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特許7480174一酸化炭素耐性アノードを備えた水素ポンピングセルと統合されたシフト反応器とを有する固体酸化物形燃料電池システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】一酸化炭素耐性アノードを備えた水素ポンピングセルと統合されたシフト反応器とを有する固体酸化物形燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240430BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20240430BHJP
   C01B 3/26 20060101ALI20240430BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240430BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04 J
H01M8/04014
C01B3/26
H01M8/12 101
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021559390
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 US2020026918
(87)【国際公開番号】W WO2020210167
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】62/833,475
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514116578
【氏名又は名称】ブルーム エネルギー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェインガートナー,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ゴットマン,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナダス,ジャヤクマール
(72)【発明者】
【氏名】カルプパイア,チョッカリンガム
(72)【発明者】
【氏名】バレンティン,アルネ
(72)【発明者】
【氏名】ベンカタラマン,スワミナサン
(72)【発明者】
【氏名】ペリー,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,グレッグ
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-503790(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0241612(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0011757(US,A1)
【文献】米国特許第8852820(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2005/0164051(US,A1)
【文献】特開2010-282783(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0196893(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0248111(US,A1)
【文献】米国特許第7132182(US,B2)
【文献】米国特許第8673510(US,B2)
【文献】特開2008-108620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
C01B 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックと、
アノードテールガス酸化器(ATO)と、
それぞれがカソードとアノードとの間に配置された電解質を含む、第1の電気化学式水素ポンプセパレータ及び第2の電気化学式水素ポンプセパレータと、
前記燃料電池スタックの燃料排気出口をスプリッタに流体的に接続している燃料排気導管と、
前記スプリッタの出口を前記第1の電気化学式水素ポンプセパレータのアノード入口に流体的に接続している第1の分離導管と、
前記第1の電気化学式水素ポンプセパレータのアノード出口を前記第2の電気化学式水素ポンプセパレータのアノード入口に流体的に接続している第2の分離導管と、
前記第1の電気化学式水素ポンプセパレータのカソード出口を前記アノードテールガス酸化器に流体的に接続しているATO吸入導管と、
前記第2の電気化学式水素ポンプセパレータのカソード出口を前記燃料電池スタックの燃料入口に流体的に接続している水素導管と、
前記第2の電気化学式水素ポンプセパレータのアノード出口を二酸化炭素使用又は貯蔵装置に流体的に接続している副生成物導管と
を備える燃料電池システム。
【請求項2】
前記第1の分離導管は、前記燃料電池スタックによって生じた燃料排気を前記第1の電気化学式水素ポンプセパレータに供給するように構成されており、
前記第1の電気化学式水素ポンプセパレータは、前記供給された燃料排気から水素を分離するように構成されており、
前記ATO吸入導管は、前記第1の電気化学式水素ポンプセパレータから出された水素を前記ATOに供給するように構成されている、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記第2の分離導管は、前記第1の電気化学式水素ポンプセパレータから出された燃料排気を、前記第2の電気化学式水素ポンプセパレータに供給するように構成されており、
前記第2の電気化学式水素ポンプセパレータは、前記供給された燃料排気から水素を分離するように構成されており、
前記水素導管は、前記第2の電気化学式水素ポンプセパレータから出された水素を、前記燃料電池スタックに供給される燃料吸入流に供給するように構成されており、
前記副生成物導管は、前記第2の電気化学式水素ポンプセパレータから出された二酸化炭素を含む副生成物流を、前記二酸化炭素使用又は貯蔵装置に提供するように構成されている、
請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記二酸化炭素使用又は貯蔵装置は、
前記二酸化炭素の流れから水を除去するように構成された乾燥器と、
前記乾燥器から出された二酸化炭素をドライアイスとして貯蔵するように構成された極低温貯蔵装置と
を備える、請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記燃料電池スタックの燃料入口を燃料源に流体的に接続するように構成された燃料吸入導管と、
前記スプリッタの出口を前記燃料吸入導管に流体的に接続しているリサイクル導管と、
前記水素導管及び前記リサイクル導管に動作可能に接続された混合器であって、前記第2の電気化学式水素ポンプセパレータによって出された水素を、前記スプリッタによって供給された燃料排気と混合するように構成された混合器と
をさらに備える、請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記燃料排気導管に動作可能に接続された水性ガスシフト反応器と、
前記リサイクル導管に動作可能に接続されたベンチュリ装置と
をさらに備える、請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記第1の電気化学式水素ポンプセパレータを定電流モードで作動させて、前記ATOに供給される水素の量を制御することと、
受け入れた前記燃料排気から前記水素の実質的にすべてを取り除くように、前記第2の電気化学式水素ポンプセパレータを定電圧モードで作動させることと
を含む請求項3に記載の燃料電池システムを運転する方法。
【請求項8】
ホットボックスと、
前記ホットボックス内に配置された燃料電池スタックと、
前記ホットボックス内に配置されたアノードテールガス酸化器(ATO)と、
燃料源を前記燃料電池スタックの入口に流体的に接続している燃料吸入導管と、
前記燃料電池スタックによって生じて前記ホットボックスから出された燃料排気から水を凝縮するように構成された、前記ホットボックスの外側に配置された燃料排気凝縮器と、
前記燃料排気凝縮器から受け入れた燃料排気から水を除去するように構成された燃料排気分離器と、
前記燃料電池スタックの燃料排気出口を前記燃料排気凝縮器に流体的に接続している燃料排気導管と、
前記燃料排気分離器を前記燃料吸入導管に流体的に接続しているリサイクル導管と、
前記リサイクル導管を前記ATOに流体的に接続しているATO吸入導管と、
前記リサイクル導管を通って前記ATO吸入導管に入る燃料排気流れを選択的に制御するように構成されたリサイクル弁と
を備える燃料電池システム。
【請求項9】
前記リサイクル導管を通る燃料排気流れの方向に関して前記リサイクル弁の上流側の、前記リサイクル導管上に配置されたブリード弁と、
前記リサイクル導管を前記ATO吸入導管に流体的に接続しているブリード導管と
をさらに備え、
前記ブリード弁は、前記燃料排気から不純物をパージするか、又は前記燃料電池スタック内のアノード圧力とカソード圧力とを等しくするために背圧を与えるように構成されている、
請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記ホットボックス内に配置され、前記燃料電池スタックから出る燃料排気を使用して前記燃料吸入導管内の燃料吸入流を加熱するように構成された燃料熱交換器と、
前記ホットボックス内に配置され、前記燃料電池スタックに供給される空気を使用して前記燃料熱交換器から出る燃料排気を冷却するように構成されたアノード排気冷却器と
をさらに備える、請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記リサイクル弁を作動させて、前記燃料電池システムの起動運転中には前記ATOに燃料排気を供給し、前記燃料電池システムの定常状態運転中には前記燃料排気が前記ATOに供給されないようにすることを含む、請求項8に記載の燃料電池システムを運転する方法。
【請求項12】
前記燃料排気分離器は、前記燃料排気の含水量を12vol%以下に低減し、
前記燃料吸入導管内の燃料吸入流が水素燃料流であり、前記燃料排気は実質的に炭素を含まない、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記燃料排気凝縮器を冷却するために、前記ホットボックス又は電力調整サブシステムの少なくとも1つを含むキャビネット内で再循環空気を使用することを含む、請求項8に記載の燃料電池システムを運転する方法。
【請求項14】
ホットボックスと、
前記ホットボックス内に配置された燃料電池スタックと、
前記ホットボックス内に配置されたアノードテールガス酸化器(ATO)と、
燃料源を前記燃料電池スタックの入口に流体的に接続している燃料吸入導管と、
