IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-予測システム 図1
  • 特許-予測システム 図2
  • 特許-予測システム 図3
  • 特許-予測システム 図4
  • 特許-予測システム 図5
  • 特許-予測システム 図6A
  • 特許-予測システム 図6B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】予測システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
G05B23/02 R
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021527524
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(86)【国際出願番号】 JP2020021298
(87)【国際公開番号】W WO2020261875
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2019122012
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】明渡 豊
(72)【発明者】
【氏名】門脇 正法
【審査官】渡邊 捷太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-101235(JP,A)
【文献】特開2006-072408(JP,A)
【文献】特許第2758976(JP,B2)
【文献】国際公開第2018/061842(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/146768(WO,A1)
【文献】特開2014-092799(JP,A)
【文献】国際公開第2018/106150(WO,A1)
【文献】特開2011-081697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプラントそれぞれの運転状態の履歴と、前記複数のプラントそれぞれの属性を示す属性情報とを記憶する記憶部と、
予測対象のプラントの属性情報に含まれる少なくとも1つの属性情報が指定された属性情報フィルタ条件を取得する第1取得部と、
前記予測対象のプラントの運転状態の履歴に含まれる少なくとも1つの運転状態が指定された運転状態フィルタ条件を取得する第2取得部と、
前記記憶部を参照して、前記複数のプラントの運転状態の履歴から前記属性情報フィルタ条件及び前記運転状態フィルタ条件を満たすプラントの運転状態の履歴を抽出する抽出部と、
抽出された前記運転状態の履歴を統計分析して、前記予測対象のプラントの運転状態の発生確率の時系列変化を算出する予測部と、
を備えることを特徴とする予測システム。
【請求項2】
前記第1取得部は、前記属性情報フィルタ条件の入力を受け付けることにより、前記属性情報フィルタ条件を取得する、請求項1に記載の予測システム。
【請求項3】
前記第2取得部は、前記予測対象のプラントの指定を受け付け、前記記憶部に記憶された前記予測対象のプラントの運転状態の履歴に基づいて前記運転状態フィルタ条件を生成する、請求項1又は2に記載の予測システム。
【請求項4】
前記第2取得部は、前記運転状態フィルタ条件の入力を受け付けることにより、前記属性情報フィルタ条件を取得する、請求項1又は2に記載の予測システム。
【請求項5】
前記予測部が算出した前記発生確率の時系列変化を表示する表示部、を更に備える、請求項に記載の予測システム。
【請求項6】
前記運転状態フィルタ条件において、複数の運転状態が指定されており、
前記運転状態フィルタ条件は、前記複数の運転状態の発生の順序を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の予測システム。
【請求項7】
前記複数のプラント及び前記予測対象のプラントいずれも、ボイラである、請求項に記載の予測システム。
【請求項8】
数のプラントそれぞれの運転状態の履歴及び属性情報から、予測対象のプラントの属性情報に含まれる少なくとも1つの属性情報が指定された属性情報フィルタ条件と、前記予測対象のプラントの運転状態の履歴に含まれる少なくとも1つの運転状態が指定された運転状態フィルタ条件とを満たすものとして前記複数のプラントの運転状態の履歴から抽出されたプラントの運転状態の履歴を統計分析することにより算出された前記予測対象のプラントの運転状態の発生確率の時系列変化を表示する、表示装置。
【請求項9】
複数のプラントそれぞれの運転状態の履歴と、前記複数のプラントそれぞれの属性を示す属性情報とを記憶する記憶部を備える情報処理装置に、
予測対象のプラントの属性情報に含まれる少なくとも1つの属性情報が指定された属性情報フィルタ条件を取得するステップと、
前記予測対象のプラントの運転状態の履歴に含まれる少なくとも1つの運転状態が指定された運転状態フィルタ条件を取得するステップと、
