(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】切削工具及びそのような切削工具を有する工作機械
(51)【国際特許分類】
B23B 27/00 20060101AFI20240430BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20240430BHJP
B23B 27/16 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
B23B27/00 D
B23Q17/09 H
B23B27/16 B
(21)【出願番号】P 2022528927
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2021055512
(87)【国際公開番号】W WO2021176014
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】102020106038.6
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503128054
【氏名又は名称】ハルトメタル-ウェルクゾーグファブリック ポール ホーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケムラー, トビアス
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-502730(JP,A)
【文献】実開昭47-012583(JP,U)
【文献】特開2019-166600(JP,A)
【文献】特開2012-020359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00,27/16;
B23Q 17/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースを機械加工する工具(10)であって、
少なくとも1つの切刃(30)を有する切削インサート(14)と、
前記切削インサート(14)を受け入れる切削インサート受け部(22)を備えた切削インサートホルダ(12)と、
クランプ用楔部として作用し、切削インサート受け部(22)に締結されるように構成されて切削インサート(14)を切削インサートホルダ(12)にクランプするクランプ要素(16)と、
前記クランプ要素(16)を切削インサートホルダ(12)に締結し同時に切削インサート(14)を切削インサートホルダ(12)に締結する締結要素(18)と、
前記切削インサート(14)に作用する力に依存した測定信号を生成するように構成されたセンサ(64)を備え、
前記クランプ要素(16)はセンサ(64)が配備される凹部(62)を備
え、
工具(10)の取り付け状態で、前記センサ(64)はクランプ要素(16)と切削インサートホルダ(12)の間に配置され、
前記センサ(64)はクランプ要素(16)と切削インサートホルダ(12)の両方に直接接していることを特徴とする工具(10)。
【請求項2】
前記センサ(64)は、力センサを備える、請求項
1に記載の工具。
【請求項3】
前記クランプ要素(16)は、楔形である、請求項
1に記載の工具。
【請求項4】
前記クランプ要素(16)は、前記クランプ要素(16)の長手方向軸(36)に沿って前端(34)から切削インサート受け部(22)のベース(40)に対向する後端(38)に延在し、前記クランプ要素(16)は、前記クランプ要素(16)の長手方向軸(36)に垂直な高さで、後端に向かってテーパ付けられた、請求項
3に記載の工具。
【請求項5】
前記センサ(64)の高さが、センサ(64)の高さと平行に測定された凹部(62)の深さより大きく、センサ(64)が凹部(62)の縁部(66)を超えて突き抜ける、請求項
1に記載の工具。
【請求項6】
ワークピースを機械加工する工具(10)であって、
少なくとも1つの切刃(30)を有する切削インサート(14)と、
前記切削インサート(14)を受け入れる切削インサート受け部(22)を備えた切削インサートホルダ(12)と、
クランプ用楔部として作用し、切削インサート受け部(22)に締結されるように構成されて切削インサート(14)を切削インサートホルダ(12)にクランプするクランプ要素(16)と、
前記クランプ要素(16)を切削インサートホルダ(12)に締結し同時に切削インサート(14)を切削インサートホルダ(12)に締結する締結要素(18)と、
前記切削インサート(14)に作用する力に依存した測定信号を生成するように構成されたセンサ(64)を備え、
