(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】金属合金表面修正方法、及び改善された結合耐久性を有する、関連する金属合金製品
(51)【国際特許分類】
B23K 26/352 20140101AFI20240430BHJP
B23K 26/122 20140101ALI20240430BHJP
【FI】
B23K26/352
B23K26/122
(21)【出願番号】P 2022549491
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 US2021018504
(87)【国際公開番号】W WO2021168068
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-08-17
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】マナヴバシ,アルプ
(72)【発明者】
【氏名】バッキンガム,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ウォルチャック,ブライアン マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ベック,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マクファーレン,テリーサ エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】クマラナトゥンゲ,ラシタ
(72)【発明者】
【氏名】ワグスタッフ,サミュエル ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ホー,ジョン ミン
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-223085(JP,A)
【文献】国際公開第2019/005989(WO,A1)
【文献】特開2016-26886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
バルク及び第1の表面を有する、アルミニウム合金製品を提供することと、
第1の液体層を前記第1の表面上に塗布することと、
前記第1の液体層及び前記第1の表面にわたって高エネルギーのビームを走査することであって、前記高エネルギーのビームが、前記第1の表面及び前記第1の液体層と相互作用して、前記第1の表面を物理的に修正して、処理された第1の表面を形成する、前記走査することと、を含み、
前記第1の液体層にわたって高エネルギーのビームを走査することが、前記第1の液体層上にレーザーエネルギーのビームを誘導することを含み、
前記第1の液体層が、グリセリン、アルコール溶液
、またはこれらの任意の組み合わせを含む、前記方法。
【請求項2】
前記処理された第1の表面が、FLTM BV 101-07標準試験に従って、45サイクル~125サイクル、またはそれ以上の結合耐久性を呈する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルミニウム合金製品が、5xxxシリーズアルミニウム合金、6xxxシリーズアルミニウム合金、または7xxxシリーズアルミニウム合金を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記高エネルギーのビームが、前記第1の液体層と相互作用して、金属間粒子と、アルミニウム合金の粒を含むマトリックスと、を含む、前記バルクの少なくとも一部分を物理的に修正して、処理された表面下層を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記処理された表面下層が、前記高エネルギーのビームによって以前に溶融されている前記アルミニウム合金の再凝固層を含み、前記表面下層が、前記アルミニウム合金製品の1μm~10μmの深さを占め、前記処理された表面下層中の金属間粒子の第1の濃度が、前記バルク中の金属間粒子の第2の濃度未満である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の液体層が、1nm~1mmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の液体層が、1mm~5mmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第2の表面に第2の液体層を塗布することをさらに含み、前記第2の表面が、前記第1の表面とは反対である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の液体層が、1nm~1mmの厚さを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の液体層が、1mm~5mmの厚さを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の液体層が、前記第1の液体層と同じである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の液体層が、前記第1の液体層とは異なる、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の液体層及び前記第2の液体層のうちの少なくとも1つが、凝縮蒸気を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の液体層及び前記第2の液体層のうちの少なくとも1つが、水溶液を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の液体層及び前記第2の液体層のうちの少なくとも1つが、非水溶液を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の液体層及び前記第2の液体層のうちの少なくとも1つが、グリセリン、アルコール溶液、蒸気、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の液体層及び前記第2の液体層のうちの少なくとも1つが、腐食を抑制することと、前記表面をテクスチャ加工することと、接着性を増加させることと、のうちの少なくとも1つを行うように構成されている、前処理化学物質を含み、前記前処理化学物質が、有機ホスホン酸、有機ホスフィン酸、シラン、カップリング剤、ポリマー、コポリマー、Zr/Mo前処理、Mnベースの前処理、Ceベースの前処理、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の液体層及び前記第2の液体層が、2つ以上のアプリケータによって前記第1の表面及び前記第2の表面上に塗布される、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
前記2つ以上のアプリケータが、パルスを有するかもしくは有しないスプレーアプリケータ、低圧高容量スプレーアプリケータ、低圧低容量スプレーアプリケータ、回転噴霧器、静電アプリケータ、ロールアプリケータ、またはこれらの任意の組み合わせを備える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記2つ以上のアプリケータが、連続したラインにある、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記2つ以上のアプリケータが、2つ以上のアプリケータ浴として構成されている、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記レーザーエネルギーのビームが、連続レーザー、パルスレーザー、ナノ秒パルスレーザー、ピコ秒パルスレーザー、フェムト秒パルスレーザー、シングルパス構成、ダブルパス構成、連続波を有するレーザー、連続波を有しないレーザー、またはこれらの任意の組み合わせによって提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記レーザーエネルギーのビームが、イッテルビウムレーザー、Nd-YAGレーザー、CO
2レーザー、エキシマレーザー、またはこれらの任意の組み合わせによって提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記レーザーエネルギーのビームが、約200nm~約1500nmの波長を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の液体層にわたって前記高エネルギーのビームを走査することが、前記第1の液体層上に少なくとも1つのレーザーエネルギーのビームを誘導することを含み、前記方法が、前記第2の液体層上に別の少なくとも1つのレーザーエネルギーのビームを誘導することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の表面が、処理されていない第1の表面である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記処理されていない第1の表面が、その上に有機物、油、炭化水素、土壌、または無機残渣のうちの1つ以上を有し、前記処理された第1の表面が、有機物、油、炭化水素、土壌、または無機残渣のうちの1つ以上を欠いているか、または実質的に欠いている、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記処理されていない第1の表面が、化学的エッチング、酸性またはアルカリ性洗浄、溶媒洗浄、蒸気脱脂、機械的表面処理、ブラッシング、バフ研磨、機械的表面研磨、電気化学的研磨、化学的研磨、界面活性剤洗浄、及び変換コーティングから選択される1つ以上の湿潤加工工程に供されていない、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記処理されていない第1の表面が、前記処理されていない第1の表面上に前記高エネルギーのビームを誘導する前に、1つ以上の湿潤加工工程に供されていない、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記処理されていない第1の表面が、その上に圧延潤滑剤を有する圧延表面に対応する、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記処理されていない第1の表面上に高エネルギーのビームを誘導することが、乾燥洗浄プロセスに対応し、前記処理された第1の表面が、洗浄された表面に対応する、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記処理されていない第1の表面上に高エネルギーのビームを誘導することが、乾燥表面修正プロセスに対応し、前記処理された第1の表面が、接着剤との結合に好適な活性化された表面に対応する、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の表面が、近接表面微細構造を含み、前記第1の表面上に前記高エネルギーのビームを誘導することが、前記近接表面微細構造の少なくとも一部分を除去または排除する、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の表面上に前記高エネルギーのビームを誘導することが、前記近接表面微細構造を熱的に修正する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記処理された第1の表面が、0.1~0.5の乾燥静摩擦係数を呈する、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
圧延アルミニウム合金基板を含むアルミニウム合金製品であって、
前記圧延アルミニウム合金基板が、
バルクであって、前記バルクが、金属間粒子と、アルミニウム合金の粒を含むマトリックスと、を含む、前記バルクと、
前記バルクの第1の部分を覆うレーザー及び液体処理領域を含み、
ここで、レーザー及び液体加工された表面層が、10nm~300nmの厚さを有する第1の酸化層を含み、
前記レーザー及び液体処理領域が、
処理された表面下層であって、前記処理された表面下層が、高エネルギーのビームによって以前に溶融されている前記アルミニウム合金の再凝固層を含み、前記処理された表面下層が、前記アルミニウム合金製品の1μm~10μmの深さを占め、前記処理された表面下層中の金属間粒子の第1の濃度が、前記バルク中の金属間粒子の第2の濃度未満である、前記処理された表面下層と、
前記レーザー及び液体加工された表面層であって、前記レーザー及び液体加工された表面層が、近接表面微細構造と、有機物、油、炭化水素、土壌、無機残渣、圧延酸化物、または陽極酸化物のうちの1つ以上と、を実質的に欠いている前記レーザー及び液体加工された表面層と、を含む、前記レーザー及び液体処理領域と、
を含む、前記アルミニウム合金製品。
【請求項37】
前記アルミニウム合金が、5xxxシリーズアルミニウム合金、6xxxシリーズアルミニウム合金、または7xxxシリーズアルミニウム合金を含む、請求項36に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項38】
前記アルミニウム合金中のマグネシウムの濃度が、10重量%未満である、請求項36に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項39】
前記バルク中のマグネシウムの濃度が、前記処理された表面下層中よりも大きいか、または前記バルク中の亜鉛の濃度が、前記処理された表面下層中よりも大きい、請求項36に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項40】
前記レーザー及び液体処理領域が、FLTM BV 101-07標準試験に従って、45サイクル~125サイクル、またはそれ以上の結合耐久性を呈する、請求項36に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項41】
前記アルミニウム合金製品が、その上に官能化層を含まない、請求項36に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項42】
前記バルクの第2の部分を覆う処理されていない領域をさらに含み、前記処理されていない領域が、レーザー処理プロセスに供されてないか、または供されたことがない、請求項36に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項43】
前記レーザー及び液体処理領域の第1の算術平均高さ(Spk)が、前記処理されていない領域の第2の算術平均高さ未満である、請求項42に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項44】
前記レーザー及び液体処理領域が、0.1μm~10μmの算術平均高さ(Sa)を呈する、請求項36に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項45】
前記レーザー及び液体処理領域が、0.1%~80%の複雑さ(Sdr)を呈する、請求項36に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項46】