前記記憶部を参照して、前記複数のプラントの運転状態の履歴から前記属性情報フィルタ条件及び前記運転状態フィルタ条件を満たすプラントの運転状態の履歴を抽出するステップと、
抽出された前記運転状態の履歴を統計分析して、前記予測対象のプラントの運転状態の発生確率の時系列変化を算出するステップと、
を実行させるための方法。
【請求項10】
複数のプラントそれぞれの運転状態の履歴と、前記複数のプラントそれぞれの属性を示す属性情報とを記憶する記憶部を備える情報処理装置を、
予測対象のプラントの属性情報に含まれる少なくとも1つの属性情報が指定された属性情報フィルタ条件を取得する第1取得部と、
前記予測対象のプラントの運転状態の履歴に含まれる少なくとも1つの運転状態が指定された運転状態フィルタ条件を取得する第2取得部と、
前記記憶部を参照して、前記複数のプラントの運転状態の履歴から前記属性情報フィルタ条件及び前記運転状態フィルタ条件を満たすプラントの運転状態の履歴を抽出する抽出部と、
抽出された前記運転状態の履歴を統計分析して、前記予測対象のプラントの運転状態の発生確率の時系列変化を算出する予測部と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象装置の運転状態を予測する予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラント等の対象装置の運転に関するデータに基づいて、当該対象装置やその部品等の将来の挙動を予測するためのシステムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数のプラントにおける各種部品の特性の経時的変化情報を学習することにより神経回路モデルを生成し、複数の経時的特性変化パターンの各々との類似度に基づいて、当該部品の将来の経時的特性変化パターンを予測する特性変化予測システムが開示されている。また、例えば、特許文献2には、複数のプラントから類似するプラントを選択し、運転データから特定の性能指標を監視するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2758976号
【文献】特開2004-290774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プラント等の対象装置の将来の挙動は、過去の運転状態のみならず、対象装置の仕様や対象装置が置かれる環境等の要因にも影響を受ける可能性が大いにある。これら要因は、対象装置を種々の基準によって分類した場合の当該対象装置が属するカテゴリを示す情報、すなわち属性情報であると言える。
【0006】
そこで、本発明は、対象装置の属性情報を考慮して当該対象装置の運転状態の将来予測が可能となる予測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る予測システムは、複数の対象装置それぞれの運転状態の履歴と、複数の対象装置それぞれの属性を示す属性情報とを記憶する記憶部と、予測対象装置の属性情報に含まれる少なくとも1つの属性情報が指定された属性情報フィルタ条件を取得する第1取得部と、予測対象装置の運転状態の履歴に含まれる少なくとも1つの運転状態が指定された運転状態フィルタ条件を取得する第2取得部と、記憶部を参照して、複数の対象装置のうち属性情報フィルタ条件及び運転状態フィルタ条件を満たす対象装置の運転状態の履歴を抽出する抽出部と、抽出された運転状態の履歴に基づいて前記予測対象装置の運転状態を予測する予測部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この態様によれば、複数の対象装置それぞれの運転状態の履歴から、対象装置の属性情報を指定する属性情報フィルタ条件を満たす対象装置の運転状態の履歴が抽出され、当該運転状態の履歴に基づいて予測対象装置の運転状態が予測される。したがって、対象装置の属性情報を考慮した運転状態の将来予測が可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、対象装置の属性情報を考慮して当該対象装置の運転状態の将来予測が可能となる予測システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る予測システム1の構成の一例を示す概略図である。
図2】属性情報テーブルの一例を示す図である。
図3】運転状態履歴テーブルの一例を示す図である。
図4】実施形態に係る予測システム1による動作フローの一例を示す図である。
図5】表示部13に表示される画面500の一例を示す図である。
図6A】表示部13に表示される画面600の一例を示す図である。
図6B】表示部13に表示される画面700の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。(なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。)
【0012】
(1)構成
(1-1)予測システム1
