(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】バッテリー用接着剤、バッテリー用水性接着剤及びリチウムイオンバッテリー負極シート
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20240430BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240430BHJP
C08F 220/02 20060101ALI20240430BHJP
C09J 201/08 20060101ALI20240430BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20240430BHJP
C09J 125/04 20060101ALI20240430BHJP
C09J 133/26 20060101ALI20240430BHJP
C09J 133/20 20060101ALI20240430BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20240430BHJP
C09J 11/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
C08F220/02
C09J201/08
C09J133/00
C09J125/04
C09J133/26
C09J133/20
C09J133/04
C09J11/00
(21)【出願番号】P 2022544430
(86)(22)【出願日】2020-08-03
(86)【国際出願番号】 CN2020106529
(87)【国際公開番号】W WO2021147295
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】202010069004.0
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010542779.5
(32)【優先日】2020-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522290927
【氏名又は名称】眉山茵地楽科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】MEISHAN INDIGO TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.2, Industrial Avenue, Pengshan Economic DevelopmentZone, Meishan, Sichuan, 620861 China
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】パン ジョンライ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン シャオジェン
(72)【発明者】
【氏名】タオ ウェイ
【審査官】佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-189252(JP,A)
【文献】国際公開第2012/091001(WO,A1)
【文献】特開2019-160690(JP,A)
【文献】特開2015-106488(JP,A)
【文献】国際公開第2018/235722(WO,A1)
【文献】特開2017-069162(JP,A)
【文献】特開2014-049209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性ユニットと疎水性ユニットの両方を有するポリマーを含み、
前記ポリマー
において、中・低分子量のポリマーがポリマー全体の5wt%未満を占め、前記中・低分子量のポリマーの分子量が10万以下であり、低分子量のポリマーがポリマー全体の0.5wt%未満を占め、前記低分子量のポリマーの分子量が5万以下であり、さらにポリマーの親水性ユニットと疎水性ユニットの組成(重量パーセント)が30~70%:70~30%であり、
前記親水性ユニットがカルボキシル基またはスルホン酸基を含み、
前記ポリマーが少なくとも1つの親水性モノマーと少なくとも1つの親油性モノマーとを共重合することによって形成され、
前記ポリマーは水中で沈殿するが、この沈殿にアルカリ溶液を加えると前記ポリマーは塩になるため、この沈殿は水に溶解でき
、
前記親油性モノマーの構造式が、CH
2
=CR
1
R
2
であり、ここで、
R
1
が─Hまたは─CH
3
から選択され、
R
2
が─CN、─C
6
H
5
、─COOCH
3
、─COOCH
2
CH
3
、─COOCH
2
CH
2
CH
2
CH
3
、-COOC(CH
3
)
3
、─COOCH
2
CH(CH
2
CH
3
)CH
2
CH
2
CH
2
CH
3
、-COOC
12
H
25
、-COO(CH
2
)
17
CH
3
、
【化1】
、
【化2】
、
─COOCH
2
CH
2
OH、─COOCH(CH
3
)CH
2
OH、─COOCH
2
CHOHCH
3
、─OCOCH
3
または
【化3】
から選択され、
親水性モノマーの構造式が、CHR
3
=CR
4
R
5
であり、ここで、
R
3
が─H、─CH
3
または─COOM
1
から選択され、M
1
がH、Li、Na及びKから選択され、
R
4
が─H、─CH
3
または─COOM
2
から選択され、M
2
がH、Li、Na及びKから選択され、
R
5
が─COOM
3
、─CH
2
COOM
3
、─COO(CH
2
)
6
SO
3
M
3
、─CONH
2
、─CONHCH
3
、
【化4】
、
─CONHCH
2
CH
3
、─CON(CH
3
)
2
、─CON(CH
2
CH
3
)
2
、─CH
2
CH
2
CONHCH
2
OH、─CH
2
CH
2
CONHCH
2
CH
2
OH、─CONHC(CH
3
)
2
CH
2
SO
3
Hまたは
【化5】
から選択され、M
3
がH、Li、Na及びKから選択される
バッテリー用接着剤。
【請求項2】
親水性ユニットと疎水性ユニットの組成(重量パーセント)が40~60%:60~40%であることを特徴とする請求項1に記載のバッテリー用接着剤。
【請求項3】
中・低分子量ポリマーがポリマー全体の2wt%未満を占めることを特徴とする請求項1に記載のバッテリー用接着剤。
【請求項4】
中・低分子量ポリマーがポリマー全体の1wt%未満を占めることを特徴とする請求項3に記載のバッテリー用接着剤。
【請求項5】
前記疎水性ユニットが親油性モノマーによって導入され、前記親水性ユニットが親水性モノマーによって導入されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のバッテリー用接着剤。
【請求項6】
R
2が─CN、─C
6H
5、─COOCH
3、─COOCH
2CH
3、─COOCH
2CH
2CH
2CH
3、-COOC(CH
3)
3、─COOCH
2CH(CH
2CH
3)CH
2CH
2CH
2CH
3、-COOC
12H
25、-COO(CH
2)
17CH
3、
【化6】
、
【化7】
、
─COOCH
2CH
2OH、─OCOCH
3または
【化8】
から選択されることを特徴とする請求項
1に記載のバッテリー用接着剤。
【請求項7】
前記親油性モノマーが、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、アクリル酸2-エチルヘキシル、シクロヘキシルアクリレート、アクリル酸イソボルニル、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ビニルアセテート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルエステル、イソボルニルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート及びグリシジルメタクリレートの少なくとも1つであり、
前記親水性モノマーが、アクリル酸、アクリ
ル酸塩、メタクリル酸、メタクリ
ル酸塩、アリルオキシヒドロキシプロピルスルホン酸、アリルオキシヒドロキシプロピルスルホ
ン酸塩、ビニルスルホン酸、ビニルスルホ
ン酸塩、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、プロ
