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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】シューズ
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/02 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
A43B23/02 103
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021562238
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2019047275
(87)【国際公開番号】W WO2021111529
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】波多野 元貴
(72)【発明者】
【氏名】別所 亜友
(72)【発明者】
【氏名】石指 智規
(72)【発明者】
【氏名】藤原 克己
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-077407(JP,A)
【文献】国際公開第2014/064780(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/065865(WO,A1)
【文献】特開2008-284335(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0010718(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1995677(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00- 23/30
A43C 1/00- 19/00
A43D 1/00-999/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソールと、前記ソールに下端部が取り付けられ且つ踵部を有するアッパーと、前記アッパーに設けられたクッションと、を有するシューズにおいて、
前記クッションが、前記アッパーの踵部の幅方向中央仮想線を基準にして、前記中央仮想線よりも外側に位置する踵外側クッションと、前記中央仮想線よりも内側に位置する踵内側クッションと、を有し、
前記踵外側クッションが、前記踵内側クッションよりも前記アッパーの下端部近くに延在されている延出領域を有し、
前記踵内側クッションの下縁の全体が、前記踵内側クッションの前側から後側に向かって下斜めに延びる弧状又は直線状に形成されている、シューズ。
【請求項2】
前記踵外側クッションの延出領域の面内に、独立した複数の穴部が形成されている、請求項1に記載のシューズ。
【請求項3】
前記延出領域の下縁が、前記アッパーの下端部に最も近い最下縁と、前記最下縁から前記踵外側クッションの前側に向かって上斜めに延びる弧状縁と、前記最下縁から前記踵外側クッションの後側に向かって上斜めに延びる弧状縁と、を有する、請求項1または2に記載のシューズ。
【請求項4】
前記延出領域の最下縁が前記アッパーの踵部の前後方向中央部又は前記踵部の後側寄りに位置するように、前記踵外側クッションが配置されている、請求項3に記載のシューズ。
【請求項5】
前記延出領域の単位面積当たりの重量が、下側に向かって単調減少している、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシューズ。
【請求項6】
前記延出領域の厚みが、下側に向かって単調減少している、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシューズ。
【請求項7】
前記踵外側クッションの延出領域の下縁が、前記アッパーの下端部に最も近い最下縁を有し、
前記最下縁における前記踵外側クッションの上下方向長さが、幅方向において前記最下縁に対応する前記踵内側クッションの上下方向長さよりも大きい、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のシューズ。
【請求項8】
ソールと、前記ソールに下端部が取り付けられ且つ踵部を有するアッパーと、前記アッパーに設けられたクッションと、を有するシューズにおいて、
前記クッションが、前記アッパーの踵部の幅方向中央仮想線を基準にして、前記中央仮想線よりも外側に位置する踵外側クッションと、前記中央仮想線よりも内側に位置する踵内側クッションと、を有し、
前記踵外側クッションの最大厚みが、前記踵内側クッションの最大厚みよりも大きく、
前記踵内側クッションの下縁の全体が、前記踵内側クッションの前側から後側に向かって下斜めに延びる弧状又は直線状に形成されている、シューズ。
【請求項9】
前記踵外側クッションの後側と踵内側クッションの後側が、前記アッパーの踵部の幅方向において連続している、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アッパーの踵部にクッションが設けられたシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
シューズは、ソールと、ソールに取り付けられたアッパーと、を有する。アッパーは、足のつま先から踵を含む足甲を覆う部材である。
アッパーの踵部には、足にフィットさせるために、スポンジのようなクッションが具備されている。
例えば、特許文献1には、足の形状の変化を考慮したスポンジがアッパーの踵部に具備されているシューズが開示されている。
具体的には、特許文献1の発明は、シューズの使用者がランニングした際の、シューズ内の使用者の足の変化とアッパーのズレに着目している。特許文献1には、前記ランニング時のズレによって生じる足の踵とアッパーの踵部との隙間を埋めることができるスポンジが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2014/064780
【発明の概要】
【0004】
ところで、工業的にシューズを量産する過程では、通常、ラスト(靴型)を使用してアッパーを作製する。かかるラストは、人間の足を象ったものであるが、足の形状そのものではない。すなわち、ラストは、シューズの工業的製造工程、シューズ使用時の足の形状変化、及び不特定多数の使用者に適合させることなどを考慮した、総合的な観点に基づいて立体的に成形されている。そのため、ラストを用いて成形されたアッパーの内部空間は、想定される足の大きさよりもある程度大きくなる。かかるアッパーを有するシューズは、アッパーの締め付けを調整することにより、汎用性(多数の使用者に適合できること)が付与されている。