図1は、本発明の実施形態に係る予測システム1の構成の一例を示す概略図である。図1に示すとおり、予測システム1は、サーバ10と、少なくとも1のプラント20とを有する。ここで、プラント20は「対象装置」の一例である。プラント20の種類は特に限定されず、石油プラント、化学プラント、医薬品プラント、食品プラント、及び製紙プラント等を含んでもよい。また、プラント20を構成する要素は、特に限定されず、燃料や原材料等の貯蔵設備、燃料や原材料等を使用、または燃料や原材料等に対して処理・加工等を行う設備、各要素を接続する配管系統等を含んでもよい。なお、予測システム1が適用可能な対象装置は、各種のプラントに限らず、産業機械等の任意の装置であってよい。
【0013】
サーバ10と、各プラント20とは、インターネット等の通信ネットワークを介して互いに情報通信可能に接続されている。なお、各プラント20を区別する場合は、各プラント20を「プラント20A」、「プラント20B」などと称する場合があり、各プラント20を総称する場合は単に「プラント20」と称する場合がある。
【0014】
(1-2)サーバ10
サーバ10は、各プラント20の運転状態の履歴(運転状態履歴)を管理する情報処理装置の一例である。本例では、サーバ10は、例えば、1つの情報処理装置によって構成されるものとするが、サーバ10は、複数の情報処理装置によって構成されてもよい。ここで、情報処理装置は、例えば、プロセッサ及び記憶領域を備えたコンピュータ等の、各種の情報処理を実行可能な装置である。図1に示す各部は、例えば、記憶領域を用いたり、記憶領域に格納されたプログラムをプロセッサが実行したりすることにより実現することができる。
【0015】
サーバ10は、例えば、サーバ通信部11と、操作部12と、表示部13と、記憶部14と、処理部15とを有する。
【0016】
サーバ通信部11は、サーバ10を通信ネットワークに接続するための通信インターフェース回路を有する。サーバ通信部11は、各プラント20から受信した運転状態の履歴(運転状態履歴)等のデータを処理部15に供給する。
【0017】
操作部12は、サーバ10の操作が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、タッチパネルやキーボタン等である。ユーザは、操作部12を用いて、文字や数字、記号等を入力することができる。操作部12は、ユーザにより操作されると、その操作に対応する信号を発生する。そして、発生した信号は、ユーザの指示として、処理部15に供給される。
【0018】
表示部13は、映像や画像等の表示が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等である。表示部13は、処理部15から供給された映像データに応じた映像や、画像データに応じた画像等を表示する。
【0019】
記憶部14は、例えば、半導体メモリ、磁気ディスク装置及び光ディスク装置のうちの少なくとも一つを有する。記憶部14は、処理部15による処理に用いられるドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、記憶部14は、ドライバプログラムとして、サーバ通信部11を制御する通信デバイスドライバプログラム等を記憶する。各種プログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部14にインストールされてもよい。
【0020】
記憶部14は、データとして、後述する属性情報テーブル、運転状態履歴テーブル等を記憶する。また、記憶部14は、データとして、各種画面の表示データを記憶する。さらに、記憶部14は、所定の処理に係るデータを一時的に記憶する。
【0021】
図2は、属性情報テーブルの一例を示す図である。属性情報テーブルは、プラント毎の属性情報を管理するためのテーブルである。ここで、プラント20の属性情報とは、例えば、プラント20を種々の基準によって分類した場合の当該プラント20が属するカテゴリ(属性)を示す情報である。なお、「属性」は、「外的状態」、「付帯状態」、及び「外的付帯状態」などと称される場合がある。
【0022】
属性情報テーブルには、例えば、「プラントID」、「地域」、「気候」、「製造時期」、「ユーザ」、「燃料種別」、「機種」、「設計者」、「メンテナンス者」等のプラント20の属性情報が記録される。「プラントID」は、プラント20を識別するための識別情報(ID)である。「地域」は、当該プラント20が設置される地域を示す情報である。「地域」は、当該プラント20が設置される地域の気候を示す情報である。「製造時期」は、当該プラント20が製造された時期を示す情報であって、例えば、年、年月、年月日等で表されてもよい。「機種」は、当該プラント20の機械としての種別であって、例えば、型式、方式、タイプ、「設計者」は、当該プラント20を設計した者(個人、企業等)を示す情報である。「メンテナンス者」は、当該プラント20のメンテナンスを行う者(個人、企業等)を示す情報である。なお、属性情報テーブルは、上述した項目に限らず、他の属性情報を含んでもよい。
【0023】