ペンスルホン酸、プロ
ペンスルホ
ン酸塩、メ
チルプロペンスルホン酸、メ
チルプロペンスルホ
ン酸塩、N-ビニルピロリドン、イタコン酸、イタコ
ン酸塩、マレイン酸、マレイン酸塩
、アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、2-メチルメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、及びN-ヒドロキシプロピルアクリルアミドの少なくとも1つであることを特徴とする請求項
1に記載のバッテリー用接着剤。
【請求項8】
前記親油性モノマーが、アクリロニトリル及びブチルアクリレートであり、親水性モノマーが、アクリル酸、N-ビニルピロリドン及びアクリルアミドであり、
または、前記親油性モノマーが、メタクリロニトリル、アクリル酸メチル及びアクリル酸ヒドロキシプロピルであり、親水性モノマーが、メタクリル酸及びN-メ
チルアクリルアミドであり、
または、前記親油性モノマーが、アクリル酸2-エチルヘキシル、シクロヘキシルメタクリレート及びエチルメタクリレートであり、親水性モノマーが、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、N、N-ジエチルアクリルアミド及びイタコ
ン酸塩であり、
または、前記親油性モノマーが、エチルアクリレート、ビニルアセテート及びヒドロキシエチルメタクリレートであり、親水性モノマーが、アクリ
ル酸塩、2-
メチルメタクリルアミド及びビニルスルホ
ン酸塩であり、
または、前記親油性モノマーが、スチレン、メタクリル酸2-エチルヘキシル及びヒドロキシプロピルメタクリレートであり、親水性モノマーが、マレイン酸、N-ビニルピロリドン及びN-ヒドロキシプロピルアクリルアミドであり、
または、前記親油性モノマーが、アクリル酸2-エチルヘキシル、エチルアクリレート、及びイソボルニルメタクリレートであり、親水性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド及びプロ
ペンスルホン酸であることを特徴とする請求項
1に記載のバッテリー用接着剤。
【請求項9】
親水性モノマーと親油性モノマーの混合比(重量パーセント)が40~60%:60~40%であることを特徴とする請求項
1に記載のバッテリー用接着剤。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれかに記載のバッテリー用接着剤を含有するバッテリー用水性接着剤であって、前記ポリマーが水に溶解されているとともに、pHが6~12に調整されていることを特徴とする、バッテリー用水性接着剤。
【請求項11】
pHが6.5~9であることを特徴とする請求項
10に記載のバッテリー用水性接着剤。
【請求項12】
前記バッテリー用水性接着剤が添加剤も含み、前記添加剤が、分散剤、レベリング湿潤剤、脱泡剤及び軟化剤の少なくとも1つであることを特徴とする請求項
10に記載のバッテリー用水性接着剤。
【請求項13】
負極活物質及び請求項
10~
12のいずれかに記載のバッテリー用水性接着剤を含むことを特徴とするリチウムイオンバッテリー負極シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオンバッテリー技術分野に関し、特にバッテリー用接着剤、リチウムイオンバッテリー負極シート及びリチウムイオンバッテリーに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンバッテリーは、最も理想的なモバイル電源として、エネルギー密度が高く、サイズが小さく、寿命が長く、汚染がないという比類のない利点があり、電気自動車、航空宇宙、通信及びさまざまな携帯用電気機器に広く使用されている。
【0003】
リチウムイオンバッテリーは、主に電極シート(正極シート、負極シートを含む)、セパレーター、電解液等で構成されている。電極シートはすべて電極活物質粉末、接着剤、導電剤及び集電体で構成されている。リチウムイオンバッテリーの電極シートを作製する場合、通常、電極活物質、導電剤、接着剤溶液を混合し、均一に粉砕してスラリーにした後、集電体としての銅箔やアルミ箔に塗布し、さらに乾燥・圧延などの工程を経て得られる。接着剤が電極シートの作製に重要な役割を果たしていることがわかる。
【0004】
一方、水性接着剤は、安全で汚染がなく、溶剤をリサイクルする必要がなく、操作が簡単であるという利点があり、リチウムイオンバッテリーの電極接着剤の最優先の選択肢となった。現在、一般的に使用されている水性接着剤は、SBR(スチレンブタジエンゴムラテックス)、LA132、LA133などである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SBR水性接着剤は、負極活物質粉末の分散媒体として水を使用し、環境に優しく、汚染がなく、従業員に危険がない。しかしながら、SBRは材料成分の化学的性質の制限により、リチウムイオンバッテリーの負極活物質粉末の接着剤として使用する場合、バッテリーの全体的なパフォーマンスは、バッテリー品質に対するますます高まる要求に応えることができない。
【0006】
中国特許出願ZL01108511.8及びZL01108524.Xは、本出願の発明者による初期の研究であり、リチウムイオンバッテリーの負極活物質粉末としての接着剤を開示し、これらの接着剤で製造されたリチウムイオンバッテリーは優れた性能を有する。しかし、この接着剤の接着力が限られているため、使用量が少ない場合、接着力がやや弱くなる。一般的に、この接着剤の使用量は3~4%(固形分による割合)であり、使用量を減らすと、電極シートは指定された歩留まりを達成できない。
【0007】
本発明は、上記のような技術的問題に鑑みてなされたものであり、接着力の強いバッテリー用接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係るバッテリー用接着剤は、親水性ユニットと疎水性ユニットの両方を有する水溶性ポリマーを含み、このポリマーでは、中・低分子量のポリマーがポリマー全体の5wt%未満を占め、前記中・低分子量のポリマーの分子量が10万以下である。
【0009】
一実施形態として、ポリマー中の親水性ユニットと疎水性ユニットの重量パーセントは、30~70%:70~30%である。具体的な実施形態として、親水性ユニットと疎水性ユニットの重量パーセントは、40~60%:60~40%である。
【0010】
一実施形態として、中・低分子量のポリマーは、ポリマー全体の2%未満を占める。具体的な実施形態として、中・低分子量のポリマーは、ポリマー全体の1%未満を占める。
【0011】
好ましくは、低分子量ポリマーがポリマー全体の0.5wt%未満を占め、前記低分子量ポリマーの分子量が5万以下である。
【0012】
一実施形態として、親水性ユニットがカルボキシル基またはスルホン酸基を含む。
【0013】
一実施形態として、前記疎水性ユニットが親油性モノマーによって導入され、前記親水性ユニットが親水性モノマーによって導入される。
【0014】
一実施形態として、親油性モノマーの構造式はCH
2=CR
1R
2であり、そのうち、R
1は─Hまたは─CH
3から選択され、R
2は─CN、─C
2H
1、─COOCH
3、─COOCH
2CH
3、─COOCH
2CH
2CH
2CH
3、-COOC(CH
3)
3、─COOCH
2CH(CH
2CH
3)CH
2CH
2CH
2CH
3、-COOC
12H
25、-COO(CH
2)
17CH
3、
【化1】
、
【化2】
、
─COOCH
2CH
2OH、─COOCH
3CHCH
2OH、─COOCH
2CHOHCH
3、─OCOCH
3または
【化3】
から選択される。
【0015】
親水性モノマーの構造式はCHR
3=CR
4R
5であり、そのうち、R
3は─H、─CH
3または─COOM
1から選択され、M
1はH、Li、Na、K、Ca、ZnまたはMgを含み、R
4は─H、─CH
3または─COOM
2から選択され、M
2はH、Li、Na、K、Ca、ZnまたはMgを含み、R
5は─COOM
3、─CH
2COOM
3、─COO(CH
2)
6SO
3M
3、─CONH
2、─CONHCH
3、
【化4】
、
─CONHCH
2CH
3、─CON(CH
3)
2、─CON(CH
2CH
3)
2、─CH2CHCONHCH
