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特許7480144EMM-41組成物、その製造方法、及び使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】EMM-41組成物、その製造方法、及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20240430BHJP
   C07D 207/06 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
C01B39/48
C07D207/06
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021531636
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 US2019060849
(87)【国際公開番号】W WO2020123070
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】62/777,852
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523025539
【氏名又は名称】エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】マボン,ロス
(72)【発明者】
【氏名】マレラ,マイケル エイ
(72)【発明者】
【氏名】バートン,アレン ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ウエストン,サイモン シー
(72)【発明者】
【氏名】ブローマン,ヒルダ ビー
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,カーク ディ
(72)【発明者】
【氏名】ウィルハマー,トム
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ,シャオドン
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ホンイー
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/095705(WO,A1)
【文献】特表2011-529441(JP,A)
【文献】特表2015-511924(JP,A)
【文献】特表2009-544569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/48
C07D 207/06
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表1A:
【表1】
の度2θを有する6個のXRDピークから選択される少なくとも5個のXRDピークを有する結晶性EMM-41材料。
【請求項2】
表1B:
【表2】
の度2θを有する9個のXRDピークから選択される少なくとも6個のXRDピークを有し、製造時に前記材料中に存在する一部又はすべての構造指向剤(SDA)が除去される、請求項1に記載の結晶性EMM-41材料。
【請求項3】
表3:
【表3】
中の2つ以上の空間群及び単位格子パラメータを有する少なくとも2つの規則端成分多形構造の無秩序フレームワークを含む結晶性材料であって、
製造時に前記材料中に存在する一部又はすべての構造指向剤が除去される、結晶性EMM-41材料。
【請求項4】
表3中の前記空間群の前記規則端多形構造が、本明細書の表4~9に記載の単位格子の四面体(T)原子の以下の接続性の1つ以上を示す、請求項3に記載の結晶性EMM-41材料。
【請求項5】
0.25~0.30cc/gの範囲内の微細孔容積を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の結晶性EMM-41材料。
【請求項6】
400~650m/gの範囲内の全BET表面積を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の結晶性EMM-41材料。
【請求項7】
前記材料が、前記結晶性材料の重量を基準として60~150mg/gのn-ヘキサン、及び/又は40~130mg/gの2,3-ジメチルブタン、及び/又は40~130mg/gの2,2-ジメチルブタン、及び/又は60~90mg/gのメシチレンを吸着する、請求項1~6のいずれか一項に記載の結晶性EMM-41材料。
【請求項8】
式Aの分子式:
(v)X:YO 式A
(式中、0.0000≦v≦0.05、Xは、B、Al、Fe、及びGa、又はそれらの混合物から選択される三価元素であり、Yは、Si、Ge、Sn、Ti、及びZr、又はそれらの混合物から選択される四価元素であり、Oは酸素である)
を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の結晶性EMM-41材料。
【請求項9】
vが0.0005である場合にYのXに対するモル比が1000である、請求項8に記載の結晶性EMM-41材料。
【請求項10】
XがAlである場合に、YのXに対するモル比が30~無限大である、請求項8に記載の結晶性EMM-41材料。
【請求項11】
表2A:
【表4】
の度2θを有する5個のXRDピークから選択される少なくとも4個のXRDピークを有する、SDAを除去するための処理が行われていない製造されたままのEMM-41材料。
【請求項12】
表2B:
【表5】
の度2θを有する9個のXRDピークから選択される少なくとも6個のXRDピークを有する、請求項11に記載の製造されたままのEMM-41材料。
【請求項13】
式Bの分子式:
(n)Q:(v)X:YO 式B
(式中、0.01≦n≦0.1、0.000≦v≦0.05であり、Qは有機構造指向剤であり、Xは、B、Al、Fe、及びGa、又はそれらの混合物から選択される三価元素であり、Yは、Si、Ge、Sn、Ti、及びZr、又はそれらの混合物から選択される四価元素であり、Oは酸素である)
を有する、請求項11又は12に記載の製造されたままのEMM-41材料。
【請求項14】
vが0.0005である場合に、YのXに対するモル比が1000である、請求項13に記載の製造されたままのEMM-41材料。
【請求項15】
QのYに対するモル比が0.01~0.50である、請求項13又は14に記載の製造されたままのEMM-41材料。
【請求項16】
以下の化合物Iの構造:
【化1】
(式中、Aは水酸化物イオンである)
を含むビスピロリジニウムジカチオンをその細孔構造中に有する、請求項11~15のいずれか一項に記載の製造されたままのEMM-41材料。
【請求項17】
請求項11~16のいずれか一項に記載の製造されたままのEMM-41材料の調製方法であって:
(a)以下の成分:
(i)四価元素(Y)の酸化物の供給源;
(ii)水酸化物イオン(OH)の供給源;
(iii)フッ化物イオン(F)の供給源;
(iv)ビスピロリジニウムジカチオンを含む有機構造指向剤(Q);及び
(v)水
を含む反応混合物を調製するステップであって、前記反応混合物が、モル比に関して、以下:
O/YO=2~10;
OH/YO=0.25~1;
F/YO=0.35~1;
Q/YO=0.01~0.50
の範囲内の組成を有するステップと;
(b)90℃~190℃の温度を含む結晶化条件下でステップ(a)の前記反応混合物の混合及び/又は加熱を行って、結果として得られた混合物の結晶を形成するステップと;
(c)ステップ(b)の前記結果として得られた混合物から前記結晶の少なくとも一部を、表2AのX線回折パターンを有する前記製造されたままの材料として回収するステップと、
を含む方法。
【請求項18】
前記反応混合物が、さらに、
(vi)三価元素(X)の供給源;及び/又は
(vii)前記四価元素(X)の重量を基準として0~10重量%の量のゼオライト種結晶の供給源
を含み、前記反応混合物が、モル比に関して、以下:
YO/X=10~無限大の範囲内の組成を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ビスピロリジニウムジカチオンが、以下の化合物Iの構造:
【化2】
(式中、Aはイオンである)
を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
両方のAイオンが水酸化物イオンである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ゼオライト種結晶が、EMM-41、ITQ-24、及びITQ-33の構造を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
供給材料の1つ以上の所望の成分を前記供給材料の残りの成分から選択的に分離する方法であって:
(i)有効な収着条件において、前記供給材料を収着剤に接触させるステップであって、前記収着剤が、請求項1~16のいずれか一項に記載の合成多孔質結晶性EMM-41材料、又は請求項17~21のいずれか一項に記載の方法によって製造される合成多孔質結晶性EMM-41材料の活性形態を含み、それによって収着生成物と排出生成物とが形成されるステップと;
(ii)収着生成物又は前記排出生成物のいずれかから前記1つ以上の所望の成分を回収するステップと、
を含む、方法。
【請求項23】
以下の化合物Iの構造:
【化3】
(式中、Aはイオンである)
を含むビスピロリジニウムジカチオンを含む、有機窒素化合物。
【請求項24】