前記レーザー及び液体処理領域が、最大3ヶ月の表面安定性を呈する、請求項36に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項47】
前記官能化層が、リン含有有機酸コーティングである、請求項41に記載のアルミニウム合金製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月19日に出願された米国仮特許出願第62/978,767号、2020年3月3日に出願された米国仮特許出願第62/984,555号、及び2020年3月23日に出願された米国仮特許出願第62/993,365号の利益及び優先権を主張し、これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、冶金学に関し、より具体的には、金属合金製品の表面上の近接表面微細構造などの、金属合金製品の表面特徴を修正するための技術に関する。
【背景技術】
【0003】
アルミニウム合金製品の加工中に、欠陥を含み得る近接表面微細構造の生成が生じ得る。例えば、欠陥は、例えば、アルミニウム合金製品の表面に蓄積され得る、圧入酸化物、圧延油、移送亀裂、表面亀裂、内部亀裂、裂け目、金属間粒子、または合金元素の高密度集団であり得るか、またはそれらを含み得る。近接表面微細構造内で発生する欠陥は、アルミニウム合金製品の濡れ性及び/または接着性性能に影響を与える可能性がある。近接表面微細構造を含む表面欠陥に対処する技術が不足している。
【発明の概要】
【0004】
実施形態という用語及び同様の用語は広義には、本開示の主題のすべて及び以下の特許請求の範囲を指すものとする。これらの用語を含む記述は、本明細書に記載された主題を限定するものでもなく、以下の特許請求の範囲の意味または範囲を限定するものでもないと理解されるべきである。本明細書で網羅される本開示の実施形態は、この発明の概要ではなく、以下の特許請求の範囲によって定義される。本発明の概要は、開示の様々な態様の大まかな概要であり、以下の発明を実施するための形態の節でさらに説明される概念のいくつかを紹介する。本発明の概要は、特許請求される主題の重要なまたは必須の特色を識別することを意図するものではなく、また特許請求される主題の範囲を決定するために単独で使用されることも意図していない。本主題は、本開示の明細書全体、任意またはすべての図面、及び各特許請求項の適切な部分を参照することによって理解されるべきである。
【0005】
一態様では、金属合金基板の表面を処理する方法が記載されている。この態様の方法は、バルク及び第1の表面を有するアルミニウム合金製品を提供することを含み得る。方法はまた、第1の表面にわたって高エネルギーのビームを走査することを含み得る。高エネルギーのビームは、第1の表面と相互作用し得、第1の表面を物理的に修正して、処理された第1の表面を形成し得る。実施形態では、金属合金基板の表面を処理する方法は、FLTM BV 101-07標準試験、Stress Durability Test for Adhesive Lap-Sear Bonds(接着ラップせん断結合の応力耐久性試験)(2017)に従って、45サイクル~125サイクル、またはそれ以上の結合耐久性を呈する、処理された第1の表面を含み得る。実施形態では、アルミニウム合金製品は、5xxxシリーズアルミニウム合金、6xxxシリーズアルミニウム合金、または7xxxシリーズアルミニウム合金を含み得る。
【0006】
様々な実施形態では、本方法は、高エネルギーのビームを走査する前に、第1の表面上に第1の液体層を塗布することをさらに含み得る。高エネルギーのビームを走査することは、第1の液体層にわたっている及び/またはそれを通り得る。高エネルギーのビームは、第1の液体層と相互作用して、処理された第1の表面を形成し得る。高エネルギーのビームは、第1の液体層と相互作用して、バルクの少なくとも一部分を物理的に修正して、処理された表面下層を形成し得る。修正されるバルク部分は、金属間粒子と、アルミニウム合金の粒を含むマトリックスと、を含み得る。例示的な実施形態では、処理された表面下層は、高エネルギーのビームによって以前に溶融されているアルミニウム合金の再凝固層を含み得る。表面下層は、1μm~10μmのアルミニウム合金製品内の深さを占め得る。実施形態では、処理された表面下層中の金属間粒子の第1の濃度は、バルク中の金属間粒子の第2の濃度未満であり得る。いくつかの実施形態では、第1の液体層は、1nm~1mmの厚さを有し得る。他の実施形態では、第1の液体層は、1mm~5mmの厚さを有し得る。
【0007】
実施形態では、金属合金基板の表面を処理する方法は、第2の液体層を第2の表面に塗布することをさらに含み得る。第2の表面は、第1の表面とは反対であり得る。いくつかの実施形態では、第2の液体層は、1nm~1mmの厚さを有し得る。他の実施形態では、第2の液体層は、1mm~5mmの厚さを有し得る。第2の液体層は、第1の液体層と同じであり得るか、または、第2の液体層は、第1の液体層とは異なり得る。いくつかの実施形態では、第1の液体層及び第2の液体層のうちの少なくとも1つは、水溶液を含み得る。いくつかの実施形態では、第1の液体層及び第2の液体層のうちの少なくとも1つは、非水溶液を含み得る。いくつかの実施形態では、第1の液体層及び第2の液体層のうちの少なくとも1つは、グリセリン、アルコール溶液、蒸気、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。例示的な実施形態では、第1の液体層及び第2の液体層のうちの少なくとも1つは、腐食を抑制し、表面をテクスチャ加工し、及び/または接着性を増加させるように構成された、前処理化学物質を含み得る。前処理化学物質は、有機ホスホン酸、有機ホスフィン酸、シラン、カップリング剤、ポリマー、コポリマー、Zr/Mo前処理、Mnベース前処理、Ceベース前処理、接着促進剤、腐食抑制剤、任意の好適な前処理溶液、またはそれらの組み合わせから選択され得る。
【0008】
様々な実施形態では、金属合金基板の表面を処理する方法は、第1の液体層及び第2の液体層を2つ以上のアプリケータによって第1の表面及び第2の表面上に塗布することを含み得る。2つ以上のアプリケータは、パルスを有するか、もしくは有しないスプレーアプリケータ、低圧高容量スプレーアプリケータ、低圧低容量スプレーアプリケータ、回転噴霧器、静電アプリケータ、ロールアプリケータ、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。実施形態では、2つ以上のアプリケータは、連続したラインにあり得る。実施形態では、2つ以上のアプリケータは、2つ以上のアプリケータ浴として構成され得る。
【0009】
実施形態では、第1の表面または第1の液体層にわたって高エネルギーのビームを走査することは、第1の液体層上にレーザーエネルギーのビームを誘導することを含み得る。レーザーエネルギーのビームは、連続レーザー、パルスレーザー、ナノ秒パルスレーザー、ピコ秒パルスレーザー、フェムト秒パルスレーザー、シングルパス構成、ダブルパス構成、連続波を有するレーザー、連続波を有しないレーザー、またはこれらの任意の組み合わせによって提供され得る。レーザーエネルギーのビームは、イッテルビウムレーザー、Nd-YAGレーザー、CO2レーザー、エキシマレーザー、金属表面と相互作用かつ結合することができるエネルギーレベルを有する光もしくは波の任意のビーム、またはこれらの任意の組み合わせによって提供され得る。レーザーエネルギーのビームは、いくつかの例では、約200nm~約1500nmの波長を有し得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、金属合金基板の表面を処理する方法は、第1の液体層にわたって及び/またはそれを通して高エネルギーのビームを走査することを含み得る。これは、第1の液体層上にレーザーエネルギーの少なくとも1つのビームを誘導することを含み得る。本方法は、第2の液体層上に別の少なくとも1つのレーザーエネルギーのビームを誘導することをさらに含み得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、金属合金基板の表面を処理する方法は、処理されていない第1の表面である第1の表面を含み得る。処理されていない第1の表面は、その上に有機物、油、炭化水素、土壌、または無機残渣のうちの1つ以上を有し得る。処理された第1の表面は、有機物、油、炭化水素、土壌、または無機残渣のうちの1つ以上を欠いていてもよく、または実質的に欠いていてもよい。いくつかの実施形態では、処理されていない第1の表面は、化学的エッチング、酸性またはアルカリ性洗浄、溶媒洗浄、蒸気脱脂、機械的表面処理、ブラッシング、バフ研磨、機械的表面研磨、電気化学的研磨、化学的研磨、界面活性剤洗浄、及び変換コーティングから選択される1つ以上の湿潤加工工程に供されていない場合がある。いくつかの実施形態では、処理されていない第1の表面は、処理されていない第1の表面上に高エネルギーのビームを誘導する前に、1つ以上の湿潤加工工程に供されていない場合がある。いくつかの実施形態では、処理されていない第1の表面は、その上に圧延潤滑剤を有する圧延表面に対応し得る。実施形態では、処理されていない第1の表面上に高エネルギーのビームを誘導することは、乾燥洗浄プロセスに対応し得、処理された第1の表面は、洗浄された表面に対応する。実施形態では、処理されていない第1の表面上に高エネルギーのビームを誘導することは、乾燥表面修正プロセスに対応し得る、処理された第1の表面は、接着剤との結合に好適な活性化された表面に対応し得る。第1の表面は、近接表面微細構造を含み得る。第1の表面上にエネルギーのビームを誘導することは、近接表面微細構造の少なくとも一部分を除去または排除し得る。第1の表面上に高エネルギーのビームを誘導することは、近接表面微細構造を熱的に修正し得る。実施形態では、処理された第1の表面は、0.1~0.5の乾燥静摩擦係数を呈するが、この範囲を外れた乾燥静摩擦係数を有する表面も企図される。
【0012】
別の態様では、処理された表面を有する金属合金製品が記載されている。圧延アルミニウム合金基板などの金属合金製品は、バルク及びレーザー処理領域を含み得る。バルクは、金属間粒子と、アルミニウム合金の粒を含むマトリックスと、を含み得る。レーザー処理領域は、バルクの第1の部分を覆い得る。レーザー処理領域は、処理された表面下層を含み得る。処理された表面下層は、高エネルギーのビームによって以前に溶融されているアルミニウム合金の再凝固層を含み得る。処理された表面下層は、1μm~10μmのアルミニウム合金製品内の深さを占め得る。処理された表面下層中の金属間粒子の第1の濃度は、バルク中の金属間粒子の第2の濃度未満であり得る。処理された表面下層は、レーザー加工された表面層であってもよく、またはそれをさらに含んでもよい。レーザー加工された表面層は、近接表面微細構造を欠いているか、または実質的に欠いている場合がある。レーザー加工された表面層は、有機物、油、炭化水素、土壌、無機残渣、圧延酸化物、または陽極酸化物のうちの1つ以上を欠いていてもよく、または実質的に欠いていてもよい。レーザー加工された表面層は、10nm~300nmの厚さを有する第1の酸化物層を含み得る。いくつかの実施形態では、レーザー処理領域は、FLTM BV 101-07標準試験に従って、45サイクル~125サイクル、またはそれ以上の結合耐久性を呈し得る。
【0013】
実施形態では、アルミニウム合金は、5xxxシリーズアルミニウム合金、6xxxシリーズアルミニウム合金、または7xxxシリーズアルミニウム合金を含み得る。実施形態では、アルミニウム合金中のマグネシウムの濃度は、10重量%未満であり得る。バルク中のマグネシウム濃度は、処理された表面下層中より高くてもよい。バルク中の亜鉛濃度は、処理された表面下層中より高くてもよい。様々な実施形態では、アルミニウム合金製品は、その上に官能化層を含まない場合がある。官能化層の一例としては、リン含有有機酸コーティング層または前処理層が挙げられ得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、アルミニウム合金は、バルクの第2の部分を覆う処理されていない領域をさらに含み得る。処理されていない領域は、レーザー処理プロセスに供されていない場合もあれば、供されていない場合もある。実施形態では、レーザー処理領域の第1の算術平均高さ(Spk)は、処理されていない領域の第2の算術平均高さ未満であり得る。実施形態では、レーザー処理領域は、0.1μm~10μmの算術平均高さ(Sa)を呈する。実施形態では、レーザー処理領域は、0.1%~80%の複雑さ(Sdr)を呈し得る。
【0015】
様々な実施形態では、レーザー処理領域は、例えば、最大3ヶ月または最大6ヶ月の表面安定性を呈し得、これは、レーザー処理領域が、表面が安定している間の任意の時間中に別の製品に結合するのに好適であることを示し得る。別の言い方をすれば、レーザー処理領域は、最大3ヶ月または最大6ヶ月間安定であり得、最大3ヶ月または最大6ヶ月の期間にわたって最初に結合されていないにもかかわらず、FLTM BV 101-07標準試験または他の標準試験に従って、45サイクル~125サイクル、またはそれ以上の結合耐久性を呈する。そのような表面安定性は、結果として生じる結合の耐久性を損なうことなく、または早期に劣化させることなく、保管及び/または調製と、別の製品との結合との間のある程度の遅延を可能にし得る。
【0016】
他の目的及び利点は、非限定例の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0017】
本明細書は、以下の添付の図を参照しており、異なる図中での同様の参照番号の使用は、同様のまたは類似の構成要素を例示することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】金属合金製品を作製するための方法の概略図である。
【
図2】1つ以上の欠陥を含む近接表面微細構造を有する金属合金製品の概略図を提供する。
【
図3A】1つ以上の欠陥を含む、処理されていない表面及び近接表面微細構造を有する金属合金製品の断面の概略図を提供する。
【
図3B】近接表面微細構造に影響を及ぼし、かつ洗浄された表面を提供するために、表面上に誘導された高エネルギーのビームを有する、
図3Aに示される断面の概略図を提供する。
【
図3C】近接表面微細構造に影響を及ぼし、かつテクスチャ加工された表面を提供するために、洗浄された表面上に誘導された高エネルギーのビームを有する、
図3Bに示される断面の概略図を提供する。
【
図4A】金属酸化物粒子及び金属間粒子を含む1つ以上の欠陥を含む、処理されていない表面及び近接表面微細構造を有する金属合金製品の断面の概略図を提供する。
【
図4B】近接表面微細構造に影響を及ぼし、かつ洗浄された表面を提供するために処理されていない表面上に誘導された高エネルギーのビームを有する、
図4Aに示される断面の概略図を提供する。
【
図4C】近接表面微細構造に影響を及ぼし、かつ金属酸化物粒子及び金属間粒子を含まない活性化された表面を提供するために、洗浄された表面上に誘導された高エネルギーのビームを有する、
図4Bに示される断面の概略図を提供する。
【
図5】形成された金属合金製品の概略図を提供し、製品は、修正表面を有し、接着剤によって別の製品に結合される。
【
図6A】金属酸化物粒子及び金属間粒子を含む1つ以上の欠陥を含む、処理されていない表面及び近接表面微細構造を有する金属合金製品の断面の概略図を提供する。
【
図6B】処理されていない表面の上に塗布される高熱伝導率凝縮蒸気層を有する、
