IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋化成工業株式会社の特許一覧

特許7480244繊維用集束剤組成物、繊維束、繊維製品及び複合材料
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】繊維用集束剤組成物、繊維束、繊維製品及び複合材料
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/273 20060101AFI20240430BHJP
   B29B 15/14 20060101ALI20240430BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20240430BHJP
   D06M 15/507 20060101ALI20240430BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20240430BHJP
   D06M 15/55 20060101ALI20240430BHJP
   D06M 15/572 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
D06M15/273
B29B15/14
D06M13/17
D06M15/507
D06M15/53
D06M15/55
D06M15/572
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022164481
(22)【出願日】2022-10-13
(65)【公開番号】P2023067780
(43)【公開日】2023-05-16
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2021178471
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕文
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/092194(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/078142(WO,A1)
【文献】特開2019-163583(JP,A)
【文献】国際公開第2015/045618(WO,A1)
【文献】特開2015-190067(JP,A)
【文献】特開2004-316052(JP,A)
【文献】特開2011-106053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
B29B 15/08 - 15/14
C08J 5/04 - 5/10
C08J 5/24
D06M 13/00 - 15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル基及びビニレン基からなる群より選ばれる第1官能基、ならびに、エポキシ基、アミノ基及びオキサゾリン-2-イル基からなる群より選ばれる第2官能基を、それぞれ1つ以上有する第1の樹脂(A)と、
前記第1の樹脂(A)以外の樹脂であって、SP値が10.6~11.6(cal/cm1/2の疎水性部位を有し、酸価が0~20mgKOH/gの第2の樹脂(B)と、
反応性ノニオン界面活性剤(C)と、を含む繊維用集束剤組成物。
【請求項2】
第1の樹脂(A)と第2の樹脂(B)との重量比(第1の樹脂(A)の重量/第2の樹脂(B)の重量)が20/80~90/10である請求項1に記載の繊維用集束剤組成物。
【請求項3】
第1の樹脂(A)及び第2の樹脂(B)の合計重量と、反応性ノニオン界面活性剤(C)の重量との比[第1の樹脂(A)及び第2の樹脂(B)の合計重量/反応性ノニオン界面活性剤(C)の重量)が99/1~70/30である請求項1または2に記載の繊維用集束剤組成物。
【請求項4】
第2の樹脂(B)がオキシアルキレン基を有する芳香族ポリエステル樹脂である請求項1または2に記載の繊維用集束剤組成物。
【請求項5】
反応性ノニオン界面活性剤(C)がプロペニル基を有するノニオン界面活性剤である請求項1または2に記載の繊維用集束剤組成物。
【請求項6】
炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維及びスラッグ繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維を、請求項1または2に記載の繊維用集束剤組成物で処理してなる繊維束。
【請求項7】
炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維及びスラッグ繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維と、
ビニル基及びビニレン基からなる群より選ばれる第1官能基、ならびに、エポキシ基、アミノ基及びオキサゾリン-2-イル基からなる群より選ばれる第2官能基を、それぞれ1つ以上有する第1の樹脂(A)及び/又は第1の樹脂(A)の反応物と、
前記第1の樹脂以外の樹脂であって、SP値が10.6~11.6(cal/cm1/2の疎水性部位を有し、酸価が0~20mgKOH/gの第2の樹脂(B)及び/又は第2の樹脂(B)の反応物と、反応性ノニオン界面活性剤(C)と、を含み、
第1の樹脂(A)の反応物は、第1の樹脂(A)同士が反応したもの及び/又は第1の樹脂(A)と繊維とが反応したものを含み、
第2の樹脂(B)の反応物は、第2の樹脂(B)と第1の樹脂(A)とが反応したもの及び/又は第2の樹脂(B)と繊維とが反応したものを含む、繊維束。
【請求項8】
請求項6に記載の繊維束を含む繊維製品。
【請求項9】
請求項7に記載の繊維束を含む繊維製品。
【請求項10】
請求項6に記載の繊維束とマトリックス樹脂とを含む複合材料。
【請求項11】
請求項7に記載の繊維束とマトリックス樹脂とを含む複合材料。
【請求項12】
請求項8に記載の繊維製品とマトリックス樹脂とを含む複合材料。
【請求項13】
請求項9に記載の繊維製品とマトリックス樹脂とを含む複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維用集束剤組成物、繊維束、繊維製品及び複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なマトリックス樹脂と各種繊維との複合材料は、スポーツ用具、レジャー用品及び航空機等の分野で広く利用されている。
このような複合材料に使用される繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維及びスラッグ繊維等の繊維が用いられている。これらの繊維を前記の複合材料とする加工工程においては、毛羽立ちや糸切れを防止するため、集束剤を付与することが一般的である。
従来の集束剤を繊維に用いる場合において、マトリックス樹脂がビニルエステル樹脂や不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂であると、繊維とマトリックス樹脂との接着性が不十分となり、得られる複合材料の物性が不十分となるという問題があった。
この問題を解決するものとして、エポキシ樹脂がアルコキシポリオキシエチレン構造とエポキシ基とを有するウレタン樹脂によって水性媒体に分散された繊維集束剤(例えば特許文献1)及びポリエチレンイミンを集束剤として使用する技術(例えば特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-249562号公報
【文献】特開平03-065311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複合材料の物性向上には、繊維の特性を有効に生かすという点から、繊維とマトリックス樹脂との接着性が高いこと、及び、繊維束の取扱い性の観点からの集束性及び毛羽立ちが少ないことが重要である。このような事情から、繊維とマトリックス樹脂との接着性を向上させることができ、繊維の取扱い性を向上させることができ、かつ毛羽立ちの少ない繊維束を形成できる集束剤が望まれている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び2で提案された集束剤は、繊維とマトリックス樹脂との接着性及び集束性を十分に向上させることができるものではなく、繊維束の毛羽立ちを十分に抑制できるものではないという問題がある。また、接着性等の性能の経時変化が小さい集束剤も求められている。
本発明は、繊維とマトリックス樹脂との接着性が高く、高い集束性を保持しながら、毛羽立ちの少ない繊維束を作ることができ、かつ、前記性能の経時変化が小さい繊維用集束剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]ビニル基及びビニレン基からなる群より選ばれる第1官能基、ならびに、エポキシ基、アミノ基及びオキサゾリン-2-イル基からなる群より選ばれる第2官能基を、それぞれ1つ以上有する第1の樹脂(A)と、前記第1の樹脂(A)以外の樹脂であって、SP値が10.6~11.6(cal/cm1/2の疎水性部位を有し、酸価が0~20mgKOH/gの第2の樹脂(B)と、反応性ノニオン界面活性剤(C)と、を含む繊維用集束剤組成物。
[2]第1の樹脂(A)と第2の樹脂(B)との重量比(第1の樹脂(A)の重量/第2の樹脂(B)の重量)が20/80~90/10である[1]に記載の繊維用集束剤組成物。
[3]第1の樹脂(A)及び第2の樹脂(B)の合計重量と、反応性ノニオン界面活性剤(C)の重量との比[第1の樹脂(A)及び第2の樹脂(B)の合計重量/反応性ノニオン界面活性剤(C)の重量)が99/1~70/30である[1]または[2]に記載の繊維用集束剤組成物。
[4]第2の樹脂(B)がオキシアルキレン基を有する芳香族ポリエステル樹脂である[1]~[3]のいずれか1項に記載の繊維用集束剤組成物。
[5]反応性ノニオン界面活性剤(C)がプロペニル基を有するノニオン界面活性剤である[1]~[4]のいずれか1項に記載の繊維用集束剤組成物。
[6]炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維及びスラッグ繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維を、[1]~[5]のいずれか1項に記載の繊維用集束剤組成物で処理してなる繊維束。
[7]炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維及びスラッグ繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維と、ビニル基及びビニレン基からなる群より選ばれる第1官能基、ならびに、エポキシ基、アミノ基及びオキサゾリン-2-イル基からなる群より選ばれる第2官能基を、それぞれ1つ以上有する第1の樹脂(A)及び/又は第1の樹脂(A)の反応物と、前記第1の樹脂以外の樹脂であって、SP値が10.6~11.6(cal/cm1/2の疎水性部位を有し、酸価が0~20mgKOH/gの第2の樹脂(B)及び/又は第2の樹脂(B)の反応物と、反応性ノニオン界面活性剤(C)と、を含み、第1の樹脂(A)の反応物は、第1の樹脂(A)同士が反応したもの及び/又は第1の樹脂(A)と繊維とが反応したものを含み、第2の樹脂(B)の反応物は、第2の樹脂(B)と第1の樹脂(A)とが反応したもの及び/又は第2の樹脂(B)と繊維とが反応したものを含む、繊維束。
[8][6]に記載の繊維束を含む繊維製品。
[9][7]に記載の繊維束を含む繊維製品。
[10][6]に記載の繊維束とマトリックス樹脂とを含む複合材料。
[11][7]に記載の繊維束とマトリックス樹脂とを含む複合材料。
[12][8]に記載の繊維製品とマトリックス樹脂とを含む複合材料。
[13][9]に記載の繊維製品とマトリックス樹脂とを含む複合材料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、繊維とマトリックス樹脂との接着性を向上させることができ、より、高い集束性を保持しながら、毛羽立ちの少ない繊維束及び繊維製品を得られることができ、かつ、前記性能の経時変化が小さい集束剤を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[繊維用集束剤組成物]
繊維用集束剤組成物は、ビニル基及びビニレン基からなる群より選ばれる第1官能基、ならびに、エポキシ基、アミノ基及びオキサゾリン-2-イル基からなる群より選ばれる第2官能基を、それぞれ1つ以上有する第1の樹脂(A)と、前記第1の樹脂以外の樹脂であって、SP値が10.6~11.6(cal/cm1/2の疎水性部位を有し、酸価が0~20mgKOH/gの第2の樹脂(B)と、反応性ノニオン界面活性剤(C)と、を含む。
【0009】
第1の樹脂(A)はビニル基及びビニレン基からなる群より選ばれる第1官能基、ならびに、エポキシ基、アミノ基、オキサゾリン-2-イル基からなる群より選ばれる第2官能基を、それぞれ1つ以上有する。第1の樹脂(A)としては、ビニル基及びエポキシ基をそれぞれ1つ以上有する樹脂(A1)、ビニレン基及びエポキシ基をそれぞれ1つ以上有する樹脂(A2)、ビニル基及びアミノ基をそれぞれ1つ以上有する樹脂(A4)、ビニル基及びオキサゾリン-2-イル基をそれぞれ1つ以上有する樹脂(A5)ならびにビニレン基及びオキサゾリン-2-イル基をそれぞれ1つ以上有する樹脂(A6)等が挙げられる。