2OH、─CH
2CHCONHCH
2CH
2OH、─CONHC(CH
3)
2CH
2SO
3H、-CH
2SO
3Mまたは
【化5】
から選択され、M
3はH、Li、Na、K、Ca、ZnまたはMgを含む。
【0016】
一実施形態として、R
2は─CN、─C
6H
5、─COOCH
3、─COOCH
2CH
3、─COOCH
2CH
2CH
2CH
3、-COOC(CH
3)
3、─COOCH
2CH(CH
2CH
3)CH
2CH
2CH
2CH
3、-COOC
12H
25、-COO(CH
2)
17CH
3、
【化6】
、
【化7】
、
─COOCH
2CH
2OH、─OCOCH
3または
【化8】
から選択される。
【0017】
具体的な実施形態として、前記親油性モノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、アクリル酸2-エチルヘキシル、シクロヘキシルアクリレート、アクリル酸イソボルニル、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ビニルアセテート、メタクリロニトリル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルエステル、イソボルニルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート及びグリシジルメタクリレートの少なくとも1つであり、前記親水性モノマーは、アクリル酸、アクリル酸塩、メタクリル酸、メタクリル酸塩、アリルオキシヒドロキシプロピルスルホン酸、アリルオキシヒドロキシプロピルスルホン酸塩、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸塩、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、プロペンスルホン酸、プロペンスルホン酸塩、メチルプロペンスルホン酸、メチルプロペンスルホン酸塩、N-ビニルピロリドン、イタコン酸、イタコン酸塩、マレイン酸、マレイン酸塩の少なくとも1つである。
【0018】
さらに、前記親水性モノマーは、アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N、N-ジメチルアクリルアミド、N、N-ジエチルアクリルアミド、2-メチルメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド及びN-ヒドロキシプロピルアクリルアミドの少なくとも1つである。
【0019】
具体的な実施形態として、前記親油性モノマーは、アクリロニトリル及びブチルアクリレートであり、親水性モノマーが、アクリル酸、N-ビニルピロリドン及びアクリルアミドである。具体的な実施形態として、前記親油性モノマーは、メタクリロニトリル、アクリル酸メチル及びアクリル酸ヒドロキシプロピルであり、親水性モノマーが、メタクリル酸及びN-メチルアクリルアミドである。具体的な実施形態として、前記親油性モノマーは、アクリル酸2-エチルヘキシル、シクロヘキシルメタクリレート及びエチルメタクリレートであり、親水性モノマーが、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、N、N-ジエチルアクリルアミド及びイタコン酸塩である。具体的な実施形態として、前記親油性モノマーは、エチルアクリレート、ビニルアセテート及びヒドロキシエチルメタクリレートであり、親水性モノマーが、アクリル酸塩、2-メチルメタクリルアミド及びビニルスルホン酸塩である。具体的な実施形態として、前記親油性モノマーは、スチレン、メタクリル酸2-エチルヘキシル及びヒドロキシプロピルメタクリレートであり、親水性モノマーが、マレイン酸、N-ビニルピロリドン及びN-ヒドロキシプロピルアクリルアミドである。具体的な実施形態として、前記親油性モノマーは、アクリル酸2-エチルヘキシル、エチルアクリレート、及びイソボルニルメタクリレートであり、親水性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド及びプロペンスルホン酸である。
【0020】
さらに、親水性モノマーと親油性モノマーの重量パーセントは30~70%:70~30%である。いくつかの実施形態では、親水性モノマーと親油性モノマーの重量パーセントは40~60%:60~40%である。
【0021】
一実施形態として、このバッテリー用接着剤は溶剤も含み、前記溶剤が有機溶剤または水である。
【0022】
具体的な実施形態として、前記溶剤が水である。
【0023】
さらに、溶媒が水である接着剤のpHは6~12であり、いくつかの具体的な実施形態では、溶媒が水である接着剤のpHは6.5~9である。
【0024】
一実施形態として、このバッテリー用接着剤は添加剤も含み、前記添加剤は、分散剤、レベリング湿潤剤、脱泡剤及び軟化剤の少なくとも1つである。
【0025】
本発明は、溶媒が水であるバッテリー接着剤の調製方法も提供する。
【0026】
バッテリー用接着剤の調製方法は、親水性モノマー、親油性モノマー及び水を保護雰囲気下で反応温度まで加熱し、そして開始剤を添加し反応を開始し、固液混合物を得て、沈殿物を取り出し中和し、水性接着剤を得る手順を含む。
【0027】
本発明は、前記バッテリー用接着剤のリチウムイオンバッテリー負極シートの作製における適用も提供する。
【0028】
本発明は、前記バッテリー用接着剤のリチウムイオンバッテリーポールピースの作製における適用も提供する。
【0029】
本発明に係るバッテリー用接着剤は、接着力が強く、リチウムイオンバッテリーポールピースの作製に使用することにより、バッテリーの性能を向上させることができる。
【0030】
本発明は、リチウムイオンバッテリー負極シートも提供する。
【0031】
本発明に係るリチウムイオンバッテリー負極シートは、負極活物質及び接着剤を含み、そのうち、前記接着剤は本発明に係るバッテリー用接着剤である。
【0032】
本発明は、リチウムイオンバッテリーも提供する。
【0033】
本発明に係るリチウムイオンバッテリーは、正極、本発明に係るリチウムイオンバッテリー負極シート及び電解液を含む。
【0034】
本発明は、複数の本発明に係るリチウムイオンバッテリーを備えるバッテリーパックも提供する。
【発明の効果】
【0035】
従来技術と比較して、本発明は以下の有益な効果を有する。本発明に係る接着剤は、強力な接着力、簡単な調製方法及び低コストなどの利点を有し、従来の負極シート用接着剤の使用量2.5~5%に比べて、本発明に係る接着剤の使用量が1.5~2%の場合、より高い接着力を提供できるだけでなく、活物質(負極材)の割合を増加させ、バッテリーのエネルギー密度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の実施例1及び比較例1の接着剤の分子量試験結果である。
【
図2】本発明の実施例1及び比較例1・2の接着剤で製造されたバッテリーのサイクル性能である。
【
図3】本発明の実施例1及び比較例1・2の接着剤で製造されたバッテリーの低温放電の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
従来のバッテリー用水性接着剤は、親水性ユニットと疎水性ユニットを含む両親媒性コポリマーであるが、ほとんど直接重合法によって調製され、重合反応を通じて接着剤製品を得て、この製品は、水性エマルジョンまたは溶液である。しかしながら、重合後に残留モノマーが存在する場合、その後のバッテリー製造において、環境汚染や従業員の労働衛生上の問題を引き起こすことは当技術分野でよく知られている。したがって、従来の重合反応は、モノマーを最大限に完全に重合することである。重合反応の進行に伴い、重合後のモノマー濃度が低下し、ポリマー分子鎖の長さはモノマー濃度に比例するため、重合反応の後期に、必然的に中・低分子量セグメントが発生する。反応が完了した後、これらの中・低分子量セグメントは工業生産で分離できず、ポリマーに残り、接着剤の性能に影響を与え、接着性能及びこの接着剤で製造されたバッテリーの性能に影響を与える。
【0038】
