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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】電力管理装置及び電力管理方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20240430BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240430BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02J3/38 130
H02J3/38 170
H02J3/32
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022166483
(22)【出願日】2022-10-17
(65)【公開番号】P2024059014
(43)【公開日】2024-04-30
【審査請求日】2024-01-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中垣 和歌
(72)【発明者】
【氏名】沖野 健太
(72)【発明者】
【氏名】中村 一尊
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-10250(JP,A)
【文献】特開2021-136852(JP,A)
【文献】特開2019-80487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続される施設に設置される蓄電装置を制御する制御部と、
前記電力系統の電力需給バランスを調整するための調整可能電力を示す調整可能電力情報を上位ノードに送信する送信部と、を備え、
前記調整可能電力情報は、前記調整可能電力が前記施設の需要電力を上げる電力であるか下げる電力であるか、前記調整可能電力が前記電力系統への逆潮流電力を含むか否か、及び、前記調整可能電力が余剰電力を含む否かを区別可能な態様で前記調整可能電力を示す情報であり、
前記余剰電力は、前記施設に設置される発電装置の発電電力と前記施設の消費電力との差異である、電力管理装置。
【請求項2】
前記調整可能電力が前記施設の需要電力を上げる電力である場合に、前記調整可能電力情報は、前記調整可能電力が前記電力系統への逆潮流電力を含まない電力を示す第1情報と、前記調整可能電力が前記電力系統への逆潮流電力を含み、かつ、前記調整可能電力が前記余剰電力を含む電力を示す第2情報と、前記調整可能電力が前記電力系統への逆潮流電力を含み、かつ、前記調整可能電力が前記余剰電力を含まない電力を示す第3情報と、を区別可能な態様で含む、請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項3】
前記調整可能電力が前記施設の需要電力を下げる電力である場合に、前記調整可能電力情報は、前記調整可能電力が前記電力系統への逆潮流電力を含まない電力を示す第4情報と、前記調整可能電力が前記電力系統への逆潮流電力を含み、かつ、前記調整可能電力が前記余剰電力を含む電力を示す第5情報と、前記調整可能電力が前記電力系統への逆潮流電力を含み、かつ、前記調整可能電力が前記余剰電力を含まない電力を示す第6情報と、を区別可能な態様で含む、請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項4】
前記発電装置、前記蓄電装置及び前記電力系統からの順潮流電力の少なくともいずれか1つに関する権利者を特定するための契約情報を前記施設から受信する受信部を備える、請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記発電装置、前記蓄電装置及び前記電力系統からの順潮流電力の少なくともいずれか1つに関する権利者を特定するための契約情報に基づいて、前記調整可能電力の補正を実行する、請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項6】
前記送信部は、前記発電装置、前記蓄電装置及び前記電力系統からの順潮流電力の少なくともいずれか1つに関する権利者を特定するための契約情報を前記上位ノードに送信する、請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項7】
電力系統に接続される施設に設置される蓄電装置を制御するステップAと、
前記電力系統の電力需給バランスを調整するための調整可能電力を示す調整可能電力情報を上位ノードに送信するステップBと、を備え、
前記調整可能電力情報は、前記調整可能電力が前記施設の需要電力を上げる電力であるか下げる電力であるか、前記調整可能電力が前記電力系統への逆潮流電力を含むか否か、及び、前記調整可能電力が余剰電力を含む否かを区別可能な態様で前記調整可能電力を示す情報であり、
前記余剰電力は、前記施設に設置される発電装置の発電電力と前記施設の消費電力との差異である、電力管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理装置及び電力管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力系統の電力需給バランスの安定化のために、蓄電装置などの分散電源を用いる仕組み(以下、VPP(Virtual Power Plant))が注目を集めている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
ここで、2以上の施設(以下、施設群)を管理する電力管理装置は、施設群の順潮流電力(以下、調達電力)に関する計画値と施設群の調達電力に関する実績値との差異(インバランス)が所定差異以下となるように、施設に設置される分散電源を制御することが考えられる。
【0004】
同様に、2以上の施設を管理する電力管理装置は、施設群の逆潮流電力(以下、発電電力)に関する計画値と施設群の発電電力に関する実績値との差異(インバランス)が所定差異以下となるように、施設に設置される分散電源を制御することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2015/041010号パンフレット
【文献】国際公開第2016/084396号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した仕組みにおいて、計画値を作成した後において、計画値と予測値とが乖離する場合に、計画値と予測値との乖離に基づいて、インバランスを調整するために蓄電装置を制御することが考えられる。
【0007】
発明者等は、このようなケースに着目して、以下に示す知見を得た。具体的には、発明者等は、発電電力に関するインバランスを抑制するために、蓄電装置を単純に制御すると、施設の需要電力(ひいては、調達電力)に関するインバランスが却って拡大することを見出した。同様に、発明者等は、調達電力に関するインバランスを抑制するために、蓄電装置を単純に制御すると、発電電力に関するインバランスが却って拡大することを見出した。
