(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】放射性標識されたGPRPアンタゴニスト及び界面活性剤を含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/69 20170101AFI20240430BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240430BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20240430BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240430BHJP
A61K 51/00 20060101ALI20240430BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
A61K47/69
A61K9/08
A61K38/08
A61K47/14
A61K51/00 100
A61K51/00 200
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2021520419
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2019077569
(87)【国際公開番号】W WO2020074691
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-08-05
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519129045
【氏名又は名称】アドヴァンスド アクセラレーター アプリケーションズ インターナショナル エセ.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスカ・オルランディ
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツァ・フガッツァ
(72)【発明者】
【氏名】ドナート・バルバート
(72)【発明者】
【氏名】マティア・テデスコ
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツォ・サッケッティ
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533119(JP,A)
【文献】特開2018-155629(JP,A)
【文献】特表2017-519009(JP,A)
【文献】特表2006-515321(JP,A)
【文献】特表2018-529778(JP,A)
【文献】特表2009-508924(JP,A)
【文献】特表2013-512221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00-9/72
A61K 38/00-38/58
A61K 51/00-51/12
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、
-
放射性標識されたGRPR-アンタゴニスト
、並びに
- (i)ポリエチレングリコール鎖及び(ii)脂肪酸エステルを有する化合物を含む界面活性剤
を含
み、
前記GRPR-アンタゴニストが、式(I):
【化1】
(式中、Mは、放射性金属である)
の化合物である、医薬組成物。
【請求項2】
Mが、
177Lu
及び
68Gaから選択される、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤が、式(III):
【化2】
(式中、nは、3~1000の間に含まれ、
Rは、脂肪酸鎖である
)
の化合物を含む、請求項1
又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
nが、5~500の間に含まれる、請求項
3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
nが、10~50の間に含まれる、請求項
3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
Rが、置換脂肪族鎖である、請求項
3から
5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤が、ポリエチレングリコール15-ヒドロキシステアレート
又はポリソルベート20を含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記界面活性剤が、ポリエチレングリコール15-ヒドロキシステアレートを含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記放射性標識されたGRPR-アンタゴニストが、少なくとも100MBq/mLの体積放射活性を提供する濃度で存在する、請求項1から
8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記放射性標識されたGRPR-アンタゴニストが、250MBq/mL~500MBq/mLの間の体積放射活性を提供する濃度で存在する、請求項
9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記界面活性剤が、少なくとも5μg/mLの濃度で存在する、請求項1から
10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記界面活性剤が、少なくとも25μg/mLの濃度で存在する、請求項
11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記界面活性剤が、50μg/mL~1000μg/mLの間の濃度で存在する、請求項
11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記放射性標識されたGRPR-アンタゴニストが、
177Lu、
68Ga又は
111Inで標識されている、請求項1から
13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬組成物が、水溶液である、請求項1から
14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記医薬組成物が、注入用の溶液である、請求項1から
15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
がんの治療又は予防における使用のための、請求項1から
16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
in vivoイメージングにおける使用のための、請求項1から
16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
PET及びSPECTイメージングにおける使用のための、請求項1から
16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
それを必要とする対象における腫瘍のin vivoイメージングのための、特にGRPR陽性腫瘍を検出するための、方法
における使用のための、請求項1から16のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記方法が、有効量の
前記組成物を前記対象に投与すること、及び前記化合物に存在する放射性同位体の崩壊から派生したシグナルを検出して、それによりGRPR陽性腫瘍を検出することを含む、
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガストリン放出ペプチド受容体(GRPR)を標的とする放射性医薬品及びそれらの使用に関する。詳細には、本開示は、放射性標識されたGRPR-アンタゴニスト及び界面活性剤を含む医薬組成物に関する。本開示はまた、がんの治療又は予防における使用のための放射性標識されたGRPR-アンタゴニストに関する。
【背景技術】
【0002】
ボンベシン受容体サブタイプ2としても知られるガストリン放出ペプチド受容体(GRPR)は、胃腸管及び膵臓のものを含めた、様々な器官において発現される、Gタンパク質共役受容体である(Guo Mら、Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes.2015年;22巻:3~8,2;Gonzalez Nら、Curr Opin Enocrinol Diabetes Obes.2008年;15巻:58~64頁)。適当なリガンドの結合後、GRPRが活性化され、複数の生理的プロセス、例えば、外分泌及び内分泌の調節等を誘発する(Guo Mら、Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes.2015年;22巻:3~8,2;Gonzalez Nら、Curr Opin Enocrinol Diabetes Obes.2008年;15巻:58~64頁)。過去数十年にわたって、GRPR発現は、前立腺がん及び乳がんを含めた、様々ながんタイプにおいて報告されている(Gugger M and Reubi JC.Gastrin-releasing peptide receptors in non-neoplastic and neoplastic human breast. Am J Pathol.1999年;155巻:2067~2076;Markwalder R and Reubi JC.Cancer Res.l999年;59巻:1152~1159)。したがって、GRPRは、受容体によって媒介される腫瘍イメージング及び治療、例えば、ペプチド受容体シンチグラフィー及びペプチド受容体放射性核種療法等についての興味深い標的になった(Gonzalez Nら、Curr Opin Enocrinol Diabetes Obes.2008年;15巻:58~64頁)。核イメージング及び療法のための神経内分泌腫瘍における放射性標識されたソマトスタチンペプチドアナログの使用が成功した後(Brabander Tら、Front Horm Res.2015年;44巻:73~87頁;Kwekkeboom DJ and Krenning EP.Hematol Oncol Clin North Am.2016年;30巻:179~191頁)、複数の放射性標識されたGRPR放射性リガンドは、合成され、主に、前立腺がん患者における前臨床並びに臨床試験において研究されている。かかるペプチドアナログの例には、AMBA、デモベシン(Demobesin)シリーズ、及びMP2653が含まれる(Yu Zら、Curr Pharm Des.2013年;19巻:3329~3341;Lantry LEら、J Nucl Med.2006年;47巻:1144~1152.;Schroeder RPら、Eur J Nucl Med Mol Imaging.20l0年;37巻:1386~1396.;Nock Bら、Eur J Nucl Med Mol Imaging.2003年;30巻:247~258頁;Mather SJら、Mol Imaging Biol.2014年;16巻:888~895)。最近の研究では、GRPRアゴニストと比べて、GRPRアンタゴニストが好まれることが示された(Mansi Rら、Eur J Nucl Med Mol Imaging.2011年;38巻:97~107頁;Cescato Rら、J Nucl Med.2008年;49巻:318~326頁)。受容体アゴニストと比較して,アンタゴニストは、しばしば、より高い結合及び好ましい薬物動態を示す(Ginj Mら、Proc Natl Acad Sci USA.2006年;103巻:16436~16441)。やはり、放射性標識されたGRPRアゴニストを用いた臨床試験では、ペプチドが受容体に結合した後のGRPRの活性化により引き起こされる、患者における望まれない副作用が報告された(Bodei Lら、[abstract].Eur J Nucl Med Mol Imaging.2007年;34巻:S22l)。
【0003】
NeoBOMB1のような、いくつかのGRPR-アンタゴニストが、異なる放射性核種で放射性標識することができ、イメージング用及びGRPR-発現がん、例えば、それだけには限らないが、前立腺がん及び乳がんを治療するために、潜在的に用いられ得ることが、最近判明した。しかしながら、体内分布試験のみが、今までのところ報告されているにすぎず、効率的な治療プロトコール又は医薬組成物は、開発されていない。
【0004】
したがって、この文脈において、患者に投与され得る、GRPR-アンタゴニストを含む医薬組成物を提供することが望ましいはずである。更に、GRPR-アンタゴニストを用いて、がんを有する患者のための効率的な治療プロトコールを提供することもやはり望ましいはずである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Guo Mら、Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes.2015年;22巻:3~8,2
【文献】Gonzalez Nら、Curr Opin Enocrinol Diabetes Obes.2008年;15巻:58~64頁
【文献】Gugger M and Reubi JC.Gastrin-releasing peptide receptors in non-neoplastic and neoplastic human breast. Am J Pathol.1999年;155巻:2067~2076
【文献】Markwalder R and Reubi JC.Cancer Res.l999年;59巻:1152~1159
【文献】Brabander Tら、Front Horm Res.2015年;44巻:73~87頁
【文献】Kwekkeboom DJ and Krenning EP.Hematol Oncol Clin North Am.2016年;30巻:179~191頁
【文献】Yu Zら、Curr Pharm Des.2013年;19巻:3329~3341
【文献】Lantry LEら、J Nucl Med.2006年;47巻:1144~1152.
