(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】メソ孔が含まれた階層構造の分離膜、その製造方法及びそれを用いたキシレンの分離方法
(51)【国際特許分類】
B01D 71/02 20060101AFI20240430BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20240430BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20240430BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20240430BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20240430BHJP
B01D 71/36 20060101ALI20240430BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20240430BHJP
B01D 71/64 20060101ALI20240430BHJP
C01B 39/36 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
B01D71/02 500
B01D69/00
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/26
B01D71/36
B01D71/68
B01D71/64
C01B39/36
(21)【出願番号】P 2022519052
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 KR2020013000
(87)【国際公開番号】W WO2021060887
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0118060
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510273880
【氏名又は名称】コリア ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ジョンギュ
(72)【発明者】
【氏名】イ クワンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ホン ソンウォン
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-509968(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180210(WO,A1)
【文献】特開2010-180080(JP,A)
【文献】特開2018-158909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C01B 39/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MFI種層が形成された支持体上に、有機構造誘導体としてのテトラアルキルホスホニウム塩:SiO
2:H
2O=5~50:5~500:1,000~50,000のモル比に構成された二次成長溶液を添加して水熱合成させる段階を含む
、階層的構造のゼオライト分離膜の製造方法
、であって前記階層的構造のゼオライト分離膜は、0.1~5μmの厚さを有し、2nm以下の微細孔及び2~20nmサイズのメソ孔を含む、階層的構造のゼオライト分離膜の製造方法。
【請求項2】
前記テトラアルキルホスホニウム塩は、TBPOH、TBPF、TBPBr、TBPCl、TBPI、TPPOH、TPPF、TPPBr、TPPCl、TPPI、TEPOH、TEPF、TEPBr、TEPCl及びTEPIからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項
1に記載の階層的構造のゼオライト分離膜の製造方法。
【請求項3】
前記水熱合成は、70~175℃の温度で12~240時間行われることを特徴とする、請求項
1に記載の階層的構造のゼオライト分離膜の製造方法。
【請求項4】
前記水熱合成は、1回又は2回行われることを特徴とする、請求項
1に記載の階層的構造のゼオライト分離膜の製造方法。
【請求項5】
前記水熱合成後に、分離膜を30~200℃の温度で1~24時間乾燥させる段階をさらに含む、請求項
1に記載の階層的構造のゼオライト分離膜の製造方法。
【請求項6】
前記乾燥後に、分離膜を10~1,000mL/min
-1の空気の流れ下で0.2~10℃/min
-1の上昇速度で350~650℃で6~48時間焼成させ、分離膜内部に残っている有機構造誘導体を除去する段階をさらに含む、請求項
5に記載の階層的構造のゼオライト分離膜の製造方法。
【請求項7】
前記支持体は、アルミナ、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリイミド、シリカ、グラスガンマ-アルミナ、ムライト(mullite)、ジルコニア(zirconia)、チタニア(titania)、イットリア(yttria)、セリア(ceria)、バナジア(vanadia)、シリコン、ステンレススチール及びカーボンからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項
1に記載の階層的構造のゼオライト分離膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の階層的構造のゼオライト分離膜の製造方法によって製造される階層的構造のゼオライト分離膜。
【請求項9】
請求項
8に記載の階層的構造のゼオライト分離膜を用いてキシレン異性体を含む芳香族炭化水素の混合物からp-キシレンを分離するp-キシレンの分離方法。
【請求項10】
前記キシレン異性体は、p-キシレン、m-キシレン、o-キシレン、又はエチルベンゼンであることを特徴とする、請求項9に記載のp-キシレンの分離方法。
【請求項11】
100℃以上の温度で行われることを特徴とする、請求項9に記載のp-キシレンの分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメソ孔が含まれた階層構造の分離膜、その製造方法及びそれを用いたキシレンの分離方法に関し、より詳細には、微細多孔性ゼオライト分離膜の内部にメソ孔を導入し、薄い厚さを有しながらも少ない欠陥及び高いキシレン透過分離性能を示す、メソ孔が含まれた階層構造の分離膜、その製造方法及びそれを用いたキシレンの分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分離膜ベースの分離工程は、蒸留、吸着又は結晶化(crystallization)に比べて多くの長所を有する、新たに脚光を浴びている技術である。特に、分離膜工程は、エネルギー効率が高く、工程が簡易であり、空間集約的である(D.E.Sanders et al.,Polymer 54,4729-4761(2013);H.Strathmann,AlChE J.47,1077-1087(2001);V.Sebastian et al.,J.Membr.Sci.292,92-97(2007))。このような長所から、石油化学、製作及び生命工学などの様々な分野の研究員たちが分離膜ベースの分離を採択している(H.Strathmann,AlChE J.47,1077-1087(2001);M.A.Aroon et al.,A Review.Sep.Purif.Technol.75,229-242(2010);C.Charcosset,An Overview.Biotechnol.Adv.24,482-492(2006);M.T.Ravanchi et al.,A Review.Desalination 235,199-244(2009);J.A.Ritter et al.,Sep.Sci.Technol.42,1123-1193(2007);R.van Reis et al.,Curr.Opin.Biotechnol.12,208-211(2001))。実際に、高分子(T.Sokalski et al.,J.Am.Chem.Soc.119,11347-11348(1997);Y.Wang et al.,Appl.Energy88,981-1007(2011))、炭素(A.F.Ismail et al.,J.Membr.Sci.193,1-18(2001);H.Richter et al.,Angew.Chem.Int.Ed.56,7760-7763(2017))、そしてゼオライト(Z.P.Lai et al.,Science 300,456-460(2003);Y.Morigami et al.,Sep.Purif.Technol.25,251-260(2001))で製造された多数の分離膜が、分離に効果的であることが立証された。