前記ホットボックスの外側に配置された外部アノード排気冷却器と、
前記燃料電池スタックの燃料排気出口を前記外部アノード排気冷却器に流体的に接続している燃料排気導管と、
前記外部アノード排気冷却器を前記燃料吸入導管に流体的に接続しているリサイクル導管と、
前記リサイクル導管に流体的に接続される燃料排気処理導管と、
前記燃料排気処理導管に流体的に接続され、前記燃料排気処理導管から受け入れた燃料排気を、水、二酸化炭素、及び水素の流れに分離するように構成されたガス分離器と
を備える燃料電池システム。
【請求項15】
前記ガス分離器が、
前記受け入れた燃料排気を冷却するように構成された熱交換器と、
前記冷却された燃料排気を圧縮するように構成された圧縮器と、
前記圧縮された燃料排気から水を除去するように構成された水分離器と、
前記圧縮された燃料排気を凝縮して液体二酸化炭素を形成するように構成された二酸化炭素凝縮器と、
前記凝縮された燃料排気中の水素から前記液体二酸化炭素を分離するように構成された蒸留カラムと
を備える、請求項14に記載の燃料電池システム。
【請求項16】
前記ガス分離器の水素出口を前記燃料吸入導管に流体的に接続している水素リサイクル導管と、
前記水素リサイクル導管を前記ATOに流体的に接続しているATO吸入導管と、
前記水素リサイクル導管と前記ATO吸入導管を通る水素流れを選択的に制御するように構成されたスプリッタと
をさらに備える、請求項14に記載の燃料電池システム。
【請求項17】
前記ATO吸入導管に動作可能に接続されるATO混合器と、
前記燃料排気導管を前記ATO混合器に流体的に接続しているバイパス導管と、
前記バイパス導管及び前記燃料排気導管を通る燃料排気流れを選択的に制御するように構成されたバイパス弁と
をさらに備え、
前記ATO混合器は、前記燃料電池スタックから出る空気排気を、前記バイパス導管によって供給される燃料排気又は前記ATO吸入導管によって供給される水素の少なくとも1つと混合するように構成されている、
請求項16に記載の燃料電池システム。
【請求項18】
前記燃料排気導管を通る燃料排気流れの方向に関して前記バイパス弁の上流側で、前記燃料排気導管に動作可能に接続される水性ガスシフト(WGS)反応器をさらに備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記ホットボックス内に配置され、前記燃料電池スタックから出る燃料排気を使用して前記燃料吸入導管内の水素を加熱するように構成された燃料熱交換器と、
前記ホットボックス内に配置され、前記燃料電池スタックに供給される空気を使用して前記燃料熱交換器から出る燃料排気を冷却するように構成されたアノード排気冷却器と、
燃料排気流れの方向において前記アノード排気冷却器の下流側の前記燃料排気導管に配置され、前記リサイクル導管及び前記燃料排気処理導管に流体的に接続されるスプリッタと
をさらに備える、請求項14に記載のシステム。
【請求項20】
前記ホットボックス内に配置され、前記燃料電池スタックから出る燃料排気を使用して前記燃料吸入導管内の水素を加熱するように構成された燃料熱交換器と、
前記ホットボックス内に配置され、前記燃料電池スタックに供給される空気を使用して前記燃料熱交換器から出る燃料排気を冷却するように構成されたアノード排気冷却器と、
前記燃料熱交換器と前記アノード排気冷却器との間の前記燃料排気導管に配置され、前記燃料排気処理導管に流体的に接続されるスプリッタと
をさらに備える、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してガス分離の分野に関し、より具体的には電気化学的燃料排気燃料リカバリを備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料に蓄えられたエネルギーを電気エネルギーに高効率で変換できる電気化学装置である。高温燃料電池には、固体酸化物形燃料電池と溶融炭酸塩形燃料電池が含まれる。これらの燃料電池は、水素及び/又は炭化水素燃料を使用して作動することができる。電気エネルギーを入力として使用して酸化燃料を未酸化燃料に還元できるといった、逆の動作も可能な、固体酸化物形再生燃料電池などの、燃料電池の部類もある。
【発明の概要】
【0003】
本開示の様々な実施形態によると、燃料電池システムは、燃料電池スタック;アノードテールガス酸化器(ATO);それぞれがカソードとアノードとの間に配置された電解質を含む、第1及び第2の電気化学式水素ポンプセパレータ;燃料電池スタックの燃料排気出口をスプリッタに流体的に接続する燃料排気導管;スプリッタの出口を第1の水素ポンプセパレータのアノード入口に流体的に接続する第1の分離導管;第1の水素ポンプセパレータのアノード出口を第2のポンプセパレータのアノード入口に流体的に接続する第2の分離導管;第1の電気化学式ポンプセパレータのカソード出口をアノードテールガス酸化器に流体的に接続するATO吸入導管;第2の電気化学式ポンプセパレータのカソード出口を燃料電池スタックの燃料入口に流体的に接続する水素導管;及び、第2の電気化学式ポンプセパレータのアノード出口を二酸化炭素使用又は貯蔵装置に流体的に接続する副生成物導管を含む。
【0004】
本開示の様々な実施形態によると、燃料電池システムは、ホットボックス;ホットボックス内に配置される燃料電池スタック;ホットボックス内に配置されるアノードテールガス酸化器(ATO);燃料源を燃料電池スタックの入口に流体的に接続する燃料吸入導管;燃料電池スタックによって生じ、ホットボックスから排出される燃料排気から水を凝縮するように構成された、ホットボックスの外側に配置される燃料排気凝縮器;燃料排気凝縮器から受け入れた燃料排気から液体水を除去するように構成された燃料排気分離器;燃料電池スタックの燃料排気出口を燃料排気凝縮器に流体的に接続する燃料排気導管;燃料排気分離器を燃料吸入導管に流体的に接続するリサイクル導管;リサイクル導管をATOに流体的に接続するATO吸入導管;及び、リサイクル導管を通ってATO吸入導管に入る燃料排気流れを選択的に制御するように構成されたリサイクル弁を備える。
【0005】
本開示の様々な実施形態によると、燃料電池システムは、ホットボックス;ホットボックス内に配置される燃料電池スタック;ホットボックス内に配置されるアノードテールガス酸化器(ATO);燃料源を燃料電池スタックの入口に流体的に接続する燃料吸入導管;ホットボックスの外側に位置する外部アノード排気冷却器;燃料電池スタックの燃料排気出口を外部アノード排気冷却器に流体的に接続する燃料排気導管;外部アノード排気冷却器を燃料吸入導管に流体的に接続するリサイクル導管;リサイクル導管に流体的に接続される燃料排気処理導管;及び、燃料排気処理導管に流体的に接続され、且つ、燃料排気処理導管から受け入れた燃料排気を液体水、二酸化炭素、及び水素の流れに分離するように構成されたガス分離器を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、燃料電池システムの第1の比較実施形態の燃料電池システムの概略図である。
図2図2は、燃料電池システムの第2の比較実施形態の燃料電池システムの概略図である。
図3図3は、本開示の様々な実施形態による、燃料電池システムの概略図である。
図4図4は、本開示の様々な実施形態による、燃料電池システムの概略図である。
図5A図5Aは、本開示の様々な実施形態による、燃料電池システムの概略図である。
図5B図5Bは、本開示の様々な実施形態による、燃料電池システムの概略図である。
図5C図5Cは、本開示の様々な実施形態による、燃料電池システムの概略図である。
図6図6は、本開示の様々な実施形態による、燃料電池システムの概略図である。
図7図7は、本開示の様々な実施形態による、燃料電池システムの概略図である。
図8図8は、本開示の様々な実施形態による、水性ガスシフト反応器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に記載されるように、例示の実施形態及び/又は本発明の例示の実施形態が示される添付の図面を参照して、本開示の様々な態様を説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、図面に示される又は本明細書に記載される例示の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。開示される様々な実施形態は、その特定の実施形態に関連して説明される特定の特徴、要素、又はステップを含み得ることが理解されよう。特定の特徴、要素又はステップは、1つの特定の実施形態に関連して説明されているが、様々な示されない組み合わせ又は並べ替えにおいて代替の実施形態と交換または組み合わされ得ることも理解されよう。
【0008】
要素又は層が別の要素又は別の層「の上にある」又は「に接続される」と言及される場合、それは他の要素又は他の層の直接上にあり得る又は直接接続され得るか、あるいは、介在する要素又は層が存在する可能性があることも理解されよう。対照的に、要素が別の要素又は別の層「の直接上にある」又は「に直接接続される」と言及される場合、介在する要素又は層は存在しない。本開示の目的のために、「X、Y、及びZの少なくとも1つ」とは、Xのみ、Yのみ、Zのみ、又は2つ以上の項目X、Y、及びZの任意の組み合わせ(例えば、XYZ、XYY、YZ、ZZ)として解釈され得ることが理解されよう。
【0009】
本明細書では、範囲は、「約」1つの特定の値から、及び/又は、「約」他の特定の値まで、として表現され得る。そのような範囲が表現されるとき、例としては、1つの特定の値から、及び/又は、他の特定の値まで、が含まれる。同様に、値が、先行する「約」又は「実質的に」を使用することにより、近似値として表される場合、特定の値は別の側面を形成すると理解されよう。いくつかの実施形態では、「約X」の値は、X±1%の値を含み得る。範囲のそれぞれの端点は、他方の端点に関連して及び他方の端点とは独立しての両方において有意であることがさらに理解されよう。
【0010】
本明細書において、「燃料排気」という用語は、燃料電池スタックのアノードから排出される排気を指す場合があり、スタックに供給される未反応の燃料を含む場合がある。「空気排気」という用語は、燃料電池スタックのカソードから排出される排気、及び/又はアノードテールガス酸化器から排出される排気を指す場合がある。
【0011】
本発明の第1及び第2の比較実施形態は、電気化学式ポンプセパレータが、固体酸化物形燃料電池(SOFC)システム等の燃料電池システムとともに、どのように使用されるかを示す。他の燃料電池システムも使用できることに留意されたい。
【0012】
第1の実施形態のシステムでは、燃料電池スタックに供給される燃料吸入流を加湿するために、燃料加湿器が用いられる。第2の実施形態のシステムでは、燃料加湿器を省いてもよい。燃料電池スタックの燃料排気流の一部が、燃料吸入流を加湿するために燃料吸入流へと直接リサイクルされる。燃料電池スタックの燃料排気流の別の部分はセパレータに供給され、その後、分離された水素が燃料吸入流に供給される。
【0013】
