(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】クレアチニンを検出するための分析物センサ及び検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20240430BHJP
G01N 27/30 20060101ALI20240430BHJP
G01N 27/327 20060101ALI20240430BHJP
A61B 5/1486 20060101ALI20240430BHJP
A61B 5/1473 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
G01N27/416 336J
G01N27/30 A
G01N27/327 353U
G01N27/327 353B
G01N27/327 353R
A61B5/1486
A61B5/1473
(21)【出願番号】P 2022137913
(22)【出願日】2022-08-31
(62)【分割の表示】P 2021543439の分割
【原出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-09-29
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500211047
【氏名又は名称】アボット ダイアベティス ケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT DIABETES CARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】オーヤン、ティエンメイ
(72)【発明者】
【氏名】フェルドマン、ベンジャミン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヒョン
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-039817(JP,A)
【文献】特開平03-053896(JP,A)
【文献】特表2008-516235(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0181189(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00409345(EP,A1)
【文献】YAMATO,H.,ANAL.CHEM.,1995年09月01日,V67 N17,P2776-2780
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
A61B 5/1486
A61B 5/1473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物センサであって:
少なくとも第1の作用電極を含むセンサテール;
第1の作用電極の表面に配置されたクレアチニン応答性活性領域であって、第1のポリマー、第1のポリマーに共有結合された第1の電子移動剤、及びクレアチニンの検出を容易にするための酵素系であって、
クレアチニンアミドヒドロラーゼ、
クレアチンアミ
ジノヒドロラーゼ、及び
サルコシンオキシダーゼ
を含む酵素系を含むクレアチニン応答性活性領域;
クレアチニンに対して透過性であり、前記クレアチニン応答性活性領域を覆う第1の膜;及び
前記センサテール上かつ前記クレアチニン応答性活性領域の近くに配置された酸素スカベンジャーを含む、分析物センサ。
【請求項2】
前記酸素スカベンジャーは、第1の膜によって前記クレアチニン応答性活性領域から離隔されている、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項3】
前記酸素スカベンジャーはオキシダーゼ酵素を含む、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項4】
前記酸素スカベンジャーはグルコースオキシダーゼを含む、請求項3に記載の分析物センサ。
【請求項5】
前記酸素スカベンジャーは第1の膜上に配置されている、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項6】
前記酸素スカベンジャー及び第1の膜上に第2の膜が配置されている、請求項5に記載の分析物センサ。
【請求項7】
クレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミ
ジノヒドロラーゼ、及びサルコシンオキシダーゼはそれぞれ、第1のポリマーに共有結合している、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項8】
第1の作用電極の表面に配置されたグルコース応答性活性領域をさらに含み、前記グルコース応答性活性領域は、第2の電子移動剤、第2のポリマー、及びグルコースオキシダーゼを含む、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項9】
第1の電子移動剤と第2の電子移動剤とは異なる、請求項8に記載の分析物センサ。
【請求項10】
第2の作用電極、及び
第2の作用電極の表面に配置されたグルコース応答性活性領域
をさらに含み、前記グルコース応答性活性領域は、第2の電子移動剤、第2のポリマー、及びグルコースオキシダーゼを含む、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項11】
前記グルコース応答性活性領域を覆う、グルコースに対して透過性である第2の膜をさらに含む、請求項10に記載の分析物センサ。
【請求項12】
第1の電子移動剤と第2の電子移動剤とは同じである、請求項10に記載の分析物センサ。
【請求項13】
前記酸素スカベンジャーは、第1の膜によって前記クレアチニン応答性活性領域から離隔されている、請求項10に記載の分析物センサ。
【請求項14】
前記酸素スカベンジャーはオキシダーゼ酵素を含む、請求項10に記載の分析物センサ。
【請求項15】
前記酸素スカベンジャーはグルコースオキシダーゼを含む、請求項14に記載の分析物センサ。
【請求項16】
前記酸素スカベンジャーは第1の膜上に配置されている、請求項11に記載の分析物センサ。
【請求項17】
第1の膜及び第2の膜は、組成的に同じである、請求項11に記載の分析物センサ。
【請求項18】
第1の膜上に配置された前記酸素スカベンジャーは、クレアチニンに対して透過性である第3の膜によって覆われている、請求項16に記載の分析物センサ。
【請求項19】
第1の膜、第2の膜、及び第3の膜は、組成的に同じである、請求項18に記載の分析物センサ。
【請求項20】
請求項1に記載の分析物センサを、少なくともクレアチニンを含む流体に曝露すること、
第1の作用電極に電位を印加すること、
前記クレアチニン応答性活性領域の酸化還元電位以上で、前記流体中のクレアチニンの濃度に比例する第1のシグナルを取得すること、及び
第1のシグナル
に基づいて前記流体中のクレアチニンの濃度
を決定すること
を含む
、クレアチニンをアッセイする方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
個体内の様々な分析物の検出は、健康やウェルビーイングの状態をモニタリングするために時として不可欠な場合がある。通常の分析物レベルからの逸脱は、代謝状態や病気などの根本的な生理学的状態、又は特定の環境条件への曝露を示していることがよくある。単一の分析物が特定の生理学的状態に対して単独で調節不全になる場合があるが、同じ生理学的状態のため、又は併存する(関連する)生理学的状態の結果として、複数の分析物が同時に調節不全になる場合もある。複数の分析物が同時に調節不全になると、調節不全の程度は分析物ごとに異なる場合がある。そのため、個体の健康状態をきちんと評価するには、各分析物をモニタリングする必要がある。
【0002】
採取した体液を使用した定期的な生体外分析物モニタリングは、多くの個人の所与の生理学的状態を観察するのに十分な場合がある。しかしながら、特に体液の採取又は収集をかなり頻繁に(例えば、1日に数回)行う必要がある場合、生体外分析物モニタリングは一部の人にとって不便であるか又は痛みを伴う可能性がある。埋め込まれた生体内分析物センサを使用する継続的な分析物モニタリングは、重度の分析物調節不全及び/又は急速に変動する分析物レベルを有する個人にとってより望ましいアプローチであるが、提供される利便性によって、他の個人にも有益である可能性がある。継続的な分析物モニタリングにより、個人又は医師は、臓器の損傷や障害などのより重大な健康への影響につながる機会に至る前に、異常な分析物レベルに積極的に対処することができる。皮下、間質、又は皮膚分析物センサは、多くの場合、ユーザーの不快感を最小限に抑えながら、この目的に十分な測定精度を提供できる。
【0003】
適切な検出化学を特定できれば、多くの分析物が生理学的分析の興味深いターゲットとなる。この目的のために、生体内でグルコースをアッセイするために構成されたアンペロメトリックセンサが、糖尿病患者の健康をモニタリングするのを助けるために、近年開発され、改良されてきた。糖尿病患者において一般的にグルコースと同時に調節不全を受ける他の分析物には、例えば、乳酸、酸素、pH、A1c、ケトンなどが含まれる。グルコースと共に一般的に調節不全になる分析物を検出するように構成されたセンサは知られているが、現状では精度はかなり低い。
【0004】
生体内分析物センサは、通常、特定の分析を提供するために単一の分析物を分析するように構成され、しばしば酵素を使用して、所与の分析物に高い特異性を提供する。そのような分析特異性のために、グルコースをアッセイするために構成された現在の生体内分析物センサの大抵のものは、グルコースと共に調節不全であることが多いか、又は調節不全のグルコースレベルに起因する他の分析物をアッセイするのに効果がない。良くても、現在の分析物モニタリングアプローチは、2つの異なる生体内分析物センサであって、一方はグルコースを分析するように構成され、他方は目的の別の分析物を分析するように構成されたセンサを糖尿病患者が装着することを必要とする。複数の生体内分析物センサを使用する分析物モニタリングアプローチは、ユーザにとって非常に不便なものとなり得る。さらに、複数の生体内分析物センサが分析物モニタリングに使用される場合、機器のコスト負担が増加し、個々の生体内分析物センサの少なくとも1つが故障する可能性が統計的に高くなる。
【0005】
糖尿病患者は、多くの場合、特に併存疾患の影響を受けやすく、これは、インスリンレベルの管理ミスに起因することもあるし、長期間にわたって糖尿病を適切に管理した場合ですら結果的に生じる可能性がある。一例として、糖尿病性ニューロパチーは、高血糖値に起因する場合があり、最終的に腎不全を引き起こす可能性がある。糖尿病性ニューロパチーは、米国における腎不全の主な原因であり、疾患の最初の10~20年以内にかなりの数の糖尿病患者が経験している。腎機能を評価するための診断テストは、現在、血液及び/又は尿サンプル中のクレアチニンレベルの上昇の測定に基づいている。潜在的な腎不全をできるだけ早く検出することが望ましいが、現在の診断テストのアプローチは通常、クレアチニンレベルが持続的に増加しているか、経時的に上昇傾向にあることを確認するために長期間(数か月から数年)にわたって実施される。従来のクレアチニンモニタリングの頻度が低いと、腎機能の異常が十分に早期に検出されない場合に腎不全が発生するリスクが高まる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
添付の図面は、本開示の特定の態様を説明するために含まれており、排他的な実施形態として見なされるべきではない。開示された主題は、本開示の範囲から逸脱することなく、形態及び機能においてかなりの修正、変更、組み合わせ、及び同等物が可能である。
