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特許7480250回転シール冷却構造、加熱装置、および回転シール冷却方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】回転シール冷却構造、加熱装置、および回転シール冷却方法
(51)【国際特許分類】
   F27B 7/24 20060101AFI20240430BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
F27B7/24
F27D7/06 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022168224
(22)【出願日】2022-10-20
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】504298291
【氏名又は名称】月島機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 澄人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】今村 卓哉
【審査官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-040987(JP,A)
【文献】特開2003-262318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 5/00-7/42
F26B 11/04
F26B 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の一端側に向けて外部に開放された空間を有する二重構造部を前記一端側の外周縁部に備え前記回転軸の回りに回転可能な円筒体と、
前記二重構造部に前記円筒体の径方向の外側から接触する摺動面を備えるとともに前記円筒体と前記摺動面との間を回転可能にシールする回転シールと、
前記二重構造部に冷却流体を噴射するノズルと、
を備えることを特徴とする回転シール冷却構造。
【請求項2】
前記二重構造部は、前記冷却流体を前記径方向の外側から前記径方向の内側に向けて案内するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転シール冷却構造。
【請求項3】
前記ノズルが、前記円筒体の周方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転シール冷却構造。
【請求項4】
前記冷却流体が、水、空気、又は水と空気の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の回転シール冷却構造。
【請求項5】
前記ノズルがスプレーノズルであることを特徴とする請求項1に記載の回転シール冷却構造。
【請求項6】
前記二重構造部の中を前記径方向に延びて前記二重構造部の中を前記円筒体の周方向に区画する流路壁が前記周方向に複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転シール冷却構造。
【請求項7】
前記二重構造部の中に前記回転軸に対して傾斜した方向に延びるフィンを前記円筒体の周方向に複数設けることを特徴とする請求項1に記載の回転シール冷却構造。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の回転シール冷却構造を備えるとともに前記円筒体内に投入される被処理物を加熱することを特徴とする加熱装置。
【請求項9】
回転軸の一端側に向けて外部に開放された空間を有する二重構造部を前記一端側の外周縁部に備え前記回転軸の回りに回転可能な円筒体と、
前記二重構造部に前記円筒体の径方向の外側から接触する摺動面を備えるとともに前記円筒体と前記摺動面との間を回転可能にシールする回転シールと、
前記二重構造部に冷却流体を噴射するノズルと、
を備える回転シール冷却構造を使用して、
前記ノズルから前記二重構造部に前記冷却流体を噴射することを特徴とする回転シール冷却方法。
【請求項10】