しかしながら、シューズを実際に履く際にアッパーの締め付けを調整したとしても、ラストとアッパーの構造の組み合わせによっては、足の踵とアッパーの踵部に隙間が生じることがある。従って、より多くの使用者の踵にフィットし、履き心地の良いシューズを提供する上で、アッパーを改良する余地があるということが判ってきた。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、フィット感に優れ、履き心地の良いシューズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記のようにアッパーの締め付けを調整したとしても、シューズを実際に履いた際には、アッパーの踵部の外側に隙間が生じることを見出した。特に、アッパーの踵部の外側且つ下側に比較的大きな隙間が生じる。
足の踵は、内くるぶし付近と外くるぶし付近で形状が異なり、内外非対称である。このため、シューズを実際に履いた際には、足の踵の外側とアッパーの踵部の外側の間に隙間が生じ、特に、足の踵の外くるぶし下側に、踵の内側寄りも大きな隙間が生じ得る。つまり、アッパーの踵部の外側且つ下側に、踵部の内側且つ下側よりも比較的大きな隙間を生じることを見出した。
かかる隙間を埋めるようにクッションを配置すると、足の踵とアッパーの外側との間の隙間が実質的に消失し、アッパーが足にフィットするシューズが得られる。
【0007】
本発明の第1のシューズは、ソールと、前記ソールに下端部が取り付けられ且つ踵部を有するアッパーと、前記アッパーに設けられたクッションと、を有し、前記クッションが、前記アッパーの踵部の幅方向中央仮想線を基準にして、前記中央仮想線よりも外側に位置する踵外側クッションと、前記中央仮想線よりも内側に位置する踵内側クッションと、を有し、前記踵外側クッションが、前記踵内側クッションよりも前記アッパーの下端部近くに延在されている延出領域を有し、前記踵内側クッションの下縁の全体が、前記踵内側クッションの前側から後側に向かって下斜めに延びる弧状又は直線状に形成されている
【0009】
本発明の第2のシューズは、ソールと、前記ソールに下端部が取り付けられ且つ踵部を有するアッパーと、前記アッパーに設けられたクッションと、を有し、前記クッションが、前記アッパーの踵部の幅方向中央仮想線を基準にして、前記中央仮想線よりも外側に位置する踵外側クッションと、前記中央仮想線よりも内側に位置する踵内側クッションと、を有し、前記踵外側クッションの最大厚みが、前記踵内側クッションの最大厚みよりも大きく、前記踵内側クッションの下縁の全体が、前記踵内側クッションの前側から後側に向かって下斜めに延びる弧状又は直線状に形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシューズは、足の踵とアッパーの踵部の間の隙間をクッションによって埋めることができる。かかるシューズは、フィット感に優れ、履き心地も良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態のシューズの斜視図。
図2】同シューズを上側から見た平面図。
図3図2のIII-III線で切断した断面図。
図4】足骨とシューズの位置関係を表した参考図であって、シューズの外側から見た参考側面図。
図5】足骨とシューズの位置関係を表した参考図であって、シューズの内側から見た参考側面図。
図6】アッパーの踵部を外側から見た参考側面図(1)と、後側から見た参考背面図(2)と、内側から見た参考側面図(3)と、を順に並べて一組とした参考図。
図7】第1実施形態のクッションを第1面側から見た平面図。
図8】同クッションを第2面側から見た平面図。
図9図8のIX-IX線で切断した拡大断面図。
図10図8のX-X線で切断した拡大断面図。
図11】第1実施形態の変形例のクッションを第1面側から見た平面図。
図12】第2実施形態のクッションを第1面側から見た平面図。
図13】第2実施形態のシューズを示す参考図であって、そのシューズのアッパーの踵部を外側から見た参考側面図(4)と、後側から見た参考背面図(5)と、内側から見た参考側面図(6)と、を順に並べて一組とした参考図。
図14】第3実施形態のクッションを第2面側から見た平面図。
図15】同クッションの斜視図。
図16図14のXVI-XVI線で切断した拡大断面図。
図17図14のXVII-XVII線で切断した拡大断面図。
図18】第3実施形態のシューズを上側から見た平面図。
図19】第3実施形態のシューズを示す参考図であって、そのシューズのアッパーの踵部を外側から見た参考側面図(7)と、後側から見た参考背面図(8)と、内側から見た参考側面図(9)と、を順に並べて一組とした参考図。
図20】第4実施形態のクッションの拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、シューズを履いた際の足を基準にして、幅方向で親指側を「内側」といい、その反対側(幅方向で小指側)を「外側」という。本明細書において、ソールに近い側を「下側」といい、ソールから離れる側を「上側」という。本明細書において、「略」は、本発明の属する技術分野において許容される範囲を含むことを意味する。本明細書において、「下限値XXX~上限値YYY」で表される数値範囲は、下限値XXX以上上限値YYY以下を意味する。前記数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値~任意の上限値」を設定できるものとする。
【0013】
[第1実施形態]
<シューズの概要>
シューズ1Aは、左足用及び右足用の左右一組で構成される。各図においては、便宜上、左足用のシューズ1Aを例示している。右足用のシューズは、左足用と対称的であるため図示しない。
【0014】
本発明のシューズ1Aは、ソール2と、ソール2に取り付けられたアッパー3と、を有する。
ソール2は、地面に接する部材であり、アッパー3は、足を覆う部材である。アッパー3は、その下端部3bがソール2に取り付けられている。
アッパー3の踵部33には、クッション6Aが具備されている。
前記クッション6Aは、前記アッパー3の踵部33の幅方向中央部よりも外側に配置された踵外側クッション71と、前記アッパー3の踵部33の幅方向中央部よりも内側に配置された踵内側クッション72と、を有する。
第1実施形態においては、前記踵外側クッション71が、前記踵内側クッション72よりも前記アッパー3の下端部近くに延在されている延出領域711を有する。
以下、ソール2、アッパー3及びクッション6Aのそれぞれについて分説した後、本発明のシューズ1Aを詳述する。
【0015】
<ソール>
ソール2は、地面に接地するアウトソールを含むシューズ1Aの構成部材である。
ソール2の材質及び構造は、従来公知の材質及び構造を採用できる。
例えば、ソール2の材質は、ゴム、エラストマー、合成樹脂、又はこれらの混合物などが挙げられる。ソール2は、発泡体、非発泡体又は発泡体と非発泡体の積層物でもよい。
ソール2の構造は、1層構造でもよく、2層以上の複層構造であってもよい。ソール2は、アウトソールのみからなる、又は、アウトソールとミッドソールを有する積層構造である。例えば、複層構造のソール2は、地面に接地する部分であるアウトソールと、アウトソールの上面側に積層されたミッドソールと、を有する。