【文献】Schroeder RPら、Eur J Nucl Med Mol Imaging.20l0年;37巻:1386~1396.
【文献】Nock Bら、Eur J Nucl Med Mol Imaging.2003年;30巻:247~258頁
【文献】Mather SJら、Mol Imaging Biol.2014年;16巻:888~895
【文献】Mansi Rら、Eur J Nucl Med Mol Imaging.2011年;38巻:97~107頁
【文献】Cescato Rら、J Nucl Med.2008年;49巻:318~326頁
【文献】Ginj Mら、Proc Natl Acad Sci USA.2006年;103巻:16436~16441
【文献】Bodei Lら、[abstract].Eur J Nucl Med Mol Imaging.2007年;34巻:S22l
【文献】Pharmaceutics and Pharmacy Practice、J.B. Lippincott Company、Philadelphia、PA、Banker and Chalmers編.、238~250頁(1982)年
【文献】^SHP Handbook on Injectable Drugs、Trissel、第15版、622~630頁(2009年)
【文献】Castaldi E、Muzio V、D’Angeli L、Fugazza L. 68GaDOTATATE lyophilized ready to use kit for PET imaging in pancreatic cancer murine model、J Nucl Med 2014年;55巻(suppl 1):1926
【文献】Breeman WA、de Zanger RM、Chan HS、de Blois E.Alternative method to determine specific activity of 177Lu by HPLC.Curr Radiopharm.2015年;8巻:119~122頁
【文献】de Blois E、Chan HS、Konijnenberg M、de Zanger R、Breeman WA.Effectiveness of quenchers to reduce radiolysis of(111)In- or(177)Lu-labelled methionine-containing regulatory peptides. Maintaining radiochemical purity as measured by HPLC. Curr Top Med Chem.2012年;12巻:2677~2685
【文献】Ivashchenko O、van der Have F、Goorden MC、Ramakers RM、Beekman FJ. Ultra-high-sensitivity submillimeter mouse SPECT.J Nucl Med.2015年;56巻:470~475頁
【文献】Vaissier PE、Beekman FJ、Goorden MC. Similarity-regulation of OS-EM for accelerated SPECT reconstruction. Phys Med Biol.2016年;61巻:4300~4315
【文献】Dalm SU、Bakker IL、de Blois Eら、68Ga/177Lu-NeoBOMB1、a Novel Radiolabeled GRPR Antagonist for Theranostic Use in Oncology. J Nucl Med.2017年;58巻:293~299頁
【文献】Keenan MA、Stabin MG、Segars WP、Fernald MJ. RADAR realistic animal model series for dose assessment. J Nucl Med.2010年;51巻:471~476頁
【文献】Stabin MG、Konijnenberg MW. Re-evaluation of absorbed fractions for photons and electrons in spheres of various sizes.J Nucl Med.2000年;4l巻:l49~160頁
【文献】Konijnenberg MW、Breeman WA、de Blois Eら、Therapeutic application of CCK2R-targeting PP-F11:influence of particle range、activity and peptide amount.EJNMMI Res.20l4年;4巻:47頁
【文献】Carlson DJ、Stewart RD、Li XA、Jennings K、Wang JZ、Guerrero M. Comparison of in vitro and in vivo alpha/beta ratios for prostate cancer.Phys Med Biol.2004年;49巻:4477~4491
【文献】Joiner M、Kogel Avd.Basic clinical radiobiology.第4版.London:Hodder Arnold;;2009年
【発明の概要】
【0007】
第1の態様では、本開示は、-次式:
MC-S-P
[式中、
Mは、放射性金属(radiometal)であり、Cは、Mを結合するキレート剤であり;
Sは、CとPのN末端との間に共有結合された、場合によるスペーサーであり;
Pは、一般式:
Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4-Xaa5-Xaa6-Xaa7-ZのGRP受容体ペプチドアンタゴニストであり;
Xaa1は、存在しないか、又はアミノ酸残基Asn、Thr、Phe、3-(2-チエニル)アラニン(Thi)、4-クロロフェニルアラニン(Cpa)、α-ナフチルアラニン(α-Nal)、β-ナフチルアラニン(β-Nal)、1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸(Tpi)、Tyr、3-ヨード-チロシン(o-I-Tyr)、Trp及びペンタフルオロフェニルアラニン(5-F-Phe)(すべて、L-又はD-異性体として)からなる群から選択され;
Xaa2は、Gln、Asn又はHisであり;
Xaa3は、Trp又は1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸(Tpi)であり;
Xaa4は、Ala、Ser又はValであり;
Xaa5は、Val、Ser又はThrであり;
Xaa6は、Gly、サルコシン(Sar)、D-Ala、又はβ-Alaであり;
Xaa7は、His又は(3-メチル)ヒスチジン(3-Me)Hisであり;
Zは、-NHOH、-NHNH2、-NH-アルキル、-N(アルキル)2、及び-O-アルキルから選択されるか、又はZは、
【化1】
(式中、Xは、NH(アミド)又はO(エステル)であり、R1及びR2は、同じ又は異なり、プロトン、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルキルエーテル、アリール、アリールエーテル又はアルキル-、ハロゲン、ヒドロキシル若しくはヒドロキシアルキル置換アリール又はヘテロアリール基から選択される)である]の放射性標識されたGRPR-アンタゴニスト;及び
-(i)ポリエチレングリコール鎖及び(ii)脂肪酸エステルを有する化合物を含む界面活性剤
を含む、医薬組成物に関する。
【0008】
第2の態様では、本開示は、対象におけるがんの治療又は予防における使用のための放射性標識されたGRPR-アンタゴニストを含む組成物に関し、
- 放射性標識されたGRPR-アンタゴニストは、次式:
MC-S-P
[式中、
Mは、放射性金属であり、Cは、Mを結合するキレート剤であり;
Sは、CとPのN末端との間に共有結合された、場合によるスペーサーであり;
Pは、一般式:
Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4-Xaa5-Xaa6-Xaa7-ZのGRP受容体ペプチドアンタゴニストであり;