【
図1】本開示の分析物センサを組み込むことができる例示的な検知システムの図を示す。
【
図2A】本開示によるクレアチニンを検出するために使用され得る協調酵素系の例を示す。
【
図3A】クレアチニンを検出するのに適した活性領域を有する例示的な分析物センサの断面図を示す。
【
図4A】単一の作用電極、及び、クレアチニン及びグルコースを検出するのに適した活性領域を有する例示的な分析物センサの断面図を示す。
【
図5】2つの作用電極、及び、クレアチニン及びグルコースを検出するのに適した活性領域を有する例示的な分析物センサの断面図を示す。
【
図6A】互いに同心円状に配置された電極を特徴とする例示的な分析物センサの斜視図を示す。
【
図7A】膜及びその上に配置された酸素スカベンジャーを有するクレアチニン応答性活性領域の図を示す。
【
図8】様々なクレアチニン濃度に曝露されたときの、グルコースオキシダーゼで覆われたクレアチニン応答性活性領域を含むセンサの3つの複製に対する電流応答の例示的なプロットを示す。
【
図9】様々なクレアチニン濃度に曝露されたときの、グルコースオキシダーゼで覆われたクレアチニン応答性活性領域を含む単一のセンサの電流応答の例示的なプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
本開示は、概して、1つ以上の分析物を検出するために複数の酵素を使用する分析物センサ、より具体的には、少なくともクレアチニン、及び任意選択で他の分析物を検出するために複数の酵素を使用する分析物センサ、ならびにそれらを使用するための対応する方法を説明する。
【0008】
上述したように、特定の基質又は基質のクラスに対する酵素のよく見られる特異性のために、酵素を使用する分析物センサは通常、グルコースなどの単一の分析物をモニタリングするために使用される。適切な検出化学を特定できれば、他の分析物もモニタリングすることができる。複数の分析物のモニタリングは、各分析物を個別に検出するために、対応する数の分析物センサを使用する必要があるため、複雑になる場合がある。このアプローチは、特に複数の分析物を生体内でモニタリングする場合、例えば、複数の分析物センサのコストや、複数の分析物センサを装着するときのユーザの不快感、及び個々の分析物センサの故障の統計的確率の増大などの問題のために、問題となるか又は望ましくない可能性がある。
【0009】
グルコース応答性分析物センサは、糖尿病患者が健康をよりよく管理するのを支援するために、十分に研究されており、かつまだ発展している分野である。糖尿病患者における併存疾患の有病率にもかかわらず、グルコースと共に調節不全になることが多い他の分析物の生体内モニタリングに適切なセンサ化学は、より開発が進んでいるグルコース検出化学に対し著しく遅れをとっている。例えば、クレアチニンは、腎不全になりやすい個人、特に糖尿病性ニューロパチーのリスクがある糖尿病患者のモニタリングに特に関心のある分析物となり得る。
【0010】
本開示は、クレアチニンに応答する分析物センサを提供する。具体的には、本開示は、クレアチニンレベルを継続的に又はほぼ継続的に生体内でモニタリングするために身体に装着することができる分析物センサを提供する。本明細書に開示される分析物センサを用いたクレアチニンレベルの分析は、個人又は医療提供者に、定期的な生体外の実験室測定で可能な程度よりも、長期間にわたる腎機能のより正確な表示を提供し得る。本開示に従ってクレアチニンレベルを分析することにより、早期の医療介入を可能にして潜在的な腎障害を制限し、個人の全体的な健康転帰を改善することが可能となり得る。
【0011】
クレアチニンから作用電極に直接電子を移動させることができる既知の酵素がないため、単一の酵素反応を使用したクレアチニンの電気化学的検出は実行可能ではない。本開示は、広いクレアチニン濃度範囲にわたって良好な応答安定性を有するクレアチニンを検出するのに適したセンサ化学を提供することにより、この欠陥を補う。特に、本開示は、クレアチニンの検出を容易にするために協調して作用することができる複数の酵素を含む酵素系を利用する。本明細書で使用される場合、「協調して」という用語は、第1の酵素反応の生成物が第2の酵素反応の基質となり、第2の酵素反応が、第1の酵素反応中に反応した基質(分析物)の濃度測定の基礎として機能する組み合わされた酵素反応を指す。2つの組み合わされた酵素反応に関して定義されているが、場合によっては、3つ以上の酵素反応が同様に組み合わされ得ることが理解されるべきである。例えば、第1の酵素反応の生成物は、第2の酵素反応の基質となり得、第2の酵素反応の生成物は、第3の酵素反応の基質となり得、第3の酵素反応が、第1の酵素反応中に反応した基質(分析物)の濃度測定の基礎として機能する。以下でさらに述べるように、本開示によるクレアチニンを検出するための適切な酵素系は、酸素クリアランスを促進するための第4の酵素又は他の酸素スカベンジャーとともに、協調して作用する3つの酵素を使用する。第4の酵素又は他の酸素スカベンジャーは、協調酵素反応には直接関与しないが、代わりに酸素との望ましくない副反応の発生を防ぐ。
【0012】
クレアチニンの場合のように、単一の酵素では検出を容易にすることができない場合、目的の分析物を検出するために、互いに協調して作用する2つ以上の酵素を利用することが望ましい場合がある。単一の酵素が分析物の検出を促進するのに効果がない可能性がある状況には、例えば、1つ以上の反応生成物によって阻害されるか、又は分析物センサ内に配置されると、酸化状態と還元状態との間を循環できない状況、及び/又は検出を容易にするために検出に必要な望ましい反応経路を促進するための酵素が知られていない状況が含まれる。クレアチニンの場合、クレアチニンのクレアチンへの酵素的変換は加水分解的に起こり、この分析物の検出を促進するために作用電極に電流を提供するための酸化状態の変化をもたらさない。本明細書の開示に従って協調して作用する複数の酵素を含む酵素系は、この困難を軽減し得る。
【0013】
本明細書に開示されるクレアチニンセンサは、潜在的に腎臓の損傷又は腎不全のリスクがある個人のクレアチニンレベル(及び腎機能)をモニタリングするのに有利であり得るが、糖尿病性ニューロパチーの有病率のために糖尿病の個人に特に有益である可能性がある。クレアチニンレベルを単独でモニタリングすることも有益であり得るが、特にグルコースモニタリングがすでに糖尿病患者によって日常的に行われていることを考えると、糖尿病患者がグルコースとクレアチニンレベルの両方をモニタリングして健康転帰を改善することも可能である。本開示は、各分析物に応答する1つ以上の生体内分析物センサを使用するグルコース及びクレアチニンの両方のモニタリングを提供し、特に有利な構成では、生体内で両方の分析物に応答する単一の分析物センサを使用することができる。有利かつ驚くべきことに、単一のセンサテール上にグルコース及びクレアチニンの両方の検知機能を組み込んだ分析物センサは、本明細書の開示を使用することによって製造され得る。
【0014】
図2A及び2Bを参照して以下でさらに述べるように、本開示のクレアチニン応答性活性領域は、そこに示される酵素系を使用してクレアチニンの検出を容易にするために酸素スカベンジャーを利用することができる。オキシダーゼ酵素は、特定のセンサ構成で酸素スカベンジャーとして機能し得る。グルコースはクレアチニンも含む体液に広く存在するため、グルコースオキシダーゼは特に有利な酸素スカベンジャーである可能性があり、その場合、グルコースは酸素を除去するための試薬として機能し得る(以下の反応1を参照)。酸素スカベンジャーは、クレアチニン応答性活性領域を有する作用電極でシグナルを生成しないように(すなわち、酸化反応を促進することによって酸素を除去する際に)、膜によってクレアチニン応答性活性領域から電気的に隔離され得る。クレアチニン応答性活性領域内での効果的な酸素除去を促進するために、酸素スカベンジャーを膜上に配置することができる。膜上に配置されることに加えて、酸素スカベンジャーは、膜から離隔したセンサテール上の第2の位置に配置されてもよく、ここで、離隔した酸素スカベンジャーは、離隔位置において別様に機能し得る(例えば、グルコース応答性活性領域におけるグルコースの検出を促進することによって)。離隔した酸素スカベンジャーがどのように、及びどこに配置されるか応じて、酸素スカベンジャーは、その酸素除去機能に加えて、別の分析物、特にグルコースの検出を促進するために活性又は不活性になる。グルコースの検出を促進するのに不活性である場合、グルコースオキシダーゼは、作用電極から電気的に隔離され得、その結果、この酵素によって促進される酸化反応(酸素除去)は、作用電極での電流生成をもたらさない。グルコースオキシダーゼがグルコース検出の促進及び酸素除去の両方のために活性である場合、グルコースオキシダーゼは、第2の作用電極上に配置されるか、又はクレアチニン応答性活性領域を有する作用電極上に配置されるグルコース応答性活性領域に存在し得ることで、それぞれから別々のシグナルが得られる。クレアチニン応答性活性領域及びグルコース応答性活性領域の両方を単一のセンサテール上に配置するための戦略については、以下でさらに述べる。
【0015】
適切な検出化学を把握している場合でも、2つの異なるタイプの活性領域を単一の分析物センサに組み込むことは、簡単ではない場合がある。分析物センサは、しばしば、活性領域を覆う膜を使用して、物質移動制限膜として機能させ、及び/又は生体適合性を改善する。物質移動制限膜を使用して分析物の活性領域へのアクセスを制限すると、センサの過負荷(飽和)を回避し、それによって検出性能と精度を向上させることができる。単一の分析物センサを使用して複数の分析物をアッセイする場合、所与の物質移動制限膜を通過する様々な分析物によって異なる透過性値が示される可能性があり、各分析物の感度が大きく異なる可能性がある。各活性領域に異なる物質移動制限膜を組み込むことは、場合によっては問題となる可能性がある。驚くべきことに、そして有利なことに、グルコース及びクレアチニンは、各位置で組成的に同じである物質移動制限膜を使用して問題なく分析され得、それにより、両方の分析物の検出能力を有する分析物センサの製造を単純化する。
【0016】
本開示の分析物センサをより詳細に説明する前に、本開示の実施形態をよりよく理解できるように、適切な生体内分析物センサ構成、及び、分析物センサを使用するセンサシステムの簡単な概要を提供する。
図1は、本開示の分析物センサ、具体的にはクレアチニン応答性活性領域及び任意選択でグルコース応答性活性領域を含む分析物センサを組み込むことができる例示的な検知システムの図を示す。示されるように、検知システム100は、有線又は無線、単方向又は双方向、及び暗号化又は非暗号化されているローカル通信パス又はリンクを介して互いに通信するように構成されたセンサ制御デバイス102及びリーダデバイス120を含む。リーダデバイス120は、いくつかの実施形態によれば、分析物濃度及び警告又はセンサ104又はそれに関連するプロセッサによって決定される通知を表示するための出力媒体を構成することができ、ならびに1つ以上のユーザ入力を可能にし得る。リーダデバイス120は、多目的スマートフォン又は専用の電子リーダ機器であり得る。1つのリーダデバイス120のみが示されているが、特定の場合には、複数のリーダデバイス120が存在し得る。リーダデバイス120はまた、こちらも有線又は無線、単方向又は双方向、及び暗号化又は非暗号化されている通信パス/リンク141及び/又は142を介して、リモート端末170及び/又は信頼できるコンピュータシステム180とそれぞれ通信し得る。それに加えて又はそれに代えて、リーダデバイス120は、通信パス/リンク151を介してネットワーク150(例えば、携帯電話ネットワーク、インターネット、又はクラウドサーバ)と通信し得る。ネットワーク150は、通信パス/リンク152を介してリモート端末170に、及び/又は通信パス/リンク153を介して信頼できるコンピュータシステム180にさらに通信可能に接続され得る。あるいは、センサ104は、介在するリーダデバイス120を存在させずに、リモート端末170及び/又は信頼できるコンピュータシステム180と直接通信することができる。例えば、センサ104は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0213225号明細書に記載されているように、いくつかの実施形態によれば、ネットワーク150への直接通信リンクを介してリモート端末170及び/又は信頼できるコンピュータシステム180と通信することができる。近距離通信(NFC)、無線周波数識別(RFID)、BLUETOOTH(登録商標)又はBLUETOOTH(登録商標)低エネルギープロトコル、WiFi(登録商標)などの任意の適切な電子通信プロトコルを、通信パス又はリンクのそれぞれに使用することができる。リモート端末170及び/又は信頼できるコンピュータシステム180は、いくつかの実施形態によれば、一次ユーザ以外の、ユーザの分析物レベルに関心のある個人によってアクセス可能である。リーダデバイス120は、ディスプレイ122及びオプションの入力コンポーネント121を含み得る。ディスプレイ122は、いくつかの実施形態によれば、タッチスクリーンインターフェースを含み得る。
