(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】エンジン内のオイル寿命を延ばすためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
F01M 1/16 20060101AFI20240430BHJP
F01M 11/00 20060101ALI20240430BHJP
F01M 11/10 20060101ALI20240430BHJP
F01M 1/02 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
F01M1/16 Z
F01M11/00 U
F01M11/00 S
F01M11/10 B
F01M1/02
(21)【出願番号】P 2022539291
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(86)【国際出願番号】 US2020033472
(87)【国際公開番号】W WO2021236056
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】319005648
【氏名又は名称】インニオ ワウケシャ ガス エンジンズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ドナヒュー,リチャード,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】グラハム,オーウェン,スチュワート
(72)【発明者】
【氏名】ニューマン,ケネス,エドワード
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-285974(JP,A)
【文献】特開2009-121295(JP,A)
【文献】特開2007-187133(JP,A)
【文献】特開平07-034842(JP,A)
【文献】特開2016-196864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 1/16
F01M 11/00
F01M 11/10
F01M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.25g/kw-hr以下でオイルを消費し、補給オイルを使用するように構成された往復動エンジンを具備するシステムであって、前記往復動エンジンはエンジンオイルサンプを備えており、前記システムは、前記往復動エンジン内のオイルの滞留時間が1000時間以下であるように、動作中に前記往復動エンジン内のオイル量を維持するように構成されている、システム。
【請求項2】
前記往復動エンジンに結合され、前記往復動エンジンを通してリザーブオイルを再循環させる前に、前記エンジンオイルサンプ内の前記リザーブオイルを脱気するように構成されたオイル再調整回路を備えており、前記オイル
再調整
回路は、前記エンジンオイルサンプに結合されており、前記リザーブオイルを脱気するための脱気器を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記脱気器が、前記往復動エンジンの動作中に前記リザーブオイルを約20%未満のオイルエアレーションで脱気するように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記オイルの劣化レベルが、前記オイルの許容限界を超えずに安定している、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
往復動エンジンを通して或る量のリザーブオイルを循環させるように接続されたオイルシステムであって、
前記往復動エンジンを通して循環させた後に前記或る量のリザーブオイルを受け取るように構成されたエンジンオイルサンプと、
前記エンジンオイルサンプに接続され、動作中に前記往復動エンジンを通して前記リザーブオイルを循環させる前に前記エンジンオイルサンプから出る前記或る量のリザーブオイルを受け取るように構成されており、前記リザーブオイルを脱気するための脱気器を含む、オイル再調整回路と、
前記或る量のリザーブオイルとは別の、或る量の補給オイルの供給部で会って、前記或る量のリザーブオイルの消費を伴う前記往復動エンジンの動作中に前記或る量の補給オイルを伝えるように接続された補給オイルの供給部とを備え、前記往復動エンジンは、0.25g/kw-hr以下でオイルを消費するように構成され、前記オイルシステムは、前記往復動エンジン内のオイルの滞留時間を1000時間以下に維持するように構成されている、システム。
【請求項6】
前記エンジンオイルサンプに結合され、前記往復動エンジンへリザーブオイルが流れるように構成された主回路を備え、前記主回路は、前記主回路に沿って配置された主オイルポンプを備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記主回路が、前記オイル再調整回路の前記エンジンオイルサンプへの接続とは別に前記エンジンオイルサンプに接続されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記主回路が、前記オイル再調整回路と直列に前記エンジンオイルサンプに結合されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記エンジンオイルサンプと、前記主回路と前記オイル再調整回路との間の合流点と、の間に延在する双方向リリーフ/安全ラインを備え、前記