その中でも、ゼオライトは、苛酷な条件下に分子レベルで微細な大きさ/形状の差異を認識できる効果的な篩として働くことができ、これらの特性は、ゼオライト分離膜が様々な産業工程に適合なものとなるようする(V.Sebastian et al.,J.Membr.Sci.292,92-97(2007);R.W.Baker,Eng.Chem.Res.41,1393-1411(2002))。例えば、p-/o-キシレン(J.Choi et al.,Science325,590-593(2009);M.Y.Jeon et al.,Nature 543,690-694(2017))、1-ブテン/イソブテン(H.Richter et al.,Angew.Chem.Int.Ed.56,7760-7763(2017);H.Voss et al.,J.Membr.Sci.329,11-17(2009))、エタノール/水(Y.Morigami et al.,J.Mater.Chem.A3,9799-9806(2015))、CO2/N2(M.P.Bernal et al.,AIChE J.50,127-135(2004);N.Kosinov et al.,J.Mater.Chem.A2,13083-13092(2014))、及びCO2/CH4(T.Tomita et al.,Microporous Mesoporous Mater.68,71-75(2004);S.G.Li et al.,Adv.Mater.18,2601-2603(2006))の産業的/環境的に重要な混合物の分離に良好な分離性能を示す。分離しようとする物質に適する気孔サイズ及び構造を有するゼオライトを選択すると、混合物をサイズによって分離する分子篩分離膜を作ることができる。例えば、0.55nmの気孔サイズを有するMFI構造のゼオライト分離膜は、沸点が類似であるために既存の分離工程では分離し難いp-キシレン(0.58nm)及びo-キシレン(0.68nm)の混合物をサイズベースで分離することができる。
【0003】
微細孔(~2nmのサイズの気孔)を有するゼオライトを用いて作製した分子篩分離膜は、サイズベースで混合物を分離できるので、非常に高い分離性能を示す。しかし、ゼオライトの気孔サイズは、分離膜を透過する分子のサイズに類似してため、ゼオライト分離膜は低い透過度を有する。分離膜技術を分離膜工程に導入するとした場合に、透過度の遅い分離膜を使用すると、多数の分離膜が必要となる。このような短所は、高い分離能力にもかかわらず、ゼオライト分離膜の実工程での適用に大きな制約となる。
【0004】
このように、ゼオライト分離膜は、実使用を妨害するいくつかの制限がある。その上、分離膜ベース分離装置は、既存の分離システムを補完し追加できるように構築しなければならない。実際に、ゼオライト分離膜を横切る分子の高い透過度は、高い経済性を達成する上で非常に重要であり、これは、分離膜の空間集約性及び結果的には設置コストと関連がある(P.Bernardo et al.,Ind.Eng.Chem.Res.48,4638-4663(2009);L.Sandstrom et al.,J.Membr.Sci.380,232-240(2011))。実際に、多くの研究がターゲット分子の透過度を向上させることを目指してなされており、主として分離膜の厚さを減少させることにフォーカスしている(M.Y.Jeon et al.,Nature 543,690-694(2017);W.C.Yoo et al.,Angew.Chem.Int.Ed.49,8699-8703(2010);J.Hedlund et al.,J.Membr.Sci.222,163-179(2003);T.C.T.Pham et al.,Angew.Chem.Int.Ed.52,8693-8698(2013))。最近では、極めて薄いナノシートからなる種層を二次成長させ、250~1000nmの薄いMFI分離膜を作った(M.Y.Jeon et al.,Nature 543,690-694(2017))。実際に、種々の接近法が、MFI類型分離膜の実質的な拡散長を短縮させ得る非常に薄い分離膜を具現した(M.Y.Jeon et al.,Nature 543,690-694(2017);W.C.Yoo et al.,Angew.Chem.Int.Ed.49,8699-8703(2010);J.Hedlund et al.,J.Membr.Sci.222,163-179(2003);T.C.T.Pham et al.,Angew.Chem.Int.Ed.52,8693-8698(2013);K.Varoon et al.,Science334,72-75(2011)。しかし、薄い分離膜は、不回避に機械的特性が減少し、また外部衝撃に弱い可能性がある。その上、ナノシートを種として使用しない場合(M.Y.Jeon et al.,Nature 543,690-694(2017)には、蒸着された種間の隙間が埋め難くなる(C.Algieri et al.,J.Membr.Sci.222,181-190(2003))。したがって、連続した薄いゼオライト分離膜を合成する際に欠陥の形成を避けることは非常に難しい。少ない量ではあると予想されるが、欠陥は、透過する物質に非選択的経路を提供する(J.Hedlund et al.,J.Membr.Sci.345,276-287(2009);S.Hong et al.,Chem.Mater.30,3346-3358(2018);S.Hong et al.,J.Membr.Sci.569,91-103(2019))。欠陥を治癒することに関するいくつかの処理方式が報告されたが(S.Hong et al.,Chem.Mater.30,3346-3358(2018);B.Q.Zhang et al.,Adv.Funct.Mater.18,3434-3443(2008);D.Korelskiy et al.,J.Mater.Chem.A5,7295-7299(2017))、ゼオライト本来の高性能を維持する分離膜の製造のための信頼できる方法は未だ開発段階に留まっている。
【0005】
そこで、本発明者らは、上記の問題点を解決するために鋭意努力した結果、2~20nmのメソ孔を既存の微細多孔性ゼオライト分離膜に導入して階層的構造のゼオライト分離膜を製造する場合に、欠陥密度が顕著に減少すると同時にp-キシレンの高いモルフラックスが確保でき、200℃以上の温度及び8kPaのp-キシレンを含むフィードガス条件でも熱的低下無しで高いp-/o-キシレン分離性能を示すことを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、従来のゼオライト分離膜に比べて欠陥密度は顕著に減少し、熱的低下無しで高いp-/o-キシレン分離性能を有する分離膜及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、上記の分離膜を用いたキシレンの分離方法を提供することにある。
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、0.1~5μmの厚さを有し、2nm以下の微細孔及び2~20nmサイズのメソ孔を含む階層的構造のゼオライト分離膜を提供する。
【0009】
本発明は、また、MFI種層が形成された支持体上にテトラアルキルホスホニウム塩: SiO2:H2O=5~50:5~500:1,000~50,000のモル比に構成された二次成長溶液を添加して水熱合成させる段階を含む、前記階層的構造のゼオライト分離膜の製造方法を提供する。
【0010】
本発明は、また、前記階層的構造のゼオライト分離膜を用いてキシレンを含む混合物でp-キシレンを分離するp-キシレンの分離方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)一般的な従来のMFI分離膜、及び(b)本発明の一実施例に係る階層構造の分離膜、の断面を概略的に示す模式図である。
【0012】
【
図2】本発明の一実施例に係る種層と分離膜のSEMイメージ及びXRDグラフである。
【0013】
【
図3】本発明の一実施例に係る4個のHM分離膜とMFI粒子のXRDグラフである。
【0014】
【
図4】本発明の一実施例に係るHM分離膜の階層構造の把握のためのTEMイメージ、AR吸着等温線測定グラフ及びBJH及びH-K分析結果を示す図である。
【0015】
【
図5】本発明の一実施例に係るHM及びMM分離膜の分離性能及び長期間安定性テスト結果、並びにFT-IRを用いた酸点分析結果を示す図である。