【0017】
センサ制御デバイス102は、センサ104を操作するための回路及び電源を収容することができるセンサハウジング103を含む。任意選択で、電源及び/又はアクティブ回路を省略してもよい。プロセッサ(図示略)を、センサ104に通信可能に接続してもよく、プロセッサは、物理的にセンサハウジング103又はリーダデバイス120内に配置される。センサ104は、センサハウジング103の下側から突出し、接着層105を通って延在する。接着層105は、いくつかの実施形態によれば、センサハウジング103を皮膚などの組織表面に接着するように適合されている。
【0018】
センサ104は、皮膚の真皮層内又は皮下層内など、対象の組織に少なくとも部分的に挿入されるように適合されている。センサ104は、所与の組織の所望の深さまで挿入するのに十分な長さのセンサテールを含み得る。センサテールは、少なくとも1つの作用電極と、その上に配置されたクレアチニン応答性活性領域とを含み得る。任意選択で、グルコース応答性活性領域は、さらに任意選択で第2の作用電極と組み合わせて、この分析物の検出を容易にするためにセンサテール上に配置され得る。カウンター電極は、上記少なくとも1つの作用電極と組み合わせて存在し得る。センサテール上の特定の電極構成については、
図3A~7Bを参照して以下でより詳細に述べる。
【0019】
以下でさらに詳細に説明するように、クレアチニン応答性活性領域及び任意選択のグルコース応答性活性領域が存在する場合、少なくとも1つの物質移動制限膜が、それらを覆うことができる。グルコース応答性活性領域は、存在する場合、グルコース応答性酵素を含み得る。物質移動制限膜はまた、酸素スカベンジャー(例えば、グルコースオキシダーゼ)を覆うことができ、その場合、酸素スカベンジャーは、別個の膜層間に挿入され得る。
【0020】
クレアチニン応答性活性領域は、
図2A及び2Bを参照して以下に説明されるように、クレアチニンの検出を容易にするために協調して作用することができる複数の酵素を含む酵素系を含み得る。様々な実施形態によれば、クレアチニン応答性活性領域、及び存在する場合、グルコース応答性活性領域は、酵素が共有結合したポリマーを含み得る。グルコース応答性活性領域の外側に配置されたグルコースオキシダーゼもまた、本明細書に開示される分析物センサ内のポリマーに共有結合され得る。本開示によれば、クレアチニン及び任意選択でグルコースは、真皮液、間質液、血漿、血液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、気管支肺胞洗浄液、羊水などの対象の任意の生物学的流体中でモニタリングされ得る。特定の実施形態では、本開示の分析物センサは、生体内でクレアチニン及び/又はグルコースの濃度を決定するために真皮液又は間質液をアッセイするために適合させることができる。
【0021】
さらに
図1を参照すると、センサ104は、データをリーダデバイス120に自動的に転送することができる。例えば、分析物濃度データ(すなわち、クレアチニン及び/又はグルコース濃度)は、データが取得されると、(例えば、毎分、5分ごとに、又は他の所定の期間で)送信されるまでメモリに格納され、特定の頻度で、又は特定の期間が経過した後など、自動的かつ定期的に通信され得る。他の実施形態では、センサ104は、設定されたスケジュールに従ってではなく、非自動的な方法でリーダデバイス120と通信することができる。例えば、データは、センサ電子機器がリーダデバイス120の通信範囲内に入ったときに、RFID技術を使用してセンサ104から通信され得る。リーダデバイス120に通信されるまで、データは、センサ104のメモリに記憶されたままであってもよい。したがって、ユーザは、リーダデバイス120に常に近接している必要はなく、代わりに、都合のよい時間にデータをアップロードすることができる。さらに他の実施形態では、自動及び非自動データ転送の組み合わせを実装することができる。例えば、データ転送を、リーダデバイス120がセンサ104の通信範囲からいなくなるまで、自動的に継続することができる。
【0022】
組織へのセンサ104の導入を促進するために、イントロデューサを一時的に存在させてもよい。例示的な実施形態では、イントロデューサは、針又は同様の鋭利物を含み得る。代替の実施形態では、シースやブレードなどの他のタイプのイントロデューサが存在し得ることが認識されるべきである。より具体的には、針又は他のイントロデューサは、組織挿入の前にセンサ104の近傍に一時的に存在し、その後、引き抜かれてもよい。存在している間、針又は他のイントロデューサは、センサ104がたどるアクセス経路を開くことによって、センサ104の組織への挿入を容易にし得る。例えば、1つ以上の実施形態によれば、針は、真皮へのアクセス経路として表皮の貫通を容易にして、センサ104の植込みが行われることを可能にし得る。アクセス経路を開いた後、針又は他のイントロデューサを引き抜いて、鋭利な危険を与えないようにすることができる。例示的な実施形態では、適切な針は、中実又は中空、斜角又は非斜角、及び/又は断面が円形又は非円形であり得る。より特定の実施形態では、適切な針は、断面直径及び/又は先端設計において、約250ミクロンの断面直径を有し得る鍼治療針に匹敵し得る。しかしながら、特定の用途に必要な場合、適切な針は、より大きい又はより小さい断面直径を有し得ることが認識されるべきである。
【0023】
いくつかの実施形態では、針の先端(存在している間)は、針が最初に組織を貫通し、センサ104のためのアクセス経路を開くように、センサ104の末端上で角度を付けられ得る。他の例示的な実施形態では、センサ104は、針の管腔又は溝内に存在してもよく、針は、同様に、センサ104のためのアクセス経路を開く。いずれの場合も、針はセンサの挿入を容易にしたら、その後引き抜かれる。
【0024】
本明細書の開示に従ってクレアチニンを検出するために使用することができる適切な酵素系を、
図2A及び2Bを参照してさらに詳細に説明する。示されているように、クレアチニンは、クレアチニンアミドヒドロラーゼ(CNH)の存在下で可逆的かつ加水分解的に反応してクレアチンを形成し得る。次に、クレアチンは、クレアチンアミ
ジノヒドロラーゼ(CRH)の存在下で触媒的な加水分解を受けて、サルコシンを形成し得る。これらの反応はいずれも、クレアチニンの電気化学的検出の基礎を提供するための電子の流れ(例えば、酸化又は還元)を生成しない。
【0025】
図2A及び2Bにさらに示されるように、クレアチンの加水分解によって生成されたサルコシンは、酸化型のサルコシンオキシダーゼ(SOX-ox)の存在下で酸化を受けてグリシン及びホルムアルデヒドを形成し、それにより、プロセス中で還元型のサルコシンオキシダーゼ(SOX-red)を生成し得る。過酸化水素も、酸素の存在下で生成され得る(
図2B)。次に、還元型のサルコシンオキシダーゼは、酸化型の電子移動剤(例えば、Os(III))の存在下で再酸化を受け、それによって、対応する還元型の電子移動剤(例えば、Os(II))を生成し、作用電極への電子の流れを送達し得る。
【0026】
酸素は、本開示によるクレアチニンを検出するために使用される協調した一連の反応を妨害する可能性がある。具体的には、
図2Bに示されるように、還元型のサルコシンオキシダーゼは、酸素と反応して、この酵素の対応する酸化型を再形成することができるが、電子移動剤と電子を交換することはない。酸素との反応が起こっても酵素はすべて活性を保つが、作用電極に電子は流れない。理論やメカニズムに縛られることなく、酸素との競合反応は速度論的効果に起因すると考えられる。すなわち、酸素による還元型のサルコシンオキシダーゼの酸化は、電子移動剤によって促進される酸化よりも速く生じると考えられる。過酸化水素も酸素の存在下で形成される。
【0027】
クレアチニンの検出を容易にするための望ましい反応経路が
図2Aに示されている。還元型のサルコシンオキシダーゼの酸化は、酵素系の近くに酸素スカベンジャーを含めることによって促進される場合がある。上記のように、グルコースオキシダーゼなどのオキシダーゼ酵素を含む、様々な酸素スカベンジャー及びその配置が適切であり得る。小分子酸素スカベンジャーも適している場合があるが、センサの寿命が完全に尽きる前に完全に消費されてしまう場合がある。対照的に、酵素は可逆的な酸化と還元を受けることができ、それによってセンサの寿命が長くなる。還元型のサルコシンオキシダーゼの酸素による酸化を妨げることにより、電子移動剤との電子交換反応がより遅くなり、それにより、作用電極で電流が生成されることを可能にする。生成される電流の大きさは、最初に反応したクレアチニンの量に比例する。
【0028】
図2Aにおける望ましい反応経路を促進するために使用される酸素スカベンジャーは、本開示の任意の実施形態において、オキシダーゼ酵素であり得る。クレアチニン含有流体に、酵素の適切な基質も存在し、それによってオキシダーゼ酵素の存在下で酸素と反応するための試薬を提供しさえすれば、任意のオキシダーゼ酵素を使用して、酵素系の近くで酸素除去を促進することができる。本開示において酸素除去に適し得るオキシダーゼ酵素には、限定するものではないが、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼなどが含まれる。様々な体液でグルコースがすぐに利用できるため、グルコースオキシダーゼは、本開示で使用するのに特に適したオキシダーゼ酵素であり得る。以下の反応1は、グルコースオキシダーゼによって促進されて酸素を除去する酵素反応を示す。
【0029】
β-D-グルコース+O2--→D-グルコノ-1,5-ラクトン+H2O2
反応1
生体内で利用可能な乳酸の濃度は、グルコースの濃度よりも低いが、それでも酸素除去を促進するのに十分である。
【0030】
グルコースオキシダーゼなどのオキシダーゼ酵素は、本明細書に開示される分析物センサにおける酸素除去を促進するのに適した任意の場所に配置することができる。例えば、グルコースオキシダーゼは、グルコースオキシダーゼがグルコース検出を促進するために機能的及び/又は非機能的であるように、センサテール上に配置され得る。グルコース検出の促進に非機能的である場合、グルコース酸化中に生成された電子が、サルコシンの酸化時に生成された電子を受け取る作用電極に到達するのを妨げるように、グルコースオキシダーゼをセンサテールに配置することができる。作用電極からグルコースオキシダーゼを電気的に隔離するためのアプローチは、以下でより詳細に扱われる。グルコース検出を促進するために機能的である場合、グルコースオキシダーゼは、作用電極上のグルコース応答性活性領域に位置してよく、その結果、クレアチニン応答性活性領域の近くの酸素を除去することに加えて、グルコース酸化中に生成される電子は作用電極によって受け取られる。グルコース応答性活性領域を表面に有する作用電極は、クレアチニン応答性活性領域を有するものと同じ作用電極でも異なる作用電極でもよい。特定の作用電極上のグルコース応答性活性領域内にグルコースオキシダーゼを配置するための適切なアプローチもまた、本明細書において以下に述べる。グルコースオキシダーゼをセンサテール上に配置するための前述のアプローチの任意の組み合わせを、本明細書に開示される分析物センサで使用することができる。