ソール2の下面(接地する部分)には、必要に応じて、任意の適切な凹凸(図示しない)が形成される。
また、図3を参照して、ソール2の上面に、必要に応じて、中敷き21が設けられていてもよい。
【0016】
<アッパー>
アッパー3は、少なくとも足の甲及び踵を覆うシューズ1Aの構成部材であり、好ましくは、足のつま先を含む足の甲及び踵を覆う部材である。
アッパー3は、ラストを用いて成形される。
アッパー3を各部位毎に大別すると、アッパー3は、足のつま先及び甲に対応する甲部31と、足の踵に対応する踵部33と、前記甲部31と踵部33の間の中間部32と、からなる。甲部31は、足の前端部を含んで足の甲を覆う部位であり、踵部33は、足の後端部を含んで足の踵を覆う部位であり、中間部32は、アッパー3から前記甲部31と踵部33を除いた残りの部位である(図4及び図5参照)。
なお、図4及び図5では、足の骨及び足の外形を実線で表し、ソール2、アッパー3及びクッション6Aを二点鎖線で表している。
ここで、足の甲及び踵は、標準的な人体の足骨格構造に基づいて特定できる。足の前端部を含む足の甲は、標準的な人体の足の第1乃至5基節骨91及び第1乃至5中足骨92の部分であり、足の踵は、踵骨93の部分である。
【0017】
アッパー3の踵部33は、図4及び図5に示すように、足の踵骨93の外側から内側にかけて覆う部位であり、図2に示す上面視で略U字状を成す部位である。
図6は、アッパー3の踵部33を三方側(外側、後側、内側)から見たときの各図を順に並べた参考図である。図6では、クッション6Aを実線で表し、ソール2及びアッパー3を二点鎖線で表している。
アッパー3の踵部33は、概念的に、後側から見た幅方向中央仮想線を基準にして2つの部位に分けることができる。すなわち、アッパー3の踵部33は、概念上、幅方向中央仮想線よりも外側に位置し且つ足の踵の外側を覆う外側部位331と、幅方向中央仮想線よりも内側に位置し且つ足の踵の内側を覆う内側部位332と、からなる。
前記幅方向中央仮想線は、アッパー3の踵部33の幅方向中央部を通り且つ上下方向に延びる仮想の線である。従って、幅方向中央仮想線は、踵部33の幅方向中央部を含んでいる。以下、「幅方向中央仮想線」を「中央仮想線」という。図6の背面図(2)の細破線は、アッパー3の踵部33の中央仮想線を示すが、実際に、このような線が引かれているわけではないことに留意されたい。
【0018】
アッパー3の上側には、使用者の足を挿入するための足挿入部35が開口されている。例えば、前記足挿入部35は、アッパー3の上端部35aで画成されている。足挿入部35を画成するアッパー3の上端部35aの側面視形状は、図4及び図5に示すように、下向きに膨らんだ弧状とされている。図1及び図2に示すように、前記足挿入部35に連通して、前後方向に延びる開口部36が形成されている。前記開口部36は、アッパー3の上前端部36aで画成されている。前記上前端部36aは、前記上端部35aに連続しており、図2に示すように、例えば、平面視略U字状に形成されている。前記上前端部36aの面内には、複数のハトメ孔37が前後方向に並んで形成されている。このハトメ孔37には、靴紐38が通されている。なお、各図において、靴紐38の一部を省略している。
さらに、必要に応じて、アッパー3は、シュータン(図示せず)を有していてもよい。シュータンは、前記開口部36を画成する上前端部36aから連続して舌状に延びる部位である。シュータンを設けることにより、前記略U字状の開口部36から足の甲が露出することを防止できる。
なお、図示例では、靴紐38を取り付けるタイプのアッパー3を例示しているが、本発明のアッパー3は、靴紐38を取り付けるタイプに限られず、靴紐を有さないタイプでもよい(図示せず)。また、図示例では、開口部36を有するタイプのアッパー3を例示しているが、本発明のアッパー3は、開口部を有さないタイプであってもよい(図示せず)。
【0019】
アッパー3の下端部3bは、ソール2の周囲に取り付けられている。アッパー3の下端部3bをソール2に取り付ける方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用でき、例えば、接着剤を用いた接着、縫製などが挙げられる。なお、アッパー3とソール2が熱融着可能な材質から形成されている場合には、熱融着によってアッパー3の下端部3bをソール2に取り付けてもよい。なお、アッパーは、中底(図示せず)を備えていてもよい。
【0020】
アッパー3の形成材料は、特に限定されず、従来公知のシート材が挙げられる。
前記シート材としては、織物又は編物などの布地、合成樹脂シート、網目状シート、及びこれらの複合シートなどが挙げられる。
アッパー3は、前記シート材を適宜な形状に裁断し、そのシート材をラストを用いて立体的に縫製又は接着することによって形成されている。
また、アッパー3の少なくとも踵部33は、クッション6Aを挿入するため、袋状に形成されている。例えば、前記踵部33は、少なくとも2枚のシート材(第1面シート材391と第2面シート材392)から形成されている。第1面シート材391と第2面シート材392の間に、クッション6Aを挿入する袋部39が形成されている。つまり、アッパー3の踵部33は、袋部39を有し、前記袋部39は、第1面シート材391と第2面シート材392で画成されている。
ここで、本明細書において、「第2面」は、足と接触する側の面を指し、「第1面」は、第2面とは反対側の面を指す。
【0021】
<クッション>
クッション6Aは、アッパー3と足の隙間を埋め、踵部のフィット性を高める部材である。
クッション6Aは、アッパー3の少なくとも踵部33に設けられる。なお、必要に応じて、アッパー3の部位のうち、踵部33以外の部位に任意の適切な形状のクッションを設けてもよい(図示せず)。
【0022】
クッション6Aは、可撓性及び復元性を有する材料で形成されている。前記可撓性は、外力(荷重)が加わると容易に変形する性質をいい、前記復元性は、外力が取り除かれると実質的に元の形状に戻る性質をいう。
クッション6Aは、例えば、スポンジ、繊維が無秩序に積層された綿状塊物などから形成され、好ましくは、スポンジから形成される。
スポンジは、気泡を有する塊状物であって可撓性及び復元性を有する塊状物である。スポンジとしては、例えば、合成樹脂、ゴム、エラストマーなどの発泡体が挙げられる。
クッション6Aの硬度は、特に限定されないが、例えば、F硬度で20度~120度であり、好ましくは40度~100度であり、より好ましくは70度~90度である。
前記F硬度は、アスカーゴム硬度計F型(高分子計器株式会社製)によって測定して得られる値である。
【0023】
図7乃至図10は、アッパーに装着する前のクッション6Aを示している。図7は、そのクッション6Aを第1面61側から見た平面図であり、図8は、同クッション6Aを第2面62側から見た平面図であり、図9及び図10は、その断面の拡大図である。
図7及び図8の細破線は、クッション6Aをアッパー3の踵部33に装着したときの、上述の踵部33の中央仮想線に対応する。なお、実際上、クッション6Aに、このような線が引かれているわけではないことに留意されたい。