両方のAイオンが水酸化物イオンである、請求項23に記載の有機窒素化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、EMM-41と呼ばれる組成物、その製造方法、及びその使用方法に関する。本開示は、そのようなEMM-41組成物の製造に使用される構造指向剤(SDA)、並びにこのSDAの調製に使用される合成方法、及びその前駆体化合物にも関する。
【背景技術】
【0002】
天然及び合成の両方のモレキュラーシーブ材料は、吸着剤として使用される場合があり、炭化水素変換反応に対する触媒特性を有する場合がある。ゼオライトなどのある種のモレキュラーシーブは、X線回折によって測定すると規則構造を有する多孔質結晶性材料である。そのような材料中には、多数のチャネルによって相互接続される場合がある多数の均一な空隙及び細孔が存在する。これらの空隙及び細孔のサイズ及び寸法は、特定のモレキュラーシーブ材料中で均一であり、これらによって、あるサイズの分子を吸着させ、より大きなサイズの分子は排除することが可能となる。サイズ選択により分子を吸着するそれらの能力のため、モレキュラーシーブ及びゼオライトは、炭化水素変換プロセス、例えば、クラッキング、水素化分解、不均化、アルキル化、オリゴマー化、及び異性化などの多くの用途を有する。
【0003】
モレキュラーシーブは、IUPAC Commission on Zeolite Nomenclatureの規則に準拠してStructure Commission of the International Zeolite Associationによって分類される。この分類によると、構造が確立されているフレームワークタイプのゼオライト及びその他の結晶性微孔質モレキュラーシーブは、3文字表記が割り当てられ、非特許文献1(参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0004】
モレキュラーシーブは、規則構造又は不規則構造を有することができる。規則的なモレキュラーシーブは3次元で規則的である。結晶構造が3次元すべてで規則的な場合、その構造は規則端成分構造(ordered end member structure)と呼ばれる。他方、不規則構造は、3次元未満の周期的な秩序を示す。積層無秩序を含む代表的なゼオライトファミリーとしては、ゼオライトベータ、SSZ-26/SSZ-33、ITQ-39、ZSM-48、ZSM-5/ZSM-11などが挙げられる。
【0005】
SSZ-26及びSSZ-33は、交差する10員環及び12員環の細孔から構成される3次元細孔システムを含む周知の大細孔ゼオライトである(非特許文献2を参照されたい)。これら2つのゼオライトは、ABAB配列又はABCABC配列の層の積層によって2つの端成分が形成される材料のファミリーの構成要素として特徴付けることができる。ABABの積層配列によって形成されるフレームワーク(「多形A」)は斜方対称であり、ABCABCの積層配列によって形成されるフレームワーク(「多形B」)は単斜対称である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】“Atlas of Zeolite Framework Types”,eds.Ch.Baerlocher,L.B.McCusker,and D.H.Olson,Elsevier,Sixth Edition,2007
【文献】Lobo et al.,“SSZ-26 and SSZ-33:Two Molecular Sieves with Intersecting 10- and 12-Ring Pores”Science,Vol.262.no.5139,pp.1543-1546,Dec.3,1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多くの異なる結晶性モレキュラーシーブが発見されているが、気体分離及び乾燥、有機変換反応、並びにその他の用途に望ましい性質を有する新しいモレキュラーシーブが引き続き必要とされている。新しいモレキュラーシーブは、新規な内部細孔構造を含み、これらのプロセスにおいて向上した選択性を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
焼成された形態(少なくとも一部のSDAが除去されている場合)及び製造されたままの形態(SDAが除去されていない場合)の結晶性材料のEMM-41、並びにそれらの製造方法、及びそれらの1つ以上の使用方法が本明細書に開示される。そのようなEMM-41材料の製造に使用されるSDA、並びにそれらのSDAを調製するための合成方法の使用、及びその前駆体化合物も開示される。
【0009】
一態様では、本開示は、例えば図1中に示され、及び以下の表1Aから選択される度2θにおいて少なくとも5個のX線回折(XRD)ピークを有する、一部又はすべての構造指向剤(「SDA」)が除去されている結晶性材料(例えば、少なくとも部分的に焼成されたEMM-41材料)を提供する。
【0010】
【表1】
【0011】
別の一態様では、例えば図2(上)中に示され、表2Aから選択される度2θにおいて少なくとも4個のXRDピークを有する、製造されたままの結晶性材料(SDAが除去されていない場合)が本明細書に提供される。
【0012】
【表2】
【0013】
さらなる一態様では、表3中の2つ以上の空間群及び単位格子座標を有する少なくとも2つの規則端成分(多形)構造の無秩序フレームワークを含む結晶性材料(製造時に材料中に存在する一部又はすべての構造指向剤が除去される)が本明細書に提供される。
【0014】
【表3】
【0015】
表3中の空間群の規則端成分(多形)構造は、本明細書における表4~表9中に記載の単位格子の四面体(T)原子の以下の接続性の1つ以上を示す。
【0016】
さらに別の一態様では、本開示は、式Aの分子式:
(v)X:YO 式A
(式中、0≦v≦0.05又は0.0005≦v≦0.05であり、Xは三価元素であり、Yは四価元素であり、Oは酸素である)
を有する材料を提供する。
【0017】
さらに別の一態様では、本開示は、本明細書に記載の材料の調製方法を提供する。
【0018】
さらなる一態様では、製造されたままのEMM-41の調製方法に使用できる構造指向剤(SDA)である化合物Iが本明細書に提供される。化合物Iは以下の構造:
【化1】
(式中、Aはイオンであり、好ましくは両方のAイオンは水酸化物イオンである)
を有する。
【0019】
さらなる一態様では、本開示は、化合物Iの調製方法も提供する。
【0020】
本概要などの本明細書中に記載されるいずれか2つ以上の特徴を組み合わせて、本明細書に特に記載されない特徴の組み合わせを形成することができる。1つ以上の特徴の詳細が添付の図面及び以下の説明に示される。その他の特徴及び利点は、説明及び図面、並びに請求項から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1による製造されたままのEMM-41材料の粉末XRDパターンを示している。
図2】実施例5の製造されたままのEMM-41(下)及び焼成されたEMM-41(上)の材料の粉末XRDパターンを示している。
図3A-3B】それぞれ本発明の結晶性材料の一実施形態の多形Aの規則端成分の構造モデルの投影図を示している。
図4A-4B】それぞれ本発明の結晶性材料の一実施形態の多形Bの規則端成分の構造モデルの投影図を示している。
図5A-5B】それぞれ本発明の結晶性材料の一実施形態の多形Cの規則端成分の構造モデルの投影図を示している。
図6A-6B】それぞれ本発明の結晶性材料の一実施形態の多形Dの規則端成分の構造モデルの投影図を示している。
図7A-7B】それぞれ本発明の結晶性材料の一実施形態の多形Eの規則端成分の構造モデルの投影図を示している。
図8A-8B】それぞれ本発明の結晶性材料の一実施形態の多形Fの規則端成分の構造モデルの投影図を示している。
図9A-9B】それぞれ本発明の結晶性材料の一実施形態の多形Gの規則端成分の構造モデルの投影図を示している。
図10A】本発明の結晶性材料の実施形態の多形A~Dの規則端成分の構造モデルの投影図の比較を示している。
図10B】本発明の結晶性材料の実施形態の多形E~Gの規則端成分の構造モデルの投影図の比較を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
少なくとも部分的に焼成されたEMM-41結晶性材料、並びに例えば電子線回折及び四面体(T)原子配位によるそれらの特性決定が、本明細書に記載される。製造されたままのEMM-41結晶性材料、及び構造指向剤(SDA)を用いたその製造方法も記載される。EMM-41材料の使用が記載される。構造指向剤(SDA)、及びそれらを調製するために使用される合成方法が開示される。
【0023】
(例えば、熱処理又は別の処理によって)一部又はすべての有機テンプレートが除去されているEMM-41は、少なくとも部分的に焼成されたEMM-41材料である。有機テンプレートは構造指向剤(SDA)とも呼ばれる。少なくとも部分的に焼成されたEMM-41は、三価元素の酸化物(例えば、X)及び四価元素の酸化物(例えば、YO)の化学組成を有するとして記載することができ、これらの酸化物は種々のモル比で存在することができる。Xは三価元素であり、Yは四価元素である。Oは酸素である。製造されたままのEMM-41(すなわち、SDAを除去するための熱処理又は別の処理の前)は、SDAを含むことができ、これはEMM-41材料の合成方法に使用される試薬の1つである。製造されたままのEMM-41は、熱処理を行うことで、一部又はすべてのSDAを除去することができる。製造されたままのEMM-41の熱処理(例えば、焼成)では、典型的には、加熱炉中、空気、窒素、又はそれらの混合物から選択される雰囲気中で、高温、例えば400~700℃に材料が曝露される。別の一態様では、製造されたままのEMM-41のオゾン処理を用いて、一部又はすべてのSDAを除去することができる。一部又はすべてのSDAが除去されたEMM-41は、吸着剤として、及び炭化水素変換、例えば有機化合物から変換生成物への変換の触媒若しくは触媒担体として使用することができる。
