(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】電極改質のための自己集合単分子層およびそのような自己集合単分子層を含むデバイス
(51)【国際特許分類】
H10K 71/60 20230101AFI20240430BHJP
H10K 50/805 20230101ALI20240430BHJP
【FI】
H10K71/60
H10K50/805
(21)【出願番号】P 2021532031
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2019081261
(87)【国際公開番号】W WO2020114742
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-10-21
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】スパロー、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チャンシェン
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル、ウィリアム
【審査官】西岡 貴央
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-327283(JP,A)
【文献】特開2014-131014(JP,A)
【文献】特開2005-085731(JP,A)
【文献】特開2004-047176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B33/00-28
H10K50/00-102/20
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極、前記電極上の自己集合単分子層、および前記自己集合単分子層上の有機半導体層を含
む有機電子デバイスを製造する方法であって、
(a)電極を、任意に基板上に、設ける工程;
(b)前記電極上に、式(I)
R
1-SiX
3 (I)
の化合物と、式R
2-OHのアルコール
(式中、
R
1
は、それぞれの出現において、少なくとも1つのR
A
で置換されている(II-b)
【化1】
(
式中、
eは、それぞれの出現において独立して少なくとも1かつ5以下の整数である)
の何れかから独立して選択される基であり;
R
2は、1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり;
Xは、それぞれの出現において独立して
Clであり;
R
A
では、Fである。)
とを含む
反応生成物を堆積させて自己集合単分子層を得る工程;および
(c)前記自己集合単分子層上に、有機半導体材料を堆積させて有機半導体層を得る工程を含む、方法。
【請求項2】
前記自己集合単分子層が、前記電極上に、式(I)の前記化合物と式R
2-OHの前記アルコールを含む調合物を堆積させることにより形成されている、請求項1に記載の有機電子デバイス
を製造する方法。
【請求項3】
eが5である、請求項1または請求項2に記載の有機電子デバイス
を製造する方法。
【請求項4】
式(I)の化合物が、下記式(I-1)~
(I-6)
【化2】
からなる群から選択される、請求項の
1または2に記載の有機電子デバイス
を製造する方法。
【請求項5】
電極は、金属もしくは電気伝導性金属酸化物、またはそれらのブレンドを含む、請求項1から4の何れか1項に記載の有機電子デバイスを製造する方法。
【請求項6】
電極は、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、およびこれらの何れかの任意のブレンドからなる群から選択される、請求項1から5の何れか1項に記載の有機電子デバイスを製造する方法。
【請求項7】
電極は、クロム、モリブデンおよびタングステンからなる群から選択される金属を含む、請求項1から6の何れか1項に記載の有機電子デバイスを製造する方法。
【請求項8】
電極は、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化モリブデン、酸化スズ、およびこれらの何れかの任意のブレンドからなる群から選択される電気伝導性金属酸化物を含む、請求項1から7の何れか1項に記載の有機電子デバイスを製造する方法。
【請求項9】
前記電極がインジウムスズ酸化物電極である
、請求項
8に記載の有機電子デバイス
を製造する方法。
【請求項10】
R
2が、1~5個の炭素原子を有するアルキ
ルである
、請求項
1から9の何れか1項に記載の有機電子デバイス
を製造する方法。
【請求項11】
R
2が、イソプロピルである、先行する請求項
10に記載の有機電子デバイス
を製造する方法。
【請求項12】
前記有機電子デバイスが、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光ダイオード(OLED)、有機発光トランジスタ(OLET)、有機光起電力デバイス(OPV)、有機光検出器(OPD)、有機ソーラーセル、レーザーダイオード、ショットキーダイオード、光伝導体および光検出器からなる群から選択される
、請求項
1から11の何れか1項に記載の有機電子デバイス
を製造する方法。
【請求項13】
前記有機電子デバイスが、有機電界効果トランジスタ(PFET)または有機薄膜トランジスタ(OTFT)である、請求項
12に記載の有機電子デバイス
を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電子デバイスに含まれる電極の改質に好適な自己集合単分子層、およびそのような電子デバイスに関する。本願はまた、そのような自己集合単分子層を電極上に堆積させるための方法、および対応するデバイスの製造に関する。
背景
有機電子材料は、広範な電子デバイス、たとえば、いくつか例を挙げるだけでも、有機光検出器(OPD)、有機光起電力セル(OPV)、有機発光ダイオード(OLED)および有機電界効果トランジスタ(OFET)においてその存在感を確立している。有機電子材料は、下にある基板上に溶液処理によって堆積させることができるため、有機材料は、簡易で柔軟性の高い製造を可能にすることが見込まれ、製造コストの削減につながる可能性もある。
【0002】
効率的な有機電子デバイスを得るためには、電極材料の仕事関数が、p型有機半導体材料の場合は最高被占分子軌道(HOMO)と、n型有機半導体材料の場合は最低空分子軌道(LUMO)のエネルギー準位と整合している必要がある。したがって、p型有機電子デバイスの場合は、金、パラジウムおよび白金が好適な電極材料である。あるいは、銀電極が自己集合単分子層と組み合わせて使用されてきており、自己集合単分子層は、電極の仕事関数をp型有機電子デバイスに好適なレベルにする。
【0003】
化学元素の仕事関数の概要は、Herbert B.Michaelson、Journal of Applied Physics 48、4729(1977);doi:10.1063/1.323539に記載されている。
【0004】
しかし、欠点として、貴金属電極は、有機電子デバイスのコストを大幅に増加させ、したがって、より低コストの金属を電極材料として使用することに関心が集まっている。
【0005】
たとえば、銅は、その良好な伝導性、比較的低いコストおよび製造プロセスでの使用が比較的容易であることから、潜在的な代替電極材料と考えてもよい。加えて、銅は、半導体業界において既に広く使用されている。
【0006】
しかし、銅は、化学的に極めて反応性が高く、銅電極の仕事関数をそれぞれの有機半導体材料と整合させるためには表面改質も必要である。そのような表面改質は、たとえば、銅表面を銀でめっきすることにより行ってもよい。残念ながら、これは多くの場合、銀デンドライトの形成につながり、結果として、そのようにして製造される電子デバイスを低効率なものとし、完全に無用にしてしまうことさえある。
【0007】
代替的電極材料として、Dong-Jin Yun and Shi-Woo RheeによりJournal of the Electrochemical Society 155(6)H357-H362(2008)に開示されているように、モリブデンを、たとえばオクタデシルトリクロロシランおよびフェネチルトリクロロシランの堆積によりその上に形成される自己集合単分子層と組み合わせて使用してもよい。
【0008】
多くの場合、有機電子デバイスでは、金属酸化物電極、たとえばインジウムスズ酸化物(ITO)電極などが使用される。良好な結果が達成されているが、これらの電極は、仕事関数をp型有機電子デバイスにより好適なものとするため、さらに改良する必要があるように思われる。
【0009】
したがって、これらの電極の欠点を克服することが業界において必要とされている。
【0010】
したがって、本願の目的は、有機電子デバイスへの使用に好適な電極を、好ましくは低コストで提供することである。
【0011】
本願の目的はまた、有機電子デバイスに使用されるそれぞれの有機半導体材料に仕事関数を適合させることが可能な電極を提供することである。
【0012】
加えて、本願の目的は、金属酸化物電極の仕事関数をp型有機電子デバイスの要件に適合させることを可能にする化合物および/または方法を提供することである。
【0013】
さらに、性能、たとえば電子的性能が良好な、好ましくは改善された有機電子デバイスを提供することが目的である。
【0014】
加えて、本願の目的は、そのような電極およびそのような有機電子デバイスを製造するための方法を提供することである。
概要
本発明者らは今回、驚くべきことに、上記の目的が、ここで開示する有機電子デバイスおよびその製造方法により個別に、または任意の組み合わせの何れかで達成できることを発見した。
【0015】
したがって、本願は、電極、前記電極上の自己組織化単分子層、および前記自己集合単分子層上の有機半導体層を含み、前記自己集合単分子層が、前記電極上に、下記式(I)
R1-SiX3 (I)
の化合物と、式R2-OHのアルコール
(式中、
R1は、それぞれの出現において独立して、1~10個の炭素原子を有し、少なくとも1つの電子求引性基RAで置換されているアルキル、または6~30個の芳香族炭素環原子を有し、少なくとも1つの電子求引性基で置換されているアリールであり;
R2は、1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり;
Xは、それぞれの出現において独立してハロゲンまたは1~10個の炭素原子を有するアルコキシである)
との反応生成物を堆積させることにより形成されている、有機電子デバイスを提供する。
【0016】
さらに、本願は、請求項1~12の何れか1項に記載の有機電子デバイスを製造する方法であって、
(a)電極を、任意に基板上に、設ける工程;
(b)前記電極上に、式(I)
R1-SiX3 (I)
の化合物と、式R2-OHのアルコール
(式中、
R1は、それぞれの出現において独立して、1~10個の炭素原子を有し、少なくとも1つの電子求引性基RAで置換されているアルキル、または6~30個の芳香族炭素環原子を有し、少なくとも1つの電子求引性基RAで置換されているアリールであり;