本実施形態では、クッション6Aの少なくとも下方部は、前記中央仮想線(細破線)を基準にして、非対称形である。
【0024】
クッション6Aは、前記中央仮想線を基準にして、中央仮想線よりも外側に位置する踵外側クッション71と、中央仮想線よりも内側に位置する踵内側クッション72と、を有する。踵外側クッション71と踵内側クッション72は、一体的に形成されている。
踵外側クッション71は、アッパー3の踵部33の外側部位331に装着され、踵内側クッション72は、アッパー3の踵部33の内側部位332に装着される。
クッション6Aの踵外側クッション71は、踵内側クッション72よりも下側に延出された延出領域711を有する。
この踵外側クッション71の延出領域711は、図7及び図8に示すように、中央仮想線を紙面上下方向と平行にしたときに、踵内側クッション72の下縁72bよりも下側に出ている部分をいう。例えば、延出領域711は、中央仮想線にて踵外側クッション71を踵内側クッション72に折り返したときに、踵内側クッション72の下縁72bよりも下側に出ている部分に相当する。
【0025】
クッション6Aの概略的な平面視形状は、幅方向を長軸とする横長状である。
踵外側クッション71の上縁71a及び踵内側クッション72の上縁72aは、それぞれ独立して、平面視で幅方向と略平行な直線状に形成されていてもよいが、図示例では、いずれも下側に膨らんだ弧状に形成されている。踵外側クッション71の上縁71a及び踵内側クッション72の上縁72aが弧状に形成されていることにより、それらの上縁71a.72aをアッパー3の足挿入部35の形状に沿わせつつクッション6Aをアッパー3の踵部33に装着できる。
ただし、踵外側クッション71の上縁71a及び踵内側クッション72の上縁72aの平面視形状は、図示例に限られず、適宜変更してもよい。
【0026】
踵外側クッション71の延出領域711の下縁は、平面視で下側に膨らんだ弧状に形成されている。詳しくは、踵外側クッション71の延出領域711の下縁711bは、最も下側に位置する最下縁713bと、最下縁713bから踵外側クッション71の前側に向かって上斜めに延びる弧状縁712bと、最下縁713bから踵外側クッション71の後側に向かって上斜めに延びる弧状縁714bと、を有する。下縁711bが弧状に形成された前記延出領域711により、アッパー3の踵部33と足の踵の隙間を効果的に埋めることができる。特に、延出領域711の下縁711bは、全体的に弧状に形成されていることが好ましく、さらに、踵外側クッション71の下縁71bは、全体的に弧状に形成されていることがより好ましい。踵外側クッション71の下縁71bは、延出領域711の下縁711bを含んでいる。
ただし、延出領域711の下縁711bの平面視形状は、弧状に限られず、適宜変更できる。例えば、延出領域711の下縁711bが、下側に尖った略V字状に形成されていてもよい。また、延出領域711の下縁711bが、幅方向と略平行な直線状に形成されている部分を含んでいてもよく、或いは、全体的に幅方向と略平行な直線状に形成されていてもよい。
なお、クッション6Aにおいて、前側は、中央仮想線から離れる側を指し、後側は、その反対側(中央仮想線側)を指す。
【0027】
踵内側クッション72の下縁72bは、平面視で、全体的に前側から後側に向かって下斜めに延びる弧状又は直線状に形成されている。図示例では、踵内側クッション72の下縁72bは、平面視で、全体的に前側から後側に向かって下斜めに延びる弧状に形成されている。
ただし、踵内側クッション72の平面視形状は、下斜めに延びる弧状又は直線状に限られず、適宜変更できる。例えば、踵内側クッション72の下縁72bが、幅方向と略平行な直線状に形成されている部分を含んでいてもよく、或いは、全体的に幅方向と略平行な直線状に形成されていてもよい。
なお、図示例では、踵外側クッション71の上縁71aと踵内側クッション72の上縁72aの境界付近に(中央仮想線の付近に)、刻み凹部79が形成されている。同様に、踵外側クッション71の下縁71bと踵内側クッション72の下縁72bの境界付近に(中央仮想線の付近に)、刻み凹部79が形成されている。このような刻み凹部79を形成することにより、前記刻み凹部79を目印にして、クッション6Aをアッパー3の踵部33の所定位置に容易に装着できる。ただし、前記刻み凹部79が形成されていなくてもよい。
【0028】
前記クッション6Aに関して、前記最下縁713bにおける踵外側クッション71の上下方向長さH1は、幅方向において前記最下縁713bに対応する踵内側クッション72の上下方向長さH2よりも大きい。なお、最下縁713bにおける踵外側クッション71の上下方向長さH1は、最下縁713bと上縁71aとの間の上下方向長さを意味する。幅方向において最下縁713bに対応する踵内側クッション72の上下方向長さH2は、中央仮想線にて踵外側クッション71を踵内側クッション72に折り返したときに前記最下縁713bにおける踵外側クッション71の上下方向長さに重なる、踵内側クッション72の下縁72bと上縁72aの間の上下方向長さを意味する。このように踵外側クッション71の上下方向長さが大きいクッション6Aは、それをアッパー3の踵部33に装着した際に、踵外側クッション71の延出領域711をアッパー3の下端部3b近くに容易に位置させることができる。
例えば、前記踵外側クッション71の上下方向長さH1は、前記踵内側クッション72の上下方向長さH2よりも5mm以上長く、好ましくは、8mm以上長く、より好ましくは10mm以上長い。
【0029】
図9及び図10を参照して、クッション6Aの厚みは、均等であってもよいが、図示例では、クッション6Aは、上下方向において厚み差を有する。例えば、クッション6Aの下方部(踵外側クッション71の下方部及び踵内側クッション72の下方部)は、その厚みが下側に向かって単調減少している。なお、踵外側クッション71の下方部は、延出領域711の下方部を含んでおり、従って、延出領域711は、その厚みが下側に向かって単調減少している。
ここで、本明細書において、単調減少は、広義の単調減少を意味する。
前記厚みが下側に向かって単調減少しているとは、下側に向かって厚みが次第に小さくなっている場合、下側に向かって次第に厚みが小さくなっている部分と厚みが均等な部分を有する場合、及び、厚みが均等な部分とそれよりも厚みが小さいが均等な厚みの部分と前記2つの均等厚み部分の間に直角の段差部分がある場合、を含む意味である。
【0030】
図示例では、クッション6Aの下方部(踵外側クッション71の下方部及び踵内側クッション72の下方部)の厚みが、下側に向かって次第に小さくなるように形成されている。詳しくは、クッション6Aは、肉厚の観点では、均等な厚みの均等部と、下側に向かって厚みが次第に小さくなる単調減少部と、からなる。同様に、延出領域711は、肉厚の観点では、均等な厚みの均等部と、下側に向かって厚みが次第に小さくなる単調減少部と、からなる。単調減少部は、テーパ状に形成されている。