Xaa1は、存在しないか、又はアミノ酸残基Asn、Thr、Phe、3-(2-チエニル)アラニン(Thi)、4-クロロフェニルアラニン(Cpa)、α-ナフチルアラニン(α-Nal)、β-ナフチルアラニン(β-Nal)、1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸(Tpi)、Tyr、3-ヨード-チロシン(o-I-Tyr)、Trp及びペンタフルオロフェニルアラニン(5-F-Phe)(すべて、L-又はD-異性体として)からなる群から選択され;
Xaa2は、Gln、Asn又はHisであり;
Xaa3は、Trp又は1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸(Tpi)であり;
Xaa4は、Ala、Ser又はValであり;
Xaa5は、Val、Ser又はThrであり;
Xaa6は、Gly、サルコシン(Sar)、D-Ala、又はβ-Alaであり;
Xaa7は、His又は(3-メチル)ヒスチジン(3-Me)Hisであり;
Zは、-NHOH、-NHNH2、-NH-アルキル、-N(アルキル)2、及び-O-アルキルから選択されるか、又はZは、
【化2】
(式中、Xは、NH(アミド)又はO(エステル)であり、R1及びR2は、同じ又は異なり、プロトン、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルキルエーテル、アリール、アリールエーテル又はアルキル-、ハロゲン、ヒドロキシル若しくはヒドロキシアルキル置換アリール又はヘテロアリール基から選択される)である]のものであり;
- 放射性標識されたGRPR-アンタゴニストは、2000~10000MBqの間の治療上効率的な量で、前記対象に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、1回目の注射の4時間後及び24時間後、並びに2回目及び3回目の注射の4時間後のSPECT/CT画像を示す図である。矢印は、腫瘍を示す。動物に、
177Lu-NeoBOMB1 30MBq/300pmol(第1群)、40MBq/400pmol(第2群)又は60MBq/600pmolを注射した。
【
図1B】
図1Bは、
図1Aに記載された注射からの定量化された腫瘍取込み(1群当たりn=2)を示す図である。
【
図2】
図2Aは、未治療の動物並びに
177Lu-NeoBOMB1 3×30MBq/300pmol(第1群)、3×40MBq/400pmol(第2群)及び3×60MBq/600pmol(第3群)で治療された動物の推定される腫瘍のサイズを示す図である。
図2Bは、未治療の動物並びに
177Lu-NeoBOMB1 3×30MBq/300pmol(第1群)、3×40MBq/400pmol(第2群)及び3×60MBq/600pmol(第3群)で治療された動物の生存率を示す図である。
【
図3】
図3Aは、治療前及び治療の12週間後までの治療後の動物の体重を示す図である。
図3Bは、治療前及び治療の24週間後までの治療後の動物の体重を示す図である。
【
図4】未治療の動物及び治療された動物(
177Lu-NeoBOMB1 3×30MBq/300pmol(第1群)、3×40MBq/400pmol(第2群)及び3×60MBq/600pmol(第3群))の膵臓組織の代表的なヘマトキシリン及びエオシン染色を示す図である。
【
図5】未治療の動物及び治療された動物(
177Lu-NeoBOMB1 3×30MBq/300pmol(第1群)、3×40MBq/400pmol(第2群)及び3×60MBq/600pmol(第3群))の腎臓組織の代表的なヘマトキシリン及びエオシン染色を示す図である。丸で囲まれた範囲は、リンパ球の浸潤(ID:D、814、861、868及び862)又は萎縮及び線維症(ID:864)を有する病変を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
語句「の治療」及び「治療する」には、疾患、障害、若しくはその症状の改善は休止が含まれる。
【0011】
語句「の予防」及び「予防する」には、疾患、障害、又はその症状の開始の回避が含まれる。
【0012】
国際単位系と一致して、「MBq」は、放射活性の単位「メガベクレル」についての略語である。
【0013】
本発明で使用される場合、「PET」は、陽電子放射断層撮影を表す。
【0014】
本発明で使用される場合、「SPECT」は、単一光子放射断層撮影を表す。
【0015】
本発明で使用される場合、用語化合物の「有効量」又は「治療上効率的な量」は、対象の生物学的又は医学応答を誘発する、例えば、症状を改善させる、状態を緩和する、疾患の進行をゆっくりとする若しくは遅延させる、又は疾患を予防する化合物の量を意味する。
【0016】
本発明で使用される場合、用語「置換された」又は「置換されていてもよい」とは、0から芳香環系における開放している原子価の全数までに及ぶ数の、ハロゲン、-OR’、-NR’R’’、-SR’、-SiR’R’’R’’’、-OC(O)R’、-C(O)R’、-CO2R’、-C(O)NR’R’’、-OC(O)NR’R’’、-NR’’C(O)R'、-NR’-C(O)NR’’R’’’、-NR’’C(O)OR’、-NR-C(NR’R’’R’’’)=NR’’’’、-NR- C(NR’R’’)=NR’’’-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R’’、-NRSO2R’、-CN、-NO2、-R’、-N3、-CH(Ph)2、フルオロ(C1~C4)アルコキソ、及びフルオロ(C1~C4)アルキルから選択される、1個又は複数の置換基で置換されていてもよい基を意味し;R’、R’’、R’’’及びR’’’’は、独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールから選択することができる。本開示の化合物が、2つ以上のR基を含む場合、例えば、これらの基の2つ以上が存在する場合、各R’、R’’、R’’’及びR’’’’基であるように、R基のそれぞれは、独立して、選択される。
【0017】
本発明で使用される場合、用語「アルキル」自体又は別の置換基の一部としての用語「アルキル」は、1~12個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝状アルキル官能基を意味する。適当なアルキル基には、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル及びt-ブチル、ペンチル及びそれらの異性体(例えば、n-ペンチル、イソペンチル)、並びにヘキシル及びそれらの異性体(例えば、n-ヘキシル、イソヘキシル)が含まれる。
【0018】
本発明で使用される場合、用語「ヘテロアリール」とは、5~10個の原子を含有する、単環又は一緒になって縮合された若しくは共有結合された複数の芳香環を有する、多価不飽和の芳香環系を意味し、少なくとも1つの環は、芳香族であり、少なくとも1つの環原子は、N、O及びSから選択されるヘテロ原子である。窒素及び硫黄ヘテロ原子は、場合によっては酸化することができ、窒素ヘテロ原子は、場合によっては四級化することができる。かかる環は、アリール、シクロアルキル又はヘテロシクリル環に縮合することができる。かかるヘテロアリールの非限定的な例には、フラニル、チオフェニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、オキサトリアゾリル、チアトリアゾリル、ピリジニル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、オキサジニル、ジオキシニル、チアジニル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、プリニル、ベンゾチアジアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル及びキノキサリニルが含まれる。
【0019】