繊維用集束剤が第1の樹脂を含むことにより、第1の樹脂が有する第1の官能基とマトリックス樹脂が有する基(例えばビニルエステル基等)とが結合し、第1の樹脂が有する第2の官能基が、繊維表面に存在する基(例えばカルボキシル基及び水酸基等)及び(場合により)マトリックス樹脂と結合して、繊維とマトリックス樹脂との接着力を向上させ、複合材料等の強度等の物性を優れたものとしうる。
繊維とマトリックス樹脂との接着性に優れ、複合材料等の強度に優れるという観点から第1の官能基としてはビニル基が好ましく、第2の官能基としてはグリシジル基が好ましく、前記ビニル基としては(メタ)アクリロイル基が好ましく、前記エポキシ基としてはグリシジル基が好ましい。本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及び/又はメタアクリロイル基を意味する。第1の樹脂(A)は一種のみを用いてもよいし二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0010】
ビニル基及びエポキシ基をそれぞれ1つ以上有する樹脂(A1)[樹脂(A1)ともいう]としては、例えば、(メタ)アクリレート変性芳香族エポキシ樹脂、エポキシ基を有する芳香族ポリエステルの(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリレートとはアクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。(メタ)アクリレート変性芳香族エポキシ樹脂は、芳香族エポキシ樹脂を(メタ)アクリル酸で変性した変性物をいう。(メタ)アクリル酸とはアクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0011】
(メタ)アクリレート変性芳香族エポキシ樹脂としては、(メタ)アクリレート変性ビフェニル型エポキシ樹脂、(メタ)アクリレート変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂、および(メタ)アクリレート変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びビスフェノールS型エポキシ樹脂等)等が挙げられる。(メタ)アクリレート変性芳香族エポキシ樹脂はアルキレンオキサイド(AO)が付加された化合物であってもよい。アルキレンオキサイドとしては炭素数2~20のアルキレンオキサイドが好ましい。AOとしては、具体的には、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、ブチレンオキサイド(BO)及びこれらの二種以上の組み合わせがあげられる。前記AOの付加モル数は好ましくは2モル以上、より好ましくは4モル以上であり、好ましくは20モル以下、より好ましくは14モル以下である。プロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドは、直鎖のものであっても分岐を有するものであってもよい。
【0012】
エポキシ基を有する芳香族ポリエステルの(メタ)アクリレートとしては、例えばビスフェノール骨格(ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等)を有するポリエステルのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記ビスフェノール骨格を有するポリエステルはアルキレンオキサイドが付加された化合物であってもよい。前記アルキレンオキサイド(AO)及びその付加モル数は、前記(メタ)アクリレート変性芳香族エポキシ樹脂の説明において例示したものと同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。前記ビスフェノール骨格を有するポリエステルは、例えばビスフェノールまたはビスフェノールのAO付加物と芳香族ジカルボン酸とを反応させることにより得ることができる。前記ビスフェノールのAO付加物としては市販のビスフェノールのAO付加物(ニューポールBP-5、ニューポールBPE-20、ニューポールBPE-40、ニューポールBP-3P等)を用いてもよい。前記芳香族ジカルボン酸としては、後述のビニル基及びアミノ基をそれぞれ1つ以上有する樹脂(A4)の材料として例示されている芳香族ジカルボン酸(a42)と同じものを用いることができる。樹脂(A1)は一種のみを用いてもよいし二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
樹脂(A1)としては、繊維とマトリックス樹脂との接着性の観点から、(メタ)アクリレート変性ビスフェノール型エポキシ樹脂及びビスフェノール骨格を有するポリエステルのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレートが好ましく、(メタ)アクリレート変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、(メタ)アクリレート変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。樹脂(A1)は1種のみを用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
樹脂(A1)のエポキシ当量(g/eq)は、繊維とマトリックス樹脂との接着性の向上の観点から、100~3000が好ましく、さらに好ましくは200~2000である。本明細書において、エポキシ当量とは、JIS K 7236に準拠して測定される値である。
【0015】
ビニレン基及びエポキシ基をそれぞれ1つ以上有する樹脂(A2)[樹脂(A2)ともいう]としては、例えば、芳香族エポキシ樹脂を鎖式不飽和ジカルボン酸で変性した変性物(鎖式不飽和ジカルボン酸変性芳香族エポキシ樹脂)、及びエポキシ基を有する芳香族ポリエステルを鎖式不飽和ジカルボン酸で変性した変性物(エポキシ基を有する芳香族ポリエステルの鎖式不飽和ジカルボン酸変性物)等が挙げられる。
【0016】
鎖式不飽和ジカルボン酸変性芳香族エポキシ樹脂としては、鎖式不飽和ジカルボン酸変性ビフェニル型エポキシ樹脂、鎖式不飽和ジカルボン酸変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂、及び鎖式不飽和ジカルボン酸変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びビスフェノールS型エポキシ樹脂等)等が挙げられる。鎖式不飽和ジカルボン酸変性芳香族エポキシ樹脂はアルキレンオキサイド付加されたものであってもよい。前記アルキレンオキサイド(AO)及びその付加モル数は、前記(メタ)アクリレート変性芳香族エポキシ樹脂の説明において例示したものと同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0017】
エポキシ基を有する芳香族ポリエステルの鎖式不飽和ジカルボン酸変性物としては、例えばビスフェノール骨格(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)を有するポリエステルのグリシジルエーテルの鎖式不飽和ジカルボン酸変性物等が挙げられる。前記ビスフェノール骨格を有するポリエステルはアルキレンオキサイドが付加された化合物であってもよい。前記アルキレンオキサイド(AO)及びその付加モル数は、前記(メタ)アクリレート変性芳香族エポキシ樹脂の説明において例示したものと同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0018】
鎖式不飽和ジカルボン酸変性芳香族エポキシ樹脂及びエポキシ基を有する芳香族ポリエステルの鎖式不飽和ジカルボン酸変性物を構成する鎖式不飽和ジカルボン酸(a2)としては、炭素数4~22の直鎖又は分岐の鎖式不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸及びオクタデセニルコハク酸等)等が挙げられる。
【0019】
ビニレン基及びエポキシ基をそれぞれ1つ以上有する樹脂(A2)としては、繊維とマトリックス樹脂との接着性の観点から、鎖式不飽和ジカルボン酸変性ビスフェノール型エポキシ樹脂及びビスフェノール骨格を有するポリエステルのグリシジルエーテルの鎖式不飽和ジカルボン酸変性物が好ましく、鎖式不飽和ジカルボン酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び鎖式不飽和ジカルボン酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましく、フマル酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。樹脂(A2)は1種のみを用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
樹脂(A2)のエポキシ当量(g/eq)は、繊維とマトリックス樹脂との接着性の向上の観点から、100~3000が好ましく、さらに好ましくは200~2000である。
【0021】
ビニル基及びアミノ基をそれぞれ1つ以上有する樹脂(A4)[樹脂(A4)ともいう]としては、例えば、両末端アミノ基含有ポリアミドと(メタ)アクリル酸とを反応させてなる部分アミド化物(両末端アミノ基含有ポリアミドと(メタ)アクリル酸とのアミド化物)及びアリルアミン等が挙げられる。
【0022】
両末端アミノ基含有ポリアミドと(メタ)アクリル酸とを反応させてなるアミド化物を構成する両末端アミノ基含有ポリアミド(a4)としては、ジカルボン酸(a4-1)又はその無水物とジアミン(a4-2)の縮合物等が挙げられる。
【0023】
ジカルボン酸(a4-1)としては、脂肪族ジカルボン酸(a41)、芳香族ジカルボン酸(a42)及びこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0024】
脂肪族ジカルボン酸(a41)としては、鎖状飽和脂肪族ジカルボン酸(a411)、鎖状不飽和脂肪族ジカルボン酸(a412)、脂環式ジカルボン酸(a413)及びダイマー酸(a414)等が挙げられる。
【0025】
鎖状飽和脂肪族ジカルボン酸(a411)としては、炭素数2~22の直鎖又は分岐の鎖状飽和脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、メチルコハク酸、エチルコハク酸、ジメチルマロン酸、α-メチルグルタル酸、β-メチルグルタル酸、2,4-ジエチルグルタル酸、イソプロピルマロン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、イコサンジカルボン酸、デシルコハク酸、ドデシルコハク酸及びオクタデシルコハク酸等)等が挙げられる。
【0026】
鎖状不飽和脂肪族ジカルボン酸(a412)としては、炭素数4~22の直鎖又は分岐の鎖状不飽和脂肪族ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸及びオクタデセニルコハク酸等)等が挙げられる。
【0027】
脂環式ジカルボン酸(a413)としては、炭素数7~14の脂環式ジカルボン酸(1,3-又は1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジ酢酸及びジシクロヘキシル-4,4’-ジカルボン酸等)等が挙げられる。
【0028】
ダイマー酸(a414)としては、炭素数8~24の鎖状不飽和脂肪族カルボン酸(オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸等)の二量体が挙げられる。
【0029】
芳香族ジカルボン酸(a42)としては、炭素数8~14の芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フェニルマロン酸、フェニルコハク酸、β-フェニルグルタル酸、α-フェニルアジピン酸、β-フェニルアジピン酸、ビフェニル-2,2’-又は4,4’-ジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸ナトリウム及び5-スルホイソフタル酸カリウム等)等が挙げられる。
【0030】
ジカルボン酸(a4-1)またはその無水物は、単独でも2種以上を併用してもよい。
これらのうち、集束性の観点から、鎖状飽和脂肪族ジカルボン酸(a411)、鎖状不飽和脂肪族ジカルボン酸(a412)及び芳香族ジカルボン酸(a42)が好ましく、さらに好ましいのは、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸であり、特に好ましいのはアジピン酸、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸及びイソフタル酸である。
【0031】
ジアミン(a4-2)としては炭素数2~20の脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、及びヘキサメチレンジアミン等)、炭素数6~20の脂環式ジアミン(ジアミノシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等)、炭素数2~20の芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、トリレンジアミン及びジフェニルメタンジアミン等)、並びに炭素数2~20の複素環式ジアミン(ピペラジン及びN-アミノエチルピペラジン等)等が挙げられる。