前記クランプ要素(16)はセンサ(64)が配備される凹部(62)を備え、
前記センサ(64)が、前記工具(10)の内部から外部へ、第1のケーブルダクト部(78)及び第2のケーブルダクト部(80)を介して案内されるケーブル(76)を備え、前記第1のケーブルダクト部(78)は前記クランプ要素(16)内に配置され前記凹部(62)内に開口し、前記第2のケーブルダクト部(80)は前記切削インサートホルダ(12)内に配置され、前記工具(10)の取り付け状態で前記第1のケーブルダクト部(78)と位置合わせされる
ことを特徴とする工具。
【請求項7】
前記クランプ要素(16)は、前記工具(10)の取り付け状態で少なくとも大部分が前記切削インサートホルダ(12)内に窪むように、前記切削インサートホルダ(
12)の形状に適合される、請求項
1に記載の工具。
【請求項8】
ワークピースを機械加工する工具(10)であって、
少なくとも1つの切刃(30)を有する切削インサート(14)と、
前記切削インサート(14)を受け入れる切削インサート受け部(22)を備えた切削インサートホルダ(12)と、
クランプ用楔部として作用し、切削インサート受け部(22)に締結されるように構成されて切削インサート(14)を切削インサートホルダ(12)にクランプするクランプ要素(16)と、
前記クランプ要素(16)を切削インサートホルダ(12)に締結し同時に切削インサート(14)を切削インサートホルダ(12)に締結する締結要素(18)と、
前記切削インサート(14)に作用する力に依存した測定信号を生成するように構成されたセンサ(64)を備え、
前記クランプ要素(16)はセンサ(64)が配備される凹部(62)を備え、
前記クランプ要素(16)は、前記クランプ要素(16)の長手方向軸(36)に沿って前端(34)から切削インサート受け部(22)のベース(40)に対向する後端(38)に延在し、前記クランプ要素(16)は、前記クランプ要素(16)の長手方向軸(36)に垂直な高さで、後端に向かって楔状にテーパ付けられ、
前記切削インサート受け部(22)はクランプ面(44)を備え、該クランプ面(44)は前記クランプ要素(16)の前記長手方向軸(36)に対してある角度で傾斜し、前記クランプ要素(16)の第1の側面に面し、前記工具(10)の取り付け状態において前記センサ(64)が当接し、
前記クランプ要素(16)の第2の側面は、前記第1の側面とは反対側であり、前記クランプ要素(16)の前記長手方向軸(36)と平行に延び、前記
工具(10)の前記取り付け状態において少なくとも一部の領域において前記切削インサート(14)に当接する
ことを特徴とする工具。
【請求項9】
前記締結要素(18)がねじを備え、前記クランプ要素(16)が貫通穴(56)を備え、前記切削インサートホルダ(12)は、前記工具(10)の取り付け状態で前記ねじが前記貫通穴(56)を通して係合する雌ねじ(58)を備える、請求項
1に記載の工具。
【請求項10】
前記貫通穴(56)は、工具(10)の取り付け状態で、切削インサートホルダ(12)の長手方向軸(20)に平行に整列されているクランプ要素(16)の長手方向軸(36)に平行に延びている、請求項
9に記載の工具。
【請求項11】
前記クランプ要素(16)及び前記切削インサートホルダ(12)が鋼製であり、前記切削インサート(14)が超硬製である、請求項
1に記載の工具。
【請求項12】
請求項1乃至
11の何れかに記載の工具とデータリンク(68)を介して前記センサ(64)に接続された評価ユニット(70)を備えた工作機械(100)。
【請求項13】
前記評価ユニット(70)は測定信号を評価するように構成され、且つ
(i) 記憶装置(72)に測定信号を記憶させるように構成され、
(ii) 評価された測定信号に基づいて工具(10)を制御するように構成され、及び/又は
(iii)測定信号が所定の閾値を超え又は所定の信号パターンを有すれば、警告信号を生成するように構成された、請求項
12に記載の工作機械(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースを機械加工する工具に関し、該工具は特に切削インサートと該切削インサートに作用する力に依存した測定信号を生成するように構成されたセンサを備える。更に、本発明はそのような工具とデータリンクを介してセンサに接続された評価ユニットを有する工作機械に関する。
【0002】
本発明による工具は、基本的に任意のタイプの切削工具であり得る。好ましくは、本発明による工具は、旋削工具又はフライス工具である。
【背景技術】
【0003】
