として、例えば電気モータのような回転機器において使用される。
【0014】
硬化可能なポリマー接着層は、典型的には、欧州特許出願公開第0008811号明細書に記載されている、熱硬化可能な溶融接着塗料製の層である。このような物質は、「バックラック(Backlack)」という名称でも知られている。特定のバックラックは、熱可塑性の特性を示し、すなわち、バックラックは加熱時に軟化し、このことは加熱された状態での接着を可能にし、かつ冷却時に化学的な変化なしに再び硬化する。このような熱可塑性の合成樹脂は、例えばポリビニルブチラール、ポリアミド、またはポリエステルをベースとしているが、接着作用が作動時における温度上昇時に再び低下することがあるという欠点を有している。反応性の溶融接着剤とも呼ばれる他の熱硬化可能な溶融接着剤は、加熱時に可塑性状態を越えて化学的な架橋によって硬化することができる。硬化は不可逆的であるので、このような溶融接着剤によって製造された金属薄板スタックの安定性は、作動時における加熱時でも与えられたままである。本方法において好適な反応性の溶融接着剤の一つとして、エポキシ樹脂系がある。このようなエポキシ樹脂系は、通常樹脂と硬化剤成分とから成っており、「エポキシ樹脂」という概念は、多くの場合液状の樹脂成分のためにも、樹脂と硬化剤とから成る固体の架橋された反応製品のためにも使用される。
【0015】
好ましくは、本発明に係る方法では、2段階で硬化するエポキシ樹脂系によって被覆された金属薄板帯材が使用され、特に好ましくは、硬化剤としてジシアンアミドを備えたビスフェノール-A-エピクロロヒドリン樹脂系のような、適宜な硬化剤を備えたビスフェノールをベースとしたエポキシ樹脂系によって被覆された金属薄板帯材が使用される。2段階で硬化するエポキシ樹脂系の使用時には、被覆された金属薄板帯材の製造時に、バックラック層は部分架橋しかされず、これによって、バックラック層は、室温時に安定したフレキシブルでかつ乾燥した、しかしながら、なお反応性の状態にある。樹脂系のこの状態は、B状態(Bステージ)と呼ばれる。したがって、好ましくは、本発明に係る方法では、硬化可能なポリマー接着剤層(つまり、バックラック層)がこのB状態にある金属薄板帯材が、出発材料として使用される。典型的には、部分架橋されたバックラック層は、数マイクロメートルの厚さを有している。熱供給によって、B状態にあるバックラック層はさらに反応し、完全架橋されたC状態に移行することができる。このC状態への移行は、本発明に係る方法では、互いに上下に積層された金属薄板部材を結合して金属薄板スタックを形成する最後のステップで行われる。
【0016】
金属薄板帯材は、その上面または下面または両面においてバックラックによって被覆されていてよい。上面および下面は、ここでは分離装置への水平に走行する帯材の供給に関している。上面および下面にバックラック被覆層が設けられている場合には、層の厚さおよび架橋程度が異なっていてよい。帯材の上方に配置されている打抜き工具によって作動する分離装置では、帯材の上面にある層は、下面にある層よりも薄くかつ強く架橋されていてよい。このようになっていると、打抜き工具の汚れを最小にすることができる。強く前架橋された上面におけるバックラックの典型的な層厚は、1~5μmの範囲であり、比較的弱く前架橋された下面における層厚は、2~10μmの範囲である。
【0017】
有利には、本発明に係る方法において使用されるバックラック層は、硬化可能なバックラックによって被覆された電気帯材の貯蔵安定性を高めるための充填剤および金属薄板スタック製造後に硬化されるバックラック層の安定性を高めるための充填剤を含んでいる。適宜な充填剤を備えたバックラックは、例えば国際特許出願である国際公開第2016/151129号に記載されている。この明細書によれば、例えば金属カーボナイト、金属スルフェート、金属スルフィット、金属シリケート、または金属ホスファート、またはこれらの混合物を充填剤として使用することができる。典型的にはこのようなバックラックは、74~85容量%のエポキシ樹脂、6~10%の硬化剤、および5~20%の充填剤を含んでいる。