双方向リリーフ/安全ラインは選択的に開いて、前記エンジンオイルサンプから直接前記主回路へ前記リザーブオイルが流れるように構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記オイル
再調整
回路が、前記エンジンオイルサンプから前記脱気器に前記リザーブオイルを圧送するための補助ポンプを備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
前記主オイルポンプは、前記補助ポンプよりも高い圧力で動作するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記オイルの劣化レベルが、前記オイルの許容限界を超えずに安定している、請求項5に記載のシステム。
【請求項13】
前記脱気器が、前記往復動エンジンの動作中に前記リザーブオイルを約20%未満のオイルエアレーションで脱気するように構成されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項14】
補給オイルを使用する往復動エンジンを通してオイルを循環させるための方法であって、
前記往復動エンジンを0.25g/kw-hr以下のオイル消費で動作させるステップと、
動作中に前記往復動エンジン内のオイル量を維持し、前記オイル量を維持するために前記補給オイルを使用するステップと、を含み、前記往復動エンジン内のオイルの滞留時間が1000時間以下である、方法。
【請求項15】
前記往復動エンジンを動作させるステップが、エンジンオイルサンプ内のピックアップの上方のリザーブオイルのヘッド高さを下げることなしに、前記往復動エンジンの前記エンジンオイルサンプ内の前記リザーブオイルを前記エンジンオイルサンプのオイルサンプ容積容量よりも少なくして、前記往復動エンジンを動作させるステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記往復動エンジンのエンジンオイルサンプ内のリザーブオイルを、前記エンジンオイルサンプに結合されたオイル再調整回路を通して伝えるステップを含み、前記オイル
再調整回路は、前記リザーブオイルを脱気する脱気器を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記脱気器を通して前記リザーブオイルを約20%未満のオイルエアレーションまで脱気するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記往復動エンジンに結合された主回路を通して前記往復動エンジンの前記エンジンオイルサンプから前記リザーブオイルを伝えるステップを含み、前記主回路に沿って主オイルポンプが配置されている、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記リザーブオイルを前記エンジンオイルサンプから直接、前記往復動エンジンへ、前記オイル再調整回路とは別の前記主回路を通して伝えるステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記リザーブオイルを前記エンジンオイルサンプから直接、前記往復動エンジンへ、前記オイル再調整回路に結合された前記主回路を通して伝えるステップを含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題は、往復動エンジンに関し、より詳細には、往復動エンジンのオイル寿命を延ばすことに関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンまたはディーゼルなどの炭素質燃料を燃焼させる往復動エンジン(例えば、往復動内燃エンジン)は、摩擦摩耗を最小限に抑えるために、エンジンの可動部品に潤滑油を分配する。エンジンの所有者およびオペレータは、オイル寿命を延ばすことによってサービス間隔を延長することによって、総オイル使用量およびサービスコストを削減しようとしている。オイル使用量には、オイル寿命の終わりに必要なオイル交換だけでなく、動作中のオイル消費量も含まれる。オイル寿命を延ばすことにより、エンジンの可用性が高まるので、エンジン所有者の収益性も向上する。総オイル量を増加させることによってオイル寿命を延ばすことができるが、これでは総オイル使用量は減らず、遠隔設置の実用面での制約となる。オイル消費速度を意図的に増加させることに関連付けて、補給オイル速度を上げてオイル寿命を延ばすことにより、スウィートニング比が高まるが、これでは総オイル使用量が増大する。さらに、オイル劣化を遅らせるためのオイル添加剤は、オイル寿命を延ばすのに有効であり得るが、オイルのコストも増加させてしまう。したがって、オイル使用量およびコストを減らしつつ、サービス間隔を延長することが必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本出願の主題は、(往復動エンジンで今日使用されている既知のオイル量と比較して)オイル量を減らしてオイル寿命を実質的に延ばすことによって、往復動エンジンのオイル消費を増加させることなく、往復動エンジンの動作に関連するオイルのコストを削減するためのシステムおよび方法である。
【0004】
最初に特許請求する主題の範囲に相応する特定の実施形態を以下に要約する。これらの実施形態は、特許請求している主題の範囲を限定することを意図しておらず、むしろ、これらの実施形態は、実現性のある本主題の形態の概要を提供することのみを意図している。実際、本主題は、以下に記載する実施形態と同様であっても異なっていてもよい様々な形態を包含することができる。
【0005】