図1は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,101,307B2に開示される燃料電池システム100を概略的に示したものである。システム100は、固体酸化物形燃料電池スタックなどの燃料電池スタック101を含む(イットリア安定化ジルコニア(YSZ)などのセラミック電解質、ニッケル-YSZサーメットなどのアノード電極、及びランタンストロンチウムマンガナイトなどのカソード電極を含むスタックの1つの固体酸化物形燃料電池を表すように概略的に示されている)。
【0014】
システム100は、また、燃料排気流から水素を電気化学的に分離する電気化学式ポンプセパレータ150を含む。ポンプセパレータ150は、高分子電解質を含む、任意の適切なプロトン交換膜装置を備えることができる。水素は、電解質の両側に配置されたアノード電極とカソード電極との間に電位差が与えられた状態で、高分子電解質を通って拡散する。好ましくは、ポンプセパレータ150は、高温低水和イオン交換膜セルのスタックなど、一酸化炭素耐性電気化学的セルのスタックを含む。このタイプのセルは、例えば、アノード電極とカソード電極との間に配置された、ポリベンゾイミダゾール(PBI)膜などの非フッ素化イオン交換アイオノマー膜を含む。膜には、硫酸やリン酸などの酸がドープされる。このようなセルの例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国公開出願US2003/0196893A1に開示されている。これらのセルは、一般的には、約100℃~約200℃の温度範囲で作動する。したがって、システム100内の熱交換器は、燃料排気流を、約120℃~約200℃の温度、例えば約160℃~約190℃の温度に維持することが好ましい。
【0015】
システム100は、また、燃料電池スタック101の燃料排気出口103をポンプセパレータ150のアノード入口151に流体的に接続している第1の燃料排気導管153を含む。システム100は、また、スタック101の燃料入口105を外部燃料源に流体的に接続している燃料吸入導管111に、ポンプセパレータ150のカソード出口158を流体的に接続している生成物導管157を含む。システム100は、また、ポンプセパレータ150のアノード出口152をアノードテールガス酸化器(ATO)140又は大気ベントに流体的に接続しているセパレータ排気導管159を含む。好ましくは、システム100には、作動中、燃料排気を圧縮し、圧縮された燃料排気流をポンプセパレータ150に供給するコンプレッサがない。
【0016】
システム100は、燃料吸入導管111とセパレータ排気導管159とに動作可能に接続された燃料加湿器119をさらに含む。作動中、燃料加湿器119は、セパレータ排気導管159に排出されたセパレータ排気に含まれる水蒸気を用いて、リサイクルされた水素を含む燃料導管111内の燃料を加湿する。燃料加湿器119は、例えば、ともにその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,106,964号及び米国出願シリアル番号10/368,425に記載されるように、Nafion(登録商標)膜加湿器等の高分子膜加湿器、エンタルピーホイール、又は複数の水吸着床を含むことができる。例えば、1つの好適なタイプの加湿器は、Perma Pure LLCから入手可能な、水蒸気及びエンタルピー移動のNafion(登録商標)系透水性膜を含む。燃料加湿器119は、水蒸気及びエンタルピーを燃料排気流から燃料吸入流に受動的に移して、燃料吸入流中の水蒸気の炭素に対する比を2~2.5にする。燃料吸入導管111内の燃料の温度は、燃料加湿器119によって、約80℃~約90℃まで上昇させることができる。
【0017】
システム100は、また、燃料吸入導管111と燃料排気導管153とに動作可能に接続された伝熱式熱交換器121(例えば、アノード復熱器)を含む。熱交換器121は、燃料排気導管153内の燃料排気から取り出した熱を用いて、燃料吸入導管111内の燃料を加熱する。熱交換器121は、流入する燃料の温度上昇を促進し、燃料排気の温度を下げ、凝縮器内でさらに冷却されて、燃料加湿器119を損傷させないようにする。
【0018】
燃料電池が外部燃料改質タイプの電池である場合、システム100は燃料改質器123を含む。改質器123は、炭化水素燃料吸入流を水素及び一酸化炭素を含む燃料流へと改質し、これがその後スタック101に供給される。その全体が参照により本明細書に組み込まれる2004年12月2日出願の米国特許出願シリアル番号11/002,681に記載されるように、改質器123は、燃料電池スタック101内で生成された熱によって、及び/又は、任意選択のATO140で生成された熱によって、放射的に、対流によって、及び/又は、伝導的に加熱され得る。あるいは、スタック101が内部改質タイプの電池を含み、改質が主にスタックの燃料電池(セル)内で行われる場合、外部燃料改質器123は省くことができる。
【0019】
システム100は、また、スタック101の空気入口107に流体的に接続される空気吸入導管130を含む。任意選択で、システム100は、空気吸入導管130に動作可能に接続されるとともに、燃料排気導管153内の燃料排気から取り出した熱を用いて空気吸入導管130内の空気を予熱するように構成された空気予熱熱交換器125(アノード排気冷却器と呼ぶこともある)を含む。必要に応じて、この熱交換器125を省略してもよい。
【0020】
システム100は、また、スタック101の空気排気出口109をATO140に流体的に接続している空気排気導管132を含む。システム100は、好ましくは、空気吸入導管130と空気排気導管132とに動作可能に接続された空気熱交換器127を含む。この熱交換器127は、さらに、空気排気導管132内の燃料電池スタック空気排気(すなわち、酸化剤又はカソード排気)から取り出した熱を用いて、空気吸入導管130内の空気を加熱する。予熱熱交換器125が省略される場合には、空気は、ブロワ又は他の空気取り入れ装置によって熱交換器127に直接供給される。
【0021】
システム100は、また、任意選択で、生成物導管157と空気吸入導管130とに動作可能に接続された水素冷却熱交換器129を含む。熱交換器129は、空気吸入導管130を通って流れる空気を使用して、ポンプセパレータ150から出る分離された水素から熱を取り出す。
【0022】
システム100は、また、燃料排気導管153に動作可能に接続される任意選択の水性ガスシフト(WGS)反応器128を含むことができる。WGS反応器128は、燃料排気中の水の少なくとも一部を遊離水素(H)へと変換する任意の適切な装置であってよい。例えば、WGS反応器128は、燃料排気流中の一酸化炭素と水蒸気の一部又はすべてを二酸化炭素と水素に変換する触媒を含む管又は導管を備えることができる。したがって、WGS反応器128は、燃料排気中の水素の量を増加させる。触媒は、酸化鉄又はクロム助触媒酸化鉄触媒(chromium-promoted iron oxide catalyst)などの、任意の適切な触媒であってよい。WGS反応器128は、燃料熱交換器121と空気予熱熱交換器125との間で、燃料排気導管153に動作可能に接続することができる。
【0023】
システム100は、次のように作動することができる。燃料が、燃料吸入導管111を通って燃料電池スタック101に供給される。燃料は、任意の適切な炭化水素燃料を含むことができ、メタン、メタンとともに水素や他のガスを含む天然ガス、プロパン、又はその他のバイオガス、あるいは、一酸化炭素などの炭素燃料、メタノールなどの酸素化炭素含有ガス、又は、他の炭素含有ガスと、水蒸気、Hガス又はそれらの混合物等の水素含有ガスとの混合物を含むが、これらに限定されない。例えば、上記混合物は、石炭又は天然ガスの改質に由来する合成ガスを含むことができる。
【0024】
燃料流が加湿器119を通過するとき、燃料流は加湿される。次に、加湿された燃料流は、燃料熱交換器121を通過し、そこで、加湿された燃料が燃料電池スタックの燃料排気によって加熱される。次に、加熱され加湿された燃料は、好ましくは外部改質器である燃料改質器123に供給される。例えば、燃料改質器123は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる2004年12月2日出願の米国特許出願シリアル番号11/002,681に記載の改質器を含んでよい。
【0025】
燃料改質器123は、炭化水素燃料を部分的又は完全に改質して炭素含有及び遊離水素含有燃料を形成することのできる、任意の適切な装置であってよい。例えば、燃料改質器123は、炭化水素ガスを、遊離水素と炭素含有ガスとのガス混合物に改質することができる任意の適切な装置であってよい。例えば、燃料改質器123は、触媒を被覆した通路を含むことができ、そこで、天然ガスなど、加湿されたバイオガスが水蒸気-メタン改質反応を介して改質されて、遊離水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、及び任意選択で残りの量の未改質のバイオガスを形成する。次に、遊離水素及び一酸化炭素は、燃料電池スタック101の燃料(すなわち、アノード)入口105に供給される。したがって、燃料吸入導管111内の燃料の流れ方向に関して、加湿器119は熱交換器121の上流に位置し、熱交換器121は改質器123の上流に位置し、改質器123はスタック101の上流に位置する。
【0026】
空気吸入導管130を通してスタック101に供給される、空気又は他の酸素含有ガス(すなわち、酸化剤)は、空気排気導管132内のカソード排気を使用して、空気熱交換器127によって加熱される。必要に応じて、空気吸入導管130内の空気を、空気をスタック101に供給する前に、水素冷却熱交換器129に通して、及び/又は、空気予熱熱交換器125に通して、空気流の温度をさらに上げることもできる。
【0027】
作動中、スタック101は、供給された燃料と空気を使用して電気を生成し、燃料排気と空気排気を生成する。燃料排気には、水素、水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンなどの未反応の炭化水素燃料、及びその他の反応副産物や不純物が含まれ得る。燃料排気は、スタック101に供給される燃料の約25%を含み得る。
【0028】
燃料排気は、燃料排気出口103から排出され、燃料排気導管153によってポンプセパレータ150に供給される。ポンプセパレータ150は、燃料排気に含まれた水素(H)の少なくとも一部を電気化学的に分離する。分離された水素は、カソード出口158から排出され、生成物導管157によって燃料吸入導管111に供給され、そこで水素は、入ってくる新鮮な燃料と混合される。好ましくは、水素は、加湿器119の上流側の燃料吸入導管111に供給される。
【0029】
この燃料排気流は、まず、熱交換器121に供給され、ここで、入ってくる燃料の温度を上げながら、自身の温度を、好ましくは200℃未満に下げる。WGS反応器128と空気予熱熱交換器125が存在する場合には、燃料排気はWGS反応器128を通って供給され、水蒸気の少なくとも一部と、残留する一酸化炭素の大部分を、二酸化炭素と水素に変換する。その後、燃料排気の温度は、熱交換器125を通過する間に、空気吸入導管130内の空気に熱を伝達することによってさらに下げられる。燃料排気の温度は、例えば、約90~110℃まで下げることができる。