【0018】
活性剤というのは、本明細書との関連において、活性剤が、硬化が始まる温度を下げる働きをするものであるとしても、硬化可能なポリマー接着剤層の硬化反応に有利な物質であり、かつ/または硬化反応、例えばポリマー接着剤層の化学的な架橋を加速させる物質であると理解されるべきである。エポキシ樹脂系のための適宜な活性剤は、例えば第三級アミンまたはイミダゾールである。
【0019】
本発明に係る方法の好適な実施形態によれば、活性剤は、活性成分として、イミダゾールの水溶液を、特に2-エチル-4-メチル-イミダゾールの水溶液を含んでいる。つまり、驚いたことに、塗布された混合物は、硬化時における金属薄板部材の結合を加速するために、国際公開第2014/089593号において提案されているように、熱可塑性または架橋可能な定着剤を含む必要がないということが確認された。特に好適な実施形態では、活性剤溶液は、2~10重量%の2-エチル-4-メチル-イミダゾール、80~90重量%の水、0~15重量%の有機溶剤、例えば2-メトキシプロパノール、および0~2重量%の添加剤、例えばLigaphob N90(Ligaphob N90は、独国のバート・ミュンスターアイフェル在のPeter Greven GmbH & Co.KG社によって製造された技術的なオレイン酸のナトリウム石鹸である)を含む。
【0020】
特に好ましくは、本発明に係る方法では、充填剤を含むビスフェノール-A-エピクロロヒドリン樹脂系がバックラックとして、2-エチル-4-メチル-イミダゾールが活性剤として使用される。
【0021】
帯材貯蔵器として、本発明に係る方法においては様々な装置を使用することができる。最も広い帯材貯蔵器という概念には、連続的な帯材貯蔵器および非連続的な帯材貯蔵器の両方が含まれている。「連続的な帯材貯蔵器」および「非連続的な帯材貯蔵器」という概念は、帯材貯蔵器の作業形式に関係している。すなわち、連続的に作動する帯材貯蔵器は、連続的に帯材を収容し、かつ帯材を同時にタイミング制御して送出する。連続的な収容および連続的な送出では、帯材貯蔵器の入口での帯材速度と出口での帯材速度とが、所定の時間に対する帯材貯蔵器の収容能力の範囲内で互いに異なっている。したがって、タイミング制御された送出は、連続的な帯材貯蔵器の特殊事例であって、この特殊事例では、帯材を帯材貯蔵器の出口側で停止させることができ、これに対して、帯材は入口側においては引き続き供給される。それとは異なり、非連続的に作動する帯材貯蔵器は、帯材収容および帯材送出が少なくとも時間的に、場合によってはさらに、場所的にも分離されている帯材貯蔵器であり、つまり、少なくとも、帯材貯蔵器内への帯材の、好ましくは連続的な供給中に、帯材は帯材貯蔵器から送出されず、帯材のタイミング制御された送出中には、帯材は帯材貯蔵器内に収容されない。
【0022】
上に記載されたように、部分架橋されたバックラック(B状態)によって被覆されている金属薄板帯材が、貯蔵安定性を有していることが証明されているので、被覆された金属薄板帯材の製造は、既に鉄鋼メーカにおいて行うことができる。しかしながら、活性剤の塗布は、部分架橋されたバックラックによって被覆された金属薄板帯材の製造時にはまだ行うことができない。なぜなら、活性剤はバックラックの貯蔵安定性を強烈に低下させ、低い貯蔵温度でも、バックラックを徐々に硬化させるからである。一般的に金属薄板スタックの製造は、時間的にも場所的にも、金属薄板帯材自体の製造から分離されているので、部分架橋されたバックラックによって被覆された金属薄板帯材は、典型的にはコイルの形態で準備され、定着剤および反応促進剤のような助剤の塗布は、国際公開第2014/089593号に記載されているように、分離装置内への金属薄板帯材の供給直前に行われる。驚きと共に見出されたことであるが、活性剤を含む流体の被着と、次いで行われる、被着された活性剤層の乾燥とによって、部分架橋されたバックラックの層と乾燥した活性剤の層とを有しているこのように形成された金属薄板帯材の貯蔵耐性は、少なくとも、金属薄板帯材の中間貯蔵が可能になるほどに大きく高めることができる。