なお、クッション6A及び延出領域711は、それぞれ独立して、全体的に下側に向かって厚みが次第に小さくなっていてもよい。
【0031】
クッション6Aの厚みの具体的な数値は、特に限定されず、適宜設定できる。例えば、クッション6Aの厚み(アッパーに装着する前のクッション6Aの厚み)は、3mm~30mmであり、好ましくは8mm~20mmである。クッション6Aの厚みが均等でない場合には、前記クッション6Aの厚みは、その最大値を意味する。
【0032】
また、延出領域711は、その単位面積当たりの重量が下側に向かって単調減少している。
前記単位面積当たりの重量が下側に向かって単調減少しているとは、下側に向かって単位重量が次第に小さくなっている場合、下側に向かって単位重量が次第に小さくなっている部分と単位重量が均等な部分を有する場合、及び、単位重量が均等な部分とそれよりも単位重量が小さいが単位重量が均等な部分とがある場合、を含む意味である。
単位面積当たりの重量が下側に向かって単調減少している延出領域711は、様々な方法で構成できる
例えば、上述のように、延出領域711の厚みを下側に向かって単調減少させることにより、単位面積当たりの重量が下側に向かって単調減少している延出領域711を構成できる。
単位面積当たりの重量を下側に向かって単調減少させることにより、外力が加わったときに、下側ほど変形し易く且つ厚みが小さくなる延出領域711を構成できる。
【0033】
<シューズの詳細>
第1実施形態のシューズ1Aは、アッパー3の踵部33に、図7乃至図10に示すクッション6Aを装着したものである。
図1乃至図6を参照して、クッション6Aは、アッパー3の踵部33に装着されている。図3に示すように、クッション6Aは、アッパー3の袋部39内に挿入されている。クッション6Aは、外力が加わらない状態では、図7乃至図10に示すように平坦であるが、容易に湾曲させることができる。クッション6Aは、アッパー3の踵部33に沿うように、上面視で略U字状に湾曲させた状態で袋部39内に挿入して装着されている。なお、クッション6Aの第2面62が足に接する側となるように、クッション6Aは略U字状に湾曲されている。
クッション6Aの中央仮想線がアッパー3の踵部33の中央仮想線にほぼ一致するように位置合わせして、クッション6Aが装着されている。上述のように、上下に刻み凹部79が形成されたクッション6Aを用いることにより、前記位置合わせを容易に行える。
【0034】
図1乃至図6を参照して、クッション6Aがアッパー3の踵部33に装着された状態において、踵外側クッション71は、アッパー3の踵部33の幅方向中央部よりも外側に配置され、且つ、踵内側クッション72は、アッパー3の踵部33の幅方向中央部よりも内側に配置されている。
踵外側クッション71の延出領域711は、踵内側クッション72よりもアッパー3の下端部近くに延在されている。
具体的には、踵外側クッション71の延出領域711は、アッパー3の下端部3bにほぼ接する又は下端部3b近くに位置している。踵内側クッション72と対比すると、踵外側クッション71の延出領域711は、踵内側クッション72よりも下側に出ている。換言すると、踵外側クッション71は、踵内側クッション72よりもアッパー3の下端部3b近くに延在されている延出領域711を有する。
図4及び図6を参照して、延出領域711は、アッパー3の下端部3bに最も近い最下縁713bを有する。延出領域711は、この最下縁713bから踵外側クッション71の前側に向かって上斜めに延びる弧状縁712bと、前記最下縁713bから前記踵外側クッション71の後側に向かって上斜めに延びる弧状縁714bと、を有する。従って、延出領域711を有する踵外側クッション71は、側面視において、足の踵の外側且つ下側を覆っている。
前記延出領域711は、その最下縁713bがアッパー3の下端部3bにほぼ接するまで延在されていてもよい。或いは、図示のように、前記延出領域711は、その最下縁713bがアッパー3の下端部3bから離れていてもよい。最下縁713bがアッパー3の下端部3bから離れている場合、その最下縁713bとアッパー3の下端部3bとの距離(最下縁713bと下端部3bの上下方向における長さ)は、例えば、5mm~35mmであり、好ましくは15mm~25mmである。
特に、側面視で、延出領域711の最下縁713bがアッパー3の踵部33の前後方向中央部に又は踵部33の後側寄りに位置するように、踵外側クッション71が配置されている。図示例では、図4及び図6の側面図(1)の側面視で、延出領域711の最下縁713bがアッパー3の踵部33の後側寄りに位置するように、クッション6Aが踵部33に装着されている。
【0035】
また、最下縁713bにおける踵外側クッション71の上下方向長さは、幅方向において最下縁713bに対応する踵内側クッション72の上下方向長さよりも大きい。
詳しくは、図6の側面図(1)の符号H1で示す長さは、最下縁713bにおける踵外側クッション71の上下長さを示している。上述のように、前記上下方向長さは、最下縁713bと上縁71aとの間の長さである。図6の側面図(3)の符号H2で示す長さは、幅方向において最下縁713bに対応する踵内側クッション72の上下方向長さを示している。この踵内側クッション72の上下方向長さは、上述のように、踵内側クッション72の下縁72bと上縁72aとの間の長さである。踵内側クッション72の上下方向長さの基準となる踵内側クッション72の下縁72bは、背面図(2)を参照して、中央仮想線と最下縁713bとの幅方向同長さと同長の位置をいう。最下縁713bにおける踵外側クッション71の上下方向長さが踵内側クッション72の上下方向長さよりも大きいことにより、延出領域711によってアッパー3の踵部33と足の踵の隙間を効果的に埋めることができる。
【0036】
<本発明のシューズの利点>
上述のように、一般に、ラストを用いて作製したアッパーを有するシューズは、アッパーの踵部の外側に隙間が生じ、特に、アッパーの踵部と足の踵の外くるぶし下側との間に比較的大きな隙間が生じる傾向にある。アッパーの踵部の外側且つ下側に生じる隙間は、仮に、靴紐などでアッパーを締め付けても埋めることはできない。このように踵部の外側に隙間が生じるシューズは、例えば、使用者がシューズを履いた時やウォーキングの際などの日常生活を営む上で、履き心地が良好でない。
本実施形態のシューズ1Aは、踵外側クッション71が踵内側クッション72よりもアッパー3の下端部3b近くに延在されている延出領域711を有する。かかる延出領域711は、アッパーの踵部の外側且つ下側に生じる隙間を埋めるため、本発明のシューズ1Aは、フィット感に優れ、履き心地も良好である。
本発明者等の研究によれば、ラストを用いて作製したアッパーを有するシューズは、特に、アッパーの踵部の前後方向中央部又は踵部の後側寄りに比較的大きな隙間が生じることが判っている。この点、本実施形態のシューズ1Aは、延出領域711の最下縁713bがアッパー3の踵部33の前後方向中央部に又は前記踵部33の後側寄りに位置するように踵外側クッション71が配置されている。このため、踵外側クッション71の延出領域711によって前記アッパー3の踵部33の外側且つ下側に生じる隙間を効果的に埋めることができる。