図6Aに示される断面の概略図を提供する。
【
図6C】近接表面微細構造に影響を及ぼし、かつ金属酸化物粒子及び金属間粒子を含まない活性化された表面を提供するために、凝縮された蒸気層上に誘導された高エネルギーのビームを有する、
図6Bに示される断面の概略図を提供する。
【
図7】各側面上に誘導された高エネルギーのビームを有する前に、互いとは反対である2つの側面の各々に塗布される凝縮された蒸気層を有するアルミニウム合金製品を作製するための連続コイルラインプロセスの概略図を提供する。
【
図8】別の実施形態では、アルミニウム合金製品を作製するための連続コイルラインプロセスの概略図を提供し、凝縮された蒸気層は、各側面上に誘導された高エネルギーのビームを有する前に、製品の各側面に同時に塗布される。
【
図9】凝集された蒸気層上に誘導された高エネルギーのビームを有する前に、製品の各側面に連続して塗布及び/または結合される、凝集された蒸気または水性もしくは非水溶液などのより厚い層を有するアルミニウム合金製品を作製するための連続コイルラインプロセスの概略図を提供する。
【
図10A】アルミニウム合金製品のテクスチャ加工された表面の第1の実施例の画像を提供する。
【
図10B】アルミニウム合金製品のテクスチャ加工された表面の第2の実施例の画像を提供する。
【
図10C】アルミニウム合金製品のテクスチャ加工された表面の第3の実施例の画像を提供する。
【
図10D】アルミニウム合金製品のテクスチャ加工された表面の第4の実施例の画像を提供する。
【
図10E】アルミニウム合金製品のテクスチャ加工された表面の第5の実施例の画像を提供する。
【
図11A】アルミニウム合金製品の様々なレーザーエネルギー密度における接触角を示すプロットを提供する。
【
図11B】別のアルミニウム合金製品の様々なレーザーエネルギー密度における接触角を示すプロットを提供する。
【
図12A】処理されていない表面を有するアルミニウム合金製品のトポグラフィ分析を提供する。
【
図12B】パス間の25%のオーバーラップでレーザーで処理された表面を有するアルミニウム合金製品のトポグラフィ分析を提供する。
【
図12C】パス間の50%のオーバーラップでレーザーで処理された表面を有するアルミニウム合金製品のトポグラフィ分析を提供する。
【
図13】処理されていない表面を有し、かつ金属酸化物層を含む近接表面微細構造を示す、アルミニウム合金製品の断面の電子顕微鏡写真画像である。
【
図14】近接表面微細構造における金属間粒子を示す、より低い倍率での
図13の断面の電子顕微鏡写真画像である。
【
図15】より少ない近接表面微細構造を有する表面付近の微細構造を示す、パス間の50%オーバーラップでレーザーで処理された表面を有するアルミニウム合金製品の断面の電子顕微鏡画像である。
【
図16】近接表面微細構造におけるより少ない金属間粒子を示す、より低い倍率での
図15の断面の電子顕微鏡写真画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書では、処理されていない表面を有する製品の近接表面微細構造が高エネルギーのビームによって影響を受けて、修正表面を提供する、鋳造及び/または圧延加工によって生成された金属及び金属合金製品と、そのような製品を生成するための方法とが記載されており、修正表面は、洗浄された、テクスチャ化された、活性化された、または他の方法で調製もしくは処理された表面であり得る。処理されていない表面は、製品のバルクの中の深さまで領域を占有し得、かつ1つ以上の欠陥を含有し得る、近接表面微細構造を呈し得る。いくつかの場合では、近接表面微細構造または欠陥は、高エネルギーのビームでの処理によって低減または排除され得る。高エネルギーのビームは、任意選択的に、金属合金製品の表面と接触している液体層上に誘導され得、高エネルギーのビームと、任意選択的な液体層と、表面との間の相互作用は、金属合金製品の表面の修正をもたらし得る。修正表面は、処理されていない表面を有する製品の近接表面微細構造の組成物とは異なる組成物を有し得る。利点は、より長い先端寿命を有するより良い溶接性(例えば、スポット溶接性)、ならびに改善された塗料接着性及び/または耐食性を含み得る。修正表面は、処理されていない表面を有する製品と比較して改善された濡れ性及び/または結合耐久性特性を有し得る。例えば、修正表面は、処理されていない表面と比較して改善された結合耐久性条件を呈し得る。
【0020】
定義及び説明
本明細書で使用される場合、「発明(invention)」、「発明(the invention)」、「本発明(this invention)」及び「本発明(the present invention)」という用語は、本特許出願のすべての主題及び以下の特許請求の範囲を広く指すことを意図している。これらの用語を含有する記述は、本明細書に記載の主題を限定するものではなく、また以下の特許請求の範囲の意味または範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0021】
本明細書において、「系」または「7xxx」などの、AA番号及び他の関連する記号によって識別される合金に対する言及がなされる。アルミニウム及びその合金の命名及び識別に最も一般的に使用される番号指定システムの理解に関しては、ともにThe Aluminum Associationによって出版されている、「International Alloy Designations and Chemical Composition Limits for Wrought Aluminum and Wrought Aluminum Alloys」または「Registration Record of Aluminum Association Alloy Designations and Chemical Compositions Limits for Aluminum Alloys in the Form of Castings and Ingot」を参照されたい。
【0022】
本明細書で使用される場合、プレートは、概して、約15mm超の厚さを有する。例えば、プレートは、約15mm超、約20mm超、約25mm超、約30mm超、約35mm超、約40mm超、約45mm超、約50mm超、または約100mm超の厚さを有するアルミニウム製品を指し得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、シェート(shate)(シートプレートとも称される)は、概して、約4mm~約15mmの厚さを有する。例えば、シェートは、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、約11mm、約12mm、約13mm、約14mm、または約15mmの厚さを有し得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、シートは、概して、約4mm未満の厚さを有するアルミニウム製品を指す。例えば、シートは、約4mm未満、約3mm未満、約2mm未満、約1mm未満、約0.5mm未満、または約0.3mm未満(例えば、約0.2mm未満)の厚さを有し得る。
【0025】
本出願では、合金の調質または条件への言及がなされてもよい。最も一般的に使用される合金調質の説明の理解に関しては、「American National Standards(ANSI)H35 on Alloy and Temper Designation Systems」を参照されたい。F条件または調質は、製造されたアルミニウム合金についての言及である。O条件または調質は、アニーリング後のアルミニウム合金についての言及である。本明細書でH質別とも称されるHxx調質または質別は、熱処理(例えば、焼きなまし)の有無にかかわらず、冷間圧延後の熱処理可能ではないアルミニウム合金を指す。好適なH質別には、HX1、HX2、HX3、HX4、HX5、HX6、HX7、HX8、またはHX9質別が含まれる。T1条件または調質は、熱間加工から冷却し、自然に(例えば、室温で)エージングさせたアルミニウム合金についての言及である。T2条件または調質は、熱間加工から冷却し、冷間加工し、自然にエージングさせたアルミニウム合金についての言及である。T3条件または調質は、溶体化処理し、冷間加工し、自然にエージングさせたアルミニウム合金についての言及である。T4条件または調質は、溶体化処理し、自然にエージングさせたアルミニウム合金についての言及である。T5条件または調質は、熱間加工から冷却し、人工的に(高温で)エージングさせたアルミニウム合金についての言及である。T6条件または調質は、溶体化処理し、人工的にエージングさせたアルミニウム合金についての言及である。T7条件または調質は、溶体化処理し、人工的に過剰にエージングさせたアルミニウム合金についての言及である。T8x条件または調質は、溶体化処理し、冷間加工し、人工的にエージングさせたアルミニウム合金についての言及である。T9条件または調質は、溶体化処理し、人工的にエージングさせ、冷間加工したアルミニウム合金についての言及である。W調質または質別とは、溶体化処理後のアルミニウム合金を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「鋳造金属製品」、「鋳造製品」、「鋳造アルミニウム合金製品」などの用語は、互換可能であり、直接チル鋳造(直接チル共鋳造を含む)または半連続鋳造、連続鋳造(例えば、双ベルト鋳造機、双ロール鋳造機、ブロック鋳造機、または他の任意の鋳造機の使用によるものを含む)、電磁鋳造、ホットトップ鋳造、または他の任意の鋳造法によって製造された製品を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「室温」の意味は、約15℃~約30℃の温度、例えば、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、または約30℃を含み得る。本明細書で使用される場合、「周囲条件」の意味は、ほぼ室温の温度、約20%~約100%の相対湿度、及び約975ミリバール(mbar)~約1050mbarの気圧を含み得る。例えば、相対湿度は、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%、またはそれらの間のいずれであり得る。例えば、気圧は、約975mbar、約980mbar、約985mbar、約990mbar、約995mbar、約1000mbar、約1005mbar、約1010mbar、約1015mbar、約1020mbar、約1025mbar、約1030mbar、約1035mbar、約1040mbar、約1045mbar、約1050mbar、またはそれらの間のいずれであり得る。
【0028】
本明細書に開示されるすべての範囲は、それらに包含されるありとあらゆる部分範囲を包含すると理解されるべきである。例えば、「1~10」と記載された範囲は、最小値1と最大値10との間の(及びそれらを含む)任意の及びすべての部分範囲、すなわち、最小値1以上、例えば、1~6.1で始まり、最大値10以下、例えば、5.5~10で終わるすべての部分範囲を含むとみなされるべきである。特に明記しない限り、元素の組成量を指す場合の「最大」という表現は、その元素が任意であり、その特定の元素のゼロパーセント組成を含むことを意味する。特に明記されていない限り、すべての組成割合は重量パーセント(wt%)である。
【0029】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、及び「the」の意味は、文脈が別段明らかに指示していない限り、単数及び複数の参照を含む。
【0030】
本明細書において、アルミニウム合金製品及びそれらの構成成分は、それらの元素組成に関して重量パーセント(wt%)で記載され得る。各合金において、全不純物の合計の最大重量%が0.15%であれば、残部はアルミニウムである。
【0031】
結晶粒微細化剤及び脱酸剤などの付随的元素、または他の添加剤は、本発明において存在してもよく、本明細書に記載の合金または本明細書に記載の合金の特徴から逸脱するかまたは著しく変わることなく、それら自体で他の特徴を追加し得る。
【0032】
材料または元素を含む不可避の不純物が、アルミニウム固有の特性または加工機器との接触からの溶出に起因して、合金中に少量存在する場合がある。記載されているように、いくつかの合金は、この合金の元素、付随の元素、及び避けられない不純物以外に約0.25重量%未満の任意の元素を含み得る。
【0033】
合金及びアルミニウム合金製品を製造する方法
本明細書に記載の合金は、当業者に既知の任意の好適な鋳造方法を使用して鋳造され得る。少しの非限定的な例として、鋳造プロセスには、直接チル(DC)鋳造プロセスまたは連続鋳造(CC)プロセスが含まれ得る。連続鋳造プロセスは、一対の可動対向鋳造面(例えば、可動対向ベルト、ロールまたはブロック)、一対の可動対向鋳造面間の鋳造キャビティ、及び溶融金属インジェクタを有する連続鋳造システムを含み得る。溶融金属インジェクタは、端部開口部を有し得、そこから溶融金属が溶融金属インジェクタから出て鋳造キャビティ内に注入され得る。
【0034】
鋳塊、鋳片、または他の鋳造製品は、任意の好適な手段によって加工されてもよい。任意選択的な加工工程としては、均質化、熱間圧延、冷間圧延、溶体化熱処理、及び任意の予備エージング工程が挙げられるが、これらに限定されない。鋳塊または他の鋳造製品などの鋳造アルミニウム合金製品は、当業者に既知の任意の手段によって加工され得る。任意選択的に、加工工程が使用されて、シートを調製し得る。
【0035】
本明細書に記載の鋳造製品は、シート形態、プレート形態、または他の好適な製品形態における製品を製造するために使用され得る。例えば、本明細書に記載の製品を含むプレートは、鋳塊を均質化工程で加工するか、または連続鋳造機で製品を鋳造し、その後の熱間圧延工程によって調製され得る。熱間圧延工程では、鋳造製品が200mm以下の標準寸法の厚さ(例えば、約10mm~約200mm)まで熱間圧延され得る。例えば、鋳造製品は、約10mm~約175mm、約15mm~約150mm、約20mm~約125mm、約25mm~約100mm、約30mm~約75mm、または約35mm~約50mmの最終的な標準寸法の厚さを有するプレートに熱間圧延され得る。いくつかの場合では、プレートをシートなどのより薄い金属製品に圧延する場合もある。
【0036】
図1は、金属合金製品の例示的な製造方法の概要を提供する。
図1の方法は工程105で始まり、105では、金属合金106が鋳造されて、鋳塊または他の鋳造製品などの鋳造金属合金製品107を作製する。任意選択的な工程110において、鋳造アルミニウム合金製品であり得る鋳造金属合金製品107は、均質化され、均質化金属合金製品111を生成する。工程115において、均質化金属合金製品111は、1つ以上の熱間圧延パス及び/または1つ以上の冷間圧延パスに供されて、圧延金属合金製品112を生成し、これは、アルミニウム合金プレート、アルミニウム合金シェート、またはアルミニウム合金シートなどのアルミニウム合金物品に対応し得る。任意選択的に、圧延金属合金製品112は、金属合金物品を形成するために、1つ以上の成形プロセスまたは打ち抜き加工プロセスに供される。
【0037】
アルミニウム合金であり得る本明細書に記載の金属または金属合金は、任意の好適な鋳造方法を使用して鋳造され得る。例示的な鋳造プロセスとしては、直接チル鋳造(直接チル共鋳造を含む)または半連続鋳造、連続鋳造(例えば、ツインベルト鋳造機、ツインロール鋳造機、ブロック鋳造機、またはその他任意の連続鋳造機の利用を含む)、電磁鋳造、ホットトップ鋳造、もしくはその他の鋳造方法が挙げられる。少しの非限定的な例として、鋳造プロセスには、直接チル(DC)鋳造プロセスまたは連続鋳造(CC)プロセスが含まれ得る。例えば、