本発明で使用される場合、用語「アリール」とは、6~10個の環原子を含有する、単環又は一緒になって縮合された複数の芳香環を有する、多価不飽和の芳香族ヒドロカルビル基を意味し、少なくとも1つの環は、芳香族である。芳香環は、それに縮合される1~2つの追加の環(本明細書中で定義される通り、シクロアルキル、ヘテロシクリル又はヘテロアリール)を、場合によっては含むことができる。適当なアリール基には、ベンゾピラニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキサニル等のような、ヘテロシクリルに縮合された、フェニル、ナフチル及びフェニル環が含まれる。
【0020】
本発明で使用される場合、用語「ハロゲン」とは、フルオロ(-F)、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)、又はヨード(-I)基を意味する。
【0021】
本発明で使用される場合、用語「置換されていてもよい脂肪族鎖」とは、4~36個の炭素原子、好ましくは12~24個の炭素原子を有する、置換されていてもよい脂肪族鎖を意味する。
【0022】
放射性標識されたGRPR-アンタゴニスト
本発明で使用される場合、GRPR-アンタゴニストは、次式:
MC-S-P
[式中、
Mは、放射性金属であり、Cは、Mを結合するキレート剤であり;
Sは、CとPのN末端との間に共有結合された、場合によるスペーサーであり;
Pは、一般式:
Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4-Xaa5-Xaa6-Xaa7-ZのGRP受容体ペプチドアンタゴニストであり;
Xaa1は、存在しないか、又はアミノ酸残基Asn、Thr、Phe、3-(2-チエニル)アラニン(Thi)、4-クロロフェニルアラニン(Cpa)、α-ナフチルアラニン(α-Nal)、β-ナフチルアラニン(β-Nal)、1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸(Tpi)、Tyr、3-ヨード-チロシン(o-I-Tyr)、Trp及びペンタフルオロフェニルアラニン(5-F-Phe)(すべて、L-又はD-異性体として)からなる群から選択され;
Xaa2は、Gln、Asn又はHisであり;
Xaa3は、Trp又は1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸(Tpi)であり;
Xaa4は、Ala、Ser又はValであり;
Xaa5は、Val、Ser又はThrであり;
Xaa6は、Gly、サルコシン(Sar)、D-Ala、又はβ-Alaであり;
Xaa7は、His又は(3-メチル)ヒスチジン(3-Me)Hisであり;
Zは、-NHOH、-NHNH2、-NH-アルキル、-N(アルキル)2、及び-O-アルキルから選択されるか、又はZは、
【化3】
(式中、Xは、NH(アミド)又はO(エステル)であり、R1及びR2は、同じ又は異なり、プロトン、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルキルエーテル、アリール、アリールエーテル又はアルキル-、ハロゲン、ヒドロキシル若しくはヒドロキシアルキル置換アリール又はヘテロアリール基から選択される)である]を有する。
【0023】
一実施形態によれば、Zは、次式のうちの1つから選択され、Xは、NH又はOである:
【化4】
【0024】
一実施形態によれば、キレート剤Cは、
【化5】
からなる群から選択される。
【0025】
詳細な実施形態では、Cは、
【化6】
からなる群から選択される。
【0026】
一実施形態によれば、Sは、
a)次式:
【化7】
[式中、PABAは、p-アミノ安息香酸であり、PABZAは、p-アミノベンジルアミンであり、PDAは、フェニレンジアミンであり、PAMBZAは、(アミノメチル)ベンジルアミンである]の残基を含有するアリール;
b)次式:
【化8】
[式中、DIGは、ジグリコール酸であり、IDAは、イミノ二酢酸である]のジカルボン酸、ω-アミノカルボン酸、ω-ジアミノカルボン酸又はジアミン;
c)様々な鎖の長さのPEGスペーサー、特に、PEGスペーサーセレ(sele)
【化9】
d)α-及びβ-アミノ酸、単鎖又は相同の鎖における様々な鎖の長さ又は様々な鎖の長さの異種の鎖、特に、
【化10】
GRP(1~18)、GRP(14~18)、GRP(13~18)、BBN(1~5)、若しくは[Tyr4]BB(1~5);又は
e)a、b、c及びdの組合せ
からなる群から選択される。
【0027】
一実施形態によれば、GRPRアンタゴニストは、次式:
【化11】
[式中、MC及びPは、上記で定義する通りである]の化合物からなる群から選択される。
【0028】
一実施形態によれば、Pは、DPhe-Gln-Trp-Ala-Val-Gly-His-NH-CH(CH2-CH(CH3)2)2である。
【0029】
一実施形態によれば、放射性標識されたGRPR-アンタゴニストは、式(I):
【化12】
(M-DOTA-(p-アミノベンジルアミン-ジグリコール酸)-[D-Phe
6,His-NH-CH[(CH
2-CH(CH
3)
2]
2
12,des-Leu
13,des-Met
14]BBN(6-14));
[式中、Mは、放射性金属であり、好ましくは、Mは、
177Lu、
68Ga及び
111Inから選択される]の放射性標識されたNeoBOMB1である。
【0030】
一実施形態によれば、放射性標識されたGRPR-アンタゴニストは、式(II):
【化13】
(M-N
4(p-アミノベンジルアミン-ジグリコール酸)-[D-Phe
6, His-NH-CH[(CH
2-CH(CH
3)
2]
2
12,des-Leu
13,des-Met
14]BBN(6-l4));
[式中、Mは、放射性金属である]の放射性標識されたNeoBOMB2である。
【0031】
一実施形態では、Mは、放射性金属であり、これは、111In、133mIn、99mTc、94mTc、67Ga、66Ga、68Ga、52Fe、169Er、72As、97Ru、203Pb、212Pb、62Cu、64Cu、67Cu、186Re、188Re、86Y、90Y、51Cr、52mMn、157Gd、177Lu、161Tb、69Yb、175Yb、105Rh、166Dy、166HO、153Sm、149Pm、151Pm、172Tm、121Sn、117mSn、213Bi、212Bi、142Pr、143Pr、198Au、199Au、89Zr、225Ac及び47Scから選択することができる。好ましくは、Mは、177Lu、68Ga及び111Inから選択される。
【0032】
一実施形態によれば、Mは、177Luである。この場合では、放射性標識されたGRPR-アンタゴニストは、放射性核種療法のために用いることができる。別の実施形態によれば、Mは、68Gaである。この場合では、放射性標識されたGRPR-アンタゴニストは、PET用に用いることができる。別の実施形態によれば、Mは、111Inである。この場合では、放射性標識されたGRPR-アンタゴニストは、SPECT用に用いることができる。
【0033】
医薬組成物
GRPR-アンタゴニストは、非特異的結合(NSB)によりガラス及びプラスチック表面に固着する傾向があり、これは、医薬組成物を配合するための課題である。安定した組成物を提供するために、いくつかの界面活性剤を試験した。本発明者らは、すべての試験済みの界面活性剤の中でもとりわけ、(i)ポリエチレングリコール鎖及び(ii)脂肪酸エステルを有する化合物を含む界面活性剤が最良の結果を得たことを予想外に見出した。
【0034】
第1の態様では、本開示は、本明細書中で記載した通り放射性標識されたGRPR-アンタゴニスト並びに(i)ポリエチレングリコール鎖及び(ii)脂肪酸エステルを有する化合物を含む界面活性剤を含む、医薬組成物に関する。一実施形態では、界面活性剤はまた、遊離エチレングリコールを含む。
【0035】
一実施形態では、界面活性剤は、式(III)
【化14】
[式中、nは、3~1000の間、好ましくは5~500の間、より好ましくは10~50の間に含まれ、
Rは、脂肪酸鎖、好ましくは、置換されていてもよい脂肪族鎖である]の化合物を含む。
【0036】
一実施形態では、界面活性剤は、ポリエチレングリコール15-ヒドロキシステアレート及び遊離エチレングリコールを含む。
【0037】