【0024】
少なくとも部分的に焼成されたEMM-41材料
一態様では、一部又はすべてのDAが除去されたEMM-41材料(例えば、少なくとも部分的に焼成されたEMM-41材料)は、表1Aの度2θにおいて少なくとも5個、好ましくはすべてのXRDピークを有する。
【0025】
【表4】
【0026】
本明細書において使用される場合、「相対積分強度」という用語は、100の積分相対強度を有する1つの複合的特徴としての7.2~7.4度2θにおけるXRDの特徴の相対強度に正規化されるXRDピークの相対強度である。7.35及び7.38度2θにおける表1A中のピークは1つの複合的特徴を形成し、これは、結晶が小さくなるにつれて、分解が困難になる。
【0027】
1つ以上の態様では、一部又はすべてのSDが除去されたEMM-41材料は、表1Bから選択される度2θ及びd間隔値を有する表2のXRDピークから選択される少なくとも6個、又は7個、8個、又は好ましくはすべてのXRDピークを有することができる。d間隔値は、ブラッグの法則を用いてd間隔の対応する値に変換する場合に対応する偏差±0.20度2θに基づいて求められる偏差を有する。
【0028】
【表5】
【0029】
本明細書に記載のXRDピークを有する本明細書に記載のXRDパターンは、Cu(Kα)放射線を使用している。
【0030】
1つ以上の態様では、(一部又はすべてのSDAが熱処理又は別の処理によって除去されている)EMM-41材料は、少なくとも0.20m/g又は0.25~0.30、若しくは0.22~0.28cc/gの範囲内の微細孔容積、及び/又は少なくとも495m/gの範囲内又は400~650m/g若しくは495~629m/gの範囲内の全BET表面積を有することができる。
【0031】
例えば、(一部又はすべてのSDAが除去されている)材料は、表1Aの少なくとも4個のXRDピーク、又は表1Bから選択される度2θにおいて少なくとも6個のXRDピーク、並びに前述の微細孔容積及び/又はBET表面積、及び/又は前述の空間群及び単位格子座標の1つ以上を有する、少なくとも1つの多形構造の無秩序フレームワークを有することができる。
【0032】
1つ以上の態様では、(一部又はすべてのSDAが除去される)EMM-41材料は、n-ヘキサン成分を含有する流体と接触させると、結晶性材料の重量を基準として1g(グラム)のEMM-41材料当たり少なくとも60mg(ミリグラム)のn-ヘキサン(例えば、60~150mg/gの範囲内のn-ヘキサン)を吸着することができる。この材料は、2,3-ジメチルブタン成分を含有する流体と接触させると、結晶性材料の重量を基準として少なくとも40mg/gの2,3-ジメチルブタン(例えば、40~130mg/gの範囲内の2,3-ジメチルブタン)の吸着にも適切となりうる。この材料は、2,2-ジメチルブタン成分を含有する流体と接触させると、結晶性材料の重量を基準として少なくとも40mg/gの2,2-ジメチルブタン(例えば、40~130mg/gの範囲内の2,2-ジメチルブタン)の吸着にも適切となりうる。この材料は、メシチレン成分を含有する流体と接触させると、結晶性材料の重量を基準として少なくとも60mg/gのメシチレン(例えば、60~90mg/gの範囲内のメシチレン)の吸着にも適切となりうる。
【0033】
例えば、この材料は、結晶性材料の重量を基準として60~150mg/g又は60~120mg/g又は90~130mg/g又は98~120mg/gの範囲内のn-ヘキサンを吸着することができる。この材料は、結晶性材料の重量を基準として40~130mg/g又は80~110mg/g又は104~127mg/gの範囲内の2,3-ジメチルブタンを吸着することができる。この材料は、結晶性材料の重量を基準として40~130mg/g又は80~110mg/g又は75~91の範囲内の2,2-ジメチルブタンを吸着することができる。この材料は、結晶性材料の重量を基準として少なくとも60mg/gのメシチレン又は60~90mg/gの範囲内若しくは75~91mg/gの範囲内のメシチレンの吸着にも適切となりうる。
【0034】
例えば、(一部又はすべてのSDAが除去される)材料は、表1Aの少なくとも5個のXRDピーク、又は表1Bから選択される度2θにおいて少なくとも6個のXRDピークを有することができ、それぞれ結晶性材料の重量を基準として、少なくとも60mg/のn-ヘキサン(例えば、60~150mg/gのn-ヘキサン又は100mg/gのn-ヘキサン)、及び/又は少なくとも40mg/gの2,3-ジメチルブタン(例えば、40~130mg/gの範囲内の2,3-ジメチルブタン)、少なくとも40mg/gの2,2-ジメチルブタン(例えば、40~130mg/gの範囲内の2,2-ジメチルブタン)、少なくとも40mg/gメシチレン(例えば、40~100mg/gのメシチレン又は60~90mg/gのメシチレン)を吸着することができる。
【0035】
1つ以上の態様では、EMM-41材料(一部又はすべてのSDAが除去される)は、場合により式Aの分子式:
(v)X:YO 式A
で表すことができ、式中、0≦v≦0.05又は0.0005≦v≦0.05であり、Xは三価元素であり、Yは四価元素であり、Oは酸素である。Xは、B、Al、Fe、及びGa、又はそれらの混合物から選択することができる。例えば、XはAlを含むことができる、若しくはAlであってよく、又はXはBを含むことができる、若しくはBであってよい。Yは、Si、Ge、Sn、Ti、及びZr、又はそれらの混合物から選択することができる。例えば、YはSiを含むことができる、又はSiであってよい。式A中の酸素は、炭素原子(例えば、CHの形態)で置換することができ、これは製造されたままのEMM-41の調製に使用される試薬の供給源に由来することができる。式A中の酸素は、例えばSDAが除去された後に、窒素原子で置換することもできる。式Aは、一部又はすべてのSDAが除去されている典型的なEMM-41材料のフレームワークを表すことができるが、EMM-41材料の唯一の表現であることを意味するものではない。EMM-41材料は、SDA及び不純物を除去するための適切な処理の後にSDA及び/又は不純物を含む場合があり、これらは式A中には示されていない。さらに、式Aは、EMM-41材料中に存在しうるプロトン及び電荷補償イオンを含んでいない。
【0036】
変数vは、式A中のXのYOに対するモル比の関係を示している。例えば、vが0.0005である場合、YのXに対するモル比は1000である(例えば、Si/B又はSi/Alのモル比は1000である)。vが0.05である場合、YのXに対するモル比は10である(例えば、Si/B又はSi/Alのモル比は10である)。XがBである場合、YのXに対するモル比は5~40又は5~25となりうる(例えば、Si/Bのモル比は、5~40又は5~25である)。XがAlである場合、YのXに対するモル比は、30~無限大、又は30~1000、又は50~1000、又は100~1000、又は200~1000、又は300~1000、又は400~1000、又は500~1000となりうる(例えば、Si/Alのモル比は、100~1000又は500~1000である)。
【0037】
EMM-41材料の電子線回折及び特性決定
電子線回折は、材料科学のための多くの周知の特性決定技術野中の1つである。電子線回折技術は、Structural Electron Crystallography by D.L.Dorset,Plenum,N.Y.,1995(その全体が参照により本明細書に援用される)において非常に詳細に議論されている。
【0038】
EMM-41の組成物は、電子線回折によって決定されるその結晶構造によって規定することができる。EMM-41のそれぞれの最終多形は、単位格子、空間群対称性、及び単位格子の非対称単位内の原子によって規定することができる。本発明の組成物の1つ以上の実施形態では、原子構造の解であるEMM-41は、2つ以上の異なる最終多形の間で起こりうる双晶化、連晶、及び/又は無秩序を示している。
【0039】
本発明の実施形態では、(一部又はすべてのSDAが除去される)EMM-41材料は、表3中に示される空間群及び単位格子座標の1つ以上を有する少なくとも1つの多形構造の無秩序フレームワークを含む結晶性材料である。
【0040】
【表6】
【0041】
図3~10中には、本発明の組成物の規則端成分(多形)構造の原子モデルが示される。構造の単位格子の決定は、cRED(連続回転電子線回折(Continuous Rotational Electron Diffraction))をMaterialStudiosのモデリングソフトウェア(旧AccelrysのBIOVIAより入手可能)と併用することで行った。単位格子対称性の詳細は、International Tables for Crystallography,Volume A:Space-Group Symmetry,5th ed.,Theo.Hahn,T,2005に見ることができる。
【0042】
図3Aは、空間群Amaを有する斜方対称であり、[0-11]に沿って見て大きさa=47.3、b=17.9、c=17.8オングストロームの代表的な単位格子を有し、それぞれ10員環及び12員環の交互AABB構造を有する、多形Aの規則端成分の原子構造モデルを示している。
【0043】
図3Bは、[011]に沿って見たx軸の周りに90度回転させた図3Aの構造のモデルを示しており、及びそれぞれ12員環及び10員環の交互BBAA構造を有する。