【0008】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、電力系統に関する電力を適切に制御し得る電力管理装置及び電力管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の一態様は、電力系統に接続される施設に設置される蓄電装置を制御する制御部と、前記電力系統の電力需給バランスを調整するための調整可能電力を示す調整可能電力情報を上位ノードに送信する送信部と、を備え、前記調整可能電力情報は、前記調整可能電力が前記施設の需要電力を上げる電力であるか下げる電力であるか、前記調整可能電力が前記電力系統への逆潮流電力を含むか否か、及び、前記調整可能電力が余剰電力を含む否かを区別可能な態様で前記調整可能電力を示す情報であり、前記余剰電力は、前記施設に設置される発電装置の発電電力と前記施設の消費電力との差異である、電力管理装置である。
【0010】
開示の一態様は、電力系統に接続される施設に設置される蓄電装置を制御するステップAと、前記電力系統の電力需給バランスを調整するための調整可能電力を示す調整可能電力情報を上位ノードに送信するステップBと、を備え、前記調整可能電力情報は、前記調整可能電力が前記施設の需要電力を上げる電力であるか下げる電力であるか、前記調整可能電力が前記電力系統への逆潮流電力を含むか否か、及び、前記調整可能電力が余剰電力を含む否かを区別可能な態様で前記調整可能電力を示す情報であり、前記余剰電力は、前記施設に設置される発電装置の発電電力と前記施設の消費電力との差異である、電力管理方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電力系統に関する電力を適切に制御し得る電力管理装置及び電力管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る電力管理システム1を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る施設100を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る上位管理サーバ300を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る下位管理サーバ200を示す図である。
図5図5は、実施形態に係るEMS160を示す図である。
図6図6は、実施形態に係る動作例について説明するための図である。
図7図7は、実施形態に係る動作例について説明するための図である。
図8図8は、実施形態に係る動作例について説明するための図である。
図9図9は、実施形態に係る動作例について説明するための図である。
図10図10は、実施形態に係る電力管理方法を示す図である。
図11図11は、実施形態に係る電力管理方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものである。
【0014】
[実施形態]
(電力管理システム)
以下において、実施形態に係る電力管理システムについて説明する。電力管理システムは、単に、電力システムと称されてもよい。
【0015】
図1に示すように、電力管理システム1は、施設100を有する。電力管理システム1は、下位管理サーバ200、上位管理サーバ300、第三者サーバ400及び外部サーバ500を含む。
【0016】
ここで、施設100、下位管理サーバ200、上位管理サーバ300、第三者サーバ400及び外部サーバ500は、ネットワーク11を介して通信可能に構成される。ネットワーク11は、インターネットを含んでもよく、VPN(Virtual Private Network)などの専用回線を含んでもよく、移動体通信網を含んでもよい。
【0017】
施設100は、電力系統12に接続されており、電力系統12から電力が供給されてもよく、電力系統12に電力を供給してもよい。電力系統12から施設100への電力は、順潮流電力と称されてもよい。施設100から電力系統12への電力は、逆潮流電力と称されてもよい。図1では、施設100として、施設100A~施設100Cが例示されている。
【0018】
特に限定されるものではないが、施設100は、住宅などの施設であってもよく、店舗などの施設であってもよく、オフィスなどの施設であってもよい。施設100は、2以上の住宅を含む集合住宅であってもよい。施設100は、住宅、店舗及びオフィスの少なくともいずれか2以上の施設を含む複合施設であってもよい。施設100の詳細については後述する(図2を参照)。なお、施設100を所有又は管理するユーザを施設100と称することもある。
【0019】
下位管理サーバ200は、電力系統12又は施設100に関する電力を管理する事業者によって管理される。事業者は、リソースアグリゲータ(RA)であってもよい。下位管理サーバ200によって管理される1以上の施設100について施設群100と称してもよい。
【0020】
以下において、下位管理サーバ200がRAによって管理されるケースについて例示する。下位管理サーバ200をRAと称することもあり、RAを下位管理サーバ200と称することもある。下位管理サーバ200の詳細については後述する(図4を参照)。
【0021】
上位管理サーバ300は、電力系統12に関する電力を管理する事業者によって管理される。上位管理サーバ300は、各種サービスを提供する事業者によって管理されてもよい。上位管理サーバ300は、AEMS(Area Energy Management System)と称されてもよく、AC(Aggregation Controller)と称されてもよい。上位管理サーバ300の詳細については後述する(図3を参照)。
【0022】
事業者は、小売電気事業者であってもよい。小売電気事業者は、電力系統12などの基盤を管理する地域電力事業者(一般電気事業者)を含んでもよく、地域電力事業者以外の新電力事業者を含んでもよい。新電力事業者は、電力市場から電力を調達することによって、施設に対して電力を販売することが想定されてもよい。電力市場は、施設100に供給される電力(調達電力)の取引に関する卸電力市場を含んでもよく、卸電力市場のゲートクローズ後における電力需給のギャップの調整に関する電力調整市場を含んでもよく、供給力(例えば、逆潮流電力)の取引に関する容量市場を含んでもよい。電力市場は、他の小売電気事業者と電力の取引を含んでもよい。電力市場は、他の発電事業者と電力の取引を含んでもよい。すなわち、電力市場は、1対1又は1対他又は多対多などの形態によらずに、電力の取引を行うための取引所であればよい。
【0023】
サービスは、施設群100の順潮流電力(以下、調達電力と称することもある)に関する計画値と施設群100の調達電力に関する実績値との差異(インバランス)が所定差異以下に抑制するためのサービスを含んでもよい。サービスは、施設群100の逆潮流電力(以下、発電電力と称することもある)に関する計画値と施設群100の発電電力に関する実績値との差異(インバランス)が所定差異以下に抑制するためのサービスを含んでもよい。
【0024】
第三者サーバ400は、電力系統12の電力需給バランスを管理する事業者によって管理される。事業者は、電力系統12に関する電力市場を管理してもよい。例えば、第三者サーバ400は、調達電力のインバランスを確認する機能を有してもよい。第三者サーバ400は、発電電力のインバランスを確認する機能を有してもよい。例えば、第三者サーバは、以下に示す動作を行ってもよい。
【0025】