R2は、1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり;
Xは、それぞれの出現において独立してハロゲンまたは1~10個の炭素原子を有するアルコキシである)
とを含む調合物を堆積させて自己集合単分子層を得る工程;および
(c)前記自己集合単分子層上に、有機半導体材料を堆積させて有機半導体層を得る工程
を含む、方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本願による例示的なトップゲートOFETの略図を示す。
【
図2】
図2は、本願による例示的なボトムゲートOFETの略図を示す。
【発明の詳細な説明】
【0018】
ここで使用する場合、「有機電子デバイス」という用語は、有機半導体層、即ち、1種以上の有機半導体材料を、前記半導体層の総重量に対して少なくとも50重量%(たとえば60重量%または70重量%または80重量%または90重量%または95重量%または97重量%または99.0重量%または99.5重量%または99.7重量%または99.9重量%)含み、好ましくは1種以上の有機半導体材料からなる半導体層を含む電子デバイスを指す。
【0019】
ここで使用する場合、「からなる(consist of)」および「からなる(consisting of)」という用語は、通常存在し得る不純物、たとえば、全く限定されるものではないが、化合物(例えば有機半導体材料)の合成から生じる不純物、または、金属の場合は微量金属の存在を排除しない。
【0020】
本願の目的のため、アスタリスク「*」は、たとえば、ポリマーの場合は隣接する反復単位または任意の他の基を含む、隣接する単位または基への結合を表すために使用される。場合によっては、それ自体で具体的に識別される場合、アスタリスク「*」は、1価の化学基を表すこともあり得る。
【0021】
一般論として、本願は、有機電子デバイスに関する。前記有機電子デバイスは、電極、自己集合単分子層、および有機半導体層を含み、自己集合単分子層は、電極上にあり(または形成され)、有機半導体層は、自己集合単分子層上にある(または堆積させる)。別の表現をすれば、有機電子デバイスは、電極、自己集合単分子層、および有機半導体層を含み、自己集合単分子層は、電極と有機半導体層の間にある。
【0022】
電極は、金属もしくは電気伝導性金属酸化物、またはそれらのブレンドを、前記電極の総重量に対して好ましくは少なくとも50重量%(たとえば少なくとも60重量%または70重量%または80重量%または90重量%または95重量%または97重量%または99.0重量%または99.5重量%または99.7重量%または99重量%)含み、最も好ましくは、金属もしくは電気伝導性金属酸化物、またはそれらのブレンドからなる。
【0023】
留意すべきことであるが、「金属」という用語は、ここで使用する場合、2種以上の金属のブレンドの可能性も含む。同様に留意すべきことであるが、「電気伝導性金属酸化物」という用語は、ここで使用する場合、2種以上の金属酸化物のブレンドの可能性、および/または混合金属酸化物の可能性も含む。
【0024】
前記金属は、特に限定されない。一般に好適な金属は、たとえば、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、およびこれらの何れかの任意のブレンドからなる群から選択されてもよく、クロム、モリブデンおよびタングステンが好ましく、モリブデンが最も好ましい。
【0025】
前記金属酸化物は、特に限定されないが、それでも、電気伝導性金属酸化物は、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化モリブデン、酸化スズ、およびこれらの何れかの任意のブレンドからなる群から選択されることが好ましい。
【0026】
自己集合単分子層は、電極を本質的に覆っている。この文脈において、「本質的に覆っている」という用語は、それぞれの有機電子デバイスのアーキテクチャに応じ、自己集合単分子層が、好ましくは電極のどの部分も有機半導体層と直接物理的に接触しないように電極を覆っていること;または、自己集合単分子層が、電極の表面全体、好ましくは電極の有機半導体層に面する表面全体を覆っていること;または、自己集合単分子層が、電極の電荷輸送に活性のある表面部分を覆っていることを表すために使用される。
【0027】
自己集合単分子層は、前記電極上に、下記式(I)
R1-SiX3 (I)
の化合物と、式R2-OHのアルコール(式中、R1、R2およびXは、ここで定義する通りである)を含む調合物を堆積させることにより形成されている。
【0028】
R2は、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である。好ましくは、R2は、1~5個の炭素原子を有するアルキル基である。そのような好ましい基R2の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチルおよびn-ペンチルからなる群から選択されてもよい。R2がイソプロピルであることが最も好ましい。
【0029】
理論によって拘束されることを望むものではないが、式(I)の化合物は、式R2-OHのアルコールと反応して下記式(I-a)~(I-c)
R1-SiX2(OR2) (I-a)
R1-SiX(OR2)2 (I-b)
R1-Si(OR2)3 (I-c)
の化合物を形成すると考えられ、理論によって拘束されることを望むものではないが、この中で、式(I-c)が大部分の化合物、場合によっては唯一の化合物となると考えられる。
【0030】
したがって、結果として、理論によって拘束されることを望むものではないが、自己集合単分子層は、実際には、式(I)の化合物と式R2-OHのアルコールとの反応生成物を堆積させることにより、たとえば化合物(I-a)~(I-c)のうちの何れか1種以上、好ましくは化合物(I-c)を主として、またはさらに単独で堆積させることにより形成できると考えられる。
【0031】
Xは、それぞれの出現において独立してハロゲン、好ましくはCl、または1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基である。好ましくは、アルコキシ基は、-O-CaH2a+1であり、aは、少なくとも1かつ10以下の整数、好ましくは少なくとも1かつ5以下の整数である。好ましいアルコキシ基の例は、-O-CH3、-O-CH2-CH3、-O-(CH2)2-CH3、-O-CH(CH3)2、-O-(CH2)3-CH3、-O-C(CH3)、および-O-CH2-CH(CH3)2からなる群から選択されてもよい。特に好ましいアルコキシ基は、-O-CH(CH3)2である。
【0032】
R1は、それぞれの出現において独立して、1~10個の炭素原子を有し、少なくとも1つの電子求引性基RAで置換されているアルキル、または6~30個の芳香族炭素環原子を有し、少なくとも1つの電子求引性基RAで置換されているアリールである。
【0033】
好ましくは、R1は、それぞれの出現において独立して下記式(II-a)または(II-b)
【0034】
【0035】
(式中、
bは、それぞれの出現において独立して少なくとも1かつ10以下の整数、好ましくは5以下の整数であり;
cは、それぞれの出現において少なくとも1かつ2b+1以下の整数、好ましくは2b+1であり;
dは、それぞれの出現において少なくとも0かつ2b以下の整数、好ましくは0であり;
ただし、cとdの合計は2b+1、即ち、c+d=2b+1であり;
eは、それぞれの出現において独立して少なくとも1かつ5以下の整数、好ましくは5であり;
RAは、ここで定義する通りの電子求引性基である)
の何れか1つの基である。
【0036】
RAは、電子吸引性基である。好ましくは、RAは、それぞれの出現において-NO2、-CN、-F、-Cl、-Br、-I、-OAr2、-OR3、-COR3、-SH、-SR3、-OH、-C≡CR3、-CH=CR3
2、および1~10個の炭素原子を有し、1個以上、好ましくは全ての水素原子がFにより置きかえられているアルキルからなる群から独立して選択され、Ar2およびR3は、ここで定義する通りである。より好ましくは、RAは、それぞれの出現において-CN、-F、-Cl、-Br、-I、-OR3、および1~10個の炭素原子を有し、1個以上、好ましくは全ての水素原子がFにより置きかえられているアルキルからなる群から独立して選択され、R3は、ここで定義する通りである。さらにより好ましくは、RAは、それぞれの出現において独立して-F、-OR3、および1~10個の炭素原子を有し、1個以上、好ましくは全ての水素原子がFにより置きかえられているアルキルからなる群から選択され、R3は、ここで定義する通りである。最も好ましくは、RAはFである。
【0037】
Ar2は、6~30個の炭素原子を有する、好ましくは6~20個の炭素原子を有するアリールであり、最も好ましくはフェニルである。好ましくは、Ar2は、-CN、-F、-Cl、-Br、-I、-OR3、および1~10個、好ましくは1~5個の炭素原子を有し、1個以上、好ましくは全ての水素原子がFにより置きかえられているアルキルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、R3は、ここで定義する通りである。
【0038】
R3は、1~10個、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキル、または1~10個、好ましくは1~5個の炭素原子を有し、1個以上、好ましくは全ての水素原子がFにより置きかえられているアルキルである。
【0039】
R3として好適なアルキルの好ましい例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチルおよびn-ペンチルからなる群から選択されてもよい。R3として好適なフッ素化アルキル(即ち、1個以上、好ましくは全ての水素原子がFにより置きかえられているアルキル)の好ましい例は、-CF3、-C2F5、-n-C3F7(即ち、n-プロピル)、および-n-C4F9(即ち、n-ブチル)からなる群から選択されてもよい。
【0040】
式(I)の化合物の好ましい例は、下記式(I-1)~(I-11)
【0041】
【0042】
(式中、Xは、ここで定義する通りであり、eは、少なくとも1かつ10以下の整数(たとえば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)である)からなる群から選択されてもよい。
【0043】
理論によって拘束されることを望むものではないが、式(I)の化合物の電極上への堆積は、1つ以上の-Si-O-M-結合(Mは、電極に含まれる金属原子である)の形成をもたらすと考えられる。
【0044】
好ましくは、本発明の自己集合単分子層は、1~10分子層、より好ましくは1~5分子層、さらにより好ましくは1~3分子層、なおさらにより好ましくは1~2分子層の厚さ(そうした層の表面に対して垂直に測定)を有してもよい。最も好ましくは、前記厚さは約1分子層である。
【0045】