噴射した前記冷却流体を前記二重構造部の中で前記径方向の外側から前記径方向の内側に向けて案内することを特徴とする請求項9に記載の回転シール冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転シール冷却構造、加熱装置、および回転シール冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリーキルン及びスチームチューブドライヤといった水平軸から僅かに傾斜させた中心軸回りに回転する円筒体の中に被処理物を投入して、円筒体の一端から他端に向けて被処理物を移動させながら加熱するロータリ型加熱機が知られている(特許文献1)。
【0003】
ロータリ型加熱機の高温部を回転可能にシールする回転シールにおいて、回転シールを熱から保護するために、回転するロータリ型加熱機に接触している回転シールの高温側の接触面(摺動面)を二重構造(密閉ジャケット構造など)として、この二重構造に水や空気などの冷却媒体を流通させる技術が知られている(特許文献2、特許文献3)。
【0004】
このような回転シールの高温側の接触面は、回転している高温の円筒体に接触しているため高温になる部位である。そのため、この部位の温度を回転シールのシール材料の耐熱温度(例えば150℃)以下にする必要がある。回転シールの高温側の接触面を二重構造(密閉ジャケット構造など)として、回転している円筒体に対して固定側の回転シールとの接触面に水や空気などの冷却媒体を流通することで冷却を行なう従来の方法では、回転シールを十分効果的に冷却できなかった。固定側の回転シールを冷却する密閉ジャケット構造などの従来の方法で回転側を冷却することは、構造の複雑化を伴い、実現は難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-287369号公報
【文献】特許第3862219号明細書
【文献】特開2003-190770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景の下になされ、簡易な構造で回転シールの摺動面の回転側を冷却可能な回転シール冷却構造、加熱装置、および回転シール冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の第1の態様は、回転軸の一端側に向けて外部に開放された空間を有する二重構造部を前記一端側の外周縁部に備え前記回転軸の回りに回転可能な円筒体と、前記二重構造部に前記円筒体の径方向の外側から接触する摺動面を備えるとともに前記円筒体と前記摺動面との間を回転可能にシールする回転シールと、前記二重構造部に冷却流体を噴射するノズルと、を備えることを特徴とする回転シール冷却構造である。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、円筒体の外周縁部に設けられた二重構造部を冷却流体で冷却することができるため、二重構造部に接触する回転シールの摺動面を径方向の内側から冷却することができる。そのため、簡易な構造で回転シールを冷却することができ、回転シールの寿命を延ばし、シール交換頻度を低減可能である。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記二重構造部は、前記冷却流体を前記径方向の外側から前記径方向の内側に向けて案内するように構成されていることを特徴とする回転シール冷却構造である。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、冷却流体が径方向の外側から径方向の内側に向けて二重構造部の中を流れるので、二重構造部に接触する回転シールの摺動面の冷却効果を高めることができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様において、前記ノズルが、前記円筒体の周方向に沿って複数設けられていることを特徴とする回転シール冷却構造である。
【0012】
本発明の第3の態様によれば、径の大きな回転シールを使用した場合でも、回転シールを周方向に均一に冷却することができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様において、前記冷却流体が、水、空気、又は水と空気の混合物であることを特徴とする回転シール冷却構造である。
【0014】
本発明の第4の態様によれば、回転シール冷却構造から排出される冷却流体が地球環境を汚染する可能性を排除しながら回転シールの摺動面の冷却効果を高めることができる。
【0015】
本発明の第5の態様は、第4の態様において、前記ノズルがスプレーノズルであることを特徴とする回転シール冷却構造である。