工具に作用する様々な力を監視するためのセンサの使用は、原則として従来技術から既に知られている。
【0004】
例えば、センサの使用はヨーロッパ特許1984142号から公知であり、圧電セラミックセンサを使用して、切削本体又は工具のホルダにかかる圧縮力、引張力、及び剪断力を測定し、過負荷による損傷を防ぐように工作機械を制御することができる。これにより、力に対する閾値が特定され、前記閾値を超えた場合に機械加工工程が邪魔される(intervene)。
【0005】
切削インサートの予防的破壊、亀裂及び/又は摩耗検出の目的から工具上で1つ又は複数のセンサが使用される同様の工具は、ドイツ公開公報10 2014 224778号に開示されている。
【0006】
しかしながら、切削工具におけるそのようなセンサの使用は、必ずしも切削インサートの破損又は摩耗を検出するのに役立つ必要はない。原則として、センサは品質保証及び/又は文書化にも使用できる。例えば、このようなセンサを使用して、機械加工中に工具の切削インサートに作用する力を経時的に記録し、文書化の目的で保存することができる。
【0007】
切削工具上でそのようなセンサが使用される目的に関係なく、工作機械内又は工具自体内の適切な場所にセンサを配置するという問題がしばしばある。
【0008】
できるだけ正確な測定を可能にするためには、一般に、センサを加工点にできるだけ近い位置、すなわち工具の刃先にできるだけ近い位置で使用することが望ましい。しかし、これは空間的な理由だけでなく、純粋な安定性の理由からも問題になることが多い。例えば、切削インサートホルダにクランプされる交換可能な切削インサートを備えた工具の場合、切削インサートと切削インサートホルダとの間に直接切削インサートホルダにセンサを装着することは限られた範囲でのみ可能である。これは、刃先に非常に近い測定を可能にするであろうが、そのような取り付けは、純粋に機械的な理由から、先行技術から知られている工具にはむしろ不適当である。なぜなら、センサは、切削インサートのクランプの安定性を損なう可能性があるからである。
【0009】
一方、工具又は切削インサートホルダが工作機械にクランプされている接続点にセンサを取り付けることは、スペースと安定性の両方の理由から、はるかに容易である。しかし、機械加工点までの距離が大きいために、このようなセンサの取り付けは、測定の精度を低くすることにつながる。
【0010】
従って、本発明の目的は、センサを有する切削工具を提供することであり、ここで、センサは、できるだけ刃先に近いが、工具の機械的安定性に悪影響を及ぼすことなく使用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、本目的は、以下の構成要素からなる請求項1に係る工具によって解決される。
-少なくとも1つの切刃を有する切削インサートと、
-該切削インサートを受け入れる切削インサート受け部を備えた切削インサートホルダと、
-クランプ用楔部として作用し、切削インサート受け部に締結されるように構成されて切削インサートを切削インサートホルダにクランプするクランプ要素と、
-クランプ要素を切削インサートホルダに締結し同時に切削インサートを切削インサートホルダに締結する締結要素と、
-切削インサートに作用する力に依存した測定信号を生成するように構成されたセンサを備え、クランプ要素はセンサが配備される凹部を備える。
【0012】
本発明のさらなる態様によれば、そのような工具と、データリンクを介してセンサに接続された評価ユニットとを備える工作機械がさらに提供される。評価ユニットは、測定信号を評価し、文書化のために記憶ユニットに記憶するように構成されてもよい。同様に、評価ユニットは、測定信号を評価し、評価された測定信号に基づいて工作機械を制御するように、及び/又は測定信号が予め定められた閾値を超えた場合、又は予め定められた信号パターンを有する場合に、警報信号を発生するように設定することができる。
【0013】
本発明に係る工具は、センサが工具に取り付けられる方法において特に区別される。本発明によれば、センサは、クランプ要素に設けられた凹部内に配置される。クランプ要素は、切削インサートホルダ内で切削インサートをクランプするためのクランプ楔部として機能し、この目的のために、切削インサートホルダ内で切削インサートと一緒に締結される。クランプ要素は、別個の締結要素によって切削インサートホルダ内に締結される。
【0014】