したがって、本発明に係る方法の一実施形態では、非連続的な帯材貯蔵器が使用され、この帯材貯蔵器内にまず、乾燥した活性剤によって被覆された金属薄板帯材が導入される。そして、後の時点で、金属薄板帯材は帯材貯蔵器から、タイミング制御式の分離装置に供給される。非連続的な帯材貯蔵器のための一例は、乾燥した活性剤によって被覆された金属薄板帯材がコイルとして巻き取られるウインチである。それどころか非連続的な帯材貯蔵器の使用は、使用されるバックラックおよび活性剤の種類に応じてバックラックの開始する更なる反応が、分離装置内への供給前に望まれている場合に好適であると言える。この場合、金属薄板帯材は、活性剤の塗布後に必要な休止時間のために、スペースを節減してコイルの形態で貯蔵することができ、その後で帯材は所望の時点で分離装置に供給される。
【0023】
しかしながら、特に好ましくは、本発明に係る方法では連続的な帯材貯蔵器が、すなわち、金属薄板帯材によって完全に貫通走行され、金属薄板帯材が帯材貯蔵器からの進出直後に、タイミング制御式の分離装置に供給される、帯材貯蔵器が使用される。典型的な連続的な帯材貯蔵器は、例えば帯材ループであり、この帯材ループは、金属薄板帯材が帯材貯蔵器内において、例えば適宜な可動の変向ローラを介して、動的に可変の経路を進むように設計されており、これによって、一方で帯材貯蔵器の入口では金属薄板帯材の連続的な供給が可能になり、しかしながら、他方で、帯材貯蔵器の出口では、分離装置のタイミングでのタイミング制御された更なる搬送が保証されている。
【0024】
好ましくは、活性剤を含む流体は、液体であり、例えば活性剤が例えば水のような液状の溶剤内に溶かされている液体である。したがって、「乾燥」というのは、本発明に係る方法の範疇では、溶剤が塗布された流体から除去するプロセスであると理解され、これによって、乾燥後には、なお活性剤および場合によっては流体内に存在している非揮発性の別の助剤だけが、バックラックによって被覆された金属薄板帯材に、確定された添加層として留まっている。このような液体は、好ましくはローラ塗布によってまたは液体噴流として帯材表面に塗布される。
【0025】
他の実施形態によれば、活性剤を含む流体は、エアロゾルであり、このエアロゾルは、塗布装置内において例えば液体の霧化によって生じる。この場合、金属薄板帯材は、活性剤を含むエアロゾルを通して搬送され、これによって、エアロゾル粒子が、金属薄板帯材の表面に付着し、薄い層を形成することができる。この場合でも通常、金属薄板帯材におけるエアロゾル粒子の付着後に、次いで行われる乾燥プロセスで除去されねばならない液体が、活性剤の担体として存在している。
【0026】
流体の塗布と分離装置における金属薄板帯材からの金属薄板部材の分離との間に、帯材貯蔵器を介装することによって、塗布された流体の乾燥時における大きなフレキシビリティも可能である。なぜなら、流体塗布と分離装置内への金属薄板帯材の供給との間の空間的な間隔および時間的な間隔が共に、従来技術に比べて増大されているからである。それどころか、非連続的な帯材貯蔵器の使用時には、分離装置における帯材速度からの完全な分離が可能である。適宜な乾燥変化形態は、周囲空気内での帯材の搬送を含んでおり、このことは、薄い液体層では既に乾燥のために十分であると言える。代替的に、確定された相対空気湿分、特に周囲空気よりも低い空気湿分を有する空気流を、流体被覆された金属薄板帯材に導くことも可能である。乾燥のさらに別の代替的な実施形態としては、高温空気、特に低い空気湿分を有する高温空気の供給がある。場合によっては、帯材自体を、これらの乾燥方法のそれぞれの乾燥方法において、溶剤の蒸発を促進するために加熱することが可能である。このとき、好ましくは、誘導式の加熱方法が使用される。しかしながら、活性剤の乾燥工程の範囲内での熱供給では、金属薄板帯材の温度が、バックラック、つまり、予め被覆された硬化可能なポリマー接着層の硬化温度を下回っている範囲に留まることに注意しなくてはならない。