【0031】
図2Aに示されるものに代わる検出戦略は、グルコースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼを作用電極から分離する膜、及び電子移動剤を省略してもよい。このような検出アプローチでは、クレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミ
ジノヒドロラーゼ及びサルコシンオキシダーゼが、示されているように協調して作用し、酸素が過酸化水素の形成を促進し、酸化型及び還元型のサルコシンオキシダーゼを相互変換する。過酸化水素は、作用電極で検出され、このタイプのセンサ構成でクレアチニンをアッセイするための基礎として機能し得る。
【0032】
本明細書に開示される分析物センサは、作用電極上の少なくともクレアチニン応答性活性領域と、カウンター電極、参照電極、及び/又はカウンター/参照電極であり得る少なくとも1つの追加の電極との組み合わせを特徴とする。クレアチニン応答性活性領域とグルコース応答性活性領域の両方を特徴とする分析物センサは、別個の作用電極上又は同じ作用電極上にクレアチニン応答性活性領域及びグルコース応答性活性領域を組み込むことができる。それぞれの可能な例示的な構成については、以下で述べる。
【0033】
クレアチニン応答性活性領域を特徴とするが、グルコース応答性活性領域を特徴としないセンサ構成は、
図3A~3Cを参照して本明細書でさらに説明するように、2電極又は3電極検出モチーフを使用し得る。別個の作用電極上又は同じ作用電極上のクレアチニン応答性活性領域及びグルコース応答性活性領域の両方を特徴とするセンサ構成を、その後、
図4A~6Dを参照して別々に説明する。複数の作用電極を有するセンサ構成は、クレアチニン応答性活性領域とグルコース応答性活性領域の両方を同じセンサテール内に組み込むのに特に有利であり得る。なぜなら、各活性領域からのシグナル寄与をより容易に決定できるからである。
【0034】
単一の作用電極が分析物センサに存在する場合、3電極センサ構成は、作用電極、カウンター電極、及び参照電極を含み得る。関連する2電極センサ構成は、作用電極及び第2の電極を含み得、第2の電極は、カウンター電極及び参照電極の両方(すなわち、カウンター/参照電極)として機能し得る。様々な電極は互いに少なくとも部分的に積み重ねられ(層状にされ)、及び/又はセンサテール上で互いに横方向に離隔され得る。適切なセンサ構成は、形状が実質的に平坦又は実質的に円筒形であり得、クレアチニン応答性活性領域及び任意選択のグルコース応答性活性領域は、作用電極上で横方向に離隔されている。本明細書に開示されるあらゆるセンサ構成において、様々な電極は、誘電体材料又は同様の絶縁体によって互いに電気的に絶縁され得る。
【0035】
複数の作用電極を特徴とする分析物センサは、同様に、少なくとも1つの追加の電極を含み得る。1つの追加の電極が存在する場合、その1つの追加の電極は、複数の作用電極のそれぞれのカウンター/参照電極として機能し得る。2つの追加の電極が存在する場合、追加の電極のうちの一方は、複数の作用電極のそれぞれのカウンター電極として機能し得、追加の電極のうちの他方は、複数の作用電極のそれぞれの参照電極として機能し得る。
【0036】
図3Aは、本明細書の開示での使用に適合している例示的な2電極分析物センサ構成の図を示す。示されるように、分析物センサ200は、作用電極214とカウンター/参照電極216との間に配置された基板212を含む。あるいは、作用電極214及びカウンター/参照電極216は、間に誘電体材料が挿入された状態で、基板212の同じ側に配置され得る(構成は図示しない)。クレアチニン応答性活性領域218は、作用電極214の少なくとも一部上に少なくとも1つの層として配置されている。クレアチニン応答性活性領域218は、本明細書でさらに述べるように、クレアチニンの検出用に構成された複数のスポット又は単一のスポットを含み得る。
【0037】
引き続き
図3Aを参照すると、膜220は、いくつかの実施形態によれば、少なくともクレアチニン応答性活性領域218を覆い、任意選択で、作用電極214及び/又はカウンター/参照電極216の一部又は全部、又は分析物センサ200全体を覆うことができる。分析物センサ200の片面又は両面が、膜220で覆われてもよい。膜220は、分析物フラックスを活性領域218に制限する能力を有する1つ以上の高分子膜材料を含み得る(すなわち、膜220は、クレアチニンに対してある程度の透過性を有する物質移動制限膜である)。膜220の組成及び厚さは、クレアチニン応答性活性領域218への所望のクレアチニンフラックスを促進するために変化し得、それにより、所望のシグナル強度及び安定性を提供する。分析物センサ200は、クーロメトリー、アンペロメトリー、ボルタンメトリー、又はポテンショメトリーによる電気化学的検出技術のいずれかによってクレアチニンをアッセイするために動作可能であり得る。
【0038】
図3B及び3Cは、本明細書に開示の使用にも適合する、例示的な3電極分析物センサ構成の図を示す。3電極分析物センサ構成は、分析物センサ201及び202(
図3B及び3C)に追加の電極217を含めることを除いて、
図3Aの分析物センサ200について示したものと同様とすることができる。追加の電極217を用いると、カウンター/参照電極216は、カウンター電極又は参照電極のいずれかとして機能することができ、追加の電極217は他方の電極機能を果たす。作用電極214は、その本来の機能を引き続き果たす。追加の電極217は、作用電極210上又は電極216上のいずれかに、誘電体の分離層を間に挟んで配置することができる。例えば、
図2Bに示されるように、誘電体層219a、219b及び219cは、電極214、216、及び217を互いから分離し、電気的絶縁を提供する。あるいは、電極214、216及び217のうちの少なくとも1つは、
図3Cに示されるように、基板212の反対側の面上に配置され得る。したがって、いくつかの実施形態では、電極214(作用電極)及び電極216(カウンター電極)は、基板212の反対側の面上に配置され得、電極217(参照電極)は、電極214又は216のうちの一方の上に配置され、誘電体材料でそれから離隔され得る。参照材料層230(例えば、Ag/AgCl)が電極217上に存在してもよく、参照材料層230の位置は、
図2B及び2Cに示されるものに限定されない。
図3Aに示されるセンサ200と同様に、分析物センサ201及び202のクレアチニン応答性活性領域218は、複数のスポット又は単一のスポットを含み得る。さらに、分析物センサ201及び202は、クーロメトリー、アンペロメトリー、ボルタンメトリー、又はポテンショメトリーによる電気化学的検出技術のいずれかによってクレアチニンをアッセイするために動作可能であり得る。
【0039】
分析物センサ200と同様に、膜220もまた、分析物センサ201及び202において、クレアチニン応答性活性領域218、ならびに他のセンサ構成要素を覆うことができ、それにより、物質移動制限膜として機能する。いくつかの実施形態では、追加の電極217が、膜220で覆われ得る。
図3B及び2Cでは、電極214、216及び217のすべてが膜220で覆われているものとして描写されているが、いくつかの実施形態では、作用電極214のみが覆われてもよいことが認識されるべきである。さらに、電極214、216及び217のそれぞれにおける膜220の厚さは、同じであっても異なっていてもよい。2電極分析物センサ構成(
図3A)の場合のように、分析物センサ201及び202の片面又は両面は、
図3B及び2Cのセンサ構成において膜220で覆われてもよく、又は分析物センサ201及び202の全体が覆われてもよい。したがって、
図3B及び3Cに示される3電極センサ構成は、本開示の範囲内にある代替の電極及び/又は層構成を備えた、本明細書に開示される実施形態の非限定的例として理解されるべきである。
【0040】
単一の作用電極上又は複数の作用電極上にクレアチニン応答性活性領域及びグルコース応答性活性領域の両方を有する分析物センサを、
図4A~6Dを参照してさらに詳細に説明する。
【0041】
図4Aは、クレアチニン応答性活性領域及びグルコース応答性活性領域の両方がその上に配置された単一の作用電極を有するセンサ203の例示的な構成を示す。
図4Aは、作用電極214上の2つの活性領域:クレアチニン応答性活性領域218a及びグルコース応答性活性領域218bの存在を除いて、
図3Aと同様である。これらの活性領域は、作用電極214の表面上で互いに横方向に離隔している。活性領域218a及び218bは、各分析物の検出のために構成された複数のスポット又は単一のスポットを含み得る。膜220の組成は、活性領域218a及び218bで変化してもよいし、組成的に同じであってもよい。
【0042】
図4B及び4Cは、それぞれ、センサ204及び205の例示的な3電極センサ構成の断面図を示し、それぞれ、クレアチニン応答性活性領域218a及びグルコース応答性活性領域218bの両方が表面に配置された単一の作用電極を特徴とする。
図4B及び4Cは、他の点では
図3B及び
図3Cと同様であり、それらを参照することにより、よりよく理解することができる。
図4Aと同様に、膜220の組成は、活性領域218a及び218bで変化してもよいし、組成的に同じであってもよい。
【0043】
複数の作用電極、具体的には2つの作用電極を有する例示的なセンサ構成を、
図5~6Dを参照してさらに詳細に説明する。以下の説明は、主に2つの作用電極を有するセンサ構成に向けられているが、本明細書の開示を拡張することで、3つ以上の作用電極も組み込まれ得ることが理解されるべきである。追加の作用電極を使用して、分析物センサにクレアチニン及びグルコースの検知だけでなく、追加の検知能力を与えることができる。
【0044】
図5は、本明細書に開示の使用に適合する、2つの作用電極、参照電極及びカウンター電極を有する例示的な分析物センサ構成の断面図を示す。示されているように、分析物センサ300は、基板302の対向面にそれぞれ配置された作用電極304及び306を含む。クレアチニン応答性活性領域310aは、作用電極304の表面に配置され、グルコース応答性活性領域310bは、作用電極306の表面に配置される。カウンター電極320は、誘電体層322によって作用電極304から電気的に絶縁されており、参照電極321は、誘電体層323によって作用電極306から電気的に絶縁されている。外側誘電体層330及び332は、それぞれ、参照電極321及びカウンター電極320上に配置されている。膜340は、様々な実施形態によれば、少なくとも活性領域310a及び310bを覆うことができ、分析物センサ300の他の構成要素、又は分析物センサ300の全体も、任意選択で膜340で覆われてもよい。この場合も、膜340は、各位置で分析物フラックスを別々に調節するための適切な透過性値を与えるために、必要に応じて、活性領域310a及び310bで組成的に変化し得る。
【0045】
複数の作用電極を有し、
図5に示される構成とは異なる代替のセンサ構成は、別個のカウンター電極及び参照電極320、321の代わりに、カウンター/参照電極、及び/又は、明示的に示されたものとは異なる層及び/又は膜の配置を特徴とし得る。例えば、カウンター電極320及び参照電極321の配置は、
図5に示されているものとは逆にすることができる。さらに、作用電極304及び306は、必ずしも、