図3は、運転状態履歴テーブルの一例を示す図である。運転状態履歴テーブルは、プラント20毎の運転状態履歴を管理するためのテーブルである。図3に示すとおり、運転状態履歴テーブルでは、プラント毎に、運転状態の履歴が複数の矩形のセルCによって表現されている。運転状態履歴テーブルでは、横軸は基準時からの経過時間を示している。ここで、基準時は、管理者等が任意に設定可能であるが、例えば、プラント20の稼働開始時や、立上げ時(初回の立上げ時の他、点検等のための休止期間を経た再立上げ時を含む)等であってよい。また、運転状態履歴テーブルでは、個々のセルCは、当該経過時間(1つの時点であってもよいし、所定の幅を有する期間であってもよい)におけるプラント20の運転状態を示しており、セルC内の模様によってその運転状態の種類が区別される。1つのセルCが有する時間の長さは、例えば、秒、分、時間、日、週等の単位で任意に設定可能である。運転状態は、これらに限るものではないが、例えば、正常運転中、事故発生中(燃料欠乏、異物出現、温度上昇、温度低下、クーラートリップ、燃料系トリップ、噴破、及びブラックアウト等の事故の発生中)、警報発生中(バランシングシュートレベル警報等その他の警報の発生中)、運転停止中、及び他の任意のイベントの発生中等を含んでもよい。
【0024】
処理部15は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を備える。処理部15は、サーバ10の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。処理部15は、サーバ10の各種処理が記憶部14に記憶されているプログラム等に基づいて適切な手順で実行されるように、サーバ通信部11等の動作を制御する。処理部15は、記憶部14に記憶されているプログラム(オペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、処理部15は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行することができる。
【0025】
処理部15は、収集部151、第1取得部152a、第2取得部152b、抽出部153、予測部154、及び表示処理部155等を有する。処理部15が有するこれらの各部は、処理部15が有するプロセッサ上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、処理部15が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、又はファームウェアとしてサーバ2に実装されてもよい。
【0026】
収集部151は、各プラント20から当該プラント20の運転状態履歴を収集(受信)し、記憶部14等に記憶された運転状態履歴テーブルに記録する。収集部151の当該収集・記録の処理を実行するタイミングは、特に限定されないが、例えば、予め定められた周期的又は非周期的なタイミングや、管理者等が操作部12を介して当該処理の実行の指令を入力したときであってよい。
【0027】
受付部152は、例えば、ユーザが操作部12を介して入力する各種のフィルタ条件を受け付ける。ここで、フィルタ条件とは、運転状態履歴テーブルから所望の運転状態履歴を抽出する(フィルタリングする)ために、当該プラント20乃至当該プラント20の運転状態履歴が満たすべき条件である。
【0028】
第1取得部152aは、プラント20の属性情報に関する条件である属性情報フィルタ条件を取得する。ここで、属性情報フィルタ条件は、運転状態履歴テーブルから所望の運転状態履歴を抽出する(フィルタリングする)ために、当該プラント20が満たすべき条件であって、予測対象装置の属性情報に含まれる少なくとも1つの属性情報が指定された条件である。属性情報フィルタ条件が含む属性情報は、例えば、上述した図2の説明において列挙された属性情報であってもよいし、その他の任意の属性情報であってよい。第1取得部152aは、例えば、ユーザが操作部12を介して入力する属性情報フィルタ条件を受け付けることにより、当該属性情報フィルタ条件を取得する。
【0029】
第2取得部152bは、プラント20の運転状態に関する条件である運転状態フィルタ条件を取得する。ここで、運転状態フィルタ条件は、運転状態履歴テーブルから所望の運転状態履歴を抽出する(フィルタリングする)ために、当該プラント20の運転状態履歴が満たすべき条件である。運転状態フィルタ条件においては、予測対象装置の運転状態履歴に含まれる少なくとも1つの運転状態が指定される。また、運転状態フィルタ条件においては、各運転状態の発生の順序が指定されていてもよい。
【0030】
抽出部153は、記憶部14を参照して、第1取得部152aが受け付けた属性情報フィルタ条件や第2取得部152bが受け付けた運転状態フィルタ条件を満たすプラント20の運転状態履歴を抽出する。なお、抽出部153は、上述した運転状態フィルタ条件に応じて運転状態履歴を抽出する際に、運転状態フィルタ条件として指定された運転状態の継続時間(当該運転状態が断続的である場合、各運転状態の履歴を合計した時間であってもよい)が所定の閾値以上である場合にのみ抽出することとしてもよい。
【0031】