【0016】
【
図6】本発明の一実施例に係るFCOMを用いたHM及びMM分離膜の欠陥構造を分析した写真である。
【0017】
【
図7】本発明の一実施例に係る文献調査を用いた他のMFI分離膜との分離性能を比較したグラフである。
【0018】
【
図8】本発明の一実施例に係るHM粒子のSEM及びTEMイメージ写真である。
【0019】
【
図9】本発明の一実施例に係るMM分離膜とHM分離膜のEDX測定結果を示す写真である。
【0020】
【
図10】本発明の一実施例に係るHM粒子とMM粒子のH-K及びBJH分析結果を示すグラフである。
【0021】
【
図11】本発明の一実施例に係るMM分離膜とHM分離膜の欠陥構造分析のためのFCOM測定結果を示す写真である。
【0022】
【
図12】本発明の一実施例に係るHM分離膜とMM分離膜の単一気体透過性能を示すグラフである。
【0023】
【
図13】本発明の一実施例に係る選択された分離膜の長期間安定性テスト結果を整理したグラフである。
【0024】
【
図14】本発明の一実施例に係る長期間安定性テスト以降の分離膜の色変化を示す写真である。
【0025】
【
図15】本発明の一実施例に係るMM分離膜のFT-IR測定結果を示すグラフである。
【0026】
【
図16】本発明の一実施例に係るHM分離膜のFT-IR測定結果を示すグラフである。
【0027】
【
図17】本発明の一実施例に係るTBAOHを用いて作ったHM分離膜のSEMイメージ及びXRDグラフである。
【0028】
【
図18】本発明の一実施例に係るTBAOHを用いて作ったHM分離膜の透過性能結果を示すグラフである。
【0029】
【
図19】本発明の一実施例に係るp-/o-キシレンのフィードガス中の組成を変化させながら測定した、HM分離膜とMM分離膜の分離性能及び長期間安定性テスト結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
特に断らない限り、本明細書で使われる技術的及び科学的用語はいずれも、本発明の属する技術の分野における熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書における命名法は、本技術分野でよく知られており、通常使用されるものである。
【0031】
2~20nmのメソ孔を既存の微細多孔性ゼオライト分離膜に導入して階層的構造のゼオライト分離膜を製造すると、欠陥密度が顕著に減少すると同時にp-キシレンの高いモルフラックスを確保することができ、200℃以上の温度でも熱的低下無しで高いp-/o-キシレン分離性能を示すことを確認した。
【0032】
したがって、本発明は、一観点において、0.1~5μmの厚さを有し、2nm以下の微細孔及び2~20nmサイズのメソ孔を含む階層的構造のゼオライト分離膜に関する。
【0033】
本発明の他の観点において、MFI種層が形成されている支持体上に、テトラアルキルホスホニウム塩:SiO2:H2O=5~50:5~500:1,000~50,000のモル比に構成された二次成長溶液を添加して水熱合成させる段階を含む、前記階層的構造のゼオライト分離膜の製造方法に関する。
【0034】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0035】
非常に薄い厚さの分離膜は、少ない数の欠陥にも敏感であるため、本発明では、既存のゼオライト分離膜にメソ孔を挿入して階層構造を作ることに集中する。メソ孔がスイスチーズの孔のようなゼオライト分離膜の内部に存在するとすれば、メソ孔は微細多孔性ゼオライト粒子内部の速い輸送経路として働くことができる(D.D.Xu et al.,Adv.Funct.Mater.24,201-208(2014))。実際に、一般の微細多孔性触媒の拡散限界を解消し、触媒非活性化を防止することによって高性能を確保することから、触媒研究では階層的に構造化された触媒が広く普及されている(F.Schmidt et al.,J.Catal.307,238-245(2013);J.Perez-Ramirez et al.,Chem.Soc.Rev.37,2530-2542(2008))。階層構造の触媒の製造には、2つの主要接近法がある;デシリケーション/デアルミネーション(desilication/dealumination)を用いたトップ-ダウン(top-down)方式(D.Verboekend et al.,Catal.Sci.Technol.1,879-890(2011);J.C.Groen et al.,J.Mater.Chem.16,2121-2131(2006);A.N.C.van Laak et al.,J.Catal.276,170-180(2010))、及び適切なSDA(structure directing agent)選択を用いたボトム-アップ(bottom-up)方式(K.Na et al.,Science333,328-332(2011);X.Y.Zhang et al.,Science 336,1684-1687(2012))がそれである。この2種類の方法のうち、前者の方法をpost-mesopore-generation(上で言及した欠陥の非選択的な欠陥の同時発生を誘発できるトップ-ダウン方式の接近法)と呼ばれる。しかし、SDAは、高コストの点から使用を最小化しなければならない。商業的に利用可能な有機テンプレート(tetra-n-butylphosphonium hydroxide;TBPOH)は、概念的に、遊び場のジャングルジムと類似な形態のSPPs(self-pillared pentasils)(D.D.Xu et al.,Adv.Funct.Mater.24,201-208(2014);X.Y.Zhang et al.,Science 336,1684-1687(2012))を準備することに効果的であると報告された。技術的に、SPPは、MEL類型ゼオライトコア周辺にMFIゼオライトの反復ブランチング(branching)によって形成される。実際に、階層構造のゼオライト粒子の製造のための合成経路が、ゼオライト分離膜を製造する手段として使用されたことが報告された。具体的に、オルカノシラン界面活性剤(organosilane surfactant)である3-[(トリメトキシシリル)プロピル]オクチルジメチル-アンモニウムクロリド(3-[(trimethoxysilyl)propyl]octyldimethyl-ammonium chloride,TPOAC)が使用された。生成されたMFI型ゼオライト分離膜は、小さい分子の透過選択性は与えられなかったが、メソ孔の増加によって向上した水透過度を確保した(L.Peng et al.,J.Membr.Sci.549,446-455(2018))。
【0036】
本発明では、上に言及したジャングルジムのようなメソ-微細多孔性粒子の形成を許容するTBPOHを用いてメソ孔を含む微細多孔性ゼオライト分離膜を誘導し、SDAとしてのTBPOHの可能性をうかがうことができる。実際に、合成された分離膜は、ゼオライト分離膜内部にメソ孔を含有しており、スイスチーズと類似である。一般のゼオライト分離膜と同じ厚さが与えられると、より高いp-キシレンモル透過度を有するので、実質的な拡散長が減少していることが確認できる。好ましくは、メソ孔を含む分離膜は、少ない欠陥を含んでおり、高いp-キシレン透過分離性能を示す(特に、200℃以上の高温でも)。特に、このような高温分離能力はよく維持され、階層構造の分離膜が精製及び石油化学産業(US6376733;US9227891;US6646177)に適合するものとなるようにする。特に、既存の吸着ベース分離工程を補充できる工程として適している。分離膜内部に分布したメソ孔の存在は、長い作動期間において高性能を維持することを助ける。
【0037】
本発明において、前記テトラアルキルホスホニウム塩は、TBPOH、TBPF、TBPBr、TBPCl、TBPI、TPPOH、TPPF、TPPBr、TPPCl、TPPI、TEPOH、TEPF、TEPBr、TEPCl及びTEPIからなる群から1種以上選択されてよいが、これに限定されるものではない。
【0038】
好ましくは、実施例で使用したTBPOHを使用することができ、TBPOHのOHがハロゲン原子に置換されたTBPF、TBPBr、TBPCl又はTBPIを使用することができる。また、TBP(tetrabutyl phosphonium)の代わりに、TPP(tetrapropyl phosphonium)又はTEP(tetraethyl phosphonium)系の化合物も使用することができる。
【0039】