クランプ要素の凹部にセンサを取り付けることは、特に次の利点を有する。第1に、これにより、センサの非常に省スペースな配置が可能になる。切削インサートホルダ内の切削インサートの取り付けは、このようなセンサの取り付け方法の影響をほとんど受けない。それにもかかわらず、センサは、このように切削インサートのすぐ近く、従ってワークピースの加工点に非常に近くに配置することができる。そのため、センサは干渉の影響をほとんど受けない。センサがクランプ要素の凹部内に配置されるために、センサはまた、工具の他の構成要素と衝突しない。他の重要な利点は、クランプ楔部として作用するクランプ要素が、センサの位置及びクランプ力の非常に精密な調整が可能になることである。全てにおいて、これにより、工具の安定性がセンサの影響を受けることなく、センサによって非常に正確な測定を保証することが可能になる。
【0015】
従って、上記の目的は完全に解決される。
【0016】
好ましくは、センサは、正確に嵌合するか又は何らかの遊びを伴って凹部内に配置される。凹部は、クランプ要素の2つのクランプ面のうちの1つにおける窪みとして構成されることが好ましい。凹部の形状は、例えば、平面視において、円形又は矩形のように、恣意的なものとすることができる。
【0017】
好ましい改良例によれば、センサは、クランプ要素と切削インサートホルダとの間に局所的に配置される。これは、通常、クランプ要素と切削インサートとの間にセンサを局所的に取り付ける場合と比較して、空間と安定性の両方の理由から有利である。
【0018】
しかしながら、センサは、本発明の範囲から逸脱することなく、クランプ要素と切削インサートとの間に配置されてもよいことに留意されたい。
【0019】
好ましくは、センサは工具の装着状態において、クランプ要素及び切削インサートホルダの両方と直接接触している。従って、センサは、工具の両方の構成要素と直接接触するのが好ましい。
【0020】
これは、本質的に、クランプ要素と切削インサートホルダとの間に作用する力がセンサへ直接的に伝達されるとの利点を有する。これらの力は切削インサートに作用する力に依存するため、非常に正確な測定結果を得ることができる。
【0021】
好ましい実施形態によれば、センサは力センサを含む。
【0022】
このような力センサは、力トランスデューサとも呼ばれることが多い。原則として、任意のタイプの力センサが、本発明に従って使用され得る。例えば、センサは、ばね本体の力トランスデューサ、圧電性の力トランスデューサ、誘導性の力トランスデューサ、容量性の力トランスデューサ、電気性の力トランスデューサ、抵抗力トランスデューサ、又は磁気弾性の力トランスデューサであってもよい。
【0023】
大部分の場合、このような力センサにおける力測定は、前述した測定原理の一つに基づいて、変位又は圧力又は抵抗の測定による弾力的な変形を測定することによって行われる。
【0024】
また、センサは多軸の力センサを含み得る。これは多次元の力を測定・評価できる利点がある。例えば、このような多軸の力センサを使用して、純粋な切削力又は機械加工力に加えて、工具の送り力を測定することができる。
【0025】
この時点では、ここでは通常「センサ」(単独で)という言葉が使われていることに注意すべきである。しかしながら、原理的には、本発明の範囲を離れることなく、上記の場所又はクランプ要素に複数のセンサを配置することも可能である。同様に、本発明の範囲を離れることなく、工具上の他の様々な場所に追加のセンサを配置することも可能である。
【0026】
さらなる改良例によれば、クランプ要素は実質的に楔形である。「実質的に楔形」の記載は、特に、クランプ要素の側面図において考慮される幾何学的構成を指す。クランプ要素は、好ましくは、その全体の幾何学的形状においてプリズム状であり、側面図又は長手方向断面において台形又は楔形である。
【0027】
好ましくは、クランプ要素は、互いに角度を成して延びる2つのクランプ面を備え、一方のクランプ面は切削インサートに対して置かれ、他方のクランプ面は切削インサートホルダに対して置かれる。特に、これら2つのクランプ面は、互いに15°未満の角度で延びる。
【0028】
このような2つのクランプ面が互いに傾斜することは、クランプ要素と切削インサートホルダとの間にいわゆるセルフロック効果が生じるという特別な利点を有する。このセルフロック効果は、工具が完全に装着された状態では、切削インサートとともにクランプ要素を切削インサートホルダから容易に取り外すことができないことを意味する。これは、クランプ要素を締結するための締結要素が解除された場合にも当てはまる。このセルフロック効果を実現するためには、5°乃至10°の範囲の2つのクランプ面間の角度が特に好ましい。
【0029】
さらなる改良例によれば、クランプ要素は、クランプ要素の長手方向軸に沿った前端から切削インサート受け部のベースに対向する後端まで延びており、クランプ要素は、クランプ要素の長手方向軸に垂直な高さ方向で、後端に向かって楔形状にテーパ付けられている。