これらのうち、炭素数2~20の脂肪族ジアミンが好ましく、エチレンジアミンがより好ましい。
【0032】
樹脂(A4)としては、繊維とマトリックス樹脂との接着性の観点から、好ましくは両末端アミノ基含有ポリアミドと(メタ)アクリル酸とのアミド化物であり、より好ましくはアジピン酸とエチレンジアミンの縮合物と(メタ)アクリル酸とのアミド化合物である。樹脂(A4)は1種のみを用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
ビニル基及びオキサゾリン-2-イル基をそれぞれ1つ以上有する樹脂(A5)[樹脂(A5)ともいう]としては、例えば、オキサゾリン-2-イル基含有化合物(a5)と(メタ)アクリル酸の反応物等が挙げられる。前記反応物を作製するときのオキサゾリン-2-イル基含有化合物(a5)及び(メタ)アクリル酸の使用量は、化合物(a5)中のオキサゾリン-2-イル基の量から(メタ)アクリル酸の官能基量を差し引いた差分が0.2mmol/g~8mmmol/gとなる量であることが好ましい。樹脂(A5)は1種のみを用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
オキサゾリン-2-イル基含有化合物(a5)としては、オキサゾリン-2-イル基を有する化合物であれば特に限定はなく、例えば、(株)日本触媒製「エポクロスK-2010E」、「エポクロスK-2020E」、「エポクロスK-2030E」、「エポクロスWS-300」、「エポクロスWS-500」、「エポクロスWS-700」、「PX3-RP-37」及び「エポクロスRPS-1005」等のオキサゾリン-2-イル基含有ポリマーが挙げられる。
【0035】
第1の樹脂(A)としては、繊維とマトリックス樹脂との接着性に優れ、複合材料等の強度に優れるという観点から好ましくは、ビニル基及びエポキシ基をそれぞれ1つ以上有する樹脂(A1)であり、より好ましくは(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基をそれぞれ1つ以上有する樹脂であり、さらに好ましくは(メタ)アクリレート変性ビスフェノール型エポキシ樹脂及びビスフェノール骨格を有するポリエステルのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレートであり、特に好ましくは(メタ)アクリレート変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び(メタ)アクリレート変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂である。
【0036】
第2の樹脂(B)は、第1の樹脂以外の樹脂であって、SP値が10.6~11.6(cal/cm1/2の疎水性部位を有し、酸価が0~20mgKOH/gの樹脂である。「第1の樹脂以外の樹脂」とは、第1の樹脂が有する第1官能基(ビニル基及びビニレン基からなる群より選ばれる官能基)及び第2官能基(エポキシ基、アミノ基及びオキサゾリン-2-イル基からなる群より選ばれる官能基)のうちのいずれか一方を有さないか、双方とも有さない樹脂をいう。繊維用集束剤がSP値が10.6~11.6(cal/cm1/2の疎水性部位を有し、酸価が0~20mgKOH/gの第2の樹脂(B)を含むことにより、集束性を発現できるとともに、マトリックス樹脂と親和性が高いためマトリックス樹脂との接着性に優れ、更に集束剤の乳化安定性を向上させることができる。
【0037】
第2の樹脂(B)における疎水性部位とは、第2の樹脂(B)の構造のうち、水溶性化合物以外の化合物(疎水性化合物)に由来する構造を意味する。本発明において「水溶性化合物」とは25℃の100gの水に5g溶解する化合物を意味する。
第2の樹脂が、例えば、ビスフェノールAのEO2モル付加物4モルとテレフタル酸5モルとの反応物(疎水性化合物)にポリエチレングリコール(水溶性化合物)を反応させて得られるポリエステル樹脂である場合、疎水性部位は、水溶性の化合物(ポリエチレングリコール)を除いた疎水性化合物(ビスフェノールAのEO2モル付加物4モルとテレフタル酸5モルとの反応物)に由来する構造である。
水溶性化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール及びビスフェノールAのEO40モル付加物等が挙げられる。
【0038】
疎水性化合物としては、芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸との反応物、ならびに、芳香族ジオールと芳香族ジイソシアネートとの反応物からなる群より選ばれる反応物が好ましい。該反応物は2種以上のジカルボン酸をジオールと反応させてなる反応物や、2種以上のジイソシアネートをジオールと反応させてなる反応物であってもよい。
該反応物が末端にカルボキシル基(-COH)を有し、第2の樹脂(B)が該カルボキシル基に由来する基(例えば-CO-)を有する場合は、その基までを「疎水性化合物に由来する構造」に含める。また、該反応物が末端にイソシアネート基(-NCO)を有し、第2の樹脂(B)が該イソシアネート基に由来する基(例えば-NHCO-)を有する場合は、その基までを「疎水性化合物に由来する構造」に含める。
【0039】
前記反応物を構成する芳香族ジオールとしては、ビスフェノール類のEOまたはPO付加物が好ましく、ビスフェノール類のPO付加物がより好ましい。
前記反応物を構成する芳香族ジカルボン酸としては、後述のポリエステル樹脂(B1)を構成するジカルボン酸又はその無水物(b1)の説明において例示される芳香族ジカルボン酸(b12)と同様のものが好ましい。
前記反応物を構成する脂肪族ジカルボン酸としては、後述のポリエステル樹脂(B1)を構成するジカルボン酸又はその無水物(b1)の説明において例示される脂肪族ジカルボン酸(b11)と同様のものが好ましい。
前記反応物を構成する芳香族ジイソシアネートとしては、後述のポリウレタン樹脂(B2)を構成するポリイソシアネート(b3)の説明において例示される炭素数8~30の芳香族ジイソシアネートと同様のものが好ましい。
【0040】
芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸との反応物ならびに、芳香族ジオールと芳香族ジイソシアネートとの反応物としては、ビスフェノール類のAO付加物と芳香族ジカルボン酸との反応物、ビスフェノール類のAO付加物と脂肪族ジカルボン酸との反応物、ビスフェノール類のAO付加物と芳香族ジイソシアネートとの反応物などが好ましい。具体的には、ビスフェノールAのEO付加物とテレフタル酸との反応物、ビスフェノールAのPO付加物とテレフタル酸との反応物、ビスフェノールAのEO/PO付加物とテレフタル酸との反応物、ビスフェノールAのEO付加物とフマル酸との反応物、ビスフェノールAのPO付加物とフマル酸との反応物、ビスフェノールAのEO/PO付加物とフマル酸との反応物、ビスフェノールAのEO付加物とテレフタル酸とフマル酸との反応物、ビスフェノールAのEO付加物とアジピン酸との反応物、ビスフェノールAのPO付加物とアジピン酸との反応物、ビスフェノールAのEO/PO付加物とアジピン酸との反応物、ビスフェノールAのPO付加物とトルエンジイソシアネートとの反応物等が好ましい。
【0041】
本発明におけるSP値(溶解度パラメータ)[単位は(cal/cm1/2]は、Fedors法(Polymer Engineering and Science,February,1974,Vol.14、No.2 P.147~154)の152頁(Table.5)に記載の数値(原子又は官能基の25℃における蒸発熱及びモル体積)を用いて、同153頁の数式(28)に記載の方法で算出される値である。具体的には、Fedors法のパラメータである下記表1に記載のΔei及びΔviの数値から、分子構造内の原子及び原子団の種類に対応した数値を用いて、下記数式(A)に当てはめることで算出することができる。
SP値=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2 (A)
上記数式におけるΣΔei(単位はcal/モル)は凝集エネルギー密度(単位はcal/モル)であり、ΣΔviは分子容(単位はcm/モル)である。
【0042】
【表1】
【0043】
SP値の計算方法について説明する。例えば、ビスフェノールAのEO2モル付加物4モルとテレフタル酸5モルとの反応物にポリエチレングリコールを反応させて得られる樹脂における疎水性部位は、ビスフェノールAのEO2モル付加物とテレフタル酸との反応物によって構成される部分であり、SP値の算出方法は、以下の通りである。
当該反応物は、CH(Δei=1125、Δvi=33.5)が8個、CH(Δei=1180、Δvi=16.1)が16個、4級炭素(C、Δei=350、Δvi=-19.2)が4個、フェニレン基(Δei=7630、Δvi=52.4)が13個、エーテル基(O、Δei=800、Δvi=3.8)が8個、エステル基(CO、Δei=4300、Δvi=18.0)が10個から構成される。これらの数値から、反応物のΣΔei及びΣΔviをそれぞれ算出し、上記数式(A)にあてはめるとSP値(11.5)を算出することができる。
【0044】
第2の樹脂(B)が有する疎水性部位のSP値は、接着性が良好であるという観点から好ましくは10.8(cal/cm1/2以上、より好ましくは11.0(cal/cm1/2以上であり、好ましくは11.5(cal/cm1/2以下、より好ましくは11.4(cal/cm1/2以下である。本明細書においては、SP値の単位(cal/cm1/2を省略し数値だけを記載することがある。
【0045】
本発明において、酸価とはJIS K0070に準じて、試料をテトラヒドロフランに溶解し、0.5モル/L水酸化カリウム水溶液で滴定して得られる値である。
第2の樹脂(B)の酸価は、毛羽立ちを少なくすることができるという観点から、好ましくは2mgKOH/g以上、より好ましくは4mgKOH/g以上であり、好ましくは19mgKOH/g以下、より好ましくは18mgKOH/g以下である。本明細書においては、酸価の単位(mgKOH/g)を省略し数値だけを記載することがある。
【0046】
第2の樹脂(B)としては1つ以上のオキシアルキレン基を有する樹脂であることが好ましく、1つ以上のオキシアルキレン基を有し、エポキシ基を有さない樹脂であることがより好ましく、1つ以上のオキシアルキレン基を有し、エポキシ基を有さない芳香族ポリエステル樹脂であることがさらに好ましい。第2の樹脂(B)は2つ以上のオキシアルキレン基を有していてもよい。オキシアルキレン基が2つ以上の場合、それらは同一であっても相違していてもよい。本明細書において、2つ以上のオキシアルキレン基が連続して結合した化合物をポリオキシアルキレン鎖ともいう。以下において(ポリ)オキシアルキレン鎖とは、(1つの)オキシアルキレン基及びポリオキシアルキレン鎖を意味する。
【0047】
第2の樹脂(B)は、集束性と毛羽立ちを少なくする観点から、好ましくはジカルボン酸又はその無水物(b1)とジオール(b2)から構成されるポリエステル樹脂(B1)及びポリイソシアネート(b3)とジオール(b2)から構成されるウレタン樹脂(B2)であり、より好ましくはオキシアルキレン基を有する芳香族ポリエステル樹脂であり、さらに好ましくはジカルボン酸又はその無水物(b1)及び、ビスフェノール骨格と(ポリ)オキシアルキレン鎖を有しているジオール(b21)を構成単量体として含むポリエステル樹脂である。第2の樹脂(B)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記ポリエステル樹脂(B1)を構成するジカルボン酸又はその無水物(b1)としては、脂肪族ジカルボン酸(b11)、芳香族ジカルボン酸(b12)及びこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0049】
脂肪族ジカルボン酸(b11)としては、鎖状飽和脂肪族ジカルボン酸(b111)、鎖状不飽和脂肪族ジカルボン酸(b112)、脂環式ジカルボン酸(b113)及びダイマー酸(b114)等が挙げられる。
【0050】
鎖状飽和脂肪族ジカルボン酸(b111)としては、炭素数2~22の直鎖又は分岐の鎖状飽和脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、メチルコハク酸、エチルコハク酸、ジメチルマロン酸、α-メチルグルタル酸、β-メチルグルタル酸、2,4-ジエチルグルタル酸、イソプロピルマロン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、イコサンジカルボン酸、デシルコハク酸、ドデシルコハク酸及びオクタデシルコハク酸等)等が挙げられる。
【0051】
鎖状不飽和脂肪族ジカルボン酸(b112)としては、炭素数4~22の直鎖又は分岐の鎖状不飽和脂肪族ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸及びオクタデセニルコハク酸等)等が挙げられる。
【0052】
脂環式ジカルボン酸(b113)としては、炭素数7~14の脂環式ジカルボン酸(1,3-又は1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジ酢酸及びジシクロヘキシル-4,4’-ジカルボン酸等)等が挙げられる。