有機半導体材料は、特に限定されない。任意の有機半導体材料を使用してもよく、たとえば、いわゆる「小分子」またはポリマーなどである。「小分子」という用語は、一般に1000gmol-1以下、好ましくは500gmol-1以下の分子量を有する有機半導体化合物を指す。
【0046】
有機半導体材料は、n型またはp型半導体材料の何れかとすることができる。好ましくは、前記有機半導体材料は、少なくとも1・10-5cm2V-1s-1の電界効果トランジスタ移動度を有する。
【0047】
好ましくは、有機半導体層は固体である。好ましくは、半導体層は、1種以上、好ましくは1種の有機半導体材料を含み、好ましくはそれからなる。好ましくは、前記半導体材料は、少なくとも1・10-5cm2V-1s-1のトランジスタ移動度を有し、および/または半導体材料の最高被占分子軌道(HOMO)のエネルギー準位は、第1および第2の電極材料のフェルミエネルギー準位の低い方よりも低い。
【0048】
半導体層は、好ましくは少なくとも5nm、より好ましくは少なくとも10nmで、20μm以下、より好ましくは15μm以下、最も好ましくは10μm以下の厚さを有する。
【0049】
有機半導体材料は、好ましくはモノマー化合物(「小分子」とも呼ばれる)、オリゴマー、ポリマー、またはこれらの何れかのブレンドからなる群から選択され、ブレンドとしては、たとえば、1種以上のモノマー化合物、1種以上のオリゴマーまたは1種以上のポリマーのブレンドが挙げられるが、これに限定されない。より好ましくは、有機半導体材料は、ポリマーまたはポリマーのブレンドである。最も好ましくは、有機半導体材料はポリマーである。
【0050】
有機半導体材料の種類は、特に限定されない。一般に、有機半導体材料は、共役系を含む。「共役系」という用語は、ここでは、交互に現れる単結合と多重結合の系として構造を表すことができる分子実体または分子実体の一部を表すために使用される(International Union of Pure and Applied Chemistry、Compendium of Chemical Terminology、Gold Book、Version 2.3.3、2014-02-24、pages322-323も参照)。
【0051】
ここでの使用に適する有機半導体材料は、たとえば、下記式(V)
【0052】
【0053】
(式中、モノマー単位Mおよびmは、ここで定義する通りである)で表されるものであってもよい。出現ごとに、Mは独立して選択されてもよい。
【0054】
式(V)に関して、mは、1~100,000の任意の整数であってもよい。モノマーまたはモノマー単位の場合、mは1である。オリゴマーの場合、mは少なくとも2であり、10以下である。ポリマーの場合、mは少なくとも11である。
【0055】
好ましくは、有機半導体材料は、1つ以上の芳香族単位を含む。別の表現をすれば、式(V)に関して、Mは、芳香族単位であってもよい。そのような芳香族単位は、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上の芳香族環を含む、そのような芳香族環は、たとえば、それぞれの出現において5、6、7および8員芳香族環からなる群から独立して選択されてもよく、5および6員環が特に好ましい。
【0056】
有機半導体材料に含まれるこれらの芳香族環は、Se、Te、P、Si、B、As、N、OまたはSから、好ましくはSi、N、OまたはSから選択される1個以上のヘテロ原子を任意に含む。さらに、これらの芳香族環は、アルキル、アルコキシ、ポリアルコキシ、チオアルキル、アシル、アリールもしくは置換アリール基、ハロゲン(フッ素が好ましいハロゲンである)、シアノ、ニトロ、または-N(R’)(R’’)(式中、R’およびR’’は、それぞれ独立してH、任意に置換されていてもよいアルキルまたは任意に置換されていてもよいアリールである)で表される任意に置換されていてもよい第2級もしくは第3級アルキルアミンもしくはアリールアミンで任意に置換されていてもよく、アルコキシまたはポリアルコキシ基が典型的には利用される。さらに、R’およびR’’がアルキルまたはアリールである場合、これらは、任意にフッ素化されていてもよい。
【0057】
先に言及した芳香族環は、縮合環とするか、共役連結基、たとえば-C(T1)=C(T2)-、-C≡C-、N(R’’’)-、-N=N-、(R’’’)=N-、-N=C(R’’’)-により互いに結合しているものとすることができ、式中、T1およびT2は、それぞれ独立してH、Cl、F、-C≡Nまたは低級アルキル基、たとえばC1-4アルキル基を表し;R’’’は、H、任意に置換されていてもよいアルキルまたは任意に置換されていてもよいアリールを表す。さらに、R’’’がアルキルまたはアリールである場合、それは任意にフッ素化されていてもよい。
【0058】
さらなる好ましい有機半導体材料は、式(V)のモノマー単位Mが、それぞれの出現において式(A1)~(A83)および(D1)~(D142)
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
(式中、R101、R102、R103、R104、R105、R106、R107およびR108は、Hおよびここで定義する通りのRSからなる群から互いに独立して選択される)
からなる群から独立して選択されてもよいポリマーまたはコポリマーであってもよい。
【0080】
RSは、それぞれの出現において独立してここで定義する通りのカルビル基であり、好ましくは、ここで定義する通りである任意の基RT、1~40個の炭素原子を有し、1つ以上の基RTでさらに置換されていてもよいヒドロカルビル、およびN、O、S、P、Si、Se、As、TeまたはGeからなる群から選択される1個以上のヘテロ原子(N、OおよびSが好ましいヘテロ原子である)を含む、1~40個の炭素原子を有し、1つ以上の基RTでさらに置換されていてもよいヒドロカルビルからなる群から選択される。
【0081】
RSとして好適なヒドロカルビルの好ましい例は、それぞれの出現においてフェニル、1つ以上の基RTで置換されているフェニル、アルキル、および1つ以上の基RTで置換されているアルキルから独立して選択されてもよく、ここで、アルキルは、少なくとも1個、好ましくは少なくとも5個の炭素原子を有し、40個以下、より好ましくは30または25または20個以下、さらにより好ましくは15個以下、最も好ましくは12個以下の炭素原子を有する。留意すべきことであるが、たとえばRSとして好適なアルキルには、フッ素化アルキル、即ち、1個以上の水素がフッ素により置きかえられているアルキル、およびペルフルオロ化アルキル、即ち、水素の全てがフッ素により置きかえられているアルキルも含まれる。
【0082】
RTは、それぞれの出現においてF、Br、Cl、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(O)NR0R00、-C(O)X0、-C(O)R0、-NH2、-NR0R00、-SH、-SR0、-SO3H、-SO2R0、-OH、-OR0、-NO2、-SF5および-SiR0R00R000からなる群から独立して選択される。好ましいRTは、F、Br、Cl、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(O)NR0R00、-C(O)X0、-C(O)R0、-NH2、-NR0R00、-SH、-SR0、-OH、-OR0および-SiR0R00R000からなる群から選択される。最も好ましいRTはFである。
【0083】
R0、R00およびR000は、それぞれの出現においてH、F、および1~40個の炭素原子を有するヒドロカルビルからなる群から互いに独立して選択される。前記ヒドロカルビルは、好ましくは、少なくとも5個の炭素原子を有する。前記ヒドロカルビルは、好ましくは30個以下、より好ましくは25または20個以下、さらにより好ましくは20個以下、最も好ましくは12個以下の炭素原子を有する。好ましくは、R0、R00およびR000は、それぞれの出現においてH、F、アルキル、フッ素化アルキル、アルケニル、アルキニル、フェニルおよびフッ素化フェニルからなる群から互いに独立して選択される。より好ましくは、R0、R00およびR000は、それぞれの出現においてH、F、アルキル、フッ素化、好ましくはペルフルオロ化アルキル、フェニル、およびフッ素化、好ましくはペルフルオロ化フェニルからなる群から互いに独立して選択される。
【0084】
留意すべきことであるが、たとえばR0、R00およびR000として好適なアルキルには、ペルフルオロ化アルキル、即ち、水素の全てがフッ素により置きかえられているアルキルも含まれる。好適なアルキルの例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル(または「t-ブチル」)、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシルおよびエイコシル(-C20H41)からなる群から選択されてもよい。
【0085】
X0は、ハロゲンである、好ましくは、X0は、F、ClおよびBrからなる群から選択される。
【0086】
3個以上の炭素原子の鎖および結合したヘテロ原子を含むヒドロカルビル基は、直鎖、分枝および/または環状であってもよく、スピロおよび/または縮合環も含まれる。
【0087】
RS、R0、R00および/またはR000として好適なヒドロカルビルは、飽和でも不飽和でもよい。飽和ヒドロカルビルの例としては、アルキルが挙げられる。不飽和ヒドロカルビルの例は、アルケニル(非環式および環状アルケニルを含む)、アルキニル、アリル、アルキルジエニル、ポリエニル、アリールならびにヘテロアリールからなる群から選択されてもよい。
【0088】
RS、R0、R00および/またはR000として好適な好ましいヒドロカルビルとしては、1個以上のヘテロ原子を含むヒドロカルビルが挙げられ、たとえば、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシおよびアルコキシカルボニルオキシ、アルキルアリールオキシ、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニルオキシおよびアリールオキシカルボニルオキシからなる群から選択されてもよい。
【0089】
アリールおよびヘテロアリールの好ましい例は、縮合環も含んでもよい単環、二環または三環式芳香族またはヘテロ芳香族基を含む。
【0090】
とりわけ、好ましいアリールおよびヘテロアリール基は、フェニル、1つ以上のCH基がNにより置きかえられているフェニル、ナフタレン、フルオレン、チオフェン、ピロール、好ましくはN-ピロール、フラン、ピリジン、好ましくは2-または3-ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、イソチアゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソオキサゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チオフェン、好ましくは2-チオフェン、セレノフェン、好ましくは2-セレノフェン、チエノ[3,2-b]チオフェン、チエノ[2,3-b]チオフェン、ジチエノチオフェン、フロ[3,2-b]フラン、フロ[2,3-b]フラン、セレノ[3,2-b]セレノフェン、セレノ[2,3-b]セレノフェン、チエノ[3,2-b]セレノフェン、チエノ[3,2-b]フラン、インドール、イソインドール、ベンゾ[b]フラン、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾ[1,2-b;4,5-b’]ジチオフェン、ベンゾ[2,1-b;3,4-b’]ジチオフェン、キノール、2-メチルキノール、イソキノール、キノキサリン、キナゾリン、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾオキサゾール、およびベンゾチアジアゾールからなる群から選択されてもよい。