【0044】
図4Aは、空間群Pcを有する単斜対称であり、[001]に沿って見て大きさa=17.6、b=45.8、c=25.90オングストローム及び角度β=135.5度の代表的な単位格子を有し、それぞれ10員環及び12員環の交互BAAB構造を有する、多形Bの規則端成分の原子構造モデルのモデルを示している。
【0045】
図4Bは、[101]に沿って見てy軸の周りに90度回転させた図4Aの原子構造のモデルを示しており、それぞれ12員環及び10員環の交互ABBA構造を有する。
【0046】
図5Aは、空間群P1を有する三斜対称であり、[010]に沿って見て大きさa=12.4、b=12.4、c=45.8オングストローム、並びに角度β=84.05及びγ=89.8度の代表的な単位格子を有し、それぞれ10員環及び12員環の交互非直交AABB構造を有する、多形Cの規則端成分の原子構造モデルのモデルを示している。
【0047】
図5Bは、[100]に沿って見てz軸の周りに回転させた図5Aの原子構造のモデルを示しており、それぞれ10員環及び12員環の交互BBAA構造を有する。
【0048】
図6Aは、空間群P2を有する単斜対称であり、[010]に沿って見て大きさa=12.5、b=12.4、c=45.7オングストローム及び角度β=84.0度の代表的な単位格子を有し、それぞれ10員環及び12員環の交互非直交ABBA構造を有する、多形Dの規則端成分の原子構造モデルのモデルを示している。
【0049】
図6Bは、[100]に沿って見てz軸の周りに回転させた図6Aの原子構造のモデルを示しており、それぞれ10員環及び12員環の交互BAAB構造を有する。
【0050】
図7Aは、空間群P-1を有する三斜対称であり、[100]に沿って見て大きさa=12.4、b=12.5、c=45.9オングストローム並びに角度α=84.3、β=95.3、及びγ=89.9度の代表的な単位格子を有し、それぞれ10員環及び12員環の交互非直交ABBA構造を有する、多形Eの規則端成分の原子構造モデルのモデルを示している。
【0051】
図7Bは、[010]に沿って見てz軸の周りに回転させた図7Aの原子構造のモデルを示しており、それぞれ10員環及び12員環の交互非直交BAAB構造を有する。
【0052】
図8Aは、空間群P-1を有する三斜対称であり、[010]に沿って見て大きさa=12.4、b=12.5、c=46.1オングストローム並びに角度α=83.7、β=95.5、及びγ=89.9度の代表的な単位格子を有し、それぞれ10員環及び12員環の交互非直交BAAB構造を有する、多形Fの規則端成分の原子構造モデルのモデルを示している。
【0053】
図8Bは、[100]に沿って見てz軸の周りに回転させた図8Aの原子構造のモデルを示しており、それぞれ10員環及び12員環の交互非直交ABBA構造を有する。
【0054】
図9Aは、空間群P4/mmcを有する正方対称であり、大きさa、b=12.58、c=45.58オングストローム及び角度α=β=γ=90度の代表的な単位格子を有し、それぞれ10員環及び12員環の交互ABBA構造を有する、多形Gの規則端成分の原子構造モデルのモデルを示している。
【0055】
図9Bは、軸の周りに回転させた図9Aの原子構造のモデルを示しており、それぞれ10員環及び12員環の交互BAAB構造を有する。
【0056】
図10Aは、それぞれ図3A、4A、5A、及び6Aの多形A~Dの規則端成分の原子構造のモデルの比較を示している。図10Aは、それぞれ図3B、4B、5B、及び6Bの多形A~Dの規則端成分の原子構造のモデルの比較を示している。
【0057】
図10Bは、それぞれ図7A、8A、及び9Aの多形E~Gの規則端成分の原子構造のモデルの比較を示している。図10Bは、それぞれ図7B、8B、及び9Bの多形E~Gの規則端成分の原子構造のモデルの比較を示している。
【0058】
EMM-41材料の四面体(T)原子座標
表3中の空間群の多形構造の規則端成分は、以下の表4~表10中に記載される単位格子の四面体(T)原子の以下の配位配列の1つ以上を示す。配位配列は、Atlas of Zeolite Structuresにおいて規定される。
【0059】
【表7】
【0060】
【表8】
【0061】
【表9】
【0062】
【表10】
【0063】
【表11】
【0064】
【表12】
【0065】
【表13】
【0066】
【表14】
【0067】
【表15】
【0068】
【表16】
【0069】
【表17】
【0070】
【表18】
【0071】
【表19】
【0072】
【表20】
【0073】
【表21】
【0074】
製造されたままのEMM-41材料
製造されたままの(例えば、SDAを除去するための処理が行われていない)EMM-41材料は、表2Aから選択される度2θにおいて少なくとも4個、又は好ましくはすべてのXRDピークを有することができる。
【0075】
【表22】
【0076】
製造されたままの(例えば、SDAを除去するための処理が行われていない)EMM-41材料は、表2Bから選択される度2θ及びd間隔値を有する、少なくとも6個、又は7個、又は8個、又は好ましくはすべてのXRDピークを有することができ、ここでd間隔値は、ブラッグの法則を用いてd間隔の対応する値に変換する場合に、対応する偏差±0.20度2θに基づいて求められる偏差を有する。
【0077】
【表23】
【0078】
1つ以上の態様では、製造されたままのEMM-41材料は、場合により式B:
(n)Q:(v)X:YO 式B
で表すことができ、式中、0.01≦n≦0.1、0.000≦v≦0.0.05又は0.0005≦v≦0.0.05であり、Qは有機構造指向剤(SDA)であり、Xは三価元素であり、Yは四価元素であり、Oは酸素である。Xは、B、Al、Fe、及びGa、又はそれらの混合物から選択することができる。例えば、XはAl若しくはBを含むことができる、又はAl若しくはBであってよい。Yは、Si、Ge、Sn、Ti、及びZr、又はそれらの混合物から選択することができる。例えば、YはSiを含むことができる、又はSiであってよい。式Bは、SDAを有する典型的な製造されたままのEMM-41材料のフレームワークを表すことができるが、このような材料の唯一の表現であることを意味するものではない。製造されたままのEMM-41材料は、式Bによって表されていない不純物を含む場合がある。さらに、式Bは、製造されたままのEMM-41材料中に存在しうるプロトン及び電荷補償イオンを含まない。
【0079】
変数vは、式B中のXのモルの関係を示している。式A中の変数vの値は、式Bに関して本明細書に記載される値と同じである。変数nは、式B中のSDA(Q)のモルの関係を示している。例えば、nが0.1である場合、QのYに対するモル比は0.1である。nが0.3である場合、QのYに対するモル比は0.3である。QのYに対するモル比は、0.01~0.5、又は0.01~0.2、又は0.15~0.3、又は0.15~0.50、又は約0.25であってよい。
【0080】
EMM-41材料の製造方法
製造されたままのEMM-41材料の調製方法は:
(a)以下の成分:
(i)四価元素(Y)の酸化物の供給源、好ましくはTMOS;
(ii)場合により、三価元素(X)の供給源、好ましくはアルミニウム;
(iii)水酸化物イオン(OH)の供給源、好ましくはSDA(Q)の水酸化物;
(iv)フッ化物イオン(F)の供給源、好ましくはフッ化水素;
(v)ビスピロリジニウムジカチオンを含む有機構造指向剤(Q);
(vi)水;及び
(vii)場合により、四価元素(X)の重量を基準として0~10重量%の量のゼオライト種結晶の供給源
を含む反応混合物を調製するステップであって、反応混合物が、モル比に関して、以下:
YO/X=10~無限大、好ましくは20~無限大、より好ましくは40~無限大;
O/YO=2~15、好ましくは2~10、より好ましくは3~8;
OH/YO=0.25~2又は0.25~1、好ましくは0.8~1.2又は0.35~0.75;
F/YO=0.35~1、好ましくは0.4~0.6;
Q/YO=0.01~0.50又は0.10~0.5、好ましくは0.15~0.3
の範囲内の組成を有するステップと;
(b)約90℃~約190℃、好ましくは90℃~175℃の温度を含む結晶化条件下でステップ(a)の上記反応混合物の混合及び/又は加熱を行って、結果として得られた混合物の結晶を形成するステップと;
(c)ステップ(b)の上記結果として得られた混合物から上記結晶の少なくとも一部を、好ましくは、表2A、好ましくは表2B中に示されるパターンのXRDピークを有する上記製造されたままのEMM-41材料として回収するステップと、
を含むことができる。
【0081】
製造されたままのEMM-41材料は、組成物からEMM-41材料の種結晶を単離するステップを含む方法によって調製することができる。或いは、種結晶は、例えばITQ-24又はITQ-33からの種結晶などのヘテロ構造の種結晶であってよい。製造されたままのEMM-41は、種結晶なしで製造することができる。反応混合物中のゼオライト種結晶の含有量は、四価元素(X)の重量を基準として0~10重量%又は0~7重量%、又は0~1重量%の0~5重量%である。
【0082】
(Q)と記載される構造指向剤SDAは、例えば、水酸化物が一方又は両方の対イオンであるビスピロリジウムジカチオンなどの水酸化物イオンの供給源を含むこともできる。
【0083】
1つ以上の実施形態では、反応混合物は、少なくとも、水酸化物としてのSDA(Q)、例えば、水酸化物ビスピロリジニウム、並びに四価元素(Y)の酸化物の供給源、フッ化物イオンの供給源、及び水を含む。場合により、反応混合物は三価元素(X)の供給源を含むことができる。
【0084】