【0053】
ダイマー酸(b114)としては、炭素数8~24の鎖状不飽和脂肪族カルボン酸(オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸等)の二量体が挙げられる。
【0054】
芳香族ジカルボン酸(b12)としては、炭素数8~14の芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フェニルマロン酸、フェニルコハク酸、β-フェニルグルタル酸、α-フェニルアジピン酸、β-フェニルアジピン酸、ビフェニル-2,2’-又は4,4’-ジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸ナトリウム及び5-スルホイソフタル酸カリウム等)等が挙げられる。
【0055】
ジカルボン酸の無水物としては、上記脂肪族ジカルボン酸(b11)又は芳香族ジカルボン酸(b12)の無水物、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸及び無水フタル酸等が挙げられる。
【0056】
ジカルボン酸及びその無水物(b1)は、単独でも2種以上を併用してもよい。
これらのうち、集束性の観点から、鎖状飽和脂肪族ジカルボン酸(b111)、鎖状不飽和脂肪族ジカルボン酸(b112)及び芳香族ジカルボン酸(b12)が好ましく、さらに好ましいのは、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸であり、特に好ましいのはアジピン酸、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸及びイソフタル酸である。
【0057】
なお、ジカルボン酸又はその無水物(b1)とジオール(b2)とから得られるポリエステル樹脂(B1)が、カルボキシル基を2つ有するジカルボン酸である場合、これをジカルボン酸又はその無水物(b1)として用いてさらにジオール(b2)と反応させ、ポリエステル樹脂(B1)を得ることもできる。
【0058】
ポリエステル樹脂(B1)を構成するジオール(b2)としては、集束性及び毛羽立ちを少なくする観点から、ビスフェノール骨格と(ポリ)オキシアルキレン鎖を有しているジオール(b21)及びポリエチレングリコール(b22)が好ましい。
ジオール(b2)は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0059】
ビスフェノール骨格と(ポリ)オキシアルキレン鎖を有しているジオール(b21)において、ビスフェノール骨格を構成するビスフェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等が挙げられる。
ビスフェノール骨格と(ポリ)オキシアルキレン鎖を有しているジオール(b21)において、(ポリ)オキシアルキレン鎖を構成するオキシアルキレン基の繰り返し単位数は、毛羽立ちを少なくする観点から、2~100が好ましく、さらに好ましくは2~80である。
ビスフェノール骨格と(ポリ)オキシアルキレン鎖を有しているジオール(b21)の、ポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、およびポリオキシブチレン鎖が挙げられ、オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基等が挙げられる。
【0060】
ビスフェノール骨格と(ポリ)オキシアルキレン鎖を有しているジオール(b21)のうちで、集束性の観点から好ましいのは、ビスフェノールAのAO付加物、ビスフェノールFのAO付加物及びビスフェノールSのAO付加物であり、さらに好ましいのはビスフェノールAのAO付加物及びビスフェノールFのAO付加物である。
【0061】
ポリウレタン樹脂(B2)を構成するポリイソシアネート(b3)としては炭素数8~30の芳香族ジイソシアネート[2,4’-又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート(TDI、トルエンジイソシアネート)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,3-又は1,4-フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等];炭素数4~30の脂肪族ジイソシアネート[エチレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンジイソシアネート等];炭素数6~30の脂環式ジイソシアネート[イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等];及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
ポリウレタン樹脂(B2)を構成するジオール(b2)としては、上記ポリエステル樹脂(B1)を構成するジオール(b2)と同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0062】
第2の樹脂(B)のうち集束性及び毛羽立ち抑制の観点から、好ましいものとしては、ビスフェノールAのEO2モル付加物4モルとテレフタル酸5モルとの反応物にポリエチレングリコールを反応させてなるポリエステル樹脂(疎水性部位のSP値は11.5)、ビスフェノールAのPO3モル付加物4モルとテレフタル酸5モルとの反応物にポリエチレングリコールを反応させてなるポリエステル樹脂(疎水性部位のSP値は11.2)、ビスフェノールAのEO2モル付加物4モルとフマル酸5モルとの反応物にポリエチレングリコールを反応させてなるポリエステル樹脂(疎水性部位のSP値は11.1)、ビスフェノールAのEO2モル付加物4モルとテレフタル酸5モルとの反応物にビスフェノールAのEO40モル付加物を反応させてなるポリエステル樹脂(疎水性部位のSP値は11.5)、ビスフェノールAのEO2モル付加物4モルとテレフタル酸3モル及びフマル酸2モルとの反応物にポリエチレングリコールを反応させてなるポリエステル樹脂(疎水性部位のSP値は10.8)、ビスフェノールAのEO2モル付加物4モルとテレフタル酸1モル及びフマル酸4モルとの反応物にポリエチレングリコールを反応させてなるポリエステル樹脂(疎水性部位のSP値は10.8)、ビスフェノールAのPO3モル付加物2モルとテレフタル酸3モルとの反応物にポリエチレングリコールを反応させてなるポリエステル樹脂(疎水性部位のSP値は11.2)、ビスフェノールAのPO3モル付加物1モルとトルエンジイソシアネート2モルとの反応物にポリエチレングリコールを反応させてなるポリウレタン樹脂(疎水性部位のSP値は11.2)が挙げられる。
【0063】
第2の樹脂(B)のHLB値は好ましくは5以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは8以上であり、好ましくは16以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは13以下である。
HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)とは親水性と親油性とのつり合いを表し、HLB値は下記の式(1)から求められる(「界面活性剤の合成と其応用」、501頁、1957年槇書店刊;「界面活性剤入門」、212-213頁、2007年三洋化成工業刊、等参照)。
HLB値=10×(無機性/有機性) (1)
式(1)中、括弧内は有機化合物の無機性と有機性との比率を表し、該比率は上記文献に記載されている値から計算することができる。第2の樹脂(B)として二種類以上の化合物を用いる場合、第2の樹脂(B)のHLBは加重平均により算出することができる。
【0064】
第2の樹脂(B)の100℃での粘度は、0.5~50Pa・sであることが好ましく、さらに好ましくは1~30Pa・s、特に好ましくは3~20Pa・sである。
粘度が0.5~50Pa・sの範囲であればさらに良い集束性と乳化安定性が得られる。なお、ここでいう第2の樹脂(B)の100℃での粘度は、JIS K7117-1:1999(ISO2555:1990に対応)に準拠して、ブルックフィールド型粘度計(BL型)により測定される。
【0065】
前記の第2の樹脂(B)は、1,000~50,000の数平均分子量(以下、Mnと略記)を有することが好ましい。Mnが1,000以上であると十分な集束性を有し、50,000以下であると水に対する親和性が高く乳化安定性に優れる。
なお、Mnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定される。Mnは1,500~30,000がさらに好ましく、2,000~20,000が特に好ましい。この範囲であれば集束性及び水に対する親和性がさらに優れる。
【0066】
なお、第2の樹脂(B)のMnの測定に使用されるGPCの条件は、例えば以下の条件である。
機種:Alliance(日本ウォーターズ(株)製液体クロマトグラフ)
カラム:Guardcolumn Super H-L
+TSK gel Super H4000
+TSK gel Super H3000
+TSK gel Super H2000
(いずれも東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
検出器:RI(Refractive Index)
溶離液:テトラヒドロフラン
溶離液流量:0.6ml/分
試料濃度:0.25重量%
注入量:10μl
準物質:ポリスチレン(東ソー(株)製;TSK STANDARD POLYSTYRENE)
【0067】
第2の樹脂(B)を製造する方法としては、例えば、ジカルボン酸又はその無水物(b1)とジオール(b2)を所定モル比で仕込み、反応温度100~250℃、圧力-0.1~1.2MPaで撹拌下、水を留去させる方法が挙げられる。
ジカルボン酸又はその無水物(b1)とジオール(b2)の仕込みモル比[ジカルボン酸又はその無水物(b1)のモル数/ジオール(b2)のモル数]は、Mnを上記範囲内とし、集束性向上の観点から、好ましくは0.7~1.5、さらに好ましくは0.8~1.25である。
【0068】
第2の樹脂(B)がポリエステル樹脂の場合、当該ポリエステル樹脂を製造するときには、触媒をポリエステルの重量に基づいて0.05~0.5重量%加えることが好ましい。触媒としては、パラトルエンスルホン酸、ジブチルチンオキサイド、テトライソプロポキシチタネート及びシュウ酸チタン酸カリウム等が挙げられ、反応性及び環境への影響の観点からテトライソプロポキシチタネート及びシュウ酸チタン酸カリウムが好ましく、さらに好ましいのはシュウ酸チタン酸カリウムである。
【0069】
本発明において、第1の樹脂(A)がエポキシ基を1つ以上有し、第2の樹脂(B)がエポキシ基を有さないことが好ましい。中でも、第1の樹脂(A)が(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基をそれぞれ1つ以上有する樹脂であり、第2の樹脂(B)がオキシアルキレン基を1つ以上有しエポキシ基を有さない芳香族ポリエステル樹脂であることがより好ましい。
【0070】
本発明の繊維用集束剤組成物は反応性ノニオン界面活性剤(C)[ノニオン界面活性剤(C)ともいう]を含む。ノニオン界面活性剤(C)は繊維用集束剤に乳化安定性を付与する。ノニオン界面活性剤(C)は、マトリックス樹脂と反応する反応性基を有する。ノニオン界面活性剤(C)の有する反応性基がマトリックス樹脂と反応し、当該樹脂の骨格に組み込まれることにより複合材料の物性を向上しうる。ノニオン界面活性剤(C)としては反応性基としてエチレン性不飽和基を有するノニオン界面活性剤が挙げられる。エチレン性不飽和基としては、炭素数2~5のアルケニル基(ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基及びペンテニル基等)、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤(C)としては、ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェノール、ポリオキシアルキレンアリルオキシメチルアルキルエーテル、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシアルキレン、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルなどが挙げられる。
【0071】