【0030】
クランプ要素の長手方向軸に対して垂直に測定されるクランプ要素の幅は、クランプ要素の長手方向軸の全体に沿って一定であることが好ましい。クランプ要素の高さは、クランプ要素の長手方向軸に対して垂直であってクランプ要素の幅に対して垂直に測定され、クランプ要素の高さは、クランプ要素の前端から後端まで連続的に減少することが好ましい。これは、切削インサートホルダ内にクランプ要素を締結する際に切削インサートの一種の楔を生じさせ、これは切削インサートホルダ内の切削インサートのクランプにつながる。クランプ要素の締結中に、クランプ要素は、切削インサートホルダ内に更に引っ張られ、それによって、切削インサートに働くクランプ力がますます増大される。
【0031】
クランプ要素がその後端に向かって連続的にテーパ付けられた場合、クランプ力は切削インサートホルダ内にクランプ要素を締結する際にも連続的に増加する。これは、センサがクランプ要素と切削インサートホルダとの間に位置するので、この場合において特に有利である。従って、クランプ要素の締付け力の連続的な増加は、センサ上の力の連続的な増加にも繋がる。従って、センサは最適に調整され、その予張力は最適に設定される。これにより、センサによって非常に精密な測定結果が達成されることが可能になる。
【0032】
さらに、センサの高さは、センサが凹部の縁部分を越えて突出するように、センサに平行に測定された凹部の深さよりも大きいことが好ましい。
【0033】
このように、センサは、凹部から上方に僅かに突出する。このようにして、工具が使用される前に、工具の取り付け状態にて、クランプ要素と切削インサートホルダとの間に予負荷をかけてセンサが既にクランプされているので、センサの予負荷が作成され得る。
【0034】
さらなる改良例によれば、センサは、クランプ要素内に配置され且つ凹部内に開口する第1のケーブルダクト部分と、切削インサートホルダ内に配置され且つ工具の取り付け状態で第1のケーブルダクト部分と位置合わせされる第2のケーブルダクト部分とを介して工具の内部から外部に案内されるケーブルを備える。
【0035】
原則として、工作機械の評価ユニットとの無線データ接続を確立するために、センサに送信ユニット、例えば無線送信機を装備することも可能であろう。しかし、スペース上の理由から、これは通常は不可能である。さらに、本出願にて通常、有線データ接続により、干渉の影響を受けにくいより堅牢なデータ接続を実施することができる。
【0036】
モールドを取り付ける際に互いに位置合わせされる前述の2つのケーブルダクト部分により、センサのケーブルをモールドの内側から外側に配線する簡単な方法が確保される。両方のケーブルダクト部分は、任意の形状とすることができる。金型が組み立てられる際には、2つのケーブルダクト部分が互いに位置合わせされていることのみが重要である。従って、2つのケーブルダクト部分は、夫々クランプ要素内又は切削インサートホルダ内の凹部として形成されることが好ましい。
【0037】
さらなる改良例によれば、クランプ要素は、工具が取り付けられたときに少なくとも主に切削インサートホルダに凹むように切削インサートホルダの形状に適合される。「少なくとも主に」とは、工具の取り付け状態で、クランプ要素の少なくとも50%の容積が、切削インサートホルダに凹んでいることを意味する。好ましくは、工具の取り付け状態で、少なくともクランプ要素の90%の容積が、切削インサートホルダに凹んでいる。
【0038】
従って、工具の取り付け状態では、クランプ要素は、もはや突出しないか、又は切削インサートホルダから僅かに突出するだけであるであるのが好ましい。これにより、特に機械加工されるワークピースとの衝突が効果的に防止される。
【0039】
さらなる改良例によれば、切削インサート受け部は、クランプ要素の長手方向軸線に対して角度を以って傾斜し、クランプ要素の第1の側面に対向するクランプ面を備え、工具の取り付け状態においてセンサがクランプ面に当接し、第1の側面に対向し、クランプ要素の長手方向軸線に平行に延びる、クランプ要素の第2の側面は、工具の取り付け状態において少なくとも領域において切削インサートに当接する。
【0040】
前記クランプ要素は、前記切削インサートホルダ内で前記切削インサートの上方に配置されていることが好ましい。これは切削インサートのクランプの安定性に関して特に有利であることが判明する。センサは、既に述べたように、センサが配置されたクランプ要素内の凹部の上方に突出するのが好ましいので、クランプ要素の第1の側面は、切削インサート受け部のクランプ面に接触しない。その代わり、センサだけがこのクランプ面に接する。センサは、クランプ要素の第1の側面を越えて1mm乃至2mmまで突出することが好ましい。