第1の実施形態において、システムが提供される。システムは、0.25g/kw-hr以下のオイルを消費し、補給オイルを使用するように構成された往復動エンジンを含む。往復動エンジンは、エンジンオイルサンプを含む。システムは、往復動エンジン内のオイルの滞留時間が1000時間以下であるよう、動作中に往復動エンジン内のオイル量を維持するように構成される。
【0006】
第2の実施形態では、往復動エンジンを通して或る量のリザーブオイルを循環させるように接続されたオイルシステムが提供される。システムは、往復動エンジンを通して循環させた後に或る量のリザーブオイルを受け取るように構成されたエンジンオイルサンプを含む。システムはまた、エンジンオイルサンプに接続され、動作中にリザーブオイルを往復動エンジンを通して循環させる前にエンジンオイルサンプから出る或る量のリザーブオイルを受け取るように構成されたオイル再調整回路を含み、オイル再調整回路は、リザーブオイルを脱気する脱気器を含む。システムは、或る量のリザーブオイルとは別の、或る量の補給オイルを、或る量のリザーブオイルの消費を伴う往復動エンジンの動作中に伝えるように接続された、補給オイルの供給部をさらに含み、往復動エンジンは、0.25g/kw-hr以下でオイルを消費するように構成され、オイルシステムは、往復動エンジン内のオイルの滞留時間を1000時間以下に維持するように構成される。
【0007】
第3の実施形態では、補給オイルを使用する往復動エンジンを通してオイルを循環させる方法が提供される。本方法は、往復動エンジンを0.25g/kw-hr以下のオイル消費で動作させるステップを含む。本方法はまた、動作中に往復動エンジン内のオイル量を維持し、オイル量を維持するために補給オイルを使用するステップとを含み、往復動エンジン内のオイルの滞留時間は1000時間以下である。
【0008】
本主題のこれらの、ならびに他の特徴、態様、および利点は、添付の図面を参照しつつ以下の詳細な説明を読めば、さらによく理解されよう。添付の図面では、すべての図面を通して、類似する符号は類似する部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】往復動エンジンシステムの一部の一実施形態の概略ブロック図である。
【0010】
【
図2】シリンダ内に配置されたピストンの一実施形態の断面図である。
【0011】
【
図3】オイル劣化/スウィートニングに対するサンプオイル量の効果のグラフ表示である。
【0012】
【
図4】経時的なオイル劣化に対するサンプオイル量の効果のグラフ表示である。
【0013】
【
図5】往復動エンジン用のオイル補給システムの一実施形態の概略図である。
【0014】
【
図6】エンジンオイルサンプ(例えば、底部にピックアップを有する)の一実施形態の概略図である。
【0015】
【
図7】エンジンオイルサンプ(例えば、トラフを有する)の一実施形態の概略図である。
【0016】
【
図8】主オイル回路および補助回路(例えば、補助回路が主オイル回路に結合された状態で)を備えた往復動エンジンシステムの一実施形態の概略図である。
【0017】
【
図9】主オイル回路および補助回路(例えば、双方向リリーフ/安全ラインを有する)を備えた往復動エンジンシステムの一実施形態の概略図である。
【0018】
【
図10】主オイル回路および補助回路(例えば、補助回路が主オイル回路から分離された状態で)を有する往復動エンジンシステムの一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の主題の1つまたは複数の具体的な実施形態を以下に説明する。これらの実施形態の簡潔な説明を提供するために、実際の実施態様のすべての特徴が本明細書に記載されていなくてもよい。そのような実際の実施態様の開発においては、あらゆるエンジニアリングまたは設計プロジェクトと同様に、実施態様ごとに異なり得るシステム関連およびビジネス関連の制約条件の遵守など、開発者の特定の目標を達成するために、実施態様ごとに特有の多数の決定を行わなければならないことを、理解すべきである。また、そのような開発の努力は、複雑かつ多大な時間を要するものであるかもしれないが、それでもなお、本開示の恩恵を受ける当業者にとっては設計、作製、および製造における日常的な取組みにすぎないものであることを、理解すべきである。
【0020】
本主題の様々な実施形態の要素を導入するとき、冠詞「1つの(a、an)」、「この(the)」、および「前記(said)」は、その要素が1つまたは複数存在するという意味であることを意図している。「備える(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」という用語は、包括的であるように意図され、挙げられた要素以外のさらなる要素が存在してもよいことを意味する。
【0021】