ノニオン界面活性剤(C)としては市販のものを用いてもよい。市販のものとしては、第一工業製薬(株)製のポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル(商品名「アクアロンAN-10」、「アクアロンAN-20」、「アクアロンAN-30」及び「アクアロンAN-5065」)、第一工業製薬(株)製のポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル(商品名「アクアロンKN-10」、「アクアロンKN-20」、「アクアロンKN-30」及び「アクアロンKN-5065」)、(株)ADEKA製のアリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン(商品名「アデカリアソープER-10」、「アデカリアソープER-20」、「アデカリアソープER-30」及び「アデカリアソープER-40」)、花王(株)製のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル(商品名「ラテムルPD-420」、「ラテムルPD-430」及び「ラテムルPD-450」等)等が挙げられる。これらのうち、貯蔵安定性の観点からポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルが好ましい。これらの反応性ノニオン界面活性剤は1種を単独で使用してもよく、2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0072】
本発明の繊維用集束剤組成物は、第1の樹脂(A)、第2の樹脂(B)及び反応性ノニオン界面活性剤(C)以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、第1の樹脂(A)以外のエポキシ樹脂(D)、前記第1の樹脂(A)、前記第2の樹脂(B)及び前記エポキシ樹脂(D)以外の樹脂(E)、反応性ノニオン界面活性剤(C)以外の界面活性剤[(C)以外のノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤等]ならびに添加剤(例えば、平滑剤、防腐剤及び酸化防止剤等)などが挙げられる。これらの他の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
エポキシ樹脂(D)[(D)成分ともいう]としては、特に限定はないが、例えば、(メタ)アクリロイル基を有していないエポキシ樹脂が挙げられる。このようなエポキシ樹脂の具体例としては、国際公開第2020/027126号公報に記載の「芳香環を有し(メタ)アクリロイル基を有しないエポキシ樹脂(A)」等が挙げられる。(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基およびメタアクリロイル基を意味する。
【0074】
(D)成分としては、上記公報に記載のもののうち、2価フェノールのジグリシジルエーテル、特に好ましくはビスフェノール(ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールS及びハロゲン化ビスフェノールA等)のジグリシジルエーテル、最も好ましくはビスフェノールAのジグリシジルエーテル(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)である。
【0075】
樹脂(E)[(E)成分ともいう]としては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられる。このような化合物としては、分子内にオキシアルキレン基を有していない2官能の芳香族(メタ)アクリレート(E11)、分子内にオキシアルキレン基を有していない3官能の非芳香族(メタ)アクリレート(E12)、分子内にオキシアルキレン基を有している2官能(メタ)アクリレート(E21)、分子内にオキシアルキレン基を有している3官能(メタ)アクリレート(E22)等が挙げられる。
【0076】
分子内にオキシアルキレン基を有していない2官能の芳香族(メタ)アクリレート(E11)としては、例えば、2価フェノールのジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのジエステル化物等が挙げられる。このような化合物としては、ビスフェノール(ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールS及びハロゲン化ビスフェノールA等)のジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、カテキンのジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、レゾルシノールのジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、ヒドロキノンのジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、1,5-ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、ジヒドロキシビフェニルのジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、オクタクロロ-4,4’-ジヒドロキシビフェニルのジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、テトラメチルビフェニルのジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート及び9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フロオレンのジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0077】
分子内にオキシアルキレン基を有していない3官能の非芳香族(メタ)アクリレート(E12)としては、例えば、炭素数2~20の3価以上(好ましくは3~8価)の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのトリエステル化物が挙げられる。このような化合物としては、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びソルビトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0078】
分子内にオキシアルキレン基を有している2官能(メタ)アクリレート(E21)としては、2価以上(好ましくは2~8価)の多価アルコールのAO付加物と(メタ)アクリル酸とのジエステル化物[ポリオキシプロピレングリコールのジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールのAO付加物のジ(メタ)アクリレート、1,2-又は1,3-プロパンジオールのAO付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのAO付加物のジ(メタ)アクリレート及びグリセリンのAO付加物のジ(メタ)アクリレート等]、2価アルコール又は2価フェノールのAO付加物と(メタ)アクリル酸のジエステル化物[ビスフェノールAのAO付加物のジ(メタ)アクリレート等]、2価アルコール又は2価フェノールのAO付加物のジグリシジルエーテルとアクリル酸の反応物であるエポキシアクリレート[エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A(いずれも共栄社化学社製)等]が挙げられる。これらの化合物では、多価アルコールの水酸基のすべてが(メタ)アクリル酸及び/又はAOなどと反応している必要はなく、未反応の水酸基が残っていてもよい。AOとしては、炭素数2~4のものが含まれ、具体的には、EO、PO、1,2-BO及び1,4-BO等が挙げられる。AOの付加モル数は、集束性及び繊維とマトリックス樹脂との接着性の向上の観点から、2~100が好ましく、さらに好ましくは3~50である。
【0079】
分子内にオキシアルキレン基を有している3官能(メタ)アクリレート(E22)としては、3価以上(好ましくは3~8価)の多価アルコールのAO付加物と(メタ)アクリル酸とのトリエステル化物等が挙げられる。このような化合物としては、グリセリンPO付加物トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのEO付加物のトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物に含まれるAOとしては、炭素数2~4のものが含まれ、具体的には、EO、PO、1,2-BO及び1,4-BO等が挙げられる。AOの付加モル数は、集束性及び繊維とマトリックス樹脂との接着性の向上の観点から、2~100が好ましく、さらに好ましくは3~50である。
【0080】
これらのうち、分子内にオキシアルキレン基を有していない2官能の芳香族(メタ)アクリレート(E11)が好ましく、2価フェノールのジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのジエステル化物がより好ましく、ビスフェノール型のジオールのジグリシジルエーテルの両末端に(メタ)アクリル酸が付加した化合物がさらに好ましい。
【0081】
反応性ノニオン界面活性剤(C)以外の界面活性剤としては、例えば、アルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩、アリールアルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩、プルロニック型界面活性剤のウレタンジョイント化物、アリールアルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物とポリエチレングリコールのウレタンジョイント化物及びこれらの混合物等が挙げられる。これらは1種を単独で2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
平滑剤としては、ワックス(ポリエチレン、ポリプロピレン、酸化ポリエチレン、酸化ポリプロピレン、変性ポリエチレン及び変性ポリプロピレン等)、高級脂肪酸(脂肪酸の炭素数6~30)アルキル(アルキルの炭素数1~24)エステル(メチルステアレート、エチルステアレート、プロプルステアレート、ブチルステアレート、オクチルステアレート及びステアリルステアレート等)、高級脂肪酸(脂肪酸の炭素数6~30)(ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸等)、天然油脂(ヤシ油、牛脂、オリーブ油及びナタネ油等)及び流動パラフィン等が挙げられる。
防腐剤としては、安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、第4級アンモニウム塩及びイミダゾール等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール等)、チオジプロピオネート(ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート等)及びホスファイト(トリフェニルホスファイト等)等が挙げられる。
【0083】
本発明の繊維用集束剤組成物に含まれる、各成分の含有量は、それぞれ下記の通りである。
第1の樹脂(A)の重量割合は、繊維とマトリックス樹脂との接着性の向上の観点から、繊維用集束剤組成物が含有する固形分の重量に基づき、好ましくは10~90重量%、さらに好ましくは20~80重量%、特に好ましくは25~75重量%である。ここで、固形分とは試料1gを130℃で45分間循風乾燥機で加熱乾燥した後の残渣である。
【0084】
第2の樹脂(B)の重量割合は、集束性の観点から、繊維用集束剤組成物が含有する固形分の重量に基づき、好ましくは10~90重量%、さらに好ましくは20~80重量%、特に好ましくは25~75重量%である。
【0085】
第1の樹脂(A)と第2の樹脂(B)との重量比(第1の樹脂(A)の重量/第2の樹脂(B)の重量)は、経時変化を小さくできかつ、繊維とマトリックス樹脂との接着性の向上の観点から、好ましくは20/80以上、より好ましくは30/70以上であり、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下である。
【0086】
反応性ノニオン界面活性剤(C)の重量割合は、乳化安定性の観点から、繊維用集束剤組成物が含有する固形分の重量に基づき、好ましくは0.1~35重量%、さらに好ましくは0.5~30重量%、特に好ましくは1~25重量%である。
【0087】
本発明において、第1の樹脂(A)及び第2の樹脂(B)の合計重量と、反応性ノニオン界面活性剤(C)の重量との比[第1の樹脂(A)及び第2の樹脂(B)の合計重量/ノニオン界面活性剤(C)の重量)は、乳化安定性の観点から、好ましくは99/1~70/30であり、より好ましくは95/5~80/20である。
【0088】
(D)成分を含む場合、(D)成分の重量割合は、集束性の観点から、繊維用集束剤組成物が含有する固形分の重量に基づき、好ましくは5~40重量%、さらに好ましくは10~35重量%、特に好ましくは25~30重量%である。
【0089】
(E)成分の重量割合は、集束性の観点から、繊維用集束剤組成物が含有する固形分の重量に基づき、好ましくは0~40重量%、さらに好ましくは0~35重量である。
【0090】
その他の添加剤としての平滑剤、防腐剤及び酸化防止剤の重量割合は、流動性及び経時安定性の観点から、繊維用集束剤組成物が含有する固形分の重量に基づき、それぞれ、好ましくは0.01~20重量%、さらに好ましくは0.05~15重量%、特に好ましくは0.1~10重量%である。
【0091】
本発明の繊維用集束剤組成物は、水性溶液状又は水性エマルジョン状となるように水性媒体を含有することが好ましい。
