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特許7480286能動的および/または受動的に冷却される通電システムにおける液体の吸収および分配のための複合材料の使用
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  • 特許-能動的および/または受動的に冷却される通電システムにおける液体の吸収および分配のための複合材料の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】能動的および/または受動的に冷却される通電システムにおける液体の吸収および分配のための複合材料の使用
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/613 20140101AFI20240430BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20240430BHJP
   B32B 5/16 20060101ALI20240430BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALI20240430BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
H01M10/613
B32B7/02
B32B5/16
H01M10/6567
H01M4/62 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022520726
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2020078201
(87)【国際公開番号】W WO2021069539
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-04-04
(31)【優先権主張番号】102019127180.0
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501479868
【氏名又は名称】カール・フロイデンベルク・カーゲー
【氏名又は名称原語表記】Carl Freudenberg KG
【住所又は居所原語表記】Hoehnerweg 2-4, D-69469 Weinheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】ザラ ゼンネ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター クリッツァー
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-094376(JP,A)
【文献】特開2003-300296(JP,A)
【文献】特開2002-224161(JP,A)
【文献】登録実用新案第3170131(JP,U)
【文献】特表2014-509436(JP,A)
【文献】特開平10-076589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/613
B32B 7/02
B32B 5/16
H01M 10/6567
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
能動的および/または受動的に冷却される通電システム、特に能動的および/または受動的に冷却される電力貯蔵システムにおいて液体を吸収および分配するための複合材料の使用であって、前記複合材料は、支持体層と、前記支持体層に固定された液体吸収層とを含み、前記液体吸収層は、固定された高吸収性粒子を含み、前記液体吸収層の、前記支持体層とは反対の面には、前記液体吸収層と液体連通する液体分配層が配置されており、前記液体分配層は、被吸収液体を前記複合材料の面内で吸収して分配し、
前記高吸収性粒子は、水溶性バインダーにより前記支持体層に固定され、前記液体分配層は、少なくとも2つの分配層を含み、少なくとも1つの分配層は水溶性であり、少なくとも1つの他の分配層は水溶性でなく、水溶性である前記分配層は、前記水溶性バインダーと同じ材料からなる、使用。
【請求項2】
能動的および/または受動的に冷却されるバッテリシステム、インバータシステム、パワーエレクトロニクスシステムおよび/または充電ステーションにおける、請求項1記載の使用。
【請求項3】
水とグリコールとの混合物で能動的および/または受動的に冷却される通電システムにおける、特に水とグリコールとの混合物で能動的および/または受動的に冷却される電力貯蔵システムにおける、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
前記高吸収性粒子は、膨潤遅延剤を含み、好ましくは、前記水溶性バインダーと同じ材料からなる膨潤遅延剤を含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
前記液体分配層は、不織布、織物、編物および/または連続気泡発泡体を含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
DIN 55660に準拠して測定される前記液体分配層の表面エネルギーは、少なくとも30mN/m超、好ましくは35mN/m超、特に好ましくは40mN/m超である、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