本発明の発明者は、pHに応じて、親水性モノマーが水中に酸または塩の形で存在し、酸の形で存在する場合、その親水性が低いことを見出した。重合反応のモノマーが低親水性の組成物として水相で共重合される場合、親水性が不十分であるため、反応生成物が沈殿し、水や残留モノマー、沈殿物の混合物を形成する。この時点で重合反応を終了すると、中・低分子量ポリマーの形成が大幅に減少し、さらに物理的手段によって沈殿物を分離し、未反応のモノマーと少量の中・低分子量ポリマーを反応系(水相)に残す。この沈殿物は高分子量ポリマーであり、沈殿物における中・低分子量ポリマーの含有量が低い。このポリマーはNMPなどの有機溶剤に直接溶解し接着剤として使用できるか、アルカリによる中和や加水分解によりコポリマーの親水性を高めた後、コポリマーを水相に均一に分散させ水性接着剤を得る。
【0039】
得られた接着剤の凝集力や接着力などの力学的性質は、中・低分子量ポリマーの含有量の減少により著しく改善されたため、この沈殿物によって調製された接着剤は、より良好な接着性能を有し、接着剤の使用量をさらに減らし、バッテリーの性能を向上させることができる。
【0040】
上記の結果によると、本発明に係るバッテリー用接着剤は、親水性ユニットと疎水性ユニットの両方を有するポリマーを含み、このポリマーでは、中・低分子量のポリマーがポリマー全体の5wt%未満を占め、前記中・低分子量のポリマーの分子量が10万以下である。中・低分子量ポリマーの含有量が少ない場合、接着剤の接着性能及びこの接着剤で製造されたバッテリーの性能が比較的良好である。
【0041】
本発明に係るバッテリー用接着剤は、親水性ユニットと疎水性ユニットの両方を有するポリマーを含み、このポリマーでは、中・低分子量のポリマーがポリマー全体の5wt%未満を占め、前記中・低分子量のポリマーの分子量が10万以下である。
【0042】
いくつかの実施形態として、中・低分子量ポリマーを、ポリマー全体の0.5wt%、0.8wt%、1wt%、1.5wt%、2wt%、2.5wt%、3wt%、3.5wt%、4wt%、4.5wt%、5wt%等にする。
【0043】
一実施形態として、ポリマー中の親水性ユニットと疎水性ユニットの重量パーセントは、30~70%:70~30%である。
【0044】
具体的な実施形態として、ポリマー中の親水性ユニットと疎水性ユニットの重量パーセントは、30%:70%、35%:65%、40%:60%、42%:58%、45%:55%、47%:53%、50%:50%、51%:49%、55%:45%、58%:42%、60%:40%等である。
【0045】
一実施形態として、親水性ユニットと疎水性ユニットの重量パーセントは、40~60%:60~40%である。
【0046】
一実施形態として、中・低分子量のポリマーは、ポリマー全体の2%未満を占める。具体的な実施形態として、中・低分子量のポリマーは、ポリマー全体の1%未満を占める。
【0047】
好ましくは、中・低分子量のポリマーを制御する一方、分子量が5万未満の低分子量ポリマーの含有量を制御することも必要である。一実施形態として、低分子量ポリマーがポリマー全体の0.5wt%未満を占め、前記低分子量ポリマーの分子量が5万以下である。
【0048】
いくつかの具体的な実施形態として、低分子量のポリマーを、ポリマー全体の0.1wt%、0.2wt%、0.3wt%、0.4wt%、0.5wt%等にする。
【0049】
本発明における分子量は、すべて重量平均分子量(Mw)である。本発明における分子量はゲルクロマトグラフィーによって測定され、試験装置モデル:Waters Alliance E2695。試験条件:クロマトグラフィーカラムWaters StyRagel HR 3、4、5(水)3カラム直列、移動相Buffer pH = 7.2、3mol / L NaCl溶液、標準品のポリアクリレートナトリウムPAA、CAS No. 9003-04-7、分子量2800、11500、193800、392600、585400、750000、804700、1310000、2250000(分子量の異なる上記の9つの標準サンプルで標準曲線を作成する)、American Polymer Standards Corporationから購入、温度0.6ml/分。異なるカラムや標準品で測定される分子量も異なり、誤差は20%を超えない。
【0050】
本発明における中・低分子量ポリマーは、分子量が10万以下のポリマーである。
【0051】
本発明における低分子量ポリマーは、分子量が5万以下のポリマーである。
【0052】
このポリマーは、疎水性ユニット及び親水性ユニットを有するため、両親媒性コポリマーであり、前記親水性ユニットがカルボキシル基またはスルホン酸基を含む。好ましくは、ポリマーの疎水性ユニットが親油性モノマーによって導入され、親水性ユニットが親水性モノマーによって導入され、前記親水性ユニットがカルボキシル基またはスルホン酸基を含む。本発明の両親媒性ポリマーは、親油性モノマーと親水性モノマーを共重合することによって得ることができる。
【0053】
いくつかの具体的な実施形態として、親油性モノマーの構造式が、CH
2=CR
1R
2であり、ここで、
R
1が─Hまたは─CH
3から選択され、
R
2が─CN、─C
6H
5、─COOCH
3、─COOCH
2CH
3、─COOCH
2CH
2CH
2CH
3、-COOC(CH
3)
3、─COOCH
2CH(CH
2CH
3)CH
2CH
2CH
2CH
3、-COOC
12H
25、-COO(CH
2)
17CH
3、
【化1】
、
【化2】
、
─COOCH
2CH
2OH、─COOCH
3CHCH
2OH、─COOCH
2CHOHCH
3、─OCOCH
3または
【化3】
から選択され、
親水性モノマーの構造式が、CHR
3=CR
4R
5であり、ここで、
R
3が─H、─CH
3または─COOM
1から選択され、M
1がH、Li、Na、K、Ca、ZnまたはMgを含み、
R
4が─H、─CH
3または─COOM
2から選択され、M
2がH、Li、Na、K、Ca、ZnまたはMgを含み、
R
5が─COOM
3、─CH
2COOM
3、─COO(CH
2)
6SO
3M
3、─CONH
2、─CONHCH
3、
【化4】
、
─CONHCH
2CH
3、─CON(CH
3)
2、─CON(CH
2CH
3)
2、─CH2CHCONHCH
2OH、─CH
2CHCONHCH
2CH
2OH、─CONHC(CH
3)
2CH
2SO
3H、-CH
2SO
3Mまたは
【化5】
から選択され、M
3がH、Li、Na、K、Ca、ZnまたはMgを含
む。
【0054】
いくつかの実施形態では、R
2は─CN、─C
6H
5、─COOCH
3、─COOCH
2CH
3、─COOCH
2CH
2CH
2CH
3、-COOC(CH
3)
3、─COOCH
2CH(CH
2CH
3)CH
2CH
2CH
2CH
3、-COOC
12H
25、-COO(CH
2)
17CH
3、
【化14】
、
【化15】
、
─COOCH
2CH
2OH、─OCOCH
3または
【化16】
から選択される。
【0055】
具体的な実施形態として、前記親油性モノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、アクリル酸2-エチルヘキシル、シクロヘキシルアクリレート、アクリル酸イソボルニル、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ビニルアセテート、メタクリロニトリル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルエステル、イソボルニルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート及びグリシジルメタクリレートの少なくとも1つである。
【0056】
前記親水性モノマーが、アクリル酸、アクリル酸塩、メタクリル酸、メタクリル酸塩、アリルオキシヒドロキシプロピルスルホン酸、アリルオキシヒドロキシプロピルスルホン酸塩、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸塩、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、プロペンスルホン酸、プロペンスルホン酸塩、メチルプロペンスルホン酸、メチルプロペンスルホン酸塩、N-ビニルピロリドン、イタコン酸、イタコン酸塩、マレイン酸、マレイン酸塩の少なくとも1つである。
【0057】