第1に、第三者サーバ400は、調達電力に関する計画値と調達電力に関する実績値との差異(インバランス)が所定差異を超えるか否かを確認してもよい。計画値及び実績値は単位期間(例えば、30分)毎に集計されてもよく、インバランスは、単位期間(例えば、30分)毎に確認されてもよい。第三者サーバ400は、インバランスが所定差異を超える場合に、上位管理サーバ300を管理する事業者に対してペナルティを課してもよい。第三者サーバ400は、インバランスが所定差異を超えない場合に、上位管理サーバ300を管理する事業者に対してインセンティブを付与してもよい。ペナルティ及びインセンティブは、金銭的なものであってもよい。
【0026】
第2に、第三者サーバ400は、発電電力に関する計画値と発電電力の実績値との差異(インバランス)が所定差異を超えるか否かを確認してもよい。計画値及び実績値は単位期間(例えば、30分)毎に集計されてもよく、インバランスは、単位期間(例えば、30分)毎に確認されてもよい。第三者サーバ400は、インバランスが所定差異を超える場合に、上位管理サーバ300を管理する事業者に対してペナルティを課してもよい。第三者サーバ400は、インバランスが所定差異を超えない場合に、上位管理サーバ300を管理する事業者に対してインセンティブを付与してもよい。ペナルティ及びインセンティブは、金銭的なものであってもよい。
【0027】
ここで、発電電力及び調達電力のインバランスが確認される期間を対象期間(例えば、1日)と定義してもよい。このようなケースにおいて、調達電力に関する計画値は、対象期間よりも前のタイミング(例えば、対象期間の前日の12:00)に策定される計画を含んでもよい。発電電力に関する計画値は、対象期間よりも前のタイミング(例えば、対象期間の前日の12:00)に策定される計画値を含んでもよい。さらに、調達電力に関する計画値は、対象期間に含まれる単位期間よりも前のタイミング(例えば、単位期間の1時間前)に策定される計画値を含んでもよい。発電電力に関する計画値は、対象期間に含まれる単位期間よりも前のタイミング(例えば、単位期間の1時間前)に策定される計画値を含んでもよい。
【0028】
特に限定されるものではないが、調達電力に関する計画値と調達電力に関する実績値は、下位管理サーバ200又は上位管理サーバ300から報告されてもよい。発電電力に関する計画値と発電電力に関する実績値は、下位管理サーバ200又は上位管理サーバ300から報告されてもよい。
【0029】
実施形態では、施設100に設置される分散電源を利用して、電力系統12の電力需給バランスを調整するVPP(Virtual Power Plant)サービスにいて説明する。ACは、RAが制御する電力量を束ね、一般送配電事業者又は小売電気事業者と直接電力取引を行う事業者であると考えてもよい。RAは、施設100(需要家)とVPPサービスの契約を直接締結してリソース制御を行う事業者であると考えてもよい。
【0030】
ここで、施設100に設置される分散電源に制御指令を送信する主体は、VPPコントローラと称されてもよい。下位管理サーバ200がVPPサービスの連携機能を有する場合には、下位管理サーバ200及び後述するEMS160は、VPPコントローラを構成してもよい。このようなケースにおいて、下位管理サーバ200は、RAとして機能する第1サーバと、VPPサービスの連携機能を有する第2サーバとを含んでもよい。第1サーバ及び第2サーバは、別々のサーバであってもよく、1つのサーバに集約されてもよい。
【0031】
実施形態では、VPPコントローラ(第2サーバ)は、電力管理装置の一例である。RA(第1サーバ)は、上位ノードの一例である。但し、上位ノードは、上位管理サーバ300(AC又はAEMS)を含んでもよい。
【0032】
(施設)
以下において、実施形態に係る施設について説明する。図2に示すように、施設100は、太陽電池装置110と、蓄電装置120と、燃料電池装置130と、負荷機器140と、EMS(Energy Management System)160と、を有する。施設100は、測定装置190を有してもよい。
【0033】
太陽電池装置110は、太陽光などの光に応じて発電をする分散電源である。例えば、太陽電池装置110は、PCS(Power Conditioning System)及び太陽光パネルによって構成される。ここで、設置とは、太陽電池装置110と電力系統12とが接続されることであってもよい。
【0034】
蓄電装置120は、電力の充電及び電力の放電をする分散電源である。例えば、蓄電装置120は、PCS及び蓄電セルによって構成される。ここで、設置とは、蓄電装置120と電力系統12とが接続されることであってもよい。以下において、蓄電装置120は、電力系統12の電力需給バランスの調整に用いる分散電源の一例である。蓄電装置120は、VPP制御に用いる分散電源の一例であると考えてもよい。
【0035】
燃料電池装置130は、燃料を用いて発電を行う分散電源である。例えば、燃料電池装置130は、PCS及び燃料電池セルによって構成される。ここで、設置とは、燃料電池装置130と電力系統12とが接続されることであってもよい。
【0036】
例えば、燃料電池装置130は、固体酸化物型燃料電池(SOFC; Solid Oxide Fuel Cell)であってもよく、固体高分子型燃料電池(PEFC; Polymer Electrolyte Fuel Cell)であってもよく、リン酸型燃料電池(PAFC; Phosphoric Acid Fuel Cell)であってもよく、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC; Molten Carbonate Fuel Cell)であってもよい。
【0037】
負荷機器140は、電力を消費する機器である。例えば、負荷機器140は、空調装置、ヒートポンプ給湯器、照明装置などを含んでもよい。
【0038】
EMS160は、施設100に関する電力を管理する。EMS160は、太陽電池装置110、蓄電装置120、燃料電池装置130、負荷機器140を制御してもよい。実施形態では、下位管理サーバ200から制御コマンドを受信する装置としてEMS160を例示するが、このような装置は、Gatewayと称されてもよく、単に制御ユニットと称されてもよい。EMS160は、下位管理サーバ200と区別するために、LEMS(Local EMS)と称されてもよく、HEMS(Home EMS)と称されてもよい。EMS160の詳細については後述する(図5を参照)。
【0039】
測定装置190は、電力系統12から施設100への順潮流電力(以下、需要電力とも称する)を測定する。測定装置190は、施設100から電力系統12への逆潮流電力を測定してもよい。例えば、測定装置190は、電力会社に帰属するSmart Meterであってもよい。測定装置190は、第1間隔(例えば、30分)における測定結果(順潮流電力又は逆潮流電力の積算値)を示す情報要素を第1間隔毎にEMS160に送信してもよい。測定装置190は、第1間隔よりも短い第2間隔(例えば、1分)における測定結果を示す情報要素をEMS160に送信してもよい。
【0040】
(上位管理サーバ)
以下において、実施形態に係る上位管理サーバについて説明する。図3に示すように、上位管理サーバ300は、通信部310と、管理部320と、制御部330と、を有する。
【0041】