水性媒体を含有すると、繊維用集束剤組成物が含有する固形分の繊維への付着量を適量にすることが容易であるため、複合材料の成形体の強度がさらに優れる繊維束を得ることができる。
水性媒体としては、公知の水性媒体等を用いることができ、具体的には、水及び親水性有機溶媒[炭素数1~4の1価のアルコール(メタノール、エタノール及びイソプロパノール等)、炭素数3~6のケトン(アセトン、エチルメチルケトン及びメチルイソブチルケトン等)、炭素数2~6のグリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール等)及びそのモノアルキル(炭素数1~2)エーテル、ジメチルホルムアミド並びに炭素数3~5の酢酸アルキルエステル(酢酸メチル及び酢酸エチル等)等]が挙げられる。
これらは2種以上を併用してもよい。これらのうち、安全性等の観点から、水並びに親水性有機溶媒及び水の混合溶媒が好ましく、さらに好ましいのは水である。
【0092】
本発明の繊維用集束剤組成物は、コスト等の観点から、流通時は高濃度であって、繊維束の製造時は低濃度であることが好ましい。すなわち、高濃度で流通することで輸送コスト及び保管コスト等を低下させ、低濃度で繊維を処理することで、複合材料の成形体の強度を高くすることができる繊維束を製造できる。
高濃度の水溶液又はエマルジョンの濃度(繊維用集束剤組成物に対する固形分の重量割合)は、保存安定性等の観点から、好ましくは20~80重量%、さらに好ましくは30~70重量%である。
一方、低濃度の水溶液又はエマルジョンの濃度(繊維用集束剤組成物に対する固形分の重量割合)は、繊維束の製造時に集束剤の付着量を適量にする観点等から、好ましくは0.5~20重量%、さらに好ましくは1~10重量%である。
【0093】
本発明の繊維用集束剤組成物は、第1の樹脂(A)、第2の樹脂(B)及び反応性ノニオン界面活性剤(C)、ならびに必要に応じて添加される成分(エポキシ樹脂(D)、水性媒体及びその他の添加剤)を混合することにより製造することができる。これらの成分の混合順は限定されない。繊維用集束剤組成物が水性溶媒を含む場合、水性媒体以外の成分を予め混合し、得られた混合物中に、水性媒体を投入して溶解又は乳化分散させる方法が好ましい。
【0094】
水性媒体以外の成分を予め混合する場合の温度は、混合し易さの観点から、好ましくは20~90℃、さらに好ましくは40~90℃であり、その後の溶解若しくは乳化分散の温度も同様である。前記溶解若しくは乳化分散する時間は、好ましくは1~20時間、さらに好ましくは2~10時間である。
【0095】
混合装置、溶解装置及び乳化分散装置に制限はなく、撹拌羽根(羽根形状:カイ型及び三段パドル等)、ナウターミキサー、リボンミキサー、コニカルブレンダー、モルタルミキサー、万能混合機(万能混合攪拌機5DM-L、(株)三英製作所製等)及びヘンシェルミキサー等が使用できる。
【0096】
本発明の繊維用集束剤組成物を適用できる繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維及びスラッグ繊維等の公知の繊維(国際公開第2003/47830号に記載のもの等)等が挙げられ、複合材料の成形体の強度を向上させる観点から、好ましくは炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維及びスラッグ繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維であり、さらに好ましくは炭素繊維である。これらの繊維は2種以上を併用してもよい。
【0097】
[繊維束]
本発明の繊維束は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維及びスラッグ繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維を、本発明の繊維用集束剤組成物で処理して得られる繊維束である。繊維束は繊維3,000~5万本程度を束ねたものであることが好ましい。
【0098】
すなわち、本発明の繊維束は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維及びスラッグ繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維と、ビニル基及びビニレン基からなる群より選ばれる第1官能基、ならびに、エポキシ基、アミノ基及びオキサゾリン-2-イル基からなる群より選ばれる第2官能基を、それぞれ1つ以上有する第1の樹脂(A)及び/又は第1の樹脂(A)の反応物と、第1の樹脂以外の樹脂であって、SP値が10.6~11.6(cal/cm1/2の疎水性部位を有し、酸価が0~20mgKOH/gの第2の樹脂(B)及び/又は第2の樹脂(B)の反応物と、反応性ノニオン界面活性剤(C)と、を含む。第1の樹脂(A)の反応物は、第1の樹脂(A)同士が反応したもの及び/又は第1の樹脂(A)と繊維とが反応したものを含む。第2の樹脂(B)の反応物は、第2の樹脂(B)と第1の樹脂(A)とが反応したもの及び/又は第2の樹脂(B)と繊維とが反応したものを含む。
第1の樹脂(A)と繊維とが反応したものの具体例としては、第1の樹脂(A)と炭素繊維(炭素繊維中のカルボキシル基、ヒドロキシル基等)とが反応したもの等が挙げられる。
第2の樹脂(B)と繊維とが反応したものの具体例としては、第2の樹脂(B)と炭素繊維(炭素繊維中のカルボキシル基等)とが反応したもの等が挙げられる。ここで、第2の樹脂(B)と第1の樹脂(A)とが反応したものは、第1の樹脂(A)が反応したものではあるが、本明細書では、第2の樹脂(B)の反応物とする。
【0099】
繊維の処理方法としては、スプレー法又は浸漬法等が挙げられる。繊維用集束剤組成物が含有する固形分の繊維への付着量(重量%)は、繊維の重量に基づいて、0.05~5重量%が好ましく、さらに好ましくは0.2~2.5重量%である。この範囲であると、複合材料の成形体の強度をさらに向上させることができる。
【0100】
繊維束が含む第1の樹脂(A)及び第1の樹脂(A)の反応物と第2の樹脂(B)及び第2の樹脂(B)の反応物との重量比(第1の樹脂(A)及び第1の樹脂(A)の反応物/第2の樹脂(B)及び第2の樹脂(B)の反応物)は、集束性及び繊維とマトリックス樹脂との接着性の向上の観点から10/90~90/10が好ましく、さらに好ましくは20/80~80/20である。
【0101】
繊維束が含む第1の樹脂(A)及び第1の樹脂(A)の反応物の重量割合は、繊維とマトリックス樹脂との接着性の向上の観点から、繊維の重量に基づいて、好ましくは0.0005~4.5重量%、さらに好ましくは0.002~4重量%、次にさらに好ましくは0.0025~3.75重量%、次にさらに好ましくは0.005~3重量%、次にさらに好ましくは0.01~2.5重量%、特に好ましくは0.02~2重量%である。
【0102】
繊維束が含む第2の樹脂(B)及び第2の樹脂(B)の反応物の重量割合は、繊維とマトリックス樹脂との接着性の向上の観点から、繊維の重量に基づいて、好ましくは0.0005~4.5重量%、さらに好ましくは0.002~4重量%、次にさらに好ましくは0.0025~3.75重量%、次にさらに好ましくは0.005~2.25重量%、次にさらに好ましくは0.01~2重量%、特に好ましくは0.02~1.875重量%である。
【0103】
繊維束が含むノニオン界面活性剤(C)の重量割合は、繊維とマトリックス樹脂との接着性の向上の観点から、繊維の重量に基づいて、好ましくは0.00005~2重量%、さらに好ましくは0.0002~1.75重量%、次にさらに好ましくは0.00025~1.5重量%、次にさらに好ましくは0.0005~1重量%、次にさらに好ましくは0.001~0.875重量%、特に好ましくは0.002~0.75重量%である。
【0104】
[繊維製品]
本発明の繊維製品は、前記繊維束を含むものであり、前記繊維束を加工して繊維製品としたものが含まれ、織物、編み物、不織布(フェルト、マット及びペーパー等)、チョップドファイバー及びミルドファイバー等が含まれる。
【0105】
[複合材料]
本発明の複合材料は、上記本発明の繊維束及び/又は繊維製品とマトリックス樹脂とを含むものである。マトリックス樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が含まれる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、アクリロニトリル-スチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂である場合、複合材料には触媒を含有してもよい。触媒としては、公知のものを制限なく使用でき、例えば熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合は、特開2005-213337号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0106】
マトリックス樹脂と繊維束及び繊維製品との重量比(マトリックス樹脂の重量/繊維束及び繊維製品の合計重量)は、成形される複合材料の強度の観点から、10/90~90/10が好ましく、さらに好ましくは20/80~70/30であり、特に好ましくは30/70~60/40である。
複合材料が触媒を含有する場合、触媒の含有量は、マトリックス樹脂に対して0.01~10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1~5重量%、特に好ましくは1~3で
ある。
【0107】
本発明の複合材料は、マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂である場合、本発明の繊維製品(織物、編み物、不織布等)に、熱溶融(溶融温度:60~150℃)したマトリックス樹脂、又は、溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン及び酢酸エチル等)で希釈したマトリックス樹脂を含浸させて成形する方法、本発明の繊維束又はこれを切断したチョップドファイバーを、溶融した熱可塑性マトリックス樹脂に投入し、混練して、射出成形する方法等により得ることができる。
また、マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂である場合、加熱成形し、常温で固化することで成形することができる。複合材料は、完全に硬化している必要はないが、成形された複合材料が形状を維持できる程度に硬化していることが好ましい。成形後、さらに加熱して完全に硬化させてもよい。
【0108】
本発明の繊維束及び/又は繊維製品を含む複合材料によれば、繊維とマトリックス樹脂との接着性を向上させることができる。このような効果を発現できるメカニズムは以下のように推測される。
本発明の繊維束および繊維製品(以下「繊維束等」ともいう)には、本発明の繊維用集束剤組成物で処理した繊維が含まれる。本発明の繊維束等とマトリックス樹脂とを用いて複合材料を作製すると、第1の樹脂(A)の有する第1の官能基及び第2の官能基が繊維及びマトリックス樹脂に結合し、第2の樹脂(B)がマトリックス樹脂に対し相溶し、反応性ノニオン界面活性剤(C)とマトリックス樹脂とが反応することで、繊維がマトリックス樹脂に取り込まれる。その結果、繊維とマトリックス樹脂との接着性を向上させることができると推測される。
【実施例
【0109】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0110】
<製造例1:第1の樹脂(A-1)の製造>
温度計、撹拌機及び空気導入管を備えた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[商品名「JER1001」、三菱ケミカル(株)製、エポキシ当量:475(g/eq)]475部(0.5モル)を仕込み、空気雰囲気下で攪拌下100℃まで加熱した。次いでベンジルジメチルアミン0.2部とアクリル酸36部(0.5モル)を1時間掛けて滴下し、空気雰囲気下100℃で撹拌しながら酸価が1以下となるまで反応させ、第1の樹脂(A-1)を得た。第1の樹脂(A-1)(ビスフェノールA型エポキシ樹脂の片末端アクリレート)のエポキシ当量は1020g/eqであった。
【0111】
<製造例2:第1の樹脂(A-2)の製造>
製造例1において、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[商品名「JER1001」、三菱ケミカル(株)製、エポキシ当量:475(g/eq)]475部を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[商品名「JER1004」、三菱ケミカル(株)製、エポキシ当量:900(g/eq)]900部(0.5モル)に変更した以外は製造例1と同様にして、第1の樹脂(A-2)を得た。第1の樹脂(A-2)(ビスフェノールA型エポキシ樹脂の片末端アクリレート)のエポキシ当量は1870g/eqであった。
【0112】
<製造例3:第1の樹脂(A-3)の製造>
製造例1において、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[商品名「JER1001」、三菱ケミカル(株)製、エポキシ当量:475(g/eq)]475部を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[商品名「JER834」、三菱ケミカル(株)製、エポキシ当量:240(g/eq)]240部(0.5モル)に変更した以外は製造例1と同様にして第1の樹脂(A-3)を得た。第1の樹脂(A-3)(ビスフェノールA型エポキシ樹脂の片末端アクリレート)のエポキシ当量は550g/eqであった。
