(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】乗客コンベアの清掃ロボット
(51)【国際特許分類】
B66B 31/02 20060101AFI20240430BHJP
B66B 31/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
B66B31/02 A
B66B31/00 F
(21)【出願番号】P 2022197688
(22)【出願日】2022-12-12
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】弓削 和也
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/224411(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0110777(US,A1)
【文献】特開平08-165085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に移動する踏段と、
前記踏段の左右両側に設けられた左右一対の欄干と、
前記欄干の上部を、前記踏段と同期して走行する手摺りベルトと、
を有した乗客コンベアを清掃する乗客コンベアの清掃ロボットであって、
前記清掃ロボットは、
ロボット制御部と、
前記清掃ロボットを移動させる移動部と、
カメラと、
乗降口にある前記欄干の半円形の端部に沿って上下方向に走行する前記手摺りベルトに当接される清掃ローラと、
を有し、
前記手摺りベルトの色は、前記欄干、前記踏段とは色が異なり、
前記ロボット制御部は、
前記カメラを用いて前記手摺りベルトの画像を撮影し、前記手摺りベルトの前記色の違いにより前記画像中から上下方向に走行している前記手摺りベルトの位置を認識し、前記清掃ロボットが清掃を行う所定の位置及び距離になるように前記移動部を用いて前記清掃ロボットの位置合わせを行い、前記清掃ローラを前記手摺りベルトの幅全体に当接させて清掃する、
ことを特徴とする乗客コンベアの清掃ロボット。
【請求項2】
前記ロボット制御部は、
前記画像中において、前記手摺りベルトが左右方向において所定の位置からずれることなく、かつ、所定の大きさで写った場合に、前記清掃ロボットが清掃を行う所定の位置及び距離になったとする、
請求項1に記載の乗客コンベアの清掃ロボット。
【請求項3】
前後方向に移動する踏段と、
前記踏段の乗降口に設けられた乗降板と、
前記乗降板の先端に設けられ、前記踏段が進出又は引き込まれるコムと、
を有した乗客コンベアを清掃する乗客コンベアの清掃ロボットであって、
前記清掃ロボットは、
ロボット制御部と、
前記清掃ロボットを移動させる移動部と、
カメラと、
前記コムの上面の上方に先端が配されるホースと、
前記ホースから塵又はゴミを吸引する吸引部と、
を有し、
前記コムは、前記踏段の色と前記乗降板の色とは異なる黄色であり、
前記ロボット制御部は、
前記カメラを用いて前記コムの画像を撮影し、左右方向に延びる黄色の前記コムを前記画像中から認識し、前記清掃ロボットが清掃を行う所定の位置及び距離になるように前記移動部を用いて前記清掃ロボットの位置合わせを行い、前記コムの上にある前記塵又は前記ゴミを前記ホースを用いて前記吸引部で吸引させる、
ことを特徴とする乗客コンベアの清掃ロボット。
【請求項4】
前記ロボット制御部は、
前記画像中において、前記コムの上下の位置が所定の位置に写った場合に、前記清掃ロボットが清掃を行う所定の位置及び距離になったとする、
請求項
3に記載の乗客コンベアの清掃ロボット。
【請求項5】
前後方向に移動する踏段と、
前記踏段の左右両側に設けられた左右一対の欄干と、
前記欄干の上部を、前記踏段と同期して走行する手摺りベルトと、
前記踏段の乗降口に設けられた乗降板と、
前記乗降板の先端に設けられ、前記踏段が進出又は引き込まれるコムと、
を有した乗客コンベアを清掃する乗客コンベアの清掃ロボットであって、
前記清掃ロボットは、前記乗降口にある前記欄干を走行する前記手摺りベルトを清掃する第1清掃部と、前記コムを清掃する第2清掃部とを有し、
前記清掃ロボットは、
乗り口側の前記乗降口における一方の前記欄干を走行する前記手摺りベルトを、前記第1清掃部で清掃し、
前記乗り口側の前記乗降口における他方の前記欄干を走行する前記手摺りベルトを、前記第1清掃部で清掃し、
前記乗り口側の前記乗降板の前記コムを、前記第2清掃部で清掃し、
前記踏段に乗って降り口側に移動し、
前記降り口側の前記乗降板の前記コムを、前記第2清掃部で清掃する、
ことを特徴とする乗客コンベアの清掃ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアの清掃ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアにおいて、保守作業は、店舗などが閉店した後などの夜間や休日などの予め決められた時間内に行っている。そして、この保守作業と共に乗客コンベアの清掃も行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように乗客コンベアの保守と清掃を、決められた時間内に行う必要があるが、作業員の数も限られているため、乗客コンベアの台数が多い場所では、清掃する作業の負担が大きいという問題点があった。