放射性標識されたGRPR-アンタゴニストは、体積放射活性(volumetric radioactivity)が少なくとも100MBq/mL、好ましくは少なくとも250MBq/mLを示す濃度で存在することができる。放射性標識されたGRPR-アンタゴニストは、100MBq/mL~1000MBq/mLの間、好ましくは250MBq/mL~500MBq/mLの間に含まれる体積放射活性を示す濃度で存在することができる。
【0038】
界面活性剤は、少なくとも5μg/mL、好ましくは少なくとも25μg/mL、より好ましくは少なくとも50μg/mLの濃度で存在することができる。界面活性剤は、5μg/mL~5000μg/mLの間、好ましくは25μg/mL~2000μg/mLの間、より好ましくは50μg/mL~1000μg/mLの間に含まれる濃度で存在することができる。
【0039】
一実施形態では、本組成物は、少なくとも1種の他の薬学的に許容される添加剤を含む。薬学的に許容される添加剤は、従来の方法で用いられるもののうちのいずれかであり得、物理化学的な考慮、例えば、活性化合物の溶解性及び反応性の欠如等によりのみ限定される。
【0040】
特に、1種又は複数の添加剤は、放射線分解(radiolytic degradation)に対する安定剤、緩衝液、封鎖剤(sequestering agents)及びそれらの混合物から選択することができる。
【0041】
本発明で使用される場合、「放射線分解に対する安定剤」とは、放射線分解から有機分子を保護する安定化剤を意味し、例えば、放射性核種から放射されるγ線が、有機分子の原子間の結合を切断し、ラジカルが形態である場合、次いで、それらのラジカルは、そのラジカルを回避する安定剤により除去され、望まれない、潜在的に無効性の、更に毒性の分子をもたらすおそれがある任意の他の化学反応を起こす。したがって、それらの安定剤は、「フリーラジカルスカベンジャー」、又は手短に言えば「ラジカルスカベンジャー」とも称される。それらの安定剤についての他の代替的な用語は、「放射線安定性促進剤(radiation stability enhancer)」、「放射線分解性安定剤」、又は単に「クエンチャー」である。
【0042】
本発明で使用される場合、「封鎖剤」とは、(放射性標識されたペプチドとの複合体とならない)配合物中で遊離放射性核種金属イオンを組み合わせるのに適したキレート剤を意味する。
【0043】
緩衝液には、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液及びリン酸緩衝液が含まれる。
【0044】
一実施形態によれば、医薬組成物は、水溶液、例えば、注射用配合物である。詳細な実施形態によれば、医薬組成物は、注入用の溶液である。
【0045】
注射用組成物のための有効な医薬担体についての要件は、当業者に周知である(例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice、J.B. Lippincott Company、Philadelphia、PA、Banker and Chalmers編.、238~250頁(1982)年、及び^SHP Handbook on Injectable Drugs、Trissel、第15版、622~630頁(2009年)を参照のこと)。
【0046】
本開示はまた、放射性標識されたGRPR-アンタゴニスト及び界面活性剤を合わせる工程を含む、医薬組成物を製造する方法に関する。
【0047】
本開示はまた、がんの治療又は予防における使用のための上記に記載される医薬組成物に関する。
【0048】
本発明で使用される場合、用語「がん」とは、自律的増殖、すなわち、細胞成長を急速に激増させることを特徴とする異常な状況又は状態についての能力を有する細胞を意味する。過剰増殖及び腫瘍性の病状は、病態、すなわち、病状を特徴付ける又は構成するものとして分類することができる、又は非病理性、すなわち、正常から逸脱しているが、病状と関連しないものとして分類することができる。用語は、侵襲性の病理組織学的タイプ又はステージと関係なく、癌性増殖又は発癌プロセス、転移性組織又は悪性に転換した細胞、組織、若しくは臓器のすべてのタイプを含むことを意味する。
【0049】
詳細な実施形態では、がんは、前立腺がん、乳がん、小細胞肺がん、結腸癌、消化管間質腫瘍、ガストリノーマ、腎細胞癌、膵消化管神経内分泌腫瘍、食道扁平上皮腫瘍、神経芽腫、頭頸部扁平上皮癌、並びにGRPRである新生物-関連脈管構造を示す卵巣、子宮内膜及び膵臓腫瘍から選択される。一実施形態では、がんは、前立腺がん又は乳がんである。
【0050】
本開示はまた、in vivoイメージングにおける使用のための、特に、好ましくは、PET及びSPECTイメージングにより、それを必要とする対象において、GRPR陽性腫瘍を検出するための、上記に記載される通りによる医薬組成物に関する。
【0051】
本開示はまた、それを必要とする対象におけるがんの治療又は予防のための方法に関し、本方法は、上記に記載される医薬組成物の治療上効率的な量を、前記対象に投与する工程を含む。
【0052】
本開示はまた、in vivoイメージングのための方法に関し、本方法は、上記に記載される医薬組成物の有効量を、対象に投与する工程と、前記化合物に存在する放射性同位体の崩壊から派生したシグナルを検出する工程とを含む。
【0053】
がんの治療における使用のための放射性標識されたGRPR-アンタゴニスト
第2の態様では、本開示はまた、それを必要とする対象におけるがんの治療又は予防における使用のための放射性標識されたGRPR-アンタゴニストを含む組成物に関し、放射性標識されたGRPR-アンタゴニストは、2000~10000MBqの間に含まれる治療上効率的な量で、前記対象に投与される。
【0054】
詳細な実施形態では、本組成物の治療上効率的な量は、治療当たり2~8回前記対象に投与される。例えば、患者を、各2000~10000MBqの2~8サイクルで、静脈内に、放射性標識されたGRPRアンタゴニスト、詳細には、177Lu-NeoBOMB1を用いて治療することができる。
【0055】
いくつかの態様では、対象は、哺乳動物、例えば、それだけには限らないが、げっ歯類、イヌ科動物、ネコ科動物、又は霊長類である。いくつかの態様では、対象は、ヒトである。
【0056】
本発明者らは、がんの動物モデルにおいて示される通り、177Lu-NeoBOMB1は有効であることを見出した。未治療の動物と比較して、治療群は、腫瘍の成長の遅延時間が有意に長く、中央生存時間が有意に長かった。本明細書中に記載した非限定的な例において、動物は、177Lu-NeoBOMB1 3×30MBq/300pmol、3×40MBq/400pmol又は3×60MBq/600pmolで治療された。それにも関わらず、腫瘍の成長の遅延時間及び中央生存における有意差は、治療群間で見出されなかった。線形-二次モデルを用いた事前の線量算定(dosimetry calculation)が、治療群間の腫瘍制御確率の差を予測したため(腫瘍制御確率:3×30MBq/300pmol、3×40MBq/400pmol及び3×60MBq/600pmolで治療した動物の場合、それぞれ、0%、75%及び100%)、この知見は、予想外であった。いかなる理論にも縛られないが、これは、患者を治療するために必要な用量が、事前の線量算定から予想されたものよりも遙かに低いはずであり、これによって、放射性標識されたNeoBOMB1の毒性が低くなるということが予測される。
【0057】
有利には、放射性標識されたGRPR-アンタゴニストは、177Luで標識されている。
【0058】
上記方法の詳細な実施形態では、がんは、前立腺がん、乳がん、小細胞肺がん、結腸癌、消化管間質腫瘍、ガストリノーマ、腎細胞癌、膵消化管神経内分泌腫瘍、食道扁平上皮腫瘍、神経芽腫、頭頸部扁平上皮癌、並びにGRPR陽性である新生物-関連脈管構造を示す卵巣、子宮内膜及び膵臓腫瘍から選択される。一実施形態では、がんは、前立腺がん又は乳がんである。
【0059】
一実施形態によれば、使用のための組成物は、前のセクションで記載した医薬組成物である。
【0060】
本開示はまた、がんを治療する又は予防する方法に関し、本方法は、放射性標識されたGRPR-アンタゴニストを含む組成物の有効量を、がんを有する対象に投与する工程を含み、放射性標識されたGRPR-アンタゴニストは、2000~10000MBqの間に含まれる治療上効率的な量で、前記対象に投与される。