【0113】
<製造例4:第1の樹脂(A-4)の製造>
製造例1において、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[商品名「JER1001」、三菱ケミカル(株)製、エポキシ当量:475(g/eq)]475部を、ビスフェノールF型エポキシ樹脂[商品名「JER4005P」、三菱ケミカル(株)製、エポキシ当量:950(g/eq)]950部(0.5モル)に変更した以外は製造例1と同様にして第1の樹脂(A-4)を得た。第1の樹脂(A-4)(ビスフェノールF型エポキシ樹脂の片末端アクリレート)のエポキシ当量は1970g/eqであった。
【0114】
<製造例5:第1の樹脂(A-5)の製造>
製造例1において、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[商品名「JER1001」、三菱ケミカル(株)製、エポキシ当量:475(g/eq)]475部を、フェノールノボラック型エポキシ樹脂[商品名「JER154」、三菱ケミカル(株)製、エポキシ当量:180(g/eq)]180部(0.2モル)に変更した以外は製造例1と同様にして第1の樹脂(A-5)を得た。第1の樹脂(A-5)[フェノールノボラック型エポキシ樹脂のジアクリレート(5.7核のうちの2核がアクリレート)]のエポキシ当量は430g/eqであった。
【0115】
<製造例6:第1の樹脂(A-6)の製造>
撹拌装置、温度制御措置、湿式粉砕機(反応槽の外側に付属)を設置した反応槽に、ビスフェノールAのPO5モル付加物[商品名「ニューポールBP-5」、三洋化成工業(株)製、水酸基価211]266部(0.5モル)、エピクロルヒドリン100部、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド0.01部を仕込み、反応槽内を窒素雰囲気とし、20℃の窒素雰囲気下にある粒状水酸化カリウム118部を19~31℃で10時間かけて断続滴下し、26~29℃で4時間反応させ、グリシジルエーテル化した。湿式粉砕機は水酸化カリウムの滴下開始から反応終了まで連続運転した。
内容物を21℃に冷却後、24℃の水400部を投入した。このとき内容物の温度は22~27℃となるようにコントロールした。次に、分液静置し、下層(水層)を取り出し、残った上層(有機層)に「キョーワード600」(協和化学工業社製;アルカリ吸着剤)2.5部を投入し、減圧下120℃まで昇温しエピクロルヒドリンを留去後、濾過処理し、エポキシ当量が323g/eqのビスフェノールAプロピレンオキサイド5モル付加物のジグリシジル化物358部を得た。
得られたビスフェノールAのPO5モル付加物のジグリシジル化物323部を、温度計、撹拌機及び空気導入管を備えた反応容器に仕込み、空気雰囲気下で攪拌しながら、100℃まで加熱した。次いでベンジルジメチルアミン0.2部とアクリル酸36部を1時間かけて滴下し、空気雰囲気下、100℃の温度条件で、撹拌しながら酸価が1以下となるまで反応させ、第1の樹脂(A-6)を得た。第1の樹脂(A-6)(グリシジル化ビスフェノールAのPO付加物のモノアクリレート)のエポキシ当量は646g/eqであった。
【0116】
<製造例7:中間体(M7)の製造>
ビスフェノールAのEO2モル付加物「ニューポールBPE-20」[三洋化成工業(株)製]1264部(4モル部)、テレフタル酸830部(5モル部)及びテトライソプロポキシチタネート2部を、ガラス反応容器中、170℃で0.001MPaまで減圧し水を留去しながら15時間反応させた。ここにさらにビスフェノールAのPO5モル付加物[商品名「ニューポールBP-5」、三洋化成工業(株)製、水酸基価211]515部(0.97モル部)を加えて180℃で-0.1MPaまで減圧し水を除去しながら10時間反応させ、中間体(A7)を得た。中間体(M7)の数平均分子量は1460であった。
【0117】
<製造例8:第1の樹脂(A-7)の製造>
製造例6において、ビスフェノールAのPO5モル付加物[商品名「ニューポールBP-5」、三洋化成工業(株)製、水酸基価211]266部を、製造例7で得られた中間体(M7)730部に変更した以外は製造例6と同様にして第1の樹脂(A-7)を得た。第1の樹脂(A-7)(エポキシ基を有する芳香族ポリエステルのアクリレート)のエポキシ当量は1530g/eqであった。
【0118】
<製造例9:第1の樹脂(A-8)の製造>
製造例1において、アクリル酸36部をメタクリル酸43部に変更した以外は製造例1と同様にして第1の樹脂(A-8)を得た。第1の樹脂(A-8)(ビスフェノールA型エポキシ樹脂のモノメタクリレート)のエポキシ当量は1040g/eqであった。
【0119】
<製造例10:第1の樹脂(A-9)の製造>
製造例1において、アクリル酸36部を、フマル酸29部に変更した以外は製造例1と同様にして、第1の樹脂(A-9)(ビスフェノールA型エポキシ樹脂のフマレート)を得た。第1の樹脂(A-9)のエポキシ当量は533g/eq、ビニレン当量は1066g/eqであった。なお、ビニレン当量はH-NMRおよびGPC分析から得られる。
【0120】
<製造例11:第1の樹脂(A-10)の製造>
アジピン酸1022部(7モル部)、エチレンジアミン480部(8モル部)及びテトライソプロポキシチタネート2部を、ガラス反応容器中、170℃で0.001MPaまで減圧し水を留去しながら15時間反応させた後、110℃まで冷却した。次いでベンジルジメチルアミン0.2部とメタクリル酸43部(0.5モル)を1時間掛けて滴下し、空気雰囲気下110℃で撹拌しながら酸価が1以下となるまで反応させ、第1の樹脂(A-10)(両末端アミノ基含有ポリアミドとメタクリル酸とのアミド)を得た。第1の樹脂(A-10)のアミン価は92.4mgKOH/gであった。なお、アミン価はJIS K7237に規定の方法に準じて測定した測定値である(以下において同様)。
【0121】
<製造例12:第1の樹脂(A-11)の製造>
温度計、撹拌機及び空気導入管を備えた反応容器に、オキサゾリン-2-イル基含有反応性ポリスチレン[商品名「PX3-RP-37」、(株)日本触媒製、オキサゾリン当量:740(g/eq)]2220部を仕込み、110℃まで加熱し徐々に攪拌をし均一溶解した。次いでメタクリル酸86部を1時間掛けて滴下し、空気雰囲気下110℃で撹拌しながら酸価が1以下となるまで反応させ、第1の樹脂(A-11)(ビニル基とオキサゾリン-2-イル基とを有する樹脂)を得た。第1の樹脂(A-11)のオキサゾリン-2-イル基の含量は0.87mmol/gであった。なお、オキサゾリン-2-イル基の含量はカタログ記載の数値からメタクリル酸の官能基分を差し引いた計算値である。
【0122】
<製造例13:第2の樹脂(B-1)の製造>
ビスフェノールAのEO2モル付加物「ニューポールBPE-20」[三洋化成工業(株)製]1264部(4モル部)、テレフタル酸830部(5モル部)及びテトライソプロポキシチタネート2部を、ガラス反応容器中、170℃で0.001MPaまで減圧し水を留去しながら15時間反応させた。ここにさらにポリエチレングリコール(b2-1)[商品名「PEG-2000」、三洋化成工業(株)製、水酸基価56]1928部(0.97モル部)を加えて180℃で-0.1MPaまで減圧し水を除去しながら10時間反応させ、第2の樹脂(B-1)(ポリエステル樹脂)3800部を得た。第2の樹脂(B-1)の数平均分子量は4000、疎水性部位のSP値は11.5、酸価は14、HLB値は10.2であった。第2の樹脂(B-1)の疎水性部位はビスフェノールAのEO2モル付加物とテレフタル酸との反応物である。
【0123】
<製造例14:第2の樹脂(B-2)の製造>
製造例13において、ビスフェノールAのEO2モル付加物「ニューポールBPE-20」1264部(4モル部)を、ビスフェノールAのPO3モル付加物「ニューポールBP-3P」[三洋化成工業(株)製]1608部(4モル部)に変更した以外は製造例13と同様にして第2の樹脂(B-2)(ポリエステル樹脂)を得た。第2の樹脂(B-2)の数平均分子量は4300、疎水性部位のSP値は11.2、酸価は13、HLB値は9.9であった。第2の樹脂(B-2)の疎水性部位はビスフェノールAのPO3モル付加物とテレフタル酸との反応物である。
【0124】
<製造例15:第2の樹脂(B-3)の製造>
製造例13において、テレフタル酸830部(5モル部)をフマル酸580部(5モル部)に変更した以外は製造例13と同様にして第2の樹脂(B-3)(ポリエステル樹脂)を得た。第2の樹脂(B-3)の数平均分子量は3800、疎水性部位のSP値は11.1、酸価は15、HLB値は10.9であった。第2の樹脂(B-3)の疎水性部位はビスフェノールAのEO2モル付加物とフマル酸との反応物である。
【0125】
<製造例16:ビスフェノールAのEO40モル付加物(b2-2)の製造>
撹拌機、加熱冷却装置及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、ビスフェノールAのEO4モル付加物「ニューポールBPE-40」[三洋化成工業(株)製]404部(1モル部)、及び水酸化カリウム2部を投入し、窒素置換後、圧力を-0.08MPaとした。130℃に昇温し、EO1584部(36モル部)を圧力が0.5MPaG以下になるように調整しながら6時間かけて滴下した後、130℃で3時間熟成した。次いで100℃に冷却後、吸着処理剤「キョーワード600」[協和化学工業(株)製]30部を投入し、100℃で1時間撹拌して処理した後、吸着処理剤をろ過してビスフェノールAのEO40モル付加物(b2-2)を得た。当該化合物を製造例17に供した。
【0126】
<製造例17:第2の樹脂(B-4)の製造>
製造例13において、ポリエチレングリコール(b2-1)[商品名「PEG-2000」、三洋化成工業(株)製、水酸基価56]1928部(0.97モル部)を、製造例16で作成したビスフェノールAのEO40モル付加物(b2-2)1928部(0.97モル部)に変更した以外は製造例13と同様にして第2の樹脂(B-4)(ポリエステル樹脂)を得た。第2の樹脂(B-4)の数平均分子量は4000、疎水性部位のSP値は11.5、酸価は14、HLB値は9.9であった。第2の樹脂(B-4)の疎水性部位はビスフェノールAのEO2モル付加物とテレフタル酸との反応物である。
【0127】
<製造例18:第2の樹脂(B-5)の製造>
製造例13において、テレフタル酸830部(5モル部)をテレフタル酸498部(3モル)及びフマル酸232部(2モル部)に変更したこと、ならびに、ポリエチレングリコール(b2-1)1928部(0.97モル部)をポリエチレングリコール(b2-1)666部(0.33部)及びポリエチレングリコール(b2-3)[商品名「PEG-1000」、三洋化成工業(株)製、水酸基価112]1333部(1.33モル部)に変更したこと以外は製造例13と同様にして第2の樹脂(B-5)(ポリエステル樹脂)を得た。第2の樹脂(B-5)の数平均分子量は4300、疎水性部位のSP値は10.8、酸価は5、HLB値は10であった。第2の樹脂(B-5)の疎水性部位はビスフェノールAのEO2モル付加物とテレフタル酸及びフマル酸との反応物である。
【0128】
<製造例19:第2の樹脂(B-6)の製造>
製造例13において、テレフタル酸830部(5モル部)をテレフタル酸166部(1モル)及びフマル酸464部(4モル部)に変更したこと、ならびに、ポリエチレングリコール(b2-1)1928部(0.97モル部)をポリエチレングリコール(b2-1)666部(0.33部)及びポリエチレングリコール(b2-3)1333部(1.33モル部)に変更したこと以外は製造例13と同様にして第2の樹脂(B-6)(ポリエステル樹脂)を得た。第2の樹脂(B-6)の数平均分子量は4200、疎水性部位のSP値は10.8、酸価は5、HLB値は10であった。第2の樹脂(B-6)の疎水性部位はビスフェノールAのEO2モル付加物とテレフタル酸及びフマル酸との反応物である。
【0129】
<製造例20:第2の樹脂(B-7)の製造>
製造例14において、ポリエチレングリコール(b2-1)1928部(0.97モル部)をポリエチレングリコール(b2-3)1000部(1.00モル部)に変更したこと以外は製造例14と同様にして第2の樹脂(B-7)(ポリエステル樹脂)を得た。第2の樹脂(B-7)の数平均分子量は3100、疎水性部位のSP値は11.2、酸価は19、HLB値は6であった。第2の樹脂(B-7)の疎水性部位はビスフェノールAのPO3モル付加物とテレフタル酸との反応物である。
【0130】
<製造例21:第2の樹脂(B-8)の製造>
製造例14において、ポリエチレングリコール(b2-1)1928部(0.97モル部)をポリエチレングリコール(b2-3)1500部(1.50モル部)に変更したこと以外は製造例11と同様にして第2の樹脂(B-8)(ポリエステル樹脂)を得た。第2の樹脂(B-8)の数平均分子量は3600、疎水性部位のSP値は11.2、酸価は15、HLB値は8であった。第2の樹脂(B-8)の疎水性部位はビスフェノールAのPO3モル付加物とテレフタル酸との反応物である。
【0131】
<製造例22:第2の樹脂(B-9)の製造>