図1は、105におけるDC鋳造プロセスの概略図を描写する。連続鋳造システムは、一対の可動対向鋳造面(例えば、可動対向ベルト、ロールまたはブロック)、一対の可動対向鋳造面間の鋳造キャビティ、及び溶融金属インジェクタを備え得る。溶融金属インジェクタは、端部開口部を有し得、そこから溶融金属が溶融金属インジェクタから出て鋳造キャビティ内に注入され得る。
【0038】
図2は、金属合金製品200を概略的に図示する。金属合金製品200は、例えば、プレート、シェート、またはシートであり得る。金属合金製品200は、圧延製品を含み得るか、またはそれに対応し得る。圧延製品は、鋳造プロセス及び/または金属合金製品200の塗布に応じて、冷間圧延製品または熱間圧延製品であり得る。金属合金製品200は、上記のように任意の好適な鋳造及び/または圧延プロセスによって製造され得る。実施形態では、圧延製品は、金属合金製品200の塗布に基づいて選択され得る幅及び厚さを有する、断面が比較的長方形であり得る。金属合金製品200は、例えば、プレート、シェート、またはシートの形態の圧延アルミニウム合金製品であり得る。
【0039】
圧延製品は、近接表面微細構造220及びバルク230を含み得る。圧延プロセスの間、圧延製品の一部分としての近接表面微細構造220の生成が発生し得る。近接表面微細構造220は、圧延製品の表面下層で生じ得、表面下層の一部分または実質的に全体を占め得る。「表面層」または「ビールビー層」としても知られる表面下層は、圧延製品の表面から圧延製品の厚さへの深さまでの空間を占める圧延製品の一部分を含み得る。実施形態では、圧延製品は、2つ以上の表面を含み得、及び/または2つ以上の表面下層を有し得る。そのような実施形態では、近接表面微細構造220は、各表面下層において生じ得る。例えば、圧延製品は、圧延製品の上部上の1つの表面と、圧延製品の底部上の1つの表面との2つの表面が生成されるような厚さを有し得、各表面は互いとは直接反対である。圧延製品の側面の周りに円周方向に延在する圧延製品の他の4つの側面は、表面下層を生成するのに十分な厚さではない場合があり、及び/または少なくとも上面及び底面と同じ程度ではないが、近接表面微細構造を生成するのに十分な圧延プロセスに供されない場合がある。そのような例では、2つの表面の各々は、対応する表面下層を有し得る。対応する表面下層の各々において、近接表面微細構造220が存在し得る。したがって、様々な実施形態では、圧延製品は、複数の表面上に、または表面上の複数の領域に、近接表面微細構造220を有し得る。
【0040】
実施形態では、近接表面微細構造220は、表面下層全体を占有し得るが、いくつかの場合では、近接表面微細構造220は、表面下層の一部分のみを占有し得る。近接表面微細構造220は、圧延製品の表面から製品内の深さまでの空間をバルク230まで占有し得る。近接表面微細構造体220の金属合金製品200への深さは、200nm~400nm、300nm~500nm、400nm~600nm、200nm~600nm、500nm~700nm、500nm~800nm、200nm~800nm、800nm~1μm、1μm~5μm、5μm~10μm、10μm~15μm、15μm~20μm、200nm~20μmの範囲またはその部分範囲である可能性がある。
【0041】
境界225は、近接表面微細構造220とバルク230との間に存在し得る。境界225は、金属合金製品200の組成物がバルク組成物とも称されるバルク230の組成物に移行する深さを示し得る。境界225は、近接表面微細構造220が金属合金製品200内に存在する深さに存在し得る。境界225は、金属合金製品200の表面に平行または概ね平行に延在し、金属合金製品200の幅全体にわたって延在し得るが、そうである必要はない。いくつかの実施形態では、境界225は、離散的な深さで生じ得るか、または深さの範囲にわたって生じ得る。実施形態では、境界225は、近接表面微細構造220とバルク230との間の粒界であってもよく、それに生じてもよく、または粒界を表してもよい。粒界は、2つの異なる粒構造の間を画定する境界であってもよく、一方は、近接表面微細構造220の境界に対応し、他方は、バルク230に対応する。例えば、近接表面粒構造220は、大小両方の粒径の不均一な分布などの非均質な粒構造を有し得る。対照的に、バルク230は、粒径の均一な分布などの均質な(例えば、均等に分布した)粒構造を有してもよく、これは大きくても小さくてもよい。そのような実施例では、境界225は、近接表面微細構造220の非均質な粒構造と、バルク230の均質な粒構造との間の粒界であり得る。実施形態では、バルク230は、合金及び加工履歴に応じて、金属合金製品200内の10μm~45μmの表面からの深さで生じ得る。いくつかの場合では、均質な粒構造は、バルク230の任意の所与の体積の特定の割合が、同じまたはほぼ同じ粒径を有し得ることを意味し得る。例えば、均質な粒構造は、バルク230の任意の所与の体積の約70%以上が、5nm~200nmの範囲内の平均粒径などのほぼ同じ粒径を有することを意味し得る。異なる粒構造の均質性は、
図2及び他の図面上で、近接表面微細構造220及びバルク230についての異なる充填パターンによって示され得る。
【0042】
近接表面微細構造220は、バルクの組成物とは異なる組成物を有し得る。例えば、近接表面微細構造220の組成物は、1つ以上の欠陥240a~240g(まとめて、欠陥240)を含み得る。1つ以上の欠陥240は、アルミニウム合金製品212の機械的及び/または化学的性能に影響を与え得る。例えば、1つ以上の欠陥240は、アルミニウム合金製品212の腐食感受性を増加させ、結合耐久性性能を低下させ、及び/または引張強度及びせん断強度を低減し得る。
【0043】
図2に図示されるように、1つ以上の欠陥240は、様々な欠陥を含み得る。例えば、欠陥240は、1つ以上の内部亀裂240aまたは表面亀裂240dを含み得る。内部亀裂240a及び表面亀裂240dは、移送亀裂、裂け目、及び微小亀裂を含み得る。内部亀裂240a及び表面亀裂240dは、圧延プロセス中に圧延製品に加えられる応力またはひずみ条件、例えば、ローラーによって圧延製品に加えられる垂直せん断応力に起因して生じ得る。
図2に図示されるように、表面亀裂240dは、近接表面微細構造220の表面で生じ得、不均一または不規則な表面をもたらす。対照的に、内部亀裂240aは、近接表面微細構造220内で生じ得る。実施形態では、内部亀裂240aは、近接表面微細構造220を通して水平に、近接表面微細構造220の表面に平行に、または近接表面微細構造220の表面に対して任意の他の方向に延在し得る。
【0044】
実施形態では、ボイド240bは、内部亀裂240a及び表面亀裂240dの発生を誘発し得る。ボイド240bなどの欠陥240によって生成された弱い部位は、亀裂開始のためのより活性な部位を提供し得る。ボイド240bは、任意の材料が空である近接表面微細構造220内の空間を含んでもよく、またはそれからなってもよい。任意の材料の不在は、加工中に近接表面微細構造220内に蒸気が組み込まれた結果であり得るか、または圧延製品材料の機械的構造及び/または粒組成物の結果であり得る。
【0045】
1つ以上の欠陥240はまた、圧入材料240cを含み得る。圧入材料240cは、例えば、圧入酸化物及び/または圧入油などのホットミルピックアップを含み得る。圧入材料240cは、圧延プロセス中に近接表面微細構造220内に組み込まれた閉じ込められた酸化物及び潤滑剤を含み、ならびに任意選択的に他の圧入不純物を含み得る。例えば、圧延潤滑剤は、圧延製品212の圧延中に近接表面微細構造220に組み込まれ得る。近接表面微細構造220内に閉じ込められた非晶質炭素及び/または炭化アルミニウムは、圧入潤滑剤を示し得るか、またはそれに対応し得る。圧入酸化物は、例えば、酸化アルミニウムまたは酸化マグネシウムなどの金属酸化物を含み得る。金属酸化物は、圧延製品の表面またはその近くの金属元素が加工中に酸化され、次いで圧延製品内に組み込まれるときに、生成され得る。圧入材料240cはまた、金属合金製品200の表面または接触面(例えば、ローラー表面)上に存在するか、またはそれの上に堆積し、熱間圧延または冷間圧延中などの近接表面微細構造220内に組み込まれ得る、粉塵、汚れ、水、有機物、無機物、または他の材料などの他の汚染物質を含み得る。
【0046】
境界225の近くにボイド240b及び/または圧入材料240cが存在すると、亀裂の伝播が誘発され得る。ボイド240b及び圧入材料240cなどの境界225における弱いスポットは、近接表面微細構造220とバルク230との間に亀裂伝播経路を提供し得る。欠陥の間のそのようなパスは、優先的な亀裂伝播パスであり得るため、任意の応力条件は、近接表面微細構造220とバルク230との間の内部亀裂240aの生成を誘発し得る。応力曝露は、バルク230からの近接表面微細構造220の部分的または完全なせん断をもたらし得る。さらに、任意の内部亀裂240aは、さらなる亀裂の核となり得る。したがって、欠陥240の存在は、近接表面微細構造220内、場合によってはバルク230内に欠陥生成の損傷的な連鎖反応を生成する可能性を有する。
【0047】
実施形態では、バルク230は、本明細書で「バルク組成物」と称される組成物を有し得、これは、主にアルミニウム及び合金元素250を含み得る。アルミニウム合金製品200の非限定的な例の例示的な合金元素250は、亜鉛、マグネシウム、銅、クロム、ケイ素、鉄、及び/またはマンガンを含んでもよく、特定の合金に依存するか、またはそれを定義してもよい。
図2に図示されるように、合金元素250は、バルク230内で均質に(例えば、等しく)空間的に分布し得る。
図2に描写される合金元素250の均質な分布は、合金元素250の配列が生じること、または合金元素250が材料の粒子または凝集体として存在することを意味しない、または必要としない場合がある。むしろ、
図2に示される合金元素250の分布は、全体に均質に分布した合金元素を有するアルミニウムの固溶体を表すなど、合金元素250の均質な分布の概略図であることを意味する。合金元素250の均質な分布は、バルク組成物の任意の所与の体積の特定の割合が、同じ体積の任意の他の試料と同じまたは実質的に同じ量の合金元素250を含有し得ることを意味し得る。
【0048】
様々な実施形態では、欠陥240のうちの1つは、合金元素250の非均質な分布を含み得る。合金元素250の高密度集団240eは、鋳造及び/または圧延プロセス中に近接表面微細構造220内で生じ得る。合金元素250のいくつかは、互いに異なる拡散係数を示し得、異なる合金元素について異なる拡散速度をもたらす。すなわち、合金元素250のいくつかは、別の合金元素250とは異なる速度で拡散し得る。したがって、圧延製品の鋳造及び/または圧延の間、特定の合金要素は、バルク230内に存在する他の要素よりも速い速度で、バルク230から表面に、または近接表面微細構造220内に拡散し得る。特定の合金元素250のより速い拡散速度は、近接表面微細構造220内に合金元素250の不等分布を生成し得る。例えば、いくつかの実施形態では、亜鉛は、他の合金元素よりも加工条件下でより高い拡散速度を有し得るため、亜鉛の高密度集団240eは、近接表面微細構造220内で生じ得る。再び、
図2に示される高密度集団240eは、単なる画像表現であり、図示されるように、合金元素250の高密度集団を合金元素のクラスターに限定しないことが理解されるであろうが、いくつかの場合では、合金元素250のクラスターが存在し得る。むしろ、近接表面微細構造220内の高密度集団240eの存在は、近接表面微細構造220内の合金元素の濃度が、平均して、バルク230とは異なる(例えば、より高い)ことを示し得る。
【0049】
合金元素の非均質な分布、ならびに他の欠陥240は、金属合金製品212の化学的性能に影響を与え得る。例えば、近接表面微細構造220内の欠陥240の存在は、不完全な被覆またはパッチ状の前処理用途を引き起こし得る。欠陥240はまた、欠陥240としてのエッチング前処理を妨げ得、合金元素250の非均質分布は、エッチングプロセスのための不整合媒体をもたらし得る。
【0050】
高密度集団240eはまた、または代替的に、金属合金製品212の腐食感受性を増加させ得る。表面またはその近くで、合金元素250の拡散速度は、低い活性化エネルギー、ならびに他の欠陥240の存在により、1または2倍増加し得る。したがって、高密度集団240eは、腐食を開始する可能性を有する近接表面微細構造220内の反応性ポケットまたは領域を伝播し得る。特定のアルミニウム合金は、合金元素250の高密度集団240eのため、腐食感受性の影響を受けやすい場合がある。例えば、7xxxシリーズアルミニウム合金は、それらのより高い合金元素250組成物のために、高密度集団240eの生成により影響を受けやすい場合がある。他のアルミニウム合金シリーズは、3~4%の合金元素を含んでもよいが、7xxxシリーズのアルミニウム合金は、例えば、10%を超える合金元素を含んでもよい。
【0051】
1つ以上の欠陥240はまた、金属間粒子240fを含み得る。鋳造プロセス中、鉄(Fe)及びマンガン(Mn)を含有するアルミニウム合金製品は、アルミニウムと鉄またはマンガンのうちの1つ以上とを含む金属間粒子240fを生成してもよく、これは、例えば、圧延アルミニウム合金製品212について、本明細書ではAl-(Fe,Mn)金属間粒子またはβ相金属間粒子と称されてもよい。ケイ素(Si)が存在する場合、アルミニウム、ケイ素、及び本明細書でAl-(Fe、Mn)-Si金属間粒子またはα相金属間粒子とも称される鉄またはマンガンのうちの1つ以上を含む金属間粒子も生成され得る。いくつかの量の鉄及びケイ素は、一般に、ほとんどすべてのアルミニウム合金中に存在するため、多くのアルミニウム合金は、鋳造時にそのような金属間粒子を含み得る。
【0052】
これらの粒子の種類の各々は、異なる特性を呈し、アルミニウム合金の構造に異なる方法で寄与する。例えば、β相粒子は、α相粒子よりも大きく、よりブロック状または幾何学的である傾向があり、一方、α相粒子は、一般に、β相粒子よりも硬く、より小さい傾向がある。熱間圧延及び冷間圧延中、金属間粒子は、破損し得、例えば、それらのサイズ、分布、及び数密度に影響を与え得る。
【0053】
鋳造アルミニウム合金製品中の金属間粒子の存在は、有益であり得る。例えば、金属間粒子を含むアルミニウム合金は、金属間粒子がアルミニウム合金製品の他の部分よりも著しく硬い可能性があるため、アルミニウム飲料容器を生成するのに有益であり得る。引抜き、アイロン掛け、ネッキングの間、硬質金属間粒子は、ダイ表面の洗浄に寄与することにより、摩損を低減することができる。例えば、金属間粒子は、図面、アイロン掛け、及びネッキングダイを研磨し、ダイ表面に蓄積された金属を低減または除去し得る。他の金属合金製品では、近接表面微細構造220内に金属間粒子240fを有しないことが所望される場合がある。
【0054】
1つ以上の欠陥240はまた、有機物、油、ならびに炭化水素及び他の汚染物質240gを含み得る。鋳造プロセス及び/または圧延プロセスの間、有機物、油、及び炭化水素、及び他の汚染物質240gは、
図2に示される近接表面微細構造220、及び/またはバルク230に導入され得る。これは、金属合金製品200を製造することと関連付けられたプロセスで一般的に使用される潤滑剤に起因する。金属合金製品では、有機物、油、ならびに炭化水素及び他の汚染物質240gを、近接表面微細構造220内に有しないことが所望される場合がある。