【0041】
さらなる改良例によれば、締結要素はねじを備え、クランプ要素は貫通孔を備え、切削インサートホルダが、工具の取り付け状態でねじが貫通孔を通して係合する雌ねじを備える。
【0042】
工具の取り付け状態において、ねじは切削インサートホルダの長手方向軸線に平行に、かつクランプ要素の長手方向軸線に平行に整列されるのが好ましい。
このように、ねじは、クランプ要素によって切削インサートを切削インサートホルダ内にクランプするために、クランプ要素を通って切削インサートホルダ内に比較的容易に挿入され、ねじ締めすることができる。この目的のために、クランプ要素は孔を有し、該孔の軸線が好ましくは切削インサートホルダの長手方向軸線に平行に整列され、組立て状態でクランプ要素の長手方向軸線に平行に整列される。ねじは、差動ねじとして構成することもでき、この場合、雌ねじはクランプ要素の貫通穴に配置され、これは、切削インサートホルダに配置された雌ねじとは反対方向である。
【0043】
さらなる改良例によれば、クランプ要素及び切削インサートホルダは鋼製であり、一方、切削インサートは超硬製である。とりわけ、これにより、切削インサートホルダ、切削インサート及びクランプ要素間の接続の安定性が改善される。
【0044】
上記の特徴及び後述する説明の特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、各ケースに示された組合せのみならず、他の組合せ又はそれ自体においても使用できることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明の実施形態が図面に示され、以下の記載にてより詳細に説明される。
【
図1】本発明による工具の実施形態の斜視図である。
【
図3】
図1に示す工具の実施形態の長手方向の断面図である。
【
図4】本発明による工具に使用されるクランプ要素と該クランプ要素の中に挿入されるセンサの実施形態の斜視図である。
【
図5】
図4に示すクランプ要素の斜視図であり、該クランプ要素に挿入されるセンサはない。
【
図6】本発明の実施形態による工作機械のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1乃至
図3は、本発明に係る工具の実施形態を斜視図、分解図及び縦断面図で示す。本発明に係る工具は、符号10を用いて、その全体がここで示される。
【0047】
工具10は、切削インサートホルダ12及び交換可能な切削インサート14を備え、該切削インサート14は、クランプ要素16によって切削インサートホルダ12内又はその上に締結することができる。クランプ要素16は、次に締結要素18によって切削インサートホルダ12内又は切削インサートホルダ12上に締め付けることができる。工具10の取り付け状態では、切削インサート14は、クランプ要素16と切削インサートホルダ12との間にクランプ(挟持)される。
【0048】
切削インサートホルダ12は、基本的に、
図1の矢印20によって示される長手方向のホルダ軸に沿って延在される。切削インサートホルダ12は、前端部で切削インサート受け部22を構成し、この場合では、本質的にポット形状である。この切削インサート受け部22は、ポット状の凹部として構成されており、切削インサートホルダ12に一種の止まり穴を形成している。
【0049】
本発明によれば、切削インサート受け部22は、切削インサート14を受け入れるだけでなく、クランプ要素16を受け入れる役割も果たす。切削インサート受け部22は、上部24及び下部26(
図2参照)を備える。上部24は、クランプ要素16を受け入れる役割を果たす。下部26は、切削インサート14を受け入れる役割を果たす。両部24、26は、互いに開口しており、すなわち、壁によって互いに分離されていない。上部24は、ホルダの長手方向軸20に対して横から見て、下部26よりも大きな断面を有するのが好ましい。従って、クランプ要素16はまた、切削インサート14よりも大きな断面を有するのが好ましい。
【0050】
切削インサート14は、その上に配置された刃先30を有する切削ヘッド28と、クランプ部32とを備える。クランプ部32は、切削インサート14を切削インサートホルダ12にクランプする役割を果たす。
【0051】
また、本発明に係る工具10は、特に、切削インサート14を切削インサートホルダ12にクランプする特殊な方法に特徴がある。クランプ要素16は、切削インサート14をクランプするために使用される。切削インサート14及びクランプ要素16の両方は、互いに強固に又は永久的に接続されていない、別々に交換可能な部品として設けられている。