親水性ユニットがカルボキシル基またはスルホン酸基を含むため、少なくとも1つの親水性モノマーがカルボキシル基またはスルホン酸基を含むことを確保する必要がある。カルボキシル基またはスルホン酸基を含むモノマーは、ポリマーが水中で沈殿し、アルカリ性溶液を添加すると塩の形になるように親水性を調整することができ、これにより、親水性が向上し、容易に水に溶解できる。
【0058】
本発明の具体的な実施形態では、前記親水性モノマーは、アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N、N-ジメチルアクリルアミド、N、N-ジエチルアクリルアミド、2-メチルメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド及びN-ヒドロキシプロピルアクリルアミドの少なくとも1つである。これらのアミド親水性モノマーの導入は、他の機能を提供することができる。
【0059】
本発明に係る接着剤におけるポリマーは、少なくとも1つの親水性モノマーと少なくとも1つの親油性モノマーを共重合することによって形成される。一実施形態として、このポリマーは1つの親油性モノマーと1つの親水性モノマーを共重合することによって形成される。本発明の具体的な実施形態として、親油性モノマーはアクリロニトリルであり、親水性モノマーはアクリル酸である。具体的な実施形態として、親油性モノマーはメタクリロニトリルであり、親水性モノマーはメタクリル酸である。具体的な実施形態として、親油性モノマーはヒドロキシエチルアクリレートであり、親水性モノマーはビニルスルホン酸塩である。具体的な実施形態として、親油性モノマーはメタクリル酸シクロヘキシルエステルであり、親水性モノマーはメタクリル酸塩である。具体的な実施形態として、親油性モノマーはビニルアセテートであり、親水性モノマーはメチルプロペンスルホン酸である。具体的な実施形態として、親油性モノマーはグリシジルメタクリレートであり、親水性モノマーはイタコン酸である。具体的な実施形態として、親油性モノマーはアクリル酸2-エチルヘキシルであり、親水性モノマーはマレイン酸である。具体的な実施形態として、親油性モノマーはヒドロキシエチルメタクリレートであり、親水性モノマーはビニルスルホン酸である。具体的な実施形態として、親油性モノマーはメタクリロニトリルであり、親水性モノマーは2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸である。具体的な実施形態として、親油性モノマーはスチレンであり、親水性モノマーはプロペンスルホン酸である。具体的な実施形態として、親油性モノマーはメチルアクリレートであり、親水性モノマーはアリルオキシヒドロキシプロピルスルホン酸である。具体的な実施形態として、親油性モノマーはtert-ブチルアクリレートであり、親水性モノマーはメチルプロペンスルホン酸塩である。
【0060】
別の実施形態として、本発明に係る接着剤におけるポリマーは1つの親油性モノマーと複数の親水性モノマーを共重合することによって形成される。具体的な実施形態として、親油性モノマーはアクリロニトリルであり、親水性モノマーはアクリル酸とメタクリル酸である。具体的な実施形態として、親油性モノマーはアクリロニトリルであり、親水性モノマーはアクリル酸とアクリルアミドである。具体的な実施形態として、親油性モノマーはメタクリロニトリルであり、親水性モノマーはアクリル酸塩、メタクリル酸及びN-メチルアクリルアミドである。具体的な実施形態として、親油性モノマーはスチレンであり、親水性モノマーはアクリル酸、アクリル酸塩、メタクリル酸、メタクリル酸塩及びアクリルアミドである。具体的な実施形態として、親油性モノマーはメチルアクリレートであり、親水性モノマーはビニルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びイタコン酸である。具体的な実施形態として、親油性モノマーはn-ブチルメタクリレートであり、親水性モノマーはアクリル酸、アクリル酸塩及びアクリルアミドである。具体的な実施形態として、親油性モノマーはtert-ブチルアクリレートであり、親水性モノマーはN、N-ジメチルアクリルアミド、2-メチルメタクリルアミド及びマレイン酸である。具体的な実施形態として、親油性モノマーはアクリロニトリルであり、親水性モノマーはアクリル酸塩、メタクリル酸、メタクリル酸塩、アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド及びN-エチルアクリルアミドである。
【0061】
別の実施形態として、本発明に係る接着剤におけるポリマーは複数の親油性モノマーと1つの親水性モノマーを共重合することによって形成される。具体的な実施形態として、親油性モノマーはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン及びメチルアクリレートであり、親水性モノマーはアクリル酸である。具体的な実施形態として、親油性モノマーはスチレン、メチルアクリレート、エチルアクリレート及びtert-ブチルアクリレートであり、親水性モノマーはメタクリル酸である。具体的な実施形態として、親油性モノマーはビニルアセテート、メタクリロニトリル、メチルメタクリレート及びエチルメタクリレートであり、親水性モノマーはアリルオキシヒドロキシプロピルスルホン酸である。具体的な実施形態として、親油性モノマーはメタクリル酸シクロヘキシルエステル、イソボルニルメタクリレート及びグリシジルメタクリレートであり、親水性モノマーはマレイン酸である。具体的な実施形態として、親油性モノマーはスチレン、メチルアクリレート及びアクリル酸ヒドロキシプロピルであり、親水性モノマーはイタコン酸である。具体的な実施形態として、親水性モノマーはアリルオキシヒドロキシプロピルスルホン酸である。具体的な実施形態として、親油性モノマーはアクリル酸ヒドロキシプロピル、ビニルアセテート、メタクリロニトリル及びメチルメタクリレートであり、親水性モノマーはビニルスルホン酸である。具体的な実施形態として、親油性モノマーはスチレン、メタクリロニトリル、メチルメタクリレート及びイソボルニルメタクリレートであり、親水性モノマーはプロペンスルホン酸である。
【0062】
別の実施形態として、本発明に係る接着剤におけるポリマーは複数の親油性モノマーと複数の親水性モノマーを共重合することによって形成される。具体的な実施形態として、前記親油性モノマーは、アクリロニトリル及びブチルアクリレートであり、親水性モノマーが、アクリル酸、N-ビニルピロリドン及びアクリルアミドである。具体的な実施形態として、前記親油性モノマーは、メタクリロニトリル、アクリル酸メチル及びアクリル酸ヒドロキシプロピルであり、親水性モノマーが、メタクリル酸及びN-メチルアクリルアミドである。具体的な実施形態として、前記親油性モノマーは、アクリル酸2-エチルヘキシル、シクロヘキシルメタクリレート及びエチルメタクリレートであり、親水性モノマーが、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、N、N-ジエチルアクリルアミド及びイタコン酸塩である。具体的な実施形態として、前記親油性モノマーは、エチルアクリレート、ビニルアセテート及びヒドロキシエチルメタクリレートであり、親水性モノマーが、アクリル酸塩、2-メチルメタクリルアミド及びビニルスルホン酸塩である。具体的な実施形態として、前記親油性モノマーは、スチレン、メタクリル酸2-エチルヘキシル及びヒドロキシプロピルメタクリレートであり、親水性モノマーが、マレイン酸、N-ビニルピロリドン及びN-ヒドロキシプロピルアクリルアミドである。具体的な実施形態として、前記親油性モノマーは、アクリル酸2-エチルヘキシル、エチルアクリレート、及びイソボルニルメタクリレートであり、親水性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド及びプロペンスルホン酸である。
【0063】
一実施形態として、親水性モノマーと親油性モノマーの重量パーセントは30~70%:70~30%である。具体的な実施形態として、親水性モノマーと親油性モノマーの重量パーセントは40~60%:60~40%である。
【0064】
具体的な実施形態として、親水性モノマーと親油性モノマーの重量パーセントは40:60%である。別の具体的な実施形態として、親水性モノマーと親油性モノマーの重量パーセントは45:55%である。別の具体的な実施形態として、親水性モノマーと親油性モノマーの重量パーセントは50:50%である。別の具体的な実施形態として、親水性モノマーと親油性モノマーの重量パーセントは55:45%である。別の具体的な実施形態として、親水性モノマーと親油性モノマーの重量パーセントは60:40%などである。