本発明において、前記水熱合成は、70~175℃の温度で12~240時間行われてよく、好ましくは90~140℃の温度で24~240時間行われてよい。上記の温度及び時間の範囲で行うと、メソ孔が含まれた0.1~5μm厚の薄くて均一な分離膜が合成される効果がある。
【0040】
本発明において、前記水熱合成は、1回又は2回行われてよいが、これに限定されるものではない。
【0041】
本発明において、前記水熱合成後に、分離膜を30~200℃の温度で1~24時間、好ましくは50~100℃の温度で5~12時間乾燥させる段階をさらに含むことができる。
【0042】
本発明において、前記乾燥後に、分離膜を10~1,000mL/min-1の空気の流れ下で0.2~10℃/min-1の上昇速度で350~650℃で6~48時間焼成させ、分離膜内部に残っている有機構造誘導体を除去する段階をさらに含むことができる。
【0043】
本発明において、前記支持体は、アルミナ、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリイミド、シリカ、グラスガンマ-アルミナ、ムライト(mullite)、ジルコニア(zirconia)、チタニア(titania)、イットリア(yttria)、セリア(ceria)、バナジア(vanadia)、シリコン、ステンレススチール及びカーボンからなる群から選ばれる1種以上であってよいが、これに限定されるものではない。
【0044】
本発明の一実施例において、階層構造の分離膜を用いて、p-キシレンとo-キシレン混合物の分離性能を測定した結果、225℃で1.6mol・m-2・s-1・Pa-1のp-キシレンの透過度と53.8の分離係数を得た。これは、同一厚さの一般分離膜に比べて、p-キシレンの透過度が2倍高い数値であり、分離係数も15倍高い数値である。また、約200時間、高温条件(275℃)で工程安定性実験を行った結果、分離係数は一定に維持され、透過度は20~25%減少し、同一厚さの一般分離膜では透過度が50~55%減少していることを確認した。
【0045】
したがって、本発明は、他の観点において、前記階層的構造のゼオライト分離膜を用いて、キシレン異性体を含む芳香族炭化水素の混合物からp-キシレンを分離するp-キシレンの分離方法に関する。
【0046】
本発明に係るゼオライト気孔のサイズは、0.55nmと、p-キシレン(0.58nm)に類似しており、o-キシレン(0.68nm)に比して小さい。したがって、分離膜を用いると、キシレン異性体混合物をサイズベースで分離することができる。階層構造の分離膜は、構造内のメソ孔によってより高い透過度を得ることができ、より高い工程安定性を示すことができる。
【0047】
このように、本発明に係る階層的構造のゼオライト分離膜は、膜内部に埋め立てられたメソ孔が、ターゲット物質であるp-キシレン分子の速い輸送を可能にし、分離膜性能の低下を防止することにより、高いフラックス及び選択度を有することができ、特に、高い温度でも遥かに高いp-キシレンモルフラックスとp-/o-キシレン選択度を示すことができる。
【0048】
本発明のキシレンの分離方法は、200℃以上の温度、好ましくは200~300℃の温度で行うことができる。
【0049】
本発明に係る階層的構造のゼオライト分離膜を利用する用途において、二酸化炭素の分離には二酸化炭素の分離、捕集又は除去などを全て含む。
【0050】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0051】
[実施例]
製造例1:階層構造のゼオライト膜の合成
【0052】
ゼオライト分離膜は、種成長法を用いて作製した。100nmサイズを有する球形のMFI粒子は、一般的且つ階層構造を有する分離膜の作製において核或いは種粒子として使用される。球形のMFI粒子を用いた合成方法は、既に報告されている(J.Choi et al.,Adsorption 12,339-360(2006))。稠密に敷かれた種層を準備するために、MFI粒子は、ソニケーター(UC-10P,JEIO TECH)を用いてディスク形態のα-Al2O3支持台に蒸着される(直径21mm、厚さ2mm)(J.Choi et al.,Adsorption 12,339-360(2006))。まず、ホームメードα-Al2O3ディスクをテフロンホルダーに固定させた後、ディスク形のカバーグラス(直径22mm(Fisher Scientific,no.22CIR-1))でサンドイッチさせた。サンドイッチされたディスクを、あらかじめ準備したMFI種懸濁液(0.05gの100nmサイズのMFI粒子/40mL無水トルエン(Sigma Aldrich))に浸した後、ソニケーションを20分間行った。ソニケーションによって種層を形成した後、昇温速度1℃・min-1で450℃まで上げて4時間維持しつつ焼成を行った。種層を形成する過程の詳細は、J.Choi et al.文献を参照した(J.Choi et al.,Adsorption 12,339-360(2006))。
【0053】
一般MFI分離膜(本実施例においてレファレンスとして使用)の合成のために、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(tetrapropylammonium hydroxide,TPAOH、H2O中1.0M、Sigma Aldrich)をSDAとして使用した。テトラエチルオルトシリケート(tetraethyl orthosilicate,TEOS、試薬等級、Sigma Aldrich)は、シリカソース(silica source)として使用された。特に、蒸留水が入っているポリプロピレン瓶にTPAOHを入れた後、TEOSを添加した。このように製造された合成ゾルは、pp瓶をぎゅっと締めた後、一晩、シェーキングマシン(SI-300R,Lab Companion,South Korea)を用いて加水分解を行った。一般MFI分離膜合成ゾルの最終組成は、40 SiO2:9 TPAOH:9500 H2O:160エタノールであった。詳細な合成ゾル作製方法は、文献を参照した(J.Choi et al.,Adsorption 12,339-360(2006);A.Gouzinis et al.,Chem.Mater.10,2497-2504(1998))。
【0054】
階層構造の分離膜を合成する方法は、文献を参考にした((X.Y.Zhang et al.,Science 336,1684-1687(2012))が、唯一の差異点は水の量である。特に、TBPOH(H2O中40wt%,Sigma Aldrich)を、撹拌中のTEOSに一滴ずつ添加した。そして、蒸留水を混合溶液に追加した後、12時間ビーカーで撹拌した。このとき、ビーカーはパラフィルムで密封した。次いで、TEOSの加水分解過程で形成されるエタノールを、常温での撹拌による蒸発で除去した。合成溶液の最終組成は、40 SiO2:12 TBPOH:10000 H2Oであった。
【0055】
水熱反応のために、種層が敷かれたα-Al2O3ディスクを、上で言及した2つの合成溶液が入っているテフロンライナーに完全に浸した。そして、密封したテフロンライナーをオートクレーブに入れ、あらかじめ加熱した対流オーブンに位置させた。一般分離膜は、既存に報告された通り、90℃で5日間反応させた(G.Xomeritakis et al.,Ind.Eng.Chem.Res.40,544-552(2001))。階層構造の分離膜は、115℃で4日間反応させた。最初の水熱合成反応が終わった後、分離膜を蒸留水に一晩浸しておいた。その後、常温で12時間乾燥させた。その後、乾燥した分離膜を、新しい合成ゾルの入っているテフロンライナーに浸した後、115℃で6日間さらに反応させた。水熱合成が終わった後、分離膜は蒸留水に一晩浸しておき、100℃で12時間乾燥させた。2種の乾燥した分離膜は、昇温速度0.5℃・min-1で480℃まで上げて10時間維持しつつ焼成を行った。この際、一般空気を200mL・min-1で流した。この過程により、ゼオライト構造中のSDAを除去した。2つの作製された分離膜をそれぞれ、MM及びHMと命名した。ここで、一番目の文字であるM及びHはそれぞれ、一般的な微細孔MFI分離膜及び階層構造の分離膜を意味し、二番目の文字であるMは、分離膜(membrane)を意味する。また、2つの分離膜を作製する際に、合成ゾルで形成される粒子を回収して5回の遠心分離を行い、70℃で乾燥させた。次いで、回収された粒子を200mL・min-1の空気を流しつつ1℃・min-1の昇温速度で550℃まで温度を上げた後、10時間維持しつつ焼成を行った。各粒子はそれぞれ、MM及びHM粒子と命名した。
【0056】
実施例1:階層構造の分離膜の特性分析
【0057】