本開示の実施形態は、往復動エンジン(例えば、往復動内燃エンジン)のオイル寿命の延長を可能にする。開示された実施形態では、オイル寿命を延ばすべく、オイル滞留時間を最小限に抑えて1000時間以下にするために、総オイル量を(例えば、同じエンジンが一般的に使用する推奨オイル量または通常オイル量と比べて)大幅に減らす。オイル寿命を延ばして、無限のオイル寿命を達成することができる(すなわち、オイル劣化の漸近線は、オイルの許容限界(condemninglimit、これを超えると不良とされる限界)未満である)。特に、使用される総オイル量を最小化する場合、定常状態のオイル濃度と補給オイル濃度の間での濃度の変化は、オイルの許容限界未満である。総オイル量を減らし、オイル滞留時間を最小化すると、補給オイル速度の上昇割合が増すので、スウィートニング比が増大し、オイル寿命を延ばすことが可能になる。特定の実施形態では、エンジンのサンプまたはオイルパン内のオイル(例えば、リザーブオイル)の総量を(例えば、サンプオイル容積容量と比べて)減らすことを、エンジンオイルサンプ内のピックアップ(エンジンにオイルを供給するための)の上方のリザーブオイルのヘッド高さを下げることなしに行う。特定の実施形態では、リザーブオイルは、エンジンを通して再循環させる前に継続的に調整(脱気)してもよい。例えば、脱気器およびポンプ(例えば、補助ポンプ)を含む補助回路(例えば、オイル再調整回路)をエンジンオイルサンプに結合することができる。いくつかの実施形態では、補助回路は、オイルポンプ(例えば、補助ポンプよりも高い圧力で動作する)を有する主回路(例えば、主オイル回路)に結合されてもよく、オイルは、補助回路から主回路に、続いてエンジンに供給されてもよい。他の実施形態では、補助回路を主回路から分離し、脱気器とエンジンオイルサンプとの間でリザーブオイルを再循環させてもよい。総オイル量を最小限に抑えてオイル寿命を延ばすことにより、オイル使用量を減らし、サービス間隔を延ばし、且つオイル寿命をさらに延ばすことができる他の再調整手段の利用を可能にする。
【0022】
以下の説明では、補給オイルは、往復動エンジンの外側の場所(例えば、補給オイルタンク)から往復動エンジンに供給される未使用のオイルとして定義される。リザーブオイルは、エンジンオイルサンプに存在するオイルとして定義される。
【0023】
図面を参照すると、
図1は、エンジンによって駆動される発電システム8の一部の一実施形態のブロック図を示している。以下で詳しく説明されるように、システム8は、1つまたは複数の燃焼室12(例えば、1個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、10個、12個、14個、16個、18個、または20個以上の燃焼室12)を有するエンジン10(例えば、往復動内燃エンジン)を含む。特定の実施形態では、エンジン10は、0.25g/kw-hr以下でオイルを消費し(すなわち、オイルを失い)、補給オイルを使用するように構成される。例えば、エンジン10は、0.25、0.20、0.15、0.10または0.5g/kw-hr以下でオイルを消費することができる。空気供給源14が、空気、酸素、酸素を豊富にした空気、酸素を減らした空気、またはこれらの任意の組み合わせなどの加圧された酸化剤16を、各々の燃焼室12に供給するように構成される。燃焼室12はまた、燃料供給源19から燃料18(例えば、液体および/または気体燃料)を受け取るように構成され、燃料空気混合物が、各々の燃焼室12において点火され、燃焼する。高温高圧の燃焼ガスが、各々の燃焼室12に隣接するピストン20をシリンダ26内で直線的に移動させ、ガスがもたらす圧力を回転運動に変換して、シャフト22を回転させる。さらに、シャフト22を、シャフト22の回転によって動作する負荷24に結合させることができる。例えば、負荷24は、発電機など、システム10の回転出力によって動力を発生させることができる任意の適切な装置であってよい。さらに、以下の説明においては、酸化剤16として空気に言及するが、開示される実施形態において、任意の適切な酸化剤を使用することが可能である。同様に、燃料18は、例えば天然ガス、随伴石油ガス、プロパン、バイオガス、下水ガス、埋立地ガス、炭鉱ガスなどの任意の適切な気体燃料であってよい。
【0024】
本明細書に開示のシステム8を、固定の用途(例えば、産業用発電エンジン)または移動の用途(例えば、自動車または航空機)における使用に適合させることができる。エンジン10は、2ストロークエンジン、3ストロークエンジン、4ストロークエンジン、5ストロークエンジン、または6ストロークエンジンであってもよい。エンジン10はまた、任意の数(例えば、1~24)の燃焼室12、ピストン20、および関連のシリンダを含んでもよい。例えば、特定の実施形態において、システム8は、シリンダ内を往復する4個、6個、8個、10個、16個、または24個以上のピストン20を有する大規模な産業用往復動エンジンを含むことができる。いくつかのそのような事例において、シリンダ26および/またはピストン20は、約13.5~34センチメートル(cm)の直径を有することができる。いくつかの実施形態では、シリンダ26および/またはピストン20は、約10~40cm、15~25cm、または約15cmの直径を有することができる。特定の実施形態では、ピストン20は、ピストン20の上部リング溝にNiレジスト(ニレジスト)リングインサートを有するスチールピストンまたはアルミニウムピストンであってもよい。システム8は、10kW~10MWの範囲の電力を生成することができる。いくつかの実施形態において、エンジン10は、おおむね1800回転/分(RPM)未満で動作することができる。いくつかの実施形態において、エンジン10は、おおむね2000RPM、1900RPM、1700RPM、1600RPM、1500RPM、1400RPM、1300RPM、1200RPM、1000RPM、900RPM、または750RPM未満で動作することができる。いくつかの実施形態において、エンジン10は、おおむね750~2000RPM、900~1800RPM、または1000~1600RPMで動作することができる。いくつかの実施形態において、エンジン10は、おおむね1800RPM、1500RPM、1200RPM、1000RPM、または900RPMで動作することができる。例示的なエンジン10は、例えば、Waukeshaエンジン(例えば、Waukesha VGF、VHP、APG、275GL)を含むことができる。例示的なエンジン10は、例えば、Jenbacherエンジン(例えば、Jenbacherタイプ2、タイプ3、タイプ4、タイプ6、タイプ9)を含むことができる。