【0091】
アルコキシ基、即ち、末端CH2基が-O-により置きかえられている対応するアルキル基の好ましい例は、直鎖または分枝、好ましくは直鎖(または直鎖状)とすることができる。こうしたアルコキシ基の好適な例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ、ノノキシ、デコキシ、ウンデコキシ、ドデコキシ、トリデコキシ、テトラデコキシ、ペンタデコキシ、ヘキサデコキシ、ヘプタデコキシ、およびオクタデコキシからなる群から選択されてもよい。
【0092】
アルケニル、即ち、2つの隣接するCH2基が-CH=CH-により置きかえられている対応するアルキルの好ましい例は、直鎖または分枝とすることができる。好ましくは直鎖である。前記アルケニルは、好ましくは2~10個の炭素原子を有する。アルケニルの好ましい例は、ビニル、プロパ-1-エニル、またはプロパ-2-エニル、ブタ-1-エニル、ブタ-2-エニルまたはブタ-3-エニル、ペンタ-1-エニル、ペンタ-2-エニル、ペンタ-3-エニルまたはペンタ-4エニル、ヘキサ-1-エニル、ヘキサ-2-エニル、ヘキサ-3-エニル、ヘキサ-4-エニルまたはヘキサ-5-エニル、ヘプタ-1-エニル、ヘプタ-2-エニル、ヘプタ-3-エニル、ヘプタ-4-エニル、ヘプタ-5-エニルまたはヘプタ-6-エニル、オクタ-1-エニル、オクタ-2-エニル、オクタ-3-エニル、オクタ-4-エニル、オクタ-5-エニル、オクタ-6-エニルまたはオクタ-7-エニル、ノナ-1-エニル、ノナ-2-エニル、ノナ-3-エニル、ノナ-4-エニル、ノナ-5-エニル、ノナ-6-エニル、ノナ-7-エニル、ノナ-8-エニル、デカ-1-エニル、デカ-2-エニル、デカ-3-エニル、デカ-4-エニル、デカ-5-エニル、デカ-6-エニル、デカ-7-エニル、デカ-8-エニル、およびデカ-9-エニルからなる群から選択されてもよい。
【0093】
とりわけ好ましいアルケニル基は、C2~C7-1E-アルケニル、C4~C7-3E-アルケニル、C5~C7-4-アルケニル、C6~C7-5-アルケニルおよびC7~6-アルケニル、特にC2~C7-1E-アルケニル、C4~C7-3E-アルケニルおよびC5~C7-4-アルケニルである。特に好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E-プロペニル、1E-ブテニル、1E-ペンテニル、1E-ヘキセニル、1E-ヘプテニル、3-ブテニル、3E-ペンテニル、3E-ヘキセニル、3E-ヘプテニル、4-ペンテニル、4Z-ヘキセニル、4E-ヘキセニル、4Z-ヘプテニル、5-ヘキセニル、6-ヘプテニルなどである。5個以下のC原子を有するアルケニル基が一般に好ましい。
【0094】
オキサアルキル、即ち、1つの非末端CH2基が-O-により置きかえられている対応するアルキルの好ましい例は、直鎖または分枝、好ましくは直鎖とすることができる。オキサアルキルの具体例は、2-オキサプロピル(=メトキシメチル)、2-(=エトキシメチル)または3-オキサブチル(=2-メトキシエチル)、2-、3-または4-オキサペンチル、2-、3-、4-または5-オキサヘキシル、2-、3-、4-、5-または6-オキサヘプチル、2-、3-、4-、5-、6-または7-オキサオクチル、2-、3-、4-、5-、6-、7-または8-オキサノニル、および2-、3-、4-、5-、6-,7-、8-または9-オキサデシルからなる群から選択されてもよい。
【0095】
カルボニルオキシおよびオキシカルボニル、即ち、1つのCH2基が-O-により置きかえられており、それに隣接するCH2基の1つが-C(O)-により置きかえられている対応するアルキルの好ましい例は、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、アセチルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、2-アセチルオキシエチル、2-プロピオニルオキシエチル、2-ブチリルオキシエチル、3-アセチルオキシプロピル、3-プロピオニルオキシプロピル、4-アセチルオキシブチル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、プロポキシカルボニルメチル、ブトキシカルボニルメチル、2-(メトキシカルボニル)エチル、2-(エトキシカルボニル)エチル、2-(プロポキシカルボニル)エチル、3-(メトキシカルボニル)プロピル、3-(エトキシカルボニル)プロピル、および4-(メトキシカルボニル)-ブチルからなる群から選択されてもよい。
【0096】
チオアルキル、即ち、1つのCH2基が-S-により置きかえられている場合の好ましい例は、直鎖または分枝、好ましくは直鎖であってもよい。好適な例は、チオメチル(-SCH3)、1-チオエチル(-SCH2CH3)、1-チオプロピル(-SCH2CH2CH3)、1-(チオブチル)、1-(チオペンチル)、1-(チオヘキシル)、1-(チオヘプチル)、1-(チオオクチル)、1-(チオノニル)、1-(チオデシル)、1-(チオウンデシル)、および1-(チオドデシル)からなる群から選択されてもよい。
【0097】
フルオロアルキル基は、好ましくはペルフルオロアルキルCiF2i+1であり、式中、iは1~15の整数であり、特にCF3、C2F5、C3F7、C4F9、C5F11、C6F13、C7F15もしくはC8F17、非常に好ましくはC6F13、または部分的にフッ素化されたアルキル、特に1,1-ジフルオロアルキルであり、これらは全て直鎖または分枝である。
【0098】
アルキル、アルコキシ、アルケニル、オキサアルキル、チオアルキル、カルボニルおよびカルボニルオキシ基は、アキラルまたはキラル基とすることができる。特に好ましいキラル基は、2-ブチル(=1-メチルプロピル)、2-メチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、2-ブチルオクチル、2-ヘキシルデシル、2-オクチルドデシル、7-デシルノナデシル、特に2-メチルブチル、2-メチルブトキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、2-エチル-ヘキソキシ、1-メチルヘキソキシ、2-オクチルオキシ、2-オキサ-3-メチルブチル、3-オキサ-4-メチル-ペンチル、4-メチルヘキシル、2-ブチルオクチル、2-ヘキシルデシル、2-オクチルドデシル、7-デシルノナデシル、3,8-ジメチルオクチル、2-ヘキシル、2-オクチル、2-ノニル、2-デシル、2-ドデシル、6-メタ-オキシオクトキシ、6-メチルオクトキシ、6-メチルオクタノイルオキシ、5-メチルヘプチルオキシ-カルボニル、2-メチルブチリルオキシ、3-メチルバレロイルオキシ、4-メチルヘキサノイルオキシ、2-クロロプロピオニルオキシ、2-クロロ-3-メチルブチリルオキシ、2-クロロ-4-メチル-バレリル-オキシ、2-クロロ-3-メチルバレリルオキシ、2-メチル-3-オキサペンチル、2-メチル-3-オキサ-ヘキシル、1-メトキシプロピル-2-オキシ、1-エトキシプロピル-2-オキシ、1-プロポキシプロピル-2-オキシ、1-ブトキシプロピル-2-オキシ、2-フルオロオクチルオキシ、2-フルオロデシルオキシ、1,1,1-トリフルオロ-2-オクチルオキシ、1,1,1-トリフルオロ-2-オクチル、2-フルオロメチルオクチルオキシなどである。最も好ましいのは、2-エチルヘキシルである。
【0099】
好ましいアキラル分枝基は、イソプロピル、イソブチル(=メチルプロピル)、イソペンチル(=3-メチルブチル)、tert.ブチル、イソプロポキシ、2-メチル-プロポキシ、および3-メチルブトキシである。
【0100】
好ましい態様において、オルガニル基は、1~30個のC原子を持ち、1個以上のH原子がFにより任意に置きかえられている、第1級、第2級もしくは第3級アルキルもしくはアルコキシ、または任意にアルキル化もしくはアルコキシル化されている、4~30個の環原子を有するアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールオキシから互いに独立して選択される。この種の非常に好ましい基は、下記式
【0101】
【0102】
(式中、「ALK」は、任意にフッ素化された、1~20個、好ましくは1~12個のC原子、第3級基の場合は、非常に好ましくは1~9個のC原子を持つ好ましくは直鎖状アルキルまたはアルコキシを表し、破線は、これらの基が結合している環への結合を表す)からなる群から選択される。これらの基の中でとりわけ好ましいのは、全てのALK下位基が同一のものである。
【0103】
さらに、本発明によるいくつかの好ましい態様において、有機半導体材料は、チオフェン-2,5-ジイル、3-置換チオフェン-2,5-ジイル、任意に置換されていてもよいチエノ[2,3-b]チオフェン-2,5-ジイル、任意に置換されていてもよいチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル、セレノフェン-2,5-ジイル、または3-置換セレノフェン-2,5-ジイルから選択される1つ以上の反復単位、たとえば式(I)のMを包含するポリマーまたはコポリマーである。
【0104】
有機半導体材料の好ましい例は、式(A1)~(A83)からなる群から選択される1種以上のモノマー単位と、式(D1)~(D142)からなる群から選択される1種以上のモノマー単位を含む。
【0105】