【0065】
本発明に係るバッテリー用接着剤は、溶剤を添加しのりにした後に使用する固体製品、または直接使用する液体製品であり得る。
【0066】
一実施形態として、前記バッテリー用接着剤は溶剤も含み、前記溶剤が有機溶剤または水である。
【0067】
当技術分野で一般的に使用されるNMPなどの有機溶媒は、本発明に適している。
【0068】
好ましくは、前記溶媒は水である。水を溶媒とした接着剤は、安全で汚染がなく、溶剤をリサイクルする必要がなく、操作が簡単であるという利点がある。
【0069】
一実施形態として、前記接着剤のpHは6~12である。pHが6~12の場合、ポリマーは主にイオン性ポリマーの形で存在しているため、親水性が向上し、容易に水に溶解できる。また、従来の方法でpHを調整することができる。具体的な実施形態として、pHを調整するためにアルカリ性溶液を添加し、前記アルカリ性溶液は、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液などのアルカリ金属水酸化物、または炭酸ナトリウム、アンモニア、有機アミンなどのアルカリ性溶液であり得る。具体的な実施形態では、水酸化ナトリウム溶液でpHを調整する。具体的な実施形態では、前記接着剤のpHは6.5~9である。
【0070】
一実施形態として、本発明に係るバッテリー用接着剤は、ポリマーと水のみで構成されており、この接着剤には他の添加剤がない。
【0071】
別の実施形態として、バッテリー用接着剤は添加剤も含み、前記添加剤は、分散剤、レベリング湿潤剤、脱泡剤及び軟化剤の少なくとも1つである。
【0072】
これらの添加剤の量は、当技術分野での通常の使用量であり、例えば、添加剤の含有量は、水性接着剤の総重量の5%未満である。いくつかの具体的実施形態では、添加剤の含有量は、接着剤の総重量の3%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、0%などである。
【0073】
そのうち、分散剤は、オレエート、スルホネート、カルボキシレートなどのアニオン性分散剤、またはアンモニウム塩、第四級アンモニウム塩、ピリジン塩などのカチオン性分散剤、またはポリエーテル系、アルキンジオール系、CMCなどの非イオン性分散剤、またはリン酸エステル系ポリマーなどの高分子系分散剤であり得る。分散剤を添加することにより、コーティングスラリーに調製する際の分散性能を向上させることができる。
【0074】
前記レベリング湿潤剤は、アルコール系、ケトン系、エステル系や多官能基高沸点溶媒混合物などの高沸点溶媒であり、アクリル酸系、フルオロカーボン樹脂系などの長鎖樹脂型、またはジフェニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーン系であり得る。これらのレベリング湿潤剤は、スラリーの滑らかさを改善し、その使用を容易にすることができる。
【0075】
脱泡剤は、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの有機小分子アルコールやエーテル、またはポリジメチルシロキサン、ペンタエリスリトールエーテルなどのシリコーン系やポリエーテル系であり得る。
【0076】
軟化剤は、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール、ジメチルスルホキシドなどの凝固点が100℃未満の水混和性有機溶媒、またはガラス転移温度(Tg)が100℃未満の水性ポリマーまたはエマルジョンであり得る。軟化剤は、接着剤のフィルム層の柔軟性を高めることができる。
【0077】
本発明のバッテリー用接着剤は、従来の方法で作製することができる。一実施形態として、pHに応じて、親水性モノマーが水中に酸または塩の形で存在し、酸の形で存在する場合、その親水性が低い。したがって、本発明に係るバッテリー用接着剤は、以下の方法で調製することができる。重合反応のモノマーが低親水性の組成物として水相で共重合され、コポリマーの親水性が不十分であるため、反応生成物は沈殿物の形で水分散スラリーを形成し、沈殿物を物理的に分離し、アルカリによる中和や加水分解によりコポリマーの親水性を高めた後、コポリマーを水相に均一に分散させ前記バッテリー用接着剤を得る。
【0078】
例えば、重合中に、重合反応のモノマーにカルボン酸やスルホン酸などの基が保持され、重合後、沈殿物を取り出し、アルカリを添加することにより、ポリマー中のカルボン酸またはスルホン酸を対応するカルボキシレートまたはスルホネートに中和し、親水性を向上させ、そして水相に分散させる。
【0079】
この方法は、残留モノマー及び低分子量ポリマーの含有量を大幅に減らすことができるので、接着剤は、低分子量ポリマーの5%未満という要件を満たし、それによって、コポリマーの凝集力や接着力などの力学的性質を改善する。
【0080】
本発明の具体的実施形態として、バッテリー用接着剤は以下の方法によって調製される。親水性モノマー、親油性モノマー及び水を反応容器に入れ、保護雰囲気下で反応温度まで加熱し、そして開始剤を添加し反応を開始し、反応が完了した後、固液混合物を得て、沈殿物を取り出し、アルカリ性溶液を添加しpH6~12に中和し、透明な粘性液体であるバッテリー接着剤を得る。乾燥により接着剤の水分を除去することにより、接着剤の固形製品を得ることができる。
【0081】
ここで、反応温度は、重合モノマーの種類により選択し、当業者によってモノマーの種類、開始剤の種類及び工程条件に基づき決定することができる。
【0082】
接着剤に添加剤を加える必要がある場合、合成プロセスでは、アルカリ性溶液による中和中または中和後に添加剤を加えることができる。
【0083】
本発明における保護雰囲気は、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンまたはキセノンなど、反応に関与しない雰囲気である。
【0084】
本発明に係るバッテリー用接着剤は、接着の役割を果たすバッテリーの作製、例えば、負極シートの作製、正極シートの作製またはセパレーターの作製に使用することができる。技術的な解決策の一つとして、このバッテリー用接着剤をリチウムイオンバッテリーポールピースの作製に使用する場合、その接着力が高いため、バッテリーの性能を向上させることができる。
【0085】
本発明は、リチウムイオンバッテリー負極シートも提供する。
【0086】
本発明に係るリチウムイオンバッテリー負極シートは、負極活物質及び接着剤を含み、そのうち、前記接着剤は本発明に係るバッテリー用接着剤である。
【0087】
本発明に係る負極シートは、負極コーティングスラリーを集電体に塗布し乾燥させることにより得ることができ、負極コーティングスラリーは、負極活物質、導電剤、結合剤、溶媒等を含む。
【0088】
負極での接着剤の使用量が2%以下の場合、この負極コーティングの90°剥離力は160N/m以上であり、好ましくは、この負極コーティングの90°剥離力は160~220N/mであり、より好ましくは、この負極コーティングの90°剥離力は180~200N/mである。本発明に係る接着剤の使用量は、負極において、接着剤の固形分含有量と、負極材及び導電剤材料の重量との比を指し、前記負極材は、負極活物質、導電剤、接着剤等を含む、負極コーティングスラリー中の溶媒以外の他の成分である。
【0089】
本発明における90°剥離力の試験方法について、米国材料と試験協会の規格ASTM D3330を参照する。
【0090】
本発明は、リチウムイオンバッテリーも提供する。
【0091】
本発明に係るリチウムイオンバッテリーは、正極、本発明に係るリチウムイオンバッテリー負極シート及び電解液を含む。
【0092】
本発明は、複数の本発明に係るリチウムイオンバッテリーを備えるバッテリーパックも提供する。バッテリーパックは、複数のバッテリーで構成されるバッテリーモジュールを含み得る。バッテリーは直列または並列に接続できる。特に、それらを直列に接続する。
【0093】
以下、実施例を参照して本発明の具体的実施形態についてさらに説明するが、本発明は、記載された実施例の範囲に限定されない。
【0094】
<実施例1>
この実施例では、親水性モノマーのアクリル酸(AA)、N-ビニルピロリドン(NVP)、アクリルアミド(AM)と、親油性モノマーのアクリロニトリル(AN)、ブチルアクリレート(BA)が水相での共重合によってリチウムイオンバッテリー用水性接着剤を調製する。