【0061】
本明細書中で提供されるのは、がんを治療する又は予防する方法であり、本方法は、本明細書中で定義した、放射性標識されたGRPR-アンタゴニストを含む組成物の有効量を、がんを有する対象に投与する工程を含む。いくつかの態様では、がんは、前立腺がん又は乳がんである。
【0062】
いくつかの態様では、放射性標識されたGRPR-アンタゴニストを含む組成物を、がんを有する対象に投与することによって、対象において、腫瘍の成長を抑制する、遅延させる、かつ/又は減少させることができる。いくつかの態様では、腫瘍の成長は、未治療の対照患者と比較して、少なくとも50%、60%、70%又は80%遅延される。いくつかの態様では、腫瘍の成長は、未治療の対照患者と比較して、少なくとも80%遅延される。いくつかの態様では、腫瘍の成長は、治療しない腫瘍の予測された成長と比較して、少なくとも50%、60%、70%又は80%遅延される。いくつかの態様では、腫瘍の成長は、治療をしない腫瘍の予測された成長と比較して、少なくとも80%遅延される。当業者は、腫瘍の成長速度の予測が、疫学的データ、医学文献及びその分野における他の知識に関する報告、腫瘍のタイプ並びに腫瘍のサイズの測定等に基づいて、なされ得るということを認識しているはずである。
【0063】
いくつかの態様では、放射性標識されたGRPR-アンタゴニストを含む組成物を、がんを有する対象に投与することによって、対象の生存の長さを増加させることができる。いくつかの態様では、生存の増加は、未治療の対照患者と比較してである。いくつかの態様では、生存の増加は、治療をしない対象の生存の予測された増加と比較してである。いくつかの態様では、生存の長さは、未治療の対照患者と比較して、長さが少なくとも3倍、4倍、又は5倍増加する。いくつかの態様では、生存の長さは、未治療の対照患者と比較して、長さが少なくとも4倍増加する。いくつかの態様では、生存の長さは、治療をしない対象の生存の予測された長さと比較して、長さが少なくとも3倍、4倍、又は5倍増加する。いくつかの態様では、生存の長さは、治療をしない対象の生存の予測された長さと比較して、長さが少なくとも4倍増加する。いくつかの態様では、生存の長さは、未治療の対照患者と比較して、少なくとも1週間、2週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年、2年、又は3年増加する。いくつかの態様では、生存の長さは、未治療の対照患者と比較して、少なくとも1ヵ月、2ヵ月、又は3ヵ月増加する。いくつかの態様では、生存の長さは、治療をしない対象の生存の予測された長さと比較して、少なくとも1週間、2週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年、2年、又は3年増加する。いくつかの態様では、生存の長さは、治療をしない対象の生存の予測された長さと比較して、少なくとも1ヵ月、2ヵ月、又は3ヵ月増加する。
【0064】
いくつかの態様では、投与される放射性標識されたGRPR-アンタゴニストの量は、対象において腫瘍制御確率が100%であるために、対象について予測された量より少ない。
いくつかの態様では、投与される放射性標識されたGRPR-アンタゴニストの量は、対象が少なくとも75%の腫瘍制御確率を有するために、対象について予測された量より少ない。いくつかの態様では、投与される放射性標識されたGRPR-アンタゴニストの量は、対象が50%の腫瘍制御確率がを達成するために、対象について予測された量より少ない。いくつかの態様では、投与される放射性標識されたGRPR-アンタゴニストの量は、対象が25%の腫瘍制御確率を達成するために、対象について予測された量より少ない。いくつかの態様では、投与される放射性標識されたGRPR-アンタゴニストの量は、対象が10%の腫瘍制御確率を達成するために、対象について予測された量より少ない。いくつかの態様では、投与される放射性標識されたGRPR-アンタゴニストの量は、対象が100%腫瘍制御確率を有するために、対象について予測された量の25%、30%、40%、50%、60%、70%、又は75%以下である。いくつかの態様では、投与される放射性標識されたGRPR-アンタゴニストの量は、対象が少なくとも75%の腫瘍制御確率を有するために、対象について予測された量の50%、60%、70%、75%、80%、又は85%以下である。いくつかの態様では、投与される放射性標識されたGRPR-アンタゴニストの量は、対象が少なくとも50%の腫瘍制御確率を有するために、対象について予測された量の60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は90%以下である。いくつかの態様では、投与される放射性標識されたGRPR-アンタゴニストの量は、対象が25%、20%、15% 10%、又は5%未満の腫瘍制御確率を有するために、対象について予測された量である。いくつかの態様では、投与される放射性標識されたGRPR-アンタゴニストの量は、対象が0%の腫瘍制御確率を有するために、対象について予測された量である。いくつかの態様では、投与される放射性標識されたGRPR-アンタゴニストの量は、対象が0%の腫瘍制御確率を有するために、対象について予測された量である。
【実施例】
【0065】
(実施例1):68Ga-NeoBOMB1を用いたNeoBOMB1の付着を低下させるための配合物のスクリーニング
配合物キットの開発中、本発明者らは、ペプチドが、ガラス及びプラスチック表面に固着するある特定の傾向を有することを実感した。
【0066】
この現象は、非特異的結合(NSB)と呼ばれる。ペプチドは、しばしば、小分子よりも大きいNSBの問題を示し、特に、無電荷のペプチドは、プラスチックに強力に吸着することができる。これらの原因は、異なり得る。すなわち、物理的/化学的特性、ファンデルワールス相互作用、イオン相互作用である。
【0067】
有機溶媒は、溶解性を促進し、吸着を防ぐことができる。エタノールは、例えば、放射性医薬品注射において用いて、親油性が高いトレーサーの溶解性を促進する又はバイアル、メンブレンフィルター、及び注射筒への吸着を低下させることができる。本発明者らは、凍結乾燥に適合しないため、エタノールを棄却した。
【0068】
ヒト血清アルブミン(HSA)はまた、表面吸着を防止するために安定剤として、多くのタンパク質配合物において用いられるが、この添加剤は、その熱不安定性により、適していない形態である(in not suitable)。別のあり得る手法は、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、プルロニックF-68、ソルビタントリオレエート)の使用であった。
【0069】
本発明者らは、イオン性界面活性剤が、68Gaの標識において干渉し得るため、非イオン性界面活性剤の試験に着目した。
【0070】
Kolliphor HS15、Kolliphor K188、Tween 20、Tween 80、ポリビニルピロリドンK10のような、非イオン性張力活性物質(tensioactives)は、経口及び注射用配合物中の可溶化添加剤として市販されている。以下の表において、異なる張力活性剤で行われている初回の試験をまとめる。
【0071】
材料及び方法:
NeoBOMB1の標識化は、Castaldiら(Castaldi E、Muzio V、D’Angeli L、Fugazza L. 68GaDOTATATE lyophilized ready to use kit for PET imaging in pancreatic cancer murine model、J Nucl Med 2014年;55巻(suppl 1):1926)による以前に発表したキット手法に基づいた。
【0072】
異なる界面活性剤を、スクリーニングし、得られた水溶液の付着%を、用量キャリブレーター測定により、放射性標識された溶液を完全に中止した後、バイアルに残された総放射活性を評価し、決定した。百分率として表される、サンプルの中止前及び中止後に測定した総放射活性の間の差は、容器栓システムへのペプチドの付着と直接相関する。これらの結果を、Table 1(表1)にまとめる。
【0073】
【0074】