【0016】
本発明の第5の態様によれば、冷却流体をミスト状に噴霧し、高い冷却効果を得ることができる。
【0017】
本発明の第6の態様は、第1から第5のいずれか一つの態様において、前記二重構造部の中を前記径方向に延びて前記二重構造部の中を前記円筒体の周方向に区画する流路壁が前記周方向に複数設けられることを特徴とする回転シール冷却構造である。
【0018】
本発明の第6の態様によれば、冷却流体を二重構造部内に均一に流すことができ、回転シールの摺動面を周方向に均一に冷却することができる。
【0019】
本発明の第7の態様は、第1から第6のいずれか一つの態様において、前記二重構造部の中に前記回転軸に対して傾斜した方向に延びるフィンを前記円筒体の周方向に複数設けることを特徴とする回転シール冷却構造である。
【0020】
本発明の第7の態様によれば、冷却流体との接触面積を増やすことができ、回転シールの摺動面の冷却効率を高めることができる。
【0021】
本発明の第8の態様は、第1から第7のいずれか一つの態様に係る回転シール冷却構造を備えるとともに前記円筒体の中に投入される被処理物を加熱することを特徴とする加熱装置である。
【0022】
本発明の第8の態様によれば、回転シールの寿命を延ばし、シール交換頻度を低減させた加熱装置を提供することができる。
【0023】
本発明の第9の態様は、回転軸の一端側に向けて外部に開放された空間を有する二重構造部を外周縁部に備え前記回転軸の回りに回転可能な円筒体と、前記二重構造部に前記円筒体の径方向の外側から接触する摺動面を備えるとともに前記円筒体と前記摺動面との間を回転可能にシールする回転シールと、前記二重構造部に冷却流体を噴射するノズルと、を備える回転シール冷却構造を使用して、前記ノズルから前記二重構造部に前記冷却流体を噴射することを特徴とする回転シール冷却方法。
【0024】
本発明の第9の態様によれば、円筒体の外周縁部を冷却流体で冷却することができるため、回転シールの摺動面を径方向の内側から冷却することができる。そのため、簡易な構造で回転シールを冷却することができ、回転シールの寿命を延ばし、シール交換頻度を低減可能である。
【0025】
本発明の第10の態様は、第9の態様において、噴射した前記冷却流体を前記二重構造部の中で前記径方向の外側から前記径方向の内側に向けて案内することを特徴とする回転シール冷却方法。
【0026】
本発明の第10の態様によれば、冷却流体が径方向の外側から径方向の内側に向けて二重構造部内を流れるので、二重構造部に接触する回転シールの摺動面の冷却効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、簡易な構造で回転シールの摺動面の回転側を冷却可能な回転シール冷却構造、加熱装置、および回転シール冷却方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係わる第1実施形態の回転シール冷却構造の概略斜視図である。
図2】本発明に係わる第1実施形態の回転シール冷却構造の要部概略斜視図である。
図3】本発明に係わる第1実施形態の回転シール冷却構造の要部斜視断面図である。
図4】本発明に係わる回転シール冷却構造の概念図である。
図5】従来技術の回転シール冷却構造の概念図である。
図6】本発明に係わる第1実施形態の変形例の回転シール冷却構造の要部斜視断面図である。
図7】本発明に係わる第1実施形態の変形例の回転シール冷却構造の要部斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の第1実施形態に係る回転シール冷却構造S1を、図面を参照しながら説明する。
【0030】
図1は、本発明に係わる第1実施形態の回転シール冷却構造S1を備える加熱装置Wの概略斜視図である。より具体的には、図1は、回転シール冷却構造S1と、回転シール冷却構造S1と同様の構造を備えるとともに外径がより大きい回転シール冷却構造S2と、回転可能な円筒体100と、を備える加熱装置Wを示している。
加熱装置Wは、円筒体100内に不図示の投入口から投入される被処理物を円筒体100内に設けられる伝熱管等の熱源で加熱するとともに円筒体100を回転させながら円筒体100の他端側から一端側に移動させる装置である。ここで、円筒体100の回転軸Lは、円筒体100に一端側(図1の右側)が円筒体100の他端側よりも下側となるように水平面に対して傾斜して設けられている。そのため、円筒体100の他端側(図1の左側)に投入された被処理物は、回転する円筒体100内を円筒体100の一端側(図1の右側)に移動し、円筒体100の一端側に設けられる出口Eから外部に排出される。ここで、図1図2図3において、右側を回転軸Lの一端側と表記し、左側を回転軸Lの他端側と表記する。