【0055】
欠陥240の存在は、アルミニウム合金製品がエポキシ接着剤などの接着剤を使用して別の製品または材料に結合される場合などの、不良な接着性能に寄与し得る。結合耐久性試験は、結合製品間で生成される結合の強度を評価し、アルミニウム合金製品の近接表面微細構造が、長期間の使用、及びそうでなければ周囲条件とは異なる腐食条件または条件下で、接着剤と強く結合する能力を示し得る。試験中、エポキシ接着剤などにより、2つのアルミニウム合金製品の間に結合が生成される。次いで、結合されたアルミニウム合金製品は、ひずみ及び/または他の条件に供される。例えば、結合されたアルミニウム合金製品は、湿潤条件または乾燥条件下で、塩溶液中に浸漬され得る。1つ以上の条件における一連のサイクルの後、アルミニウム合金製品間の結合は、化学的及び機械的故障について評価される。アルミニウム合金製品の結合耐久性性能は、製品の近接表面微細構造の反応性及び腐食感受性を示すか、またはその関数であり得る。
【0056】
開示されたアルミニウム合金製品の使用方法
本明細書に記載されているアルミニウム合金製品は、自動車の用途や他の航空機、鉄道などの用途といった輸送の用途に使用され得る。例えば、開示されたアルミニウム合金製品を使用して、バンパー、サイドビーム、ルーフビーム、クロスビーム、ピラー補強材(例えば、Aピラー、Bピラー、及びCピラー)、インナーパネル、アウターパネル(外板)、サイドパネル(横板)、インナーフード、アウターフード、またはトランクリッドパネルなどの形成された金属製品及び自動車構造部品を作ってもよい。本明細書に記載のアルミニウム合金製品及び方法は、航空機または鉄道車両の用途にも、例えば、外部及び内部パネルを作るためにも使用され得る。
【0057】
本明細書に記載されているアルミニウム合金製品及び方法は、電子機器の用途にも使用され得る。例えば、本明細書に記載されているアルミニウム合金製品及び方法は、携帯電話及びタブレットコンピュータを含む電子デバイス用のハウジングを作るために使用され得る。いくつかの例では、アルミニウム合金製品は、携帯電話(例えば、スマートフォン)のアウターケーシング用のハウジング、タブレットボトムシャーシ、及び他の携帯電子機器を作るために使用されてもよい。
【0058】
本明細書に記載のアルミニウム合金製品及び方法は、任意の他の所望の用途に使用され得る。
【0059】
金属及び金属合金の処理方法
本明細書に記載されているのは、とりわけアルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、マグネシウム複合材料、及び鋼を含む金属及び金属合金を処理する方法、ならびに結果として処理される金属及び金属合金である。いくつかの例では、本明細書に記載の方法における使用のための金属としては、アルミニウム合金、例えば、1xxxシリーズのアルミニウム合金、2xxxシリーズのアルミニウム合金、3xxxシリーズのアルミニウム合金、4xxxシリーズのアルミニウム合金、5xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、7xxxシリーズのアルミニウム合金、または8xxxシリーズのアルミニウム合金が挙げられる。いくつかの実施例において、本明細書に記載の方法で使用するための材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウムベースの材料、マグネシウム合金、マグネシウム複合材料、チタン、チタンベースの材料、チタン合金、銅、銅ベースの材料、複合材料、複合材料で使用されるシート、または任意の他の好適な金属、非金属、もしくは材料の組み合わせを含む非鉄材料が挙げられる。モノリシック材料、ならびに非モノリシック材料、例えば、ロールボンド材料、クラッド合金、クラッド層、複合材料(例えば、限定されないが、炭素繊維含有材料など)、または他の様々な材料もまた、本明細書に記載の方法で有用である。いくつかの実施例において、鉄を含有するアルミニウム合金は、本明細書に記載の方法で有用である。
【0060】
非限定的な例として、本明細書に記載される方法における使用のための例示的な1xxxシリーズのアルミニウム合金としては、AA1100、AA1100A、AA1200、AA1200A、AA1300、AA1110、AA1120、AA1230、AA1230A、AA1235、AA1435、AA1145、AA1345、AA1445、AA1150、AA1350、AA1350A、AA1450、AA1370、AA1275、AA1185、AA1285、AA1385、AA1188、AA1190、AA1290、AA1193、AA1198、またはAA1199を挙げることができる。
【0061】
本明細書に記載の方法で使用するための非限定的な例示的な2xxxシリーズアルミニウム合金としては、AA2001、A2002、AA2004、AA2005、AA2006、AA2007、AA2007A、AA2007B、AA2008、AA2009、AA2010、AA2011、AA2011A、AA2111、AA2111A、AA2111B、AA2012、AA2013、AA2014、AA2014A、AA2214、AA2015、AA2016、AA2017、AA2017A、AA2117、AA2018、AA2218、AA2618、AA2618A、AA2219、AA2319、AA2419、AA2519、AA2021、AA2022、AA2023、AA2024、AA2024A、AA2124、AA2224、AA2224A、AA2324、AA2424、AA2524、AA2624、AA2724、AA2824、AA2025、AA2026、AA2027、AA2028、AA2028A、AA2028B、AA2028C、AA2029、AA2030、AA2031、AA2032、AA2034、AA2036、AA2037、AA2038、AA2039、AA2139、AA2040、AA2041、AA2044、AA2045、AA2050、AA2055、AA2056、AA2060、AA2065、AA2070、AA2076、AA2090、AA2091、AA2094、AA2095、AA2195、AA2295、AA2196、AA2296、AA2097、AA2197、AA2297、AA2397、AA2098、AA2198、AA2099,またはAA2199が挙げられる。
【0062】
本明細書に記載される方法における使用のための非限定的な例示的な3xxxシリーズのアルミニウム合金としては、AA3002、AA3102、AA3003、AA3103、AA3103A、AA3103B、AA3203、AA3403、AA3004、AA3004A、AA3104、AA3204、AA3304、AA3005、AA3005A、AA3105、AA3105A、AA3105B、AA3007、AA3107、AA3207、AA3207A、AA3307、AA3009、AA3010、AA3110、AA3011、AA3012、AA3012A、AA3013、AA3014、AA3015、AA3016、AA3017、AA3019、AA3020、AA3021、AA3025、AA3026、AA3030、AA3130、またはAA3065が挙げられる。
【0063】
本明細書に記載される方法での使用のための非限定的な例示的な4xxxシリーズのアルミニウム合金としては、AA4004、AA4104、AA4006、AA4007、AA4008、AA4009、AA4010、AA4013、AA4014、AA4015、AA4015A、AA4115、AA4016、AA4017、AA4018、AA4019、AA4020、AA4021、AA4026、AA4032、AA4043、AA4043A、AA4143、AA4343、AA4643、AA4943、AA4044、AA4045、AA4145、AA4145A、AA4046、AA4047、AA4047A、またはAA4147が挙げられる。
【0064】
本明細書に記載される方法での使用のための非限定的な例示的な5xxxシリーズのアルミニウム合金としては、AA5182、AA5183、AA5005、AA5005A、AA5205、AA5305、AA5505、AA5605、AA5006、AA5106、AA5010、AA5110、AA5110A、AA5210、AA5310、AA5016、AA5017、AA5018、AA5018A、AA5019、AA5019A、AA5119、AA5119A、AA5021、AA5022、AA5023、AA5024、AA5026、AA5027、AA5028、AA5040、AA5140、AA5041、AA5042、AA5043、AA5049、AA5149、AA5249、AA5349、AA5449、AA5449A、AA5050、AA5050A、AA5050C、AA5150、AA5051、AA5051A、AA5151、AA5251、AA5251A、AA5351、AA5451、AA5052、AA5252、AA5352、AA5154、AA5154A、AA5154B、AA5154C、AA5254、AA5354、AA5454、AA5554、AA5654、AA5654A、AA5754、AA5854、AA5954、AA5056、AA5356、AA5356A、AA5456、AA5456A、AA5456B、AA5556、AA5556A、AA5556B、AA5556C、AA5257、AA5457、AA5557、AA5657、AA5058、AA5059、AA5070、AA5180、AA5180A、AA5082、AA5182、AA5083、AA5183、AA5183A、AA5283、AA5283A、AA5283B、AA5383、AA5483、AA5086、AA5186、AA5087、AA5187、またはAA5088が挙げられる。
【0065】
本明細書に記載の方法で使用するための非限定的な例示的な6xxxシリーズのアルミニウム合金としては、AA6101、AA6101A、AA6101B、AA6201、AA6201A、AA6401、AA6501、AA6002、AA6003、AA6103、AA6005、AA6005A、AA6005B、AA6005C、AA6105、AA6205、AA6305、AA6006、AA6106、AA6206、AA6306、AA6008、AA6009、AA6010、AA6110、AA6110A、AA6011、AA6111、AA6012、AA6012A、AA6013、AA6113、AA6014、AA6015、AA6016、AA6016A、AA6116、AA6018、AA6019、AA6020、AA6021、AA6022、AA6023、AA6024、AA6025、AA6026、AA6027、AA6028、AA6031、AA6032、AA6033、AA6040、AA6041、AA6042、AA6043、AA6151、AA6351、AA6351A、AA6451、AA6951、AA6053、AA6055、AA6056、AA6156、AA6060、AA6160、AA6260、AA6360、AA6460、AA6460B、AA6560、AA6660、AA6061、AA6061A、AA6261、AA6361、AA6162、AA6262、AA6262A、AA6063、AA6063A、AA6463、AA6463A、AA6763、A6963、AA6064、AA6064A、AA6065、AA6066、AA6068、AA6069、AA6070、AA6081、AA6181、AA6181A、AA6082、AA6082A、AA6182、AA6091、またはAA6092が挙げられる。
【0066】
本明細書に記載の方法で使用するための非限定的な例示的7xxx系アルミニウム合金としては、AA7011、AA7019、AA7020、AA7021、AA7039、AA7072、AA7075、AA7085、AA7108、AA7108A、AA7015、AA7017、AA7018、AA7019A、AA7024、AA7025、AA7028、AA7030、AA7031、AA7033、AA7035、AA7035A、AA7046、AA7046A、AA7003、AA7004、AA7005、AA7009、AA7010、AA7011、AA7012、AA7014、AA7016、AA7116、AA7122、AA7023、AA7026、AA7029、AA7129、AA7229、AA7032、AA7033、AA7034、AA7036、AA7136、AA7037、AA7040、AA7140、AA7041、AA7049、AA7049A、AA7149,7204、AA7249、AA7349、AA7449、AA7050、AA7050A、AA7150、AA7250、AA7055、AA7155、AA7255、AA7056、AA7060、AA7064、AA7065、AA7068、AA7168、AA7175、AA7475、AA7076、AA7178、AA7278、AA7278A、AA7081、AA7181、AA7185、AA7090、AA7093、AA7095、またはAA7099を挙げることができる。
【0067】
本明細書に記載される方法における使用のための非限定的な例示的な8xxxシリーズのアルミニウム合金としては、AA8005、AA8006、AA8007、AA8008、AA8010、AA8011、AA8011A、AA8111、AA8211、AA8112、AA8014、AA8015、AA8016、AA8017、AA8018、AA8019、AA8021、AA8021A、AA8021B、AA8022、AA8023、AA8024、AA8025、AA8026、AA8030、AA8130、AA8040、AA8050、AA8150、AA8076、AA8076A、AA8176、AA8077、AA8177、AA8079、AA8090、AA8091、またはAA8093を挙げることができる。
【0068】
本開示による方法は、化学的またはウェットエッチング技術、変換コーティング、乾燥洗浄プロセス(マイクロブラスト、マクロブラスト、二酸化炭素ドライアイス衝撃及びブラスト、またはこれらの任意の組み合わせなどの任意の機械的表面調製を含む)などの標準技術を使用することなく、表面上に存在する近接表面微細構造を除去または変更するように、アルミニウム合金製品の表面を修正する。有利には、開示された方法は、使用のために洗浄及び/または活性化されたように修正され、かつ良好なコーティング堆積及び接着性、塗料接着性、高耐久性接着剤結合などを呈する、アルミニウム合金製品上に表面を生成し得る。さらに、開示される方法は、化学的エッチング、洗浄、及び/または変換コーティングに一般的に使用される湿潤切片を使用することなく、そのような条件を達成し得、アルミニウム合金製品加工を簡略化することを可能にし、また、望ましくない、高価な、及び/またはいくつかの場合において、有害もしくは有毒な化学物質の使用を低減または排除することを可能にし得る。いくつかの場合では、化学的エッチング、洗浄、機械的表面調製、及び/または変換コーティングのために一般的に使用される湿潤切片が依然として利用され得る。いくつかの場合では、乾燥加工または化学的前処理なしの技術のみが利用される。
【0069】
図3A~
図3Cは、金属合金基板300上に存在する近接表面微細構造を修正する方法を図示する。基板300は、圧延アルミニウム合金製品などの、上述の金属合金製品であり得る。
図3では、基板300は、