別の実施形態では、水酸化ビスピロリジニウムなどの水酸化物形態のSDA(Q)の供給源の溶液を、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)などの四価元素(Y)の供給源の溶液と最初に混合し、凍結乾燥して水を除去して、反応混合物を調製する。凍結乾燥した生成物は、次に目標HO/SiOモル比の目標まで水を加えて再スラリー化する。次に、フッ化物イオンの供給源を再スラリー化生成物に加えて、最終反応混合物を形成する。この反応混合物を、約90℃~約175℃又は約90℃~約120℃の温度を含む結晶化条件で混合及び/又は加熱して結晶を形成し、この結晶を回収する。
【0085】
四価元素Yの酸化物の供給源は、例えば、沈降アルミノシリケートなどの三価元素Xの供給源を含むこともできる。
【0086】
反応混合物は、YOのHXO(例えば、HBO)に対するモル比又はYOのX(例えば、Al)に対するモル比が10~無限大(例えば、10~30)であってよい。反応混合物は、HOのYOに対するモル比が1~50(例えば、3~10)であってもよい。反応混合物は、OHのYOに対するモル比が0.25~1(例えば、0.35~0.75)であってもよい。反応混合物は、QのYOに対するモル比が0.01~0.5(例えば、0.01~0.5、又は0.15~0.3、又は0.05~0.2)であってよい。反応混合物は、FのYOに対するモル比が0.35~1(例えば、0.4~0.6)であってよい。
【0087】
反応混合物中に使用される三価元素Xはホウ素Bであってよく、その結果、製造されたままの材料はボロシリケートとなる。反応混合物中に使用される三価元素はアルミニウムAlであってよく、その結果、製造されたままの材料はアルミノシリケートとなる。
【0088】
アンモニウムの交換によって、実際に、追加のフレームワークのアンモニウムカチオンが導入される。場合により、製造されたままのEMM-41材料は、三価元素X供給源とSDA水酸化物溶液とを含む反応混合物から調製することができ、続いて四価Y供給源を反応混合物に加えることができる。
【0089】
1つ以上の態様では、混合物は、反応混合物の適切な均一性を確実にするために、撹拌又は高剪断混合などの機械的方法によって、例えば二重非対称遠心分離混合(例えば、FlackTekスピードミキサー)を1000~3000rpm(例えば、2000rpm)の混合速度で用いて混合される。水などの溶媒の調節(例えば、所望の水対シリカの比率が実現される場合)の後に、混合を使用することができる。
【0090】
ベース混合物中の試薬の性質によるが、溶媒のYOに対する所望のモル比が結果として得られる混合物で実現されるように、反応混合物のある量の溶媒(例えば、水酸化物溶液からの水、並びに場合によりシリカ源の加水分解によるメタノール及びエタノール)を除去することができる。溶媒含有量を減少させるための適切な方法としては、周囲空気、乾燥窒素、乾燥空気などの静止雰囲気又は流動雰囲気下での蒸発、又は噴霧乾燥若しくは凍結乾燥による方法を挙げることができる。溶媒除去プロセス中に除去される水が多すぎる場合、所望のHO/YOモル比を実現するために得られた混合物に水を加えることができる。
【0091】
この方法は、反応混合物の混合をさらに含むことができる。混合された混合物は、次に、EMM-41材料の形成に適切な結晶化条件下に置かれる。
【0092】
この方法は、混合の前又は後のいずれかに、組成物の加熱をさらに含むことができる。
【0093】
EMM-41材料の結晶化は、静的又は撹拌条件下、例えば対流オーブン中に入れられたポリプロピレンジャー又はTEFLON(登録商標)でライニングされた若しくはステンレス鋼(SS)のオートクレーブなどの適切な反応器中、約100~約200℃の温度において、結晶化が起こるのに十分な時間、例えば、約1日~約30日(例えば、1日~12日、若しくは14日若しくは16日、又は1日~7日)維持することで行うことができる。本明細書において別に示されなければ、測定される温度は、材料が加熱される周囲環境の温度であり、例えば材料が加熱される雰囲気の温度である。その後、製造されたままのEMM-41材料の固体結晶が、液体から(例えば、濾過又は遠心分離)によって分離され、回収される。
【0094】
四価元素Yの供給源の例は、シリカ、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、アルカリ金属ケイ酸塩、オルトケイ酸テトラアルキル、例えば、オルトケイ酸テトラエチル若しくはオルトケイ酸テトラメチルなど、及び酸化ゲルマニウム、又はそれらの混合物のコロイド懸濁液から選択することができる。好ましくは、四価元素の供給源はオルトケイ酸テトラメチル(TMOS)である。シリカの供給源の別の例としては、LUDOX(登録商標)(例えば、LUDOX(登録商標)LS-30、LUDOX(登録商標)AS-40)コロイダルシリカ、SIPERNAT(登録商標)又はULTRASIL(登録商標)沈降シリカ、CARBOSPERSE(商標)ヒュームドシリカ懸濁液、又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0095】
1つ以上の態様では、三価元素Xはホウ素又はアルミニウムであってよい。アルミニウムの適切な供給源は、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、アルカリ金属アルミン酸塩、アルミニウムアルコキシド、及び硝酸アルミニウムなどの水溶性アルミニウム塩、又はそれらの混合物から選択することができる。ホウ素の適切な供給源は、ホウ酸、四ホウ酸ナトリウム、及び四ホウ酸カリウム、又はそれらの混合物から選択することができる。例えば、ホウ素源はホウ酸であってよい。
【0096】
1つ以上の態様では、EMM-41材料は、三価元素の供給源としてホウ酸を使用して調製することができる。ホウ素を含む製造されたままのEMM-41は、熱処理(例えば、少なくとも部分的な焼成)によって、一部又はすべてのSDAを除去することができる。
【0097】
場合により、XがBでありYがSiである材料(一部又はすべてのSDAが除去されている)は、フレームワーク中のBをAlと交換するのに十分な条件下で、Al源と接触させることができる。例えば、ホウ素を含む熱処理されたEMM-41は、ホウ素を含む熱処理されたEMM-41材料をAl(SOの溶液とともに(例えば、対流オーブン中の封止されたオートクレーブ中で100℃に維持して終夜、又は開放系で沸騰温度で)加熱することによって、アルミノシリケートに変換することができる。アルミニウム処理されたEMM-41は、次に、濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄することができる。
【0098】
製造されたままのEMM-41材料の合成中に使用される一部又はすべてのSDAは、熱処理、オゾン処理、又はその他の処理によって除去されて、SDAを実質的に含まない(例えば、50%を超える、60%を超える、70%を超える、80%を超える、90%を超える、95%を超える、又は99%を超える(重量基準)SDAを含まない)EMM-41材料を形成することができる。
【0099】
SDAの除去は、製造されたままのEMM-41材料が空気、窒素、又はそれらの混合物から選択される雰囲気中で一部又はすべてのSDAを除去するのに十分な温度に加熱される熱処理(例えば焼成)を用いて行うことができる。熱処理に減圧を使用することができるが、便宜上の理由で大気圧が望ましい。熱処理は、最高700℃、例えば400℃~700℃の温度で行うことができる。熱処理(例えば焼成)は、箱形炉中、空気から水を除去する乾燥剤が入れられた乾燥管に曝露された乾燥空気中で行うことができる。加熱は、400℃~700℃(例えば、540℃)において、数時間~14日行うことができる。加熱は最初に窒素雰囲気中で最高400℃まで行うことができ、次に400℃から600℃まで雰囲気を空気に切り替えることができる。
【0100】
製造されたままのEMM-41材料は、構造指向剤(SDA)、例えばビスピロリジニウムジカチオンを含む。EMM-41材料の別の合成方法は、SDAを使用せずに行うことができる。構造指向剤の適切な供給源は、関連のジ第四級アンモニウム化合物の水酸化物及び/又は塩から選択することができる。
【0101】
1つ以上の態様では、ゼオライト、例えば製造されたままのEMM-41材料の合成に有用な構造指向剤(SDA)は、以下の構造:
【化2】
(式中、Aはイオンである)
を有する化合物Iであってよい。
【0102】
それぞれのAが水酸化物である場合、上記のSDAは、1,1’-(3,3’-(1,3-フェニレン)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジニウム)である。
【0103】
1つ以上の実施形態では、一方又は両方のAが、化合物Iと同じ又は異なる。例えば、Aは、トシレート、水酸化物(OH)、又はI若しくはBrなどのハロゲン化物であってよい。例えば、両方のAイオンはOHであってよい。
【0104】
1つ以上の実施形態では、製造されたままのEMM-41材料は、その細孔構造中に、前述の化合物Iの以下の構造を含むビスピロリジニウムジカチオンを有する。化合物Iの調製方法は、以下の有機構造指向剤(化合物I)の合成に記載される。
【0105】
EMM-41材料の使用
(一部又はすべてのSDAが除去される)EMM-41材料は、吸着剤として使用することができ、又はアルミノシリケート形態で、多種多様な有機化合物変換プロセスを触媒する触媒として使用することができる。本明細書に記載の改質されたEMM-41材料単独、又は1つ以上の別の触媒活性物質(別の結晶性触媒など)との組み合わせによって有効に触媒される化学変換プロセスの例としては、酸活性を有する触媒を必要とするプロセスが挙げられる。本明細書に記載の改質されたEMM-41材料によって触媒することができる有機変換プロセスの例としては、クラッキング、水素化分解、不均化、アルキル化、オリゴマー化、及び異性化が挙げられる。