【0037】
また、延出領域711が最下縁713bと最下縁713bの両側の弧状縁712b,714bとを有するので、延出領域711が足の踵の外側に適合し易くなり、踵部33の外側且つ下側に生じる隙間を延出領域711にて効果的に埋めることができる。特に、延出領域711の下縁711bの全体が弧状に形成されている場合、足を入れた時に延出領域711がスムースに変形し易く、さらに、延出領域711の下縁711bが足の踵に当たっても違和感を生じ難く、履き心地が向上する。また、ランニング中などの動作時において、シューズが足をホールドして動きに追従しやすいため、パフォーマンスの向上を期待できる。
【0038】
さらに、延出領域711の単位面積当たりの重量が下側に向かって単調減少しているので、シューズ1Aを履いたときに(延出領域711に外力が加わったときに)、延出領域711の下側ほど変形し易く且つ厚みが小さくなる。かかる延出領域711を含むクッション6Aを有するシューズ1Aは、踵の大きい使用者が履いた場合であっても、延出領域711が適宜変形するので、履き心地が良好である。
【0039】
<第1実施形態の変形例>
例えば、図11に示すように、前記延出領域711の面内に、独立した複数の穴部73が形成されていてもよい。穴部73は、クッション6Aの厚み方向に貫通する貫通穴でもよく、或いは、厚み方向に貫通していない非貫通穴でもよい。図示例では、穴部73は、貫通穴である。なお、穴部73は、延出領域711のみに形成されていてもよいが、図示例のように、延出領域711を越える範囲にも1つ又は幾つかの穴部73が形成されていてもよい。延出領域711に穴部73を形成すると、穴部が形成されていない場合に比して延出領域711の可撓性が向上する。かかる延出領域711を含むクッション6Aを有するシューズ1Aは、踵の大きい使用者が履いた場合であっても、延出領域711が適宜変形するので、履き心地が向上する。
穴部73の形成密度は、適宜設定できる。例えば、穴部73を下側に向かうに従って密に形成することにより、単位面積当たりの重量が下側に向かって単調減少している延出領域711を構成することもできる。
【0040】
以下、本発明の第2乃至第5実施形態を説明するが、その説明に於いては、主として上述の実施形態と異なる構成及び効果について説明し、同様の構成などについては、用語をそのまま援用し、その構成の説明を省略する場合がある。従って、第2乃至第5実施形態において特に詳細な説明がない構成については、第1実施形態で説明した構成を援用できるものとする。
【0041】
[第2実施形態]
第2実施形態は、踵外側クッションの下方部の圧縮剛性が踵内側クッションの下方部の圧縮剛性よりも大きいシューズに関する。
図12は、アッパー3に装着する前の第2実施形態のクッション6Bを示している。図12は、そのクッション6Bを第1面側から見た平面図である。同図の細破線は、クッション6Bをアッパー3の踵部33に装着したときの中央仮想線に対応する。
図13は、第2実施形態のシューズ1Bの参考図であって、図6と同様に、アッパー3の踵部33を三方側(外側、後側、内側)から見たときの各図を順に並べた参考図である。図13では、クッション6Bを実線で表し、ソール2及びアッパー3を二点鎖線で表している。
本実施形態のシューズ1Bも、第1実施形態と同様に、ソール2と、ソール2に下端部が取り付けられたアッパー3と、アッパー3の踵部33に設けられたクッション6Bと、を有し、クッション6Bが、アッパー3の踵部33の幅方向中央部よりも外側に配置された踵外側クッション71と、前記アッパー3の踵部33の幅方向中央部よりも内側に配置された踵内側クッション72と、を有する。
【0042】
<クッション>
図12を参照して、クッション6Bは、前記中央仮想線(細破線)を基準にして、略対称形である。
ただし、本実施形態においても、クッション6Bは、中央仮想線を基準にして非対称形であってもよい。
踵外側クッション71は、前記中央仮想線よりも外側に位置し、踵内側クッション72は、前記中央仮想線よりも内側に位置している。
クッション6Bの幅方向中央部の下縁78bを基準にして、踵外側クッション71の下方部715と踵内側クッション72の下方部725は、いずれもその下縁78bよりも下側に延出されている。以下、本実施形態の欄において、「踵外側クッション71の下方部715」を「外側下方部715」といい、「踵内側クッション72の下方部」を「内側下方部725」という。
外側下方部715の延出度合い(上下方向長さ)と内側下方部725の延出度合い(上下方向長さ)は、同じでもよく、或いは、異なっていてもよい。好ましくは、外側下方部715の延出度合いと内側下方部725の延出度合いが同じ、又は、外側下方部715の延出度合いが内側下方部725の延出度合いよりも大きい。
図示例では、外側下方部715及び内側下方部725のいずれも、上記第1実施形態の延出領域711と同程度に延出されている。
【0043】
剛性の観点では、外側下方部715は、その圧縮剛性が内側下方部725の圧縮剛性よりも大きい。
ここで、圧縮剛性は、厚み方向への潰れ易さをいう。厚み方向に外力が加わった際に、圧縮剛性の大きい外側下方部715は、内側下方部725よりも潰れ難いと言える。
【0044】
内側下方部725よりも圧縮剛性の大きい外側下方部715は、下記(a)乃至(f)の方法で構成できる。
(a)例えば、図12に示すように、内側下方部725に複数の穴部74(貫通穴又は非貫通穴)を形成し、且つ、外側下方部715に穴部を形成しないことにより、内側下方部725よりも圧縮剛性の大きい外側下方部715を構成できる。
(b)内側下方部725に複数の穴部を形成し、且つ、外側下方部715に踵内側クッション72よりも小さい穴部を形成する又は/及び踵内側クッション72よりも個数の少ない穴部を形成することにより(図示せず)、内側下方部725よりも圧縮剛性の大きい外側下方部715を構成できる。
(c)クッション6Bがスポンジから構成される場合、外側下方部715を内側下方部725よりも発泡倍率の小さいスポンジで形成することにより、内側下方部725よりも圧縮剛性の大きい外側下方部715を構成できる。
(d)内側下方部725を比較的軟らかく且つ可撓性に優れた材質で形成し、且つ、外側下方部715をそれよりも硬い材質で形成する又はそれよりも硬い材質を含む複層構造物で形成する比較的軟らかく且つ可撓性に優れた材質で形成することにより、内側下方部725よりも圧縮剛性の大きい外側下方部715を構成できる。
(e)上記(a)乃至(d)から選ばれる少なくとも2つの方法を組み合わせる。
(f)上記(a)乃至(d)以外の方法、或いは、上記(a)乃至(d)以外の方法と上記(a)乃至(d)から選ばれる少なくとも1つの方法を組み合わせる。
外側下方部715の圧縮剛性と内側下方部725の圧縮剛性の差は、特に限定されないが、例えば、外側下方部715の圧縮剛性は、内側下方部725の圧縮剛性の1.1倍~4倍であり、好ましくは2倍~3倍である。