前記支持体層は、熱可塑性ポリマーを含み、好ましくは融点が270℃未満の熱可塑性ポリマーを含む、請求項1からまでのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
前記支持体層と前記液体分配層とは、互いに溶着されており、かつ/または溶着可能である、請求項1からまでのいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
サイズに合わせて切断して周縁部で溶着させた複合材料を含む吸収パッドであって、前記複合材料は、支持体層と、前記支持体層に固定された液体吸収層とを含み、前記液体吸収層は、固定された高吸収性粒子を含み、前記液体吸収層の、前記支持体層とは反対の面には、前記液体吸収層と液体連通する液体分配層が配置されており、前記液体分配層は、被吸収液体を前記複合材料の面内で吸収して分配し、前記高吸収性粒子は、水溶性バインダーにより前記支持体層に固定され、前記液体分配層は、少なくとも2つの分配層を含み、少なくとも1つの分配層は水溶性であり、少なくとも1つの他の分配層は水溶性でなく、水溶性である前記分配層は、前記水溶性バインダーと同じ材料からなる、吸収パッド。
【請求項10】
前記吸収パッドは、非水溶性分配層と支持体層とを含む、周縁部で熱溶着された複合材料を有し、前記液体吸収層に部分的に浸透した状態で、前記非水溶性分配層と前記支持体層とが周縁部で熱溶融されており、これにより周縁部で全ての層が互いに熱により接合されている、請求項記載の吸収パッド。
【請求項11】
前記吸収パッドは、2つの複合材料を有し、第1の複合材料に属する第1の分配層は、水溶性分配層と非水溶性分配層とを有し、第2の複合材料に属する第2の分配層は、水溶性分配層を有し、前記2つの複合材料は、前記液体吸収層が互いに向かい合うように配置されており、前記吸収パッドは、周縁部で周方向に熱溶着されており、少なくとも1つの非水溶性分配層は、少なくとも部分的に溶融されており、その際に前記液体吸収層に部分的に浸透し、これによって前記吸収パッドの固定が生じている、請求項または10記載の吸収パッド。
【請求項12】
前記吸収パッドは、水溶性分配層を含む2つの複合材料を含み、前記2つの複合材料は、前記液体吸収層が互いに向かい合うように配置されており、前記液体吸収層の間には、熱可塑性接着剤、好ましくは(コ)ポリエステル、(コ)ポリアミド、ポリウレタンおよび/またはポリオレフィンが、特に不織布、フィルム、織物および/または編物などの2次元面状物の形態で配置されており、前記吸収パッドは、周縁部で周方向に熱溶着されており、前記熱可塑性接着剤は、少なくとも部分的に溶融されており、その際に前記液体吸収層に部分的に浸透し、これによって前記吸収パッドの固定が生じている、請求項から11までのいずれか1項記載の吸収パッド。
【請求項13】
複合材料を備えた、能動的および/または受動的に冷却される通電システムであって、前記複合材料は、支持体層と、前記支持体層に固定された液体吸収層とを含み、前記液体吸収層は、固定された高吸収性粒子を含み、前記液体吸収層の、前記支持体層とは反対の面には、前記液体吸収層と液体連通する液体分配層が配置されており、前記液体分配層は、被吸収液体を前記複合材料の面内で吸収して分配し、前記高吸収性粒子は、水溶性バインダーにより前記支持体層に固定され、前記液体分配層は、少なくとも2つの分配層を含み、少なくとも1つの分配層は水溶性であり、少なくとも1つの他の分配層は水溶性でなく、水溶性である前記分配層は、前記水溶性バインダーと同じ材料からなる、通電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、能動的および/または受動的に冷却される通電システム、特に能動的および/または受動的に冷却される電力貯蔵システムにおいて液体を吸収および分配するための複合材料の使用に関する。本発明はさらに、該複合材料を含む吸収パッドおよび能動的および/または受動的に冷却される通電システムに関する。
【0002】
通電システム、特にバッテリシステムは、電気自動車やハイブリッド車の駆動に必要であることから重要性が増している。公知のとおり、「通電システム」とは、電流が流れるシステムである。実用上重要な通電システムは、「電力貯蔵システム」、つまり現在利用可能ではあるが必要でないエネルギーを後で使用するために貯蔵するためのシステムである。この貯蔵には、例えば電気エネルギーから化学エネルギーへの変換など、エネルギー形態の変換を伴うことが多い。そして、必要なときにそのエネルギーが再び電気エネルギーに変換される。公知のとおり、バッテリシステムとは、直列または並列に接続された二次バッテリまたは一次バッテリを含む、直列または並列に接続されたモジュールである。その他の電力貯蔵システムとしては、アキュムレータ、すなわち直列または並列に接続された二次バッテリを含む、直列または並列に接続されたモジュールがある。同様に、直流回路において電界中に電荷およびそれに付随するエネルギーを静的に貯蔵することができる受動的な電気部品であるコンデンサも実用上重要な電力貯蔵システムである。
【0003】
システムの最適な機能を保証するためには、バッテリセルの温度を所望の温度範囲に保つことが必要である。受動的または能動的な温度制御システムにより、動作温度を上回るおよび/または下回ることのないようにする。特に、熱交換器内でバッテリセルに沿って導かれる熱伝導率が良好でかつ熱能力の大きい液体熱媒体の使用が効果的であることが判明している。
【0004】