【0106】
(一部又はすべてのSDAが除去される)EMM-41材料は、吸着剤として又は触媒としてのいずれかで使用される場合に、少なくとも部分的に脱水することができる。このような脱水は、200~370℃の範囲内の温度の周囲雰囲気中、この雰囲気は、空気、窒素、又はそれらの混合物から選択することができ、大気圧、減圧、又は過圧において、30分~48時間の間材料を加熱することによって行うことができる。脱水は、EMM-41材料を真空中に配置することによって室温で行うこともできるが、十分な量の脱水を行うために、より長い時間が必要となる。
【0107】
1つ以上の実施形態では、EMM-41材料は、供給材料の1つ以上の所望の成分を供給材料の残りの成分から選択的に分離する方法に使用することができる。この方法では、有効な収着条件で供給材料を収着剤に接触させ、それによって収着生成物と排出生成物とが形成される。収着剤は、本発明の合成多孔質結晶性材料のいずれか1つの活性形態を含む。1つ以上の所望の成分は、収着生成物又は排出生成物のいずれかから回収される。
【0108】
EMM-41材料(一部又はすべてのSDAが除去される)は、水素化成分と組み合わせることができる。水素化成分は、水素化-脱水素機能が行われる、モリブデン、タングステン、レニウム、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、又は白金若しくはパラジウムなどの貴金属から選択することができる。このような水素化成分は、以下の方法:共結晶化;IIIA族元素、例えばアルミニウムが構造中に存在する程度での組成物中への交換;その中への含浸、又はそれとの物理的混合の1つ以上によって組成物中に混入することができる。例えば、このような水素化成分は、EMM-41材料中に含浸させることができる。白金の場合、EMM-41材料に、白金金属含有イオンを含む溶液を含浸させることができる。含浸に適切な白金化合物は、クロロ白金酸、塩化第一白金、白金アミン錯体を含有する化合物、又はそれらの混合物から選択することができる。
【0109】
EMM-41材料(一部又はすべてのSDAが除去される)は、有機変換プロセス中に使用される温度及びその他の条件に対して耐性である別の材料と併用することができる。このような耐性材料は、活性材料、不活性材料、合成ゼオライト、天然ゼオライト、無機材料、又はそれらの混合物から選択することができる。このような耐性材料の例は、クレー、シリカ、アルミナなどの金属酸化物、又はそれらの混合物から選択することができる。無機材料は、天然、又はシリカ及び金属酸化物の混合物などのゼラチン状沈殿物若しくはゲルの形態のいずれかであってよい。EMM-41材料とともに耐性材料を使用すること、すなわち、それらが組み合わされる、又は結晶が活性である製造されたままのEMM-41結晶の合成中に存在すると、特定の有機変換プロセス中の触媒の変換及び/又は選択性が変化する傾向にある。不活性耐性材料は、適切には、特定のプロセスにおける変換の量を制御するための希釈剤として機能し、それによって、反応速度を制御するための別の手段を使用せずに経済的で規則的な方法で生成物を得ることができる。これらの材料は、商業的な操作条件下で触媒の粉砕強度を改善するために、天然クレー、例えば、ベントナイト及びカオリンの中に混入することができる。上記不活性耐性材料、すなわち、クレー、酸化物などは、触媒のバインダーとして機能する。商業的使用において、触媒が粉砕されて粉末状材料となるのを防止するのに望ましいので、良好な粉砕強度を有する触媒は有益となりうる。
【0110】
EMM-41材料との複合材料を形成することができる天然クレーとしては、モンモリロナイト及びカオリンのファミリー(これらのファミリーは、サブベントナイトと、Dixieクレー、McNameeクレー、Georgiaクレー、及びFloridaクレーとして一般に知られているカオリンとを含む)、又は主要無機成分がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、又はアナウキサイトであるその他のものが挙げられる。このようなクレーは、最初に採掘されたときの未処理の状態で使用することができ、又は最初に焼成、酸処理、若しくは化学改質を行うことができる。EMM-41材料との複合材料の形成に有用なバインダーとしては、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ベリリア、アルミナ、又はそれらの混合物から選択される無機酸化物も挙げられる。
【0111】
EMM-41材料(一部又はすべてのSDAが除去される)は、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニアなどの多孔質マトリックス材料、並びにシリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア、及びシリカ-マグネシア-ジルコニアなどの三元組成物と、複合材料を形成することができる。
【0112】
EMM-41材料及び無機酸化物マトリックスの相対比率は、広範囲で変動することができ、EMM-41材料含有量は、複合材料の約1~約90重量パーセントの範囲となり、又は複合材料がビーズ形態で調製される場合は複合材料の約2~約80重量パーセントの範囲内である。
【0113】
本明細書において使用される場合で、他に明記されなければ、数値又は値の範囲は、関連技術の当業者が妥当であると考える程度まで逸脱することができる。機器のばらつき及びその他の要因が数値に影響を与えうることがよく知られている。他に明記されなければ、このような逸脱は、示される数値又は値の範囲の±2%、5%、10%、15%、20%、25%、又は30%となりうる。
【0114】
(例えば、関連ピーク(7.2~7.4度の2θ範囲内の複合ピークとなるために正規化することができる)の面積又は相対強度を測定することによって、又はそのような測定に適切な他の周知の方法によって、XRD又はNMR分光法を用いた定量によると、本明細書に記載のEMM-41材料は、組成物の全重量を基準として少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、又は少なくとも99重量%(例えば、99.5重量%又は99.9重量%)の純粋なEMM-41材料であってよい。残りの材料は、EMM-41ではない材料であり、構造指向剤、非晶質材料、その他の不純物、又はそれらの混合物であってよい。
【0115】
本明細書に記載のEMM-41材料は実質的に結晶性である。本明細書において使用される場合、「結晶性」という用語は、限定するものではないが、単一成分又は多成分結晶形態、例えば溶媒和物、水和物、及び共結晶などを含む材料の結晶性固体形態を意味する。結晶性は、原子の規則的な繰り返し及び/又は規則的な配列を有し、区別可能な結晶格子を有することを意味することができる。例えば、結晶性EMM-41は、異なる水又は溶媒の含有量を有することができる。異なる結晶格子は、XRD(例えば、粉末XRD)などによる固体特性決定方法によって決定することができる。関連技術の当業者に周知のその他の特性決定方法は、結晶形の特定にさらに役立てたり、安定性及び溶媒/水の含有量の測定に役立てたりすることができる。
【0116】
本明細書において使用される場合、「実質的に結晶性」という用語は、記載の固体材料の試料の重量の過半量(50%を超える)が結晶性であり、試料の残りが非結晶性形態であることを意味する。1つ以上の態様では、実質的に結晶性の試料は、少なくとも95%の結晶化度(例えば、5%の非結晶性形態)、少なくとも96%の結晶化度(例えば、4%の非結晶性形態)、少なくとも97%の結晶化度(例えば、3%の非結晶性形態)、少なくとも98%の結晶化度(例えば、約2%の非結晶性形態)、少なくとも99%の結晶化度(例えば、1%の非結晶性形態)、及び100%の結晶化度(例えば、0%の非結晶性形態)を有する。
【0117】
本明細書に記載の改質されたEMM-41材料の微細孔容積は、関連技術において周知の方法を用いて測定することができる。例えば、材料は窒素物理吸着を用いて測定することができ、それらのデータは、微細孔容積方法が記載され参照により本明細書に援用されるLippens,B.C.et al.,“Studies on pore system in catalysts:V.The t method”,J.Catal.,4,319(1965)に記載のt-プロット法によって分析することができる。
【0118】
本明細書において使用される場合、「アルキル」という用語は、直鎖又は分岐であってよい飽和炭化水素基を意味する。アルキル基は、1つのC-H結合が、化合物の残りの部分へのアルキル基の結合点によって置換されたアルカンに対応する。アルキル基は、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、1~3個の炭素原子、又は1~2個の炭素原子を含むことができる。アルキル部分の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、sec-ブチルなどの基が挙げられる。
【0119】
本開示の態様が、特定の実施例によってより詳細に記載される。以下の実施例は、説明を目的として提供されるが、いかなる方法によっても本開示が限定されることを意図するものではない。本質的に同じ結果を得るために種々のパラメータを変更又は修正できることは、関連分野の当業者は容易に認識されよう。
【実施例
【0120】