図2と同様に、それぞれ近接表面微細構造220及びバルク230について説明されているように、近接表面微細構造320及びバルク微細構造330を有する。近接表面微細構造320は、処理されていない表面305を含む。処理されていない表面は、化学的またはウェットエッチング技術、機械的表面調製技術、及び/または前処理(例えば、変換コーティング)技術を含むがこれらに限定されない、いかなる表面処理または修正も受けていない圧延表面に対応し得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの表面305、またはいくつかの露出した表面、または基板300の露出した表面のすべては、処理されていない。基板300の近接表面微細構造320は、
図2に関して説明した欠陥240a~240gと同様に、
図3Aに示される欠陥340a~340gのうちの少なくともいくつかを含む。
【0070】
図3Bに示されるように、高エネルギーのビーム355は、(
図3Aの)処理されていない表面305上に誘導されて、表面305を物理的に修正し、欠陥340の少なくともいくつかを欠いている洗浄された表面306を提供する。実施形態では、洗浄された表面306は、依然として近接表面微細構造321を含んでもよいが、欠陥340を実質的に欠いていてもよい。具体的には、洗浄された表面306は、例えば、有機物、油、及び炭化水素340gを実質的に欠いていてもよい。
【0071】
図3Aの近接表面微細構造体320は、厚さt
1を有する。
図3Bの近接表面微細構造体321は、厚さt
2を有する。高エネルギー355のビームは、近接表面微細構造320の少なくとも一部分を除去し得る。言い換えれば、処理されていない表面305上に高エネルギーのビーム355を誘導した後、洗浄面306と関連付けられた近接表面微細構造321の厚さt
2は、処理されていない表面305と関連付けられた近接表面微細構造320の厚さt
1と比較して低減され得る。
【0072】
高エネルギーのビーム355は、(
図3Bの)洗浄された表面306上に誘導されて、表面をさらに修正し、
図3Cに示されるように、テクスチャ化された表面307を提供し得る。
図3Cのテクスチャ加工された表面307とともに、近接表面微細構造322は、厚さt
3を有する。洗浄された表面306上に高エネルギーのビーム355を誘導した後、テクスチャ化された表面307と関連付けられた近接表面微細構造322の厚さt
3は、洗浄された表面306と関連付けられた近接表面微細構造321の厚さt
2と比較してさらに低減され得る。任意選択的に、近接表面微細構造322は、ゼロの厚さt
3を提供するように、完全に除去または修正され得、これによって、バルク330は、上面として露出され得、テクスチャ化された表面307を含むか、またはそれと関連付けられ得る。いくつかの実施形態では、厚さt
3≦厚さt
2≦厚さt
1である。テクスチャ加工された表面307は、メッシュ、ストライプ、波線、ピット溝、テクスチャ要素の表面粗さ、またはそれら組み合わせのうちの少なくとも1つを含み得る。テクスチャ加工面307を修正/最適化するための変数は、スポットサイズ、オーバーラップ、ビームエネルギー、ラスターパターン、ラスター速度、及びパルス周波数などのレーザーパラメータを含み得る。テクスチャは、Sa(3D表面粗さ測定)、Sdr(実際の展開された表面の面積と、投影された表面積または展開された界面面積比との比率として定義される複雑さ)、Spk(3D表面ピーク高さ測定)、Spcピークカウント、SvまたはSz(テクスチャ化の深さ)、歪みなどによって定義され得る。
【0073】
有利には、表面305を修正して、高エネルギーのビーム355への曝露によって、洗浄された表面306またはテクスチャ加工された表面307を生成することは、表面の濡れ性特性を、比較的濡れ性の低いものから、比較的濡れ性の高いものに変化させ得る。追加的または代替的に、表面305を修正して、高エネルギーのビーム355への曝露によって、洗浄された表面306またはテクスチャ加工された表面307を生成することは、比較的弱い結合から比較的強い結合への接着剤の表面への結合を強化し得る。追加的または代替的に、表面305を修正して、高エネルギーのビーム355への曝露によって、洗浄された表面306またはテクスチャ加工された表面307を生成することは、表面の腐食電位を、比較的より腐食性の高い活性レベルから、比較的腐食性の低い活性レベルまで減少させ得る。追加的または代替的に、表面305を修正して、高エネルギーのビーム355への曝露によって、洗浄された表面306またはテクスチャ加工された表面307を生成することは、表面の腐食電位を、比較的高い腐食電位から比較的低い腐食電位に低減させ得る。追加的または代替的に、表面305を修正して、高エネルギーのビーム355への曝露によって、洗浄された表面306またはテクスチャ加工された表面307を生成することは、表面と別の製品との間の結合の結合耐久性を、比較的小さい結合耐久性から、比較的大きいまたはより高い性能の結合耐久性に変化させ得る。実施形態では、
図3Cのようなテクスチャ加工された表面307は、少なくとも35サイクル、または少なくとも40サイクル、または少なくとも45サイクル、または少なくとも50サイクル、または少なくとも55サイクル、または少なくとも60サイクル、または少なくとも65サイクル、または少なくとも70サイクル、または少なくとも75サイクル、または少なくとも80サイクル、または少なくとも85サイクル、または少なくとも90サイクル、または少なくとも95サイクル、または少なくとも100サイクル、または少なくとも105サイクル、または少なくとも110サイクル、または少なくとも115サイクル、または少なくとも120サイクル、または少なくとも125サイクル、またはそれ以上の結合耐久性を、例えば、FLTM BV 101-07標準試験または他の標準試験に従って呈し得る。
【0074】
基板300としては、使用する特定の合金または金属に応じて、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウムベースの材料、マグネシウム合金、マグネシウム複合材料、チタン、チタンベースの材料、チタン合金、銅、銅ベースの材料、複合材料、複合材料で使用されるシート、または任意の他の好適な金属、非金属、もしくは材料の組み合わせを含む非鉄材料が挙げられる。いくつかの実施形態では、基板300は、アルミニウム合金、マグネシウム合金、マグネシウム複合材、鋼、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、基板400はアルミニウム合金である。有用なアルミニウム合金としては、例えば、1xxxシリーズアルミニウム合金、2xxxシリーズアルミニウム合金、3xxxシリーズアルミニウム合金、4xxxシリーズアルミニウム合金、5xxxシリーズアルミニウム合金、6xxxシリーズアルミニウム合金、7xxxシリーズアルミニウム合金、または8xxxシリーズアルミニウム合金などの先に詳述されたもののうちのいずれかが挙げられる。
【0075】
図3B及び3Cのように、高エネルギーのビーム355は、レーザーによって提供され得る。レーザーは、連続レーザー、パルスレーザー、ナノ秒パルスレーザー、ピコ秒パルスレーザー、及び/またはフェムト秒パルスレーザーから選択される少なくとも1つであってもよい。レーザーは、イッテルビウム、Nd-YAG、CO
2、またはエキシマーから選択される少なくとも1つであるか、または所望のエネルギー密度を提供する任意の好適なレーザーであることができる。
【0076】
図3B及び
図3Cのように、高エネルギーのビーム355は、例えば、10mJ/mm
2~150mJ/mm
2のエネルギー密度を有し得る。エネルギー密度は、エネルギー密度は、任意選択的に、10mJ/mm
2~30mJ/mm
2、20mJ/mm
2~40mJ/mm
2、30mJ/mm
2~50mJ/mm
2、40mJ/mm
2~60mJ/mm
2、50mJ/mm
2~70mJ/mm
2、60mJ/mm
2~80mJ/mm
2、70mJ/mm
2~90mJ/mm
2、80mJ/mm
2~100mJ/mm
2、90mJ/mm
2~110mJ/mm
2、100mJ/mm
2~120mJ/mm
2、110mJ/mm
2~130mJ/mm
2、120mJ/mm
2~140mJ/mm
2、130mJ/mm
2~150mJ/mm
2の範囲またはその部分範囲である可能性がある。
【0077】
表面と、水、液体接着剤、または有機もしくは無機潤滑剤などの液体との間の接触角が決定されてもよく、任意選択的に、表面を処理するために、例えば、濡れ性を評価するために使用されるエネルギーのビームのエネルギー密度に基づいて変動してもよい。本明細書で言及される接触角は、概して、表面との水の接触角に関して表される。いくつかの場合では、接触角は、高エネルギーのビームのエネルギー密度の増加に伴って、元の表面に対して減少する。例えば、元の基板は、約75度の接触角を有し得、この角度は、表面がレーザー光などの高エネルギーのビームへの曝露によって処理されるにつれて減少し得る。低い接触角は、改善された表面濡れ性を反映し、また、修正表面を別の基板または製品と結合するための結合耐久性特徴の改善を反映し得る。実施形態では、高エネルギーのビームのエネルギー密度は、高エネルギーのビームに曝露したときの表面の接触角を低減するのに十分である。いくつかの実施形態では、修正表面の接触角は、最大で20度、最大で15度、または最大で10度である。いくつかの実施形態では、テクスチャ加工された表面の接触角は、最大で20度、最大で15度、または最大で10度である。任意選択的に、水滴と表面との接触角は、0度~20度、例えば、0度~5度、0度~10度、0度~15度、5度~10度、5度~15度、5度~20度、10度~15度、10度~20度、15度~20度、またはそれらの間のいずれかであってもよい。
【0078】
本開示による別の方法は、化学的またはウェットエッチング技術、機械的表面調製技術、及び/または変換コーティングを使用することなく、近接表面微細構造を修正する。
図4A~
図4Cは、近接表面微細構造を修正する方法を図示する。
図4Aに示されるように、金属合金基板400が提供される。基板400は、アルミニウム合金製品などの、前述の金属合金製品であり得る。基板400は、
図2及び
図3Aに関して同様に説明されるように、近接表面微細構造420及びバルク微細構造430を有する。近接表面微細構造420は、処理されていない表面405を含む。処理されていない表面405は、化学的またはウェットエッチング技術、機械的表面調製技術、及び/または変換コーティングを含むがこれらに限定されない、いかなる表面処理または修正も受けていない。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの表面405、またはいくつかの露出した表面、または基板400の露出した表面のすべては、処理されていない。基板400の近接表面微細構造420は、
図2に関して説明した欠陥240a~240gと同様に、
図4Aに示される欠陥440a~440gのうちの少なくともいくつかを含む。
図4Aに示されるように、近接表面微細構造420は、欠陥440を含む。欠陥440は、複数の金属酸化物440c、複数の金属間粒子440f、ならびに有機物、油、及び炭化水素440gを含む、圧入材料を含む。欠陥440はまた、内部亀裂440a、ボイド440b、表面亀裂440d、及び合金元素440eの高密度集団を含む、欠陥を含み得る。
【0079】
図4Bに示されるように、高エネルギーのビーム455は、(
図4Aの)処理されていない表面405上に誘導されて、表面を物理的に修正し、欠陥440の少なくともいくつかを欠いている洗浄された表面406を提供する。実施形態では、洗浄された表面406は、依然として近接表面微細構造421を含んでもよいが、欠陥440gを実質的に欠いていてもよい。具体的には、洗浄された表面406は、有機物、油、及び炭化水素440gを実質的に欠いていてもよい。
【0080】
図4Aの近接表面微細構造420は、厚さt
4を有する。
図4Bの近接表面微細構造421は、厚さt
5を有する。高エネルギー455のビームは、近接表面微細構造420の少なくとも一部分を除去し得る。言い換えれば、処理されていない表面405上に高エネルギーのビーム455を誘導した後、洗浄面406と関連付けられた近接表面微細構造420の厚さt
5は、処理されていない表面405と関連付けられた近接表面微細構造420の厚さt
4と比較して低減され得る。
【0081】
高エネルギーのビーム455は、(
図4Bの)洗浄された表面406上に誘導されて、表面をさらに修正し、
図4Cに示されるように、任意選択的に、近接表面微細構造422を有する、活性化された表面407を提供し得る。洗浄された表面406上に誘導された高エネルギーのビームは、複数の金属酸化物440c及び複数の金属間粒子440fのうちの少なくとも1つを溶融させることによって、近接表面微細構造に影響を与える。溶融粒子は、バルク組成物に組み込まれ得る。近接表面微細構造422と関連付けられた活性化された表面407は、複数の金属酸化物440c及び複数の金属間粒子440fのうちの少なくとも1つを実質的に欠いている。実施形態では、近接表面微細構造422と関連付けられた活性化された表面407は、実質的に金属酸化物440c及び金属間粒子440fを欠いている。実施形態では、近接表面微細構造422は、
図4Cの活性化された表面407とともに、厚さt
6を有する。洗浄された表面406上に高エネルギーのビーム455を誘導した後、活性化された表面407と関連付けられた近接表面微細構造422の厚さt
6は、洗浄された表面406と関連付けられた近接表面微細構造421の厚さt
5と比較してさらに低減され得る。任意選択的に、近接表面微細構造420、421、422は、ゼロの厚さt
6を提供するように、完全に除去または修正され得、これによって、バルク430は、上面として露出され得、活性化された表面407を含むか、またはそれと関連付けられ得る。いくつかの実施形態では、厚さt
6≦厚さt
5≦厚さt
4である。実施形態では、近接表面微細構造は、約10μmの深さまで除去される。他の実施形態では、近接表面微細構造は、約5μmの深さまで除去される。言い換えれば、厚さt
6は、基板の表面上に高エネルギーのビーム455を誘導した結果、厚さt
4よりも最大約10μm、または最大約5μm小さい。
【0082】
有利には、表面405を修正して、高エネルギーのビーム455への曝露によって、洗浄された表面406または活性化された表面407を生成することは、表面の濡れ性特性を、比較的濡れ性の低いものから、比較的濡れ性の高いものに変化させ得る。追加的または代替的に、表面405を修正して、高エネルギーのビーム455への曝露によって、洗浄された表面406または活性化された表面407を生成することは、比較的弱い結合から比較的強い結合への接着剤の表面への結合を強化し得る。追加的または代替的に、表面405を修正して、高エネルギーのビーム455への曝露によって、洗浄された表面406または活性化された表面407を生成することは、表面の腐食電位を、比較的より腐食性の高い活性レベルから、比較的腐食性の低い活性レベルまで減少させ得る。追加的または代替的に、表面405を修正して、高エネルギーのビーム455への曝露によって、洗浄された表面406または活性化された表面407を生成することは、表面の腐食電位を、比較的高い腐食電位から比較的低い腐食電位に低減させて、表面を電気化学的により貴にし得る。追加的または代替的に、表面405を修正して、高エネルギーのビーム455への曝露によって、洗浄された表面406または活性化された表面407を生成することは、表面と別の製品との間の結合の結合耐久性を、比較的小さい結合耐久性から、比較的大きいまたはより高い性能の結合耐久性に変化させ得る。実施形態では、