本発明の第1実施形態では、回転シール冷却構造S1と回転シール冷却構造S2とは外径のみが異なるので、以下の説明では、回転シール冷却構造S1の構造を代表して説明する。
【0031】
図2は、本発明に係わる第1実施形態の回転シール冷却構造S1の要部概略斜視図である。図3は、本発明に係わる第1実施形態の回転シール冷却構造S1の要部斜視断面図である。
【0032】
回転シール冷却構造S1は、回転可能な円筒体100の回転軸Lの一端側であり円筒体100の外周縁部に設けられる二重構造部D、二重構造部Dに円筒体100の径方向の外側から接触する摺動面15を備えるとともに円筒体100と摺動面15との間を回転可能に気密にシールする回転シール5と、二重構造部Dに冷却流体を噴射するノズル1と、を備える。ここで、円筒体100の径方向とは、円筒体100の回転軸Lに垂直な方向、即ち、円筒体100の回転軸Lから円筒体100の半径が延びる方向である。以下の説明において、円筒体100の径方向を、単に径方向と称する場合がある。
【0033】
円筒体100は、接地面から僅かに傾斜した中心軸Lを中心に回転可能な円筒状の部材である。円筒体100は金属から形成されている。また円筒体100の中には、不図示の伝熱管等の熱源が設けられており、不図示の熱媒供給源から熱媒が供給されることで、加熱され高温となる。なお、熱媒としては、温水や蒸気、熱媒油などが使用される。
【0034】
円筒体100の回転軸Lの一端側の外周縁部には、回転軸Lの一端側に向けて外部に開放された空間Vを有する二重構造部Dが設けられている。空間Vは、図3において、第1円筒壁10と第1円筒壁10より径方向の外側に設けられる第2円筒壁8との間に存在する空間である。空間Vは、第2円筒壁8から径方向の内側に延びる複数の支持体4により支持された円筒仕切壁9により径方向の外側(図3においては上側であり、以下上側と称する場合がある)と径方向の内側(図3においては下側であり、以下下側と称する場合がある)とに区画されている。円筒仕切壁9は、空間Vの最も他端側にある第1他端側壁13と第2他端側壁14とに連結されていないため、空間Vの径方向の外側と径方向の内側は空間Vの他端側で繋がっている。そのため、空間Vの径方向の外側と径方向の内側との間を流体は移動可能である。
【0035】
二重構造部Dの径方向の外側には、摺動面15を備える回転シール5が設けられており、回転シール5は、二重構造部Dの径方向の外側と摺動面15との間を回転可能にシールする。なお、加熱装置Wには、円筒体100の長さ方向の複数個所を下方から回転可能に支持する不図示の基台が設けられている。
回転シール5はVパッキン(Vリング)等の公知のシール部材であり例えばゴム材料等の弾性部材から形成されている。回転シール5は、径方向の内側の摺動面15が接する円筒体100の二重構造部Dの最外周面16と径方向の外側の第2シール固定円筒壁7とにより径方向に挟持されるとともに、第1シール固定円筒壁6により回転軸L方向に固定されている。
【0036】
ノズル1は、冷却流体供給管路2を介して供給される冷却流体を開口3から二重構造部Dの開放された空間Vに向かって噴射する。図2に示されるように、ノズル1の開口3は、二重構造部Dの開放された空間Vに向けて開口している。より具体的には、ノズル1の開口3は、円筒仕切壁9により区画された空間Vのうちの上側に噴射される。空間Vの上側に噴射された冷却流体は、図3の矢印Fが示す軌跡に沿って、回転軸Lの他端側に向かって進み、第1他端側壁13と第2他端側壁14に衝突して進行方向を径方向の内側に変えて空間Vの下側に移動し、さらに、空間Vの下側を回転軸Lの一端側に進み、外部に放出される。
ノズル1は円筒体100の周方向に複数(2個以上)設けられている。そのため、冷却流体を二重構造部Dに、円筒体100の周方向に均一に流すことができる。さらに、ノズル1を周方向に複数設けることで、径の大きな回転シール5を使用した場合でも、回転シールを周方向に均一に冷却することができる。ここで、円筒体100の周方向とは、円筒体100が回転軸Lを中心として周回する方向、即ち、円筒体100の接線が延びる方向である。以下の説明において、円筒体100の周方向を、単に周方向と称する場合がある。