【0005】
そこで本発明の実施形態は上記問題点に鑑み、清掃を自動的に行うことができる乗客コンベアの清掃ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、前後方向に移動する踏段と、前記踏段の左右両側に設けられた左右一対の欄干と、前記欄干の上部を、前記踏段と同期して走行する手摺りベルトと、を有した乗客コンベアを清掃する乗客コンベアの清掃ロボットであって、前記清掃ロボットは、ロボット制御部と、前記清掃ロボットを移動させる移動部と、カメラと、乗降口にある前記欄干の半円形の端部に沿って上下方向に走行する前記手摺りベルトに当接される清掃ローラと、を有し、前記手摺りベルトの色は、前記欄干、前記踏段とは色が異なり、前記ロボット制御部は、前記カメラを用いて前記手摺りベルトの画像を撮影し、前記手摺りベルトの前記色の違いにより前記画像中から上下方向に走行している前記手摺りベルトの位置を認識し、前記清掃ロボットが清掃を行う所定の位置及び距離になるように前記移動部を用いて前記清掃ロボットの位置合わせを行い、前記清掃ローラを前記手摺りベルトの幅全体に当接させて清掃する、ことを特徴とする乗客コンベアの清掃ロボットである。また、本発明の実施形態は、前後方向に移動する踏段と、前記踏段の乗降口に設けられた乗降板と、前記乗降板の先端に設けられ、前記踏段が進出又は引き込まれるコムと、を有した乗客コンベアを清掃する乗客コンベアの清掃ロボットであって、前記清掃ロボットは、ロボット制御部と、前記清掃ロボットを移動させる移動部と、カメラと、前記コムの上面の上方に先端が配されるホースと、前記ホースから塵又はゴミを吸引する吸引部と、を有し、前記コムは、前記踏段の色と前記乗降板の色とは異なる黄色であり、前記ロボット制御部は、前記カメラを用いて前記コムの画像を撮影し、左右方向に延びる黄色の前記コムを前記画像中から認識し、前記清掃ロボットが清掃を行う所定の位置及び距離になるように前記移動部を用いて前記清掃ロボットの位置合わせを行い、前記コムの上にある前記塵又は前記ゴミを前記ホースを用いて前記吸引部で吸引させる、ことを特徴とする乗客コンベアの清掃ロボットである。
【0007】
また、本発明の実施形態は、前後方向に移動する踏段と、前記踏段の左右両側に設けられた左右一対の欄干と、前記欄干の上部を、前記踏段と同期して走行する手摺りベルトと、前記踏段の乗降口に設けられた乗降板と、前記乗降板の先端に設けられ、前記踏段が進出又は引き込まれるコムと、を有した乗客コンベアを清掃する乗客コンベアの清掃ロボットであって、前記清掃ロボットは、前記乗降口にある前記欄干を走行する前記手摺りベルトを清掃する第1清掃部と、前記コムを清掃する第2清掃部とを有し、前記清掃ロボットは、乗り口側の前記乗降口における一方の前記欄干を走行する前記手摺りベルトを、前記第1清掃部で清掃し、前記乗り口側の前記乗降口における他方の前記欄干を走行する前記手摺りベルトを、前記第1清掃部で清掃し、前記乗り口側の前記乗降板の前記コムを、前記第2清掃部で清掃し、前記踏段に乗って降り口側に移動し、前記降り口側の前記乗降板の前記コムを、前記第2清掃部で清掃する、ことを特徴とする乗客コンベアの清掃ロボットである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態のエスカレータの左側面図であり、左側の部材を省略した状態である。
【
図3】エスカレータと清掃ロボットのブロック図である。
【
図4】清掃ロボットが手摺りベルトを清掃している状態の左側面図である。
【
図5】清掃ロボットが手摺りベルトを清掃している状態の平面図である。
【
図6】清掃ロボットが手摺りベルトを清掃している状態の背面図である。
【
図7】清掃ロボットがコムを清掃している状態の左側面図である。
【
図8】清掃ロボットがコムを清掃している状態の平面図である。
【
図9】清掃ロボットが清掃を行う場合のフローチャートである。
【
図10】手摺りベルトを清掃するときのカメラの画像である。
【
図11】コムを清掃しているときのカメラの画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の乗客コンベアシステムについて図面を参照して説明する。本実施形態では、乗客コンベアシステムであるエスカレータ10と清掃ロボット100について
図1~
図11を参照して説明する。
【0010】
(1)エスカレータ10
エスカレータ10の全体の構造について
図1を参照して説明する。
図1は、エスカレータ10を左側面から見た説明図である。但し、エスカレータ10の内部構造をわかりやすくするために、上階から下階を見た場合にエスカレータ10の左側の部材の図示を省略している。なお、エスカレータ10の前後方向を説明するときは、上階から下階を見下ろし、下階が前側、上階が後側であるものとする。