通信部310は、通信モジュールによって構成される。通信モジュールは、IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax、ZigBee、Wi-SUN、LTE、5G、6Gなどの規格に準拠する無線通信モジュールであってもよく、IEEE802.3などの規格に準拠する有線通信モジュールであってもよい。
【0042】
例えば、通信部310は、電力系統12の電力需給バランスの調整が必要な場合に、電力系統12の電力の調整を要請する調整要請(DR要請)を下位管理サーバ200に送信してもよい。DR要請は、順潮流電力の減少(又は逆潮流電力の増大)を要請する下げDR要請を含んでもよく、順潮流電力の増大(又は逆潮流電力の減少)を要請する上げDR要請を含んでもよい。DR要請は、施設群100の全体で調整する要請調整電力を示す情報を含んでもよい。要請調整電力は、要請する順潮流電力の減少電力(例えば、下げDR指示電力量(Wh))を含んでもよい。DR要請は、要請する順潮流電力の増大電力(例えば、上げDR指示電力量(Wh))を含んでもよい。
【0043】
管理部320は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、不揮発性メモリなどの記憶媒体によって構成される。
【0044】
例えば、管理部320は、施設群100の全体で調整可能な電力(総調整可能電力と称してもよい)を管理してもよい。総調整可能電力は、下位管理サーバ200から受信されてもよい。総調整可能電力は、順潮流電力の減少(又は逆潮流電力の増大)が可能な電力(下げDR可能電力量(Wh))を含んでもよい。総調整可能電力は、順潮流電力の増大(又は逆潮流電力の減少)が可能な電力(上げDR可能電力量(Wh))を含んでもよい。
【0045】
制御部330は、少なくとも1つのプロセッサを含んでもよい。少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路(IC)によって構成されてもよく、通信可能に接続された複数の回路(集積回路及び又はディスクリート回路(discrete circuit(s))など)によって構成されてもよい。
【0046】
例えば、制御部330は、総調整可能電力に基づいて、分散電源の制御計画を策定してもよい。制御部330は、制御計画に応じて、DR要請の送信を通信部310に指示してもよい。或いは、制御部330は、分散電源の制御計画を策定した上で、分散電源の制御計画に従った動作に対する総調整可能量を算出し、総調整可能量に基づいて、DR要請の送信を通信部310に指示してもよい。
【0047】
(下位管理サーバ)
以下において、実施形態に係る下位管理サーバについて説明する。図4に示すように、下位管理サーバ200は、通信部210と、管理部220と、制御部230と、を有する。
【0048】
通信部210は、通信モジュールによって構成される。通信モジュールは、IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax、ZigBee、Wi-SUN、LTE、5G、6Gなどの規格に準拠する無線通信モジュールであってもよく、IEEE802.3などの規格に準拠する有線通信モジュールであってもよい。
【0049】
例えば、通信部210は、施設100の施設情報を受信してもよい。施設情報は、施設100が有する分散電源の構成を示す情報を含んでもよく、施設100が有する分散電源の仕様を示す情報を含んでもよい。施設情報は、電力系統12の電力需給バランスの調整(例えば、VPP制御)に参加するか否かを示す情報を含んでもよい。
【0050】
通信部210は、施設100の各々の発電電力に関する計画値を受信してもよい。通信部210は、施設100の各々の需要電力に関する計画値を受信してもよい。
【0051】
通信部210は、施設100の各々に設置される装置を制御する制御指令を送信してもよい。施設100の各々に設置される装置は、太陽電池装置110、蓄電装置120、燃料電池装置130などの分散電源を含んでもよい。施設100の各々に設置される装置は、負荷機器140を含んでもよい。
【0052】
管理部220は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、不揮発性メモリなどの記憶媒体によって構成される。
【0053】
例えば、管理部220は、電力系統12に接続された1以上の施設100を管理してもよい。1以上の施設100の管理は、電力系統12に接続された1以上の分散電源の管理と読み替えられてもよい。
【0054】
管理部220は、施設100に関する情報を管理してもよい。例えば、施設100に関する情報は、施設100に設けられる分散電源(太陽電池装置110、蓄電装置120又は燃料電池装置130)の種別、施設100に設けられる分散電源(太陽電池装置110、蓄電装置120又は燃料電池装置130)のスペックなどである。スペックは、太陽電池装置110の定格発電電力、蓄電装置120の定格充電電力、蓄電装置120の定格放電電力、燃料電池装置130の定格出力電力を含んでもよい。スペックは、蓄電装置120の定格容量、最大充放電電力などを含んでもよい。
【0055】
制御部230は、少なくとも1つのプロセッサを含んでもよい。少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路(IC)によって構成されてもよく、通信可能に接続された複数の回路(集積回路及び又はディスクリート回路(discrete circuit(s))など)によって構成されてもよい。
【0056】
例えば、制御部230は、上位管理サーバ300から受信するDR要請に基づいて、施設100の各々で調整すべき調整電力を割り当てる。具体的には、制御部230は、施設100の各々で調整すべき調整電力の合計がDR要請に含まれる要請調整電力以上となるように、施設100の各々で調整すべき調整電力を割り当てる。施設100の各々で調整すべき調整電力は、要請調整電力と区別するために、個別調整電力と称されてもよい。
【0057】
なお、個別調整電力は、施設100毎に割り当てられてもよく、施設100に設置される分散電源(例えば、蓄電装置120)毎に割り当てられてもよい。
【0058】
(EMS)
以下において、実施形態に係るEMSについて説明する。図5に示すように、EMS160は、第1通信部161と、第2通信部162と、制御部163と、を有する。
【0059】
第1通信部161は、通信モジュールによって構成される。通信モジュールは、IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax、ZigBee、Wi-SUN、LTE、5G、6Gなどの規格に準拠する無線通信モジュールであってもよく、IEEE802.3又は独自の専用プロトコルなどの規格に準拠する有線通信モジュールであってもよい。
【0060】
例えば、第1通信部161は、ネットワーク11を介して下位管理サーバ200と通信を実行する第1通信部を構成する。第1通信部161は、分散電源(実施形態では、蓄電装置120)の動作を指示する制御指令を下位管理サーバ200から受信してもよい。制御指令は、各々の蓄電装置120が制御すべき個別調整電力を示す情報を含んでもよい。
【0061】
第1通信部161は、負荷機器140と通信を実行してもよく、測定装置190と通信を実行してもよい。
【0062】