【0037】
ここで、円筒体100の径方向の内側に不図示の伝熱管等の熱源が設けられているため、円筒体100は径方向の内側ほど高温になっている。そのため、ノズル1から冷却流体を噴射し、冷却流体を二重構造部Dの中に流すことで、二重構造部Dと冷却流体とが互いに接触する。二重構造部Dと冷却流体とが互いに接触することで、高温側の二重構造部Dから低温側の冷却流体へ熱交換により熱が移動する。そのため、二重構造部Dに径方向の外側から摺動面15が接触している回転シール5のシール部材を冷却することができる。これにより、熱によるシール部材の劣化、これに伴う回転シール5の寿命の短縮を防止することができる。
【0038】
ここで、冷却流体を空間Vの上側に噴射しているが、これは冷却したい対象である回転シール5に、高温側の二重構造部Dから十分に熱を受け取る前の冷却流体を接触させて、回転シール5の冷却効果を高めるためである。従って、二重構造部Dが冷却流体を径方向の外側から前記径方向の内側に向けて案内するように構成されているため、回転シール5の冷却効果を高めることができる。
【0039】
図4は、本発明の第1実施形態の回転シール冷却構造S1の概念図である。図5は、従来技術の回転シール冷却構造の概念図である。従来技術では、回転シール5’の径方向の外側に冷却水Cを流通させることで回転シール5’を径方向の外側から冷却していた。一方、本発明の第1実施形態の回転シール冷却構造S1では、回転シール5を径方向の内側から冷却することができる。図4図5に示す符号Rtよりも径方向の内側は回転方向R向きに回転し、符号Fixよりも径方向の外側は固定された箇所であることを示している。そのため、図4の回転シール5の径方向の内側が回転シール5の摺動面15となる。摺動面15において、高温の円筒体100の二重構造部Dが回転シール5に接触するため、回転シール5は径方向の内側の摺動面15が最も高温となる。そのため、本実施形態の回転シール冷却構造S1のように、回転シール5を径方向の内側から冷却することで、回転シール5を最も効果的に冷却することができる。さらに、本実施形態の回転シール冷却構造S1では、回転する円筒体100の回転軸の一端側に向けて外部に開放された空間Vを有する二重構造部Dに冷却流体を噴射するという簡易な構造で回転シール5を冷却することができる。これにより、回転シール5の寿命を延ばし、シール交換頻度を下げることができる。一方、従来技術では、回転シール5’を径方向の外側から冷却するため、最も高温となる回転シール5’の径方向の内側の摺動面を効果的に冷却することができない。
【0040】
ここで、本実施形態で使用する冷却流体は、空気、水、又は空気と水の混合物である。空気のみを冷却流体として使用する場合と比較して、水や、空気と水の混合物を使用した場合は、高温の円筒体100の二重構造部Dから冷却流体への熱交換に加え、水の蒸発潜熱による冷却により、さらに効率の良い回転シール5の冷却を行うことができる。冷却流体である水や、空気と水の混合物を、ノズル1にスプレーノズルを用いてミスト状として噴射させても良い。冷却流体をミスト状に噴霧することで、高い冷却効果を得ることができる。この場合、ノズル1は、図4に示す二流体ノズルNのノズルであっても良い。
【0041】
より具体的には、熱源の温度が250℃である場合、冷却流体として常温の圧縮空気を風量約60Nm/hで噴射すると、摺動面15の温度を約85~110℃とすることができる。一方、熱源の温度が250℃である場合、二流体ノズルNを使用して、冷却流体として圧縮空気を風量約5Nm/hで噴射するとともに水を約5L/hで噴射すると、摺動面15の温度を約90~110℃とすることができる。即ち、冷却流体として圧縮空気のみを使用する場合に比べて、冷却流体として圧縮空気と水を使用する場合は、より少ない冷却流体の噴射量で、冷却流体として圧縮流体のみを使用する場合と同等の冷却効果を得ることができる。ここで、噴射する水の量としては、噴射された水が、二重構造部Dの中で全て気化される程度の量が好ましい。
【0042】
上記のような第1実施形態に係る回転シール冷却構造S1を使用して冷却流体として圧縮空気を風量約60Nm/hで噴射する場合、熱源の温度が250℃である時、摺動面15を約100℃とすることができる。一方、第1実施形態に係る回転シール冷却構造S1を使用して冷却流体を噴射しない場合、熱源の温度が250℃である時、摺動面15の温度は約140℃である。