本発明において使用できる有機半導体材料のさらなる好ましい例としては、共役炭化水素ポリマー、たとえばポリアセン、ポリフェニレン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン(これらの共役炭化水素ポリマーのオリゴマーを含む);縮環芳香族炭化水素、たとえばテトラセン、クリセン、ペンタセン、ピレン、ペリレン、コロネン、またはこれらの可溶性置換誘導体;オリゴマーのパラ置換フェニレン、たとえばp-クアテルフェニル(p-4P)、p-キンクエフェニル(p-5P)、p-セキシフェニル(p-6P)、またはこれらの可溶性置換誘導体;共役ヘテロ環式ポリマー、たとえばポリ(3-置換チオフェン)、ポリ(3,4-二置換チオフェン)、任意に置換されていてもよいポリチエノ[2,3-b]チオフェン、任意に置換されていてもよいポリチエノ[3,2-b]チオフェン、ポリ(3-置換セレノフェン)、ポリベンゾチオフェン、ポリイソチアナプテン、ポリ(N-置換ピロール)、ポリ(3-置換ピロール)、ポリ(3,4-二置換ピロール)、ポリフラン、ポリピリジン、ポリ-1,3,4-オキサジアゾール、ポリイソチアナフテン、ポリ(N-置換アニリン)、ポリ(2-置換アニリン)、ポリ(3-置換アニリン)、ポリ(2,3-二置換アニリン)、ポリアズレン、ポリピレン;ピラゾリン化合物;ポリセレノフェン;ポリベンゾフラン;ポリインドール;ポリピリダジン;ベンジジン化合物;スチルベン化合物;トリアジン;置換金属または無金属ポルフィン、フタロシアニン、フルオロフタロシアニン、ナフタロシアニンまたはフルオロナフタロシアニン;C60およびC70フラーレン;N,N’-ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリール-1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドおよびフルオロ誘導体;N,N’-ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリール3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド;バトフェナントロリン;ジフェノキノン;1,3,4-オキサジアゾール;11,11,12,12-テトラシアノナフト-2,6-キノジメタン;α,α’ビス(ジ-チエノ[3,2-b2’,3’-d]チオフェン);2,8-ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリールアントラジチオフェン;2,2’-ビスベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェンからなる群から選択される化合物、化合物のオリゴマーおよび誘導体が挙げられる。OSCの液体堆積技法が望まれる場合、上記リストからの化合物およびそれらの誘導体は、適切な溶媒または適切な溶媒の混合物に可溶なものに限定される。
【0106】
有機半導体材料の他の好ましい例は、置換オリゴアセン、たとえばペンタセン、テトラセンもしくはアントラセン、またはそれらのヘテロ環式誘導体からなる群から選択されてもよい。たとえばUS6,690,029またはWO2005/055248A1またはUS7,385,221に開示されているようなビス(トリアルキルシリルエチニル)オリゴアセンまたはビス(トリアルキルシリルエチニル)ヘテロアセンも、有用である。
【0107】
さらなる好ましい有機半導体材料は、WO2016/015804A1に開示されているような、テトラ-ヘテロアリールインダセノジチオフェン系構造単位の小分子またはモノマー、およびそれらの1つ以上の反復単位を含むポリマーまたはコポリマーからなる群から選択される。
【0108】
同様に好ましい有機半導体材料は、任意に置換されていてもよく、好ましくはアミノ基で置換されている、2,7-(9,9’)スピロビフルオレン部分を含む小分子またはモノマーまたはポリマーの群から選択されてもよい。そのようなスピロビフルオレンは、たとえばWO97/39045に開示されている。式(V)のモノマー単位Mとしての使用に好適なスピロビフルオレンの例は、式(VI-1)~(VI-7)
【0109】
【0110】
(式中、水素原子のそれぞれは、他の何れからも独立してR101に関してここで定義する通りであり、各アスタリスク「*」は、独立して隣接部分(たとえばポリマー内の)への結合を表しても、R101に関して先に定義したような基(たとえば式(V-a)または(V-b)の化合物内の)への結合を表してもよい)からなる群から選択されてもよい。式(VI-1)~(VI-7)に関して、好ましい置換基は、「*」に関するものも含めて、1~20個の炭素原子を有するアルキル;6~20個の炭素原子を有し、1~20個、好ましくは1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシで任意に置換されていてもよいアリール;およびNR110R111からなる群から選択されてもよく、R110およびR111は、1~20個の炭素原子を有するアルキル、6~20個の炭素原子を有し、1~20個、好ましくは1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシで任意に置換されていてもよいアリールからなる群から互いに独立して選択され、最も好ましくは、R110およびR111は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソ-プロポキシn-ブトキシ、イソ-ブトキシ、tert-ブトキシ、およびペントキシから互いに独立して選択される。
【0111】
一側面において、本発明の半導体材料は、たとえば、小分子、即ち、1つ(即ち、m=1)の式(V)の構造単位と、2つの不活性化学基RaおよびRbを含む化合物であってもよい。こうした小分子は、たとえば式(I-a)
Ra-M-Rb (V-a)
(式中、Mは、ここで定義する通りであり、RaおよびRbは、不活性化学基である)で表されてもよい。そのような不活性化学基RaおよびRbは、水素、フッ素、1~10個の炭素原子を有するアルキル、1~10個の炭素原子を有し、1つ以上、たとえば全ての水素がフッ素で置きかえられていてもよいアルキル、5~30個の炭素原子の芳香族環系、および1個以上の水素原子が、他の何れからも独立してフッ素または1~10個の炭素原子を有するアルキルにより置きかえられていてもよい、5~30個の炭素原子の芳香族環系からなる群から互いに独立して選択されてもよい。
【0112】
さらなる好ましいp型OSCは、電子受容体および電子供与体単位を含むコポリマーである。この好ましい態様の好ましいコポリマーは、たとえば、好ましくは先に定義した通りの1つ以上の基Rにより4,8-二置換されている、1つ以上のベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2,5-ジイル単位を含み、群Aおよび群Bから選択される1つ以上のアリールまたはヘテロアリール単位をさらに含み、好ましくは群Aの少なくとも1つの単位と、群Bの少なくとも1つの単位を含むコポリマーであり、ここで群Aは、電子供与体特性を有するアリールまたはヘテロアリール基からなり、群Bは、電子受容体特性を有するアリールまたはヘテロアリール基からなり、好ましくは、
群Aは、セレノフェン-2,5-ジイル、チオフェン-2,5-ジイル、チエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル、チエノ[2,3-b]チオフェン-2,5-ジイル、セレノフェノ[3,2-b]セレノフェン-2,5-ジイル、セレノフェノ[2,3-b]セレノフェン-2,5-ジイル、セレノフェノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル、セレノフェノ[2,3-b]チオフェン-2,5-ジイル、ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル、2,2-ジチオフェン、2,2-ジセレノフェン、ジチエノ[3,2-b:2’,3’-d]シロール-5,5-ジイル、4H-シクロペンタ[2,1-b:3,4-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル、2,7-ジ-チエン-2-イル-カルバゾール、2,7-ジ-チエン-2-イル-フルオレン、インダセノ[1,2-b:5,6-b’]ジチオフェン-2,7-ジイル、ベンゾ[1’’,2’’:4,5;4’’,5’’:4’,5’]ビス(シロロ[3,2-b:3’,2’-b’]チオフェン)-2,7-ジイル、2,7-ジ-チエン-2-イル-インダセノ[1,2-b:5,6-b’]ジチオフェン、2,7-ジ-チエン-2-イル-ベンゾ[1’’,2’’:4,5;4’’,5’’:4’,5’]ビス(シロロ[3,2-b:3’,2’-b’]チオフェン)-2,7-ジイル、および2,7-ジ-チエン-2-イル-フェナントロ[1,10,9,8-c,d,e,f,g]カルバゾールからなり、これらの全ては、先に定義した通りの1つ以上、好ましくは1または2つの基Rにより任意に置換されていてもよく、
群Bは、ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール-4,7-ジイル、5,6-ジアルキル-ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール-4,7-ジイル、5,6-ジアルコキシベンゾ[2,1,3]チアジアゾール-4,7-ジイル、ベンゾ[2,1,3]セレナジアゾール-4,7-ジイル、5,6-ジアルコキシ-ベンゾ[2,1,3]セレナジアゾール-4,7-ジイル、ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール-4,7,ジイル、ベンゾ[1,2,5]セレナジアゾール-4,7,ジイル、ベンゾ[2,1,3]オキサジアゾール-4,7-ジイル、5,6-ジアルコキシベンゾ[2,1,3]オキサジアゾール-4,7-ジイル、2H-ベンゾトリアゾール-4,7-ジイル、2,3-ジシアノ-1,4-フェニレン、2,5-ジシアノ,1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-フェニレン、3,4-ジフルオロチオフェン-2,5-ジイル、チエノ[3,4-b]ピラジン-2,5-ジイル、キノキサリン-5,8-ジイル、チエノ[3,4-b]チオフェン-4,6-ジイル、チエノ[3,4-b]チオフェン-6,4-ジイル、および3,6-ピロロ[3,4-c]ピロール-1,4-ジオンからなり、これらは全て、先に定義した通りの1つ以上、好ましくは1または2つの基Rにより任意に置換されていてもよい。
【0113】
本発明の他の好ましい態様において、OSC材料は、置換オリゴアセン、たとえばペンタセン、テトラセンもしくはアントラセン、またはそれらのヘテロ環式誘導体である。たとえばUS6,690,029またはWO2005/055248A1またはUS7,385,221に開示されているような、ビス(トリアルキルシリルエチニル)オリゴアセンまたはビス(トリアルキルシリルエチニル)ヘテロアセンも有用である。
【0114】
さらなる好ましい有機半導体材料は、WO2016/015804A1に開示されているようなテトラ-ヘテロアリールインダセノジチオフェン系構造単位の小分子またはモノマー、およびそれらの1つ以上の反復単位を含むポリマーまたはコポリマー、たとえば、下記のポリマー(P-1)~(P-3):
【0115】
【0116】
のうちの1種などからなる群から選択される。
【0117】