製造例14において、ポリエチレングリコール(b2-1)1928部(0.97モル部)をポリエチレングリコール(b2-1)1940部(0.97モル部)及びポリエチレングリコール(b2-3)1000部(1.00モル部)に変更したこと以外は製造例14と同様にして第2の樹脂(B-9)(ポリエステル樹脂)を得た。第2の樹脂(B-9)の数平均分子量は5100、疎水性部位のSP値は11.2、酸価は2、HLB値は13であった。第2の樹脂(B-9)の疎水性部位はビスフェノールAのPO3モル付加物とテレフタル酸との反応物である。
【0132】
<製造例23:第2の樹脂(B-10)の製造>
トルエンジイソシアネート348部(2モル部)をガラス反応容器中に仕込み、窒素置換後、撹拌しながら80℃に温調しビスフェノールAのPO3モル付加物「ニューポールBP3P」[三洋化成工業(株)製]402部(1モル部)を5時間かけて滴下し反応させた後30℃まで冷却した。次いでポリエチレングリコール(b2-1)900部(0.45モル部)及びポリエチレングリコール(b2-3)1550部(1.55モル部)を投入し窒素置換後、攪拌しながら80℃まで昇温し5時間反応させ第2の樹脂(B-10)(ポリウレタン樹脂)を得た。第2の樹脂(B-10)の数平均分子量は3300、疎水性部位のSP値は11.2、酸価は0、HLB値は15であった。第2の樹脂(B-10)の疎水性部位はビスフェノールAのPO3モル付加物とトルエンジイソシアネートとの反応物である。
【0133】
<製造例24:第2の樹脂(B-11)の製造>
製造例14において、ポリエチレングリコール(b2-1)1928部(0.97モル部)をポリエチレングリコール(b2-3)300部(0.3モル部)及びポリエチレングリコール(b2-4)[商品名「PEG-600」、三洋化成工業(株)製、水酸基価187]420部(0.7モル部)に変更したこと以外は製造例14と同様にして第2の樹脂(B-11)(ポリエステル樹脂)を得た。第2の樹脂(B-11)の数平均分子量は2900、疎水性部位のSP値は11.2、酸価は12、HLB値は5であった。第2の樹脂(B-11)の疎水性部位はビスフェノールAのPO3モル付加物とテレフタル酸との反応物である。
【0134】
<製造例25:第2の樹脂(B-12)の製造>
製造例14において、ビスフェノールAのPO3モル付加物「ニューポールBP-3P」[三洋化成工業(株)製]1608部(4モル部)を804部(2モル部)に変更したこと、テレフタル酸830部(5モル部)をテレフタル酸498部(3モル)に変更したこと、ならびにポリエチレングリコール(b2-1)1928部(0.97モル部)をポリエチレングリコール(b2-5)[商品名「PEG-4000」、三洋化成工業(株)製、水酸基価28]4000部(1モル部)に変更したこと以外は製造例14と同様にして第2の樹脂(B-12)(ポリエステル樹脂)を得た。第2の樹脂(B-12)の数平均分子量は5200、疎水性部位のSP値は11.2、酸価は8、HLB値は16であった。第2の樹脂(B-12)の疎水性部位はビスフェノールAのPO3モル付加物とテレフタル酸との反応物である。
【0135】
<比較製造例1:芳香族ポリエステル樹脂(B’-1)の製造>
製造例25において、ポリエチレングリコール(b2-5)4000部(1モル部)をポリエチレングリコール(b2-4)600部(1モル部)に変更したこと以外は製造例25と同様にして芳香族ポリエステル樹脂(B’-1)を得た。芳香族ポリエステル樹脂(B’-1)の数平均分子量は1900、疎水性部位のSP値は11.0、酸価は30、HLB値は10であった。芳香族ポリエステル樹脂(B’-1)の疎水性部位はビスフェノールAのPO3モル付加物とテレフタル酸との反応物である。
であった。
【0136】
<比較製造例2:芳香族ポリエステル樹脂(B’-2)の製造>
製造例25において、ポリエチレングリコール(b2-5)4000部(1モル部)をポリエチレングリコール(b2-4)300部(0.5モル部)に変更したこと以外は製造例25と同様にして芳香族ポリエステル樹脂(B’-2)を得た。芳香族ポリエステル樹脂(B’-2)の数平均分子量は1600、疎水性部位のSP値は11.2、酸価は55、HLB値は10であった。芳香族ポリエステル樹脂(B’-2)の疎水性部位はビスフェノールAのPO3モル付加物とテレフタル酸との反応物である。
【0137】
<実施例1~27及び比較例1~8:繊維用集束剤組成物の作製>
水以外の表2~4に記載の部数の原料を、万能混合機[万能混合攪拌機、(株)三英製作所製]中で60℃に温調しながら30分均一溶解させた後、そこに水を6時間かけて滴下し、固形分濃度が40重量%の実施例に係る繊維用集束剤組成物(X-1)~(X-27)及び比較例に係る繊維用集束剤組成物(X’-1)~(X’-8)をそれぞれ250部得た。
【0138】
表2~4に記載した記号の原料は以下の通りである。
第1の樹脂(A)
(A-1):製造例1で製造した第1の樹脂
(A-2):製造例2で製造した第1の樹脂
(A-3):製造例3で製造した第1の樹脂
(A-4):製造例4で製造した第1の樹脂
(A-5):製造例5で製造した第1の樹脂
(A-6):製造例6で製造した第1の樹脂
(A-7):製造例8で製造した第1の樹脂
(A-8):製造例9で製造した第1の樹脂
(A-9):製造例10で製造した第1の樹脂
(A-10):製造例11で製造した第1の樹脂
(A-11):製造例12で製造した第1の樹脂
第2の樹脂(B)
(B-1):製造例13で製造した第2の樹脂
(B-2):製造例14で製造した第2の樹脂
(B-3):製造例15で製造した第2の樹脂
(B-4):製造例17で製造した第2の樹脂
(B-5):製造例18で製造した第2の樹脂
(B-6):製造例19で製造した第2の樹脂
(B-7):製造例20で製造した第2の樹脂
(B-8):製造例21で製造した第2の樹脂
(B-9):製造例22で製造した第2の樹脂
(B-10):製造例23で製造した第2の樹脂
(B-11):製造例24で製造した第2の樹脂
(B-12):製造例25で製造した第2の樹脂
比較の樹脂(B’)[表中「樹脂(B’)」と記載]
(B’-1):比較製造例1で製造した芳香族ポリエステル樹脂
(B’-2):比較製造例2で製造した芳香族ポリエステル樹脂
反応性ノニオン界面活性剤(C)[表中「(C)成分」と記載]
(C-1):スチレン化プロペニルフェノールのEO及びPO付加物(商品名「アクアロンAN-20」、第一工業製薬(株)製、HLB13.8)
(C-2):スチレン化プロペニルフェノールのEO及びPO付加物(商品名「アクアロンAN-10」、第一工業製薬(株)製、HLB10.5)
反応性ノニオン界面活性剤(C)以外の界面活性剤(C’)[表中「(C’)」と記載]
(C’-1):スチレン化フェノールのEO及びPO付加物(商品名「Soprophor796P」、ソルベイ日華(株)製、HLB13.7)
(C’-2):スチレン化フェノールのEO及びPO付加物(商品名「Soprophor TSP/724」、ソルベイ日華(株)製、HLB12.3)
(D)成分
(D-1):ビスフェノールA型エポキシ樹脂[商品名「JER1001」、三菱ケミカル(株)製、Mn:1000]
(D-2):ビスフェノールA型エポキシ樹脂[商品名「JER1004」、三菱ケミカル(株)製、Mn:2000]
(E)成分
(E-1):ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物(両末端ジアクリレート)[商品名「エポキシエステル3000A」、共栄社化学(株)製、Mn1650]
【0139】
<評価試験>
実施例と比較例の繊維用集束剤組成物を用いて、評価試験1~3に記載の方法で、炭素繊維束の集束性、毛羽、およびマトリックス樹脂(ビニルエステル樹脂)の評価を行った。また、実施例および比較例で得られた繊維用集束剤組成物を40℃×14日間貯蔵した後、評価試験1~3に記載の方法で前記性能(集束性、毛羽、接着性)の測定を行い、評価試験4の方法で経時変化の評価を行った。さらに、実施例および比較例で得られた繊維用集束剤組成物の貯蔵安定性を評価試験5の方法で評価した。結果を表2~4に示す。
【0140】
<評価試験1:集束性の評価>
(1)固形分濃度が1.5重量%となるように繊維用集束剤組成物をさらに水で希釈した水溶液に、未処理炭素繊維(繊度800tex、フィラメント数12,000本)を浸漬して集束剤を含浸させ、180℃で3分間熱風乾燥させて炭素繊維束を作製した。
(2)得られた炭素繊維束の集束性を、JIS L1096-1999 8.19.1 A法(45°カンチレバー法)に準じて評価した。
数値(cm)が大きいほど集束性に優れることを意味する。
この処理条件で得られた炭素繊維束をカンチレバーで評価した集束性の値は、一般に13cm以上が好ましい。
【0141】
<評価試験2:毛羽の評価>
(1)集束性の評価(1)に記載の方法と同じ方法で炭素繊維束を作製した。
(2)直径2mmのクロムめっきされたステンレス棒を、その表面を炭素繊維束が120°の接触角で接触しながら通過するように、ジグザクに15mm間隔で5本配置した。このステンレス棒間に炭素繊維束をジグザグにかけ、1kg重の張力をかけた。巻き取りロール直前で炭素繊維束を、1kg重の荷重をかけた10cm×10cmのウレタンフォーム2枚で挟み、1m/分の速度で5分間擦過させた。
(3)この間にスポンジに付着した毛羽の重量を測定し、繊維の単位長さあたりの毛羽の重量(mg/m)を算出した。
単位長さあたりの毛羽の重量が小さいほど毛羽の発生が少ないことを意味する。
この処理条件で得られた炭素繊維束の毛羽の量は、一般に0.05mg/m以下が好ましい。
【0142】
<評価試験3:接着性の評価(ビニルエステル樹脂)>
マイクロドロップレット法により接着性を評価した。
(1)上記の方法にて得られた炭素繊維束から、炭素繊維フィラメントを取り出し、試料ホルダーにセットした。
(2)ビニルエステル樹脂「リポキシR-804」[昭和電工(株)製]100重量部、硬化剤「パーメックN」[日油(株)製]25重量部からなるマトリックス樹脂のマイクロドロップレットを炭素繊維フィラメント上に形成し、25℃×24時間、120℃×5時間加熱し硬化させ接着性の測定用の試料を得た。
(3)測定試料を複合材料界面特性評価装置HM410[東栄産業株式会社製]にセットし、炭素繊維フィラメントからマイクロドロップレットを引き抜く際の最大引き抜き荷重Fを測定した。
(4)界面剪断強度τを次式により算出した。
界面剪断強度τ(単位:MPa)=F/πdL
[但し、Fは最大引き抜き荷重(N)、dは炭素繊維フィラメント直径(μm)、Lはマイクロドロップレットの引き抜き方向の粒子径(μm)を表す。]
この界面剪断強度τが大きいほど接着性が高いことを意味し、43MPa以上であれば実用可能であるが、53MPa以上が好ましく、さらに好ましくは57MPa以上である。
【0143】
<評価試験4:経時変化の評価>
実施例および比較例で得られた繊維用集束剤組成物について、40℃で14日間貯蔵する前と貯蔵後のそれぞれについて、評価試験1~3の方法で集束性、毛羽および接着性の測定を行った。下記式により経時変化(%)を算出し、以下の評価基準により評価した。下記式の「||」は絶対値を表す。
経時変化(%)=|(貯蔵後の測定結果-貯蔵前の測定結果)×100/(貯蔵前の測定結果)|
(評価基準)
AA:0%以上、2%未満
A:2%以上、5%未満
B:5%以上、10%未満
C:10%以上、20%未満
D:20%以上
【0144】
<評価試験5:貯蔵安定性の評価>
(5-1:40℃での組成物の貯蔵安定性)
各例の繊維用集束剤組成物30gを、スクリュー菅[50mL(胴径35mm×高さ78mm)]に入れて、40℃で14日間貯蔵した。貯蔵前後のメジアン径(μm)の測定結果を用いて、下記式により、40℃での貯蔵安定性(%)を算出し、以下の評価基準で評価した。メジアン径は、レーザー回折式粒度分布測定器「LA-750」[(株)堀場製作所製]を用いて、測定を行った(以下の評価試験において同様)。
40℃での貯蔵安定性(%)=(貯蔵後のメジアン径)×100/(貯蔵前のメジアン径)
【0145】
(評価基準)
AA:105%未満
A:105%以上、110%未満
B:110%以上、115%未満
C:115%以上、120%未満
D:120%以上
【0146】
(5-2:5℃での組成物の貯蔵安定性)
各例の繊維用集束剤組成物30gを、スクリュー菅[50mL(胴径35mm×高さ78mm)]に入れて、5℃で14日間貯蔵した。貯蔵前後のメジアン径(μm)の測定結果を用いて、下記式により、5℃での貯蔵安定性(%)を算出し、以下の評価基準で評価した。
5℃での貯蔵安定性(%)=(貯蔵後のメジアン径)×100/(貯蔵前のメジアン径)
【0147】
評価基準)
AA:105%未満
A:105%以上、110%未満
B:110%以上、115%未満
C:115%以上、120%未満
D:120%以上
【0148】
【表2】
【0149】
【表3】
【0150】
【表4】
【0151】
表2~4の結果から、実施例1~27の繊維用集束剤組成物を用いると、高い集束性を保持しながら、毛羽立ちの少ない繊維束を作ることができ、かつ繊維とマトリックス樹脂との接着性が向上することがわかる。また、実施例1~27の繊維用集束剤組成物を用いると経時変化を小さくし、かつ、5℃および40℃での貯蔵安定性に優れることがわかる。これらの結果から、本発明によれば、繊維とマトリックス樹脂との接着性を向上させることができ、より、高い集束性を保持しながら、毛羽立ちの少ない繊維束及び繊維製品を得られることができ、かつ、性能の経時変化が小さい集束剤を提供できることがわかった。