第2通信部162は、通信モジュールによって構成される。通信モジュールは、IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax、ZigBee、Wi-SUN、LTE、5G、6Gなどの規格に準拠する無線通信モジュールであってもよく、IEEE802.3、RS485又は独自の専用プロトコルなどの規格に準拠する有線通信モジュールであってもよい。
【0063】
例えば、第2通信部162は、太陽電池装置110、蓄電装置120及び燃料電池装置130と通信を実行してもよい。図2では信号ラインを省略しているが、第2通信部162は、負荷機器140と通信を実行してもよく、測定装置190と通信を実行してもよい。
【0064】
制御部163は、EMS160を制御する。制御部163は、少なくとも1つのプロセッサを含んでもよい。少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路(IC)によって構成されてもよく、通信可能に接続された複数の回路(集積回路及び又はディスクリート回路(discrete circuit(s))など)によって構成されてもよい。
【0065】
例えば、制御部163は、太陽電池装置110、蓄電装置120及び燃料電池装置130を制御してもよい。制御部163は、負荷機器140を制御してもよい。
【0066】
(動作例)
動作例では、電力系統12の電力の制御に用いる調整可能電力を示す調整可能電力情報の報告について説明する。電力系統12の電力の制御は、調達電力のインバランスの調整、発電電力のインバランスの調整、容量市場又は需給調整市場などの電力市場における電力取引などを含んでもよい。動作例では、調整可能電力情報がVPPコントローラからRAに報告されるケースについて想定する。すなわち、VPPコントローラは、調整可能電力情報をRAに報告する。調整可能電力情報は、単位期間(例えば、30分)毎の調整可能電力を示す情報である。
【0067】
調整可能電力は、VPPコントローラの制御下にある施設100の各々の調整可能電力(個別調整可能電力と称してもよい)を含む。個別調整可能電力は、施設100に設置される蓄電装置120の充電電力の減少、蓄電装置120の充電電力の増大、蓄電装置120の放電電力の減少、蓄電装置120の放電電力の増大によって捻出される電力を含んでもよい。個別調整可能電力は、施設100に設置される負荷機器140の消費電力の減少、負荷機器140の消費電力の増大によって捻出される電力を含んでもよい。個別調整可能電力は、施設100に設置される発電装置(例えば、燃料電池装置130)の出力電力の減少、発電装置(例えば、燃料電池装置130)の出力電力の増大によって捻出される電力を含んでもよい。
【0068】
以下においては、個別調整可能電力は、蓄電装置120の制御によって捻出される電力であるケースについて例示する。
【0069】
このような前提下において、調整可能電力情報は、調整可能電力が施設100の需要電力を上げる電力であるか下げる電力であるか、調整可能電力が電力系統12への逆潮流電力を含むか否か、及び、調整可能電力が余剰電力を含む否かを区別可能な態様で調整可能電力を示す情報である。
【0070】
余剰電力は、施設100に設置される発電装置の発電電力と施設100の消費電力との差異である。施設100の消費電力は、蓄電装置120の充電電力を含まずに、負荷機器140の消費電力を含んでもよい。施設100の消費電力は、負荷機器140の消費電力と読み替えてもよい。施設100の消費電力は、施設100の需要電力から発電装置の発電電力を除いた電力であると考えてもよい。但し、施設100の消費電力は、蓄電装置120の充電電力及び負荷機器140の消費電力を含んでもよい。
【0071】
以下において、調整可能電力情報の詳細について説明する。以下においては、調整可能電力が施設100の需要電力を上げる電力であるケース(上げDR対応)と、調整可能電力が施設100の需要電力を下げる電力であるケース(下げDR対応)と、に分けて、調整可能電力情報の詳細に分けて、図6図9を参照しながら説明する。図6図9に示す各用語は、以下に示す通りであってもよい。
【0072】
基準値は、DR要請前における施設100の需要電力である。基準値は、施設100の消費電力(負荷機器140の消費電力)に加えて、発電装置(例えば、太陽電池装置110及び燃料電池装置130)の発電電力及び蓄電装置120の充電電力及び放電電力が反映された値である。基準値は、ベースライン電力であると考えてもよい。ベースライン電力は、DR要請の発動予告よりも前の一定期間の需要電力の平均値であってもよい。一定期間は、ネガワット取引の実体に応じて定められてもよく、下位管理サーバ200(例えば、RA)と上位管理サーバ300(例えば、AC又はAEMS)との間で定められてもよい。ベースライン電力は、施設100の需要電力の予測値に基づいて算出されてもよく、施設100の発電電力の予測値に基づいて算出されてもよく、需要電力及び発電電力の双方に基づいて算出されてもよい。
【0073】
残余需要は、施設100の消費電力から発電装置(例えば、太陽電池装置110及び燃料電池装置130)の発電電力を除いた値である。施設100で逆潮流が生じている場合には、残余需要は、余剰電力と読み替えてもよい。
【0074】
目標値は、DR要請によって調整され得る施設100の需要電力の目標値である。例えば、目標値は、蓄電装置120の充電電力又は放電電力の制御によって調整され得る施設100の需要電力の目標値である。施設100の需要電力を目標値に近づけるために、負荷機器140の消費電力が制御されてもよく、発電装置(例えば、太陽電池装置110及び燃料電池装置130)の発電電力が制御されてもよい。目標値と基準値との差異は、個別調整可能電力である。
【0075】
第1に、上げDR対応について説明する。図6及び図7に示すように、調整可能電力情報は、調整可能電力が電力Aを示す第1情報と、調整可能電力が電力Bを示す第2情報と、調整可能電力が電力Cを示す第3情報と、を区別可能な態様で含む。
【0076】
電力Aは、電力系統12への逆潮流電力を含まない電力である。言い換えると、電力Aは、電力系統12への逆潮流電力を含まずに、電力系統12からの順潮流電力のみを含む電力である。電力Bは、電力系統12への逆潮流電力を含み、かつ、余剰電力を含む電力である。言い換えると、電力Bは、電力系統12からの順潮流電力を含まずに、電力系統12への逆潮流電力のみを含む電力であって、余剰電力を含む電力である。電力Cは、電力系統12への逆潮流電力を含み、かつ、余剰電力を含まない電力である。言い換えると、電力Cは、電力系統12からの順潮流電力を含まずに、電力系統12への逆潮流電力のみを含む電力であって、余剰電力を含まない電力である。
【0077】
図6に示すように、残余需要が順潮流電力であるケース、すなわち、施設100の消費電力が施設100の発電電力よりも大きいケースでは、逆潮流が生じていないため、電力Bは、電力Cと同じである。
【0078】
電力A、電力B及び電力Cは、基準値、残余需要及び目標値の大小関係によって特定される。従って、基準値、残余需要及び目標値の大小関係によっては、電力Aがゼロであるケースも想定され、電力B及び電力Cがゼロであるケースも想定される。
【0079】
図6に示すケースでは、電力Aは、蓄電装置120の放電を中止し、蓄電装置120の充電を実行すること(蓄電装置120の充電電力を増大すること)によって捻出される調整可能電力である。電力Bは、蓄電装置120の放電を減少することによって捻出される調整可能電力である。電力Cは、蓄電装置120の放電を減少することによって捻出される調整可能電力である。