【0025】
図2は、往復動エンジン10のシリンダ26(例えば、エンジンシリンダ)内に配置されたピストン20を有するピストンアセンブリ25の一実施形態の側面断面図である。シリンダ26は、円柱形のキャビティ30(例えば、ボア)を画定する内側環状壁28を有する。ピストン20を、軸方向の軸または方向34と、半径方向の軸または方向36と、周方向の軸または方向38とによって画定することができる。ピストン20は、上部部分40(例えば、トップランド)と、ピストン20の周りに周方向(例えば、周方向38)に延在する上部環状溝42(例えば、上部溝、最上部溝、または上部圧縮リング溝)とを含む。上部リング44(例えば、上部ピストンリングまたは上部圧縮リング)を上部溝42内に配置することができる。
【0026】
上部リング44は、上部溝42から径方向外側に突出してシリンダ26の内側環状壁28に接触するように構成される。上部リング44は、一般に、燃料18および空気16、または燃料空気混合物82が燃焼室12から逃げるのを阻止し、および/または膨張する高温燃焼ガスがピストン20の往復運動を引き起こすことを可能にする適切な圧力の維持を容易にする。さらに、上部リング44は、例えば、内側環状壁28をコーティングし、エンジン10内の熱および/または摩擦を制御するオイルの掻き取りを容易にするように構成され得る。
【0027】
図示のように、ピストン20は、ピストン20の周りに周方向に延びる底部環状溝46(例えば、底部リング溝、最底部溝、またはオイルリング溝)を含む。底部リング48(例えば、底部ピストンリングまたはオイルリング)は、底部溝46内に配置される。オイルリング48は、底部溝46から径方向外側に突出してシリンダ26の内壁28に接触してもよい。オイルリング48は、一般に、シリンダ26の内壁28を覆うオイルを掻き取り、シリンダ26内のオイルの流れを制御するように構成される。
【0028】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の追加の環状溝50(例えば、追加のリング溝または追加の圧縮リング溝)は、上部溝42と底部溝46との間でピストン20の周りに周方向に延在することができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の追加のリング52(例えば、追加のリングまたは追加の圧縮リング)を、1つまたは複数の追加のリング溝50の各々の中に配置することができる。追加のリング52は、ブローバイを阻止するおよび/またはシリンダ26の内側環状壁28からオイルを掻き取るように構成され得る。
【0029】
図示のように、ピストン20は、コネクティングロッド56およびピン58を通してクランクシャフト54に取り付けられている。クランクシャフト54は、ピストン20の往復直線運動を回転運動に変換する。上述のように、ピストン20が移動するとき、クランクシャフト54が回転し、負荷24(
図1に示されている)を動作させる。サンプまたはオイルパン59は、クランクシャフト54の下方または周囲に配置される。サンプ59は、オイルリザーバ(例えば、リザーブオイルのための)を有するウェットサンプである。図示のように、燃焼室12は、ピストン20のトップランド80に隣接して位置する。燃料噴射器60は、燃料18を燃焼室12に供給し、吸気弁62は、燃焼室12への空気16の送達を制御する。排気弁64が、エンジン10からの排気の排出を制御する。しかしながら、燃料18および空気16を燃焼室12に供給するため、および/または排気を排出するための任意の適切な要素および/または技術を利用することができることを理解されたい。動作時に、燃焼室12において燃料18が空気16と燃焼することで、ピストン20がシリンダ26のキャビティ30内で軸方向34に往復するように運動(例えば、行ったり来たり)する。
【0030】
本実施形態は、オイル寿命を延ばすべく、エンジン10内のオイル滞留時間を最小限に抑えて1000時間以下にするために、総オイル量を(例えば、同じエンジンが通常使用する推奨オイル量または通常オイル量と比べて)最小化または低減しながらエンジン10を動作させることを含む。特定の実施形態では、エンジン10内の総オイル量は、同じエンジン10内で使用される通常のまたは推奨される総オイル量の1/3、1/2、または1/4(または別の割合)に低減され得る。エンジン10で使用される総オイル量が少ないため、サンプ59に存在するリザーブオイルは少なくなる。破線66は、サンプ59内の典型的なリザーブオイル量を表し、線68は、サンプ59内の減らしたリザーブオイル量を表す。総オイル量を減らし、オイル滞留時間を最小化すると、補給オイル速度が比例的に増加し、オイル消費(すなわち、オイル損失)を増加させることなくスウィートニング比(すなわち、劣化したオイルに対するフレッシュなオイルの割合;ここで、スウィートニングは、フレッシュな劣化していないオイルを劣化したオイルと混合することによりオイル特性を改善するプロセスとして定義される)が増加し、オイル寿命を延ばすことが可能になる。
【0031】