以下の非限定的な実施例及び添付の図面を参照しながら、これより本発明がより詳細に説明される。
【0121】
本明細書の実施例において報告されるX線回折データは、0.01796度のステップサイズでCuKα放射線を使用し50mm×16mmの活性領域を有するVANTEC-1気体検出器を使用して連続モードでBruker D4 Endeavor測定器を用いて収集した。格子面間隔のd間隔は、オングストロームの単位で計算し、線の相対強度I/Iは、ピーク強度の、バックグラウンドの上の最も強い線の強度のものに対する比である。強度は、ローレンツ効果及び分極効果に関して補正していない。2θにおける回折ピークの位置、及び線の相対ピーク面積強度I/I(o)(ここで、Ioは、バックグラウンド衲衣の最も強い線の強度である)は、MDI Jadeピーク検索アルゴリズムを用いて求めた。単一の線として示される回折データは、結晶学的変化の差などの特定の条件下で、分離した線又は部分的に分離した線として現れうる複数の重なり合う線からなることができることを理解されたい。典型的には、結晶学的変化は単位セルパラメータの小さな変化、及び/又は結晶対称の変化を含むことができるが、構造の変化は含まない。相対強度の変化を含むこれらの小さな影響は、カチオン含有量、フレームワーク組成、細孔の充填の性質及び程度、結晶のサイズ及び形状、好ましい配向、並びに熱及び/又は水熱履歴の差の結果として生じることもある。
【0122】
有機構造指向剤(化合物I)の合成
前述の議論のように、EMM-28の合成に有用な有機構造指向剤、Q、又は化合物Iは、1,3-ビス(ハロメチル)ベンゼンから生成することができる。
【0123】
1,3-ビス(クロロメチル)ベンゼンからの化合物Iの化合物の適切な(机上の)合成計画を以下に記載する。
【0124】
3,3’-(1,3-フェニレン)ジプロピオン酸の調製
【化3】
オーブン乾燥させた2Lの3口ジャケット付きフラスコに機械的撹拌機を取り付けたものを高温で組み立て、N流下で冷却し、次に67.2g(1680mmol)の鉱油中の60%水素化ナトリウムを投入する。循環するグリコール-水で内容物を0℃まで冷却し、670mLの無水DMFをカニューレによって加える。360mL(2.37モル)のジエチルマロネートをフラスコに40分にわたって滴下する。約半分の滴下が過ぎてから、冷却器の排液を行い、温度を35℃まで上昇させる。すべてのNaHが溶解して、溶液は透明になる。これに、102.1g(582mmol)の1,3-ビス(クロロメチル)ベンゼンの全量を1回で加える。温度が65℃まで上昇し、固体が形成された。蒸気で1時間加熱した後、フラスコ0℃まで冷却し、1000mLのHO中37mLの濃HClの溶液を加える。次にフラスコの内容物を分液漏斗に移し、そこで粘稠な下層を生成物として抜き取る。揮発分をロータリーエバポレーター上で除去した後、生成物を125℃において250mTorrで蒸留すると、228g(86%)の白色液体生成物が生成される。
【0125】
2,2’-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ジマロン酸テトラエチルの調製
【化4】
3,3’-(1,3-フェニレン)ジプロピオン酸を、640mLのHO中の121g(3.02mol)のNaOHの中に注ぎ、25mLのエタノールで洗浄する。混合物を45分間加熱還流し(還流に到達すると均一になる)、次に325mLを6インチのVigreuxカラムで蒸留する。最後の100mLの沸点は100~101℃である。溶液を冷却し、還流がちょうど維持される速度で152gの濃HSOを滴下する。バブラーを取り付け、COが発生しなくなるまで(終夜)混合物を加熱還流する。フラスコ中に黄色油が浮かび、一部固形分が存在する。混合物を2LのHO中に注ぎ、2×200mLのジエチルエーテルで抽出し、次にその抽出物を1×200mLの飽和NaClで洗浄し、4Åモレキュラーシーブで濾過する。溶媒をロータリーエバポレーター上で除去し、残留する揮発分を120℃において260mTorrで蒸留すると、110.5g(100%)の淡黄褐色ワックスが得られる。生成物は、13C NMR及びH NMRスペクトルによって確認することができる。生成物は、予想される13C NMR及びH NMRスペクトルを有した。
【0126】
3,3’-(1,3-フェニレン)ビス(プロパン-1-オール)の調製
【化5】
オーブン乾燥させた3Lの3口ジャケット付きフラスコに均圧滴下漏斗、還流冷却器、及び機械的撹拌機を取り付けたものを高温で組み立て、N2流下で冷却し、次に920gの無水THF及び30.55g(805mmol)のLiAlH4ペレットを入れる。混合物を30分間撹拌し、次に250gの無水THF中の110g(498mmol)のテトラエチル2,2’-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ジマロン酸テトラエチルを1時間かけて滴下する。添加の4分の3が過ぎると、固体の撹拌が非常に困難となった。300mLの無水THFを加えると、スラリーが再び撹拌可能になった。添加の間中、反応は発熱であり、添加の間中、ガス(H2)が生成する。混合物を20分間還流し、0℃まで冷却し、150mLの1:1v/vのHO:THF、次いで427gのHO中の42.7gのNaOHでクエンチする。生成物をブフナー漏斗で濾過し、固体残留物を500mLのジエチルエーテルで洗浄する。溶媒をロータリーエバポレーター上で除去した後、残留する揮発分を100℃において2mTorrで減圧蒸留することで除去すると、70.2g(74%)の白色半固体が得られる。生成物は13C NMR及びH NMRスペクトルによって確認することができる。
【0127】
1,3-フェニレンビス(プロパン-3,1-ジイル)ビス(4-メチルベンゼンスルホネート)の調製
【化6】
70.2g(362mmol)の3,3’-(1,3-フェニレン)ビス(プロパン-1-オール)、260mLのピリジン、及び480mLのCHCl(アミレンで安定化される)が入った1Lのジャケット付きフラスコを、循環するグリコール-水で-5℃まで冷却し、138g(723mmol)の塩化p-トルエンスルホニルの全量を1回で加える。温度が25℃に上昇し、冷却を停止し、45分間撹拌した後、混合物を1000mLのHO+212mLの濃HClの中に注ぐ。その下層を分離し、100mLの飽和NaCl溶液で洗浄する。残留する溶媒をロータリーエバポレーター上で除去し、残留する揮発分を60℃において650mTorrで減圧蒸留することによって除去すると、171g(94%)の褐色樹脂が得られる。生成物は13C NMR及びH NMRによって確認することができる。
【0128】
1,3-ビス(3-(ピロリジン-1-イル)プロピル)ベンゼンの調製
【化7】
116g(231mmol)の1,3-フェニレンビス(プロパン-3,1-ジイル)ビス(4-メチルベンゼンスルホネート)を160mL(1.92mol)のピロリジンで処理する。混合物は暗色化し、発熱によって沸騰温度まで上昇した。高温の混合物を、80gのNaOHを含む800mLのHO中に注ぐ。層が分離し、その水層を1×350mLのジエチルエーテルで抽出する。有機層を1つにまとめ、1×200mLのHOで洗浄し、揮発分をロータリーエバポレーター上で除去した後、生成物を220℃において180mTorrで蒸留すると、54.9gの黄色油及び固体が得られる。GCMSによると、m/z=300(大きなM-1ピーク)を有する予想される生成物が示されるが、1-トシルピロリジンで非常に汚染されている。生成物は13C NMR及びH NMRによって確認することができる。
【0129】
水酸化1,1’-(1,3-フェニレンビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)の調製
【化8】
1,3-ビス(3-(ピロリジン-1-イル)プロピル)ベンゼンを三角フラスコ中で150mLのアセトン中に溶解させ、40mL(680mmol)のヨードエタンを約15分間かけて徐々に加える。溶液は穏やかな還流に到達し、多量の固体が沈殿した。フラスコにストッパーを取り付け、Al箔で覆い、室温で2日間静置し、濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、65℃において一定重量となるまで乾燥させると、77.3gのピンク色の固体(推定されるジアミンの純度を基準として94%)が得られる。これに対してバッチ方式でイオン交換を行うと371gの淡黄色溶液が得られる。この溶液2.62mLを25mLまで希釈して滴定すると、91.1mgのフタル酸カリウムを滴定するために6.19mLを要した。これはジヒドロキシドとして12.5%と計算される。水のシグナルに対してH NMRの有機水素シグナルを積分すると、ジヒドロキシドとして12.7%が得られた。生成物は13C NMR及びH NMRによって確認することができる。
【0130】
化合物Iのジカチオンの上記(机上の)合成計画の変形の1つでは、1,3-フェニレンビス(プロパン-3,1-ジイル)ビス(4-メチルベンゼンスルホネート)を1-エチルピロリジンと、クロロホルム又はアセトニトリル中で反応させることで、ジアミンの中間生成なしに、直接ジカチオンが生成される。
【0131】
さらに、これとは別に、1,3-ジヨードベンゼンからの化合物Iの化合物の別の適切な(机上の)合成計画を以下に記載する。
【0132】
3,3’-(1,3-フェニレン)ビス(プロパ-2-イン-1-オール)の調製
【化9】