【0080】
図7に示すように、残余需要が逆潮流電力であるケース、すなわち、施設100の発電電力が施設100の消費電力よりも大きいケースでは、逆潮流が生じているため、電力Bは、電力Cよりも大きな値である。
【0081】
電力A、電力B及び電力Cは、基準値、残余需要及び目標値の大小関係によって特定される。従って、基準値、残余需要及び目標値の大小関係によっては、電力Aがゼロであるケースも想定され、電力Bがゼロであるケースも想定され、電力Cがゼロであるケースも想定される。
【0082】
図7に示すケースでは、電力Aは、蓄電装置120の充電を実行すること(蓄電装置120の充電電力を増大すること)によって捻出される調整可能電力である。電力Bは、蓄電装置120の放電を中止し、蓄電装置120の充電を実行すること(蓄電装置120の充電電力を増大すること)によって捻出される調整可能電力である。電力Cは、蓄電装置120の放電を中止することによって捻出される調整可能電力である。
【0083】
第2に、下げDR対応について説明する。図8及び図9に示すように、調整可能電力情報は、調整可能電力が電力Dを示す第4情報と、調整可能電力が電力Eを示す第5情報と、調整可能電力が電力Fを示す第6情報と、を区別可能な態様で含む。
【0084】
電力Dは、電力系統12への逆潮流電力を含まない電力である。言い換えると、電力Dは、電力系統12への逆潮流電力を含まずに、電力系統12からの順潮流電力のみを含む電力である。電力Eは、電力系統12への逆潮流電力を含み、かつ、余剰電力を含む電力である。言い換えると、電力Eは、電力系統12からの順潮流電力を含まずに、電力系統12への逆潮流電力のみを含む電力であって、余剰電力を含む電力である。電力Fは、電力系統12への逆潮流電力を含み、かつ、余剰電力を含まない電力である。言い換えると、電力Fは、電力系統12からの順潮流電力を含まずに、電力系統12への逆潮流電力のみを含む電力であって、余剰電力を含まない電力である。
【0085】
図8に示すように、残余需要が順潮流電力であるケース、すなわち、施設100の消費電力が施設100の発電電力よりも大きいケースでは、逆潮流が生じていないため、電力Eは、電力Fと同じである。
【0086】
電力D、電力E及び電力Fは、基準値、残余需要及び目標値の大小関係によって特定される。従って、基準値、残余需要及び目標値の大小関係によっては、電力Dがゼロであるケースも想定され、電力E及び電力Fがゼロであるケースも想定される。
【0087】
図8に示すケースでは、電力Dは、蓄電装置120の充電を中止し、蓄電装置120の放電を実行すること(蓄電装置120の放電電力を増大すること)によって捻出される調整可能電力である。電力Eは、蓄電装置120の放電電力を増大することによって捻出される調整可能電力である。電力Fは、蓄電装置120の放電電力を増大することによって捻出される調整可能電力である。
【0088】
図9に示すように、残余需要が逆潮流電力であるケース、すなわち、施設100の発電電力が施設100の消費電力よりも大きいケースでは、逆潮流が生じているため、電力Eは、電力Fよりも大きな値である。
【0089】
電力D、電力E及び電力Fは、基準値、残余需要及び目標値の大小関係によって特定される。従って、基準値、残余需要及び目標値の大小関係によっては、電力Dがゼロであるケースも想定され、電力Eがゼロであるケースも想定され、電力Fがゼロであるケースも想定される。
【0090】
図9に示すケースでは、電力Dは、蓄電装置120の充電を減少することによって捻出される調整可能電力である。電力Eは、蓄電装置120の充電を中止し、蓄電装置120の放電を実行すること(蓄電装置120の放電電力を増大すること)によって捻出される調整可能電力である。電力Fは、蓄電装置120の放電を実行すること(蓄電装置120の放電電力を増大すること)によって捻出される調整可能電力である。
【0091】
実施形態では、電力系統12の電力需給バランスの調整にRAが利用可能な機器が蓄電装置120であるケースについて例示する。すなわち、蓄電装置120に関する権利者(例えば、蓄電装置120の制御権に関する契約主体)がRAであるケースについて例示する。また、順潮流電力に関する権利者(順潮流電力の販売主体)がAEMS又はACなどの小売電気事業者であるケースについて例示する。
【0092】
このようなケースにおいて、余剰電力に寄与する発電装置(例えば、太陽電池装置110)に関する権利者(例えば、発電装置の制御権に関する契約主体)が、蓄電装置120に関する権利者(例えば、蓄電装置120の制御権に関する契約主体(RA))と異なるケースについても想定する必要がある。例えば、太陽電池装置110によって捻出される余剰電力に固定価格買(FIT; Feed-in-Tariff)制度が適用されるケースなどのように、余剰電力の買取主体がRAではないケースなどが想定される。
【0093】
このように、余剰電力に寄与する発電装置に関する権利者がRAではないケースでは、逆潮流が生じている状態における余剰電力(図7又は図9)がRAに帰属しないため、調整可能電力に余剰電力を含めることができない。
【0094】
例えば、VPPコントローラは、発電装置(例えば、太陽電池装置110)及び蓄電装置120に関する権利者を特定するための契約情報を施設100から受信してもよい。VPPコントローラは、契約情報に基づいて、調整可能電力を補正してもよい。例えば、VPPコントローラは、逆潮流が生じている状態における余剰電力がゼロとなるように調整可能電力(図7に示す電力B又は図9に示す電力E)を補正してもよい。
【0095】
一方で、余剰電力に寄与する発電装置に関する権利者がRAであるケースでは、余剰電力をゼロにするように調整可能電力を補正する動作を実行する必要はない。
【0096】
なお、発電装置(例えば、太陽電池装置110)及び蓄電装置120に関する権利者を特定するための契約情報をRAが把握している場合には、調整可能電力の補正をRAで実行することが可能であるため、VPPコントローラは、調整可能電力の補正を実行する必要がない。従って、VPPコントローラは、契約情報を施設100から受信しなくてもよい。
【0097】
(電力管理方法)
以下において、実施形態に係る電力管理方法について説明する。以下においては、VPPコントローラは、下位管理サーバ200がVPPサービスの連携機能を有する場合には、下位管理サーバ200(第2サーバ)及びEMS160によって構成されてもよい。RAは、RAとして機能する下位管理サーバ200(第1サーバ)によって構成されてもよい。
【0098】
第1に、発電装置(例えば、太陽電池装置110)、蓄電装置120及び順潮流電力に関する権利者を特定するための契約情報をRAが把握するケースについて説明する。
【0099】
図10に示すように、ステップS10において、RAは、発電装置(例えば、太陽電池装置110)、蓄電装置120及び順潮流電力に関する権利者を特定するための契約情報をAC(上位管理サーバ300)から受信する。
【0100】
ステップS11において、RAは、対象期間よりも前のタイミング(例えば、対象期間の前日の12:00)に策定される計画(事前計画値)をVPPコントローラから受信する。事前計画値は、調達電力に関する計画値及び発電電力に関する計画値を含んでもよい。