意図した用途に応じ、本発明の有機半導体材料はまた、他の成分、たとえば、フラーレンまたは改質フラーレンなどを含んでもよい。そのようなポリマーとフラーレンのブレンドにおいて、ポリマー:フラーレンの比は、好ましくは重量で5:1~1:5、より好ましくは重量で1:1~1:3、最も好ましくは重量で1:1~1:2である。好適なフラーレンは、たとえば、インデン-C60-フラーレンビス付加物、たとえばICBA、または、「PCBM-C60」もしくは「C60PCBM」としても公知であり、たとえばG.Yu、J.Gao、J.C.Hummelen、F.Wudl、A.J.Heeger、Science 1995、Vol.270、p.1789ffに開示され、以下に示す構造を有する(6,6)-フェニル-酪酸メチルエステル誘導体化メタノC60フラーレン、または、たとえばC61フラーレン基、C70フラーレン基、もしくはC71フラーレン基を有する構造的に類似の化合物、または有機ポリマー(たとえばCoakley、K.M. and McGehee、M.D.Chem.Mater.2004、16、4533を参照)であってもよい。
【0118】
【0119】
有機半導体材料は、商業的供給源、たとえばSigmaAldrichもしくはMerck KGaA(ドイツダルムシュタット)から購入してもよく、公開されている合成法に従い合成してもよい。
【0120】
さらなる側面において、本発明の半導体材料は、先に定義した通りのオリゴマーまたはポリマーであってもよい。そのようなオリゴマーおよびポリマーは、下記に記載するようなモノマーから、当業者に公知であり、文献に記載されている方法に従い、またはそうした方法に類似の方法で合成してもよい。
【0121】
本発明のオリゴマーおよびポリマーの合成に好適なモノマーは、式(I)の構造単位と少なくとも1つの反応性化学基Rcを含む化合物から選択されてもよく、反応性化学基Rcは、Cl、Br、I、O-トシラート、O-トリフラート、O-メシラート、O-ノナフラート、-SiMe2F、-SiMeF2、-O-SO2Z1、-B(OZ2)2、-CZ3=C(Z3)2、C≡CH、-C≡CSi(Z1)3、-ZnX00および-Sn(Z4)3からなる群から選択されてもよく、好ましくは-B(OZ2)2または-Sn(Z4)3であり、式中、X00は、ここで定義する通りであり、Z1、Z2、Z3およびZ4は、それぞれここで定義する通りであるR0で任意に置換されていてもよい、アルキルおよびアリール、好ましくは1~10個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択され、また、2つの基Z2が一緒になって環状基を形成してもよい。あるいは、こうしたモノマーは、2つの反応性化学基を含んでもよく、たとえば、式(V-b)
Rc-M-Rd (V-b)
(式中、Mは、ここで定義する通りであり、RcおよびRdは、Rcに関して先に定義した通りの反応性化学基である)で表される。そのようなモノマーは一般に、当業者に周知の方法に従い調製されてもよい。
【0122】
X00は、ハロゲンである。好ましくは、X00は、F、ClおよびBrからなる群から選択される。最も好ましくは、X00はBrである。
【0123】
ここで記載する方法において使用される好ましいアリール-アリールカップリングおよび重合法は、たとえば、ヤマモトカップリング、クマダカップリング、ネギシカップリング、スズキカップリング、スティルカップリング、ソノガシラカップリング、ヘックカップリング、C-H活性化カップリング、ウルマンカップリングおよびブッフバルトカップリングのうちの1つ以上であってもよい。とりわけ好ましいのは、スズキカップリング、ネギシカップリング、スティルカップリングおよびヤマモトカップリングである。スズキカップリングは、たとえばWO00/53656A1に記載されている。ネギシカップリングは、たとえばJ.Chem.Soc.、Chem.Commun.、1977、683-684に記載されている。ヤマモトカップリングは、たとえばT.Yamamotoら、Prog.Polym.Sci.、1993、17、1153-1205、またはWO2004/022626A1に記載されており、スティルカップリングは、たとえばZ.Baoら、J.Am.Chem.Soc.、1995、117、12426-12435に記載されている。たとえば、ヤマモトカップリングを使用する場合、2つの反応性ハロゲン化物基を有するモノマーが、好ましくは使用される。スズキカップリングを使用する場合、2つの反応性ボロン酸もしくはボロン酸エステル基または2つの反応性ハロゲン化物基を有する式(I-b)の化合物が好ましくは使用される。スティルカップリングを使用する場合、2つの反応性スタンナン基または2つの反応性ハロゲン化物基を有するモノマーが好ましくは使用される。ネギシカップリングを使用する場合、2つの反応性有機亜鉛基または2つの反応性ハロゲン化物基を有するモノマーが好ましくは使用される。
【0124】
とりわけスズキ、ネギシまたはスティルカップリング用の好ましい触媒は、Pd(0)錯体またはPd(II)塩から選択される。好ましいPd(0)錯体は、少なくとも1つのホスフィン配位子を持つもの、たとえばPd(Ph3P)4である。別の好ましいホスフィン配位子は、トリス(オルト-トリル)ホスフィン、たとえばPd(o-Tol3P)4である。好ましいPd(II)塩としては、酢酸パラジウム、たとえばPd(OAc)2が挙げられる。あるいは、Pd(0)錯体は、Pd(0)ジベンジリデンアセトン錯体、たとえばトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)-パラジウム(0)、またはPd(II)塩、たとえば酢酸パラジウムを、ホスフィン配位子、たとえばトリフェニルホスフィン、トリス(オルト-トリル)ホスフィンまたはトリ(tert-ブチル)ホスフィンと混合することによって調製することができる。スズキ重合は、塩基、たとえば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化リチウム、リン酸カリウム、または有機塩基、たとえば炭酸テトラエチルアンモニウムもしくは水酸化テトラエチルアンモニウムの存在下で遂行される。ヤマモト重合は、Ni(0)錯体、たとえばビス(1,5-シクロオクタジエニル)ニッケル(0)を利用する。
【0125】
スズキおよびスティル重合を使用してホモポリマー、ならびに統計的、交互およびブロックランダムコポリマーを調製してもよい。統計的またはブロックコポリマーは、たとえば、式(I-b)の上記モノマーから調製でき、反応基の一方はハロゲンであり、他方の反応基はボロン酸、ボロン酸誘導体基またはアルキルスタンナンである。統計的、交互およびブロックコポリマーの合成については、たとえばWO03/048225A2またはWO2005/014688A2に詳細に記載されている。
【0126】
上記のハロゲンの代替として、式-O-SO2Z1の脱離基を使用することができ、式中、Z1は上記の通りである。こうした脱離基の特定の例は、トシラート、メシラートおよびトリフラートである。
【0127】
たとえばWO2005/055248A1に記載されているように、たとえば流動学的特性を改変するために適切かつ必要な場合、本発明のいくつかの態様は、1種以上の有機結合剤を含む有機半導体組成物を利用する。
【0128】
典型的にはポリマーである結合剤は、絶縁性結合剤もしくは半導体結合剤の何れか、またはそれらの混合物を含んでもよく、ここで有機結合剤、ポリマー結合剤、または単に結合剤と呼ばれることもある。
【0129】
本発明による好ましい結合剤は、低誘電率の材料、即ち、3.3以下の誘電率εを有する材料である。有機結合剤は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.9以下の誘電率εを有する。好ましくは、有機結合剤は、1.7以上の誘電率εを有する。結合剤の誘電率が2.0~2.9の範囲であることがとりわけ好ましい。特定の理論によって拘束されることを望むものではないが、誘電率εが3.3を超える結合剤の使用は、電子デバイス、たとえばOFETにおけるOSC層移動度の低下をもたらす場合があると考えられる。加えて、高誘電率の結合剤も、デバイスの電流ヒステリシスを増加させる可能性があり、これは望ましくない。
【0130】
好適な有機結合剤の例としては、ポリスチレン、またはスチレンおよびα-メチルスチレンのポリマーもしくはコポリマーが挙げられ;またはスチレン、α-メチルスチレンおよびブタジエンを含むコポリマーが好適に使用できる。好適な結合剤のさらなる例は、たとえばUS2007/0102696A1に開示されている。
【0131】
好ましい態様の1種において、有機結合剤は、原子の少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、とりわけ全てが水素、フッ素および炭素原子からなるものである。
【0132】
結合剤は、膜、より好ましくは可撓性膜を形成することが可能である。
【0133】
結合剤はまた、好ましくは十分に低い、非常に好ましくは3.3以下の誘電率を有する架橋性結合剤、たとえばアクリラート、エポキシ、ビニルエーテル、およびチオレンから選択することができる。結合剤はまた、メソゲン性または液晶性とすることができる。
【0134】
別の好ましい態様において、結合剤は、半導体結合剤であり、共役結合、とりわけ共役二重結合および/または芳香族環を含有する。好適な好ましい結合剤は、たとえばUS6,630,566に開示されているような、たとえばポリトリアリールアミンである。
【0135】
OSCに対する結合剤の割合は、典型的には重量で20:1~1:20、好ましくは10:1~1:10、より好ましくは5:1~1:5、なおより好ましくは3:1~1:3、さらに好ましくは2:1~1:2、とりわけ1:1である。式(V)の化合物の結合剤での希釈は、先行技術から予想されたこととは対照的に、電荷移動度にほとんどまたは全く悪影響を及ぼさないことが見出されている。
【0136】
本発明の有機電子デバイスは、1つ以上の基板を任意に含んでもよい。そのような基板は特に限定されず、使用条件下で不活性の任意の好適な材料であってもよい。そのような材料の例は、ガラスおよびポリマー材料である。好ましいポリマー材料としては、アルキド樹脂、アリルエステル、ベンゾシクロブテン、ブタジエン-スチレン、セルロース、酢酸セルロース、エポキシド、エポキシポリマー、エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー、エチレン-テトラ-フルオロエチレンコポリマー、ガラス繊維強化ポリマー、フルオロカーボンポリマー、ヘキサフルオロプロピレンビニリデン-フルオリドコポリマー、高密度ポリエチレン、パリレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンナフタラート、ポリエチレンテレフタラート、ポリケトン、ポリメチルメタクリラート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリシクロオレフィン、シリコーンゴム、およびシリコーンが挙げられるが、これに限定されない。これらの中で、ポリエチレンテレフタラート、ポリイミド、ポリシクロオレフィンおよびポリエチレンナフタラート材料がより好ましい。加えて、本発明のいくつかの態様では、基板は、上記に列挙した材料の1種以上でコーティングした、または1種以上の金属、たとえばチタンなどでコーティングした任意の好適な材料、たとえばポリマー材料、金属またはガラス材料とすることができる。理解されることであるが、こうした基板を形成する際、方法、たとえば押し出し、延伸、ラビングまたは光化学的技法を利用して、デバイス作成のための均一な表面を実現すると共に、有機半導体材料におけるキャリア移動度を高めるために有機半導体材料の予備配向を実現することができる。あるいは、基板は、上記ポリマー材料の1種以上でコーティングしたポリマー材料、金属またはガラスとすることができる。