【0052】
クランプ要素16は、本質的に楔形である。これは、
図3に示す工具10の縦断面図から特に明らかである。クランプ要素16は前端から出発して、後端38に向かって、クランプ要素16の長手方向軸36に対して垂直に測定されたその高さにおいて、楔形にテーパを付けている。工具10の取り付け状態では、クランプ要素16の後端38は、切削インサート受け部22の内側ベース40に対向する。工具10の取り付け状態において、クランプ要素16はその上端にて、切削インサートホルダ12の対応するクランプ面44に当接するクランプ面42を備える(ただし、センサ64は、この点において、クランプ面42を越えて上方に突出しないことを条件とし、更に以下を参照)。2つのクランプ面42,44は、クランプ要素16の長手方向軸36に対し、又はそれに平行に延びるホルダの長手方向軸20に対して斜めの角度で延びる。好ましくは、クランプ面42、44は、クランプ要素16の長手方向軸36又はホルダの長手方向軸20と共に、15°未満、特に好ましくは5°乃至10°の角度を囲む。クランプ要素16の底面側において、クランプ要素16は、それに対応して凸形状のクランプ面48に当接する凹形状のクランプ面46を備えており、この凸形状のクランプ面48は、切削インサート14のクランプ部32の上側に形成されている。
【0053】
既に述べたように、クランプ要素16自体は、締結要素18によって切削インサートホルダ12内に締結される。この締結要素18は、本実施形態にて、ねじとして構成されている。より正確には、このねじ18は差動ねじとして構成される。差動ねじは2つの対向する雄ねじ50、52を備え、これらは、円周溝54によってねじ18の中心の領域で互いに分離されている(
図2参照)。
【0054】
ねじ18は、クランプ要素16に設けられた貫通孔56を介して切削インサートホルダ12に螺合される。この貫通孔56は、クランプ要素16の長手方向軸36に沿って延びている。ねじ18の第1の雄ねじ50は、切削インサートホルダ12に配置された第1の雌ねじ58と係合する。ねじ18の第2の雄ねじ52は、ねじ18の第2の雌ねじ60に係合し、クランプ要素16の貫通孔56に形成された第2の雌ねじ60に係合する。切削インサートホルダ12に設けられた第1の雌ねじ58とクランプ要素16に設けられた第2の雌ねじ60とは、ねじ18の両方向の2つの雄ねじ50、52に対応するように構成されている。
【0055】
雄ねじ50、52及び雌ねじ58、60の対向する構成は、差動ねじ18の緩みの間にクランプ要素16が切削インサート受け部22から能動的に押し出されるという利点を有する。従って、クランプ要素16及び切削インサート14は、例えば切削インサートを交換する場合に、より容易に取り外すことができる。同時に、このタイプの構成はまた、差動ねじ18の締め付け中、又はクランプ要素16及び切削インサート14の取り付け中に、差動ねじ18のわずか数回転によって、クランプ要素16が切削インサート受け部22内に引っ張られるという利点を有する。
【0056】
しかしながら、クランプ要素16を固定するために、原理的には、別の種類のねじ、又はまったく異なる種類の締結要素さえ使用することができることが理解される。
【0057】
クランプ要素16は、センサ64が配置された凹部62を備える。好ましくは、センサ64は、切削インサート14に加えられる力を測定するために使用される力センサである。特に好ましくは、センサ64は、切削インサート14に作用する力を3次元の全てで測定するように構成された多軸の力センサである。
【0058】
クランプ要素16の凹部62に配置されたセンサ64は、工具10の取り付け状態でクランプ要素16と切削インサートホルダ12との間にクランプされる。このようにして、クランプ要素16と切削インサートホルダ12との間に作用する力を測定する。クランプ要素16と切削インサートホルダ12との間に作用するこの力は、切削インサート14に作用する力に依存するので、センサ64によって生成される測定信号は、切削インサート14に作用する力にも依存する。
【0059】
凹部62は、クランプ要素16のクランプ面42に設けられた窪みとして構成される。好ましくは、凹部62は、センサ64がその中に正確に嵌合するように収容されるように構成される。しかしながら、凹部62の深さは、凹部62と平行に測定されるセンサ64の高さよりもやや小さい方が好ましい。これは、センサ64が凹部62の縁部66を幾分越えて上方に突出する結果となる。好ましくは、センサ64は、凹部62の縁部66の上方に数マイクロメートルしか突出していない。しかし、凹部62の上方に最大1mm-2mm突出してもよい。これにより、クランプ要素16と切削インサートホルダ12との間のセンサ64のクランプが改善され、センサ64の予負荷が生成され、これにより、今度は改善された信号評価が可能になる。