【0030】
燃料排気は、その後、導管153を経て、ポンプセパレータ150のアノード入口151に供給される。ポンプセパレータ150は、例えば燃料排気流中の水素の約85%といった、燃料排気からの水素の大部分を分離するように構成することができる。特に、水素は、ポンプセパレータ150内のセルの電解質を通って拡散し、同時に、燃料排気中の水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、及び残りの炭化水素ガスは、排気導管159によって加湿器119に供給される。
【0031】
燃料加湿器119では、燃料排気中の水蒸気の一部が燃料吸入導管111内の燃料に移されて燃料を加湿する。燃料は80℃~90℃の露点まで加湿することができる。次に、燃料排気流の残りは、スタック101からの空気(すなわち、カソード)排気と共にATO140に供給され、そこでガスが燃焼されて低品質な熱を供給する。ATO140からの熱は、改質器123を加熱するために使用され得るか、システム100の他の部分に供給され得るか、又は、建物暖房システム等の、システム100の外部の装置に供給され得る。
【0032】
ポンプセパレータ150によって分離された水素は、カソード出口158から排出され、生成物導管157によって燃料吸入導管111に供給され、そこで、入ってくる燃料と混合される。必要に応じて、水素は、燃料吸入導管111に供給される前に、熱交換器129で冷却することができ、そこで水素流は空気吸入導管130内の空気と熱を交換する。水素の温度は、燃料吸入導管111に供給される前に、熱交換器129で下げられる。したがって、炭化水素燃料は、ポンプセパレータ150を用いてアノード排気ガスから回収された周囲温度に近い低露点のリサイクル水素と混合される。
【0033】
したがって、燃料排気の流れ方向に関して、熱交換器121は反応器128の上流に位置し、反応器128は熱交換器125の上流に位置し、熱交換器125はポンプセパレータ150の上流に位置し、ポンプセパレータ150は加湿器119と燃料吸入導管111との上流に位置する。
【0034】
図2は、米国特許第8,101,307B2に記載の燃料電池システム200を概略的に示したものである。システム200は、システム100に類似しており、いくつかの構成要素を共通に含む。システム100及びシステム200の両方に共通であるそれらの構成要素には、図1及び図2において同じ番号を付けてあり、さらには説明しない。
【0035】
システム100とシステム200との間の1つの違いは、システム200には、好ましくは、加湿器119がないことであるが、必ずしもそうでなくてもよい。その代わりに、水蒸気を含むスタックの燃料排気流の一部が、直接スタック燃料吸入流へとリサイクルされる。燃料排気流中の水蒸気は、燃料吸入流を加湿するのに十分である。
【0036】
システム200は、燃料排気スプリッタ201、リサイクル導管203、ブロワ又はコンプレッサ205、及び混合器207を含むことができる。スプリッタ201は、コンピュータ又はオペレータ制御の多方弁、例えば三方弁、又は他の流体分割装置であってよい。スプリッタ201は、燃料排気導管153及びリサイクル導管203に動作可能に接続することができる。特に、スプリッタ201は、燃料排気導管153内の燃料排気の全部又は一部をリサイクル導管203に回すように構成することができる。
【0037】
混合器207は、燃料吸入導管111、リサイクル導管203、及び生成物導管157に動作可能に接続することができる。リサイクル導管203は、スプリッタ201を混合器207に流体的に接続することができる。混合器207は、新鮮な燃料に、リサイクル導管203によって供給される燃料排気及び/又は生成物導管157によって供給される水素を混合するように構成することができる。
【0038】
ブロワ又はコンプレッサ205は、リサイクル導管203に動作可能に接続することができる。ブロワ又はコンプレッサ205は、燃料排気をリサイクル導管203を通って混合器207へと移動させるように構成することができる。作動中、ブロワ又はコンプレッサ205は、所望の量の燃料排気を、混合器207を介して燃料吸入導管111に制御可能に供給する。
【0039】
システム200を作動させる方法は、システム100を作動させる方法に類似している。1つの違いは、燃料排気が、スプリッタ201によって少なくとも2つの流れに分離されることである。第1の燃料排気流が燃料吸入流にリサイクルされる一方で、第2の燃料排気流はポンプセパレータ150へと向けられ、そこで、第2の燃料排気流に含まれる水素の少なくとも一部分を第2の燃料排気流から電気化学的に分離する。次に、第2の燃料排気流から分離された水素は、生成物導管157によって燃料吸入導管111へと供給される。例えば、燃料排気の50%から70%の間、例えば約60%等を、ブロワ又はコンプレッサ205に供給することができ、残りをポンプセパレータ150の方へと供給することができる。
【0040】
好ましくは、燃料排気は、スプリッタ201に供給される前に、まず、熱交換器121及び125、及びWGS反応器128を通って流れる。燃料排気は、2つの流れに分割されるスプリッタ201に供給される前に、熱交換器125において、約200℃以下に、例えば約120℃~約180℃に冷却することができる。これにより、所望の量の燃料排気流を燃料吸入導管111に制御可能にリサイクルするために、低温度ブロワ205を用いることが可能となる。なぜなら、こうしたブロワは、約200℃以下の温度を有するガス流を移動させるのに適合できるからである。
【0041】
ブロワ又はコンプレッサ205はコンピュータ又はオペレータ制御することができ、以下に記載する状況に応じて燃料吸入流に供給される燃料排気流の量を変えることができる。いくつかの実施形態において、システム200は、任意選択で、生成物導管157に動作可能に接続されるセレクタバルブ210を含むことができる。セレクタバルブ210は、補助装置212、例えば、水素貯蔵装置、車両内のPEM燃料電池等の水素使用装置又は別の水素使用装置、又は水素貯蔵容器に、流体的に接続され得る。セレクタバルブ210は、生成物導管157内の選択された量の水素を補助装置212に回すように構成され得る。例えば、水素の全部又は一部を、補助装置212又は混合器207のいずれかに供給することができるか、あるいは、水素を、混合器207及び補助装置212に交互に供給することができる。
【0042】
ブロワ又はコンプレッサ205及び任意選択のセレクタバルブ210は、以下の状況の1つ又は複数に基づいてガス流を制御可能に変えるようにコンピュータ又はオペレータによって操作することができる。i)システム200の検出又は観測された状況(すなわち、燃料吸入流中の水素の量の変更を必要とする、システム作動状況の変化);ii)燃料吸入流中の水素の一時的な調整を必要とする、コンピュータに提供された事前の計算又はオペレータに知らされた状況;iii)スタックによって生成された電力の使用者による電力需要の変化、水素の価格と比較した電気又は炭化水素燃料の価格の変化など、スタック101の動作パラメーターの、望まれる将来の変化、現在起こっている変化又は最近の過去の変化;及び/又は、iv)水素使用装置などの水素使用者による水素需要の変化、電気の価格と比較した水素又は炭化水素燃料の価格の変化など。
【0043】
燃料排気(すなわちテール)ガスから分離された水素の少なくとも一部を燃料吸入導管111へとリサイクルすることによって、燃料電池システムを高効率で運転できると考えられる。さらに、全体的な燃料利用率が増加する。パス当たりの燃料利用率が約75%である(すなわち、スタックを通り抜ける各パスの間に、燃料の約75%が使用される)場合、発電効率(すなわち、AC発電効率)は、第1及び第2の実施形態の方法では、約50%から約60%の間、例えば約54%から約60%の間の範囲とすることができる。パス当たりの利用率が約75%である場合、約94%~約95%の有効な燃料利用率が得られ、燃料排気ガス水素の約85%がセパレータ150によって燃料電池スタックにリサイクルされる。パス当たりの燃料利用率を約76~80%など、75%超に上昇させることにより、さらに高い効率を得ることができる。定常状態では、第1及び第2の実施形態の方法は、水蒸気メタン改質が燃料電池への供給ガスを生成するために用いられる際の、水蒸気の生成を不要とする。燃料排気流は、水蒸気の炭素に対する比2~2.5でスタックへの燃料吸入流を加湿するのに十分な水蒸気を含む。正味の燃料利用の増加と、水蒸気の生成に熱が必要でなくなることが、全体的な発電効率を上げる。対照的に、水素をリサイクルしない場合、AC発電効率は、スタック内の燃料利用率約75%~80%に対して約45%である。
【0044】
図3は、本開示の様々な実施形態による、燃料電池システム300を概略的に示したものである。図1及び2に関して上に記載したものと同じ番号を有する図3中の要素については、図3に関しては再び説明しない。システム300は、燃料電池スタック(例えば、SOFCスタック)101、ATO140、燃料熱交換器121、空気予熱熱交換器125、空気熱交換器127、空気吸入ブロワ304、アノードリサイクルブロワ330、及び、燃料排気導管312に動作可能に接続され得るスプリッタ332を含むホットボックス302を含み得る。システム300は、また、第1及び第2の水素ポンプセパレータ350A,350Bを含むことができる。いくつかの実施形態では、システム300は、リサイクル導管314(すなわち、アノード排気リサイクル導管)に動作可能に接続され得るベンチュリ装置334を含み得る。いくつかの実施形態において、システム300は、また、混合器336を含み得る。
【0045】
システム300は、図1及び図2のシステム100及び200に関して上で説明したように、燃料改質器123、導管(例えば、130,132)などの追加のシステム構成要素を含み得る。
【0046】
ポンプセパレータ350A,350Bは、上述の電気化学式水素ポンプセパレータ150などの、任意の適切なタイプの電気化学式水素セパレータであってよい。例えば、ポンプセパレータ350A,350Bは、それぞれ、アノード354とカソード356との間に配置されたプロトン伝導性電解質352を含み得る。燃料電池燃料排気流などの水素含有ガス流がアノードに供給され、そこで、水素がアノードの触媒材料によってプロトンと電子とに解離される。電子は、印加電圧によってカソードに駆動され、プロトンをカソードに動かして純粋な水素ガスを発生させる。
【0047】