【0027】
塗布された流体の乾燥が、金属薄板帯材の加熱に付随して行われる場合には、本発明に係る方法の別の構成では、金属薄板帯材を、塗布された流体の乾燥直後に冷却すること、例えば周囲空気または冷却された周囲空気を金属薄板帯材に吹き付けることによって冷却することも提案されていてよい。金属薄板帯材の冷却は、好ましくは帯材貯蔵器内への金属薄板帯材の供給前に行われる。
【0028】
本発明はまた、金属薄板部材を結合して金属薄板スタックを形成するための装置にも関し、この装置では、活性剤を含む流体を塗布するための塗布装置と、タイミング制御されて作動する分離装置との間に、帯材貯蔵器が配置されている。したがって、本発明の対象は、金属薄板部材を結合して金属薄板スタックを形成するための装置であって、硬化可能なポリマー接着剤層を備えた上面および/または下面を有している金属薄板帯材を連続的に供給するための供給装置と、活性剤を含む流体を金属薄板帯材の接着剤層に塗布するための塗布装置と、塗布された流体を乾燥させるための乾燥装置と、金属薄板帯材から金属薄板部材を分離するためのタイミング制御式の分離装置と、分離された金属薄板部材を積み重ね、これらの金属薄板部材を結合して金属薄板スタックを形成するための積重ね兼スタッキング装置と、を備える装置でもある。本発明に係る装置は、塗布装置と分離装置との間に帯材貯蔵器が配置されていることを特徴とする。
【0029】
本発明に係る装置の変化形態によれば、帯材貯蔵器は非連続的な帯材貯蔵器であり、例えば、バックラックおよび乾燥した活性剤によって被覆された金属薄板帯材のコイルを収容するように形成されていてよい。この場合、本発明に係る装置は、互いに独立した2つの部分装置を含んでいる。第1の部分装置は、活性剤流体を連続的に塗布しかつ乾燥させるための塗布装置、および乾燥した活性剤によって被覆された金属薄板帯材のための非連続的な帯材貯蔵器の第1のコンポーネントを含んでいる。例えばウインチを有しているこの第1のコンポーネント内では、乾燥した活性剤によって被覆された金属薄板帯材がコイルとして巻き取られる。このコイルは、ある一定の時間、中間貯蔵することができ、次いで、更なる処理のために第2の部分装置へと搬送することができる。第2の部分装置は、乾燥した活性剤によって被覆された金属薄板帯材のための非連続的な帯材貯蔵器の第2のコンポーネント、分離装置、および積重ね兼スタッキング装置を含んでいる。つまり、活性剤によって被覆された帯材は、第1の部分装置から第2の部分装置に搬送されねばならない。したがって、コイルの形態での帯材の貯蔵が特に適当である。このようなコイルは、第1の部分装置と第2の部分装置との間で運搬可能であるので、第1の部分装置と第2の部分装置とは、必ずしも同じ場所に位置している必要がない。それどころか、第1の部分装置における活性剤による被覆が専門のメーカによって実施され、第2の部分装置における分離/接着スタッキングが他の専門のメーカによって実施されることが考えられる。
【0030】
本発明に係る装置の他の変化形態によれば、帯材貯蔵器は連続的な帯材貯蔵器であり、例えば、バックラックおよび乾燥した活性剤によって被覆された金属薄板帯材の、動的に可変の帯材ループを生じさせるように形成されていてよい。
【0031】
水性の活性剤溶液のための塗布装置は、好ましくは、耐食性の材料製のスプレーノズルを備えた少量潤滑装置(最少量潤滑装置とも呼ばれる)を含んでいる。ゆえに、商業的に、ゆえに、安価に入手可能な少量潤滑設備を使用することができる。しかしながら、商業的に入手可能なこれらの少量潤滑設備は、使用される材料への特別な要求が課されない、オイル含有の流体を放出するように設計されているので、これらの少量潤滑設備は、本発明に係る方法における使用のために、少なくとも使用されるノズルに関して、耐食性の材料、例えば耐食性でかつ耐酸性/耐塩基性の特殊鋼製のノズルが使用される点で適合されねばならない。
【0032】
