(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】ドア開口部の閉鎖システム
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20240430BHJP
E06B 9/58 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B9/58 A
(21)【出願番号】P 2022512843
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(86)【国際出願番号】 ES2021070046
(87)【国際公開番号】W WO2021152194
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】515330708
【氏名又は名称】アミセル,エス.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】イグレシアス バリェステル,ミゲル エンジェル
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-151816(JP,A)
【文献】特開2005-307502(JP,A)
【文献】特開2012-202087(JP,A)
【文献】特表2016-526124(JP,A)
【文献】特開2006-312063(JP,A)
【文献】特開2003-089490(JP,A)
【文献】米国特許第06470949(US,B1)
【文献】英国特許出願公開第02378204(GB,A)
【文献】Puerta Corredera Cortafuegos - Angel Mir (Portes Bisbal SL),YouTube[Online][video],2016年02月03日,https://www.youtube.com/watch?v=K_LgHtnatXQ,[2023年3月8日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/16
E06B 9/00-9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア開口部、詳細には2つの部屋を分離する壁(P)に画定されたドア開口部(H)のための、閉鎖システムであって、
上部ケーシング(12)に収容されたモータ式ドラムに巻き上げることができ、前記ドア開口部(H)の開位置と閉位置との間で、垂直支柱(3)に画定された誘導部(31)に沿って移動させることができる、柔軟性の巻き上げシート(11)を特徴とする、急速開放ドア(1)と、
前記ドア開口部(H)の開位置及び閉位置の間で移動させることができる、少なくとも1枚の耐火板(21、23)と、前記閉位置において、前記耐火板の支持領域を形成する周辺フレームを有する、防火ドア(2)と、
を備え、
前記閉鎖システムは、
前記急速開放ドア(1)が、前記2つの部屋を分離する前記壁(P)に画定されたドア開口部(H)内に適合するように設定され、
前記防火ドア(2)が、前記壁の一方の側に設定され、前記防火ドア(2)及び前記急速開放ドア(1)
の開口部は実質的に前記ドア開口部(H)に対応しており、前記防火ドア(2)及び前記急速開放ドア(1)の開口部は実質的に同一寸法であり、
前記急速開放ドア(1)の前記上部ケーシング(12)は後部耐火カバー(4)を有すること、
前記防火ドア(2)の前記周辺フレームは、前記誘導部(31)が画定された前記垂直支柱(3)と、前記急速開放ドア(1)の前記上部ケーシング(12)の前記後部耐火カバー(4)で構成されること、及び、
前記防火ドア(2)の前記耐火板(21、23)は、閉位置において、前記周辺フレームに対して前方接触すること
により支持されること、を特徴とする、閉鎖システム。
【請求項2】
前記垂直支柱(3)は、均一の断面で、耐火材料で充填された、単一部材の形材(32)によって形成されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記垂直支柱(3)は、前記急速開放ドア(1)の前記誘導部(31)が画定された正面形材(33)と、前記正面形材(33)に固定された、前記防火ドア(2)を閉じるための背面形材(34)と、前記垂直支柱(3)の前記正面形材(33)及び前記背面形材(34)の間に位置された絶縁材料の層(35)と、を備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記急速開放ドア(1)及び前記防火ドア(2)を、独立して操作することができることを特徴とする、請求項1~3のうちいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記防火ドア(2)はスライド式ドアであり、前記壁(P)の一方の側に配置され、支持誘導部(22)に設定され、かつドア開口部(H)の開位置と閉位置との間で水平方向に移動できるよう設定された、耐火板(21)を備えることを特徴とする、請求項1~4のうちいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記防火ドア(2)は開くことができること、及び前記ドア開口部(H)の開位置と閉位置との間を回転できる、少なくとも1枚の耐火板(23)を備えること、を特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記防火ドア(2)は、開くことができる2枚の耐火板(23)を備えることを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア開口部、詳細には2つの部屋を分離する壁に画定されたドア開口部のための、閉鎖システムに関する。このシステムは:鉛直支柱で画定された誘導部に沿って、ドア開口部の開位置と閉位置との間で移動されることができる、柔軟性の巻き上げシートを特徴とする、急速開放ドア;及びドア開口部の開位置と閉位置との間の支持誘導部に対して移動させることができるよう設定された、耐火板を有する防火ドア、を備える。
【0002】
したがって、本発明は、エンクロージャの製造が専門の分野に適用可能である。
【背景技術】
【0003】
本発明に近い技術分野として、スペイン国においてES2675200T3として有効化された、本発明と同じ出願者による欧州特許第3006661号明細書、に言及する価値がある。
【0004】
この背景技術は、2つの領域または部屋を分離する壁に画定された貫通開口部のための、閉鎖システムを表わし、それは:駆動モータによって駆動されるドラムに巻き上げることができる柔軟性パネルまたはシートが設けられた、急速開放ドアと、ドア開口部の開位置及び閉位置の間で移動させることができる防火ドアと、を組み合わせる。
【0005】
背景技術において、急速開放ドア及び防火ドアは、壁の同じ側に固定される。閉鎖システムが、開発された機能を満たしても、改善できるいくつかの態様を有する。
【0006】
これらの態様の1つは、壁の一方の側における両方のドアの配置が、閉鎖システムが壁から完全に突出し、対応する部屋において、かなりの深さの空間を占有することを意味することである。
【0007】
別の欠点は、防火ドアが、急速開放ドアを損傷させるか、または急速開放ドアに干渉することなく、ドアの開口部を効果的に閉じることができるよう、いくらかの構造上の複雑性を有する急速開放ドアの使用を必要とすることである。
【0008】
このため背景技術は、垂直誘導部を伴う急速開放ドアの使用から構成されたソリューションを使用する。この急速開放ドアは、貫通開口部の各側に配置されて固定された下部分と、可動上部分とを備える。この可動上部分は、貫通開口部の上部に位置され、かつ固定された下部分に近い下位置と、固定された下部分から離され、防火ドアが急速開放ドアに干渉することなく閉じられるのを可能にする上位置と、の間で垂直方向に移動できる。このソリューションは、通常のものと比較して、いくらかの構造上の複雑性、及び急速開放ドアのコストの増加を伴う。
【0009】
防火ドアを急速開放ドアと組み合わせた、二重ドアの別の一般的な欠点は、2つのドアが壁の同じ側にあるために、防火ドアのサイズを大きくして急速開放ドア全体を覆わなければならないことである。これは一方では、防火ドアのドア開口部を、急速開放ドアのドア開口部よりも大幅に大きくし、それによって防火ドアの開口部の周辺部分は使用できなくなり、他方では、防火ドアサイズの大型化、及び、各ドアが各々周辺フレームを有するため、フレームが重複することによる追加の製造コストを生じさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の出願者は、これらの欠点を解決でき、かつ本発明のシステムの特徴と類似した特徴を有する、先行技術の存在を知らない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の対象であるドア開口部の閉鎖システムは、特に2つの部屋を分離する壁に画定されたドア開口部に適用可能である。このシステムは、独立請求項のプリアンブルに記載されるタイプである。すなわち上部ケーシングに収容されたモータ付きドラムに巻き上げることができる、柔軟性の巻き上げシートを特徴とし、かつドア開口部の開位置及び閉位置の間で垂直誘導部に沿って移動できる、急速開放ドアと、ドア開口部の開位置及び閉位置の間で移動できる、少なくとも1つの耐火板を有する防火ドアと、を備える。