【0101】
ステップS12において、RAは、VPPコントローラから受信する事前計画値をACに送信する。
【0102】
ステップS21において、RAは、調整可能電力に関するレポートを要求するレポート要求をVPPコントローラに送信する。
【0103】
ステップS22において、VPPコントローラは、調整可能電力に関するレポートをRAに送信する。調整可能電力に関するレポートは、調整可能電力情報の一例である。
【0104】
上述したように、調整可能電力情報は、調整可能電力情報は、調整可能電力が施設100の需要電力を上げる電力であるか下げる電力であるか、調整可能電力が電力系統12への逆潮流電力を含むか否か、及び、調整可能電力が余剰電力を含む否かを区別可能な態様で調整可能電力を示す情報である。言い換えると、上げDR対応に関する調整可能電力情報は、電力Aを示す第1情報と、電力Bを示す第2情報と、電力Cを示す第3情報と、を区別可能な態様で含んでもよい。下げDR対応に関する調整可能電力情報は、電力Dを示す第4情報と、電力Eを示す第5情報と、電力Fを示す第6情報と、を区別可能な態様で含んでもよい。
【0105】
ここで、VPPコントローラは、レポート要求によらずに自律的にレポート(調整可能電力情報)を送信してもよい。VPPコントローラは、レポート(調整可能電力情報)を定期的に送信してもよい。このようなケースにおいて、ステップS21は省略されてもよい。
【0106】
ステップS23において、RAは、契約情報に基づいて、調整可能電力を補正する。例えば、RAは、余剰電力に寄与する発電装置(例えば、太陽電池装置110)に関する権利者がRAではない場合に、余剰電力がゼロとなるように調整可能電力(図7に示す電力B又は図9に示す電力E)を補正してもよい。一方で、RAは、余剰電力に寄与する発電装置(例えば、太陽電池装置110)に関する権利者がRAである場合に、調整可能電力(図7に示す電力B又は図9に示す電力E)を補正する必要がない。
【0107】
ステップS31において、RAは、電力系統12の電力需給バランスを調整するためのDR要請をACから受信する。
【0108】
ステップS32において、RAは、調整可能電力に基づいて、施設100の各々で調整すべき個別調整電力を割り当てる。下位管理サーバ200は、施設100の各々で調整すべき個別調整電力の合計がDR要請に含まれる要請調整電力以上となるように、施設100の各々で調整すべき個別調整電力を割り当てる。
【0109】
ステップS33において、RAは、ステップS32の割当結果に応じて、蓄電装置120の充電又は放電を指示する制御指令をVPPコントローラに送信する。
【0110】
ステップS34において、VPPコントローラは、ステップS33で受信する制御指令を施設100(蓄電装置120)に送信する。
【0111】
ステップS41において、施設100(蓄電装置120)は、制御指令に基づいた制御結果をRAに送信する。
【0112】
ステップS42において、RAは、施設100から受信する制御結果をACに送信する。
【0113】
なお、制御結果は、制御指令に基づいた蓄電装置120の充電電力又は放電電力を示す情報を含んでもよい。制御結果は、制御指令に基づいた蓄電装置120の充電又は放電の結果として、施設100の順潮流電力又は逆潮流電力を示す情報を含んでもよい。制御結果は、単位期間(例えば、30分)毎の情報であってもよい。
【0114】
第2に、発電装置(例えば、太陽電池装置110)、蓄電装置120及び順潮流電力に関する権利者を特定するための契約情報をRAが把握しないケースについて説明する。図11では、図10と同様の処理については同様のステップ番号を付している。図11では、上述したステップS10及びステップS23に代えて、ステップS10X及びステップS23Xが実行される。
【0115】
図10では、RAが契約情報をAC(上位管理サーバ300)から受信するケースについて例示した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、RAは、契約情報をVPPコントローラから受信してもよい。言い換えると、VPPコントローラは、契約情報をRAに送信してもよい。
【0116】
図11に示すように、ステップS10Xにおいて、VPPコントローラは、発電装置(例えば、太陽電池装置110)、蓄電装置120及び順潮流電力に関する権利者を特定するための契約情報を施設100から受信する。契約情報は、VPPコントローラからの要求に応じて施設100から送信されてもよく、VPPコントローラからの要求によらずに施設100から自律的に送信されてもよい。
【0117】
ステップS23Xにおいて、VPPコントローラは、契約情報に基づいて、調整可能電力を補正する。例えば、VPPコントローラは、余剰電力に寄与する発電装置(例えば、太陽電池装置110)に関する権利者がRAではない場合に、余剰電力がゼロとなるように調整可能電力(図7に示す電力B又は図9に示す電力E)を補正してもよい。一方で、VPPコントローラは、余剰電力に寄与する発電装置(例えば、太陽電池装置110)に関する権利者がRAである場合に、調整可能電力(図7に示す電力B又は図9に示す電力E)を補正する必要がない。
【0118】
図11では特に触れていないが、VPPコントローラは、施設100から受信する契約情報をRAに送信してもよい。
【0119】
(作用及び効果)
実施形態では、VPPコントローラは、調整可能電力が施設100の需要電力を上げる電力であるか下げる電力であるか、調整可能電力が電力系統12への逆潮流電力を含むか否かを区別可能な態様で、調整可能電力情報をRAに送信する。このような構成によれば、蓄電装置120の制御による施設100の需要電力及び施設100の需要電力(調達電力)への影響を考慮しながら、VPP制御(電力系統に関する電力)を適切に制御することができる。
【0120】
実施形態では、VPPコントローラは、調整可能電力が余剰電力を含むか否かを区別可能な態様で、調整可能電力情報をRAに送信する。このような構成によれば、余剰電力に寄与する発電装置(例えば、太陽電池装置110)に関する権利者がRAではないケースを想定した場合であっても、VPPコントローラ又はRAにおいて調整可能電力から余剰電力を除外することが可能であり、VPP制御(インバランスの調整)を適切に実行することができる。言い換えると、VPPコントローラは、逆潮流電力が発電装置の発電電力に起因するものであるか蓄電装置120の制御(放電電力の増大又は充電電力の減少)に起因するものであるかを区別することができる。
【0121】
実施形態では、VPPコントローラは、契約情報を受信してもよく、契約情報に基づいて調整可能電力を補正してもよい。このような構成によれば、VPPコントローラは、調整可能電力から余剰電力を除外する補正を適切に実行することができる。
【0122】
例えば、施設100に既に設置された太陽電池装置110がRA以外の権利者に帰属する状態において、RAが権利者である蓄電装置120を新たに導入するケースにおいて、蓄電装置120を用いたPP制御(インバランスの調整)を適切に実行することができる。
【0123】
[その他の実施形態]
本発明は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0124】