【0137】
好適な基板は、たとえば、透明または半透明であってもよい。好適な基板は、たとえば可撓性であっても非可撓性であってもよい。
【0138】
前記基板は、たとえば支持体として機能してもよく、好ましくは第1の電極層に隣接してもよい。前記基板はまた、たとえば第1の電極層を保持する平坦化層用の支持体として機能してもよい。一般に、基板は、任意の層の間に、または任意の層に隣接させて電子デバイスに導入し、デバイスを支持するのに最適に機能するように、および/または製造要件に関して最適に配置されるように配置することができる。
【0139】
加えて、本発明の有機電子デバイスは、電荷輸送層として作用するさらなる層を任意に含んでもよい。例示的な電荷輸送層は、正孔輸送性層および/もしくは電子阻止層、または電子輸送性層および/もしくは正孔阻止層として作用してもよい。一般に、そのような層は、存在する場合、電極と有機半導体層の間にある。
【0140】
正孔輸送性および/または電子阻止層に好適な材料は、金属酸化物、たとえば、スズ酸亜鉛(ZTO)、MoOx、NiOxなど、共役ポリマー電解質、たとえばPEDOT:PSSなど、共役ポリマー、たとえばポリトリアリールアミン(PTAA)など、有機化合物、たとえばN,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(1-ナフチル)(1,1’-ビフェニル)-4,4’ジアミン(NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD)などからなる群から選択されてもよい。
【0141】
正孔阻止および/または電子輸送性層に好適な材料は、金属酸化物、たとえばZnOx、TiOxなど、塩、たとえばLiF、NaF、CsFなど、共役ポリマー電解質、たとえばポリ[3-(6-トリメチルアンモニウムヘキシル)チオフェン]、ポリ(9,9-ビス(2-エチルヘキシル)-フルオレン]-b-ポリ[3-(6-トリメチルアンモニウムヘキシル)チオフェン]、もしくはポリ[(9,9-ビス(3’-(N,N-ジメチル-アミノ)プロピル)-2,7-フルオレン)-alt-2,7-(9,9-ジオクチル-フルオレン)]など、または有機化合物、たとえばトリス(8-キノリノラト)-アルミニウム(III)(Alq3)、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリンなどからなる群から選択されてもよい。
【0142】
本発明の有機電子デバイスは、たとえば、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光ダイオード(OLED)、有機発光トランジスタ(OLET)、有機光起電力デバイス(OPV)、有機光検出器(OPD)、有機ソーラーセル、レーザーダイオード、ショットキーダイオード、光伝導体および光検出器からなる群から選択されてもよい。好ましくは、本発明の有機電子デバイスは、有機電界効果トランジスタ(PFET)または有機薄膜トランジスタ(OTFT)である。
【0143】
本発明の有機電子デバイスの好ましい例は、有機電界効果トランジスタであり、好ましくはゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、絶縁層(好ましくはゲート絶縁層)、および有機半導体層を含む。任意に、有機電界効果トランジスタはまた、基板および電荷輸送層からなる群から選択される1つ以上を含んでもよい。OFETデバイスにおけるこれらの層は、任意の順序で配列されてもよいが、ただし、ソース電極とドレイン電極は、絶縁層によってゲート電極から分離され、ゲート電極と半導体層は、両方とも絶縁層と接触し、ソース電極とドレイン電極は、両方とも半導体層と接触し、その間に表面処理層がある。
【0144】
本発明によるOFETデバイスは、トップゲートデバイスまたはボトムゲートデバイスとすることができる。OFETデバイスの好適な構造は当業者に公知であり、文献、たとえばUS2007/0102696A1に記載されている。
【0145】
図1は、本発明による典型的なトップゲートOFETの略図を示し、これは、基板(1)上に設けられたソース(S)およびドレイン(D)電極(2)、S/D電極上に設けられた、ここで定義する通りである式(I)の化合物を堆積させることにより形成された自己集合単分子層(3)、S/D電極上と自己集合単分子層(3)の上に設けられた有機半導体材料の層(4)、有機半導体層(4)上に設けられた、ゲート絶縁体層としての誘電材料の層(5)、ゲート絶縁体層(5)上に設けられたゲート電極(6)、ならびにゲート電極(6)を後に設けられる可能性のあるさらなる層もしくはデバイスから遮蔽するため、または環境の影響から保護するためにゲート電極(6)上に設けられる任意の不動態化または保護層(7)を含む。両方向矢印で示されるソース電極とドレイン電極(2)の間の領域は、チャネル領域である。
【0146】
図2は、本発明による典型的なボトムゲート-ボトム接触OFETの略図を示し、これは、基板(1)上に設けられたゲート電極(6)、ゲート電極(4)上に設けられた誘電材料の層(5)(ゲート絶縁体層)、ゲート絶縁体層(6)上に設けられたソース(S)およびドレイン(D)電極(2)、S/D電極上に設けられた、ここで定義する通りである式(I)の化合物を堆積させることにより形成された自己集合単分子層(3)、S/D電極と自己集合単分子層(3)上に設けられた有機半導体材料の層(4)、ならびに有機半導体層(4)を後に設けられる可能性のあるさらなる層もしくはデバイスから遮蔽するため、または環境の影響から保護するために有機半導体層(4)上に設けられる任意の保護または不動態化層(7)を含む。
【0147】
本発明によるOFETデバイスにおいて、ゲート絶縁体層用の誘電材料は、好ましくは溶液処理可能な材料である。半導体に直接接触している誘電体の場合。とりわけ好ましいのは、たとえばUS2007/0102696A1またはUS7,095,044に開示されているような、1.0~5.0、非常に好ましくは1.8~4.0の誘電率を有する有機誘電材料(「低k材料」)である。任意の第2の誘電体層の場合、誘電率は制限されないが、デバイスの静電容量を増加させるため、かなり高いことが好ましい。
【0148】
好ましくは、ゲート絶縁体層は、たとえばスピンコーティング、ドクターブレーディング、ワイヤーバーコーティング、スプレーもしくはディップコーティング、または他の公知の方法により、絶縁体材料と、1種以上のフルオロ原子を有する1種以上の溶媒(フルオロ溶媒)、好ましくはペルフルオロ溶媒とを含む調合物から堆積させる。好適なペルフルオロ溶媒は、たとえばFC75(登録商標)(Acrosから入手可能、カタログ番号12380)である。他の好適なフルオロポリマーおよびフルオロ溶媒は、先行技術において公知であり、たとえばペルフルオロポリマーTeflonAF(登録商標)1600もしくは2400(DuPont製)またはFluoropel(登録商標)(Cytonix製)またはペルフルオロ溶媒FC43(登録商標)(Acros、番号12377)などである。とりわけ好ましいのは、たとえばUS2007/0102696A1またはUS7,095,044に開示されているような、1.0~5.0、非常に好ましくは1.8~4.0の誘電率を有する有機誘電材料(「低k材料」)である。
【0149】
本発明のトランジスタデバイスはまた、p型半導体材料の層およびn型半導体材料の層を含む相補型有機薄膜トランジスタ(CTFT)であってもよい。
【0150】
一般論として、本願はまた、上記のような本発明の有機電子デバイスを製造するための方法であって、
(a)ここで定義する通りの電極を、任意にここで定義する通りの基板上に、設ける工程;
(b)前記電極上に、ここで定義する通りの式(I)の化合物と、ここで定義する通りの式R2-OHのアルコールを含む調合物を堆積させて自己集合単分子層を得る工程;および
(c)前記自己集合単分子層上に、有機半導体材料を堆積させて有機半導体層を得る工程
を含む、方法に関する。
【0151】
工程(b)において、調合物は、たとえば真空もしくは蒸着法によって、または液体コーティング法によって電極上に堆積させてもよい。例示的な堆積方法としては、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、昇華または液体コーティング法が挙げられる。液体コーティング法が好ましい。特に好ましいのは、溶媒ベースの液体コーティング法である。
【0152】
溶媒ベースの液体コーティングにおいて、ここで定義する通りの式(I)の化合物と、ここで定義する通りの式R2-OHのアルコール(またはここで定義する通りの式(I)の化合物とここで定義する通りの式R2-OHのアルコールのそれぞれの反応生成物)を含む調合物を金属表面または金属酸化物表面上に堆積させる。任意に、堆積に続いて、溶媒を少なくとも部分的に蒸発させてもよい。好ましい溶媒ベースの液体コーティング法としては、ディップコーティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、活版印刷、スクリーン印刷、ドクターブレードコーティング、ローラー印刷、逆ローラー印刷、オフセットリソグラフィ印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、ウェブ印刷、スプレーコーティング、ブラシコーティングおよびパッド印刷が挙げられるが、これに限定されない。
【0153】
ここで定義する通りの式R2-OHのアルコールに加えて、調合物は、1種以上のさらなる好適な溶媒を含んでもよい。そのような好適な溶媒は、たとえば、ここで定義する通りのR2-OHとは異なるアルコール、エーテル、ケトン、芳香族炭化水素およびこれらの何れかの任意の混合物からなる群から選択されてもよい。好適なエーテルは、直鎖状または環状構造を有してもよく、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ブチルフェニルエーテル、メチルエチルエーテルおよび4-メチルアニソールからなる群から選択されてもよい。好適なケトンは、たとえばアセトン、2-ヘプタノンおよびシクロヘキサノンからなる群から選択されてもよい。好適な芳香族炭化水素は、たとえばトルエン、メシチレン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、シクロヘキシルベンゼンおよびハロゲン化芳香族炭化水素からなる群から選択されてもよい。そのようなハロゲン化芳香族炭化水素の例は、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンおよびトリクロロベンゼン、ならびにこれらの何れかの任意の混合物である。
【0154】
好ましくは、式(I)の化合物は、調合物または溶液中に、調合物または溶液の総重量に対して0.01重量%~10重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%、最も好ましくは0.05重量%~2重量%存在する(別の表現をすれば、最初に添加される)。