図4に示される態様で基板302の対向面上に存在する必要はない。
【0046】
適切なセンサ構成は、性質が実質的に平面である電極を特徴とし得るが、非平面電極を特徴とするセンサ構成も、本明細書の開示での使用に有利であり、特に適している可能性があることを理解されたい。特に、互いに同心円状に配置された実質的に円筒形の電極は、本明細書で以下に記載されるように、物質移動制限膜の堆積を容易にし得る。
図6A~6Dは、互いに同心円状に配置された2つの作用電極を特徴とする分析物センサの斜視図を示す。同心電極配置を有するが、第2の作用電極を欠くセンサ構成もまた、本開示において可能であることを理解されたい。
【0047】
図6Aは、複数の電極が実質的に円筒形であり、中央基板の周りに互いに同心円状に配置されている例示的なセンサ構成の斜視図を示す。示されるように、分析物センサ400は中央基板402を含み、この周りにすべての電極及び誘電体層が互いに同心円状に配置されている。特に、作用電極410は、中央基板402の表面に配置され、誘電体層412は、センサ先端404の遠位の作用電極410の一部上に配置される。作用電極420は、誘電体層412上に配置され、誘電体層422は、センサ先端404の遠位にある作用電極420の一部上に配置される。カウンター電極430は、誘電体層422上に配置され、誘電体層432は、センサ先端404の遠位にあるカウンター電極430の一部上に配置される。参照電極440は、誘電体層432上に配置され、誘電体層442は、センサ先端404の遠位にある参照電極440の一部上に配置される。このように、作用電極410、作用電極420、カウンター電極430、及び参照電極440の露出面は、分析物センサ400の長手方向軸Bに沿って互いに離隔されている。
【0048】
引き続き
図6Aを参照すると、クレアチニン応答性活性領域414a及びグルコース応答性活性領域414bは、それぞれ、作用電極410及び420の露出面上に配置され、それにより、流体との接触を可能にしてクレアチニン及び/又はグルコースの検知を行う。活性領域414a及び414bは、
図6Aでは3つの別個のスポットとして描かれているが、代替のセンサ構成では3つより少ない又はより多いスポットが存在してもよいことが理解されるべきである。さらに、クレアチニン応答性活性領域414a及びグルコース応答性活性領域414bの配置は、
図6Aに示されるものとは逆にしてもよい。
【0049】
図6Aでは、センサ400は、作用電極410及び420上ならびにその上に配置された活性領域414a及び414b上で膜450で部分的に覆われている。
図6Bは、センサ401の実質的な全体が膜450で覆われている代替のセンサ構成を示している。膜450は、活性領域414a及び414bで同じであっても、組成的に異なっていてもよい。
【0050】
図6A及び6Bの様々な電極の配置は、明示的に示されたものとは異なる場合があることがさらに理解されるべきである。例えば、カウンター電極430及び参照電極440の位置は、
図6A及び6Bに示されている構成とは逆にすることができる。同様に、作用電極410及び420の位置は、
図6A及び6Bに明示的に示されているものに限定されない。
図6Cは、
図6Bに示されるものに対する代替のセンサ構成を示しており、センサ405は、センサ先端404のより近位に配置されたカウンター電極430及び参照電極440と、センサ先端404のより遠位に配置された作用電極410及び420とを含む。作用電極410及び420がセンサ先端404に対してより遠位に配置されたセンサ構成は、活性領域414a及び414b(
図6Cに例示的に示される5つの別個の検知スポット)の堆積のためにより大きい表面積を提供することによって有利となり得る。それにより、場合によってはシグナル強度の増加が容易になる。
【0051】
図6A~6Cは、それぞれが中央基板402上に支持されるセンサ構成を示しているが、代替のセンサ構成は代わりに電極に支持され、中央基板402を欠くものであり得ることが理解されるべきである。特に、最も内側の同心電極を利用して、他の電極及び誘電体層を支持することができる。
図6Dは、
図6Cに示されたものに対する代替のセンサ構成を示し、センサ406は中央基板402を含まず、カウンター電極430は最も内側の同心電極であり、参照電極440、作用電極410及び420、ならびに誘電体層432、442、412、及び422をその上に順次配置するために使用される。本明細書の開示を考慮して、他の電極及び誘電体層構成が、中央基板402を欠くセンサ構成で使用され得、そして異なる位置構成で使用され得ることが再び理解されるべきである。このように、
図6Dに示されるセンサ構成は、本質的に例示的であり、非限定的であると見なされるべきである。
【0052】
上記のように、酸素の代わりに電子移動剤を用いて還元型サルコシンオキシダーゼの酸化を促進するために、酸素スカベンジャーをクレアチニン応答性活性領域の近くに配置することができる。オキシダーゼ酵素、特にグルコースオキシダーゼは、本明細書に開示される様々なセンサ構成においてこの目的のために使用され得る。クレアチニン応答性活性領域のみが存在する場合、グルコース検出に機能しないグルコースオキシダーゼは、クレアチニン応答性活性領域の近くに位置し得る。クレアチニン応答性活性領域とグルコース応答性活性領域の両方が存在する場合、グルコース応答性活性領域のグルコースオキシダーゼは、任意選択でグルコース検出に機能しないグルコースオキシダーゼと組み合わせて、酸素除去を効果的に促進し得る。
【0053】
クレアチニン応答性活性領域に対するグルコース検出に機能しないグルコースオキシダーゼの例示的な配置が、
図7A及び7Bに示されている。特に、
図7A及び7Bは、作用電極500上に配置されたクレアチニン応答性活性領域403を覆う膜409上のグルコースオキシダーゼ407の配置を示す図を示す。膜409は、グルコースオキシダーゼ407を作用電極500から電気的に隔離し、その結果、酸素曝露を制限するためにグルコースを酸化したときに生成された電子は、作用電極500に伝達されない。続いて、膜408は、グルコースオキシダーゼ407を覆い、それに物質移動制限機能を提供する。膜408及び409は、本開示の様々な実施形態において組成的に同じであり得る。
図7Aは、クレアチニン応答性活性領域403の上に直接配置されたグルコースオキシダーゼ407を示しているが、グルコースを酸化するときにグルコースオキシダーゼ407が作用電極500へ電子を移動させるのを阻害する限り、クレアチニン応答性活性領域403及びグルコースオキシダーゼ407は互いに横方向に離隔され得ることが理解されるべきである。さらに代替的に、グルコースオキシダーゼ407は、さらに他のセンサ構成において、センサの反対側の面にさらに配置され得る。
図7Bに示すように、膜409は、作用電極500上で膜408が行うのと同じだけの横方向距離を必ずしも延長する必要はない。
【0054】
本明細書に開示されるセンサ構成において、クレアチニン応答性活性領域及び存在する場合はグルコース応答性活性領域は、1つ以上の個別のスポット(例えば、1~約10のスポット、又はさらに多くの個別のスポット)を含み得る。これは、サイズが約0.01mm2~約1mm2の範囲であり得るが、より大きい又はより小さい個々の活性領域スポットも本願では企図されている。総活性領域は、各分析物に所望の感度を提供するように選択することができる。
【0055】
いくつかの又は他の実施形態では、本開示の分析物センサは、組織への挿入のために構成されたセンサテールを含み得る。適切な組織は特に限定されているとは見なされず、上記でより詳細に扱われている。所与の組織内の特定の位置にセンサテールを配置する際の考慮事項については、上記で扱っている。
【0056】
したがって、本明細書に開示される分析物センサは、少なくとも第1の作用電極、第1の作用電極の表面に配置され、第1の電子移動剤、第1のポリマー、及び、クレアチニンの検出を容易にするために協調して作用することができる複数の酵素を含む酵素系を含むクレアチニン応答性活性領域を含むセンサテール、クレアチニンを透過させ、クレアチニン応答性活性領域を覆う第1の膜、及びセンサテール上でクレアチニン応答性活性の近くに配置された酸素スカベンジャーを含み得る。酵素系は、クレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、及びサルコシンオキシダーゼを含む。酸素スカベンジャーは、本開示の特定の実施形態によれば、第1の膜によってクレアチニン応答性活性領域から離隔され得る。グルコースオキシダーゼなどのオキシダーゼ酵素は、いくつかの実施形態において、酸素スカベンジャーの少なくとも一部を構成し得る。
【0057】
グルコースオキシダーゼなどのオキシダーゼ酵素は、クレアチニン応答性活性領域の近くに配置された場合、第2のポリマーに共有結合し得る。グルコースオキシダーゼを共有結合するための適切なポリマーは、特に限定されず、本開示の特定の実施形態では、ポリビニルピリジンであり得る。共有結合したポリマーは、クレアチニン応答性活性領域に対して所望の位置にグルコースオキシダーゼを固定化するのを助けることができる。
【0058】
クレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、及びサルコシンオキシダーゼは、本開示のあらゆる実施形態において、クレアチニン応答性活性領域の第1のポリマーに共有結合し得る。これらの酵素を共有結合するのに適したポリマーは、特に限定されるとは考えられておらず、本開示の特定の実施形態では、ポリビニルピリジンであり得る。クレアチニン応答性活性領域の第1のポリマー及びグルコースオキシダーゼに共有結合した第2のポリマーは、同じポリマーであり得る。
【0059】
本明細書に開示される例示的なセンサ構成のいずれにおいても、クレアチニン応答性活性領域及び存在する場合はグルコース応答性活性領域は、それぞれ電子移動剤を含み得る。クレアチニン応答性活性領域及びグルコース応答性活性領域の両方が存在する場合、電子移動剤は、使用される特定のセンサ構成に応じて同じであっても異なっていてもよい。適切な電子移動剤は、酵素的酸化又は還元反応が起こった後、作用電極への電子の伝達を容易にし、それによって、特定の分析物の存在を示し、存在する分析物の量に比例する電流を生成し得る。例えば、クレアチニン応答性活性領域及びグルコース応答性活性領域が同じ作用電極上に配置される場合、各活性領域内の電子移動剤は異なっていてもよい(例えば、電子移動剤が異なる酸化還元電位を示すように化学的に異なる)。複数の作用電極が存在する場合、シグナルを取得するときに各作用電極に個別に応答させることができるため、各活性領域内の電子移動剤は同じであっても異なっていてもよい。電子移動剤は、本明細書に開示されるあらゆる活性領域においてポリマーに共有結合され得る。
【0060】
本開示の様々な実施形態によれば、適切な電子移動剤には、標準的なカロメル電極(SCE)の酸化還元電位よりも数百ミリボルト上又は下の酸化還元電位を有する電気還元性及び電気酸化性のイオン、錯体又は分子(例えば、キノン)が含まれ得る。いくつかの実施形態によれば、適切な電子移動剤には、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,134,461号及び第6,605,200号に記載されているものなどの低電位オスミウム錯体が含まれ得る。適切な電子移動剤の追加の例には、米国特許第6,736,957号、第7,501,053号及び第7,754,093号に記載されているものが含まれ、これらのそれぞれの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。他の適切な電子移動剤は、ルテニウム、オスミウム、鉄(例えば、ポリビニルフェロセン又はヘキサシアノフェラート)又はコバルトの金属化合物又は錯体(例えば、そのメタロセン化合物を含む)を含み得る。金属錯体に適した配位子には、例えば、ビピリジン、ビイミダゾール、フェナントロリン、又はピリジル(イミダゾール)などの二座又はより高い座数の配位子も含まれ得る。他の適切な二座配位子には、例えば、アミノ酸、シュウ酸、アセチルアセトン、ジアミノアルカン、又はo-ジアミノアレーンが含まれ得る。完全な配位圏を達成するために、単座、二座、三座、四座、又はより高い座数の配位子の任意の組み合わせが金属錯体に存在し得る。