また、このシステムは通常、環境から密閉されていない。つまり、このシステムは環境とガス交換をし得る。コンタミネーションの侵入を防ぐため、流入する空気はろ過される。この目的のために、例えば微孔質フィルムや不織布が使用される。
【0005】
これらのアプローチではいずれも、粒子のろ過はできるものの、気体のろ過ができず、特に水蒸気のろ過もできない。そのため、水蒸気はフィルムを通過して電子筐体に侵入する。しかし、筐体内部は冷却されるため、水が筐体内の低温箇所で(その露点を超えた場合に)結露することがある。特に通電部分は冷却されるため、最も重要な部分に結露が発生する。
【0006】
さらに、筐体自体の温度が常に低い水準にあると、形成された凝縮液を筐体外に排出するのは困難である。この場合に考えられるのは、例えばポンプ処理、制御弁、またはベークアウトであろう。これらのアプローチはコストがかかり、また場合により欠陥が生じ易い。さらに、ベークアウトは多くの用途(例えばバッテリシステム)には適していない。
【0007】
確実な吸水手段には、筐体の中や前に置いて水を不可逆的に結合させる乾燥剤がある。しかしこの場合、こうした薬剤には、液体の水だけでなく水蒸気も吸収してしまうという欠点がある。また、こうした薬剤が筐体内にあると、こうした薬剤によって筐体内のガス空間の除湿も行われる。その結果、通常の状況であれば全く筐体に入ってこないはずの水蒸気も筐体の中に取り込まれてしまう。したがって、このような乾燥剤カートリッジは、水分吸収剤としてだけでなく水分捕捉剤としても機能する。
【0008】
さらに、例えばこのように装備された車両の事故時には漏れが発生し、それによりヒートシンクから熱媒体が流出しかねないという問題がある。その場合、熱媒体がバッテリセルと直接接触し、その伝導性ゆえに例えば短絡を誘発するおそれがある。
【0009】
一般的な乾燥剤には、Pがある。これは水に対する吸収力が非常に高いが、水を吸収すると液体のリン酸を形成する。これは腐食を招きかねず、またその電気伝導性ゆえに電気的な用途では危険である。また、この吸水は不可逆的である。CaClなど他の代表的な乾燥剤も同様の反応をする。
【0010】
このため、前述した乾燥剤は、工業的に目的に合致したものとは言えない。乾燥剤は通常、袋(乾燥剤袋)にばらの状態で封入されているため、確実に固定されていない。
【0011】
他の既知の液体吸収物質、特に吸水物質は、例えば高吸収性物質である。高吸収性物質は、一方では吸水能力が非常に大きく、化学的に(有機溶媒に対しても)中性的に反応し、さらには可逆的に負荷させることができるという利点がある。
【0012】
高吸収性物質は、極性液体媒体により強度に膨潤し、場合によってはゲル化する。特に膨潤によって、液体の輸送経路が膨潤プロセスによって塞がれ(いわゆるブロッキング効果)、その後の吸収ができなくなるおそれがある。さらに、電子機器における膨張は、さらなる2つの観点から不利または有害であり、すなわち一方では、膨張した材料に機械的な圧力がかかることがあり、これにより例えば電気接点が分離するおそれがある。他方では、膨張した材料が制御不能な状態で膨張すると、通電部分に接触した際に電気的短絡を引き起こしかねない。
【0013】
高吸収性物質がばらの形態である場合、一方では乾燥状態でのダスト発生が問題となり、他方では膨潤した高吸収性物質粒子は機械的に安定ではないため、膨潤状態での除去も容易ではない。これにより、修理および/またはメンテナンスの際に問題が発生する。高吸収性材料は、例えば医療用製品から知られており、例えば独国特許出願公開第102006031418号明細書に記載されている。
【0014】
欧州特許出願公開第2731164号明細書には、バッテリセルと、少なくとも1つの吸収要素と、バッテリ筐体内でバッテリセルを冷却および/または加熱するための液体熱媒体を有する温度制御システムとを備えたバッテリシステムが記載されている。液体熱媒体を吸収するための吸収要素は、バッテリセルとバッテリ筐体との間に配置され、吸収要素は不織布であり、不織布は、単位面積当たりの平均重量が250~700g/mであり、少なくとも2種類の異なる繊維タイプの繊維を含み、繊維タイプのうち少なくとも1つは支持繊維であり、繊維タイプのうち少なくとももう1つは吸収性繊維である。
【0015】
吸収性繊維を使用することの欠点は、吸収性繊維の吸収能力が、一般的に同等の吸収性粒子よりも低いことにある。さらに吸収性繊維は、乾燥状態でも膨潤状態でも熱安定性が低いのが一般的である。さらに、吸収性繊維を使用することで、上記で説明したようにゲルブロッキング効果を招くおそれがある。
【0016】
本発明の課題は、前述した欠点を少なくとも部分的に解消することである。特に、吸水性および保持性に優れた材料を提供することが望ましい。また、水や場合によっては水蒸気を可逆的に結合できる材料であることが望ましい。さらに、制御された膨潤性を示すとともに、ブロッキング効果を回避できることが望ましい。最後に、低ダストで使用可能であることが望ましい。
【0017】
この課題は、能動的および/または受動的に冷却される通電システム、特に能動的および/または受動的に冷却される電力貯蔵システムにおいて液体を吸収および分配するための複合材料の使用であって、該複合材料は、支持体層と、支持体層に固定された液体吸収層とを含み、液体吸収層は、固定された高吸収性粒子を含み、液体吸収層の、支持体層とは反対の面には、液体吸収層と液体連通する液体分配層が配置されており、液体分配層は、被吸収液体を複合材料の面内で吸収して分配する、使用によって解決される。
【0018】