【0095】
その調製方法は、5単位のアクリルアミド、8単位のN-ビニルピロリドン及び566単位の蒸留水を反応容器に入れ、300 r/minの速度で攪拌・溶解し、窒素を導入し酸素を30分間除去し、次に、70℃に加熱し、38単位のアクリル酸、45単位のアクリロニトリル及び4単位のアクリル酸ブチルを加え、温度を70℃に保ち、さらに0.05単位の過硫酸アンモニウムを加えて反応を開始し、9時間の反応後に沈殿物を取り出し、アルカリ性溶液を加えてpH6.5~9に中和し、透明なリチウムイオンバッテリー用水性接着剤を得る。
【0096】
リチウムイオンバッテリー用水性接着剤の分子量及び分子量分布は、ゲルクロマトグラフィー(GPC法)によって測定され、試験装置モデル:Waters Alliance E2695。試験条件:クロマトグラフィーカラムWaters StyRagel HR 3、4、5(水)3カラム直列、移動相Buffer、pH = 7.2、3M NaCl、標準品PAA、温度0.6ml/min。試験結果を
図1に示す。その分子量が5万未満の小分子は0.2wt%を占め、分子量が10万未満の低分子は0.8wt%を占め、分子量が50万超えの高分子は73wt%を占める。
【0097】
<実施例2>
この実施例では、親水性モノマーのメタクリル酸、N-メチルアクリルアミドと、親油性モノマーのメタクリロニトリル、アクリル酸メチル及びアクリル酸ヒドロキシプロピルが水相での共重合によってリチウムイオンバッテリー用水性接着剤を調製する。
【0098】
その調製方法は、7単位のN-メチルアクリルアミド及び400単位の蒸留水を反応容器に入れ、攪拌・溶解し、窒素を導入し酸素を30分間除去し、次に、65℃に加熱し、23単位のメタクリル酸、18単位のアクリル酸メチル、31単位のアクリル酸ヒドロキシプロピル及び21単位のメタクリロニトリルを加え、温度を65℃に保ち、さらに過硫酸アンモニウム開始剤を加えて反応を開始し、22時間の反応後に沈殿物を取り出し、アルカリ性溶液を加えてpH6.5~9に中和し、上記組成のリチウムイオンバッテリー用水性接着剤を得る。
【0099】
実施例1の方法でその分子量及び分子量分布を測定し、5万未満の小分子は0.4wt%を占め、分子量が10万未満の低分子は5wt%を占め、分子量が50万超えの高分子は60wt%を占める。
【0100】
<実施例3>
この実施例では、親水性モノマーの2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、N、N-ジエチルアクリルアミド及びイタコン酸塩と、親油性モノマーのアクリル酸2-エチルヘキシル、シクロヘキシルメタクリレート及びエチルメタクリレートが水相での共重合によってリチウムイオンバッテリー用水性接着剤を調製する。
【0101】
その調製方法は、18単位の2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、22単位のN、N-ジエチルアクリルアミド、5単位のイタコン酸塩及び400単位の蒸留水を反応容器に入れ、攪拌・溶解し、次に、20単位のアクリル酸2-エチルヘキシル、12単位のシクロヘキシルメタクリレート及び22単位のエチルメタクリレートを加え、窒素を導入し酸素を30分間除去し、75℃に加熱し、さらに過硫酸カリウム開始剤を加えて反応を開始し、18時間の反応後に沈殿物を取り出し、アルカリ性溶液を加えてpH6.5~9に中和し、上記組成のリチウムイオンバッテリー用水性接着剤を得る。
【0102】
実施例1の方法でその分子量及び分子量分布を測定し、5万未満の小分子は0.2wt%を占め、分子量が10万未満の低分子は2wt%を占め、分子量が50万超えの高分子は61wt%を占める。
【0103】
<実施例4>
この実施例では、親水性モノマーのアクリル酸塩、2-メチルメタクリルアミド及びビニルスルホン酸と、親油性モノマーのエチルアクリレート、ビニルアセテート及びヒドロキシエチルメタクリレートが水相での共重合によってリチウムイオンバッテリー用水性接着剤を調製する。
【0104】
その調製方法は、31単位のアクリル酸塩、12単位の2-メチルメタクリルアミド、12単位のビニルスルホン酸及び400単位の蒸留水を反応容器に入れ、攪拌・溶解し、次に、31単位のエチルアクリレート、9単位のビニルアセテート及び5単位のヒドロキシエチルメタクリレートを加え、窒素を導入し酸素を30分間除去し、60℃に加熱し、さらに過硫酸アンモニウム開始剤を加えて反応を開始し、20時間の反応後に沈殿物を取り出し、アルカリ性溶液を加えてpH6.5~9に中和し、上記組成のリチウムイオンバッテリー用水性接着剤を得る。
【0105】
実施例1の方法でその分子量及び分子量分布を測定し、5万未満の小分子は0.5wt%を占め、分子量が10万未満の低分子は1wt%を占め、分子量が50万超えの高分子は70wt%を占める。
【0106】
<実施例5>
この実施例では、親水性モノマーのマレイン酸、N-ビニルピロリドン及びN-ヒドロキシプロピルアクリルアミドと、親油性モノマーのスチレン、メタクリル酸2-エチルヘキシル及びヒドロキシプロピルメタクリレートが水相での共重合によってリチウムイオンバッテリー用水性接着剤を調製する。
【0107】
その調製方法は、3単位のN-ヒドロキシプロピルアクリルアミド及び400単位の蒸留水を反応容器に入れ、攪拌・溶解し、次に、31単位のマレイン酸、10単位のプロペンスルホン酸、18単位のN-ビニルピロリドン、13単位のスチレン、12単位のメタクリル酸2-エチルヘキシル及び13単位のヒドロキシプロピルメタクリレートを加え、窒素を導入し酸素を30分間除去し、55℃に加熱し、さらに過硫酸カリウム開始剤を加えて反応を開始し、25時間の反応後に沈殿物を取り出し、アルカリ性溶液を加えてpH6.5~9に中和し、上記組成のリチウムイオンバッテリー用水性接着剤を得る。
【0108】
実施例1の方法でその分子量及び分子量分布を測定し、5万未満の小分子は0.6wt%を占め、分子量が10万未満の低分子は1.4wt%を占め、分子量が50万超えの高分子は65wt%を占める。
【0109】
<実施例6>
この実施例では、親水性モノマーのアクリル酸、メタクリル酸、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド及びプロペンスルホン酸と、親油性モノマーのアクリル酸2-エチルヘキシル、エチルアクリレート及びイソボルニルメタクリレートが水相での共重合によってリチウムイオンバッテリー用水性接着剤を調製する。
【0110】
その調製方法は、8単位のN-ヒドロキシエチルアクリルアミド、9単位のプロペンスルホン酸及び400単位の蒸留水を反応容器に入れ、攪拌・溶解し、次に、13単位のアクリル酸、15単位のメタクリル酸、30単位のアクリル酸2-エチルヘキシル、15単位のエチルアクリレート及び10単位のイソボルニルメタクリレートを加え、窒素を導入し酸素を30分間除去し、67℃に加熱し、さらに過硫酸アンモニウム開始剤を加えて反応を開始し、23時間の反応後に沈殿物を取り出し、アルカリ性溶液を加えてpH6.5~9に中和し、上記組成のリチウムイオンバッテリー用水性接着剤を得る。
【0111】
実施例1の方法でその分子量及び分子量分布を測定し、5万未満の小分子は0.2wt%を占め、分子量が10万未満の低分子は4.5wt%を占め、分子量が50万超えの高分子は63wt%を占める。
【0112】
<実施例7>
この実施例では、親水性モノマーの28単位の2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、32単位のN、N-ジエチルアクリルアミド及び10単位のイタコン酸と、親油性モノマーの10単位のアクリル酸2-エチルヘキシル、12単位のシクロヘキシルメタクリレート及び8単位のエチルメタクリレートが水相での共重合によってリチウムイオンバッテリー用水性接着剤を調製する。
【0113】
その調製方法は、28単位の2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、32単位のN、N-ジエチルアクリルアミド、10単位のイタコン酸及び400単位の蒸留水を反応容器に入れ、攪拌・溶解し、次に、10単位のアクリル酸2-エチルヘキシル、12単位のシクロヘキシルメタクリレート及び8単位のエチルメタクリレートを加え、窒素を導入し酸素を30分間除去し、73℃に加熱し、さらに過硫酸アンモニウム開始剤を加えて反応を開始し、19時間の反応後に沈殿物を取り出し、アルカリ性溶液を加えてpH6.5~9に中和し、上記組成のリチウムイオンバッテリー用水性接着剤を得る。