ペプチド付着に関する最良の結果を、Kolliphor HS15及びTween 20により得た。2種の添加剤を、キット内の最終量を決定するために更に調査した。得られた結果は、放射化学的純度及びペプチド付着に関して優れていた。
【0075】
【0076】
本発明者らは、ポリソルベート(Tween 20)が、自動酸化、エチレンオキシドサブユニットにおける開裂及び酸素、金属イオン、過酸化物又は温度上昇の存在により引き起こされる脂肪酸エステル結合の加水分解を行うことができるため、Kolliphor HS15に焦点を合わせた。
【0077】
(実施例2):177Lu-NeoBOMB1の治療有効性の前臨床試験
本明細書中で開示されるのは、177Lu-NeoBOMB1の3種の異なる用量による、周知のGRPR-発現前立腺がん細胞系統PC-3を異種移植された動物の治療を伴う、177Lu-NeoBOMB1の治療有効性の前臨床試験の模範的な、非限定的な例である。更に、腫瘍を有さない動物の小グループにおいて、腎臓及び膵臓に対する177Lu-NeoBOMB1治療の効果を、治療後の病理組織学的検査により試験した。
【0078】
材料及び方法
放射性標識
NeoBOMB1(ADVANCED ACCELERATOR APPLICATIONS社)(WO2014052471)を、超純水に希釈し、濃度及び化学純度を、自社開発の滴定方法でモニターした(Breeman WA、de Zanger RM、Chan HS、de Blois E.Alternative method to determine specific activity of 177Lu by HPLC.Curr Radiopharm.2015年;8巻:119~122頁)。ペプチドの固着を防ぐために、放射活性を、すべての必要な添加剤、例えば、緩衝液、抗酸化剤、及び張力活性剤(Kolliphor HS15)を含めたペプチドを含有する、バイアルに加えた(177Lu100MBq/nmol)。高速液体クロマトグラフィを、放射化学的純度を決定するために、メタノール及び0.1%トリフルオロ酢酸の勾配で行った。前述した通り、シリカゲルの即時薄層クロマトグラフィ(instant thin-layer chromatography)により測定された放射性金属の取り込み(de Blois E、Chan HS、Konijnenberg M、de Zanger R、Breeman WA.Effectiveness of quenchers to reduce radiolysis of(111)In- or(177)Lu-labelled methionine-containing regulatory peptides. Maintaining radiochemical purity as measured by HPLC. Curr Top Med Chem.2012年;12巻:2677~2685)は、SPECT/CT、並びに有効性及び毒性試験の場合、それぞれ、>67%及び>90%であった。
【0079】
動物モデル、有効性及び毒性
すべての動物試験を、Erasmus Medical Centerの動物福祉委員会(Animal Welfare Committee)要件に合致し、認められているガイドラインに従って行った。接種培地(1/3がマトリゲル高濃度(Corning社)+2/3がハンクス平衡塩類溶液(Thermofisher Scientific社))中の、4×106 PC-3細胞(American Type Culture Collection)200μLを、雄のbalb c nu/nuマウスの右肩に皮下接種した。腫瘍細胞接種の4週間後、平均の腫瘍のサイズが543±177mm3に達した場合、動物を、4群、すなわち、対照群(n=10)及び第1~3の療法群(1群当たりn=15)に分けた。177Lu-NeoBOMB1の有効性を決定するために、動物に、イソフルラン/O2麻酔下で、3種の模擬注射(対照群)、177Lu-NeoBOMB1 3×30MBq/300pmol(第1群)、177Lu-NeoBOMB1 3×40MBq/400pmol(第2群)又は177Lu-NeoBOMB1 3×60MBq/600pmol(第3群)を投与した。注射を、静脈内投与し、注射を、1週間の間隔を空けて接種した。
【0080】
膵臓及び腎臓組織に対する治療の効果を決定するために、腫瘍を有さないbalb c nu/nu maleマウスに、有効性試験に含まれる動物と同じ治療を行った。最後の治療的注射後の2つの異なる時点で(12週目及び24週目p.i.)、動物を、安楽死させ、膵臓及び腎臓組織を、病態解析のために収集した。
【0081】
両試験において、動物の体重及び/又は腫瘍のサイズを、隔週に測定した。腫瘍のサイズが、≧2000mm3である又は動物の体重の48時間以内の≧20%の減少が観察された場合、動物を本試験から除外した。有効性試験では、動物を、最大許容年齢が230日に達するまで追跡した。
【0082】
SPECT/CT
腫瘍取込みを定量するために、SPECT/CTイメージングを、PC-3異種移植された動物の追加の群(1群当たりn=2)で行った。腫瘍のサイズが、すべて477±53mm3であった場合、動物に、有効性及び毒性試験に含まれる動物と同じペプチド量を注射した。1回目の治療的注射の4時間及び24時間後、2回目及び3回目の治療的注射の4時間後、全身SPECT/CT走査を、ハイブリッドSPECT/CTスキャナー(VECTor5、MILabs、Utrecht、The Netherlands)で行った。SPECTを、報告された空間分解能が0.85mmである2.0-mmピンホールコリメータを用いて、40のベッド位置で、30分で行った(Ivashchenko O、van der Have F、Goorden MC、Ramakers RM、Beekman FJ.Ultra-high-sensitivity submillimeter mouse SPECT.J Nucl Med.2015年;56巻:470~475頁)。SPECT画像を、光電ピークの両側にバックグラウンドウインドウを有する(幅が、対応する光電ピークの20%である)、光電ピークウインドウ113及び208keV、並びにSR-OSEM再構成法(Vaissier PE、Beekman FJ、Goorden MC. Similarity-regulation of OS-EM for accelerated SPECT reconstruction. Phys Med Biol.2016年;61巻:4300~4315)、ボクセルサイズ0.8mm3を用いて再構成し、CTデータに登録した。再構成後の3次元ガウシアンフィルターを適用した(1mm fwhm)。CTを、次の設定で行った。0.24mA、50kV、周角走査、1ポジション。CTを、100μm3で再構成した。
【0083】
病理学的分析
病理学的分析のために収集した膵臓及び腎臓組織をホルマリン固定し、パラフィン包埋した。ヘマトキシリン及びエオシン染色を、Ventana Symphony(商標)H&Eプロトコール(Ventana)を用いて、4μM厚の組織切片で行って、4つの治療群間の組織構造の差を決定した。合計4個の組織切片において、各臓器50μMを互いに別々に評価した。ヘマトキシリン及びエオシン染色は、経験豊かな病理学者により評価された。
【0084】
線量測定