オーブン乾燥させた2Lの3口丸底フラスコを機械的撹拌機に取り付けたものに、225mLの乾燥トリエチルアミンへの1,3-ジヨードベンゼン(36.0g;109.1mmol)を窒素下で加える。その淡褐色溶液に、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(4.2g;6.0mmol、0.05mol%)を加え、続いてヨウ化銅(I)(0.33g;1.74mmol、0.015mol%)を加える。その暗緑色混合物を5分間撹拌する。プロパルギルアルコール(21.5mL;371.2mmol)を添加漏斗で滴下する。添加後にわずかな発熱が認められる。その暗褐色混合物を室温で3時間撹拌する。TLC(5%酢酸エチル/ヘキサン UV検出)によって、出発物質が残存していないことが示された。反応を終夜撹拌し、1,500mLの酢酸エチルを加え、これをさらに24時間撹拌する。反応混合物を濾過し、その濾液を減圧濃縮して、30.4gの褐色油を回収する。その粗生成物に対して、40~100%の酢酸エチル/ヘキサンの連続グラジエントを用いてシリカゲル上での精製を行って、15.0g(74%)の所望の生成物を回収する。生成物は13C NMR及びH NMRスペクトルによって確認することができる。
【0133】
3,3’-(1,3-フェニレン)ビス(プロパン-1-オール)の調製
【化10】
3,3’-(1,3-フェニレン)ビス(プロパ-2-イン-1-オール)(2.0g;10.7mmol)を11mLの無水メタノール中に溶解させ、TEFLON(登録商標)でライニングされたオートクレーブ中に入れる。40mLの乾燥THF中のチャコール上パラジウム(0.4g;チャコール上10%のパラジウム)のスラリーを窒素ブランケット上で上記ライナーに加える。オートクレーブを閉じ、Hで加圧する。24時間後、反応溶液をCeliteのパッドで濾過する。濾液を減圧濃縮して、2.1g(100%)の所望の粗生成物を回収する。この生成物は精製せずに次に使用される。生成物は13C NMR及びH NMRスペクトルによって確認することができる。
【0134】
1,3-フェニレンビス(プロパン-3,1-ジイル)ビス(4-メチルベンゼンスルホネート)の調製
【化11】
隔壁を有する乾燥した25mLのバイアル中に、2.0mLの無水クロロホルム中に溶解させた3,3’-(1,3-フェニレン)ビス(プロパン-1-オール)(0.2g;1.0mmol)を室温において窒素下で加える。ピリジン(0.17mL;2.1mmol)を加え、その溶液を0℃まで冷却する(氷浴)。塩化p-トルエンスルホニル(0.43g;2.2mmol)を加え、その淡オレンジ色溶液を室温まで温める。24時間後、10mLの5%HClで反応を希釈し、層を分離させる。有機層を10mLのブラインで洗浄し、あらかじめシリカ上に吸着させる。0~100%の酢酸エチル/ヘキサンの連続グラジエントを用いて、粗生成物をシリカ上で精製して、0.28g(55%)の所望の化合物を回収する。生成物は13C NMR及びH NMRによって確認することができる。
【0135】
4-メチルベンゼンスルホネート1,1’-(1,3-フェニレンビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)の調製
【化12】
リリーフキャップ及び撹拌子を有する乾燥した20mLのバイアル中に、1.0g(1.9mmol)の1,3-フェニレンビス(プロパン-3,1-ジイル)ビス(4-メチルベンゼンスルホネート)を窒素下で加える。2mLの乾燥アセトニトリルを加え、その淡黄色溶液を5分間撹拌する。エチルピロリジン(0.64mL;6.0mmol)を滴下し、その溶液を室温で1時間撹拌する。TLC(2:1ヘキサン:酢酸エチル、UV検出)によって、出発物質の残存が示された。溶液を80℃まで加熱する。1時間後、TLCによって、出発物質が消費されることが示された。反応を室温まで冷却し、終夜保管する。反応溶液を45℃で減圧濃縮して、1.2g(96%)の所望の生成物を回収する。生成物は13C NMR及びH NMRによって確認することができる。
【0136】
水酸化1,1’-(1,3-フェニレンビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)の調製
【化13】
545gのDowex Monosphere 550A樹脂を500mLのNalgeneねじ口びんの中に入れる。樹脂を3×500mLの脱イオン水で洗浄して微粉を除去する。27.3g(40.5mmol)の4-メチルベンゼンスルホネート1,1’-(1,3-フェニレンビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)を100mLの脱イオン水中に溶解させ、上記のNalgene容器に加える。80%が満たされるまで脱イオン水を容器に加える。容器上部を閉じ、テープを取り付ける。アニオン交換を促進するために、容器を機械的ローラー上に終夜配置する。スラリーをブフナー漏斗で濾過し、pH9になるまで脱イオン水で洗浄する。水溶液を40℃において所望の濃度まで減圧濃縮して、ジヒドロキシドを得る。生成物は13C NMR及びH NMRスペクトルによって確認することができる。
【0137】
実施例1:EMM-41の合成
SDA(その水酸化物形態)、フッ化水素の存在下、並びにITQ-24、ITQ-33のゼオライト種結晶の存在下、又は種結晶の非存在下で、低水合成(low water synthesis)において、150℃で10日及び28日間転動させた1.5mLのステンレス鋼反応器中で行った合成で、最初にEMM-41が確認された。テトラメチルオルトシリケート(TMOS)がシリカ源であった。SDA(OH)は、両方のアニオンが水酸化物である水酸化物形態の化合物Iであった。SDAは、水酸化物源も提供した。合成混合物の組成を以下の表11中に示す。生成物は、遠心分離、脱イオン水中への再懸濁をさせ、次にさらなる遠心分離によって単離した。これを3回繰り返した。実施例1A~1Fでは、あらゆる周知のゼオライトと一致させることができない粉末XRDパターンが得られた。このXRDパターンを純粋なEMM-41と呼んだ。図1は、純粋相のEMM-41のXRDパターンを示している。
【0138】
【表24】
【0139】
実施例2:反応混合物中の種々のHO/SiOモル比でのEMM-41の合成
4.38グラムのSDAの23.81重量%溶液(その水酸化物形態)を1.62gのテトラメチルオルトシリケート(TMOS)に加え、10MLのTeflonライナー中で終夜激しく撹拌した。上記の10mLのTEFLON(登録商標)反応器を、凍結乾燥機中に入れ、すべての水を除去した。乾燥させた生成物を次に、種々の量の蒸留水及び20重量%のフッ化水素酸溶液で再スラリー化した。反応器を150℃のタンブリングオーブン中に12日間入れた。次に生成物の遠心分離/洗浄(3回)及び乾燥を行った。この実施例2の合成混合物の組成及び結果を以下の表12中に示す。表12から分かるように、HO/SiOが5及び7の場合の合成ではどちらもEMM-41が得られ、一方、HO/SiOモル比が10、14、及び18の場合の合成では、EMM-41相は形成されず、非晶質となった。実施例2A1、2A2、及び2B1の粉末XRDパターンは、EMM-41(図示せず)と一致し、EMM-41と一致した。
【0140】
【表25】
【0141】
実施例3:種々のシリカ源及びSi/Alモル比を用いたEMM-41の合成
シリカ源(TMOS、LUDOX(登録商標)LS-30、又はCABOSPERSE(登録商標))及びSi/Alモル比を混合物中で同時に変化させて、EMM-41の種結晶の存在下で実験を行った(10ml規模)。合成混合物の組成及びSi/Alモル比を以下の表13中に示す。テトラメチルオルトシリオケート(tetramethylorthosiliocate)(TMOS)を用いた実施例ではEMM-41が生成され、一方、他のシリカ源では生成されなかった。実施例3A1及び3A2の粉末XRDパターン(図示せず)はEMM-41と一致した。
【0142】
【表26】
【0143】
実施例4:シリカ源のみを変化させたEMM-41の合成
この実施例4では、シリカ源(TMOS、LUDOX(登録商標)LS-30、又はCABOSPERSE(登録商標))のみを反応混合物中で使用した(すなわち、アルミニウムの供給源なし)ことを除けば、前述の実施例3を繰り返した。合成混合物の組成を以下の表14中に示す。この実施例4では、それぞれの実験のSDA及びシリカ源を含む反応混合物を室温で3日間静置及び温浸し、次に凍結乾燥機中に入れて水を除去した。実施例4中のすべての実験の粉末XRDパターン(図示せず)はEMM-41と一致した。
【0144】
【表27】
【0145】
実施例5:製造されたままのEMM-41及び焼成されたEMM-41の特性決定
この実施例5では、使用したゼオライト種結晶がITQ-24であることを除けば、前述の実施例2A2を繰り返した。標準的な焼成プロトコルを用いて、製造されたままの材料を600℃まで焼成して有機SDA(Q)を除去した。表15A及び15Bは、謹んで(respectfully)製造されたままの生成物及び焼成された生成物のXRDのピーク位置及びそれらの強度の一覧を示している。製造されたままの生成物及び焼成された生成物の粉末XRDパターンは図2中にグラフで示されており、合成された材料がEMM-41であることを裏付けている。
【0146】
【表28】
【0147】
【表29】
【0148】
【表30】
【0149】
本明細書に記載されるものに加えて、本開示の種々の修正は、以上の説明から当業者には明らかとなるであろう。このような修正は、添付の請求項の範囲内となることも意図される。限定するものではないがすべての特許、特許出願、及び刊行物などの本出願に引用される各参考文献は、その全体が参照により本明細書に援用される。
図1
図2
図3A-3B】
図4A-4B】
図5A-5B】
図6A-6B】
図7A-7B】
図8A-8B】
図9A-9B】
図10A
図10B