【0061】
クレアチニン及び/又はグルコースを検出するのに適した活性領域はまた、電子移動剤が共有結合されるポリマーを含み得る。本明細書に開示される電子移動剤のいずれも、活性領域内のポリマーへの共有結合を促進するための適切な機能性を含み得る。ポリマー結合電子移動剤の適切な例には、米国特許第8,444,834号、第8,268,143号及び第6,605,201号に記載されているものが含まれ得、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。活性領域に含めるのに適したポリマーには、限定するものではないが、ポリビニルピリジン(例えば、ポリ(4-ビニルピリジン))、ポリビニルイミダゾール(例えば、ポリ(1-ビニルイミダゾール))、又はそれらの任意のコポリマーが含まれ得る。活性領域に含めるのに適し得る例示的なコポリマーには、例えば、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はアクリロニトリルなどのモノマー単位を含むものが含まれる。各活性領域内のポリマーは同じであっても異なっていてもよい。
【0062】
本開示の特定の実施形態では、クレアチニン応答性活性領域を覆う物質移動制限膜は、少なくとも、ポリビニルピリジン-co-スチレンポリマーを含む、架橋ポリビニルピリジンホモポリマー又はコポリマーを含み得る。同様の組成を有する物質移動制限膜は、グルコースオキシダーゼなどの酸素スカベンジャーも覆うことができる。物質移動制限膜の組成は、物質移動制限膜が各活性領域を覆っている箇所では同じであっても異なっていてもよい。活性領域上に物質移動制限膜を堆積するための適切な技術は、例えば、スプレーコーティング、塗装、インクジェット印刷、ステンシル、ローラコーティング、ディップコーティングなど、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0063】
各活性領域における電子移動剤とポリマーとの間の共有結合の方法は、特に限定されるとは考えられていない。電子移動剤のポリマーへの共有結合は、共有結合した電子移動剤を有するモノマー単位を重合することによって起こり得るか、又はポリマーが既に合成された後なら、電子移動剤をポリマーと別々に反応させることができる。いくつかの実施形態によれば、二官能性スペーサーは、活性領域内のポリマーに電子移動剤を共有結合し得、ここで、第1の官能基はポリマーと反応性であり(例えば、ピリジン窒素原子又はイミダゾール窒素原子を四級化することができる官能基)、第2の官能基は電子移動剤と反応性である(例えば、金属イオンを配位する配位子と反応する官能基)。
【0064】
同様に、活性領域内の1つ以上の酵素は、ポリマーに共有結合され得る。複数の酵素を含む酵素系が所与の活性領域に存在する場合、いくつかの実施形態では、複数の酵素のすべてがポリマーに共有結合し得、他の実施形態では、複数の酵素の一部のみがポリマーに共有結合し得る。例えば、酵素系を含む1つ以上の酵素はポリマーに共有結合し得、少なくとも1つの酵素は、非共有結合酵素がポリマー内に物理的に同伴されるように、ポリマーと非共有結合し得る。より具体的な実施形態によれば、所与の活性領域のポリマーへの酵素の共有結合は、適切な架橋剤と共に導入された架橋剤を介して起こり得る。酵素中の遊離アミノ基との(例えば、リジン中の遊離側鎖アミンとの)反応のための適切な架橋剤は、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)又は他のポリエポキシド、塩化シアン、N-ヒドロキシスクシンイミド、イミドエステル、エピクロロヒドリン、又はそれらの誘導体化変異体などの架橋剤を含み得る。酵素中の遊離カルボン酸基との反応に適した架橋剤には、例えば、カルボジイミドが含まれ得る。ポリマーへの酵素の架橋は一般に分子間であるが、いくつかの実施形態では分子内であり得る。特定の実施形態では、本明細書のすべての酵素は、ポリマーに共有結合し得る。
【0065】
電子移動剤及び/又は酵素は、共有結合以外の手段によっても、活性領域内のポリマーと結合することができる。いくつかの実施形態では、電子移動剤及び/又は酵素は、イオン的に又は配位的にポリマーと結合し得る。例えば、帯電したポリマーは、反対に帯電した電子移動剤又は酵素とイオン結合し得る。さらに他の実施形態では、電子移動剤及び/又は酵素は、ポリマーに結合することなく、ポリマー内に物理的に同伴され得る。物理的に同伴された電子移動剤及び/又は酵素は、依然として流体と適切に相互作用して、活性領域から実質的に浸出することなく分析物の検出を促進し得る。
【0066】
クレアチニン応答性分析物センサは、本開示のいくつかの実施形態において、クレアチニン及びグルコースの両方を検知するためのグルコース応答性活性領域をさらに組み込むことができる。クレアチニン応答性活性領域及びグルコース応答性活性領域の両方が存在する場合、クレアチニン応答性活性領域及びグルコース応答性活性領域は、
図4A~6Dを参照して上記で述べたように、同じ作用電極又は異なる作用電極上に存在し得る。いずれかの場所にグルコース応答性活性領域を組み込むための考慮事項について、以下でさらに詳細に述べる。クレアチニン応答性活性領域とグルコース応答性活性領域の両方を含む本明細書のいずれのセンサ構成においても、グルコース検出に機能しないグルコースオキシダーゼは、クレアチニン応答性活性領域を覆う膜上、又はクレアチニン応答性活性領域に関連する作用電極に電子を伝達することができない別の場所に配置され得る。
【0067】
クレアチニン応答性活性領域及びグルコース応答性活性領域が単一の作用電極上に配置される場合、活性領域の一方は、以下に説明されるように、各分析物の検出を容易にするために別々に応答させることができるように構成され得る。特に、クレアチニン応答性活性領域及びグルコース応答性活性領域は、活性領域の一方が他方とは独立してシグナルを生成することを可能にするために、異なる電子移動剤を含み得る。クレアチニン応答性活性領域又はグルコース応答性活性領域のいずれかは、他方の活性領域とは独立してシグナルを生成するように構成され得る。
【0068】
クレアチニン応答性活性領域及びグルコース応答性活性領域が単一の作用電極上に配置される実施形態において、グルコース応答性活性領域に関連する酸化還元電位は、クレアチニン応答性活性領域の酸化還元電位から少なくとも約100mV、又は少なくとも約150mV、又は少なくとも約200mVだけ離され得る。酸化還元電位間の離隔の上限は、作業電気化学ウィンドウによって生体内で決定される。2つの活性領域の酸化還元電位の大きさを互いに十分に離すことにより、電気化学反応は、他方の活性領域内で電気化学反応を実質的に誘発することなく、2つの活性領域のうちの1つ(すなわち、グルコース応答性活性領域又はクレアチニン応答性活性領域)内で起こり得る。したがって、グルコース応答性活性領域又はクレアチニン応答性活性領域の1つからのシグナルは、その対応する酸化還元電位(より低い酸化還元電位)以上であるが、グルコース応答性活性領域及びクレアチニン応答性活性領域のうちの他方の酸化還元電位(より高い酸化還元電位)より下で、独立して生成され得る。対照的に、以前に問い合わせをされなかった他方の活性領域の酸化還元電位(より高い酸化還元電位)以上では、電気化学反応は、グルコース応答性活性領域及びクレアチニン応答性活性領域の両方で起こり得る。したがって、より高い酸化還元電位以上で得られるシグナルは、グルコース応答性活性領域及びクレアチニン応答性活性領域の両方からのシグナル寄与を含み得、観察されるシグナルは複合シグナルである。次に、1つの活性領域(グルコース応答性活性領域又はクレアチニン応答性活性領域のいずれか)からのその酸化還元電位以上のシグナル寄与は、グルコース応答性活性領域又はクレアチニン応答性活性領域のみから得られたその酸化還元電位以上のシグナルを、複合シグナルから差し引くことによって決定することができる。
【0069】
より具体的な実施形態では、グルコース応答性活性領域及びクレアチニン応答性活性領域は、活性領域が同じ作用電極上に位置する場合、酸化還元電位の大きさを互いに十分に離すために、異なる電子移動剤を含み得る。より具体的には、グルコース応答性活性領域は、第1の電子移動剤を含み得、クレアチニン応答性活性領域は、第2の電子移動剤を含み得、第1の電子移動剤と第2の電子移動剤とは異なる。本開示の様々な実施形態によれば、所与の電子移動剤中に存在する金属中心及び/又は配位子を変化させて、2つの活性領域の酸化還元電位を十分に離すことができる。
【0070】
理想的には、単一の作用電極上に配置されたグルコース応答性活性領域及びクレアチニン応答性活性領域は、所与の電位で分析物センサを動作させると迅速に定常状態電流を達成するように構成され得る。定常状態電流の迅速な達成は、各活性領域について、その酸化還元電位以上の電位にさらされるとその酸化状態を迅速に変化させる電子移動剤を選択することによって促進され得る。活性領域を可能な限り薄くすることもまた、定常状態電流の迅速な達成を容易にし得る。例えば、グルコース応答性活性領域及びクレアチニン応答性活性領域に適した厚さは、約0.1ミクロン~約10ミクロンの範囲であり得る。いくつかの又は他の実施形態では、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン、又は金属ナノ粒子などの導電性材料を1つ以上の活性領域内で組み合わせると、定常状態電流の迅速な達成を促進することができる。導電性粒子の適切な量は、活性領域の約0.1重量%~約50重量%、又は約1重量%~約50重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約10重量%の範囲であり得る。応答の安定性を促進するために、安定剤を使用することもできる。
【0071】
各分析物に対する分析物センサの感度(出力電流)は、活性領域の被覆率(面積又はサイズ)、活性領域の互いに対する面積比、活性領域を覆う物質移動制限膜の性質、厚さ、及び/又は組成を変化させることによって変更できることも理解されたい。これらのパラメータの変更は、本明細書の開示の利益を与えられた当業者によって容易に実施することができる。
【0072】
本明細書に開示される分析物センサの他の実施形態は、異なる作用電極の表面上のクレアチニン応答性活性領域及びグルコース応答性活性領域を特徴とし得る。そのような分析物センサは、第2の作用電極、第2の作用電極の表面に配置されたグルコース応答性活性領域、及びグルコース応答性活性領域を覆うグルコースに対して透過性である第2の膜をさらに含み得る。グルコース応答性活性領域は、第2の電子移動剤、第3のポリマー、及び第3のポリマーに共有結合したグルコースオキシダーゼを含み得る。第3のポリマーは、クレアチニン応答性活性領域又はグルコース検出に機能しないグルコースオキシダーゼにそれぞれ関連する第1及び/又は第2のポリマーと同じであっても異なっていてもよい。クレアチニン応答性活性領域及びグルコース応答性活性領域が別々の作用電極上に配置される場合、各活性領域に関連する電子移動剤は同じであっても異なっていてもよい。
【0073】