本発明はまた、互いに上下に積み重ねられた多数の金属薄板部材を含む金属薄板スタックであって、金属薄板部材の間に接着層が形成されており、接着層は、好ましくはビスフェノール-A-エピクロロヒドリン樹脂系をベースとした、架橋されたエポキシ-バックラック、および活性剤の誘導体を含んでおり、活性剤は、好ましくは2-エチル-4-メチル-イミダゾールであるイミダゾールを含んでいる。イミダゾール誘導体は、硬化時に、架橋するバックラックの成長する鎖に不可逆式に結合され、これによって、架橋試薬としての作用を発揮し、このことは、例えば硬化された網状組織の高いガラス転移温度のような、極めて良好な特性において現れる。
【0033】
個々の金属薄板部材の間の接着層は、好ましくは、マイクロメートル範囲内の厚さ、好ましくは2~10μmの範囲内の厚さを有している。
【0034】
次に本発明について、添付の図面に示された実施例を参照しながら詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】連続的な帯材貯蔵器を備えた、金属薄板スタックを製造するための装置を概略的に示す図である。
図2】金属薄板スタックにおいて2つの金属薄板部材の間にある接着層を概略的に示す図である。
図3】非連続的な帯材貯蔵器を備えた、図1の装置の変化形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1には全体が符号10で示されている、金属薄板部材を連続的に結合して金属薄板スタックを形成するための本発明に係る方法を実施するための装置が示されている。図1に示された装置では、連続的な帯材貯蔵器が使用される。本発明に係る方法の出発材料としては、バックラック、つまり、硬化可能なポリマー接着剤層によって被覆された金属薄板帯材が用いられ、この金属薄板帯材は、図示の例では、コイル11とも呼ばれるロールの形態で準備される。バックラック被覆された金属薄板帯材12は、コイル11からの繰出し後に、従来の形式で帯材搬送装置および矯正装置13を通過走行し、この矯正装置13は、帯材を矢印14の方向に搬送し、かつ矯正装置の通過後に、繰り出された帯材の平らで歪みのない状態を保証する。矯正装置13の通過後に金属薄板帯材12は、連続的に塗布装置15を通して搬送され、この塗布装置15において、活性剤を含む流体16が、帯材12の上面17および/または下面18に既に存在しているポリマー接着剤層に塗布される。帯材12が上面17においても下面18においてもバックラックによって被覆されていることが望ましい場合には、活性剤流体16’を塗布するための相応の塗布装置15’が、図1において破線で示されているように帯材12の下にも設けられている。塗布装置15,15’は、耐食性でかつ耐酸性/耐塩基性の特殊鋼材料製のスプレーノズルを備えた少量潤滑装置を備えている。塗布装置15,15’には直接、乾燥装置19,19’が接続しており、この乾燥装置19,19’において、塗布された流体が乾燥される。乾燥装置19,19’は、例えば乾燥空気または高温空気のためのブロワおよび/または加熱装置、例えば誘導加熱装置を、金属薄板帯材12を加熱するために有しており、これによって、塗布された流体層の乾燥を促進することができる。金属薄板帯材12の加熱は、予め被覆されたバックラックの硬化が回避されるように調整されており、つまり、金属薄板帯材およびバックラック層の温度は、常にバックラックの硬化温度の下に保たれる。乾燥装置19,19’にはまた(図1の実施形態では図示されていない)冷却装置も接続されていてよく、この冷却装置は、例えばブロワを介して、加熱された帯材を可能な限り迅速に再び周囲温度に冷却する。しかしながら、このような冷却装置は、必ずしも必要ではなく、特に、金属薄板帯材の加熱が活性剤流体の乾燥のために、バックラックの硬化温度付近の比較的高い温度へと行われる場合には、考慮することができる。塗布された活性剤流体の乾燥、および場合によっては行われる冷却の後で、金属薄板帯材12は帯材貯蔵器20内に案内され、この帯材貯蔵器20は、図1の例では連続的な帯材貯蔵器として形成されている。