体重25gで、先に公開された体内分布及び薬物動態試験から得られたデータ(Dalm SU、Bakker IL、de Blois Eら、68Ga/177Lu-NeoBOMB1、a Novel Radiolabeled GRPR Antagonist for Theranostic Use in Oncology. J Nucl Med.2017年;58巻:293~299頁)を有する、RADARリアリスティックマウスモデル(Keenan MA、Stabin MG、Segars WP、Fernald MJ. RADAR realistic animal model series for dose assessment. J Nucl Med.2010年;51巻:471~476頁)を用いて、動物を、177Lu-NeoBOMB1 3×30MBq/300pmol、4×40MBq/400pmol又は3×60MBq/600pmolで治療した場合、腫瘍、膵臓及び腎臓への用量を算出した。本発明者らの先に公開した論文(Dalm SU、Bakker IL、de Blois Eら、68Ga/177Lu-NeoBOMB1、a Novel Radiolabeled GRPR Antagonist for Theranostic Use in Oncology.J Nucl Med.2017年;58巻:293~299頁)の体内分布データを、指数曲線に適合させて、腫瘍及び臓器における時間放射能曲線を定義した。177Luについての時間積分活動(time integrated activities)を、177Lu崩壊曲線(T1/2=6.647d)で重ねたこれらの指数曲線を積分することにより得られた。投与された活性当たりの吸収線量を、Keenanら(Keenan MA、Stabin MG、Segars WP、Femald MJ. RADAR realistic animal model series for dose assessment. J Nucl Med.2010年;51巻:471~476)から得られた臓器S値で乗じることにより又は腫瘍340mgの場合の球状のノードS値(Stabin MG、Konijnenberg MW. Re-evaluation of absorbed fractions f
or photons and electrons in spheres of various sizes.J Nucl Med.2000年;4l巻:l49~160頁)を用いることにより得られた。
【0085】
腫瘍線量測定を、腫瘍制御確率(TCP)に基づいた線形二次(LQ)モデル(Konijnenberg MW、Breeman WA、de Blois Eら、Therapeutic application of CCK2R-targeting PP-F11:influence of particle range、activity and peptide amount.EJNMMI Res.20l4年;4巻:47頁)を用いることにより、治療アウトカムの予測のために用いた。
【0086】
【0087】
N
clonogensは、腫瘍内のクローン原性(幹)細胞の数であり、S(D,T)は、吸収線量D及び時間Tの関数としての細胞の生存率である。LQモデルは、
【数2】
により、倍加時間T
dを用いて、腫瘍成長についての吸収線量の関数としての生存を示し、αが腫瘍の放射線感受性は、α/βが、直接的な(α)放射線感受性と間接的な(β)放射線感受性の間の比であり、Gは、有効崩壊半減期及び致死量以下の損傷修復の半減期に応じて、線量送達中に、間接的な損傷の蓄積を表す時間因子である。腫瘍の倍加時間を、対照群において、経時的に指数関数的な成長関数を、腫瘍体積に適合することにより決定した。PC-3腫瘍についての放射線感受性パラメータを、LDR及びHDR近接照射療法生存データα=0.145Gy及びα/β=4.1(2.5~5.7)Gyから得た(Carlson DJ、Stewart RD、Li XA、Jennings K、Wang JZ、Guerrero M. Comparison of in vitro and in vivo alpha/beta ratios for prostate cancer.Phys Med Biol.2004年;49巻:4477~4491)。PC-3腫瘍についての致死量以下の損傷修復半減期は、6.6(5.3~8.0)h(Carlson DJ、Stewart RD、Li XA、Jennings K、Wang JZ、Guerrero M. Comparison of in vitro and in vivo alpha/beta ratios for prostate cancer. Phys Med Biol.2004年;49巻:4477~4491)であることが示されるが、この値は、1hのより低い値で保存的に固定された(Joiner M、Kogel Avd.Basic clinical radiobiology.第4版.London:Hodder Arnold;;2009年)。TCPモデルを用いて、成長の遅延のみ(TCP=0%)、部分応答(TCP>75%)及び完全寛解(TCP=l00%)をもたらす、投与された活性を選択した。PC-3腫瘍異種移植片中のクローン原性細胞密度は、10
6細胞/cm
3であることが仮定された。
【0088】
腫瘍体積分析
腫瘍の倍加時間を、対照群において、経時的に指数関数的な成長関数を腫瘍体積に適合することにより決定した。療法群では、指数関数的な腫瘍体積の減少を伴う間隔を、最下点時間後の再成長の開始と適合させた。成長曲線は、腫瘍(>2000mm3)が大きすぎて、平均成長統計を決定できないマウスについての打ち切り時点を越えて推定した。腫瘍の成長の遅延時間を、最大の腫瘍のサイズ2000mm3に達するのに必要とされる時間を対照群において判明した平均時間と比較することにより個別に決定した。
【0089】
統計
Prismソフトウェア(バージョン5.01、GraphPad Software社)を、統計解析のために用いた。P値>0.05は、統計的に有意であると考えられた。4つの群についての腫瘍体積成長及び遅延時間の差を、ボンフェローニの多重比較試験を含む一元配置ANOVA試験を用いて分析した。曲線当てはめを、ピアソンR2による最小/二乗当てはめに従って行って、当てはまりの良さを定量化した。
【0090】
結果
SPECT/CT
ほとんどの時点で、SPECT/CTにおいて定量化された平均放射活性取込みは、第3群が最も高く、続いて、第2群及び第1群であった。しかしながら、群間の差は、有意でなかった。
図1Aは、1回目の注射の4時間後及び24時間後、並びに2回目及び3回目の注射の4時間後に得られた、各群の動物1匹の走査を示す。定量化された腫瘍取込みを、
図1Bに図示する。
【0091】
177Lu-NeoBOMB1治療有効性
177Lu-NeoBOMB1による療法は、有効であることが証明された。対照群における動物は、腫瘍のサイズが2000mm
3に達し、20.3±5.9dの範囲内であり、これは、第1群、第2群、及び第3群の場合、それぞれ97±59d、l03±66d及び95±26dであった(
図2A)。更に、第1群から得られた動物2匹及び第2群の動物1匹は、完全寛解後にいかなる腫瘍再成長をも示さなかった。しかしながら、治療群内で腫瘍の成長の遅延時間に有意差はなく、対照群による差は、非常に有意であった(P<0.0001)。
【0092】
上記と一致して、治療群における動物は、治療群と比較して、生存が有意に良かった(P<0.001)(
図2B)。中央生存は、対照群、第1群、第2群、及び第3群について、それぞれ、19d、82d、89d及び99dであった。
【0093】
5匹(第2群からn=3及び第3群からn=2)を、以下の理由から本試験から除外した; 1匹は、1回目の注射の後に死亡が判明し、1匹は、療法の開始時に、数日以内に消失した非常に小型の腫瘍があり、1匹は、48h以内に10%を超える体重減少があり、1匹は、腹部に体液を保持した。言及した事象のうちいずれも、治療に関連した徴候がなかった。
【0094】
腎臓及び膵臓毒性
毒性に含まれた動物は、追跡期間にわたって、体重の決定的な減少を示さなかった(
図3)。動物の体重は、最初の週に増加し、経時的に、比較的安定したままであった。対照群中の1匹(ID:B)及び第1群から得られた1匹(ID:869)は、体重の減少を示したが、これは、48h以内で10%未満であった。膵臓の病理組織学的分析では、組織損傷又は他の異常を示さなかった(
図4)。腎臓に関して(
図5)、リンパ球の浸潤を伴う狭い領域が、最終の治療的注射後12週目及び24週目に腎臓において観察された。これは、対照動物並びに治療される動物の腎臓の症例であり、本知見は、療法に関連しないことを示した。療法の24週間後、萎縮及び線維症は、療法と関連しそうにない、最も低い治療用量を投与された動物1匹のみ(ID:864)の腎臓において観察された。療法の24週間後に安楽死させた第3群から得られた動物2匹の腎臓において、軽度の慢性炎症反応が観察された。
【0095】
線量測定
177Lu-NeoBOMB1 3×30MBq/300pmol、3×40MBq/400pmol又は3×60MBq/600pmolによる治療後の腫瘍、膵臓及び腎臓への放射活性用量を推定した(以下のTable 3(表3)を参照のこと)。これについて、腫瘍及び臓器取込みは、各注射後に類似したことが仮定された。
【0096】