【0013】
本発明のシステムは、急速開放ドア及び防火ドアを組み合わせることを可能にし、製造コストを大幅に減少させ、ドア開口部または貫通開口部における設定を簡略化し、かつ両方のドアによって画定されたドア開口部が寸法的に同じか、または非常に近く、両方のドア間の全てが適切な熱絶縁を伴うこと保証する、構造的特徴を有する。
【0014】
本発明の重要な特徴は、急速開放ドアの誘導部が、好適な耐火材料及び絶縁材料で充填された垂直支柱に画定されること、ならびに、それが、急速開放ドアの上部ケーシングにおける後部耐火カバーと共に、防火ドアを閉じるための周辺フレームを形成すること、である。これは、急速開放ドアの垂直支柱が、上部ケーシングの絶縁後部カバーと共に、防火ドアの周辺フレーム及びドアの空隙開口部を構成するのを可能にする。
【0015】
本発明の別の関連した特徴は、急速開放ドアが、2つの部屋を分離する壁に画定されたドア開口部内に、適合するように設定されること、及び、垂直支柱に対して、かつ急速開放ドアの上部ケーシングにおける後部カバーに対して、閉じられる防火ドアが、壁の一方の側に設定されること、である。
【0016】
この特徴は、両方のドアを迅速かつ容易に設定するのを、一方は壁の開放部の内側に、及び他方は壁の一方の側に、それらの間で干渉することなく可能にする。
【0017】
周辺フレームを共有することによって、防火ドア及び急速開放ドアは、互いに同じまたは実質的に同じ寸法、かつ壁のドア開口部よりも僅かに小さい寸法、を伴うドア領域を画定する。
【0018】
この特徴は、防火ドアのサイズを大きくすること、各ドアに1つの、2つの独立したフレームを使用すること、及び同じものを製造する超過コスト、を不要にする。
【0019】
本発明の1つの実施形態において、垂直支柱は、均一の断面で耐火材料が充填された、単一部材の形材によって形成される。
【0020】
代替の実施形態において、この垂直支柱は:急速開放ドアの垂直誘導部が画定された、正面垂直形材;正面形材に固定された防火ドアを閉じるための背面形材;垂直支柱の正面形材と背面形材との間に位置された、絶縁材料の層、によって形成される。
【0021】
設定位置において、急速開放ドアは、ドア開口部内に配置され、防火ドアは、壁の一方の側に重ねられ、それによっていくつかの利点を同時に実現する。それらの利点は、以下を含む:
-2つのドアが垂直支柱を共有し、フレームの重複を避け、2つのドアの設定を簡略化して、製造コストを減少させること;
-ドアの各々における開閉を、他方のドアに干渉する危険がなく、自由に行えること;
-急速開放ドアの厚みの全て、または厚みのほとんどが、壁の開口部内にあり、隣接する部屋において閉鎖システムによって占有される空間を最小に抑えるために、閉鎖システムを設定するために必要な空間が非常に少ないこと;
-急速開放ドアが、ドア開口部の寸法的要件(長さ、幅、及び高さ)のみに基づいて、防火ドアと急速開放ドアとの干渉を避けるために、より複雑でコスト高の構造を使用する必要なく、従来の構造を有することができること。
【0022】
本発明によると、防火ドアは、その設定のために利用可能な空間、または顧客の好みに依存して、スライド式またはスイング式とすることができる。
【0023】
本発明の別の特徴は、急速開放ドア及び防火ドアが完全に独立し、操作も独立してできることである。それによって、ドアの各々が、他のドアの位置を考慮に入れずに開閉可能となる。なぜなら、言及したように、本発明で提案されるソリューションは、ドアの設定のために必要な空間を最小に抑えることに加え、急速開放ドアの動きと防火ドアの動きとの間の干渉を防止するからである。
【0024】
本明細書で提供される説明の補足として、及び本発明の特徴の理解をより容易にもたらすために、本明細には、例示のためで限定ではない以下の図面のセットが添付される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】2つの隣接した部屋を分離する壁に画定されたドア開口部に設定された、本発明の閉鎖システムの全体正面図である。
【
図2】2つの隣接した部屋を分離する壁に画定されたドア開口部に設定された、本発明の閉鎖システムの全体背面図である。
【
図4】
図2のB-B’面に沿った断面図、及び本発明のシステムにおける第1の実施形態の拡大詳細図である。ここで、垂直支柱は、耐火材料が充填された単一部材の形材によって形成される。
【
図5】
図2のB-B’面に沿った断面図、及び本発明のシステムにおける第2の実施形態の拡大詳細図である。ここで、垂直支柱は、互いに固定された正面形材及び背面形材、ならびに両形材間に配置された絶縁材料の中間層、によって形成される。