【0011】
エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって、支持アングル2,3を用いて前後方向に支持されている。
【0012】
トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を走行させる駆動装置18、左右一対の踏段スプロケット24,24、不図示の左右一対のベルトスプロケットが設けられている。この駆動装置18は、モータ20と、減速機21と、この減速機21の出力軸に取り付けられた駆動小スプロケット19と、モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスク式の電磁ブレーキ23とを有している。左右一対の踏段スプロケット24,24には、同軸に駆動大スプロケット17が取り付けられ、駆動小スプロケット19との間に無端状の駆動チェーン22が架け渡されている。また、上階側の機械室14内部には、モータ20や電磁ブレーキ23などを制御する制御装置50が設けられている。
【0013】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内部には、左右一対の従動スプロケット26,26が設けられている。上階側の左右一対の踏段スプロケット24,24と下階側の左右一対の従動スプロケット26,26との間には、左右一対の無端状の踏段チェーン28,28が架け渡されている。左右一対の踏段チェーン28,28の間には、複数の踏段30の左右一対の第1輪301,301が一定間隔毎に連結されている。モータ20が回転すると踏段30の第1輪301は、トラス12に固定された不図示の第1輪専用の案内レールを走行し、踏段30の第2輪302は、トラス12に固定された第2輪専用の案内レール25を走行する。
【0014】
トラス12の上部の左右両側には、左右一対の欄干36,36が立設されている。この欄干36の上部には手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って無端状の手摺りベルト38が移動する。
【0015】
左右一対の欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられている。正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。左右一対の欄干36の側面下部には、スカートガード(内デッキ)44がそれぞれ設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。
【0016】
手摺りベルト38は、不図示のベルトスプロケットが踏段スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。
【0017】
上階側の左右一対のスカートガード44,44の間の乗降口である、機械室14の天井面には、上階側の乗降板32が水平に設けられている。下階側の左右一対のスカートガード44,44の間の乗降口である、機械室16の天井面には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。上階側の乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、踏段30がこのコム60に進入したり、このコム60から引き出されたりする。また、下階側の乗降板34の先端にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0018】
(2)清掃ロボット100
次に、エスカレータ10の清掃を行うための清掃ロボット100について、
図1~
図7、
図10、
図11を参照して説明する。この清掃ロボット100は、自律走行可能なロボットであり、その目的は無人でエスカレータ10の清掃を行うことである。
【0019】
図2に示すように、清掃ロボット100は、ほぼ立方体の本体102を有し、この本体102の大きさは、
図1に示すように、一段の踏段30に乗ることができる大きさに設計されている。その本体102の内部には、コンピュータなどよりなるロボット制御部104が設けられている。本体102の下部には、4個の車輪106が設けられ、この4個の車輪106はモータを有する移動部108で回転する。ロボット制御部104は、移動部108を制御することにより、清掃ロボット100を前進、後進、又は右若しくは左に回転させることができる。また、ロボット制御部104は、清掃ロボット100の外部と通信をするためのロボット通信部118を有している。
【0020】
図2に示すように、立方体の本体102の上面には直方体の表示部116が立設されている。この表示部116には、ロボット制御部104からの制御により、