図3は、オイル劣化/スウィートニングに対するサンプオイル量の効果のグラフ表示70である。y軸72はオイル劣化(例えば、酸化による)を表し、x軸74は代表的なエンジン10のオイル時間を表す。破線およびシンボル76は、代表的なエンジン10における通常のサンプオイル量の4分の1(例えば、40リットルのオイル)を使用するためのデータを表し、実線およびシンボル78は、代表的なエンジン10における通常のサンプオイル量(例えば、162リットルのオイル)を使用するためのデータを表す。減少したサンプオイル量と通常のサンプオイル量の両方をエンジン10で使用する際に、補給オイルも使用した。線およびシンボル76,78のどちらでも、シンボルは測定データを表し、線はモデル化されたデータを表す。グラフ表示70に示すように、使用するオイル量を減らすと、結果として、オイル劣化速度の低下割合が増大し、スウィートニングがそれぞれ増加する。
【0032】
オイル寿命を延ばして、無限のオイル寿命を達成することができる(すなわち、オイル劣化の漸近線は、オイルの許容限界未満である)。特に、使用される総オイル量を最小化する場合、定常状態のオイル濃度と補給オイル濃度の間での濃度変化は、オイルの許容限界未満である。劣化したオイルの濃度はCである。エンジン10全体の制御量を定義すると、オイル劣化の微分方程式は以下の通りである。
【数1】
ここで、体積流入量(volumetricinflow)は補給オイル(makeup oil)であり、体積流出量(volumetric outflow)はオイル消費量(oil consumption)であり、Q
inflow=Q
outflow=Qである。また、総オイル量は
【数2】
である。したがって、
【数3】
定常状態では、
【数4】
であり;定常状態での濃度について解くと、
【数5】
ここで、エンジン10内のオイルの滞留時間は、総オイル量をオイル補給体積流量で割った比
(
【数6】
)
として定義される。上述したように、エンジン10で使用する総オイル量を減らして無限のオイル寿命に達するために、エンジン10内のオイルの滞留時間は1000時間以下である。特定の実施形態では、エンジン10内のオイルの滞留時間は、900時間以下、800時間以下、700時間以下、600時間以下、または500時間以下である。
【0033】
図4は、経時的なオイル劣化に対するサンプオイル量の効果のグラフ表示80である。y軸82はオイル劣化(例えば、酸化による)を表し、x軸84は代表的なエンジン10のオイル時間を表す。破線88は、オイルの許容限界を表す。実線90は、通常のオイル消費で代表的なエンジン10において通常のサンプオイル量を使用する場合のデータを表す。細い実線91は、通常のオイル消費で代表的なエンジン10において通常のサンプオイル量の半分を使用する場合のデータを表す。一点鎖線92は、通常のオイル消費で代表的なエンジン10において通常のサンプオイル量の4分の1を使用する場合のデータを表す。二点鎖線94は、増加したオイル消費で代表的なエンジン10において通常のサンプオイル量の4分の1を使用する場合のデータを表す。グラフ表示80に示すように、代表的なエンジン10で通常のサンプオイル量を使用するとき、オイルの劣化レベル(線90に示す)は、許容限界88を超えるまで経時的に連続的に増加する。対照的に、代表的なエンジン10で使用するサンプオイル量を減らすと、オイルの劣化レベル(線92,94に示す)は、最初は高速で増大して許容限界88に近づくが、やがて平坦化し(すなわち、プラトー)、許容限界88を超えることはない(すなわち、オイル劣化の漸近線は、オイルの許容限界未満である)。従来の知見では、初期に劣化速度が低下することを理由に、総オイル量を増やすことによってオイル寿命を延ばす。従来の知見とは対照的に、総オイル量を減らして滞留時間を1000時間以下に縮めると、漸近的劣化レベルがオイルの許容限界未満に低下し、初期劣化速度は高いにもかかわらず無限のオイル寿命が可能になる。総オイル量の減少は、オイル交換時に交換されるオイルの量を減少させ、オイルコストをさらに削減する。オイルの劣化および悪化速度は、酸化以外の異なる測定(例えば、ニトロ化または全酸価)に基づいてもよいことに留意されたい。ほとんどのオイルメトリック(例えば、酸化、ニトロ化、TAN)について、劣化が許容限界未満であることが望ましいことに留意されたい。しかしながら、特定のメトリック(例えば、TBN)については、そのメトリックが許容限界を上回っていることが望ましい。特定の実施形態では、オイルメトリック(例えば、粘度)が許容範囲内にあることが望ましい。
【0034】
図5は、往復動エンジン10用のオイル補給システム95の概略図である。エンジン10は、エンジン10にオイルを供給する主オイル回路96に結合される。主オイル回路96は、サンプ59からオイルを得るためのサンプ59内のピックアップ98と、オイルを回路96に沿ってエンジン10に移動させるためのポンプ105(例えば、主オイルポンプ)とを含む。サンプ59内のリザーブオイルが少ないため、サンプ59内でのピックアップ98の上方のヘッド高さ102にリザーブオイルレベルを維持することが望ましい。ヘッド高さ102は、エンジン10の外側の補給タンク106からサンプ59に供給される補給オイルによって維持される、入口104の上方の距離またはオイルレベルである。特定の実施形態では、ヘッド高さ102を下げることなくサンプ59内のオイル量を減少させるために、サンプ59内に1つまたは複数の物体または変位物108を配置することにより、リザーブオイルレベルが少なくともヘッド高さ102にあるように、サンプ59内のリザーブオイルを変位させることができる。特定の実施形態では、(エンジン10を通常のサンプオイル量で動作させる場合)通常はサンプ内にあるだろうリザーブオイルを、補給オイルタンク106内に置いて、スウィートニング(すなわち、エンジン10内のオイルを補充する)に使用してもよい。このようにして、通常使用可能なエンジン10で同量のオイルが使用可能である。