【0114】
実施例1の方法でその分子量及び分子量分布を測定し、5万未満の小分子は0.3wt%を占め、分子量が10万未満の低分子は3.3wt%を占め、分子量が50万超えの高分子は66wt%を占める。
【0115】
<比較例1>
この比較例では、親水性モノマーのアクリル酸(AA)、N-ビニルピロリドン(NVP)、アクリルアミド(AM)と、親油性モノマーのアクリロニトリル(AN)、ブチルアクリレート(BA)が水相での共重合によってリチウムイオンバッテリー用水性接着剤を調製する。
【0116】
その調製方法は、5単位のアクリルアミド、8単位のN-ビニルピロリドン及び566単位の蒸留水を反応容器に入れ、300 r/minの速度で攪拌・溶解し、次に、38単位のアクリル酸を加え、アルカリ性溶液を加えてpHを調整し、窒素を導入し酸素を30分間除去し、70℃に加熱し、45単位のアクリロニトリル及び4単位のアクリル酸ブチルを加え、温度を70℃に保ち、さらに0.21単位の過硫酸アンモニウムを加えて反応を開始し、変換を促進するために、3時間ごとに0.21単位の過硫酸アンモニウムを加え、24時間の反応後にアルカリ性溶液を加えてpH6.5~9に中和し、上記組成のリチウムイオンバッテリー用水性接着剤を得る。
【0117】
実施例1の方法でその分子量及び分子量分布を測定し、その結果を
図1に示す。分子量が5万未満の小分子は5wt%を占め、分子量が10万未満の低分子は10wt%を占め、分子量が50万超えの高分子は39wt%を占める。
【0118】
<比較例2>
比較例2の接着剤は、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)及びSBR(スチレンブタジエンゴム)で構成されており、CMC:SBR=1:2(固形分による割合)。
【0119】
<比較例3>
比較例3の接着剤は、特許ZL01108511.8の実施例4で調製された製品である。
【0120】
<比較例4>
この比較例では、親水性モノマーのアクリル酸、N-ビニルピロリドン、N-ヒドロキシエチルアクリルアミドと、親油性モノマーのアクリロニトリル、アクリル酸ヒドロキシプロピルが水相での共重合によってリチウムイオンバッテリー用水性接着剤を調製する。
【0121】
その調製方法は、22単位のN-ヒドロキシエチルアクリルアミド及び300単位の蒸留水を反応容器に入れ、攪拌・溶解し、次に、30単位のアクリル酸及び15単位のN-ビニルピロリドンを加え、窒素を導入し一定期間酸素を除去し、66℃に加熱してから、25単位のアクリロニトリル及び8単位のアクリル酸ヒドロキシプロピルを加え、さらに一定量の過硫酸カリウムを加えて反応を開始し、13時間の反応後に沈殿物を取り出し、アルカリ性溶液を加えてpH6.5~9に中和し、上記組成のリチウムイオンバッテリー用水性接着剤を得る。
【0122】
実施例1の方法でその分子量及び分子量分布を測定し、5万未満の小分子は3.1wt%を占め、分子量が10万未満の低分子は8.4wt%を占め、分子量が50万超えの高分子は48wt%を占める。
【0123】
<比較例5>
この比較例では、親水性モノマーの2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸と、親油性モノマーのアクリル酸2-エチルヘキシル及びシクロヘキシルメタクリレートが水相での共重合によってリチウムイオンバッテリー用水性接着剤を調製する。
【0124】
その調製方法は、150単位の蒸留水を反応容器に入れ、15単位の2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及び5単位のアクリル酸を加え、アルカリ性溶液を加えてpHを調整し、次に、50単位のアクリル酸2-エチルヘキシル及び30単位のシクロヘキシルメタクリレートを加え、窒素を導入し一定期間酸素を除去し、75℃に加熱してから、一定量の過硫酸アンモニウムを加えて反応を開始し、17時間の反応後に上記組成のリチウムイオンバッテリー用水性接着剤を得る。
【0125】
この接着剤はエマルジョンであり、CMCと合わせて使用する必要があり、その性能はSBRと同様である。
【0126】
<試験例1> 90°剥離力の測定
上記の実施例と比較例の接着剤で負極シートを作製し、その90°剥離力を測定し、具体的な方法と結果は次の通りである。
【0127】
負極活物質としての人工グラファイト(江西紫宸公司製、型式8C)、接着剤(それぞれ実施例1~7及び比較例1~6の接着剤である)、導電性カーボンブラック(super-p)を、表1の比率に従って脱イオン水に加え、負極混合スラリーを調製する。この負極混合スラリーを、厚さ12μmの銅(Cu)箔集電体に塗布し、そして乾燥・圧延する。面密度20mg/cm
2、圧縮密度1.65g/cm
3の負極シートにする。
【表1】
注:上記の比率は、各成分の固形物の重量比率である。
【0128】
ポールピース接着力試験:具体的方法について、ASTM~D3330試験方法を参照し、機器・ツール:YISIDAメカニカルテスター(DS2-50N)、3Mテープ:(Scotch 600/25mm幅)。具体的な結果を表2に示す。
【表2】
【0129】
<試験例2> バッテリー性能試験
上記の実施例1、2、4及び比較例1、2、3の接着剤を使用しバッテリーを作製し、その性能を測定する。
【0130】
(1.負極シートの作製)
負極シートの作製方法は試験例1と同じである。
【0131】
(2.正極シートの作製)
正極活物質としてのコバルト・リチウム酸化物94%(重量比)、導電性物質としてのカーボンブラック(super-p)2%、接着剤としてのフッ化ポリビニリデン(PVdF)4%をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒に添加し、正極混合スラリーを調製する。この正極混合スラリーを厚さ18ミクロンのアルミ箔集電体に塗布し、乾燥・圧延し、面密度39mg/cm2及び圧縮密度4.1g/cm3の正極シートにする。
【0132】
(3.バッテリー巻取と電解液注入)
上記で作製された電極及びセパレーターで仕様406379のバッテリーを製造する。バッテリーは正極、セパレーター、負極を巻いて作られ、アルミプラスチック複合材でパッキングされる。1 mol/Lのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を溶解した電解質(炭酸エチレン(EC)/炭酸エチルメチル(EMC)=1/2(体積比))を組み立てたバッテリーに注入し、真空排気・シールを行い、アクティブ状態になる準備ができたバッテリーを得る。
【0133】
(4.バッテリーのフォーメーション)
得られたセルを45℃の環境に20時間置き、そしてセルを95℃で1分間のホットプレスによって成形した。クランプを必要とせずに直接セルをフォーメーション装置にセットし、30±2℃の環境でセルのフォーメーションを行い、フォーメーションの電流を1C(「C」はセルの理論容量)、フォーメーション時間を100分、フォーメーションのカットオフ電位を4.35Vにする。その後、充放電試験機に入れ充電・放電・充電を順番に行い、カットオフ電位を3.8Vにし、そしてセルの脱気及びエアバッグの切断を行い、バッテリーを得る。このプロセスでは、8分間のホットプレスとコールドプレスのみが必要であり、各バッテリーをクランプしフォーメーションを行う他の治具は不要であり、全体的フォーメーション時間は270分である。
【0134】
(5.バッテリー性能試験)
(5.1.サイクル性能)
1Cの電流で4.35Vに充電し、4.35Vの定電圧を維持する。1Cの電流でバッテリーを放電し、カットオフ電圧を3.0Vにし、サイクルを完了する。その結果を
図2に示す。
図2から分かるように、本発明の実施例1の製品は、より良好なサイクル性能を有する。
(5.2、低温放電試験)
常温下で、セルを0.2Cの電流で4.35Vに充電し、4.35Vの定電圧を維持する。次に、セルをさまざまな温度に置き、16時間放置してから、1.0Cの電流で放電し、カットオフ電圧を3.0Vにする。詳細について
図3及び表3を参照する。
【表3】
上記のバッテリー性能試験結果から、本発明に係る接着剤を使用し作製したバッテリーの方が性能が優れていることが明らかである。