例えば、好適な電解質の材料は、任意の好適なプロトン伝導体を含み、例えば、プロトン交換膜(PEM)、又は、Nafion(登録商標)のブランド名で販売されている化学式CHF13S.Cをもつスルホン化テトラフルオロエチレン系のフルオロポリマー共重合体等の高分子電解質膜、先の実施形態に記載のリン酸膜(ポリリン酸及びポリベンゾイミダゾールポリマーを含むPBI系のリン酸膜を含む)、プロトン伝導性酸化物としては、LaPO等のリン酸塩、固体酸(リン酸二水素セシウム、CsHPO等)、及び、BaCeYO(BCO)、BaZrYO(BZO)、LaSrPO、BaCaNbO(BCN)、LaCaNbO、又はLaBaGaO(LBGO)のような、ペロブスカイト型のセレート、ニオブ酸塩、リン酸塩、没食子酸塩又はジルコン酸塩等、特定のペロブスカイト(ABO)材料、その全体を参照により本明細書に組み込まれるChem.Soc.Rev.,2010,39,4370-4387に記載のものが含まれる。
【0048】
ブロワ330は、任意の適切な流体(例えば、気体)ブロワ、ポンプ、コンプレッサなどであってよい。スプリッタ332は、コンピュータ又はオペレータ制御の多方弁、例えば四方弁、又は、流体導管に開口部又はスリットを含むパッシブスプリッタなどの他の適切な流体分割装置であってよい。
【0049】
燃料吸入導管310は、スタック101を、天然ガス源、プロパン源(例えば、天然ガスラインまたはプロパンタンク)などの炭化水素燃料源に流体的に接続するように構成することができる。燃料吸入導管310は、また、CPOx反応器、燃料熱交換器121、改質器123などの他のシステム構成要素に流体的に接続することができる。燃料排気導管312は、スタック101のアノード排気出口をスプリッタ332に流体的に接続するように構成することができる。リサイクル導管314は、スプリッタ332の出口を、混合器336を介して燃料電池スタック101の入口に流体的に接続するように構成することができる。第1の分離導管316は、スプリッタ332の出口を第1のポンプセパレータ350Aの入口に流体的に接続するように構成することができる。混合器336及びベンチュリ装置334は、リサイクル導管314に動作可能に接続することができる。
【0050】
ATO吸入導管320は、第1のポンプセパレータ350Aのカソード出口をATO140の入口に流体的に接続するように構成することができる。第2の分離導管322は、第1のセパレータ350Aのアノード出口を第2のポンプセパレータ350Bの入口に流体的に接続するように構成することができる。副生成物導管324は、第2のポンプセパレータ350Bのアノード出口を任意選択のCO貯蔵システム又は貯蔵装置340に流体的に接続することができる。水素導管326は、第2のポンプセパレータ350Bのカソード出口を混合器336の入口に流体的に接続することができる。排気導管328は、ATOの出口に流体的に接続することができる。任意選択の起動導管329は、スプリッタ332をATO吸入導管320に接続することができる。スプリッタ332が四方弁である場合には、システム300の起動モード時、導管312,329及び320を通してATO140に燃料を供給するために、弁は燃料排気導管312と起動導管329との間で開いている。システム300の定常状態モード中は、水素ポンプセパレータ350Aが燃料をATO吸入導管320を通してATO140に供給するため、弁は燃料排気導管312と起動導管329との間で閉じられる。
【0051】
ベンチュリ装置334は、そこを通って流れる流体の速度を変更するように構成することができる。ベンチュリ装置334は、リサイクル導管内のアノードリサイクル流の流れを測定するために使用することができる。水素ポンプセパレータ350Bからの水素導管326内の水素の流れは、水素ポンプセパレータ350Bで流れた電流から計算することができる。水素ポンプ内の水輸送を特徴付けることができれば、流れ326の総流量を計算することができる。したがって、混合器336に供給される水素及びアノードリサイクル流の流量を、前述のとおり求めることができる。混合器336は、2つの流体流を組み合わせて単一の流体流にするように構成された任意の適切な装置であってよい。一実施形態では、混合器336は、ホットボックス302の外側の、ブロワ330の下流に配置されて、水素導管326からの水素流とリサイクル導管314からの燃料リサイクル流とを混合することができる。
【0052】
システム300は、燃料排気導管312に動作可能に接続される任意選択のWGS反応器128を含み得る。WGS反応器128は、燃料排気中のCO及びHOを、CO及びHに変換するように構成され得る。WGS反応器128は、燃料熱交換器121とスプリッタ332との間に配置され得る。いくつかの実施形態では、WGS反応器128は、ホットボックス302の内部、第1のポンプセパレータ350Aの内部の場所、又は、アノード排気導管上の、スタック101と第1のポンプセパレータ350Aとの間の任意の場所に配置され得る。一実施形態では、ホットボックス302内部の燃料熱交換器121内に高温水性ガスシフト触媒を配置することができ、リサイクル導管316内に中温又は低温水性ガスシフト触媒を配置することができる。したがって、この実施形態では、WGS反応器128の第1の部分は、燃料熱交換器121に一体化され、一方、WGS反応器128の第2の部分は、リサイクル導管316に一体化される。
【0053】
作動中、スタック101から排出される燃料排気は、ブロワ330によって燃料排気導管312を通って吸い出され、スプリッタ332に供給され得る。スプリッタ332は、燃料排気の第1の部分(例えば、第1の燃料排気流)をリサイクル導管314に能動的又は受動的に供給し、燃料排気の第2の部分(例えば、第2の燃料排気流)を第1の分離導管316に選択的に供給するように構成することができる。
【0054】
リサイクル導管314は、スプリッタ332から出る第1の燃料排気流を、混合器336を通って燃料電池スタック101に供給するように構成することができる。ベンチュリ装置334は、圧力降下を測定してリサイクル導管314内の第1の燃料排気流の流量を検出するための測定装置として、又は、流量を減少させるためのスロットルとして作動することができる。
【0055】
第1の分離導管316は、スプリッタ332から受け入れた第2の排気流を第1のポンプセパレータ350Aの入口に供給するように構成することができる。第1のポンプセパレータ350Aは、燃料排気から水素ガスを選択的に分離することができる。したがって、ポンプセパレータ350Aは、水素(例えば、ATO燃料流)を、ATO吸入導管320を介してATO140へと出すことができる。第1のポンプセパレータ350Aは、定電流モードで動作することができる。これは、ATO140への水素の流れを制御するのに役立ち得る。スタック101のカソード排気もまたATO140に供給され得る。ATO排気(つまり、酸化されたアノード排気とカソード排気)は、ATO燃料が水素で構成されるため、完全にまたは実質的にCOフリーとなるであろう(例えば、カソード排気を含む空気中に存在するCO以外)。
【0056】
ATOの水素需要はスタック101の水素排出量未満である可能性があるため、第1のポンプセパレータ350Aは、第2の燃料排気流から水素の一部のみを取り除くように構成することができる。したがって、第2の燃料排気流の残りは水素を含んでいてもよく、第1のポンプセパレータ350Aのアノード出口から排出されて、第2の分離導管322によって、第2のポンプセパレータ350Bの入口に供給されてもよい。ATO燃料がホットボックス内の熱平衡を維持する必要がない場合(例えば、システム300の動作期間の後期)には、リサイクル導管316は、第1の水素ポンプセパレータ350Aを迂回するように構成され得るか、又は、第1の水素ポンプセパレータ350Aに電流が流れていない状態で第1の水素ポンプセパレータを通り抜けてもよく、これによりATO吸入導管320内の水素の流れをゼロにする。この実施形態では、以下の図7に関して説明するように、代わりに外部燃料をATO140に提供することができる。
【0057】
第2のポンプセパレータ350Bは、第2の燃料排気流から水素を分離し、それにより、水素流、及び、主に気体状の水及び二酸化炭素を含む副生成物流を生成するように構成することができる。
【0058】
一態様では、第1のポンプセパレータ350Aは、ATO140への燃料の流れを制御するために定電流モードで作動させることができ、第2のポンプセパレータ350Bは、定電圧モードで作動し、アノードリサイクル流の一部として、水素をスタック101にリサイクルすることができる。第1及び第2のポンプ350A,350Bは、性能及び動作条件に応じて、高温膜(約160℃)又は低温膜(約80℃)の化学的性質のいずれか、又は2つの組み合わせに基づくことができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、システム300は、任意選択で、二酸化炭素処理装置338及び二酸化炭素貯蔵装置340を含むことができ、これらは、第2のポンプセパレータ350Bのアノード出口に流体的に接続される副生成物導管324に動作可能に接続することができる。処理装置338は、第2のポンプセパレータ350Bから受け入れた二酸化炭素流を圧縮及び/又は冷却するように作動することができる。任意選択の二酸化炭素処理装置338は、二酸化炭素副生成物流から水を除去するように構成された凝縮器及び/又は乾燥器であり得る。貯蔵装置340に供給される生成二酸化炭素流は、蒸気、液体、固体、又は超臨界二酸化炭素の形態であってよい。
【0060】
残りの精製した又は純粋なCOは、貯蔵装置340内に貯蔵/隔離されるか、又は、化学的プロセス、飲料カーボネーション等に使用することができる。いくつかの実施形態では、貯蔵装置340は、貯蔵のために、COをドライアイスに変えるように構成された極低温貯蔵装置であってもよい。
【0061】
水素流は、水素導管326によって、第2のポンプセパレータ350Bのカソード出口から混合器336へと出され得る。水素は、混合器336内で、リサイクル導管314によって供給される第1の燃料排気流と混合されて、アノードリサイクル流を形成することができる。水素導管326内の水素流の一部又はすべては、また、リサイクル導管314にリサイクルされるのではなく、水素生成物として取り出され得る。この実施形態では、混合器336は省略することができる。取り出された水素生成物は、圧縮され、乾燥され、貯蔵することができる。
【0062】
アノードリサイクル流は、混合器336から燃料電池スタック101又は燃料吸入導管310に供給され、燃料吸入導管310では、スタック101にリサイクルされる前に、燃料源から供給された流入燃料と混合することができる。いくつかの実施形態では、第1の燃料排気流の流量は、スタック101に提供される燃料のO:C比(酸素:炭素比)が、ホットボックス内の任意の温度でのコークス化を抑制するのに十分な酸素含有量を提供するように制御することができる。
【0063】
水素流は、ドライベースで約95%~約100%のHなど、少なくとも95%のHを含み得る。言い換えれば、第1及び第2のポンプセパレータ350A,350Bの両方をタンデムで使用することにより、システムは、スタック101によって生じた燃料排気から高度に精製された水素ガスを製造することができる。したがって、システム300は、2つのポンプセパレータ350A,350Bを使用して、燃料電池スタック101のアノード排気から出される二酸化炭素(CO)の95%超、例えばCOの95~100%を取り除くように構成することができる。