よって、第1実施形態に係る回転シール冷却構造S1を使用することで、摺動面15を効果的に冷却することができ、シール材料を十分に耐熱温度(例えば150℃以下)に冷却することができる。これにより、簡易な構造で回転シール5を冷却することができ、回転シール5の寿命を延ばし、シール交換頻度を低減可能である。
【0043】
<第1実施形態の第1変形例>
図6は、本発明に係わる第1実施形態の第1変形例の回転シール冷却構造S1’の要部斜視断面図である。第1実施形態と同様の構造には共通の参照番号を付し、その説明を省略し、第1実施形態と異なる点のみを説明する。なお、図6では、二重構造部D’が設けられる回転側のみが表示されており、固定側の回転シール5は表示されていない。
【0044】
回転シール冷却構造S1’では、空間Vの上側において径方向に延びるフィン21と、空間Vの下側において径方向に延びるフィン20と、が設けられている。このようなフィン20,21を備える二重構造部D’においては、二重構造部D’に噴射された冷却流体は、回転軸の一端側から他端側に向かってフィン21の間を矢印F1で示す方向に流れ、その後、冷却流体は、第1他端側壁13と第2他端側壁14に衝突して進行方向を径方向の内側に変えて空間Vの下側に移動し、さらに、空間Vの下側を矢印F1で示す方向に向けて回転軸Lの一端側に進み、外部に放出される。
【0045】
フィン20,21を設けることで冷却流体と接触する二重構造部D’の表面積が増える。そのため、冷却流体と二重構造部Dとの接触面積を増大させることができる。よって、冷却流体と二重構造部Dとの熱交換を効率よく行うことができ、回転シール5の冷却を効率良く行うことができる。
ここで、フィン20,21は、回転軸Lに対して傾斜して設けられている。そのため、傾斜角が無い場合よりも、フィンの長さを長くすることができ、フィン20,21の表面積をさらに増大させることができる。このような回転シール冷却構造S1’においては、冷却流体と二重構造部Dとの接触面積をさらに増大させることができるため、冷却流体と二重構造部Dとの熱交換をさらに効率よく行うことができ、回転シール5の冷却をさらに効率良く行うことができる。
なお、フィン21が設けられる第2円筒壁8と、フィン20が設けられる第1円筒壁10と、が周方向に複数分割されていても良い。そのような場合、二重構造部D’の組立や分解が容易となる。
【0046】
ここで、第1変形例では、回転軸Lに対する、フィン20とフィン21の傾斜方向が互いに交差するように異なっている。そのため、フィン20とフィン21との境目に設けられる円筒仕切壁9よりも一端側において、フィン20の間を流れる冷却流体と、フィン21の間を流れる冷却流体とが交差することにより流れが乱れて乱流が発生する。この乱流を発生させることにより、冷却流体と二重構造部Dとの熱交換をさらに効率よく行うことができ、回転シール5の冷却をさらに効率良く行うことができる。
【0047】
第1実施形態の第1変形例の回転シール冷却構造S1’を用いる場合も、第1実施形態の回転シール冷却構造S1と同様の効果を得ることができる。
【0048】
<第1実施形態の第2変形例>
図7は、本発明に係わる第1実施形態の第2変形例の回転シール冷却構造S1’’の要部斜視断面図である。第1実施形態と同様の構造には共通の参照番号を付し、その説明を省略し、第1実施形態と異なる点のみを説明する。なお、図7においても図6と同様に、二重構造部D’’が設けられる回転側のみが表示されており、固定側の回転シール5は表示されていない。
【0049】
回転シール冷却構造S’’では、空間Vの上側と下側に径方向に延びて空間Vを周方向に区画する流路壁25が設けられている。このような構造によれば、二重構造部D’’に噴射される冷却流体を周方向に均等に配分することで周方向に均一に流すことができる。この場合の冷却流体の流れは、図7の矢印F1で示すように、回転軸の一端側から他端側に向かって空間Vの上側の流路壁25の間を矢印F1で示す方向に流れる。その後、冷却流体は、第1他端側壁13と第2他端側壁14に衝突して進行方向を径方向の内側に変えて空間Vの下側に移動し、さらに、空間Vの下側の流路壁25の間を回転軸Lの一端側に進み、外部に放出される。
【0050】
このような構造によれば、周方向に冷却流体を均一に流すことができるので、冷却流体と二重構造部D’’との熱交換をより効率よく行うことができ、回転シール5の冷却を効率良く行うことができる。
【0051】
第1実施形態の第2変形例の回転シール冷却構造S1’’を用いる場合も、第1実施形態の回転シール冷却構造S1と同様の効果を得ることができる。