【
図6】
図2のC-C’における断面図、及び
図5に示される垂直支柱が設けられたシステムの拡大詳細図である。
【
図7】本発明の変形の実施形態における背面図である。ここで、スライド式防火ドアは、開くことができる防火ドアに置き換えられており、この事例において開いて表わされた2つの層が設けられる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の対象である閉鎖システムは、2つの隣接した部屋を分離する壁(P)に設定され、これらの部屋間のドア開口部(H)を特徴とする。
【0027】
このシステムは、急速開放ドア(1)及び防火ドア(2)を備え、それらは独立して操作することができ、ドア開口部(H)の開閉に好適である。
【0028】
急速開放ドア(1)は、柔軟性の巻き上げシート(11)を備え、それは上部ケーシング(12)に収容されたモータ式ドラム(図示せず)に巻き上げることができ、ドア開口部(H)の開位置と閉位置との間で、垂直支柱(3)に画定された誘導部(31)に沿って垂直方向に移動させることができる。
【0029】
急速開放ドア(1)は、ドア開口部(H)内に適合するように設定され、壁(P)の厚さに依存して、開口部(H)の中に完全に、またはほとんどが収容され得る。
【0030】
図1~
図7において、防火ドア(2)は、壁(P)の一方の側に配置され、かつドア開口部(H)の開位置と閉位置との間で支持誘導部(22)に対して水平方向に移動できるよう設定された、スライド式耐火
板(21)を備える。
【0031】
支持誘導部(22)は、ドア開口部(H)を形成する壁(P)の前述の側に固定され、上部すなわちドア開口部よりも高く位置される。
【0032】
防火ドア(2)は、周辺フレームを備え、それは閉位置において支持領域を形成し、垂直支柱(3)と、急速開放ドア(1)の柔軟性シート(11)が沿って回転する誘導部(31)のキャリアと、急速開放ドア(1)の上部ケーシング(12)における後部耐火カバー(4)と、で構成される。それによって両ドアは共通の空隙開口部を有する。
【0033】
図4の実施形態において、垂直支柱(3)は、均一の断面で耐火材料が充填された、単一部材の形材(32)によって形成される。
【0034】
図5及び
図6の実施形態において、垂直支柱(3)は:急速開放ドア(1)の垂直誘導部(31)が画定された正面形材(33);正面形材(33)に固定された背面形材(34);及び正面形材(33)と背面形材(34)との間に位置された絶縁材料の層(35)、を備える。
【0035】
図6の詳細図は、急速開放ドア(1)の上部ケーシング(12)における後部耐火カバー(4)を示し、それは垂直支柱(3)と共に防火ドア(2)の閉鎖領域を形成する。
【0036】
閉鎖領域に対する耐火板(21)の接触は、カウンタウエイトによって、支持誘導部(22)の方向の変化によって、または任意の他の手段によって、判断することができる。なぜならこれは、本発明の本質に影響しないからである。
【0037】
前述の特徴を伴い、急速開放ドア(1)及び防火ドア(2)を独立して操作することができ、それによってそれらを互いに干渉させることなく、開位置または閉位置のいずれかへ、同時または独立して移動させることを可能にする。
【0038】
図7、
図8、及び
図9は、2枚の耐火
板(23)を伴い開くことができる防火ドア(2)を示す。2枚の耐火
板(23)は、必要に応じて、垂直支柱(3)と、上部ケーシングの後部耐火カバー(4)とで構成された周辺フレームに対して前方接触し、火を遮断するよう働く
【0039】
本発明の、この代替は、この複合ドアのコンセプトを、スライド式防火ドアの設置が、側部の空間が足りないために不可能である空間に位置付けるのを可能にするよう、提供される。本発明の、この変形において、防火ドアは2枚を有するが、寸法によっては単一の層を有することもできる。
【0040】
本発明の、この変形における動作は、スライド式防火ドア(2)の場合と同じである。すなわち、開くことができる防火ドアは、通常の開位置において耐火板(23)を有し、急速開放ドア(1)は、壁(P)に位置されたドア開口部(H)を開閉するものであり、火災が検出された場合に、防火ドアの耐火板(23)は、開位置において耐火板(23)を保持するのを停止させる電磁石か、別の方法かのいずれかによって、自動的に閉じる。それによってドア開口部(H)は閉じられ、火から保護される。
【0041】
本発明の性質を十分に説明した。以下で請求する本発明の基本的特徴を変更することを意味せずに、好ましい例示的な実施形態に加えて、説明した要素の材料、形状、サイズ、及びレイアウトが変更され得る、関連の目的が記載される。