図4Cのような活性化された表面407は、少なくとも35サイクル、または少なくとも40サイクル、または少なくとも45サイクル、または少なくとも50サイクル、または少なくとも55サイクル、または少なくとも60サイクル、または少なくとも65サイクル、または少なくとも70サイクル、または少なくとも75サイクル、または少なくとも80サイクル、または少なくとも85サイクル、または少なくとも90サイクル、または少なくとも95サイクル、または少なくとも100サイクル、または少なくとも105サイクル、または少なくとも110サイクル、または少なくとも115サイクル、または少なくとも120サイクル、または少なくとも125サイクル、またはそれ以上の結合耐久性を、例えば、FLTM BV 101-07標準試験または他の標準試験に従って呈し得る。
【0083】
基板400としては、使用する特定の合金または金属に応じて、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウムベースの材料、マグネシウム合金、マグネシウム複合材料、チタン、チタンベースの材料、チタン合金、銅、銅ベースの材料、複合材料、複合材料で使用されるシート、または任意の他の好適な金属、非金属、もしくは材料の組み合わせを含む非鉄材料が挙げられる。いくつかの実施形態では、基板400は、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、マグネシウム複合材、鋼、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、基板400はアルミニウム合金である。有用なアルミニウム合金としては、例えば、1xxxシリーズアルミニウム合金、2xxxシリーズアルミニウム合金、3xxxシリーズアルミニウム合金、4xxxシリーズアルミニウム合金、5xxxシリーズアルミニウム合金、6xxxシリーズアルミニウム合金、7xxシリーズアルミニウム合金、または8xxシリーズアルミニウム合金などの先に詳述されたもののうちのいずれかが挙げられる。
【0084】
図4B及び
図4Cのように、高エネルギーのビーム455は、レーザーによって提供され得る。レーザーは、連続レーザー、パルスレーザー、ナノ秒パルスレーザー、ピコ秒パルスレーザー、またはフェムト秒パルスレーザーから選択される少なくとも1つであってもよい。レーザーは、イッテルビウム、Nd-YAG、CO
2、及びエキシマーから選択される少なくとも1つであるか、または所望のエネルギー密度を提供する任意の好適なレーザーであることができる。レーザーは、約200nm~約1500nmなどの任意の好適な波長を有し得る。レーザーによる治療は、いくつかの場合では、レーザーアブレーション治療と称され得る。
【0085】
図4B及び
図4Cのように、高エネルギーのビーム455は、少なくとも10mJ/mm
2~最大200mJ/mm
2の範囲のエネルギー密度を有し得る。エネルギー密度は、10mJ/mm
2~30mJ/mm
2、20mJ/mm
2~40mJ/mm
2、30mJ/mm
2~50mJ/mm
2、40mJ/mm
2~60mJ/mm
2、50mJ/mm
2~70mJ/mm
2、60mJ/mm
2~80mJ/mm
2、70mJ/mm
2~90mJ/mm
2、80mJ/mm
2~100mJ/mm
2、90mJ/mm
2~110mJ/mm
2、100mJ/mm
2~120mJ/mm
2、110mJ/mm
2~130mJ/mm
2、120mJ/mm
2~140mJ/mm
2、130mJ/mm
2~150mJ/mm
2、140mJ/mm
2~160mJ/mm
2、150mJ/mm
2~170mJ/mm
2、160mJ/mm
2~180mJ/mm
2、170mJ/mm
2~190mJ/mm
2、180mJ/mm
2~200mJ/mm
2の範囲またはその部分範囲である可能性がある。実施形態では、高エネルギーのビームは、少なくとも7W~最大1000Wの範囲の電力を有してもよい。高エネルギー電力のビームは、7W~100W、50W~150W、100W~200W、150W~250W、200W~300W、250W~350W、300W~400W、350W~450W、400W~500W、450W~550W、500W~600W、550W~650W、600W~700W、650W~750W、700W~800W、750W~850W、800W~900W、850W~950W、900W~1000Wの範囲またはその部分範囲である可能性がある。いくつかの実施形態では、高エネルギー電力のビームは、約300Wである。
【0086】
図5は、表面が上記開示された方法に従って修正されている金属合金製品500の概略図を提供し、例えば、洗浄された表面、テクスチャ加工された表面、または活性化された表面などの修正表面を提供する。図示されるように、第1の製品500は、表面510を有する形成金属合金製品である。表面510は、上述の洗浄された表面、テクスチャ加工された表面、または活性化された表面のいずれか1つと同様であってもよい。表面560を有する第2の製品550は、任意選択的に別の材料を含んでもよく、表面560は、処理されていない表面、修正表面、洗浄された表面、テクスチャ化された表面、または活性化された表面であってもよく、そうでなくてもよい。金属合金製品500及び第2の製品550は、形成された構成で
図5に示されているが、金属合金製品500及び第2の製品550の一方または両方は、任意選択的に、形成されていない(例えば、平面)構成であってもよい。有利には、接着剤545は、表面510を表面560に強く結合し、金属合金製品500と第2の製品550との間の高強度接合を提供し得る。金属合金製品を別の製品に結合するのに有用な接着剤の例としては、エポキシ接着剤、アクリレート接着剤、フェノール接着剤、及びポリウレタン接着剤などが挙げられ得る。
【0087】
本開示による表面、すなわち、洗浄された表面306、テクスチャ加工された表面307、及び活性化された表面407は、
図5の表面510によって表されるような結合表面であり得る。結合表面は、有利には、別の表面、基板、または製品への即時結合を必要とせず、結合表面が接着剤を使用して別の製品に結合され得る期間に対応する表面安定性または待機期間によって特徴付けられ得、得られる結合製品は、参照により本明細書に組み込まれる、FLTM BV 101-07標準試験、Stress Durability Test for Adhesive Lap-Sear Bonds (接着ラップせん断結合の応力耐久性試験)(2017)、またはいくつかの他の標準試験に従って、結合耐久性試験に供されるときに、少なくとも45サイクルの結合耐久性を呈するなど、高い結合耐久性を呈することになる。したがって、結合表面は、別の表面、基板、または製品に結合される前の待機期間と関連付けられ得る。例示的な表面安定性及び/または待機期間は、1分~6ヶ月、例えば、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、最大約1日、最大約3日、最大約1週間、最大約2週間、最大約3週間、最大約4週間、最大約1ヶ月、最大約2ヶ月、最大約3ヶ月、最大約4ヶ月、最大約5ヶ月、最大約6ヶ月、1時間~6ヶ月、8時間~6ヶ月、12時間~6ヶ月、1日~6ヶ月、3日~6ヶ月、1週間~6ヶ月、2週間~6ヶ月、1ヶ月~6ヶ月、2ヶ月~6ヶ月、3ヶ月~6ヶ月、4ヶ月~6ヶ月、5ヶ月~6ヶ月、1時間~5ヶ月、8時間~5ヶ月、12時間~5ヶ月、1日~5ヶ月、3日~5ヶ月、1週間~5ヶ月、2週間~5ヶ月、1ヶ月~5ヶ月、2ヶ月~5ヶ月、3ヶ月~5ヶ月、4ヶ月~5ヶ月、1時間~4ヶ月、8時間~4ヶ月、12時間~4ヶ月、1日~4ヶ月、3日~4ヶ月、1週間~4ヶ月、2週間~4ヶ月、1ヶ月~4ヶ月、2ヶ月~4ヶ月、3ヶ月~4ヶ月、1時間~3ヶ月、8時間~3ヶ月、12時間~3ヶ月、1日~3ヶ月、3日~3ヶ月、1週間~3ヶ月、2週間~3ヶ月、1ヶ月~3ヶ月、2ヶ月~3ヶ月、1時間~2ヶ月、8時間~2ヶ月、12時間~2ヶ月、1日~2ヶ月、3日~2ヶ月、1週間~2ヶ月、2週間~2ヶ月、1ヶ月~2ヶ月、1時間~1ヶ月、8時間~1ヶ月、12時間~1ヶ月、1日~1ヶ月、3日~1ヶ月、1週間~1ヶ月、2週間~1ヶ月、1時間~2週間、8時間~2週間、12時間~2週間、1日~2週間、3日~2週間、1週間~2週間、1時間~1週間、8時間~1週間、12時間~1週間、1日~1週間、または3日~1週間であり得る。
【0088】
3ヶ月以上の待機期間の間、例えば、接着剤、塗料、または溶接結合を塗布する前に、代替的に、表面を空気プラズマ、真空プラズマ、または他の既知のプラズマ技術で活性化することができる。高エネルギービーム適用後またはその前に、プラズマ反応器は、金属、プラスチック、セラミックスなどの硬質表面上にイオン及び化学反応性種を生成及び排出することができる。表面上のそのようなイオン及び種は、エッチングでの深い洗浄、及び/または改善された濡れのための増強された表面エネルギーを誘発し得る。好ましくは、洗浄中に基板表面温度を低く保つために、室温付近及び大気圧で生成された低エネルギープラズマ(冷プラズマ)が所望されるが、プラズマトーチ、融合プラズマ、プラズマスプレー、アーク放電プラズマなどで使用されるものなどの高エネルギープラズマ(熱プラズマ)もまた、本開示に従って企図される。低エネルギープラズマはまた、洗浄工程中または後の有機、無機、またはハイブリッド接着促進剤の堆積に使用され得る。大気圧プラズマ、コロナ放電、低圧プラズマ(DCプラズマ、DCグロー放電)、低~中周波数(RF-容量的または誘発結合)、高周波数(マイクロ波-電子サイクロトロン共鳴)、及び炎などの任意のプラズマ放電源が、本開示に従って企図される。
【0089】
同様に、高ビーム適用後またはその前に、真空アークなどの他の乾燥洗浄方法は、スタンドアローンとして、または高エネルギー、レーザー、プラズマシステム、またはこれらの任意の組み合わせの別のビームと組み合わせて使用され得る。乾燥洗浄プロセスは、マイクロブラスト、マクロブラスト、二酸化炭素ドライアイス衝撃及びブラスト、またはこれらの任意の組み合わせなどの任意の機械的表面調製を含み得る。特に、真空アークシステムは高価であり、コイル全体を真空チャンバ内に装填することができるバッチプロセスにより貢献し、連続圧延製品を実行するプラント動作に重大な欠点を有し得る。例えば、周囲環境から真空チャンバにコイルを連続的に移動させるには、比較的控えめな真空レベルを達成するためにも、膨大なポンプ能力が必要であり、したがって、通常、真空加工に由来する利点は極めて制限され得る。
【0090】
表面特性は、本明細書に記載される表面調製及び処理プロセスの任意の組み合わせを使用して調整されて、所与の最終製品またはプロセスの所望の表面特性を提供し得る。例えば、高エネルギーのビームを金属または金属合金表面上に誘導する前に、二酸化炭素スプレー処理を使用して、炭化水素汚染とともに微細及び他の緩い破片を除去し得る。記載される乾燥洗浄方法を使用して説明される効果のいずれかを増強するために適用され得るように、表面の超音波または高周波(RF)活性化が、本開示に従って企図される。
【0091】
いくつかの場合では、アブレーション効率または表面修正効率は、上記の詳細な製品及び方法のものよりも改善され得る。本開示による別の方法は、本明細書に記載の合金の近接表面微細構造を、金属合金基板上に塗布された液体または凝縮された蒸気層を使用して修正し、この層は、高エネルギーのビームと基板表面との相互作用を増加させ、それによって有利にアブレーション効率を向上させる。意図的に基板表面上に塗布された液体の層との高ビームまたはエネルギー(例えば、レーザー光)の相互作用を利用することにより、例えば、レーザー処理なしの5サイクルと比較して、故障前に結合耐久性性能を少なくとも75サイクル以上に増加させることができる。本明細書に記載される方法は、例えば、自動車製造において、製造ラインを下って使用される接着剤とのより強力な結合を提供するために、化学反応性種とともに清浄な及び/または堆積される、処理された金属または金属合金表面を有利に提供する。改善された結合耐久性強度は、処理されていない表面と比較して、より滑らかな表面粗さ及びより滑らかな表面トポグラフィを含む、改善された溶接性、塗装性、及び他の用途に関連する要件をもたらすことができる。本明細書に記載の方法はまた、空気よりも高い熱伝導率を有する液体層を導入して、熱影響を受ける(または処理する)ゾーンを低減し、かつ液体層で覆われた金属または金属合金表面の高ビームのエネルギー処理から生じる残留熱損傷を低減することによって、アブレーション効率を改善することができる。アブレーション効率は、光学的に刺激された電子放出(OSEE)ツールを使用した清浄度測定によって間接的に特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、液体層の存在は、レーザーアブレーションと同様にエネルギーの高いビームを誘導する前に、液体層を有しない表面と比較して、OSEEで測定されるような比較的清浄な表面を提供することが示された。
【0092】
図6A~
図6Cは、近接表面微細構造を含む表面などの金属合金製品の表面を修正する方法を図示する。
図6Aに示されるように、金属合金基板600が提供される。基板600は、アルミニウム合金製品などの、前述の金属合金製品であり得る。基板600は、
図2、
図3A及び
図4Aに関して同様に説明されるように、近接表面微細構造620及びバルク微細構造630を有する。近接表面微細構造620は、処理されていない表面605を含むか、または備える。処理されていない表面605は、化学的またはウェットエッチング技術及び/または変換コーティングを含むがこれらに限定されない、いかなる表面処理または修正も受けていない。任意選択的に、表面605は、必要に応じて、化学洗浄、水洗い(室温でまたは高温で)、機械的表面洗浄、活性化、もしくはテクスチャ化、または任意の他の洗浄方法を受け得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの表面605、またはいくつかの露出した表面、または基板600の露出した表面のすべては、処理されていない。基板600の近接表面微細構造620は、
図2に関して説明した欠陥240a~240g及び
図4Aに示される欠陥440a~440gと同様に、
図6Aに示される欠陥640a~640gのうちの少なくともいくつかを含む。
図6Aに示されるように、近接表面微細構造620は、欠陥640を含む。欠陥640は、複数の金属酸化物640c、複数の金属間粒子640f、ならびに有機物、油、及び炭化水素640gを含む、圧入材料を含む。欠陥640はまた、内部亀裂640a、ボイド640b、表面亀裂640d、及び合金元素640eの高密度集団を含む、欠陥を含み得る。
【0093】
図6Bのように、液体が
図6Aの処理されていない表面605に塗布されて、層635を形成する。いくつかの実施形態では、別の表面、反対側の表面606はまた、金属合金基板600の両側が液体層635を含むように塗布される液体を有する。液体は、液体層635またはフィルムを形成するための凝集された蒸気であってもよい。いくつかの実施形態では、第1の液体層が表面605に塗布され、第2の液体層が表面685に塗布され、第1の液体層及び第2の液体層は、同じであっても異なっていてもよい。液体層635の存在は、空気ありまたは液体層なしと比較して、実施形態では、(
図6Cに示されるように)エネルギーの誘導されたビームとのエネルギー結合効率を増強させ得る。