【0064】
さらに、ATO140には燃料としてHが供給されるため、ATO排気(すなわち、酸化されたアノード排気及びカソード排気)は、完全に又は実質的にCOフリー(例えば、カソード排気を構成する空気中に存在するCO以外)であり得る。
【0065】
ポンプセパレータ350A,350Bなどの水素ポンプセパレータにおいては、一酸化炭素(CO)の蓄積及び/又は水の詰まりが起こり得、これが分離効率を低下させる可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、ACインピーダンス(例えば、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第9,461,320号に記載されている)を使用して、任意の適当な周波数で、ポンプセパレータ350A,350Bに接続されるDC/DC電源からの電圧リップルを用いてCOの蓄積及び/又は水の詰まりを検出することができる。例えば、1Hzの周波数を使用して液体水の溢れを検出し、1kHzの周波数を使用してCOの蓄積を検出することができる。一方のセパレータからのリップルは、もう一方のセパレータからのリップルをキャンセルすることができ、又は、リップルは、統合燃料電池システム内の他のリップルによってキャンセルすることができる。ACインピーダンス信号を使用して、COが検出された場合にはポンピング電位を増加させる、又はポンプセパレータ350A,350Bのアノード又はカソードをパージするなど、問題を解決するためのシステム応答を発動することができる。例えば、水の詰まりが検出された場合には、このパージングには、セパレータへの吸入圧力の増加又は排出圧力の減少、あるいはセパレータの動作温度の上昇が含まれ得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、ポンプセパレータ350A,350Bは、アノード354のガス拡散層の一部として炭素マイクロレイヤーを含み得る。しかしながら、炭素マイクロレイヤーは、セパレータ作動中に酸化されてしまうことが特定された。したがって、いくつかの実施形態では、アノード354は、流入する燃料流に面するテフロン(ポリテトラフルオロエチレン)を結合させた第1の電極と、電解質352(プロトン交換膜であってよい)に面するアイオノマーを結合させた第2の電極とを含む二層電極構造にすることができる。
【0067】
電気化学式ポンプにおいて、電極構造の炭素支持体は、電解質を劣化させる過酸化物の生成につながり得る。一実施形態では、Pt又はPt-Ruなどの高表面積触媒を、ポンプセパレータ350A,350Bにおいて炭素支持体のない電極として使用することができる。別の実施形態では、酸化チタン又は酸化イリジウムなどの導電性又は半導電性金属酸化物触媒を、過酸化物の生成を低減するためにポンプセパレータ350A,350Bの電極として使用することができる。
【0068】
また、100ppmを超えるCOレベルが、ポンプセパレータの性能と信頼性に影響を与える可能性があることも特定された。したがって、これらに限定されないがCu/ZnO/Al触媒を含むWGS触媒を、ポンプセパレータ350A,350Bのアノードガス拡散層及び/又はアノードフローフィールドプレートの一部として含むことができる。
【0069】
場合によっては、一体化されたWGS触媒は、低温で作動されるポンプセパレータの一酸化炭素(CO)障害を十分に軽減しない可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、COを内部で酸化して二酸化炭素を形成するために、エアブリード導管をポンプセパレータ350A,350Bに組み込むことができる。この構成では、Au/FeO-TiOなどの選択酸化触媒を、ポンプセパレータ350A,350Bのアノードマニホールド、アノードプレート、及び/又はアノードガス拡散層の一部として含むことができる。
【0070】
様々な実施形態において、及び図4,5A,6及び7に示されるように、燃料として水素のみを使用する燃料電池スタックにおける燃料利用率は、定常状態の間、アノード排気からATOへの燃料の流れをなくし(例えば、図3に示すATO吸入導管をなくし又は閉じ)、アノード排気中のH/HO混合物から水を凝縮し、凝縮されなかったHを燃料電池スタック101に供給される燃料吸入流へと戻すことによって、96~99.9%等の、95%超、例えば100%近くまで増加させることができる。例えば、図1及び2に示されるセパレータ排気導管159、又は、図3に示されるATO吸入導管320は、システム起動時にのみ使用され、その後、いったんシステムが700℃を超える動作温度に達すると、システムの定常状態動作中は弁を用いて閉じられる。
【0071】
全体的な燃料利用率は、スタック101のアノード排気からATO140への流路を遮断することによって(例えば、それぞれの導管159をなくす又は閉じることによって)、実質的に100%まで増加させることができる。すべてのスタックアノード排気はホットボックスを出て、そこで水が凝縮されて除去される(周囲温度にもよるが、熱交換器内の水の露点まで、例えば40~80℃まで下がる)。パスごとの燃料利用には自由度があり、パスごとに50~約70%に容易になり得る。
【0072】
水素燃料はコーキングを防止するために水を必要としないため、燃料中の水はリサイクルされるH中の残留水からのもののみとなる。これは12%以下に制限することができ、潜在的には、混合されたH湿度を4~6%まで低くすることができる。この低湿度/高H濃度で、セルの電流電圧ははるかに高くなる。システム効率は約55~60%LHVになり得る。
【0073】
水素でスタックを運転するには、天然ガス燃料供給システム(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9,287,572号及び第9,190,673号に記載されるシステムなど)に使用される多くの構成要素、つまり、脱硫槽と触媒、脱硫槽を切り替えるために使用される弁、CPOx反応器とCPOx空気ブロワ、蒸気発生器を含む水関連構成要素、水の凍結を防ぐためのヒーター、その他の様々な水システム構成要素、及び部分改質器とその触媒を保持するための内筒を必要としないため、システムコストも削減される。さらに、燃料利用の正確な制御がもはや不要であるため、マスフローコントローラーバルブを比例ソレノイドバルブに置き換えることができる。さらに、システムは、ATO触媒のサイズを縮小し、カソード復熱熱交換器127熱シールドのサイズを縮小又は省略することができ、ATO140とアノード復熱熱交換器121との間の断熱材を除くことができる。パワーエレクトロニクスが乾燥水素の開回路電圧に耐えられない場合は、水をシステムに供給して、パワーエレクトロニクス機器への接触器を閉じることができる。
【0074】
効果的なシステム効率は、さらに、外部の熱需要との熱統合(熱電併給(CHP))のためにカソード排気及び/又はアノード排気を使用することによって高めることができる。
【0075】
図4は、水素燃料を利用し、95%を超える(例えば、100%に近い)燃料利用率で作動する燃料電池システム400の概略図である。このシステムは、システム100,200,及び300に含まれるものと同様の構成要素を含むことができる。したがって、前述の構成要素は、同じ参照番号で識別され、それらの間の違いのみを詳細に説明する。
【0076】
図4に示されるように、システム400は、ホットボックス302、1つ又は複数の燃料電池スタック(例えば、SOFCスタック)101、燃料熱交換器121(例えば、アノード復熱器)、任意選択の空気予熱熱交換器125(例えば、アノード排気冷却器)、ATO140、空気熱交換器(例えば、カソード復熱器)127、空気ブロワ404、燃料制御弁411、バイパス弁413、ブリード弁417、及びリサイクル弁419を含むことができる。
【0077】
システム400は、また、外部H源からスタック101にHを供給するように構成された燃料吸入導管410、スタック101から排出される燃料排気を受け入れるように構成された燃料排気導管412、空気ブロワ404からスタック101に空気を供給するように構成された空気吸入導管430、及び、スタック101から排出される空気排気をATO140に供給するように構成された空気排気導管432を含むことができる。システム400は、ATO140をカソード復熱器127に流体的に接続するATO排気導管424を含むことができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、任意選択の外部燃料改質器423が、燃料吸入導管410に動作可能に接続され、燃料吸入導管410に供給される水素ガスを生成するように構成され得る。燃料改質器423は、外部燃料源から受け入れた炭化水素燃料(例えば、天然ガス)を使用して水素を生成するように構成され得る。あるいは、水素貯蔵容器又は別の水素源からの純粋な水素を燃料として使用することができる。リフォーメートは処理され、純粋な生成物としての水素を他種から分離することができる(図示せず)。
【0079】
燃料熱交換器121は、燃料吸入導管410及び燃料排気導管412に動作可能に接続され得、燃料排気導管412内の燃料排気から燃料吸入導管410内のH燃料に熱を移すように構成され得る。燃料熱交換器121から出る冷却された燃料排気を、アノード排気冷却器125に供給することができる。アノード排気冷却器125は、この燃料排気から空気吸入導管430内の空気に熱を移すように構成することができる。いくつかの実施形態では、熱電併給を提供するために燃料排気が使用される場合などには、アノード排気冷却器125を省略することもできる。
【0080】
バイパス導管415は、排気導管412をATO140に流体的に接続することができる。バイパス導管415は、燃料熱交換器121とアノード排気冷却器125との間の排気導管412に接続することができる。バイパス弁413は、燃料排気導管412に動作可能に接続することができる。バイパス弁413は、バイパス導管415を介して、燃料排気の少なくとも一部をATO140に選択的に回すように構成された、自動又は手動で制御される弁であってよい。ATOに直接送り込むバイパス弁は、図のようにホットボックス302の内側に配置されてもよいし、あるいはホットボックス302の外側に配置されてもよい。
【0081】
燃料排気は、ホットボックス302内のアノード排気冷却器125から、燃料排気導管412を介して、外部燃料排気凝縮器460に排出され得る。燃料排気凝縮器460は、空冷又は水増強式空冷凝縮器、及び/又は、燃料排気中の水蒸気を凝縮し及び/又はアノードリサイクルブロワ434を熱損傷から保護するのに十分な温度まで燃料排気を冷却するように構成された熱交換器であってよい。例えば、燃料排気凝縮器460は、燃料排気凝縮器460が約50℃約1気圧で作動するときに、燃料排気の含水量を約12%以下に低減するように構成することができる。いくつかの実施形態では、燃料排気凝縮器460は、外部冷却塔を通して再循環される水を使用して冷却され得る。いくつかの実施形態では、燃料排気凝縮器460の一部は、熱電併給システムの一部として利用することができる。例えば、燃料排気凝縮器460によって加熱された水は、外部温水源又は施設熱源として利用することができる。