本発明によれば、上記複合材料は、高吸収性粒子の固定化によりダスト発生のリスクが著しく低減されるため、能動的および/または受動的に冷却される通電システムにおける液体の吸収および分配に極めて適していることが見出された。高吸収性粒子は、好ましくは、例えばバインダーによって支持体層に固定されている。このことは、例えば複合材料が自動車で使用される場合に生じるような機械的応力が発生する場合に特に有利である。さらに、固定化することで高吸収性物質を粒子の形態で使用することが可能になる。これには、この粒子の形態の高吸収性物質が、高吸収性繊維と比較して、乾燥状態でも膨潤状態でも同等の熱安定性でより高い吸収能力を有するという利点がある。さらに、固定された高吸収性粒子は、ばらの状態の高吸収性粒子よりも迅速に水蒸気を吸収できるだけでなく、より完全に水蒸気を放出できることが意想外にも見出された。また、使用される液体分配層は、被吸収液体を複合材料の面内で吸収して分配するため、複合材料が示すゲルブロッキング効果は非常に低い。これにより、液体吸収層の吸収能力を最適に活用することができる。
【0019】
本発明によれば、複合材料は、例えばバッテリシステム、インバータ/パワーエレクトロニクスシステムおよび/または充電ステーションなど、能動的および/または受動的に冷却される多種多様な通電システムに適している。その際、複合材料は、例えば水および/または例えば水とグリコールとの混合物などの他の冷却媒体など、様々な流体を吸収することができる。
【0020】
本発明による好ましい通電システムは、電力貯蔵システム、通電エネルギー変換器、変圧器、パワーエレクトロニクスシステム、制御エレクトロニクスシステム、特にプロセッサ制御システム、充電ステーション、インバータ、整流器、電気分解装置および/またはそれらの組み合わせから選択される通電システムである。
【0021】
好ましい電力貯蔵システムは、本発明によれば、バッテリシステム、コンデンサおよび/またはアキュムレータである。非常に特に好ましいのは、バッテリシステムである。
【0022】
高吸収性物質は、液体と非常に良好に結合してこれを吸収できることが特徴である。本発明によれば、高吸収性物質とは、体積を増加させながら、自重の何倍もの、500倍までの液体、好ましくは水を取り込むまたは吸収できるポリマーであると理解される。
【0023】
高吸収性物質は、膨潤状態でハイドロゲルを形成する。適した高吸収性物質は、特に極性の架橋ポリマーである。特に、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、アミロペクチン、ゼラチン、セルロースが好ましい。非常に特に好ましいのは、一方ではアクリル酸(プロペン酸、HC=CH-COOH)および/またはアクリル酸ナトリウム(アクリル酸のナトリウム塩、HC=CH-COONa)と、他方ではアクリルアミドとのコポリマーである。その際、両モノマーの比は、互いに可変であり得る。
【0024】
前述のモノマーには通常、形成された長鎖ポリマー分子同士を化学的な橋かけによって所定位置で連結(架橋)する、いわゆるコアクロスリンカー(CXL)が添加される。この橋かけにより、ポリマーは水に溶解しなくなる。さらに、いわゆる表面架橋剤(SXL)を使用することができる。この場合、粒子の表面に別の薬剤を施与し、この薬剤が加熱により粒子の外層にのみ第2のネットワークを結合する。このシェルが膨張したゲルを支持することで、外的応力(運動、圧力)がかかってもゲルが一体となる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、高吸収性粒子は、バインダー、特に、例えばポリビニルアルコール、デンプン、ポリビニルピロリドン、カゼイングルー、ポリビニルブチラールのような水溶性バインダーにより、ならびに/または例えば少なくとも部分的に架橋されたポリビニルアルコールおよび/もしくは部分的に架橋されたデンプンのような水膨潤性バインダーにより支持体層に固定されている。水溶性バインダーとは、それぞれ23℃で測定した場合に、水への溶解度が少なくとも1g/l、例えば1g/l~400g/l、さらにより好ましくは2g/l~350g/l、特に5g/l~300g/lであるバインダーであると理解されるべきである。水溶性バインダーおよび/または水膨潤性バインダーを使用することの利点は、高吸収性物質の自由膨潤性が制限されないことにある。
【0026】
好ましくは、バインダーの総量に対する水溶性バインダーおよび/または水膨潤性バインダーの割合は、少なくとも70重量%、例えば70重量%~100重量%、さらにより好ましくは80重量%~100重量%、特に90重量%~100重量%である。
【0027】
さらなる好ましい実施形態では、高吸収性粒子は、膨潤遅延剤を含む。この場合有利にも、高吸収性粒子の膨潤を遅らせることができ、それによって、被吸収液体の分配を最適化することができるとともに、液体吸収層の吸収面を特に良好に利用することができる。膨潤遅延剤は、水溶性および/または水膨潤性バインダーと同じ材料からなることができる。好ましくは、高吸収性粒子は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、膨潤遅延剤で覆われている。
【0028】
液体分配層は、被吸収液体を吸収してこれを複合材料の面内に分配する。
【0029】