【0045】
本実施形態においても、踵外側クッション71の下縁及び踵内側クッション72の下縁の平面視形状は、特に限定されず、適宜な形状に形成される。
例えば、外側下方部715の下縁715bは、上記第1実施形態の延出領域711と同様であり、平面視で下側に膨らんだ弧状に形成されている。
内側下方部725の下縁725bも、例えば、平面視で下側に膨らんだ弧状に形成されている。
【0046】
本実施形態においても、クッション6Bの厚みは、均等であってもよく、或いは、厚み差を有していてもよい。
図示例では、外側下方部715及び内側下方部725は、その厚みが下側に向かって単調減少している。
【0047】
<シューズ>
図12に示すようなクッション6Bをアッパー3の踵部33に装着することにより、第2実施形態のシューズ1Bを構成できる。
図13を参照して、クッション6Bは、アッパー3の踵部33に装着されている。特に図示しないが、本実施形態においても、クッション6Bは、アッパー3の袋部39内に挿入されている。クッション6Bは、アッパー3の踵部33に沿うように、上面視で略U字状に湾曲させた状態で袋部39内に挿入して装着されている。
【0048】
図13を参照して、踵外側クッション71は、アッパー3の踵部33の中央仮想線(幅方向中央部)よりも外側に配置され、且つ、踵内側クッション72は、アッパー3の踵部33の幅方向中央部よりも内側に配置されている。
図13の側面図(4)を参照して、外側下方部715の下縁715bは、アッパー3の下端部3b近くに位置している。特に、前記外側下方部715の最下縁715bは、側面視で、アッパー3の踵部33の前後方向中央部に又は踵部33の後側寄りに位置している。
同図の側面図(6)を参照して、内側下方部725の下縁725bは、アッパー3の下端部3b近くに位置している。特に、前記内側下方部725の最下縁725bは、側面視で、アッパー3の踵部33の前後方向中央部に又は踵部33の後側寄りに位置している。
【0049】
本実施形態のシューズ1Bは、外側下方部715がアッパー3の下端部3b近くに位置しているため、踵部33の外側且つ下側に生じる隙間をその外側下方部715にて埋めることができる。一方、内側下方部725もアッパー3の下端部3b近くに位置しているが、内側下方部725は、外側下方部715よりも圧縮剛性が小さいため(換言すると、外側下方部715は、内側下方部725よりも圧縮剛性が大きいため)、外力により容易に圧縮される。
上述のように、本発明者等の研究によれば、ラストを用いて作製したアッパーを有するシューズは、特に、アッパーの踵部の外側且つ下側に生じる隙間が踵部の内側且つ下側に生じる隙間よりも大きい。
この点、本実施形態のシューズ1Bは、比較的大きな隙間を生じ得るアッパー3の踵部33の外側且つ下側に、圧縮剛性の大きい外側下方部715が位置しているので、その隙間を埋めることができる。また、比較的小さな隙間を生じ得るアッパー3の踵部33の内側且つ下側に、圧縮剛性の小さい内側下方部725が位置しているので、シューズ1Bを履いた際に、その内側下方部725が容易に圧縮され、その小さい隙間を内側下方部725で埋めることができる。このため、フィット感に優れ、履き心地が良好なシューズ1Bを提供できる。
【0050】
[第3実施形態]
第3実施形態は、踵外側クッションの最大厚みが踵内側クッションの最大厚みよりも大きいシューズに関する。
図14乃至図17は、アッパー3に装着する前の第3実施形態のクッション6Cを示している。なお、図14は、そのクッション6Cを第2面側から見た平面図である。同図の細破線は、クッション6Cをアッパー3の踵部33に装着したときの中央仮想線に対応する。
図18は、第3実施形態のシューズ1Cを上側から見た平面図である。図19は、同シューズ1Cの参考図であって、図6と同様に、アッパー3の踵部33を三方側(外側、後側、内側)から見たときの各図を順に並べた参考図である(クッション6Cを実線で表し、ソール2及びアッパー3を二点鎖線で表している)。
本実施形態のシューズ1Cも、第1実施形態と同様に、ソール2と、ソール2に下端部が取り付けられたアッパー3と、アッパー3の踵部33に設けられたクッション6Cと、を有し、クッション6Cが、アッパー3の踵部33の幅方向中央部よりも外側に配置された踵外側クッション71と、前記アッパー3の踵部33の幅方向中央部よりも内側に配置された踵内側クッション72と、を有する。
【0051】
<クッション>
図14乃至図17を参照して、クッション6Cは、前記中央仮想線(細破線)を基準にして、非対称形である。
ただし、本実施形態においても、クッション6Cは、中央仮想線を基準にして略対称形であってもよい。
踵外側クッション71は、前記中央仮想線よりも外側に位置し、踵内側クッション72は、前記中央仮想線よりも内側に位置している。
本実施形態においては、クッション6Cの幅方向中央部の下方部781が、踵外側クッション71の下縁71b及び踵内側クッション72の下縁72bよりも下側に延出されている。この場合、クッション6Cの幅方向中央部の上下方向長さが、踵外側クッション71及び踵内側クッション72の各上下方向長さよりも大きい。図示例では、踵外側クッション71の上下方向長さが踵内側クッション72の上下方向長さよりも大きい。
なお、本実施形態のクッション6Cにおいても、上記第1実施形態と同様に、踵外側クッション71が幅方向中央部の下縁78b及び踵内側クッション72の下縁72bよりも下側に延出された延出領域を有していてもよく(図示せず)、或いは、上記第2実施形態と同様に、踵外側クッション71の下方部及び踵内側クッション72の下方部が幅方向中央部の下縁よりも下側に延出されていてもよい。
【0052】
本実施形態においては、踵外側クッション71の最大厚みが踵内側クッション72の最大厚みよりも大きい点を特徴とする。
具体的には、図15乃至図17に示すように、踵外側クッション71の厚みは、踵内側クッション72の厚みよりも大きい。踵外側クッション71の最大厚みが踵内側クッション72の最小厚みよりも大きいという条件を満たしていることを条件として、踵外側クッション71は、均等な厚みでもよく、踵内側クッション72も均等な厚みでもよい。
図示例では、踵外側クッション71及び踵内側クッション72の厚みは、幅方向において連続的に変化している。詳しくは、踵外側クッション71は、中央仮想線から離れるに従って徐々に厚みが大きくなり、幅方向の中途部で最も厚みが大きくなった後、端部に向かうに従って徐々に厚みが小さくなっている。特に、踵外側クッション71の幅方向の中途部上側において最も厚みが大きくなっている。図14に、踵外側クッション71の最も厚みが大きい部分716(以下、最大厚み部716という)に、網掛けを付している。踵内側クッション72は、中央仮想線から離れるに従って徐々に厚みが小さくなっている。従って、踵内側クッション72は、中央仮想線付近で最も厚みが大きいが、この踵内側クッション72の最大厚みは、踵外側クッション71の最大厚み部716の厚みよりも小さい。
好ましくは、踵外側クッション71の最大厚み部716が、クッション6Cの中で最も厚みが大きい部分である。