【0082】
システム400は、燃料排気凝縮器460を燃料吸入導管410に流体的に接続するリサイクル導管414を含み得る。例えば、リサイクル導管414及び燃料吸入導管410は、燃料改質器423又は別の水素源から受け入れた水素燃料を、燃料排気と混合するように構成された混合器422に流体的に接続され得る。燃料排気分離器462(例えば、乾燥器又はノックアウトポット)、ブリード弁417、リサイクル弁419、及びアノードリサイクルブロワ434は、リサイクル導管414に動作可能に接続され得る。
【0083】
燃料排気流は、リサイクル導管414を介して、燃料排気凝縮器460から分離器462に排出され得る。分離器462は、燃料排気から液体水を分離するように構成され得る。いくつかの実施形態では、液体水は、分離器462を燃料排気凝縮器460及び/又は冷却塔などの外部水冷システムに流体的に接続する水導管464を介して、任意選択で燃料排気凝縮器460に戻すことができる。燃料排気凝縮器460は、また、リサイクル導管414内の流れの露点をさらに押し下げるために、保冷ステージ又は固体水吸着種を含むことができる。
【0084】
ATO吸入導管420は、ATO140にリサイクル弁419を流体的に接続できる。ブリード導管416は、リサイクル導管414をATO吸入導管420に流体的に接続できる。ブリード弁417は、ブリード導管416とリサイクル導管414に動作可能に接続することができる。
【0085】
ブリード弁417は、燃料排気から不純物をパージするように構成された自動又は手動で制御される弁であってよい。いくつかの実施形態では、ブリード弁417は、スタック101に流体的に接続され得、アノード圧力とカソード圧力とを等しくするために、スタック101の燃料電池に背圧を提供するように構成され得る。
【0086】
リサイクル弁419は、燃料排気の全部又は一部をATO吸入導管420又は混合器422を介して燃料吸入導管410に選択的に向けるように構成された手動又は自動で制御される三方弁であってよい。例えば、リサイクル弁419は、システム400の起動時に燃料排気をATO140に向けるように構成され得るが、システム400の定常状態動作中(例えば、システム400が700℃を超える定常状態動作温度に達した後)には、燃料排気のすべて又は実質的にすべてを燃料吸入導管410に向けることができる。燃料排気は、燃料吸入導管410の、燃料吸入導管410を通る燃料流を制御するように構成することのできる燃料制御弁411の上流側に戻すことができる。いくつかの実施形態では、燃料制御弁は、従来のマスフローコントロールバルブではなく、比例ソレノイド弁であってよい。というのも、マスフローコントロールバルブによって提供される精密なフローコントロールは、水素ガスを燃料として作動するシステムで高い燃料利用率を達成するために必要でない場合があるためである。
【0087】
空気ブロワ404、アノード排気冷却器125、及びカソード復熱器127は、空気吸入導管430に動作可能に接続され得る。カソード復熱器127はまた、ATO排気導管424に動作可能に接続され得る。空気ブロワ404は、空気又は酸化ガスを空気吸入導管430を通ってスタック101に強制的に送るように構成され得る。空気吸入導管430内の空気流は、アノード排気冷却器125から排出される燃料排気によって加熱され得、そしてATO140から排出されるATO排気(例えば燃焼排気)を用いてさらに加熱され得る。空気吸入流はまた、ATOが作動していないとき(例えば、システム400の定常状態動作中)に、スタック101からカソード排気導管432を介してATO140へと排出されるカソード排気を使用して、カソード復熱器127において加熱され得る。カソード及び/又はATO排気は、カソード復熱器127から大気に放出され得るか、又はATO排気導管424に流体的に接続される任意選択の外部熱電併給(CHP)熱交換器436に供給され得る。
【0088】
上で論じたように、ATO140への燃料流れは、起動時に提供されるが、定常状態中には提供されない場合がある。燃料排気凝縮器460は、電池内で製造された水からリサイクル用のHを容易に分離することができる。アノードリサイクルブロワ434は、燃料排気流から水が除去されるために過熱する可能性が低い。いくつかの実施形態では、分離器462からの水を、CHP熱交換器436に供給することもできる。他の実施形態では、分離器462からの水を、燃料改質器423(WGS反応器であってもよい)に供給することができる。いくつかの実施形態では、分離器462を省略して、水を燃料排気凝縮器460から直接取り出すことができる。一実施形態では、分離器は、液体水が蒸気流から離脱するための空間を提供するノックアウトポットである。
【0089】
様々な実施形態はまた、CO隔離のための方法を提供する。天然ガスをオンサイト改質器に供給し、COを改質プロセスから隔離しながら水素燃料を生成することができる。同様の構成は、天然ガス燃料で稼働するシステムにも使用できる。天然ガスの場合、水素燃料での実施形態の空冷凝縮器は、極低温膜ベースのPSA、TSA、又は、アノード排気を以下の3つの別個の流れに分離するように設計された分離を行うことができる他の既存の商業的プロセスと置き換えることができる。3つの別個の流れとは、オフサイトのCO使用又は隔離のための出荷可能な液体又はドライアイスでの(又は、シリンダ又はパイプラインでの輸送のための高圧ガス/超臨界ガスでの)CO;液体水製品;HとCOとのガス状混合物である。混合物の大部分は、各ホットボックスに導入される場合は、天然ガス供給(MFCバルブ後)と混合される燃料として、又は現場レベル(MFCバルブ前)で天然ガスと混合される現場レベルの燃料としてリサイクルされ得、混合物の小部分はホットボックスの熱バランスを維持するために、ATOに直接供給することができる(必要に応じて、これはシステムの動作期間の後期にはゼロに下げてもよい)。
【0090】
任意の適切な極低温プラント技術を使用することができる。あるいは、深冷分離は、単段または多段水素ポンプ(例えば、上記のPEM又はPBIタイプ)によって置き換えることができる。水素ポンプの使用は、少量のCOとHを潜在的に含むCOとHOのガス状混合物を生み出し、輸送又は使用のための液体CO製品を製造するためにさらに処理されることとなる。
【0091】
図5Aは、本開示の様々な実施形態による、燃料電池システム500の概略図であり、図5Bは、図5Aの考えられ得るガス分離器の構成要素の概略図である。システム500は、システム400に類似している。したがって、それらの間の違いのみを詳細に説明する。図にはなくとも、システム500は、図1~3のシステムに示される構成要素など、追加の構成要素を含み得る。システム500は、水素または炭化水素燃料で作動することができる。
【0092】
図5Aを参照すると、システム500は、ホットボックス302内に配置された内部燃料改質器123を含むことができる。システム500はまた、ベンチュリ装置334、アノードリサイクルブロワ434、ガス分離器570、及び燃料排気スプリッタ558を含むことができる。
【0093】
スプリッタ558は、燃料排気導管412、リサイクル導管414、及び燃料排気処理導管516に流体的に接続することができる。スプリッタ558は、リサイクル導管414及び処理導管516を通る燃料排気の流れを選択的に制御するように構成された、手動又は自動で制御される三方弁であってよい。あるいは、スプリッタ558はパッシブスプリッタであってもよい。
【0094】
アノードリサイクルブロワ434、ベンチュリ装置334、及び燃料排気スプリッタ558は、リサイクル導管414に動作可能に接続され得る。本システムは、ホットボックス302内に配置されたアノード排気冷却器125に加えて、又はその代わりに、外部アノード排気冷却器560を任意選択で含むことができる。例えば、外部アノード排気冷却器560は、熱交換器、及び/又は、外部の空気、水、及び/又は、CHPのための別の冷却流体を使用して燃料排気を冷却するように構成された凝縮器であってよい。外部アノード排気冷却器560が凝縮器を含む又は凝縮器である場合には、それは燃料排気から水を除去することができる。アノードリサイクルブロワ434は、燃料排気をリサイクル導管414及びベンチュリ装置334を通って燃料吸入導管410に強制的に送るように構成することができる。
【0095】
ガス分離器570は、燃料排気を水、二酸化炭素、及び水素と一酸化炭素の混合物の別々の流れに分離するように構成することができる。ガス分離器570は、深冷分離器、圧力スイング吸着分離器、膜分離器、アミンスクラビング分離器、セレクソール分離器、又はそれらの任意の組み合わせなど、任意の適切なタイプのガス分離器を含み得る。水の流れは、アノード排気冷却器560の冷却水として利用するのに十分に純粋であり得る。多くのホットボックス302に対しガス分離器570が1つだけであっても、各ホットボックス302に対してガス分離器570が1つあってもよい。
【0096】
図5Bを参照すると、ガス分離器570は、熱交換器572、メインコンプレッサ574、水分離器576、CO凝縮器578、及び蒸留カラム580を含むことができる。熱交換器572は、燃料排気の温度を下げるように構成され得る。
【0097】
メインコンプレッサ574は、冷却された燃料排気を圧縮し、それによって第2の水の流れを生成するように構成され得る。燃料排気は、その後、燃料排気から残留する水を除去するように構成された水分離器576又は乾燥器に供給され得る。水分離器576は、例えば、温度スイング吸着法又は他の適切な方法により水を吸着する再生可能な吸水剤を含むことができる。
【0098】
次に、乾燥させた燃料排気をCO凝縮器578に供給することができ、CO凝縮器578は、燃料排気を、液体COを生成するのに十分な温度まで冷却するように構成することができる。例えば、凝縮器578は、燃料排気を約-20℃から約-30℃の範囲の温度に冷却するように構成することができる。
【0099】
液体CO及び残っているCOガスを含む燃料排気は、その後、蒸留カラム580に供給され得る。蒸留カラム580は、複数の段、凝縮器、及び/又はリボイラを含むことができる。いくつかの実施形態において、蒸留カラムは、約-50℃から約-90℃の範囲の温度で燃料排気を冷やすように構成され得る。蒸留カラム580は、水素流及び液体CO流を出すように構成することができる。蒸気はまた、残留量(例えば、約%以下)のCO、CO及びNを含み得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、二酸化炭素流は、ドライアイスとして貯蔵され得る。様々な実施形態において、水は、CHP熱交換器436に供給され得る。水素及び一酸化炭素は、図6と関連してより詳細に説明するように、スタック101及び/又はATO140に供給され得る。別の実施形態では、水素及び一酸化炭素は、水分離器576に供給されてストリッピングガスとして使用されてもよく、水分離器内の吸着材に吸着された水を除去する。水素及び一酸化炭素流を含む水は、その後、水が動作を妨げないので、スタック101及び/又はATO140に供給され得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、DC電力を必要とするガス分離器570の構成要素は、スタック101から出力されるDC電力によって直接電力を供給され得る。