図6に示すように、文字を表示させることができる。例えば、清掃ロボット100が清掃している状態であれば、「清掃作業中」の表示を、前面、左右両側面、後面に表示する。
【0021】
表示部116の前面には、清掃ロボット100の前方を撮影するためのカメラ110が設けられている。
図10と
図11に示すように、このカメラ110が撮影する動画像である画像140内において、長方形の位置決め範囲142が設定されている。位置決め範囲142には、x-y直交座標系が設定され、左下隅の座標が(0,0)、右下隅の座標が(xn,0)、左上隅の座標が(0,ym)、右上隅の座標が(xn,ym)と設定されている。
【0022】
図2に示すように、清掃ロボット100の本体102には、第1清掃部112と第2清掃部114が設けられている。
【0023】
第1清掃部112は、
図2に示すように、清掃ローラ120、軸受け部122、支持棒124、第1回転部126を有し、
図4に示すように、欄干36の半円形の後端部に沿って上下方向に走行している手摺りベルト38の表面を清掃ローラ120で清掃するものである。清掃ローラ120は、その回転軸が左右一対の軸受け部122に回転自在に支持され、この軸受け部122は棒状の支持棒124に支持されている。この支持棒124の基部は、本体102の前面にある第1回転部126に取り付けられ、第1回転部126は、支持棒124を上下方向に回転させる。支持棒124は、清掃をする前の待機状態においては上下方向に真っ直ぐ起立した状態となっている。そして、清掃するときは第1回転部126が支持棒124を回転させ(
図5参照)、
図4に示すように、清掃ローラ120を本体102の前方に突出させる。
図5に示すように、清掃ローラ120の幅(軸方向の長さ)は、手摺りベルト38の幅より大きく設計されている。
【0024】
支持棒124は本体102に収納可能とし、手摺りベルト38を清掃する際に第1回転部126を下方向に回転させて、本体102より表出させてよい。手摺りベルト38が終了した際に、第1回転部126を上方向に回転させて、本体102に収納するとしてもよい。支持棒124を本体102に格納させることで、清掃ロボット100が移動する際に支持棒124が乗客やエスカレータ10の機構、建屋1に設置された物に接触することを防止することができ、清掃ロボット100がスムーズに移動することを可能とする。
【0025】
支持棒124は清掃ローラ120と第1回転部126との間に調整機構を有し、支持棒124の長さを調整させる機能を有していてもよい。調整機構による支持棒124の長さの調整はカメラ110による画像140に基づいて調整してもよい。また、調整機構による支持棒124の長さの調整は清掃ローラ120に接触センサを設け、支持棒124を延伸させて清掃ローラ120が手摺りベルト38に接触したことを検知したときに延伸を止めて支持棒124の長さ調整をしてもよい。支持棒124の長さを調整機構により調整させることで、清掃ロボット100が移動する際に支持棒124が乗客やエスカレータ10の機構、建屋1に設置された物に接触することを防止することができ、清掃ロボット100がスムーズに移動することを可能とする。
【0026】
第2清掃部114は、
図2と示すように、ホース130、吸引部132、第2回転部134を有し、
図7に示すように、上階側のコム60と下階側のコム62の塵などを吸引するものである。吸引部132は、本体102内部に設けられ、ホース130を通して塵やゴミなどを吸引する。第2回転部134は、本体102の前面に設けられてホース130の基部が接続され、ホース130は、清掃をする前の待機状態においては上下方向に真っ直ぐ起立した状態となっている。そして、清掃するときは第2回転部134がホース130を回転させて前下方に突出させ、コム60の上面の上方にその先端を配し、
図7と
図8に示すように、本体102から突出したホース130を上下方向及び左右方向に回転させる。
【0027】
(3)エスカレータ10と清掃ロボット100の電気的構成
次に、エスカレータ10と清掃ロボット100の電気的構成について、
図3のブロック図を参照して説明する。
【0028】
上階の機械室14内部にある制御装置50には、清掃ロボット100のロボット通信部118や外部にある保守センターと連絡を取るための通信部64と、モータ20と電磁ブレーキ23を制御するための駆動回路66が接続されている。
【0029】
清掃ロボット100のロボット制御部104には、移動部108、カメラ110、第1清掃部112、第2清掃部114、表示部116、通信部64と通信するロボット通信部118が接続されている。
【0030】
(4)清掃ロボット100の動作状態
清掃ロボット100の動作状態について
図9のフローチャートを参照して説明する。
【0031】
(4-1)待機状態
まず、清掃ロボット100の清掃前の待機状態において、
図2に示すように、第1清掃部112の支持棒124と、第2清掃部114のホース130は、起立した状態となっている。また、清掃ロボット100は、上階の乗降板32の外で待機している。
【0032】
(4-2)第1動作
第1動作は、