【0155】
金属または金属酸化物を、従来の方法の何れかによって基板に付与してもよい。方法は、たとえば真空堆積、蒸着および液体コーティングから選択されてもよい。例示的な堆積方法としては、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、昇華または液体コーティング法が挙げられる。こうした方法は、本分野における一般的知識の一部を形成し、当業者に周知である。
【0156】
SAM処理、即ち、自己集合単分子層の形成の前に、金属または金属酸化物表面を好ましくは洗浄工程に供する。好ましい洗浄工程は、酸または酸のブレンドを用いた酸性洗浄を含み、前記酸は、有機または無機酸である。好適な酸の例は、酢酸、クエン酸または塩酸である。あるいは、金属または金属酸化物表面を、プラズマ処理工程に供してもよい。
【0157】
好ましい態様において、洗浄工程とSAM処理を組み合わせて単一の工程とする。たとえば、この組み合わせた工程は、本発明による調合物であって、先に定義した通りの前駆体化合物と先に定義した通りの酸とを含む調合物を金属または金属酸化物表面に塗布することによって行ってもよい。
【0158】
あるいは、洗浄工程とSAM処理を、2つの別々の工程において連続して行ってもよい。
【0159】
浸漬時間、即ち、調合物を金属または金属酸化物表面に塗布する時間は、好ましくは少なくとも5秒で72時間以下である。
【0160】
本発明の電子デバイス、好ましくは有機電子デバイスの他の層の調製において、標準的な方法を使用して上記のような様々な層および材料を堆積させてもよい。
【0161】
好ましくは、本発明の電子デバイスの調製における個々の機能層、たとえば有機半導体層または絶縁体層などの堆積は、溶液処理技法を使用して行われる。これは、たとえば、有機半導体材料または誘電材料を含み、1種以上の有機溶媒をさらに含む調合物、好ましくは溶液を先に堆積させた層の上に塗布し、その後に溶媒を蒸発させることによって行うことができる。好ましい堆積技法としては、ディップコーティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、活版印刷、スクリーン印刷、ドクターブレードコーティング、ローラー印刷、逆ローラー印刷、オフセットリソグラフィ印刷、フレキソ印刷、ウェブ印刷、スプレーコーティング、ブラシコーティング、またはパッド印刷が挙げられるが、これに限定されない。非常に好ましい溶液堆積技法は、スピンコーティング、フレキソ印刷およびインクジェット印刷である。
【0162】
本発明によるOFETデバイスにおいて、ゲート絶縁体層用の誘電材料は、好ましくは有機材料である。誘電体層は、周囲環境での処理を許容する溶液コーティングとすることが好ましいが、様々な真空堆積技法によって堆積させることも可能である。誘電体は、パターン化される場合、中間層絶縁の機能を果たしても、OFET用のゲート絶縁体として作用してもよい。好ましい堆積技法としては、ディップコーティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、活版印刷、スクリーン印刷、ドクターブレードコーティング、ローラー印刷、逆ローラー印刷、オフセットリソグラフィ印刷、フレキソ印刷、ウェブ印刷、スプレーコーティング、ブラシコーティングまたはパッド印刷が挙げられるが、これに限定されない。インクジェット印刷が、高解像度の層およびデバイスの調製を可能とするので、特に好ましい。任意に、誘電材料を架橋または硬化させて、溶媒に対するより良好な耐性および/もしくは構造的完全性を達成し、ならびに/またはパターン化を改善する(フォトリソグラフィ)ことも可能である。好ましいゲート絶縁体は、有機半導体に低誘電率界面をもたらすものである。
【0163】
好適な溶媒は、炭化水素溶媒、芳香族溶媒、脂環式環状エーテル、環状エーテル、酢酸塩、エステル、ラクトン、ケトン、アミド、環状炭酸塩、または上記のものの多成分混合物が挙げられるがこれに限定されない溶媒から選択される。好ましい溶媒の例としては、シクロヘキサノン、メシチレン、キシレン、2-ヘプタノン、トルエン、テトラヒドロフラン、MEK(メチルエチルケトン)、MAK(2-ヘプタノン)、シクロヘキサノン、4-メチルアニソール、ブチル-フェニルエーテルおよびシクロヘキシルベンゼンが挙げられ、非常に好ましくはMAK、ブチルフェニルエーテルまたはシクロヘキシルベンゼンである。
【0164】
調合物中のそれぞれの機能材料(有機半導体材料またはゲート誘電材料)の合計濃度は、調合物(即ち、機能材料と溶媒)の総重量に対して好ましくは0.1~30重量%、好ましくは0.1~5重量%である。特に、高沸点を有する有機ケトン溶媒が、インクジェットおよびフレキソ印刷用の溶液への使用に有利である。
【0165】
堆積法としてスピンコーティングを使用する場合、OSCまたは誘電材料をたとえば1000乃至2000rpmでたとえば30秒間スピンさせて、誘電体の場合は約100nm乃至約2000nm、半導体の場合は約5nm~約300nmの好ましい層厚を有する層を得る。スピンコーティングの後、膜を高温で加熱して残存する揮発性溶媒を全て除去することができる。
【0166】
任意に、照射への曝露後、誘電材料層を、たとえば70℃~130℃の温度で、たとえば1~30分間、好ましくは1~10分間アニーリングする。高温でのアニーリング工程を使用して、誘電材料の架橋性基を光線照射に暴露することにより誘発された架橋反応を完了させることができる。
【0167】
上記および下記の方法工程は全て、先行技術に記載され、当業者に周知の公知の技法および標準的な設備を使用して行うことができる。たとえば、光照射工程において、市販のUVランプおよびフォトマスクを使用でき、アニーリング工程は、オーブン中またはホットプレート上で行うことができる。
【0168】
自己集合単分子層の堆積に続いて、好ましくは洗浄工程もしくは乾燥工程、またはその両方が遂行される。
【0169】
トップゲートOFETである有機電子デバイスの場合、工程(c)に続き、前記方法は、
(d)ここで定義する通りの誘電材料を、ゲート絶縁体層として有機半導体層上に堆積させる工程;
(e)ゲート電極をゲート絶縁体層上に堆積させる工程;および
(f)任意に、不動態化層をゲート電極上に堆積させる工程
を追加で、好ましくはこのような順序で含んでもよい。
【0170】
ボトムゲートOFETである有機電子デバイスの場合、工程(a)の前に、方法は、
(o)ゲート電極を基板上に堆積させる工程;および
(o’)誘電材料をゲート絶縁体層としてゲート電極上に堆積させる工程
をさらに含んでもよい。
【0171】
任意に、工程(d)に続き、方法は、
(d)不動態化層を有機半導体層上に堆積させる工程
をさらに含んでもよい。
【0172】
さらなる層を、業界において周知の標準的な方法によって堆積させてもよい。デバイスの液体コーティングが真空堆積技法より望ましい。溶液堆積法がとりわけ好ましい。好ましい堆積技法としては、ディップコーティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、ノズル印刷、活版印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、ドクターブレードコーティング、ローラー印刷、逆ローラー印刷、オフセットリソグラフィ印刷、乾式オフセットリソグラフィ印刷、フレキソ印刷、ウェブ印刷、スプレーコーティング、カーテンコーティング、ブラシコーティング、スロット染料コーティングまたはパッド印刷が挙げられるが、これに限定されない。
【0173】
好ましくは、ゲート絶縁体層は、たとえばスピンコーティング、ドクターブレーディング、ワイヤーバーコーティング、スプレーもしくはディップコーティング、または他の公知の方法により、絶縁体材料と、1種以上のフルオロ原子を有する1種以上の溶媒(フルオロ溶媒)、好ましくはペルフルオロ溶媒とを含む調合物から堆積させる。好適なペルフルオロ溶媒は、たとえばFC75(登録商標)(Acrosから入手可能、カタログ番号12380)である。他の好適なフルオロポリマーおよびフルオロ溶媒は、先行技術において公知であり、たとえばペルフルオロポリマーTeflonAF(登録商標)1600もしくは2400(DuPont製)またはFluoropel(登録商標)(Cytonix製)またはペルフルオロ溶媒FC43(登録商標)(Acros、番号12377)などである。
【0174】
[例]
本願の利点を、下記の非限定例により例示する。
【0175】
他に言及しない限り、溶媒、塩、有機半導体材料などは全て、商業的供給源、たとえばSigmaAldrichまたはMerck KGaA、ドイツダルムシュタットなどから得た。
【0176】
留意すべきことであるが、F5C6-SiCl3は加水分解に敏感であり、したがって、湿度や溶媒中に残留水のない環境で保管するのが最適である。
【0177】
トランジスタデバイスの電気的特性評価は、コンピュータ制御のAgilent4155C半導体パラメータアナライザを使用して、周囲空気雰囲気中で行った。飽和領域での電荷キャリア移動度(μsat)を化合物について計算した。電界効果移動度を、
等式(eq.1):
【0178】
【0179】
(式中、Wは、チャネル幅、Lは、チャネル長、Ciは、絶縁層の静電容量、Vgは、ゲート電圧、V0は、ターンオン電圧、μsatは、飽和領域での電荷キャリア移動度である)を使用して飽和領域(Vd>(Vg-V0))において計算した。ターンオン電圧(V0)は、ソース-ドレイン電流の発生として判定した。
【0180】
例1-仕事関数の測定
仕事関数は、自己集合単分子層(SAM)がある電極とない電極について、ケルビンプローブを使用して判定し、ここで、自己集合単分子層は、ガラス基板上のそれぞれの電極を、F5C6-SiCl3のイソプロパノール(iPr-OH)溶液に浸漬することによって調製した。したがって、理論によって拘束されることを望むものではないが、そのような溶液は、おそらくは活性種としてF5C6-Si(O-iPr)3を主として含む。それぞれの結果を表1に示す。
【0181】
【0182】
例2-デバイス調製
ガラス上のインジウムスズ酸化物(ITO)電極をスピンコーターに入れ、F5C6-SiCl3のイソプロパノール(iPr-OH)溶液と1分間接触させた。したがって、理論によって拘束されることを望むものではないが、そのような溶液は、おそらくは活性種としてF5C6-Si(O-iPr)3を主として含み、それにより自己集合単分子層を形成する。過剰な溶液をスピンオフし、続いてイソプロパノールでのすすぎを行った。次いで、結果として得られた自己集合単分子層の上に、インダセノジチオフェンとベンゾチアジアゾールの誘導体を含む有機半導体材料の層を堆積させた。
【0183】
それぞれの移動度を、以下の表2に示す。
【0184】
例3-デバイス調製(比較用)
例2の調製を繰り返したが、自己集合単分子層の調製に、イソプロパノール中のF5C6-SiCl3に代えてイソプロパノール中のパラクロロベンゼンホスファート(下記の式(III)を参照)を使用した点が異なる。
【0185】
【0186】
それぞれの移動度を、以下の表2に示す。
【0187】