さらなる好ましい実施形態では、液体分配層は、不織布、織物、編物、連続気泡発泡体ならびに/またはバインダー、好ましくは水溶性および/もしくは水膨潤性バインダーを含む。好ましい水溶性バインダーは、ポリビニルアルコール、デンプン、ポリビニルピロリドン、カゼイングルー、ポリビニルブチラールである。好ましい水膨潤性バインダーは、例えば、少なくとも部分的に架橋されたポリビニルアルコールおよび/または部分的に架橋されたデンプンである。これらの材料の利点は、その優れた透水性に加え、湿潤状態でも高い構造的完全性を有することにある。好ましい不織布は、スパンボンド不織布、ウェットレイド不織布および/またはドライレイド不織布である。目付は、好ましくは10g/m~500g/mである。
【0030】
さらなる好ましい実施形態では、DIN 55660に準拠して測定される液体分配層の表面エネルギーは、30mN/m超、好ましくは35mN/m超、特に好ましくは40mN/m超である。この場合有利にも、水または水/グリコールの混合物などの極性媒体を特に良好に分散させることができる。
【0031】
さらなる好ましい実施形態では、液体分配層は、少なくとも2つの分配層を含み、少なくとも1つの分配層は水溶性であり、少なくとも1つの他の分配層は水溶性でない。水溶性分配層は、高吸収性粒子に用いられる水溶性および/または水膨潤性バインダーと同じ材料からなることができる。好ましくは、非水溶性分配層は、熱可塑性ポリマーであって特に融点が260℃未満のものを含む。特に好ましいポリマーは、ポリエステル、コポリエステル、ポリアミド、コポリアミド、ポリオレフィンおよび/またはこれらのブレンドである。この場合有利にも、これらを熱溶着に使用することができる。
【0032】
さらなる好ましい実施形態では、液体分配層の通気度は、10dm/(ms)超、好ましくは20~3000dm/(ms)の範囲、さらにより好ましくは30~2000dm/(ms)、特に好ましくは30~1000dm/(ms)の範囲である。この場合、通気度はDIN EN ISO 9237に準拠して、差圧100Paで測定される。通気度の測定は、液体との接触吸収の前に、厚さ0.05~10mm、好ましくは3mm、空気が流れる試料面積20cmの試料を用いて、空気差圧100Paで行われる。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、分配層、特に非水溶性水分配層は、1μm超、例えば1μm~1000μm、好ましくは10~800μmの平均孔径を有する。
【0034】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、分配層は、好ましくは1dtex未満、例えば0.01~1dtex、さらにより好ましくは0.01~0.9dtexの繊度を有するマイクロファイバーを有する。この場合有利にも、マイクロファイバーは特に高い毛管現象を示し、これにより分配層における液体の特に良好な分配が可能となる。
【0035】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、複合材料は、少なくとも2 l/m、例えば2 l/m~200 l/m、さらにより好ましくは3 l/m~200 l/m、さらにより好ましくは5 l/m~200 l/m、さらにより好ましくは10 l/m~200 l/m、特に20 l/m~200 l/mの液体吸収量(脱イオン水)を有する。
【0036】
支持体層は、好ましくは熱可塑性ポリマーであって特に融点が270℃未満のものを含む。特に好ましいポリマーは、ポリエステル、コポリエステル、ポリアミド、コポリアミド、ポリオレフィンおよび/またはこれらのブレンドである。この場合有利にも、これらを熱溶着に使用することができる。
【0037】
好ましくは、支持体層は、不織布、織物、編物および/または連続気泡発泡体を含む。好ましい不織布は、スパンボンド不織布、ウェットレイド不織布および/またはドライレイド不織布である。目付は、好ましくは10g/m~500g/mである。
【0038】
さらなる好ましい実施形態では、複合材料は圧縮性であり、これにより、能動的および/または受動的に冷却される通電システム、特に能動的および/または受動的に冷却される電力貯蔵システムにおいて良好に固定することができる。さらに、そのようにして、隣接する部品との良好な接触を確保することができる。
【0039】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、複合材料は、熱可塑性ポリマーを含む非水溶性液体分配層と、同様に熱可塑性ポリマーを含む支持体層とを含む。この場合有利にも、非水溶性液体分配層と支持体層とを互いに特に良好に溶着させて使用することができる。したがって、好ましくは、支持体層と液体分配層とは、互いに溶着されており、かつ/または溶着可能である。この場合有利にも、液体吸収層は、液体を吸収する際に、高さ方向への膨張に関して制限され得る。
【0040】
意想外にも、本発明による複合材料は、良好な吸音特性を示すことが判明した。したがって、本発明のさらなる実施形態では、複合材料は、EN ISO 354:2003に準拠して測定した吸収係数が、6300Hzの周波数では0.09超、さらにより好ましくは0.2超、特に好ましくは0.25超であり、かつ/または8000Hzの周波数では0.1超、さらにより好ましくは0.25超、特に好ましくは0.3超である。高吸収性粒子によるコーティングは、低通気度、ひいては低吸収係数の複合材料をもたらすと予想されていただけに、このことは意想外であった。
【0041】
複合材料は、周縁部が溶着された透水性の袋に入っていてもよい。また、袋の中に複数の複合材料が配置されていてもよい。
【0042】
複合材料は、様々な様式で袋の中に配置されていてよい。複合材料が吸収パッドの形態である場合には、これらは袋の中で重なり合っていてもよい。複合材料が面状物として存在する場合には、これらはアコーディオン状に折り畳まれた状態でおよび/または巻いて平らにした状態で袋に入っていてもよい。