【0102】
水を気化させるために追加の熱を提供することができ、及び/又は、追加の外部燃料をATOに提供することができる。いくつかの実施形態では、WGS反応器128は、燃料排気導管412に動作可能に接続され得る。
【0103】
本システムは、SOFCスタック101の燃料排気と熱的に統合され得る燃料改質器123を含み得る。CO隔離は、スタック101の上流側で実施することができる。改質及び/又は水性ガスシフト反応のための水は、ガス分離器570からの凝縮された水から供給され得る。
【0104】
図5Cは、図5A及び図5Bに示される燃料電池システム500の代替の実施形態の概略図である。この代替の実施形態では、燃料排気処理導管516は、アノード排気冷却器125の上流側のスプリッタ413に流体的に接続されている。したがって、燃料排気の一部は、アノード排気冷却器125に到達することなく、スプリッタ413から直接ガス分離器570に提供される。この代替の実施形態では、スプリッタ558は省略されてよく、燃料排気の残りの部分はアノード排気冷却器125から直接外部冷却器560へと供給される。
【0105】
図6は、本開示の様々な実施形態による、燃料電池システム600の概略図である。システム600は、システム500に類似している。そのため、それらの間の違いのみを詳細に説明する。示されてはないが、システム600は、図1図4のシステムに示される構成要素などの追加の構成要素を含むことができる。
【0106】
図6を参照すると、システム600は、水素リサイクル導管602、ATO吸入導管604、及びスプリッタ610を含むことができる。リサイクル導管602は、分離器570を燃料吸入導管410及び/又は混合器422に流体的に接続するように構成することができる。スプリッタ610は、リサイクル導管602に動作可能に接続することができる。ATO吸入導管604は、スプリッタ610の出口をATO140に流体的に接続できる。
【0107】
いくつかの実施形態では、システム600は、ATO140と、導管415,432,及び/又は604に流体的に接続されたATO混合器650を含むことができる。ATO混合器650は、導管432からの空気排気を、導管415からの燃料排気及び/又は導管604からの水素と一酸化炭素の混合物に混合するように構成することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、バイパス導管415及びバイパス弁413を省略することができる。
【0108】
水素流は、ガス分離器570から排出導管602へと出され得る。水素流は、いくつかの実施形態において、一酸化炭素を少量含み得る。スプリッタ610は、水素流の少なくとも一部を、リサイクル導管602からATO吸入導管604へと選択的に回すように構成された、手動又は自動的に制御される三方弁、又はパッシブスプリッタであってよい。したがって、スプリッタ610は、水素流れを、ATO140及び燃料吸入導管410へと選択的に又は非選択的に制御するように構成することができる。例えば、スプリッタ610は、システム600の定常状態動作中、ホットボックスの動作温度を維持するために、ATO混合器650を介して、ATO140に十分な量のガス混合物を向けるように構成することができる。ガス混合物の残りは、燃料混合器422に供給することができ、入ってくる燃料から窒素ガスをパージするように作用することができる。システム起動時には、燃料排気は、導管415を介してATO140に供給され得る。あるいは、図4に示されるように、導管415を省いて、ATO吸入導管420が、リサイクル導管414を、リサイクル弁419を介してATO140に流体的に接続することができる。ATO吸入導管420及びリサイクル弁419は、リサイクル導管414に、ブロワ434の上流側又は下流側であるが、ベンチュリ装置334の上流側に接続することができる。
【0109】
さらに、残りの水素及び一酸化炭素のリサイクル流は、リサイクル導管602及び混合器422を通って燃料吸入導管410に供給され、燃料吸入流(例えば、天然ガスなど)と混合される。一実施形態では、リサイクル導管602を通って混合器422に供給される水素と一酸化炭素のリサイクル流は、混合器に供給されている燃料吸入流よりも高い圧力であり得る。水素及び一酸化炭素のリサイクル流は、燃料吸入流よりも高い圧力で供給されるため、水素及び一酸化炭素のリサイクル流はスタック101で優先的に使用され、必要な燃料の総量を満たすように燃料吸入流が混ぜられる。燃料吸入流の流量、及び、水素と一酸化炭素のリサイクル流の流量及び組成を測定することによって、システム600の場への混合された燃料流の全体的な組成が計算され、制御のためにシステム600の各パワーモジュールに伝達される。上で論じたように、各ガス分離器570に対して1つ又は複数のホットボックス302があってよい。
【0110】
図7は、本開示の様々な実施形態による、燃料電池システム700の概略図である。システム700は、システム600に類似している。したがって、それらの間の違いのみを詳細に説明する。示されていないが、システム700は、図6に示される燃料処理構成要素や図1~5に示されるシステム構成要素など、追加の構成要素を含むことができる。
【0111】
図7を参照すると、システム700は、アノード復熱器121及び任意選択のアノード排気冷却器125との間で燃料排気導管412に動作可能に接続されるWGS反応器を含むことができる。WGS反応器128とアノード排気冷却器125の組み合わせは、隔離用の、図5A,5B及び6に示すガス分離器570によって抽出可能なCOの量を増やすように作動することができる。システム700はまた、燃料熱交換器121とスタック101との間で燃料吸入導管に動作可能に接続される燃料改質器123を含むことができる。
【0112】
システム700はまた、外部燃料源からATO混合器650に燃料を供給するように構成されたATO吸入導管702を含むことができる。システム700は、バイオガスを使用する運転を容易にするように構成された構成要素をさらに含むことができる。特に、本システムは、バイオガス吸入導管704及びバイオガス予熱熱交換器706を含むことができる。バイオガス吸入導管704は、バイオガス源を混合器422に流体的に接続することができる。バイオガス予熱熱交換器706は、ATO排気導管424内のATO排気を用いて、吸入導管704内のバイオガスを加熱するように構成され得る。
【0113】
システム700はまた、スタック排気熱交換器708を含むことができる。スタック排気熱交換器708は、ATO排気導管424内のATO排気を用いて、空気吸入導管430内の空気を予熱するように構成することができる。したがって、スタック排気熱交換器708は、空気吸入流の温度がカソード復熱器127に入るときに上昇しているように、空気吸入流を加熱することができる。したがって、カソード復熱器内の空気吸入流を加熱するために、ATO排気からの必要な熱をより少なくし、これは、カソード復熱器127から熱交換器708に供給されるATO排気の温度を上げる。したがって、バイオガスは、バイオガス予熱熱交換器706内のより熱いATO排気によって、より高い温度に加熱することができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、ATO140が導管702を介して外部燃料源から燃料を受け入れるため、スプリッタ413及び導管414を、システム700から省くことができる。
【0115】
図8は、本開示の様々な実施形態による、ホットボックス内部に配置され得るWGS128の斜視図を示す。この実施形態では、水性ガスシフト反応器は、アノード復熱器(すなわち、燃料熱交換器)121に配置された水性ガスシフト触媒コーティングを含む。例えば、触媒は、熱交換器121の1つ又は複数の温度ゾーンのフィン/波形をコーティングすることができる。例えば、WGS反応器128触媒は、熱交換器121のフィン/波形の上部にコーティングすることができる。追加で又は代替として、水性ガスシフト触媒を含む追加の構成要素を、熱交換器121の下流側にスタンドアロンのサブアセンブリとして配置することができる。このアセンブリは、ATO140リングと同様に、触媒をコーティングしたフィンセクションで構成される環を備えることができる。
【0116】
いくつかの実施形態において、外部燃料排気凝縮器460及び/又は外部アノード排気冷却器560が空冷凝縮器又は熱交換器を含む場合には、空気はシステムハウジングから供給され得る。言い換えれば、ホットボックス及び/又は電力調整システム(例えば、DC/ACインバータなどのシステム出力電子機器)を含むキャビネットは、空冷キャビネットを備えることができ、この中で周囲空気がブロワ又はファンによってキャビネットを通って循環される。この循環キャビネット空気は、外部燃料排気凝縮器460及び/又は外部アノード排気冷却器560を通過する燃料排気を冷却するために使用され得る。循環キャビネット空気は、カソード排気及びATO排気から分離されて保たれる。燃料排気によって加熱される循環キャビネット空気は、その後、建物暖房システムなどのCHPシステムに供給され得る。
【0117】
システム400~700は、これらに限定されないが、パワーモジュールあたりのより多くの電力、より高い効率、及び潜在的に低い資本コストという、利点を提供する。
【0118】
本明細書に記載の燃料電池システムは、必要に応じて、他の実施形態及び構成を有することができる。例えば、すべて参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2002年11月20日出願の米国出願シリアル番号10/300,021、2003年4月9日出願の米国仮出願シリアル番号60/461,190、及び、2003年5月29日出願の米国出願シリアル番号10/446,704に記載されるように、必要に応じて、他の構成要素が追加され得る。さらに、本明細書のいずれかの実施形態で説明され、及び/又は本明細書のいずれかの図で示されるいずれのシステム要素又は方法ステップも、そのような使用が明示的に説明されていない場合でも、上記の他の適切な実施形態のシステム及び/又は方法でも使用できることを理解されたい。
【0119】
上記の本発明の記載は、例示および説明の目的で提示された。網羅的であること、又は本発明を開示された正確な形態に限定することを意図するものではなく、修正および変形は、上記の教示に照らして可能であるか、又は本発明の実施から取得することができる。本記載は、本発明の原理及びその実際の適用を説明するために選択された。本発明の範囲は、本明細書に添付された特許請求の範囲及びそれらの均等物によって明記されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8