図9のステップS1に示すように、清掃ロボット100が上階側の右側の手摺りベルト38の前に移動して位置決めする動作である。なお、清掃ロボット100が清掃する右側の手摺りベルト38の位置は、欄干36の半円形の後端部に沿って右側の手摺りベルト38が上下方向に走行している部分とする。
【0033】
清掃ロボット100の位置決めをするため、まず、清掃ロボット100は、待機位置から上階側の乗降板32上を移動して、
図4と
図5に示すように、正面が前方に向くようにして、カメラ110が、上下方向に走行している上階側の右側の手摺りベルト38を撮影できるようにする。
【0034】
次に、
図4と
図5に示すように、清掃ロボット100の左右方向が、乗降板32の左右方向と平行になるように姿勢を修正する。
【0035】
次に、
図10に示すように、カメラ110で、上下方向に走行している手摺りベルト38を動画で撮影して手摺りベルト38を認識し、手摺りベルト38の上端部の左右両側の位置が、カメラ110の画像140内の位置決め範囲142の(x1,ym)、(x2,ym)の位置になるように位置合わせする。このとき手摺りベルト38の色は、黒色、暗い赤色、緑色などであって、他の部材とは色が異なるため、ロボット制御部104は手摺りベルト38を認識しやすい。この位置合わせは、清掃ロボット100の手摺りベルト38に対する左右方向の位置と、カメラ110から手摺りベルト38までの距離を検知して、清掃が正常に行われる所定の位置及び距離になるように調整する作業である。
【0036】
すなわち、撮影された手摺りベルト38の上端部の左右両側が、もし位置決め範囲142の(x1,ym)、(x1,ym)の位置よりも左方向にずれている場合には、ロボット制御部104は清掃ロボット100を左方向に移動させる。
【0037】
逆に、右方向にずれている場合には、清掃ロボット100を右方向に移動させる。
【0038】
また、手摺りベルト38が位置決め範囲142の(x1,ym)、(x1,ym)より大きく写っている場合には、両者の距離が短すぎるので、清掃ロボット100を後方に移動させて離れさせる。
【0039】
逆に、小さく写っている場合には、両者の距離が遠すぎるので、前方に移動させて近づける。
【0040】
このように位置決めすることにより、第1清掃部112の、所定の長さを有する支持棒124の先に支持された清掃ローラ120を手摺りベルト38の幅全体に当接させ、かつ、その当接圧力が適切になるようにすることが可能となる。
【0041】
(4-3)第2動作
第2動作は、
図9のステップS2に示すように、第1清掃部112を用いて上階側の右側の手摺りベルト38を清掃する動作である。
【0042】
その清掃のために、
図4と
図5に示すように、第1清掃部112は、第1回転部126により起立している支持棒124を下方に回転させ、走行している右側の手摺りベルト38に清掃ローラ120を当接させる。すると走行する右側の手摺りベルト38と共に清掃ローラ120が回転して、清掃ローラ120の表面で手摺りベルト38を清掃できる。また、清掃中は、
図6に示すように、表示部116に「清掃作業中」と表示させる。
【0043】
このときの清掃時間は、手摺りベルト38が上階側から下階側、下階側から上階側に一周する時間であり、この時間は踏段30の移動時間に基づいて予め計算しておくか、又は、制御装置50の通信部64から踏段30の走行速度が通知されるのを受けて、ロボット制御部104が計算する。
【0044】
そして、この清掃時間が終了すると支持棒124を再び起立させ、待機状態とする。
【0045】
(4-4)第3動作
第3動作は、
図9のステップS3に示すように、清掃ロボット100が左側の手摺りベルト38の位置に移動する動作である。すなわち、ロボット制御部104は待機状態にある清掃ロボット100をそのまま乗降板32の上を左側に移動させ、左側の手摺りベルト38の位置で停止させる。そして本体102を左側の手摺りベルト38に対して位置決めする。このときの位置決め方法は右側の手摺りベルト38に対する位置決め方法と同様である。
【0046】
(4-5)第4動作
第4動作は、
図9のステップS4に示すように、左側の手摺りベルト38を清掃する動作である。その清掃は、右側の手摺りベルト38と同様に行う。そして、この清掃時間が終了すると支持棒124を再び起立させ、待機状態とする。
【0047】
(4-6)第5動作
第5動作は、
図9のステップS5に示すように、上階側のコム60の前に移動する動作である。
【0048】
清掃ロボット100を、
図8に示すように、乗降板32の上を右側に向けて移動させ、カメラ110が撮影した画像140から、コム60を認識する。コム60は他の部材とは異なり黄色に着色されているため、認識が容易である。
【0049】
次に、
図11に示すように、コム60の上下の位置が、カメラ110の画像140内の位置決め範囲142の(0,y1)、(0,y2)の位置になるようにする。これによりコム60とカメラ110までの距離が、ホース130による清掃が可能な所定の距離となり、位置決めが終了する。なお、左右方向に関しては、ホース130が掃除のときに左右方向に回転するため、位置決めを行わなくてよい。