図示の例では、連続的な帯材貯蔵器20は、金属薄板帯材12が通過走行するループ軌道21によって象徴的に示されている。帯材12が帯材貯蔵器20を通過走行する付加的な経路は、図1中に矢印22によって象徴的に示されている可動の変向ローラを介して、動的に可変である。帯材ループ21の動的に可変の経路に基づいて、金属薄板帯材12は、帯材貯蔵器20の入口23に連続的に供給されるが、帯材貯蔵器20の出口24ではタイミング制御されてさらに搬送することができる。そのために、帯材貯蔵器20の下流には、送り装置25が接続されており、この送り装置25は、帯材12を、全体が符号30で示された分離装置内にさらに搬送する。
【0037】
図示の例では、分離装置30は打抜き装置であり、この打抜き装置において、1つまたは複数の打抜き工具31,32,33が金属薄板帯材12から金属薄板部材40を打ち抜く。図示のように、複数の打抜き工具31,32,33が設けられている場合には、個々の打抜き工具は、単純な金属薄板部材40を並行に打ち抜くか、または複雑な金属薄板部材を複数の打抜きステップで製造することができる。図示の例では第1の打抜き工具31および第2の打抜き工具32は、金属薄板部材41,42を金属薄板帯材12から分離することができ、これらの金属薄板部材41,42は、損失部分として廃棄され、金属薄板スタックの更なる製造プロセスのためにはもはや必要ない。
【0038】
矢印34によって象徴的に示されているように、打抜き工具31,32,33の上部工具は、タイミング制御されて昇降運動し、これに対して、金属薄板帯材は、帯材送り装置25によって同じタイミングでさらに搬送される。
【0039】
打ち抜かれた金属薄板部材40は、管路43内においてピラー形状に互いに上下に積み重ねられる。管路43の加熱可能な内壁は、下方に向かって幾分円錐形に収斂する形状を有しており、これによって、管路43は、スタックブレーキの形式の抵抗を、積み重ねられる金属薄板部材40に加える。管路43の壁部分44が、加熱装置45を介して加熱されており、これによって、金属薄板部材40は、バックラックの硬化温度を超えて加熱され、このようにして金属薄板部材40相互の接合が加熱および圧力下で行われる。そのために、管路43は、加熱装置45によって取り囲まれており、この加熱装置45は、管路43内の金属薄板部材を、被着されたバックラックの架橋温度を上回る温度に加熱し、このようにして個々の金属薄板部材40を、互いに上下に続いている金属薄板部材40の間の硬化されたバックラック層47を介して結合して、金属薄板スタック46を形成することを保証する。
【0040】
図2には、2つの互いに上下に続いている金属薄板部材40とその間に位置している硬化されたバックラック層47とを備えた金属薄板スタック46の一部が、拡大されて概略的に示されている。
【0041】
好ましくは、金属薄板帯材12は上面17においても下面18においてもバックラックによって被覆されており、これによって、金属薄板部材40の結合時に、互いに上下に位置している金属薄板部材40のバックラック層の間の素材結合式の結合が保証される。金属薄板部材自体のバックラックの固着特性に応じて、スタックにおける金属薄板部材の十分に硬い結合を、片側で被覆された金属薄板部材だけによっても得ることができる。
【0042】
発生する金属薄板スタック46の所望の高さに相当する数の金属薄板部材が打ち抜かれた場合に、適宜な処置によって、直ぐ次の金属薄板部材として打ち抜かれた金属薄板部材(例えば図1中の金属薄板部材40a)が、もはや最後の(最上位の)金属薄板部材(例えば図1中の金属薄板部材40b)に固着しないように、かつ、このようにして金属薄板部材が、管路43内において形成された金属薄板部材ピラーから、バックラックの硬化後にも、所望の数の金属薄板部材を備えた個々のスタック46に容易に分離され得るように配慮される。そのために、当業者は様々な処置を使用することができ、これらの処置は、本出願人の特許出願に詳しく記載されている。