したがって、クレアチニン及びグルコースの両方を検出することができる本開示の特定の分析物センサは:第1の作用電極及び第2の作用電極を含むセンサテール;第1の作用電極の表面に配置されたクレアチニン応答性活性領域であって、第1の電子移動剤、第1のポリマー、及びクレアチニンの検出を容易にするために協調して作用することができる複数の酵素を含む酵素系であって、クレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、及びサルコシンオキシダーゼを含む酵素系を含むクレアチニン応答性活性領域;クレアチニンに対して透過性であり、クレアチニン応答性活性領域を覆う第1の膜;第2のポリマーに共有結合し、第1の膜上に配置されたグルコースオキシダーゼ;第2の作用電極の表面に配置されたグルコース応答性活性領域であって、第2の電子移動剤、第3のポリマー、及び第3のポリマーに共有結合したグルコースオキシダーゼを含むグルコース応答性活性領域;及びグルコースに対して透過性であり、グルコース応答性活性領域を覆う第2の膜を含む。そのような分析物センサは、第1の膜上に配置されたグルコースオキシダーゼを覆う第3の膜をさらに含み得る。第1の膜、第2の膜、及び存在する場合は第3の膜は、特定の実施形態において組成的に同じであり得る。
【0074】
クレアチニンをアッセイするための検出方法は:分析物センサを少なくともクレアチニンを含む流体に曝露することを含み、分析物センサは、少なくとも第1の作用電極、第1の作用電極の表面上に配置されたクレアチニン応答性活性領域を含むセンサテール、クレアチニンに対して透過性であり、クレアチニン応答性活性領域を覆う第1の膜、及びセンサテール上かつクレアチニン応答性活性領域の近くに配置された酸素スカベンジャーを含む。クレアチニン応答性活性領域は、第1の電子移動剤、第1のポリマー、クレアチニンの検出を容易にするために協調して作用することができる複数の酵素を含む酵素系を含む。酵素系は、クレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、及びサルコシンオキシダーゼを含み、これらはすべて、特定の実施形態において第1のポリマーに共有結合され得る。この方法は、第1の作用電極に電位を印加すること、クレアチニン応答性活性領域の酸化還元電位以上で、流体中のクレアチニンの濃度に比例する第1のシグナルを取得すること、及び第1のシグナルを流体中のクレアチニンの濃度に相関させることをさらに含み得る。本開示の特定の実施形態では、流体は生物学的流体であり得る。さらに特定の実施形態では、グルコースは、クレアチニンと一緒に流体中に存在し得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、第1のシグナルは、ルックアップテーブル又は検量線を参照することによって、対応するクレアチニンの濃度に相関させることができる。クレアチニンのルックアップテーブルは、既知のクレアチニン濃度を有する複数のサンプルを分析し、各濃度でのセンサ応答を記録することによって作成することができる。同様に、クレアチニンの検量線は、クレアチニン濃度の関数として分析物センサ応答をプロットすることによって決定することができ、較正範囲にわたって適切な較正関数を決定することができる(例えば回帰、特に線形回帰によって)。
【0076】
プロセッサは、ルックアップテーブル内のどのセンサ応答値が未知の分析物濃度を有するサンプルについて測定されたものに最も近いかを決定し、それに応じて分析物濃度を報告することができる。いくつかの又は他の実施形態では、未知の分析物濃度を有するサンプルのセンサ応答値がルックアップテーブルに記録された値の間にある場合、プロセッサは2つのルックアップテーブル値の間を内挿して分析物濃度を推定することができる。内挿は、ルックアップテーブルで報告された2つの値の間の線形濃度変動を前提とし得る。内挿は、センサの応答がルックアップテーブルの所与の値と十分に異なる場合(約10%以上の変動など)に使用できる。
【0077】
同様に、いくつかの又は他の様々な実施形態によれば、プロセッサは、未知の分析物濃度を有するサンプルのセンサ応答値を、対応する較正関数に入力することができる。次に、プロセッサはそれに応じて分析物濃度を報告することができる。
【0078】
センサテールは、グルコース応答性活性領域が表面に配置された第2の作用電極をさらに含み得、グルコース応答性活性領域は、第2の電子移動剤、第3のポリマー、及び第3のポリマーに共有結合したグルコースオキシダーゼを含み得る。したがって、この方法は:第2の作用電極に電位を印加すること、グルコース応答性活性領域の酸化還元電位以上で、流体中のグルコースの濃度に比例する第2のシグナルを取得すること、及び第2のシグナルを流体中のグルコースの濃度に相関させることをさらに含み得る。
【0079】
単一の作用電極上のクレアチニン応答性活性領域及びグルコース応答性活性領域を特徴とする分析物センサを使用してクレアチニン及び/又はグルコースをアッセイするための検出方法は:クレアチニン及びグルコースのうちの少なくとも一方を含む流体に分析物センサを曝露することを含み得る。分析物センサは、少なくとも作用電極、特に単一の作用電極、ならびに作用電極の表面に配置され、互いに離隔された少なくともクレアチニン応答性活性領域及びグルコース応答性活性領域を含むセンサテールを含み得る。クレアチニン応答性活性領域を膜が覆ってもよく、ポリマーに共有結合したグルコースオキシダーゼが、グルコース応答性活性領域のグルコースオキシダーゼに加えて、膜上に配置され得る。クレアチニン応答性活性領域は、クレアチニンの検出を容易にするために協調して作用することができる2つ以上の酵素を含む酵素系、酵素に共有結合した第1のポリマー、及び第1のポリマーに共有結合した第1の電子移動剤を含む。グルコース応答性活性領域は、グルコースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼに共有結合した第3のポリマー、及び第3のポリマーに共有結合した第2の電子移動剤を含む。グルコース応答性活性領域及びクレアチニン応答性活性領域が単一の作用電極上に位置する場合、本明細書でより詳細に述べるように、第1及び第2の電子移動剤は互いに組成的に異なる。各活性領域は酸化還元電位を有し、クレアチニン応答性活性領域の酸化還元電位は、グルコース応答性活性領域の酸化還元電位から十分に離れており、活性領域の1つからのシグナルの生成を可能にする。この方法はさらに、第1のシグナルが流体中のグルコース又はクレアチニンのうちの一方の濃度に比例するように、低い方の酸化還元電位以上であるが、高い方の酸化還元電位より下で第1のシグナルを取得すること;第2のシグナルが、グルコース応答性活性領域からのシグナル寄与及びクレアチニン応答性活性領域からのシグナル寄与を含む複合シグナルであるように、高い方の酸化還元電位以上で第2のシグナルを取得すること;及び、第2のシグナルから第1のシグナルを差し引いて、グルコース及びクレアチニンのうちの一方の濃度に比例する差分シグナルを取得すること含む。
【0080】
より具体的な実施形態では、第1の活性領域からのシグナルの独立した生成のための十分な分離を提供するために、クレアチニン応答性活性領域に関連する酸化還元電位は、グルコース応答性活性領域の酸化還元電位から少なくとも約100mV、又は少なくとも約150mV、又は少なくとも約200mV離れていてもよい。活性領域に異なる電子移動剤を組み込むことにより、異なる酸化還元電位を生じるさせることができる。
【0081】
別個の作用電極上のクレアチニン応答性活性領域及びグルコース応答性活性領域を特徴とする分析物センサを使用してクレアチニン及び/又はグルコースをアッセイするための検出方法は:グルコース及びクレアチニンのうちの少なくとも一方を含む流体に分析物センサを曝露することを含み得る。分析物センサは、少なくとも第1の作用電極及び第2の作用電極、第1の作用電極の表面に配置されたクレアチニン応答性活性領域、第2の作用電極の表面に配置されたグルコース応答性活性領域を含むセンサテール、及びクレアチニン応答性活性領域を覆う第1の膜、及びグルコース応答性活性領域を覆う第2の膜を含む。グルコース応答性活性領域は、グルコースオキシダーゼなどのグルコース応答性酵素を含み、クレアチニン応答性活性領域は、クレアチニンの検出を容易にするために協調して作用することができる少なくとも2つの酵素を含む酵素系を含む。
【0082】
この方法は、第1の作用電極に電位を印加し、第2の作用電極に電位を印加すること、クレアチニン応答性活性領域の酸化還元電位以上で、流体中のクレアチニンの濃度に比例する第1のシグナルを取得すること、グルコース応答性活性領域の酸化還元電位以上で、流体中のグルコースの濃度に比例する第2のシグナルを取得すること、及び、第1のシグナルを流体中のクレアチニンの濃度に、第2のシグナルを流体中のグルコース濃度に相関させることをさらに含み得る。
【0083】
より具体的な実施形態によれば、第1のシグナル及び第2のシグナルは、異なる時間に測定され得る。したがって、そのような実施形態では、電位は、第1の作用電極及び第2の作用電極に交互に印加され得る。他の特定の実施形態では、第1のシグナル及び第2のシグナルは、第1のチャネル及び第2のチャネルを介して同時に測定することができ、その場合、電位を両方の電極に同時に印加することができる。いずれの場合も、各活性領域に関連するシグナルは、ルックアップテーブル又は較正関数を使用して、上記と同様の方法でクレアチニン及びグルコースの濃度に相関させることができる。
【0084】
本明細書に開示される実施形態には、以下が含まれる。
A.クレアチニン応答性分析物センサ。分析物センサは:少なくとも第1の作用電極を含むセンサテール;第1の作用電極の表面に配置されたクレアチニン応答性活性領域であって、第1の電子移動剤、第1のポリマー、及びクレアチニンの検出を容易にするために協調して作用することができる複数の酵素を含む酵素系であって、クレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、及びサルコシンオキシダーゼを含む酵素系を含むクレアチニン応答性活性領域;クレアチニンに対して透過性であり、クレアチニン応答性活性領域を覆う第1の膜;及びセンサテール上かつクレアチニン応答性活性領域の近くに配置された酸素スカベンジャーを含む。
【0085】
B.クレアチニン及びグルコース応答性分析物センサ。分析物センサは:第1の作用電極及び第2の作用電極を含むセンサテール;第1の作用電極の表面に配置されたクレアチニン応答性活性領域であって、第1の電子移動剤、第1のポリマー、及びクレアチニンの検出を容易にするために協調して作用することができる複数の酵素を含む酵素系であって、クレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、及びサルコシンオキシダーゼを含む酵素系を含むクレアチニン応答性活性領域;クレアチニンに対して透過性であり、クレアチニン応答性活性領域を覆う第1の膜;第2のポリマーに共有結合し、第1の膜上に配置されたグルコースオキシダーゼ;第2の作用電極の表面に配置されたグルコース応答性活性領域であって、第2の電子移動剤、第3のポリマー、及び第3のポリマーに共有結合したグルコースオキシダーゼを含むグルコース応答性活性領域;及びグルコースに対して透過性であり、グルコース応答性活性領域を覆う第2の膜を含む。
【0086】
C.分析物センサを使用してクレアチニンをアッセイする方法。この方法は:分析物センサを、少なくともクレアチニンを含む流体に曝露すること;分析物センサは、少なくとも第1の作用電極を含むセンサテール、第1の作用電極の表面に配置されたクレアチニン応答性活性領域、クレアチニンに対して透過性であり、クレアチニン応答性活性領域を覆う第1の膜、及び、センサテール上かつクレアチニン応答性活性領域の近くに配置された酸素スカベンジャーを含むこと;クレアチニン応答性活性領域は、第1の電子移動剤、第1のポリマー、及びクレアチニンの検出を容易にするために協調して作用することができる複数の酵素を含む酵素系であって、クレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、及びサルコシンオキシダーゼを含む酵素系を含むこと;第1の作用電極に電位を印加すること;クレアチニン応答性活性領域の酸化還元電位以上で、流体中のクレアチニンの濃度に比例する第1のシグナルを取得すること;及び第1のシグナルを流体中のクレアチニンの濃度に相関させることを含む。実施形態A~Dのそれぞれは、以下の追加の要素のうちの1つ以上を任意の組み合わせで有し得る:
要素1:酸素スカベンジャーは、第1の膜によってクレアチニン応答性活性領域から離隔される。
【0087】
要素2:酸素スカベンジャーはオキシダーゼ酵素を含む。
要素3:酸素スカベンジャーはグルコースオキシダーゼを含む。
要素4:グルコースオキシダーゼは、第2のポリマーに共有結合している。
【0088】
要素5:酸素スカベンジャーは第1の膜上に配置され、任意選択で酸素スカベンジャーはオキシダーゼ酵素を含み、任意選択で酸素スカベンジャーはグルコースオキシダーゼを含み、任意選択でグルコースオキシダーゼは第2のポリマーに共有結合している。
【0089】
要素6:クレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、及びサルコシンオキシダーゼはそれぞれ、第1のポリマーに共有結合している。
要素7:分析物センサは、第2の作用電極;第2の作用電極の表面に配置されたグルコース応答性活性領域であって、第2の電子移動剤、第3のポリマー、及び第3のポリマーに共有結合したグルコースオキシダーゼを含むグルコース応答性活性領域;及びグルコースに対して透過性であり、グルコース応答性活性領域を覆う第2の膜をさらに含む。
【0090】
要素8:分析物センサは、第2のポリマーに共有結合され、第1の膜上に配置されたグルコースオキシダーゼをさらに含む。
要素9:第1の膜及び第2の膜は、組成的に同じである。
【0091】
要素10:第1の膜上に配置されたグルコースオキシダーゼは、クレアチニンに対して透過性である第3の膜によって覆われている。
要素11:第1の膜、第2の膜、及び第3の膜は、組成的に同じである。
【0092】
要素12:酸素スカベンジャーは、第1の膜上に配置されている。
要素13:酸素スカベンジャーは、第2のポリマーに共有結合したグルコースオキシダーゼを含む。
【0093】
要素14:センサテールは、第2の作用電極の表面に配置されたグルコース応答性活性領域を有する第2の作用電極をさらに含み、グルコース応答性活性領域は、第2の電子移動剤、第3のポリマー、及び第3のポリマーに共有結合したグルコースオキシダーゼを含み、上記方法はさらに:第2の作用電極に電位を印加すること;グルコース応答性活性領域の酸化還元電位以上で、流体中のグルコースの濃度に比例する第2のシグナルを取得すること;及び第2のシグナルを流体中のグルコースの濃度に相関させることを含む。
【0094】
要素15:第1のシグナル及び第2のシグナルは、異なる時間に取得される。
要素16:第1のシグナル及び第2のシグナルは、第1のチャネル及び第2のチャネルを介して同時に取得される。
【0095】
非限定的な例として、Aに適用可能な例示的な組み合わせには:1及び2;1及び3;1、3及び4;1及び5;1、5及び6;1及び7;1、3及び7;1、3、4及び7;1、5及び7;1及び5~7;1及び8;1、7及び8;1、3、4及び7;1、5及び7;1及び5~7;1、6及び7;1、3、4、6及び7;1、3、4及び6~8;1、3、4、6、7及び9;1及び5~10;1及び5~11;1及び5~12;2及び3;2~4;2及び6;2及び7;3及び6;3、6及び7;3及び7;3及び8;3、7及び8;3、8及び9;3、7及び8;3及び7~9;3及び8~10;3及び8~11;3及び8~12;3、4及び7;3、4、8及び9;3、4及び7~10;3、4及び7~11;4及び5;5及び6;5~7;5及び7;7及び9;7、9及び10;7及び9~11;7及び8;ならびに8及び9が含まれる。Bに適用可能な例示的な組み合わせには、10及び11;9及び10;6及び10;ならびに6及び11が含まれる。Cに適用可能な例示的な組み合わせには、1及び3;1及び6;1、3及び6;1及び9;1、3及び9;1、3及び10;1、3、10及び11;6及び12;6及び13;6及び14;6及び15;6及び16;12及び13;12及び14;12及び15;12及び16;13及び14;13及び15;13及び16;14及び15;ならびに14及び16が含まれる。
【0096】
本明細書の開示のより良い理解を容易にするために、様々な代表的な実施形態の以下の実施例が与えられる。以下の実施例は、本発明の範囲を制限又は定義するものと解されるべきではない。
【0097】
実施例
式1に示す構造を有するポリ(ビニルピリジン)結合遷移金属錯体を調製した。この遷移金属錯体及びそれによる電子移動に関するさらなる詳細は、上記の参照により組み込まれた、共通に所有されている米国特許第6,605,200号に提供されている。各モノマーの下付き文字は、例示的な原子比を表し、特定のモノマーの順序を示すものではない。
【0098】
【0099】
以下の表1に特定されている緩衝スポッティング配合物(10mM MESバッファー)を炭素作用電極上に堆積させて、クレアチニン応答性活性領域を形成した。堆積は、クレアチニン応答性活性領域を0.12mm2の面積を有する単一のスポットとして形成するために、15nLのスポッティング配合物を用いて行った。堆積後、クレアチニン応答性活性領域を25℃で一晩硬化させた。その後、4mLの35mg/mLポリビニルピリジン-co-スチレン、0.1mLの100mg/mL PEGDGE400、及び3.3μLのPDMSを80:20エタノール/10mM HEPESバッファー(pH=8)中に配合したコーティング溶液を使用して、膜をクレアチニン応答性活性領域の上にディップコーティングした。この段階では硬化は行わなかった。
【0100】
【0101】
クレアチニン応答性活性領域上に膜をコーティングした後、表2に特定されているようなグルコースオキシダーゼを含む緩衝スポッティング配合物を膜上に堆積させた。具体的には、15nLのスポッティング配合物を0.05mm2の面積で膜上に堆積させ、次に硬化を25℃で一晩行った。その後、上記と同じコーティング溶液を使用してディップコーティングを行い、堆積したグルコースオキシダーゼ上に膜を形成した。
【0102】
【0103】
クレアチニン応答性活性領域上へのグルコースオキシダーゼ堆積を省略したことを除いて、対照電極を上記のように調製した。
様々な量のクレアチニン(20μM、40μM、60μM、80μM、100μM、130μM、及び200μM)を含む5mMグルコース溶液に電極を浸漬し、電流応答を測定することによって、クレアチニン分析を行った。クレアチニン応答性活性領域にグルコースオキシダーゼのない対照電極も同じ条件下で試験した。
図8は、33℃で様々なクレアチニン濃度に曝露したときの、グルコースオキシダーゼで覆われたクレアチニン応答性活性領域を含む分析物センサの3つの複製の電流応答の例示的なプロットを示す。示されているように、電流応答は、新しいクレアチニン濃度への曝露後、数分の間に増加し、その後安定した。対照的に、クレアチニン応答性活性領域がグルコースオキシダーゼで覆われていない2つの対照センサは、どの濃度でもクレアチニンに応答しなかった。
図9は、様々なクレアチニン濃度(20μM、40μM、60μM、80μM、100μM、130μM、及び200μM)に曝露したときの、グルコースオキシダーゼで覆われたクレアチニン応答性活性領域を含む単一分析物センサの電流応答の例示的なプロットを示す。示されているように、センサの応答は、試験した濃度範囲にわたり本質的に線形であった。ここでも、グルコースオキシダーゼで覆われていない対照センサは、おそらく酵素系との酸素干渉のために、クレアチニンに対して本質的に応答を示さなかった。
【0104】
特に明記しない限り、本明細書及び関連する特許請求の範囲において数量等を表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対のことが示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明の実施形態によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効桁数に照らして、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0105】
様々な特徴を組み込んだ1つ以上の例示的な実施形態が本明細書に提示されている。明確にするため、物理的実装のすべての特徴が本願で説明ないし示されているわけではない。本発明の実施形態を組み込んだ物理的実施形態の開発において、システム関連、ビジネス関連、政府関連及びその他の制約のコンプライアンスなどの開発者の目標を達成するために、多数の実装固有の決定を行わなければならないことが理解される。これらは、実装によって、また場合によって変化する。開発者の努力は時間がかかるかもしれないが、それでも、そのような努力は、当業者にとって日常的な作業であり、本開示の利益を有するであろう。
【0106】
様々なシステム、ツール、及び方法が、様々なコンポーネント又はステップを「含む」という観点から本明細書で説明されているが、システム、ツール、及び方法はまた、様々なコンポーネント及びステップ「から本質的になる」又は「からなる」ものとすることができる。
【0107】
本明細書で使用される場合、一連の項目の前にあり、項目のいずれかを区切る「及び」又は「又は」という用語を伴う「少なくとも1つ」という句は、リストの各メンバー(つまり、各項目)ではなく、リスト全体を修飾する。「~の少なくとも1つ」という句は、項目のいずれか1つのうちの少なくとも1つ、及び/又は項目の任意の組み合わせのうちの少なくとも1つ、及び/又は項目のそれぞれの少なくとも1つを含むという意味を許容する。例として、「A、B、及びCの少なくとも1つ」又は「A、B、又はCの少なくとも1つ」という句は、それぞれ、Aのみ、Bのみ、又はCのみ;A、B、及びCの任意の組み合わせ;及び/又はA、B、及びCのそれぞれの少なくとも1つを指す。
【0108】
したがって、開示されたシステム、ツール、及び方法は、言及された目的及び利点、ならびにそれに内在するものを達成するために十分に適合されている。本開示の教示は、本明細書の教示の利益を有する当業者には明らかな、相違する同等の態様で変更及び実施され得るので、上記で開示された特定の実施形態は例示にすぎない。さらに、添付の特許請求の範囲に記載されている場合を除き、本明細書に示されている構造又は設計の詳細に限定することは意図されていない。したがって、上に開示された特定の例示的な実施形態は、変更、組み合わせ、又は修正され得ることは明らかであり、そのようなすべてのバリエーションは、本開示の範囲内であると見なされる。本明細書に例示的に開示されるシステム、ツール、及び方法は、本明細書に具体的に開示されていない要素及び/又は本明細書に開示されている任意選択の要素がない状態で適切に実施され得る。システム、ツール、及び方法は、様々なコンポーネント又はステップを「含む」という観点から説明されているが、システム、ツール、及び方法は、様々なコンポーネント及びステップ「から本質的になる」又は「からなる」ことも可能である。上記に開示されたすべての数及び範囲は、いくらか変動する場合がある。下限及び上限を有する数値範囲が開示されるときはいつでも、その範囲内にある任意の数及び任意の含まれる範囲が具体的に開示される。特に、本明細書に開示されるすべての範囲の値(「約aから約b」、又は同等に「約aからb」、又は同等に「約a~b」の形式)は、より広い範囲の値に含まれるすべての数及び範囲を記載しているものとして理解されるべきである。また、特許権者によって明示的かつ明確に定義されていない限り、請求項の用語は、本来の通常の意味を有する。本明細書と、参照により本明細書に組み込まれ得る1つ以上の特許文献又はその他の文献との間で単語又は用語の使用法に矛盾がある場合は、本明細書に従う定義を採用するものとする。