【0043】
さらなる実施形態では、少なくとも1つの複合材料は、吸収パッドとして存在する。吸収パッドとは、複合材料をサイズに合わせて切断し、周縁部で溶着させたものと理解される。こうすることで、高吸収性粒子の漏出を回避することができる。本発明のさらなる主題には、記載された1つ以上の実施形態による複合材料を含む吸収パッドが包含される。
【0044】
さらなる好ましい吸収パッドは、複合材料をサイズに合わせて切断し、周縁部でシームにより接合したものである。
【0045】
吸収パッドは、様々な対称および/または非対称の幾何学的形状を有することができる。
【0046】
吸収パッドは、非水溶性分配層と支持体層とを含む、周縁部で熱溶着された複合材料を有することができ、液体吸収層に部分的に浸透した状態で、非水溶性分配層と支持体層とが周縁部で熱溶融されており、これにより周縁部で層同士が熱により接合されている。
【0047】
さらなる実施形態では、吸収パッドは、2つの複合材料を有し、該複合材料は、それぞれ上記の支持体層と、支持体層に固定された液体吸収層とを含み、液体吸収層は、固定された高吸収性粒子を含み、液体吸収層の、支持体層とは反対の面には、液体吸収層と液体連通する液体分配層が配置されており、液体分配層は、被吸収液体を複合材料の面内で吸収して分配する。本実施形態では、第1の複合材料に属する第1の分配層は、水溶性分配層と非水溶性分配層とを有し、第2の複合材料に属する第2の分配層は、水溶性分配層を有する。この場合、2つの複合材料は、液体吸収層が互いに向かい合うように配置されている。吸収パッドは、周縁部で周方向に熱溶着されており、少なくとも1つの非水溶性分配層は、少なくとも部分的に溶融されており、その際に液体吸収層に部分的に浸透し、これによって吸収パッドの固定が生じている。好ましくは、本実施形態では、少なくとも1つの支持体層も少なくとも部分的に溶融されており、吸収パッドの固定を支持している。
【0048】
さらなる実施形態では、吸収パッドは、2つの複合材料を有し、該複合材料は、それぞれ上記の支持体層と、支持体層に固定された液体吸収層とを含み、液体吸収層は、固定された高吸収性粒子を含み、液体吸収層の、支持体層とは反対の面には、液体吸収層と液体連通する液体分配層が配置されており、液体分配層は、被吸収液体を複合材料の面内で吸収して分配する。この場合、2つの複合材料は、液体吸収層が互いに向かい合うように配置されている。吸収パッドは、周縁部で周方向に熱溶着されており、少なくとも1つの支持体層は、少なくとも部分的に溶融されており、その際に液体吸収層に部分的に浸透し、これによって吸収パッドの固定が生じている。好ましくは、本実施形態では、少なくとも1つの非水溶性分配層も少なくとも部分的に溶融されており、吸収パッドの固定を支持している。
【0049】
さらなる実施形態では、吸収パッドは、2つの複合材料を有し、該複合材料は、それぞれ上記の支持体層と、支持体層に固定された液体吸収層とを含み、液体吸収層は、固定された高吸収性粒子を含み、液体吸収層の、支持体層とは反対の面には、液体吸収層と液体連通する液体分配層が配置されており、液体分配層は、被吸収液体を複合材料の面内で吸収して分配する。本実施形態では、第1の複合材料に属する第1の分配層は、水溶性分配層と非水溶性分配層とを有し、第2の複合材料に属する第2の分配層は、水溶性分配層を有する。この場合、2つの複合材料は、液体吸収層が互いに向かい合うように配置されている。これらの液体吸収層の間には、熱可塑性接着剤、好ましくは(コ)ポリエステル、(コ)ポリアミド、ポリウレタンおよび/またはポリオレフィンが、特に不織布、フィルム、織物および/または編物などの2次元面状物の形態で配置されている。吸収パッドは、周縁部で周方向に熱溶着されており、熱可塑性接着剤は、少なくとも部分的に溶融されており、その際に液体吸収層に部分的に浸透し、これによって吸収パッドの固定が生じている。好ましくは、本実施形態では、少なくとも1つの支持体層も少なくとも部分的に溶融されており、吸収パッドの固定を支持している。
【0050】
同様に、吸収パッドが、非水溶性の吸収性分配層と溶融可能な支持体層とを含む複合材料を含むことも考えられる。この場合、液体分配層および支持体層は液体吸収層から突出し、液体吸収層を包含して互いに溶着された状態で存在する。
【0051】
本発明のさらなる実施形態では、吸収パッドは、EN ISO 354:2003に準拠して測定した吸収係数が、6300Hzの周波数では0.09超、さらにより好ましくは0.2超、特に好ましくは0.25超であり、かつ/または8000Hzの周波数では0.1超、さらにより好ましくは0.25超、特に好ましくは0.3超である。この場合、実際の試験では多層品で特に良好な音響特性を得ることができたため、吸収パッドは、好ましくは少なくとも2つの複合材料を有する。
【0052】
さらなる実施形態では、吸収パッドは、外層が支持体層によって形成されるような配置で、2~8、好ましくは3~8、特に3~7の複合材料を有する。吸収パッドは、周縁部で少なくとも一部が周方向に熱溶着されていてもよい。この溶着により、支持体層の少なくとも一部が溶融することができ、それによって液体吸収層に部分的に浸透することができ、これによって全ての層を互いに熱により接合することができる。
【0053】
さらなる実施形態は、少なくとも1つの支持体層と、少なくとも1つの液体分配層および/または少なくとも2つの支持体層とが、少なくとも1つのシームによって周縁部で少なくとも部分的に互いに接合されている吸収パッドを含む。