【0035】
サンプ59内のリザーブオイルの量を測定するために、サンプ59内にまたはサンプ59に隣接して1つまたは複数のセンサ110を配置することができる。1つまたは複数のセンサ110は、レベラまたは光学センサを含んでもよい。特定の実施形態では、センサ110は、エンジン10およびオイル補給システム95と通信するように動作可能に結合されたエンジン制御モジュール(ECM)またはエンジン制御ユニット(ECU)112(例えば、コントローラ)と通信することができる。特定の実施形態では、1つまたは複数のセンサ110からのフィードバックに基づいて、ECU112は、サンプ59内のリザーブオイルレベルをヘッド高さ102に維持するために、補給オイルタンク106からサンプ59に補給オイルを供給するための制御信号を提供することができる。特定の実施形態では、サンプ59に補給オイルを提供することに問題が発生した場合、ECU112は、エンジン10の動作を変更することができる(例えば、速度を下げたり、負荷を減らしたり、或いは動力を下げてエンジン10を動作させるか、またはエンジン10を停止させる)。
【0036】
ECU112は、非一時的コンピュータ可読媒体またはメモリ116に動作可能に結合されたプロセッサ114を含む。コンピュータ可読媒体116は、ECU112から全部または一部が取り外し可能であってもよい。コンピュータ可読媒体116は、本明細書に記載の方法のうちの1つまたは複数を実行するためにプロセッサ114によって使用される命令を含む。より具体的には、メモリ116は、揮発性メモリ、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)、および/または不揮発性メモリ、例えば読み出し専用メモリ(ROM)、光ドライブ、ハードディスクドライブ、もしくはソリッドステートドライブを含んでもよい。加えて、プロセッサ114は、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、1つまたは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、1つまたは複数の汎用プロセッサ、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。さらに、プロセッサという用語は、当技術分野でプロセッサと呼ばれる集積回路に限定されず、コンピュータ、プロセッサ、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラマブルロジックコントローラ、特定用途向け集積回路、および他のプログラム可能回路を広く指している。ECU112は、センサ、アクチュエータ、および他の構成要素などから1つまたは複数の入力信号(input1...inputn)を受信することができ、センサ、アクチュエータ、および他の構成要素などに1つまたは複数の出力信号(output1...outputn)を出力することができる。
【0037】
エンジンが最小限のオイルレベルで動作できるように、オイルピックアップを変更することができる。例えば、
図6に示すように、ピックアップ98の入口104を、サンプ59の底部118に配置しもよい。あるいは、
図7に示すように、サンプ59は浅くてもよいが、サンプ59の底部118に深いトラフ120(例えば、底部118から離れるように延在する)を含むものであってもよい。トラフは、エンジンオイルサンプ59のその他の部分よりも深い部分を含む。ピックアップ98の入口104をサンプ59の底部に近接するトラフ120の内部に配置することにより、ピックアップ98の入口104の周りでリザーブオイルレベルを最大化することができる。
【0038】
オイル量が減少すると、サンプ59でのオイル滞留時間が減少するため(例えば、サンプオイル量を通常レベルの1/4に減らすと、サンプ59での滞留時間も通常のサンプオイル量での通常の滞留時間の1/4に減らせる)、オイルエアレーションが増大する。
図8~
図10にオイル再調整システム133が提示される。特に、オイル再調整システム133は、エンジン10を通るオイルの再循環の前にリザーブオイルを脱気(例えば、継続脱気)するための補助回路124(例えば、オイル再調整回路)を含むことができる。特定の実施形態では、補助回路124を選択的に使用することができる。リザーブオイルの脱気は、エンジン10で使用する総オイル量を少なくして、オイル寿命を延ばすことを可能にする。脱気が論じられているが、オイルを再調整する他の形態(例えば、添加剤の添加)が補助回路124に沿って組み込まれてもよく、または別個の回路の一部を形成してもよい。
【0039】
図8は、主オイル回路96および補助回路124を有する往復動エンジンシステム8の一実施形態の概略図である。上述したように、主オイル回路96は、エンジン10にオイルを供給するためにそれに沿って配置された主オイルポンプ100を含む。補助回路124は、ポンプ126(例えば、補助ポンプ)と、回路124に沿って配置された脱気器128とを含む。ポンプ100は、ポンプ126よりも高い圧力で動作する。補助回路124は、主オイル回路96に結合されているか、またはそれとインライン化されている。図示のように、脱気器128は、脱気サイクロンである。特定の実施形態では、別の装置(例えば、インペラを有するもの)を脱気器128の代わりに使用することができる。図示のように、リザーブオイルは、ポンプ126を通して回路124に沿って脱気器128に圧送される。ポンプ126は、大気圧でサンプ59からオイルを受け取り、大気圧よりわずかに高い圧力(例えば、大気圧よりも約5psi(34.5kPa)高い)で脱気器128にオイルを排出することができる。