XRD(X-ray diffraction)パターンは、Rigaku D/Max-2500V/PC回折計を用いて得た。SEM(Scanning electron microscopy,Hitachi SU-70、S-4300、及びS-4800)は、ゼオライトサンプルのイメージを得るために使用した。EDX(Energy dispersive X-ray spectroscopy)測定は、Hitachi S-4800 SEMを用いて行った。サンプルのAr吸着等温線は、87Kで測定された(3Flex Physisorption,Micromeritics Instrument Corp.)。特に、分離膜サンプルは、小さい片に壊した後に測定した。測定前に、分離膜と粒子サンプルの両方に、350℃で12時間真空で脱気(degassing)を行った。気孔サイズ分布に関しては、微細孔とメソ孔の特性を得るために、H-K(Horvath-Kawazoe)とBJH(Barrett-Joyner-Halenda)分析方法がそれぞれ用いられた。分離膜サンプルの欠陥を示す共焦点光学顕微鏡(FCOM)イメージは、LSM 700レーザー走査式共焦点顕微鏡(Zeiss)を用いて得た。FOCM測定前に、分離膜サンプルはフルオセインNa+塩(fluorescein Na+ salt)(Sigma-Aldrich)水溶液に染色され、その過程は、既に報告された(S.Hong et al.,J.Membr.Sci.569,91-103(2019))。染料原子は1nmのサイズを有しているので、分離膜内の欠陥に選択的に接触可能であり、これにより、FCOMイメージは、欠陥の量と位置を確認することができる。電解放出TEM(Field emission transmission electron microscopy)イメージは、Tecnai G2 F30ST(FEI company)を用いて測定した。HM分離膜の結晶粒構造を確認するために、鋭いピンセット(tweezer)で分離膜サンプルを掻き、いくつかの結晶粒を確保した。
【0058】
また、HM分離膜の切断面に対するより良好な視覚化のために、LYRA3 XMHデュアルビーム焦点イオンビーム(TESCAN)を用いて、100nm厚を有する5×2μm2サイズの片を得た。このサンプルをTEMグリッド(grid)(Omniprobe(R) Lift-Out Grids(Cu)、Ted Pella,Inc.)に載せて分析した(Tecnai G2 F30ST)。FT-IR(Fourier transform infrared spectroscopy,Nicolet iS50,Thermo Fisher Scientific Inc.)は、MMとHM分離膜の酸点分析のために用いられた。そのために、ブレンステッドとルイス酸点を滴定し得るピリジン(J.D.Na et al.,Catal.Lett.143,267-275(2013))を探針分子として用いた。特に、分離膜サンプルは、真空条件で3℃・min-1で300℃まで上げて6時間維持しつつ熱活性化を進行させた。熱活性化後に、フレッシュな分離膜サンプルのFT-IRスペクトルをATR(attenuated total reflection)モードで測定した後、レファレンスとして使用した。そして、分離膜の上層表面をピリジンに10分間浸しておいた。その後、ピリジンを含んでいるサンプルを、FT-IR測定前に10分間常温で乾燥させた。この過程は、物理的に或いは弱く分離膜サンプルについているピリジンを除去するために行う過程である。そして、酸点にピリジンを吸着している分離膜サンプルのFT-IRスペクトルをATRモードで15分間隔で測定した。
【0059】
実施例においてHM分離膜の特性と性能を比較できる基準としてMM分離膜を合成した。100nmサイズの球形MFI類型ゼオライト粒子で埋まって作られた同一の種層(
図2(a1)及び(a2))を使用したにもかかわらず、それぞれTPAOHとTBPOHを用いて合成したMM(
図2(b1))とHM(
図2(c1))は、SEM上で異なる形態を示した。第一に、MM分離膜は、文献に報告の通り、滑らかな分離膜表面を有していた(G.Xomeritakis et al.,Ind.Eng.Chem.Res.40,544-552(2001))。これに対し、HM分離膜は、不均一な結晶粒によるものとされる粗い分離膜表面を有していた。このような不均一な結晶粒は、MELゼオライト周辺にMFIゼオライトが反復してブランチング(branching)される自己-柱(self-pillaring)結晶成長と関連がある(X.Y.Zhang et al.,Science 336,1684-1687(2012))。各結晶粒は、より小さい粒子で構成されたものと見なされる。HM分離膜には、
図2(c1)及び
図8(a)の橙色の矢印で表示した楕円形粒子が発見された。これらの楕円形粒子は、2次成長で使用された合成溶液から得たHM粒子と形状及びサイズが類似している。これらの粒子は、HM分離膜が水熱合成される際に凝集して成長した後、分離膜の表面についたものと見なされる。両分離膜のXRDパターンを分析した結果、MM分離膜は、純粋なMFI類型ゼオライトからなることを確認したが、HM分離膜は、MFI類型ゼオライトに加えて少しのMEL構造を含んでいることを確認した(
図2(b3)~(c3))。特に、XRD分析から、HM分離膜内には約~12%のMEL構造が含まれていることを確認した(
図3)が、これは、前述した自己-柱結晶成長と関連している。両分離膜の厚さはいずれも1μmと観測され(
図2(b2)~(c2))、これにより、透過結果は構造差に直接に関連があると見なされる。
図2(c2)のHM分離膜の横断面SEM写真は、HM分離膜の粗い結晶粒を示しており、これに対し、MM分離膜は、滑らかな結晶粒を示している(
図9)。類似の分離膜厚にもかかわらず、
図2(b3)のXRD分析結果は、MM分離膜がhoh-方向性を有していることを示し、これに対し、HM分離膜は方向性を有していない(
図2(c3))。したがって、方向性によって現れる改善された分離性能は、MM分離膜のみから観察できる。
【0060】
HM分離膜の階層的構造
【0061】
HM分離膜の特性を理解するために、分離膜表面の結晶粒をサンプリングし(
図4(a1))、TEMで分析した。高配率のTEMイメージ結果(
図4(a2)及び(a3))は、不規則な結晶粒が粗い表面の小さい粒子が互いに育って形成されたものであり、
図4(a3)に黄色矢印で表現した球形のメソ孔を含んでいるということを明確に示している。メソ孔のサイズは、2~5nmである。比較のために、
図4(a3)の粒子TEMイメージを、
図4(a1)内の白い円に同割合で追加しておいた。直接の比較により、TEM分析に使用された粒子(
図4(a2)及び(a3))はHM分離膜の結晶粒と非常に類似しており、これは、分離膜サンプルから得た粒子サンプルは分離膜の結晶粒を代表するということを示す。結晶粒分析に加え、HM分離膜の断面を見ながら微細構造特性を分析した。特に、
図4(a1)から観察された粗い表面は、断面SEMイメージにも存在する(
図4(b1))。
【0062】
より重要なことは、
図4(b2)のTEMイメージは、分離膜中間に白色点又は空洞が存在することを示し、一部を黄色矢印で表示した。事実上、高配率のTEMイメージは、空洞の存在を裏付ける(
図4(b3))。断面のTEMイメージを見ると、これらの形態は、2~5nm程度のメソ孔と見なすことができる(Z.Liu et al.,Chem.Mater.18,922-927(2006))。特に、
図4(a3)中の結晶粒内の白い点は、比較可能な気孔サイズを有し、よって、膜に存在するものと明白に同一である(
図4(b3))。
【0063】
図4a~bの顕微鏡表現の限界を考慮して、α-Al
2O
3ディスク(約150nmのマクロ孔サイズを有する)と分離膜のAr物理吸着特性を確認した。ゼオライト分離膜の比率は全分離膜において極めて低いので、微細孔を有するMMとHM分離膜(
図4(c1))のAr物理吸着データはベアディスクと類似である(
図4(c2))。それにもかかわらず、BJH気孔サイズ分布表(
図4(c3))は、前述したメソ孔(4~5nm)がHMにのみ存在するということを明確に示す。また、MMとHM粒子のAr物理吸着等温線を測定した(
図10)。両分離膜サンプルの微細孔サイズ分布表は、それぞれのパウダーのそれと類似である(
図4(c2)及び
図10(b))。特に、MM粒子とHM粒子は、直径が約0.5nmである10MR(membered ring)チャネルに対応する微細孔を保有していたが、MM粒子の気孔サイズ分布では、約0.7~0.8nmの追加ピークが観察された。これは、Ar吸着による構造的変化と関連がある(E.Garcia-Perez et al.,J.Phys.Chem.C 112,9976-9979(2008))。一方、HM分離膜と粒子サンプルのいずれも0.7~0.8nmの人工的な微細孔を含んでいない。特に、HM分離膜は、0.6~2nmの範囲でより高い程度の微細孔を示した。これは、階層的に構造化されたHM粒子と同様に、より多い無秩序な微細孔が存在することを示す(