予測部154は、抽出部153が抽出した運転状態履歴に基づいて、予測対象装置(プラント)の運転状態を予測する。予測部154による運転状態の予測の手法は特に限定されないが、例えば、統計分析による予測や、確率密度関数による予測や、ベイズ理論に基づく予測等であってよい。より具体的には、予測部154は、例えば、抽出部153により抽出された運転状態履歴を統計分析する(例えば、抽出された運転状態履歴を時間毎に集計した上で正規化する)ことにより時間毎の運転状態の発生確率を算出してもよい。当該発生確率によって、将来のある時点における予測対象装置(プラント)の運転状態を予測することが可能となる。或いは、予測部154は、例えば、抽出部153により抽出された運転状態履歴を学習データとする機械学習を実行して学習モデルを生成し、予測対象装置(プラント)の運転状態の履歴を当該学習モデルに入力することにより、予測対象装置の将来の運転状態を出力させてもよい。より具体的には、例えば、予測部154は、抽出部153により抽出された運転状態履歴を学習データとして、回帰型ニューラルネットワーク(RNN)を学習させることにより、運転状態履歴の時系列データを入力とし、将来の運転状態を出力とする学習モデルを生成してもよい。当該将来の運転状態によって、将来のある時点における予測対象装置(プラント)の運転状態を予測することが可能となる。
【0032】
表示処理部155は、記憶部14に記憶された各種画面の表示データに基づいて、表示部13に各種画面を表示させる。
【0033】
(1-3)プラント20
プラント20は、運転部21と、各種のセンサ22と、計測制御システム23と、プラント通信部24とを有する。運転部21は、プラント20を構成する主要な装置を有しており、例えば、燃焼室、及び熱交換室等の種々のモジュールや、各モジュールを接続する配管系統等を含む。センサ22は、運転部21の各所に設置され、運転部21の各種の物理量を検知し、検知結果を計測制御システム23に供給する。計測制御システム23は、センサ22から供給される検知結果に基づいて運転状態履歴を生成する。具体的には、計測制御システム23は、センサ22から供給された検知結果を解析することにより、当該センサ22が設置された運転部21の運転状態を判定した上で、判定された運転状態の時系列的な変化である運転状態履歴を生成する。そして、計測制御システム23は、プラント通信部24を介して、運転部21の運転状態履歴を、サーバ10に送信する。
【0034】
(2)動作処理
次に、図4~6を参照して、実施形態に係る予測システム1の動作処理の一例について説明する。図4は、実施形態に係る予測システム1による動作フローの一例を示す図である。図5は、表示部13に表示される画面500の一例を示す図である。図6は、表示部13に表示される画面600の一例を示す図である。以下では、個別のプラント20を「プラントA」、「プラントB」などと称する場合がある。
【0035】
ここで、プラントXは立上げから時間T1が経過しており、当該プラントXの時間T1以降の運転状態が予測の対象であるものとする。また、サーバ10の収集部151は予め、各プラント20から当該プラント20の運転状態履歴を収集し、記憶部14に記憶された運転状態履歴テーブルに当該運転状態履歴を記録しているものとする。
【0036】
(S100)
まず、サーバ10の第1取得部152aは、属性情報フィルタ条件を取得する。具体的には、例えば、第1取得部152aは、ユーザによる操作部12の操作に応じて、属性情報フィルタ条件の入力を受け付けることにより、当該属性情報フィルタ条件を取得する。このとき、サーバ10の表示処理部155は、例えば、記憶部14に記憶された表示データに基づいて、図5に示す画面500を表示部13に表示させる。図5に示すとおり、画面500は、属性情報フィルタ条件の表示部501と、運転状態フィルタ条件の表示部502と、抽出されたプラント20の運転状態履歴の表示部503とを含む。表示部501には、第1取得部152aが取得した属性情報フィルタ条件の内容が表示される。図5に示す例では、当該表示部501に、地域が「寒冷地」で、燃料が「水分大」で、機種が「小型」である属性情報フィルタ条件が表示されている。
【0037】
(S101)
次に、抽出部153は、記憶部14に記憶された属性情報テーブルを参照して、S100で取得された属性情報フィルタ条件を満たすプラント20を特定した上で、特定されたプラント20の運転状態履歴を運転状態履歴テーブルから抽出する。
【0038】
(S102)
次に、サーバ10の第2取得部152bは、ユーザによる操作部12の操作に応じて、予測対象装置となるプラント20の指定を受け付ける。具体的には、第2取得部152bは、予測対象装置としてユーザが指定するプラント20を特定するための情報(例えば、当該プラント20の名称や、識別情報等)の入力を受け付ける。
【0039】
(S103)