【0054】
さらなる実施形態は、少なくとも1つの複合材料が透水性の袋の中に存在する吸収パッドであって、透水性の袋は、少なくとも1つのシームによってその周縁部で少なくとも部分的に閉じられている。
【0055】
少なくとも1つのシームは、フィンシームまたはオーバーラップシームとして形成されていてよい。袋が複数のシームによって閉じられる場合、これらは互いに独立してフィンシームまたはオーバーラップシームとして形成されていてよい。袋の形状は、様々であり得る。一般的な包装設計が適していることが判明した。例えば、2つの袋層を周方向にシームにより互いに接合して袋を得ることができる。これにより、通常は1~4つ、好ましくは4つのシームが得られる。あるいは、1つの袋層を筒状に折り畳み、開いた周縁部をシームにより接合することで袋を得ることもできる。これにより、通常は3つのシームが得られる。
【0056】
好ましい実施形態では、少なくとも1つのシームは、溶接シーム、特に熱および/または超音波溶着シーム、接着シームおよび/または縫製シームとして設計されている。溶着シームの利点は、特に迅速かつ容易に実現できることにある。少なくとも1つのシームは、連続的および/または非連続的であってよい。非連続的なシームは、直接的シーム領域、すなわち2つの層を結合しかつ/または袋を閉じる役割を果たすシームの領域と、間接的シーム領域、すなわち直接的シーム領域の間にあるシームの領域とで構成されている。溶接シームの場合は溶着領域が、縫製シームの場合は糸で覆われた領域が、そして接着シームの場合は接着剤で接合された領域が、直接的シーム領域である。非連続的なシームは、シーム領域の割合が少ないため、面積比で強度が高いという利点がある。
【0057】
連続的なシームは、高吸収性粒子の漏出のリスクが低減するという利点がある。少なくとも1つのシームはさらに、直線もしくは曲線またはそれらの組み合わせとして形成されていてよい。非連続的な実施形態では、少なくとも1つのシームは、線状および/または規則的に配置されたドットおよび/または線の形態で形成されていてよい。上記で説明したように、層を結合しかつ/または透水性の袋を閉じる役割を果たすシームの部分は、シームの直接的シーム領域である。少なくとも1つのシームの幅は、好ましくは0.5~15mm、さらにより好ましくは0.5~10mm、特に好ましくは1~6mmである。さらに好ましくは、シーム面積、すなわち吸収体材料の面積に対する間接的シーム面積と直接的シーム面積との和は、少なくとも0.4~50面積%、より好ましくは2~40面積%、特に好ましくは4~35面積%である。シーム面積が0.4面積%未満の場合には、通常はシームの強度が低すぎる。
【0058】
特定の実施形態では、少なくとも1つのシームは、好ましくはその中心で穿孔された溶接シームとして形成されている。この場合有利にも、特に容易に吸収体材料を設置状況に適合させることができる。例えば、穿孔された溶接シームに沿って部分領域を取り除くことで、凹部を狙いどおりに形成することができる。
【0059】
溶接シームの形状は、様々であり得る。好ましい実施形態では、溶接シームと層の非溶着領域との間の移行部は滑らかである。したがって、好ましい実施形態では、溶接シームの溶着領域の厚さは、周縁部に向かって減少している。これに応じて、溶接シームの溶着領域の密度は、周縁部に向かって高くなる。溶接シームとポケットとの間の移行部は、好ましくは連続的である。この場合有利にも、溶接シームの強度が向上する。
【0060】
本発明のさらなる主題は、複合材料を備えた、能動的および/または受動的に冷却される通電システムであって、該複合材料は、好ましくは吸収パッドとして形成されており、かつ支持体層と、支持体層に固定された液体吸収層とを含み、液体吸収層は、高吸収性粒子を含み、液体吸収層の、支持体層とは反対の面には、液体吸収層と液体連通する液体分配層が配置されており、液体分配層は、被吸収液体を複合材料の面内で吸収して分配する、通電システムである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】本発明による吸収パッドの水蒸気吸収量を示す図である。
図2】本発明によらない吸収パッドの水蒸気吸収量を示す図である。
図3】本発明による吸収パッドの吸音特性を示す図である。
図4】シーム5の断面の概略図である。
【0062】
図面の説明
図1に、本発明による吸収パッドの水蒸気吸収量を示す。水蒸気の吸収が非常に迅速に生じることがわかる。水蒸気の吸収は、30分後にはすでに平衡に達している。また、再乾燥も非常に迅速に進行し、ほぼ完全であることも特筆すべき点である。
【0063】
図2に、本発明によらない吸収パッドの水蒸気吸収量を示す。水蒸気の吸収がはるかによりゆっくりと生じることがわかる。水蒸気の吸収が平衡に達するのは、早くても90分後である。また、20時間後であっても再乾燥が完了しない。
【0064】
図3に、本発明による複数の吸収パッドの吸音特性を示す。本発明による全ての吸収パッドが良好な吸収係数を有することがわかる。
【0065】
図4に、シームの断面図を示す。シームは、溶接シームの形態で存在する。溶接シームの厚さは、周縁部に向かって減少している。これに応じて、溶接シームの密度は、周縁部に向かって高くなる。この移行は連続的なものである。
【0066】
以下、いくつかの実施例により、本発明をより詳細に説明する。
【0067】
実施例1:本発明により使用可能な複合材料の製造
本発明により使用可能な様々な複合材料および吸収パッドを製造する。
【0068】
以下の材料を使用した:
マイクロファイバースパンボンド不織布:ポリアミド/ポリエステルマイクロファイバースパンボンド不織布「Evolon(登録商標)」;200g/m
高吸収性粒子1:塊状重合法で製造された、部分的に中和および架橋されたポリアクリル酸、粒度分布d50 50μm~1000μm、施与重量15g/m
高吸収性粒子2:逆懸濁重合法で製造された、部分的に中和および架橋されたポリアクリル酸、粒度分布d50 50μm~1000μm、施与重量15g/m
水溶性分配層1:水溶性部分ケン化ポリビニルアルコール、施与重量20g/m
水溶性分配層2:水溶性デンプン、施与重量20g/m
【0069】
使用した層構造を下表に示す:
【表1】
【0070】
層の接合を以下の通り行った:
まず、支持体層を提供し、水溶性分配層および高吸収性粒子で被覆する。次に、使用する場合は、非水溶性分配層を追加する。
【0071】
複合材料1~5をそれぞれ、熱溶着可能な2つの層(袋層、マイクロファイバースパンボンド不織布 80g/m)の間に配置する。これらの袋層の周縁部は、複合材料から周方向に突出しており、これらの層の周縁部を溶着して吸収パッドを形成する。切断工程は、溶着の前に行うことも後に行うこともできる。
【0072】
さらなる実施形態では、複数(2~5)の複合材料1~5を溶接して吸収パッドを得る。
【0073】
さらなる実施形態では、複合材料1~5を周縁部で周方向に熱溶着し、その際、非水溶性分配層および支持体層が溶融し、その際に液体吸収層に部分的に浸透し、これによって全ての層を互いに熱により接合する。
【0074】
さらなる実施形態では、2つの複合材料5は、液体吸収層が互いに向かい合うように配置されている。このようにして得られた複合材を周縁部で周方向に熱溶着し、その際、支持体層が溶融し、その際に液体吸収層に部分的に浸透し、これによって全ての層を互いに熱により接合する。切断工程は、溶着の前に行うことも後に行うこともできる。ここで、吸収パッド6aが得られる。
【0075】
さらなる実施形態では、4つの複合材料5は、支持体層が外層を形成するように配置されている。このようにして得られた複合材を周縁部で周方向に熱溶着し、その際、支持体層が溶融し、その際に液体吸収層に部分的に浸透し、これによって全ての層を互いに熱により接合する。切断工程は、溶着の前に行うことも後に行うこともできる。ここで、吸収パッド6bが得られる。
【0076】
さらなる実施形態では、6つの複合材料5は、支持体層が外層を形成するように配置されている。このようにして得られた複合材を周縁部で周方向に熱溶着し、その際、支持体層が溶融し、その際に液体吸収層に部分的に浸透し、これによって全ての層を互いに熱により接合する。切断工程は、溶着の前に行うことも後に行うこともできる。ここで、吸収パッド6cが得られる。
【0077】
さらなる実施形態では、2つの複合材料5は、液体吸収層が互いに向かい合うように配置されている。これらの液体吸収層の間に接着不織布(コポリエステル不織布、30g/m、融点100~110℃)を配置する。このようにして得られた複合材を周縁部で周方向に熱溶着し、その際、接着不織布が溶融し、その際に液体吸収層に部分的に浸透し、これによって全ての層を互いに熱により接合する。ここで、吸収パッド7が得られる。
【0078】
実施例2:本発明による吸収パッドの吸収能力の試験
吸収パッド7の吸収能力を、DIN 53923に準拠して、完全脱塩水を用いて試験した。その結果、吸収パッド7は、8.7kg/mの良好な吸水性を有することが判明した。DIN 53923に準拠した試験では、吸収パッド7を膨張状態で自由に浮いた状態で30秒間吊り下げる。ここで、水分の損失は550g/mであり、したがってこれは非常に良好な保持性に相当する。また、この吸収パッドは加熱することなく容易に乾燥させることができた。このことは、この吸収パッドがさらに、水を可逆的に結合する能力も有することを示している。周方向での溶着により、膨潤を良好に制御することができ、分配層を使用することでブロッキング効果を回避することができた。高吸収性粒子を固定することで、ダストの発生を回避することができた。
【0079】
実施例3:本発明による吸収パッドの水蒸気吸収量の試験
吸収パッド7の水蒸気吸収量を試験した。このため、吸収パッドを湿度90%、30℃で恒温槽に270分間保管した。270分間にわたり、30分ごとに重量増加を重量法で測定した。その後、吸収パッド7を室温で乾燥させ、重量減少を重量法で測定した。この手順を5回繰り返し、これを図1に示す。水蒸気の吸収が非常に迅速に生じることがわかる。水蒸気の吸収は、30分後にはすでに平衡に達している。また、再乾燥も非常に迅速に進行し、ほぼ完全であることも特筆すべき点である。
【0080】
実施例4:本発明によらない吸収パッドの水蒸気吸収量の試験
本発明によらない吸収パッドの水蒸気吸収量を試験した。この吸収パッドは、不織布製の袋にばら状態の高吸収性粒子2を1g充填したものである。270分間にわたり、30分ごとに重量増加を重量法で測定した。その後、本発明によらないこの吸収パッドを室温で20時間乾燥させ、重量減少を重量法で測定した。この手順を5回繰り返し、これを図2に示す。水蒸気の吸収がはるかによりゆっくりと生じることがわかる。水蒸気の吸収が平衡に達するのは、早くても90分後である。また、20時間後であっても再乾燥が完了しない。
【0081】
実施例5:本発明による吸音パッドの吸音特性の試験
EN ISO 354:2003に準拠して、3つの異なる吸収パッド6a,6b,6cの吸音特性を調べた。その結果を図3に示す。本発明による全ての吸収パッドが良好な吸収係数を有することがわかる。
図1
図2
図3
図4