図10(b))。また、Ar物理吸着等温線データ(
図10(a))とBJH気孔サイズ分布表(
図10(c))は、HM粒子のみが少しのメソ孔と共に階層構造を有していることを明確に示す。報告されたSPP粒子とは違い(X.Y.Zhang et al.,Science 336,1684-1687(2012))、HM粒子はジャングルジム形態の自己-柱(self-pillared)メソ孔を有しない(
図8(c)-(d))。本発明では、単に水の量のみを増加させたためであり、オリジナルレシピーにおける少ない水の量が非常に重要であるということを強力に裏付ける。その代わりに、HM粒子は、小さい粒子が固まって育っているように見えるが、これにより、間間にメソ孔が形成されるものと見なさる。一方、HM分離膜は、メソ孔が含まれている結晶粒(
図4(a2)~(a3)及び(b2)~(b3))が集まっているように見える。分離膜の比率が低いので、非常に低い強度を示すが、BJH分布に現れたピーク(
図4(c3))は、分離膜内部にメソ孔があるということを明確に示す。したがって、TEMイメージと共に(
図4(a1)~(b3))、最初に、孤立した球形のメソ孔(略2~5nm)をゼオライト膜内部に成功的に形成したと結論付けることができる。類似の分離膜の厚さを有する2類型の分離膜の質量を考慮すれば、
図4(c3)においてHM分離膜が有するより高いメソ孔体積は、上述したように、より無秩序な分離膜構造によるものと見なされる。
【0064】
実施例2:階層構造のMIF分離膜のp-/o-キシレンの分離性能確認
【0065】
同一比率のp-/o-キシレン混合物のゼオライト分離膜分離性能を測定するために、フィード(feed)側と透過液(permeate)側を1気圧とするヴィッケ-カレンバッハ(Wicke-Kallenbach)方法を行った。Heガスは、分離膜を透過した物質をGC内カラムに移動させるスイープ(sweep)ガスとして使用された。また、Heガスは、サンプルをサンプルループ(loop)に移動させるキャリアガスの役割を果たした。フィードガスにキシレンを含めるために、Heガスは液体p-キシレンとo-キシレンが含まれたバブラーを通過した。p-キシレン(26℃での蒸気圧:1.24kPa)とo-キシレン(26℃での蒸気圧:0.93kPa)の蒸気圧が異なるので、Heガスの流速は、p-キシレンでは41mL・min-1、o-キシレンでは54mL・min-1に設定した。最終フィードガス内には0.5kPaのp-キシレンと0.5kPaのo-キシレンが含まれる。また、単一成分ベースの透過測定のために、p-キシレンとo-キシレンが含まれたバブラーを通過するHeガスの流速は、41と54mL・min-1にそれぞれ設定した。Heガスは一つのバブラーを通過するようにし、全体フィードガスの量が95mL・min-1となるように純粋なHeガスが添加された。透過液側では、フィードと同様に、95mL・min-1のヘリウムがスイープガスとして使用された。透過気体はGC(Agilent 7080A)に移動し、Agilent HP-INNOWaxカラムを通過した後、FID(Flame Ionization Detector)を用いて測定した。透過気体の定量化の信頼度を高めるために、一定の量のレファレンスガスとしてCH4ガス(3mL・min-1)を、GCに注入される前にラインに追加した。最後に、MMとHM分離膜の長期間p-/o-キシレン分離性能テストが275℃(オーブン(DX302,Yamato Scientific Co.)の最大温度)で200時間行われた。
【0066】
図5(a)は、測定した温度で(ca.50~275℃)低いp-/o-キシレン分離性能を示している。特に、最大p-/o-キシレン分離係数(SF)は、150℃で4.3と観測された。このような低い分離性能は、既存にも一様に報告された(G.Xomeritakis et al.,Ind.Eng.Chem.Res.40,544-552(2001);C.J.Gump et al.,Ind.Eng.Chem.Res.40,565-577(2001))。一方、HM分離膜は、非常に向上したp-/o-キシレン分離性能を示す。225℃で最大のp-/o-キシレンSF~53.8±7.3とp-キシレン透過度~1.6±0.4×10
-7mol・m
-2・s
-1・Pa
-1は、対応分離膜であるMM分離膜に比べて非常に高い数値である(225℃でp-/o-キシレンSF~3.5±0.5及びp-キシレン透過度~0.86±0.2×10
-7mol・m
-2・s
-1・Pa
-1)。特に、精製及び石油化学産業は、高温でp-キシレン分離が必要であるため、約200~275℃範囲の高温で高い性能が好ましい(US6376733;US9227891;US6646177)。同一の種層及び類似の分離膜厚の使用にもかかわらず、HM膜は、p-/o-キシレン分離性能の顕著な増加を示した。興味深いことに、HM膜の透過挙動は、~50-225℃の温度範囲でb-方向MFI分離膜の透過挙動と類似しており(Z.P.Lai et al.,Science 300,456-460(2003))、これは、類似の数の欠陥を示唆する。MM分離膜の低い分離性能は、欠陥の否定的な影響と見なすことができ、これは、FCOM技術を用いて明確に示される(
図6(a1)~(a3))。クラックは、多孔性支持台の界面まで伝播して分子篩ベースの分離を無効化させる。一方、HM分離膜は、クラックを含んでいない(
図6(b1)~(b3))。したがって、高いp-/o-キシレンSFを有する(
図5(b))。代わりに、明るい点(
図6(b1)及び(b2)、黄色矢印)が見られるが、主に分離膜表面にあり、分離膜の分離性能を減少させない。
【0067】
図6に示すように、膜サンプルの染色時間が2日から8日へと増加したが、結果的なFCOMイメージは類似しており、2日染色後に全ての欠陥が染色されるということを示す。なお、染色過程をモニタリングした結果は、欠陥に関する情報を与える(
図11(a3)~(d3)中の染色結果写真)(M.Lee et al.,ACS Appl.Mater.Interfaces 11,3946-3960(2019))。類似の欠陥形態にもかかわらず、8日染色でのみ染料が分離膜を透過して出たことが写真から確認できる(
図11(b3)、赤い矢印)。これは、MM分離膜内欠陥の数がHM分離膜に比べて遥かに目立つということを示す。また、TEM及びAr物理吸着測定によって確認されたメソ孔は、FCOM測定で検出されなかった(
図6(b1)~(b3))。これは、明確にHM分離膜を単一結晶分離膜と類似にさせる、粒子間の相互成長程度が非常に高いことを示す。急激に熱処理されたMFI膜のFCOM分析が、膜の中央に埋め立てられた円盤状の空いた空間を示したことを考慮すれば(J.Choi et al.,Science 325,590-593(2009))、本発明においてFCOM結果(
図6(b1)~(b3))は、HM分離膜の相互成長がより良好になされたということを示す。したがって、HM分離膜のメソ孔は、孤立して微細孔の間に埋め込まれているということが分かる。最終性能に対するHM膜の粒子間の欠陥の無視できる効果を仮定すれば、測定された温度、ひいては225℃の高温でも観察された高いp-キシレン透過度は、空のメソ孔と関連があり得る。なぜなら、この空間がp-キシレンの容易な拡散を助けるためである。したがって、より遥かに高いp-キシレン透過速度によって反映されるように、有効拡散長はHM分離膜において減少した。すなわち、このようなp-キシレンの透過度は、方向性を有するより薄い分離膜(b-面外方向性の1μm厚)(Z.P.Lai et al.,Science 300,456-460(2003))と肩を並ぶことができる。それにも拘わらず、275℃までの高い温度での性能測定は、スイス-チーズのような微細孔構造を有するHM分離膜が、高温で高いp-キシレン透過度を維持でき、これは、孤立して挿入されたメソ孔が有益な影響を与えるということが分かる。
【0068】
欠陥(主に、クラック)によるMM及びHM分離膜の分離性能の差異は、単一成分透過性能測定結果から理解され得る。p-キシレンがMFI構造に吸着される際に、MFIゼオライト構造が変形されると報告された(G.Xomeritakis et al.,Microporous Mesoporous Mater.38,61-73(2000))。特に、p-キシレンが吸着され、MFI分離膜内結晶粒が、MFIゼオライトの構造変化によって部分的に捩れてしまい、これにより、結晶粒間の欠陥が拡張されることがある(S.Hong et al.,J.Membr.Sci.569,91-103(2019))。