次に、サーバ10の第2取得部152bは、記憶部14に記憶された運転状態履歴テーブルを参照して、指定されたプラント20の運転状態履歴に基づいて運転状態フィルタ条件を生成することにより、当該運転状態フィルタ条件を取得する。例えば、第2取得部152bは、予測対象装置となるプラント20の運転状態の履歴に含まれる少なくとも1つの運転状態を選択して、選択された運転状態を運転状態フィルタ条件としてもよい。特に、第2取得部152bは、予測対象装置となるプラント20の運転状態の履歴に含まれる全ての運転状態を、運転状態フィルタ条件としてもよい。
【0040】
図5に示すとおり、画面500の表示部502には、第2取得部152bが生成した運転状態フィルタ条件の内容が表示される。表示部502には、第2取得部152bが取得した運転状態フィルタ条件の内容が表示される。図5に示す例では、当該表示部502に、運転状態フィルタ条件として、「運転状態Φ」、「運転状態Χ」、及び「運転状態Ψ」が表示されている。これは、プラントXの運転状態履歴に、「運転状態Φ」、「運転状態Χ」、及び「運転状態Ψ」の履歴がそれぞれ含まれているためである。
【0041】
(S104)
次に、抽出部153は、S101で抽出された運転状態履歴から、S103で生成された運転状態フィルタ条件を満たす運転状態履歴を抽出する。
【0042】
図5に示すとおり、画面500の表示部503には、属性情報フィルタ条件及び運転状態フィルタ条件を満たすものとして抽出されたプラント20の運転状態履歴(具体的には、プラントA、プラントC、プラントE、及びプラントFの運転状態履歴)が表示される。
【0043】
(S105)
次に、予測部154は、S101で抽出されたプラント20の運転状態履歴に基づいて、予測対象装置の運転状態を予測する。具体的には、例えば、予測部154は、抽出された運転状態履歴を統計分析することにより時間毎の運転状態の発生確率を算出してもよい。或いは、例えば、予測部154は、抽出部153により抽出された運転状態履歴を学習データとする機械学習を実行して学習モデルを生成し、予測対象装置(プラント)の運転状態の履歴を当該学習モデルに入力することにより、予測対象装置(プラント)の将来の運転状態を示す出力を生成してもよい。
【0044】
(S106)
次に、表示処理部155は、予測部154による予測結果を表示部13に表示させ、予測システム1の動作処理が終了する。
【0045】
図6Aは、予測部154が運転状態の発生確率を算出した場合に、表示処理部155によって表示部13に表示される、予測結果を示す画面600の一例である。図6Aに示すとおり、画面600は、予測部154により算出された運転状態の発生確率の表示部601と、予測対象装置の運転状態履歴の表示部602とを含む。表示部601には、予測部154が算出した各運転状態の発生確率の時系列変化が表示されている。図6Aに示す例では、運転状態φの発生確率PΦ(t)、運転状態Χの発生確率PΧ(t)、運転状態ψの発生確率Pψ(t)、及び運転状態Ωの発生確率PΩ(t)が示されている。
【0046】
表示部602には、運転状態の予測対象装置であるプラントXの運転状態履歴が表示されている。具体的には、表示部602には、稼働開始から時間T1が経過するまでのプラントXの運転状態履歴が表示されている。ここで、時間T1以降については、表示部601に表示された発生確率よって、プラントXの特定の運転状態をその発生確率をもって予測することが可能となる。図6Aに示す例では、将来の時間T2(>T1)におけるプラントXは、運転状態Ωとなる確率はPΩ(T2)であり、運転状態Ψになる確率はPψ(T2)である。
【0047】
図6Bは、予測部154が機械学習による学習モデルによって予測を行う場合に、表示処理部155によって表示部13に表示される、予測結果を示す画面700の一例である。図6Bに示すとおり、画面700は、予測対象装置であるプラントXの運転状態の時系列変化の表示部701を含む。表示部701には、プラントXの現在時刻T1までの運転状態の履歴が表示される。プラントXの現在時刻T1までの運転状態の履歴は、予測部154が実行する機械学習における学習データとなる。更に表示部701には、予測部154が当該学習データを用いて生成した学習モデルに、プラントXの運転状態履歴を入力することにより得られた出力としての将来の運転状態が表示される。
【0048】
なお、上述した実施形態では、第2取得部152bは、予測対象装置となるプラント20の指定を受け付けた上で(S102)、指定されたプラント20の運転状態履歴に基づいて運転状態フィルタ条件を生成する(S103)ことにより、運転状態フィルタ条件を取得することとした。しかしながら、第2取得部152bは、例えばユーザが操作部12を操作することにより入力した運転状態フィルタ条件を取得してもよい。
【0049】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…予測システム、10…サーバ、11…サーバ通信部、12…操作部、13…表示部、14…記憶部、15…処理部、151…収集部、152a…第1取得部、152b…第2取得部、153…抽出部、154…予測部、155…表示処理部、20、20A、20B、20C…プラント、21…運転部、22…センサ、23…計測制御システム、24…プラント通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B