【0060】
センサ64がクランプ要素16内に取り付けられる方法における特別な利点は、一方では、センサ64が凹部62内に配置されるため、非常に省スペースの方法で収容されることである。他方、切削インサート14のクランプの安定性は、センサ64の影響をほとんど受けない。クランプ要素16の凹部62内にセンサ64が配置されることの別の重要な利点は、センサ64の位置並びにその予張力が、クランプ要素16の位置及びその予張力と共に非常に容易に且つ非常に正確に調整され得ることである。さらに、センサ64の記載されたタイプの配置は、切削インサート14に近接しているため、機械加工力を刃先に非常に近接して測定することができるという利点を有する。全体として、これは、切削インサート14に作用する力をセンサ64によって非常に精密かつ堅牢に測定することを可能にする。
【0061】
図6に概略的に示すように、センサ64によって生成された測定信号は、データ接続68を介して評価ユニット70に供給することができ、この評価ユニット70は、測定信号を評価し、従って処理するように構成される。評価ユニット70は、例えば、工具10が使用される工作機械100の一部としてもよい。しかしながら、評価ユニット70は、原理的には、工作機械100に直接に一体化されない別個のユニットとして構成することもできる。
【0062】
センサ64によって生成される測定信号の評価及びさらなる処理に関して、様々な可能性が考えられる。評価ユニット70は、例えば、文書化又は品質保証のために、測定信号を記憶装置72に記憶するように構成され得る。また、評価ユニット70が測定信号に基づいて工作機械100を制御するように構成されることも可能である。例えば、評価ユニット70は、測定信号が所定の閾値を超えた場合、又は切削インサート14の損傷又は摩耗した刃先30についての結論を引き出すことを可能にする所定の信号パターンを有する場合に、工作機械100を停止させるように構成することができる。なお、更なる実施形態によれば、評価ユニット70は、センサ64によって生成される測定信号が所定の閾値を超えた場合や所定の信号パターンを示す場合に、出力ユニットを介して警戒信号を生成するように構成されてもよい。出力ユニット74は、警告信号がオンスクリーンディスプレイとして視覚的に表示されるスクリーンを含んでもよい。同様に、出力ユニット74は、警告信号が音響的に生成されるスピーカを含んでもよい。
【0063】
データ接続68は、無線データ接続と有線データ接続の両方として構成することができる。本実施形態においては、データ接続68は、有線データ接続として構成されることが望ましい。この目的のために、センサ64は、クランプ要素16及び切削インサートホルダ12から横方向に出ているケーブル76を備える。クランプ要素16では、この目的のために第1のケーブルダクト部78が設けられ、該第1のケーブルダクト部78は凹部62(
図5参照)に開口する。切削インサートホルダ12には、工具10の取り付け状態で第1のケーブルダクト部78と位置合わせされる第2のケーブルダクト部80が設けられている(
図1及び
図2参照)。両ケーブルダクト部78、80は夫々、クランプ要素16内に横方向に又は切削インサートホルダ12内に横方向に導入される凹部として形成される。
【0064】
最後に、本発明に係る工具10の現在の実施形態は、本発明を実現するための多くのあり得る実施形態の任意の一実施形態に過ぎないことに留意する必要がある。切削インサートホルダ12は、本書に示すように、決してカセットホルダである必要はない。従来の旋削工具に共通するように、切削インサートホルダ12を純粋にビーム状のホルダとすることも同様に可能である。同様に、切削インサートホルダ12も円筒形状とすることができる。また、切削インサート14は、本発明の範囲から逸脱することなく、原則として、ここに示されている形状と異なる場合がある。例えば、切削インサート14は、板状又は棒状の割出し可能なインサートとして構成することもできる。切削インサート受け部は、ここに示すように、必ずしもポット形状である必要はない。その代わりに、切削インサートホルダ12は、切削インサートホルダ12上に形成された2つのクランプジョーによって構成することもでき、両クランプジョーの間にクランプ要素16と切削インサート14がクランプされる。