【0050】
(4-7)第6動作
第6動作は、
図9のステップS6に示すように、第2清掃部114を用いて上階側のコム60を掃除する動作である。
【0051】
まず、
図7と
図8に示すように、ホース130を起立した状態(待機状態)から、その先端がコム60に届くまで第2回転部134によって前下方に回転させ、コム60の上面の上方にその先端を配し、コム60の上にある塵やゴミを吸引部132で吸引する。さらに、ホース130を第2回転部134によって左右方向に回転させながらコム60の左端部から右端部まで清掃する。なお、ホース130を第2回転部134によって左右方向に回転させるだけでは、ホース130の先端部がコム60の左端部や右端部に届かない場合には、本体102を移動部108で左側又は右側に移動させて清掃を行う。
【0052】
次に、上階側のコム60の清掃が終了すると、ホース130を再び起立状態にする。
【0053】
(4-8)第7動作
第7動作は、
図9のステップS7に示すように、清掃ロボット100を上階から下階まで移動させる動作である。
【0054】
すなわち、
図1に示すように、清掃ロボット100を踏段30に乗せ、その乗った踏段30が上階から下階まで移動する。下階まで清掃ロボット100が移動すると、下階側の乗降板34に降り、ロボット制御部104は、移動部108を用いて、清掃ロボット100の向きを後方向に回転させる。
【0055】
(4-9)第8動作
第8動作は、
図9のステップS8に示すように、清掃ロボット100を下階側のコム62の前に移動させて位置決めする動作である。この動作は、上階側のコム60に対する位置決め動作と同じである。
【0056】
(4-10)第9動作
第9動作は、
図9のステップS9に示すように、下階側のコム62の清掃を行う動作である。この清掃方法は、上階側のコム60の清掃と同様である。
【0057】
以上により、左右両側の手摺りベルト38,38と、上階側のコム60と下階側のコム62の清掃を保守員が行うことなく自動的に清掃ロボット100で行うことができる。
【0058】
(5)効果
本実施形態によれば、エスカレータ10の左右両側の手摺りベルト38と、上階側のコム60と下階側のコム62とを、清掃ロボット100によって自動的に清掃することができる。
【0059】
また、左右両側の手摺りベルト38,38と上階側のコム60と下階側のコム62の清掃を連続して行う場合に、清掃ロボット100はこれらを一連の流れとして清掃作業を行うことができ、無駄な動きをすることなく最短時間で清掃を行うことができる。
【変更例】
【0060】
次に、上記実施形態の変更例について順番に説明する。
【0061】
上記実施形態では、1台の清掃ロボット100に手摺りベルト38を清掃する第1清掃部112と、コム60,62を清掃する第2清掃部114を搭載したが、これに代えて、第1清掃部112を有するだけの清掃ロボット100と、第2清掃部114のみを搭載する清掃ロボット100の2台を用意してもよい。
【0062】
また、上記実施形態では上階側において、右側の手摺りベルト38、左側の手摺りベルト38、上階側のコム60の順番で清掃したが、この順番を変えて、右側の手摺りベルト38、上階側のコム60、左側の手摺りベルト38の順番で清掃を行ってもよい。また、手摺りベルト38は左側から右側に順番に清掃してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、清掃ロボット100が上階から下階に下降するときに清掃を行ったが、下階から上階に上昇するときに清掃を行ってもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、エスカレータ10に適用して説明したが、これに代えて動く歩道に適用してもよい。
【0065】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
10・・・エスカレータ、30・・・踏段、32・・・乗降板、34・・・乗降板、36・・・欄干、38・・・手摺りベルト、50・・・制御装置、60・・・コム、62・・・コム、100・・・清掃ロボット、102・・・本体、104・・・ロボット制御部、106・・・車輪、108・・・移動部、110・・・カメラ、112・・・第1清掃部、114・・・第2清掃部、116・・・表示部、118・・・ロボット通信部、120・・・清掃ローラ、130・・・ホース
【要約】
【課題】清掃を自動的に行うことができる乗客コンベアの清掃ロボットを提供する。
【解決手段】前後方向に移動する踏段30と、踏段30の左右両側に設けられた左右一対の欄干36と、前記欄干36の上部を、踏段30と同期して走行する手摺りベルト38とを有したエスカレータ10を清掃する清掃ロボット100であって、清掃ロボット100は、乗降口を走行する手摺りベルト38を清掃する第1清掃部112を有する。
【選択図】
図4