上述した開示では、RAは、契約情報をACから受信するケースについて例示した。しかしながら、上述した開示はこれに限定されるものではない。契約情報は、RAに予め登録されてもよい。
【0125】
上述した開示では、VPPコントローラは、契約情報を施設100から受信するケースについて例示した。しかしながら、上述した開示はこれに限定されるものではない。契約情報は、VPPコントローラに予め登録されてもよい。
【0126】
上述した開示では、蓄電装置120に関する権利者がRAであるケースについて例示した。しかしながら、上述した開示はこれに限定されるものではない。例えば、余剰電力に寄与する発電装置(例えば、太陽電池装置110)に関する権利者は、順潮流電力に関する権利者(例えば、AEMS又はACなどの小売電気事業者)であってもよい。このようなケースにおいては、AEMS又はACなどから委託されてRA又はVPPコントローラが動作する場合には、蓄電装置120の制御に起因する電力が調整可能電力から除外されてもよい。すなわち、調整可能電力は、余剰電力のみであると考えてもよい。例えば、図7に示す電力Bから電力Cが除外されてもよい。図9に示す電力Eについて電力Fが除外されてもよい。
【0127】
上述した開示において、契約情報は、発電装置(例えば、太陽電池装置110)、蓄電装置120及び順潮流電力の少なくともいずれか1つに関する権利者を特定するための情報を含めばよい。
【0128】
上述した開示では、余剰電力に寄与する発電装置として太陽電池装置110を主として例示した。しかしながら、上述した開示はこれに限定されるものではない。余剰電力に寄与する発電装置は、燃料電池装置130を含んでもよい。
【0129】
上述した開示において、VPP制御に用いる分散電源が蓄電装置120であるケースについて例示した。しかしながら、上述した開示はこれに限定されるものではない。VPP制御に用いる分散電源は、太陽電池装置110、燃料電池装置130などを含んでもよい。VPP制御に用いる分散電源は、風力発電装置、地熱発電装置などを含んでもよい。
【0130】
上述した開示において、VPP制御に用いる分散電源は、蓄電装置120及びEMS160を含む分散電源システムと読み替えられてもよい。
【0131】
上述した開示では、主として発電電力という用語を用いたが、発電電力は、逆潮流電力と読み替えてもよい。
【0132】
上述した開示では、主として調達電力という用語を用いたが、調達電力は、順潮流電力と読み替えてもよい。調達電力は、施設群100の順潮流電力について用いる用語であり、需要電力は、施設100の各々の順潮流電力について用いる用語であると考えてもよい。
【0133】
上述した開示では特に触れていないが、VPPコントローラと蓄電装置120との間の通信は、ECHONET Lite(登録商標)に準拠する方式で実行されてもよい。
【0134】
上述した開示では特に触れていないが、電力は、瞬時値(W/kW)で表されてもよく、単位時間の積算値(Wh/kWh)で表されてもよい。
【0135】
上述した開示では特に触れていないが、下位管理サーバ200が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。
【0136】
或いは、下位管理サーバ200が行う各処理を実行するためのプログラムを記憶するメモリ及びメモリに記憶されたプログラムを実行するプロセッサによって構成されるチップが提供されてもよい。
【0137】
[付記]
上述した開示は以下のように表されてもよい。
第1の特徴は、電力系統に接続される施設に設置される蓄電装置を制御する制御部と、前記電力系統の電力需給バランスを調整するための調整可能電力を示す調整可能電力情報を上位ノードに送信する送信部と、を備え、前記調整可能電力情報は、前記調整可能電力が前記施設の需要電力を上げる電力であるか下げる電力であるか、前記調整可能電力が前記電力系統への逆潮流電力を含むか否か、及び、前記調整可能電力が余剰電力を含む否かを区別可能な態様で前記調整可能電力を示す情報であり、前記余剰電力は、前記施設に設置される発電装置の発電電力と前記施設の消費電力との差異である、電力管理装置である。
【0138】
第2の特徴は、第1の特徴において、記調整可能電力が前記施設の需要電力を上げる電力である場合に、前記調整可能電力情報は、前記調整可能電力が前記電力系統への逆潮流電力を含まない電力を示す第1情報と、前記調整可能電力が前記電力系統への逆潮流電力を含み、かつ、前記調整可能電力が前記余剰電力を含む電力を示す第2情報と、前記調整可能電力が前記電力系統への逆潮流電力を含み、かつ、前記調整可能電力が前記余剰電力を含まない電力を示す第3情報と、区別可能な態様で含む、電力管理装置である。
【0139】
第3の特徴は、第1の特徴又は第2の特徴において、前記調整可能電力が前記施設の需要電力を下げる電力である場合に、前記調整可能電力情報は、前記調整可能電力が前記電力系統への逆潮流電力を含まない電力を示す第4情報と、前記調整可能電力が前記電力系統への逆潮流電力を含み、かつ、前記調整可能電力が前記余剰電力を含む電力を示す第5情報と、前記調整可能電力が前記電力系統への逆潮流電力を含み、かつ、前記調整可能電力が前記余剰電力を含まない電力を示す第6情報と、を区別可能な態様で含む、電力管理装置である。
【0140】
第4の特徴は、第1の特徴乃至第3の特徴のいずれか1つにおいて、前記発電装置、前記蓄電装置及び前記電力系統からの順潮流電力の少なくともいずれか1つに関する権利者を特定するための契約情報を前記施設から受信する受信部を備える、電力管理装置である。
【0141】
第5の特徴は、第1の特徴乃至第4の特徴のいずれか1つにおいて、前記制御部は、前記発電装置、前記蓄電装置及び前記電力系統からの順潮流電力の少なくともいずれか1つに関する権利者を特定するための契約情報に基づいて、前記調整可能電力の補正を実行する、電力管理装置である。
【0142】
第6の特徴は、第1の特徴乃至第5の特徴のいずれか1つにおいて、前記送信部は、前記発電装置、前記蓄電装置及び前記電力系統からの順潮流電力の少なくともいずれか1つに関する権利者を特定するための契約情報を前記上位ノードに送信する、電力管理装置である。
【0143】
第7の特徴は、電力系統に接続される施設に設置される蓄電装置を制御するステップAと、前記電力系統の電力需給バランスを調整するための調整可能電力を示す調整可能電力情報を上位ノードに送信するステップBと、を備え、前記調整可能電力情報は、前記調整可能電力が前記施設の需要電力を上げる電力であるか下げる電力であるか、前記調整可能電力が前記電力系統への逆潮流電力を含むか否か、及び、前記調整可能電力が余剰電力を含む否かを区別可能な態様で前記調整可能電力を示す情報であり、前記余剰電力は、前記施設に設置される発電装置の発電電力と前記施設の消費電力との差異である、電力管理方法である。
【符号の説明】
【0144】
1…電力管理システム、11…ネットワーク、12…電力系統、100…施設、110…太陽電池装置、120…蓄電装置、130…燃料電池装置、140…負荷機器、160…EMS、161…第1通信部、162…第2通信部、163…制御部、190…測定装置、200…下位管理サーバ、210…通信部、220…管理部、230…制御部、300…上位管理サーバ、310…通信部、320…管理部、330…制御部、400…第三者サーバ
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