図12は、類似の透過挙動を示すMM分離膜(
図12(a1)及び(a2))が相当な数の大きい欠陥を含んでいることを示し、単一成分よりも2成分混合物成分においてo-キシレン透過度がだいぶ増加したことは(
図12(b1)及び(b2))、欠陥がHM分離膜においてより多く開いていることを示す。このような欠陥拡大の否定的な影響がHM膜でも重要であったが、p-キシレン吸着が誘導した構造変化が高温において重要でなかったため、200℃以上の透過挙動は比較可能であった(
図12(b1)及び(b2))。
【0069】
MM及びHM分離膜の長期間熱安定性測定は、275℃で最大で200時間試験された(
図5(c)~(d))。これは、実験室規模では極めて苛酷な(harsh)条件である。事実上、p-/o-キシレン透過度は、次第に経時減少する様子を示した(MM分離膜)。特に、p-キシレン透過度は、~6.3×10
-8mol・m
-2・s
-1・Pa
-1から、~3.3×10
-8(100時間後)及び~3.0×10
-8mol・m
-2・s
-1・Pa
-1(200時間後)にまで略50%減少した。o-キシレンも類似の減少を示すので、p-/o-キシレンSF値は4に維持される。このような性能の減少は、微細孔がo-キシレンによって目詰まり(clogging)されるためである(T.C.T.Pham et al.,Angew.Chem.Int.Ed.52,8693-8698(2013))。一方、HM分離膜は、200時間までp-とo-キシレンの両方とも殆ど減少しなかった。特に、p-キシレンの透過度である7.4×10
-8mol・m
-2・s
-1・Pa
-1から、200時間後に6×10
-8mol・m
-2・s
-1・Pa
-1にまで減少した。これは、前述した遅く透過されるo-キシレンによる目詰まり(clogging)現象が、HM分離膜では影響がないということを示す。これは、HM分離膜内に存在するメソ孔による実質的な透過長の減少に起因したものと判断される。
図13によれば、0.2と1μmの厚さを有する2個の異なるMFI膜の長期安定性結果が文献に報告された(T.C.T.Pham et al.,Angew.Chem.Int.Ed.52,8693-8698(2013))が、0.2μm厚のMFI分離膜によるp-キシレン透過度は380時間後にも変わらず、1μm厚のMFI分離膜は、480時間後に70%まで減少した。これは、薄い分離膜が、目詰まり(clogging)現象を避けることに有利であるということを示し、HM分離膜の高い熱安定性を説明している。また、改善された長期間熱安定性は、コークス(coke)形成に対するより高い抵抗性及び階層構造のゼオライトでの触媒非活性化と関連し得る(L.L.Wu et al.,Chem.Commun.48,9492-9494(2012);M.Milina et al.,Nat.Commun.5,10(2014))。したがって、分離膜内に埋め立てられたメソ孔が、閉塞効果を減少させることができ、微細多孔性チャネルの間で徐々に浸透する成分のための空間を提供できることにより、閉塞によって引起こされるコークス形成を防止できるということが予想できる。安定性テストが終わった後、MM分離膜は濃い褐色になったが、これはコークス形成に起因する(
図14)。興味深いことに、両分離膜とも、p-キシレンとo-キシレンが類似に減少し、200時間の間にp-/o-キシレンSFが維持された。
【0070】
また、分離膜の分離性能は、フラックス(フィード気体のターゲット物質の回収率と関連する。)とSF(ターゲット物質の純度と関連する。)で示す。2つの属性が同時に考慮されるべきであるが、しばしば後者の方がより重要と見なされる。これと関連して、
図5(c)~(d)に示した結果に基づくそれらの生成物値から、両分離膜の性能を把握した(
図5(e))。HM分離膜の生成物値は、MM分離膜の値よりも1桁数だけ高く、これは、HM分離膜の高いp-キシレン分離性能を裏付ける。また、HM分離膜の生成物値に対する分離性能はよく保存され、~20-25%の減少程度を示すが、MM分離膜の減少度合は、~50~55%分だけ顕著に減少した。
【0071】
ゼオライト構造内にリン原子がある場合に、コークスを誘発するブレンステッド酸点の生成が抑制されると知られている(H.J.Cho et al.,ChemCatChem 9,398-402(2017))。HM分離膜の合成に使用されるSDAにリン原子が入っているので、HM分離膜の弱いか少ない酸点が、分離膜の長期安定性の改善を説明することもできる。事実上、全成分がシリカ(all-silica)であるMFI分離膜は、ブレンステッド酸点と関連したコークス形成による気孔閉塞の発生を避ける上で好ましいだろう(H.J.Cho et al.,ChemCatChem 9,398-402(2017))。しかし、アルミナディスクを支持台として使用するので、合成中に浸出されるAl原子は避け難い。HM分離膜とMM分離膜とも、合成溶液にはAlが無いことにもかかわらず、浸出されるAlが酸点を形成できるAlソースとして働き得る。酸点の寄与を確認するために、FT-IR分析を行った。具体的に、2種類の分離膜サンプルのFT-IRスペクトルは、液体ピリジンで表面をスリップコーティングした後、45分、60分、120分の間隔で測定して得た(
図5(f))。120分間、15分の間隔で測定された詳細なFT-IRスペクトルデータは、
図15及び
図16に示した。既存のFT-IRベース適正方法(H.Kim et al.,Catal.Today 314,78-93(2018))を参照すると、合成溶液に更なるAl供給源が追加されず、両メンブレインともブレンステッド酸点を含まないということを確認した。それにも拘わらず、類似の程度のルイス酸点が両分離膜とも観察され、これは、
図9のEDX結果から予想できるように、両分離膜の化学的組成が類似であることを示す。すなわち、SDAに存在するリン原子がHM分離膜の高い長期熱安定性の性能にいかなる寄与もしなかったと結論付けることができる。したがって、
図5(d)から観察されるHM分離膜における分離膜性能減少の抵抗力は、物理的な差異、すなわち追加のメソ孔に起因する可能性があり、これは、前述した目詰まり(clogging)現象を避けることに役立つ。
【0072】
事実上、現在、リン原子を有していないTBAOH(H
2O中40wt%,Sigma Aldrich)を使用してHM分離膜を作ろうと試みた(
図17)。しかし、TBAOHで作ったHM分離膜は、分離性能を示しておらず(
図18)、合成条件を最適化するためにさらに慎重な努力が必要であると考えられる。
【0073】
また、フィードガス内p-キシレンとo-キシレンの部分圧をそれぞれ0.5kPaから4.2kPa、そして8kPaにまで増加させた後、分離性能測定を行った(
図19)。MM分離膜は、フィードガス内キシレンの量が増加するほど分離性能が低下する様相を示した(
図19(a1)及び(a2))が、HM分離膜では他の様相を示した。275℃でフィードガス内キシレンの量が増加することにより、HM分離膜の分離係数が43から56まで向上する様子が見られた(
図19(b1)及び(b2))。実際工程がなされる高いキシレン組成フィードガス条件において、HM分離膜がMM分離膜に比べてより実用的であり得ることを示す。これに加え、8kPaのp-キシレンとo-キシレンを含むフィードガス組成において200時間、275℃を維持しながら熱安定性測定を行った(
図19(a3)~(b3))。
図5(c)及び(d)のように、MM分離膜は、p-キシレンの透過度が経時減少する様相を示し、HM分離膜は200時間、p-キシレンの透過度が維持される様相を示した。これも同様、前述したHM分離膜のメソ孔による実質的な透過長の減少に起因するものと判断される。
【0074】
HM分離膜のp-キシレン選好分離性能を、文献に報告された他のMFI分離膜と比較評価した(Z.P.Lai et al.,Science 300,456-460(2003);M.Y.Jeon et al.,Nature 543,690-694(2017);W.C.Yoo et al.,Angew.Chem.Int.Ed.52,8693-8698(2013).mal Processing.Angew.Chem.Int.Ed.49,8699-8703(2010);K.Varoon et al.,Science 334,72-75(2011);J.Hedlund et al.,Microporous Mesoporous Mat.52,179-189(2002);K.Keizer et al.,J.Membr.Sci.147,159-172(1998);P.S.Lee et al.,J.Am.Chem.Soc.133,493-502(2011);T.Lee et al.,J.Membr.Sci.436,79-89(2013);S.Nair et al.,Microporous Mesoporous Mater.48,219-228(2001))。