例えば欧州特許出願公開第2883692号明細書または欧州特許出願公開第3089335号明細書に記載されているように、後続の金属薄板部材との固着作用を発揮することが望まれていない金属薄板部材が打ち抜かれる、帯材における箇所では、上面または下面に、相応の分離手段、例えば分離シートまたは分離ラベルを被覆することができる。また、例えば構造化された分離要素を適宜な箇所で間に押し込むことも可能であり、これらの分離要素は、金属薄板部材とのその僅かな接触面に基づいて、大きな固着作用を発揮することがなく、ゆえに、個々のスタックへの解離後に容易に再び除去することができる。また金属薄板部材内に突子(Noppe)を押込み成形することも可能であり、これらの突子は、先行する金属薄板部材に対するスペーサとして機能し、このようにして個々のスタックの比較的容易な分離を可能にする。図1では、適宜な分離手段の載置または装入は、分離手段アプリケータ35,35’によって象徴的に示されており、この分離手段アプリケータ35,35’は、図示の例では、所望の箇所で分離ラベル36,36’を帯材の上面および/または下面にもたらす。打ち抜かれた金属薄板部材が例えば上面および下面に分離ラベルを有している場合には、相応の金属薄板部材が、犠牲薄片として機能し、スタックの一部ではない。金属薄板部材(例えば金属薄板部材40a)が下面に、かつ先行する金属薄板部材(例えば40b)が上面に分離ラベルを有している場合には、これらの金属薄板部材は、それぞれの互いに異なるスタック46の構成部分のままである。
【0043】
図3には、図1の装置の変化形態が示されており、この変化形態が図1の変化形態と異なっているのは次の点である。すなわち、図3の変化形態では、活性剤流体の被着は別の準備ステップ(図3A)で行われ、これに対して、金属薄板部材の打抜きは、時間的に無関係な後のステップ(図3B)で行われる。図3では、図1の実施形態の対応する要素と同一の要素、または類似の機能を果たす要素は、同じ符号で示されている。
【0044】
図3の実施形態における図3Aに示された第1ステップは、図1に示された方法の実施形態のように、コイル11からの金属薄板帯材12の繰出しで始まり、次いで、金属薄板帯材12は、矯正装置13で矯正される。次に、ここでも再び、塗布装置15における活性剤流体による被覆と、次いで、乾燥装置19における被着された活性剤層の乾燥とが続く。図1の方法におけるように、次いで、帯材は、矢印14によって象徴的に示された搬送方向で、帯材貯蔵器20内に導入される。図1の形態とは異なり、図3の実施形態の帯材貯蔵器20は、図3中にコイル50によって象徴的に示される非連続的な帯材貯蔵器であり、すなわち、バックラックによって予め被覆されていまや乾燥した活性剤層によって被覆された金属薄板帯材12は、ウインチにおいてコイル50に巻き取られる。このコイル50は中間貯蔵することができる。
【0045】
典型的にはバックラックの硬化のための貯蔵時間を大幅に下回っている貯蔵時間の後で、次いで、コイル50は、図3Bに示された別のステップで分離装置30に供給される。コイル50からの繰出し後に、かつ場合によっては矯正装置13’による帯材の矯正後に、分離装置において更なる処理が、タイミング制御式の送り装置25を介して、既に図1の実施形態との関連で記載されたのと同じように行われる。
【0046】
認識できるように、図3の変化形態においても、本来のコイル11からの、バックラックによって予め被覆された帯材12の繰出し、次いで行われる被覆、乾燥、および場合によっては行われる、塗布された活性剤の冷却、ならびに非連続的な帯材貯蔵器として働くコイル50における巻取りが、連続的なプロセスで行われるのに対して、コイル50からの繰出し後の、活性剤を被覆された金属薄板帯材12の処理は、分離装置のタイミングに適合されて行われる。ここでも、非連続的な帯材貯蔵器の形態の帯材貯蔵器20は、連続的な方法ステップとタイミング制御された方法ステップとの分離を保証している。
図1
図2
図3(A)】
図3(B)】