踵外側クッション71の最大厚みと踵内側クッション72の最大厚みの差は、特に限定されないが、例えば、踵外側クッション71の最大厚みが踵内側クッション72の最大厚みの1.1倍~3倍であり、好ましくは1.5倍~2.5倍である。
【0053】
<シューズ>
図14乃至図17に示すようなクッション6Cをアッパー3の踵部33に装着することにより、第3実施形態のシューズ1Cを構成できる。
図18及び図19を参照して、クッション6Cは、アッパー3の踵部33に装着されている。特に図示しないが、本実施形態においても、クッション6Cは、アッパー3の袋部内に挿入されている。
図19の背面図(8)を参照して、クッション6Cの幅方向中央部の下縁78bは、アッパー3の下端部3b近くに位置している。また、側面図(7)を参照して、踵外側クッション71は、踵部33の中央仮想線よりも外側に配置されており、特に、踵外側クッション71の最大厚み部716は、側面視で、アッパー3の踵部33の後側寄りに位置している。側面図(9)を参照して、踵内側クッション72は、アッパー3の踵部33の幅方向中央部よりも内側に配置されている。
【0054】
本実施形態のシューズ1Cは、踵外側クッション71の最大厚みが踵内側クッション72の最大厚みよりも大きいので、踵部33の外側に生じる隙間を埋めることができる。
本発明者等の研究によれば、ラストを用いて作製したアッパーを有するシューズは、アッパーの踵部の外側に生じる隙間が踵部の内側に生じる隙間よりも大きい。この点、本実施形態のシューズ1Cは、比較的大きな隙間を生じ得るアッパー3の踵部33の外側に配置される踵外側クッション71の厚みを踵内側クッション72よりも大きくしているので、外側の隙間を効果的に埋めることができる。
【0055】
[第4実施形態]
上記各実施形態のクッションは、単一構造の部材からなるが、例えば、図20に示すように、クッション6Aは、複層構造であってもよい。図示例のクッションは、2層構造であり、例えば、第1のスポンジ材611と第2のスポンジ材612が接着層613を介して接合された2層構造である。また、特に図示しないが、第1乃至第3スポンジ材が積層された3層構造などであってもよい。なお、図20は、第1実施形態のクッション6Aを複層構造にした場合を例示的に図示しているが、第2実施形態などのクッションも複層構造にしてもよい。
【0056】
また、上記各実施形態のクッションは、踵外側クッション71と踵内側クッション72が一体的に形成されている(つまり、踵外側クッション71の後側と踵内側クッション72の後側がアッパーの踵部の幅方向中央部において連続している)が、踵外側クッション71と踵内側クッション72が別々に形成されていてもよい。踵外側クッション71と踵内側クッション72が独立している場合、踵外側クッション71をアッパー3の踵部33の外側(外側部位331)に装着し、踵内側クッション72をアッパー3の踵部33の内側(内側部位332)に装着することにより、本発明のシューズが構成される。
【0057】
[第5実施形態]
上記1乃至第4実施形態から選ばれる2つ以上の構成(実施形態)を適宜組み合わせてもよく、或いは、上記様々な実施形態から選ばれる1つ又は2つ以上の構成を、それ以外の実施形態に置換してもよい。
例えば、第2実施形態で示した圧縮剛性の異方性を、第1実施形態に適用してもよい。具体的には、第1実施形態の延出領域711の圧縮剛性が踵内側クッション72の圧縮剛性よりも大きくなるように、踵外側クッション71が構成されていてもよい。
また、第3実施形態で示した厚み差を、第1実施形態に適用してもよい。具体的には、第1実施形態の踵外側クッション71の最大厚みが踵内側クッション72の最大厚みよりも大きくなるように、クッション6Aを形成する。この場合、第1実施形態の踵外側クッション71の上方部(踵外側クッション71のうち延出領域711の上側の部分)が、最大厚み部とされることが好ましい。これにより、第1実施形態と第3実施形態の効果が相乗し、アッパーの踵部の外側に生じる隙間を確実に埋めることができる。
【0058】
[その他]
上述した各実施形態の説明には、以下の態様が含まれる。
前記シューズにおいて、前記踵外側クッションの延出領域の下縁が、前記アッパーの下端部に最も近い最下縁と、前記最下縁から前記踵外側クッションの前側に向かって上斜めに延びる弧状縁と、前記最下縁から前記踵外側クッションの後側に向かって上斜めに延びる弧状縁と、を有する。最下縁とその両側の弧状縁とを有する延出領域は、足の踵の外側に適合し易くなり、踵部の外側且つ下側に生じる隙間を効果的に埋めることができる。
【0059】
前記シューズにおいて、前記延出領域の最下縁が前記アッパーの踵部の前後方向中央部又は前記踵部の後側寄りに位置するように、前記踵外側クッションが配置されている。このような位置に延出領域が配置されていることにより、踵部の外側且つ下側に生じる隙間を効果的に埋めることができる。
【0060】
前記シューズにおいて、前記踵内側クッションの下縁の全体が、前記踵内側クッションの前側から後側に向かって下斜めに延びる弧状又は直線状である。
本発明者等の研究によれば、シューズを履いた時には、足の踵の内くるぶし下側には殆ど隙間が生じないことが判っている。踵内側クッションの前側から後側に向かって下斜めに延びる弧状又は直線状に形成されていることにより、足の踵の内側且つ下側とアッパーの踵部の間に、クッションが介在せず、足の踵の内側においてもフィット感に優れたシューズを提供できる。
【0061】
前記シューズにおいて、前記延出領域の単位面積当たりの重量が下側に向かって単調減少している。例えば、前記延出領域の厚みが、下側に向かって単調減少している。このような延出領域を有するシューズは、踵の大きい使用者が履いた場合であっても延出領域が適宜変形するので、履き心地が向上する。
【0062】
前記シューズにおいて、前記踵外側クッションの延出領域の下縁が、前記アッパーの下端部に最も近い最下縁を有し、前記最下縁における前記踵外側クッションの上下方向長さが、幅方向において前記最下縁に対応する前記踵内側クッションの上下方向長さよりも大きい。このような延出領域を有するシューズは、延出領域によってアッパーの踵部と足の踵の隙間を効果的に埋めることができる。
【0063】
前記シューズにおいて、前記踵外側クッションの後側と踵内側クッションの後側が、前記アッパーの踵部の幅方向中央部において連続している。踵外側クッションと踵内側クッションが連続したクッションは、それらのクッションを別体で構成する場合に比して、アッパーの踵部への装着作業を簡素化できる。
【符号の説明】
【0064】
1A,1B,1C シューズ
2 ソール
3 アッパー
33 アッパーの踵部
6A,6B,6C クッション
71 踵外側クッション
711 延出領域
712b,714b 延出領域の弧状縁
713b 延出領域の最下縁
72 踵内側クッション
72b 踵内側クッションの下縁
図1
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