【0052】
ここで、第1実施形態に係る回転シール冷却構造S、第1実施形態の第1変形例に係る回転シール冷却構造S‘、及び第1実施形態の第2変形例に係る回転シール冷却構造S’’、は、回転軸Lの一端側に向けて外部に開放された空間Vを有する二重構造部D、D’、D’’を外周縁部に備え回転軸L回りに回転可能な円筒体100と、円筒体100の二重構造部D、D’、D’’に円筒体100の径方向の外側から接触する摺動面15を備えるとともに円筒体100と摺動面15との間を回転可能にシールする回転シール5と、二重構造部D、D’、D’’に冷却流体を噴射するノズル1と、を備える回転シール冷却構造S、S’、S’’を使用して、ノズル1から二重構造部Dに冷却流体を噴射する回転シール冷却方法と見なすことができる。このような回転シール冷却方法によれば、回転シール冷却構造S、S’、S’’と同様の効果を得ることができる。
さらには、二重構造部D、D’、D’’の中において、冷却流体を径方向の外側から径方向の内側に向けて案内する回転シール冷却方法とみなすことができる。このような回転シール冷却方法によれば、回転シール冷却構造S、S’、S’’と同様の効果を得ることができる。
【0053】
以上、図面を参照しながら本発明の第1実施形態と第1実施形態の第1変形例と第2変形例とを説明したが、本発明は上記実施形態と変形例とに限定されない。上述した実施形態と変形例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0054】
第1実施形態の第1変形例では、回転軸Lに対するフィン20とフィン21の傾斜方向が互いに異なっているとしたが、傾斜方向が同一であっても良い。また、フィン20とフィン21とが径方向に互いに離間しているとしたが、径方向に離間せずに、フィン20とフィン21とが径方向に隙間なく延びる1枚の流路壁として設けられていても良い。
【0055】
第1実施形態の第2変形例では、空間Vの上側に径方向に延びて空間Vの上側を周方向に区画する流路壁25が設けられているとしたが、第1実施形態の第1変形例のフィン20,21のように、流路壁25が径方向に離間していても良い。また、流路壁25を設けることでも、流路壁25がフィンとしての機能も発揮する。そのため、流路壁25が冷却流体を周方向に均一に流す効果に加え、流路壁25が二重構造部D’’の表面積を増大させることで冷却流体と二重構造部D’’との接触面積を増大させることができる。そのため、冷却流体と二重構造部D’’との熱交換をより効率よく行うことができ、回転シール5の冷却を効率良く行うことができる。
【0056】
第1実施形態の第1変形例と第2変形例では、空間Vの上側と下側の両方にフィン20,21或いは流路壁25を設けたが、空間Vの上側と下側の何れか一方にフィン20,21或いは流路壁25を設けても良い。また、空間Vの上側或いは下側、または上側及び下側に、フィン20,21と流路壁25とを組み合わせて設けても良い。具体的には、空間Vの上側にフィン20叉は21を設け、空間Vの下側に流路壁25を設けても良い。或いは、空間Vの上側に流路壁25を設け、空間Vの下側にフィン20叉は21を設けても良い。さらには、空間Vの上側叉は下側、或いは上側と下側の両方において、フィン20叉は21と流路壁25とを周方向に組み合わせて、或いは互い違いに設けても良い。
【符号の説明】
【0057】
1 ノズル
2 冷却流体供給管路2
3 開口
4 支持体
5 回転シール
6 第1シール固定円筒壁
7 第2シール固定円筒壁
8 第2円筒壁
9 円筒仕切壁
10 第1円筒壁
15 摺動面
100 円筒体
D、D’、D’’ 二重構造部
L 回転軸
S、S’、S’’ 回転シール冷却構造
W 加熱装置
【要約】
【課題】簡易な構造で回転シールの摺動面の回転側を冷却可能な回転シール冷却構造、加熱装置、および回転シール冷却方法を提供する。
【解決手段】回転軸の一端側に向けて外部に開放された空間を有する二重構造部を前記一端側の外周縁部に備え前記回転軸の回りに回転可能な円筒体と、前記二重構造部に前記円筒体の径方向の外側から接触する摺動面を備えるとともに前記円筒体と前記摺動面との間を回転可能にシールする回転シールと、前記二重構造部に冷却流体を噴射するノズルと、を備えることを特徴とする回転シール冷却構造。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7