特定の実施形態では、脱気器128を使用して、リザーブオイルを約20%(プラスまたはマイナス1%)未満のオイルエアレーションまで脱気することができる。脱気器128は、ライン132を通してサンプ59に空気を戻すベント130を含む。脱気器128は、主オイル回路96に沿って大気圧でオイルを排出する。オイルポンプ100は、大気圧でオイルを受け取り、より高い圧力(例えば、大気圧よりも約60psi(413.7kPa)高い)でオイルをエンジン10に排出する。特定の実施形態では、矢印133で示すように、オイルのエアレーションを測定するために、回路96,124に沿った異なる点に沿って1つまたは複数のセンサを配置することができる。センサは、ECU112と通信することができる。特定の実施形態では、ECU112は、リザーブオイルの脱気を調整することができる。
【0040】
図9は、双方向リリーフ/安全ライン134を持つ主オイル回路96および補助回路124を有する往復動エンジンシステム8の一実施形態の概略図である。主オイル回路96および補助回路124は、1つの例外を除いて、
図8において上述した通りである。往復動エンジンシステム8は、サンプ59と回路96,124間の合流点との間に延在する双方向リリーフ/安全ライン134を含む。特定の実施形態では、条件により補助回路124を使わないことが確かな場合(例えば、ポンプ126および/または脱気器128に問題がある場合)、リザーブオイルを、双方向リリーフ/安全ライン134を通してポンプ100の上流の主オイル回路96に直接供給してもよい。特定の実施形態では、エンジン10またはポンプ100に問題が存在する場合、脱気されたオイルを、双方向リリーフ/安全ライン134を通してサンプ59に再循環させることができる。
【0041】
図10は、主オイル回路96および補助回路124を有し、補助回路124が主オイル回路96から分離されている往復動エンジンシステム8の一実施形態の概略図である。主オイル回路96および補助回路124は、1つの例外を除いて、
図8において上述した通りである。補助回路124は、主オイル回路96とは別体である。したがって、脱気されたリザーブオイルは、脱気器128から補助回路124に沿ってサンプ59に排出される。
【0042】
オイル許容限界は、エンジン製造業者およびエンジンタイプ(例えば、ガソリン、ディーゼル、天然ガス)によって変わる。許容限界は、典型的には、酸化、ニトロ化、全塩基価(TBN)、全酸価(TAN)、および粘度のメトリックに基づく。オイルに対する代表的な許容限界は、表1において以下の通りである。
【表1】
【0043】
オイルエアレーションは、オイルに含まれる全ガス量として定義される。エアレーションは、同伴ガス(すなわち、溶解ガス)と遊離ガス(すなわち、気泡)の両方で構成される。エアレーションは、オイルのBunsen係数を0.10とするHenry-Daltonの法則に基づいて、105paの圧力および273Kの温度で測定された全ガス量として定義される。
【0044】
開示された実施形態の技術的効果は、0.25g/kw-hr以下でオイルを消費し、補給オイルを使用する往復動エンジン(例えば、往復内燃エンジン)でオイル寿命を延ばすためのシステムおよび方法を提供することを含む。開示された実施形態では、オイル寿命を延ばすために、オイル滞留時間を最小限に抑えて1000時間以下にするべく、総オイル量を(例えば、同じエンジンが一般的に使用する、推奨されるまたは通常のオイル量またはオイル容積容量と比べて)大幅に減らす。総オイル量を減らし、オイル滞留時間を最小化すると、補給オイル速度の上昇割合が増すので、スウィートニング比が増大し、オイル寿命を延ばすことが可能になる。特定の実施形態では、リザーブオイルを、エンジンを通す再循環の前に継続的に調整(脱気)してもよい。総オイル量を最小限に抑えてオイル寿命を延ばすことにより、オイル使用量を減らし、サービス間隔を延ばし、且つオイル寿命をさらに延ばすことができる他の再調整手段の利用を可能にする。このようにして、エンジンのオペレータにコスト削減をもたらし、環境に利益をもたらすことができる。
【0045】
本明細書は、本主題を最良の態様を含めて開示すると共に、あらゆる装置またはシステムの製作および使用ならびにあらゆる関連の方法の実行を含む本主題の実施を当業者にとって可能にするために、いくつかの例を使用している。本主題の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義されており、当業者が想到する他の例を含むことができる。そのような他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言との実質的な差異を有さない等価な構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることを意図している。
【0046】
本明細書に提示され特許請求された技法は、参照され、本技術分野を明らかに改善する、実際的な性質の有形物および具体例に適用され、したがって、抽象的、無形的、または純粋に理論的なものではない。さらに、本明細書の終わりに添付された任意の請求項が「[機能]を[実行]するための手段」または「[機能]を[実行]するためのステップ」として指定された1つまたは複数の要素を含む場合、そのような要素は米国特許法112条(f)の下で解釈されるべきことを意図している。しかしながら、他のやり方で指定された要素を含む請求項に関して、そのような要素は、米国特許法第112条(f)の下で解釈されるようには意図されていない。