図7(a)で、一般MFI分離膜を用いては、p-/o-キシレンSFが10を有する分離膜を作ることが非常に難しいという事実を確認した。~10以上の性能を得るためには、シリカゾルを用いた後処理、適合な種層の形成及び特別な熱処理工程のような追加工程が必要である(W.C.Yoo et al.,Angew.Chem.Int.Ed.49,8699-8703(2010);S.Nair et al.,Microporous Mesoporous Mater.48,219-228(2001))。しかも、欠陥のような非-ゼオライト部分を最小化させる厳格な条件(面内成長(M.Y.Jeon et al.,Nature 543,690-694(2017))、面内及び面外のエピタキシャル(epitaxial)成長(Z.P.Lai et al.,Science 300,456-460(2003))、追加のシリカソースがない合成法(T.C.T.Pham et al.,Angew.Chem.Int.Ed.52,8693-8698(2013))が極めて高いp-キシレン透過分離性能を得る上で必要であった(100以上のp-/o-キシレンSF)。
【0075】
事実上、多い研究者たちの実質的な努力によってMFI分離膜のp-キシレン透過-選択性が向上した。それにも拘わらず、高い分離性能を得るための複雑で繊細な方法は、実際の産業での使用には適していない。p-キシレンの生産は、高い温度でのp-キシレン分離工程を必要とする(US6376733;US9227891;US6646177)が、大部分の研究は100~200℃の適当な温度での分離性能にのみフォーカスしている(
図7(a)で大部分の文様が青/緑であることがそれを反映する。)。一方、本発明におけるHM分離膜は、275℃の高温で、高いp-キシレンモルフラックス(molar flux)と共に顕著な分離性能を示し、良好な方式でこのような条件を充足させる(
図7(a))。しかも、商業化したTBPOHをSDAとして使用し、簡単な二次成長方法を用いて作製できるという点は、HM分離膜の別の長所である。
【0076】
図7(b)は、大部分のMFI分離膜が125~200℃温度範囲で分離性能が減少することを示している(具体的に~25-70%、最初p-キシレン透過度から~25~70%減少)(T.C.T.Pham et al.,Angew.Chem.Int.Ed.52,8693-8698(2013);S.Nair et al.,Microporous Mesoporous Mater.48,219-228(2001))。長期間実験を行った分離膜のうち、HM分離膜のみが、p-キシレン透過度の少ない減少を示した。実際に、分離装置の安定性は、精油/石油化学産業における使用に非常に重要である。長期安定性試験のために275℃が最高温度として採択されたということを考慮すれば、少ししか性能低下していないHM分離膜は、実用化の可能性が高いと見なされ得る。具体的に、200時間、23%のp-キシレン透過度が減少した。HM分離膜のp-/o-キシレンSFが40程度によく維持され、時間による性能を線形的に予測できる。興味深いことに、多孔性SiO
2支持体の表面で製造されたが、全成分がシリカであるMFI分離膜は、必然的に性能が経時減少することが発見され(T.C.T.Pham et al.,Angew.Chem.Int.Ed.52,8693-8698(2013))、これは、o-キシレン分子による前述の目詰まりによるものと見なされる。
【0077】
HM分離膜の膜内部に埋め立てられたメソ孔が、ターゲット物質であるp-キシレン分子の速い輸送を可能にし、より重要なことは、分離膜性能の低下を防ぐ。これは、一般ゼオライト膜に更なるメソ孔を導入する重要性を強くサポートする。
【0078】
最初に、一般の微細孔ゼオライトにメソ孔を成功的に導入し、高いフラックス及び選択度を有する分離膜を製造でき、外的なメソ孔が分離膜性能の向上に寄与することを確認した。このような形態のゼオライト分離膜は、スイスチーズを例示として挙げることができる。TEMとAr吸着分析の両方において、HM分離膜は、内部に孤立している2~5nmサイズのメソ孔を有していることが分かる。類似の厚さ(~1μm)を有するにもかかわらず、階層構造を有するHM分離膜は、非常に高い温度である225℃において遥かに高いp-キシレンモルフラックスとp-/o-キシレン選択度を示した(1.6×10-7対0.86×10-7mol・m-2・s-1・Pa-1と53.8対3.5、MM分離膜と比較)。このような高いp-キシレン透過選択度は、少ない欠陥(言い換えると、多結晶性結晶粒がよりよく成長する。)に起因するものである。高い長期間安定性は、メソ孔に起因するものと見なされる。この場合、メソ孔が、遅く透過されるo-キシレンによって分離膜が詰まることを効果的に防止する。のみならず、広く知られた2次成長方法は、容易に購買可能なSDAであるTBPOHを用いたHM分離膜合成に直接に適用可能である。これは、HM分離膜の再現的な合成を信頼可能にさせる。
【0079】
最初に、一般の微細孔ゼオライトにメソ孔を成功的に導入し、高いフラックス及び選択度を有する分離膜を製造でき、外的なメソ孔が分離膜性能の向上に寄与することを確認した。このような形態のゼオライト分離膜は、スイスチーズを例示として挙げることができる。TEMとAr吸着分析の両方において、HM分離膜は、内部に孤立している2~5nmサイズのメソ孔を有していることが分かる。類似の厚さ(~1μm)を有するにもかかわらず、階層構造を有するHM分離膜は、非常に高い温度である225℃において遥かいに高いp-キシレンモルフラックスとp-/o-キシレン選択度を示した(1.6×10-7対0.86×10-7mol・m-2・s-1・Pa-1と53.8対3.5、MM分離膜と比較)。このような高いp-キシレン透過選択度は、少ない欠陥(言い換えると、多結晶性結晶粒がよりよく成長する。)に起因するものである。高い長期間安定性は、メソ孔に起因するものと見なされる。この場合、メソ孔が、遅く透過されるo-キシレンによって分離膜が詰まることを効果的に防止する。のみならず、広く知られた2次成長方法は、容易に購買可能なSDAであるTBPOHを用いたHM分離膜合成に直接に適用可能である。これは、HM分離膜の再現的な合成を信頼可能にさせる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、一般の微細孔ゼオライトにメソ孔を成功的に導入することにより、外的なメソ孔が分離膜性能の向上に寄与し、高いフラックス及び選択度を有する分離膜を製造することができる。メソ孔を通じて分離膜を通過する混合物の実質的な拡散距離を減らし、透過度を増加させることができる長所がある。また、分離膜の厚さはそのまま維持でき、機械的な強度を維持できるという長所がある。類似の厚さ(~1μm)を有するにもかかわらず、階層構造を有するHM分離膜は、低い欠陥密度によって非常に高い温度において遥かに高いp-キシレンモルフラックスと高いp-/o-キシレン選択度を有することができる。
【0081】
特に、メソ孔を有することにより、高い長期間安定性を示し、メソ孔が、遅く透過されるo-キシレンによって分離膜が詰まることを効果的に防止する。
【0082】
本発明に係るメソ孔を含む階層構造のゼオライト分離膜を合成する方法は、階層構造のゼオライト粒子を合成する時に使用される有機構造誘導体を用いて、単一工程で階層構造の分離膜を合成することができる。透過度を高めるために研究された既存の方法に比べて簡単であり、大きい規模の分離膜合成にも適合すると予想される。また、商用化した有機構造誘導体を用いて分離膜を合成するので、階層構造を形成するための特定の有機構造誘導体を作る複雑な過程を省略できるという長所がある。
【0083】
本発明によって作られた階層構造のゼオライト分離膜は、高い透過度と共に微細孔による高い分離性能を有する。また、メソ孔により、長時間の高温分離工程においても分離性能が低下せず、透過度の減少が少ないので、実際に分離膜工程の適用に適している。
【0084】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は、単に好ましい実施様態に過ぎず、これによって本発明の範囲が制限されない点は明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項及びそれらの等価物によって定義されるといえよう。