図6Bに示される液体層635は、水溶液または非水溶液を含み得る。好適な溶液としては、グリセリン、アルコール溶液、蒸気、またはこれらの組み合わせを含むか、またはそれらを使用して生成され得る。溶液は、任意選択的に、前処理化学物質、陽極及び/または陰極腐食抑制剤、またはそれら組み合わせを含み得る。前処理化学物質は、表面化学及び/または機械的状態を変化させることによって、腐食を抑制することと、表面をテクスチャ加工することと、接着性を増加させることとのうちの少なくとも1つを行うように構成され得る。溶液に添加するための好適な前処理化学物質は、有機ホスホン酸、有機ホスフィン酸、シラン、カップリング剤、ポリマー、コポリマー、ジルコニウム/モリブデン(Zr/Mo)を含む前処理、マンガン(Mn)を含む前処理、セリウム(Ce)を含む前処理、接着促進剤、または任意の好適な化学物質もしくは機械的技術から選択して、化学的、機械的、及び/または電気化学的方法、またはこれらの任意の組み合わせによって表面を変更及び/または官能化し得る。任意の前処理化学物質を含むことによって、金属または金属合金表面を同時に洗浄すると、改善された接着耐久性及びコーティング接着性能のために調整された表面をさらに提供し得る。いくつかの実施形態では、金属または金属合金表面は、乾燥技術を介してテクスチャ化しながら、または金属もしくは金属合金表面上に存在する蒸気、水性、または非水性薄膜で、同時に洗浄、活性化、及び機能化を含む任意の前の洗浄工程なしで処理することができる。いくつかの実施形態では、高エネルギーのビームを有する金属表面と液体層との相互作用の増強は、処理された表面上で堆積された化学反応性種によってさらに増強される。スラリー、ゲル、またはペーストなどからのコーティングも企図される。好適なコーティングは、層635とのエネルギー相互作用の高いビームを増強するために、金属、ポリマー、もしくはセラミックスを含むか、またはそれらから選択されてもよい。
【0094】
図6Bのような層635の塗布は、アプリケータによって、または2つ以上のアプリケータによって提供され得る。さらに2つのアプリケータを使用することにより、基板表面(複数可)が一方または両方の基板表面上の液体層またはフィルムで覆われる速度を大幅に増加させ得る。2つ以上のアプリケータを使用することは、
図7~
図9に示される非限定的な連続ライン実施形態に好適である。アプリケータ(複数可)は、パルスを有するか、もしくは有しないスプレーアプリケータ、低圧高容量スプレーアプリケータ、低圧低容量スプレーアプリケータ、回転噴霧器、静電アプリケータ、ロールアプリケータ、またはこれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つであり得る。
【0095】
図6Cに示されるように、高エネルギーのビーム655は、(
図6Bの)液体層605を含む表面606上に誘導されて、表面を物理的及び化学的に修正し、欠陥640の少なくともいくつかを欠いている
図6Cのように、活性化された表面607を提供する。
【0096】
図6Aの近接表面微細構造620は、厚さt
7を有する。
図6Bの液体層635は、厚さt
8を有する。高エネルギー655のビームは、近接表面微細構造620の少なくとも一部分を除去し得る。言い換えれば、表面606上に高エネルギーのビーム655を誘導した後、洗浄面607と関連付けられた近接表面微細構造620の厚さt
9は、処理されていない表面605と関連付けられた近接表面微細構造620の厚さt
7と比較して低減され得る。
【0097】
(
図6Bの)表面606上に誘導された高エネルギーのビーム655は、
図6Cに示されるように、任意選択的に、近接表面微細構造622を有する、活性化された表面607を提供し得る。表面606を有する液体層635上に誘導された高エネルギーのビームは、複数の金属酸化物640c及び複数の金属間粒子640fのうちの少なくとも1つを溶融させ得る液体層との高ビームまたはエネルギー相互作用を通じて、近接表面微細構造に影響を与え得る。溶融粒子は、バルク組成物に組み込まれ得る。近接表面微細構造622と関連付けられた活性化された表面607は、複数の金属酸化物640c及び複数の金属間粒子640fのうちの少なくとも1つを実質的に欠いている。実施形態では、近接表面微細構造622と関連付けられた活性化された表面607は、実質的に金属酸化物640c及び金属間粒子640fを欠いている。実施形態では、近接表面微細構造622は、
図6Cの活性化された表面607とともに、厚さt
9を有する。高エネルギー655のビームを、厚さt
7を有する近接表面微細構造620の上に厚さt
8を有する表面606上に誘導した後、厚さt
9は、厚さt
7と比較して低減される。任意選択的に、近接表面微細構造620または622は、ゼロの厚さt
9を提供するように、完全に除去または修正され得、これによって、バルク630は、上面として露出され得、活性化された表面607を含むか、またはそれと関連付けられ得る。いくつかの実施形態では、厚さt
9は、厚さt
7以下である。実施形態では、近接表面微細構造は、約10μm、または最大約5μmの深さまで除去される。いくつかの例では、脱イオン水の2mm厚の層を、本明細書の方法による表面処理のために6xxxシリーズのアルミニウム合金に塗布して、約5μmまたは約10μmの近接表面微細構造層の除去をもたらすことができる。言い換えれば、厚さt
9は、基板の表面上に高エネルギーのビーム655を誘導した結果として、厚さt
7よりも約10μm、または約5μm小さい。
【0098】
有利には、表面605を修正して、液体層635の存在下で高エネルギーのビーム655への曝露によって、活性化された表面607を生成することは、表面と別の製品との間の結合の結合耐久性が、比較的より短い結合耐久性から、比較的より長いまたはより高い性能の結合耐久性に変化させ得る。実施形態では、
図6Cのような活性化された表面607は、少なくとも35サイクル、少なくとも40サイクル、少なくとも45サイクル、少なくとも50サイクル、またはそれ以上の結合耐久性を呈し得る。さらに、レーザー及び金属または合金表面結合は、液体層を含まないアブレーション表面と比較して、より清浄で滑らかな表面を提供する。改善された表面は、高エネルギーレーザービームと金属または合金表面との間の強力な結合中に、誘発された熱対流電流及び気泡運動によって実現される、効率的な破片除去から生じ得る。
【0099】
追加的に、本明細書に記載の方法は、表面及び近接表面微細構造を実質的にまたは完全にアブレーションして、表面及び少なくとも部分的に任意の表面下層を除去し得る。これにより、濃縮された酸化物形成及びヒドロキシル化学種で官能化された清浄な表面がもたらされ得る。これは、空気中で実行され得、そのため、空気中の酸素は、レーザーによって生成される高温で金属表面と反応して、処理されていない表面の近傍表面微細構造とは明らかに異なる濃縮された酸化物層を形成する。濃縮された酸化層は、表面上の任意の残留水によって、または湿った空気によって水和され得る。濃縮された酸化物形成及びヒドロキシル化学種で官能化された金属または合金表面は、容易に反応し、接着剤との結合を提供して、延長されたBD性能を提供し得る。
【0100】
基板600としては、使用する特定の合金または金属に応じて、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウムベースの材料、マグネシウム合金、マグネシウム複合材料、チタン、チタンベースの材料、チタン合金、銅、銅ベースの材料、複合材料、複合材料で使用されるシート、または任意の他の好適な金属、非金属、もしくは材料の組み合わせを含む非鉄材料が挙げられる。いくつかの実施形態では、基板600は、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、マグネシウム複合材、鋼、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、基板600はアルミニウム合金である。有用なアルミニウム合金としては、例えば、1xxxシリーズアルミニウム合金、2xxxシリーズアルミニウム合金、3xxxシリーズアルミニウム合金、4xxxシリーズアルミニウム合金、5xxxシリーズアルミニウム合金、6xxxシリーズアルミニウム合金、7xxxシリーズアルミニウム合金、または8xxxシリーズアルミニウム合金などの先に詳述されたもののうちのいずれかが挙げられる。
【0101】
図6Cのような高エネルギーのビーム655は、レーザーによって、または2つ以上のレーザーによって提供され得る。さらに2つのレーザーユニットを使用することにより、一方または両方の基板表面上に液体層を有する基板表面(複数可)が処理され得る速度を大幅に増加させる。2つ以上のレーザーを使用することは、
図7~
図9に示される非限定的な連続ライン実施形態に好適である。レーザー(複数可)は、連続レーザー、パルスレーザー、ナノ秒パルスレーザー、ピコ秒パルスレーザー、またはフェムト秒パルスレーザー(シングル及び/またはダブルパス構成で、連続波の有するか、または有しない)から選択される少なくとも1つであり得る。レーザーは、イッテルビウム、Nd-YAG、CO
2、またはエキシマーから選択される少なくとも1つであるか、または所望のエネルギー密度を提供する任意の好適なレーザーであることができる。レーザーは、約200nm~約1500nmなどの任意の好適な波長を有し得る。波長、周波数、作業距離、レーザー光の入射角、及びエネルギーレベルは、いくつかの実施形態に従って調整され得る。
【0102】
図6Cのように、高エネルギーのビーム655は、少なくとも10mJ/mm
2~最大200mJ/mm
2の範囲のエネルギー密度を有し得る。エネルギー密度は、10mJ/mm
2~30mJ/mm
2、20mJ/mm
2~40mJ/mm
2、30mJ/mm
2~50mJ/mm
2、40mJ/mm
2~60mJ/mm
2、50mJ/mm
2~70mJ/mm
2、60mJ/mm
2~80mJ/mm
2、70mJ/mm
2~90mJ/mm
2、80mJ/mm
2~100mJ/mm
2、90mJ/mm
2~110mJ/mm
2、100mJ/mm
2~120mJ/mm
2、110mJ/mm
2~130mJ/mm
2、120mJ/mm
2~140mJ/mm
2、130mJ/mm
2~150mJ/mm
2、140mJ/mm
2~160mJ/mm
2、150mJ/mm
2~170mJ/mm
2、160mJ/mm
2~180mJ/mm
2、170mJ/mm
2~190mJ/mm
2、180mJ/mm
2~200mJ/mm
2の範囲またはその部分範囲である可能性がある。実施形態では、高エネルギーのビームの電力は、少なくとも7W~最大1000Wの範囲であり得る。電力は、7W~100W、50W~150W、100W~200W、150W~250W、200W~300W、250W~350W、300W~400W、350W~450W、400W~500W、450W~550W、500W~600W、550W~650W、600W~700W、650W~750W、700W~800W、750W~850W、800W~900W、850W~950W、900W~1000Wの範囲またはその部分範囲である可能性がある。
【0103】
任意選択的に、接着接合のための表面を調製するために、表面に高エネルギーのビームを誘導した後に、蒸気または別のガスまたは方法が使用され得る。有利には、金属副産物は、本明細書に開示されるいくつかの実施形態によるアルミニウム合金基板またはシートのレーザーアブレーション中に形成される金属ナノ粉末をもたらし得、かつ含み得る。これらの金属ナノ粉末は、金属粉末プロセスまたは他のプロセスで使用するための濾過及び乾燥を介して捕捉され得る。
図7~
図9を参照すると、連続ラインの実施形態は、本明細書に開示される方法に従って示される。
図7は、(シート形態で示されるように)基板の両側が、アプリケータ765A及び765Bからの第1及び第2の液体で塗布される、連続ラインプロセスの一実施形態を概略的に図示する。連続ラインプロセスは、基板または基板シート700を、流れ矢印Fによって示されるような方向に移動させる。少なくとも1つの液体735A及び735Bの塗布は、第1のレーザー755A及び第2のレーザー755Bからの高エネルギーの誘導されたビームと、1つ以上の基板表面と同時に実行される。例えば、アプリケータ765Aは、液体735Aを基板表面705に塗布し、アプリケータ765Bは、液体735Bを基板表面785に塗布する。同時に、高エネルギーのビームは、レーザー755Aによって基板表面705に送達され、高エネルギーのビームは、レーザー755Bによって基板表面785に送達される。レーザーエネルギーと、表面705及び785における液体735A及び735Bとの間の相互作用は、それぞれ、フロー矢印によって示されるように、連続ラインプロセスに沿って、処理された表面707A及び707Bをもたらす。
図7に示される実施形態では、層735A及び735Bの厚さは、シートの完全な表面被覆のために、凝集された蒸気の分子レベルから最大5mmの液体層までの範囲である。液体層735A及び735Bは、同じであっても異なっていてもよい。
【0104】
図8は、連続ラインプロセスの別の実施形態を概略的に図示する。基板800の両側に、アプリケータ865A及び865Bからの第1及び第2の液体(例えば、835A及び835B)を塗布する。任意選択的に、基板は、ボックス899で当技術分野で既知の化学的、水洗い、または他の洗浄または洗い方法によって洗浄される。洗浄は、室温であっても、または約90℃までの高温であってもよい。いくつかの実施形態では、洗浄は、水性クリーナーの任意の蒸発損失を最小限に抑え、制御するために、50℃未満で実行される。同様の温度は、非水性クリーナーに使用され得る。蒸気脱脂は、レーザー機能化及びコイルの表面をテクスチャ化する前に有用であり得る。連続ライン処理は、基板または基板シート800を、矢印890によって示されるような方向に移動させる。少なくとも1つの液体835の塗布は、レーザー855A及び855Bからの高エネルギーのビームを誘導する前に実行され得る。例えば、アプリケータ865Aは、液体835Aを基板表面805に塗布し、アプリケータ865Bは、液体835Bを基板表面885に塗布する。高エネルギーのビームは、レーザー855Aによって基板表面805に送達され得、高エネルギーのビームは、レーザー855Bによって基板表面885に送達され得る。レーザーエネルギーと、表面805及び885を覆う液体835A及び835Bとの間の相互作用は、それぞれ、処理表面807A及び807Bをもたらす。
図8に示される実施形態では、層835A及び835Bの厚さは、シートの完全な表面被覆のために、凝集された蒸気の分子レベルから最大5mmの液体層までの範囲である。液体層835A及び835Bは、同じであっても異なっていてもよい。
【0105】
図9は、連続ラインプロセスのさらに別の実施形態を概略的に図示する。
図9に示される実施形態の場合、層935A及び935Bの厚さは最大で5mmである。いくつかの実施形態では、層の厚さは、フィルムの厚さが一貫しており、レーザーと金属または金属合金表面との間の相互作用及び結合を可能にして、機能化及びテクスチャ加工して所望の特性を得ることができれば、5mmを超えることができる。基板900は、第1及び第2の液体(例えば935A及び935B)を、90℃未満、好ましくは50℃未満、より好ましくは室温で、アプリケータ浴995A及び995Bから塗布される。連続ライン処理は、基板または基板シート900を、矢印990によって示されるような方向に移動させる。少なくとも1つの液体935の塗布は、レーザーの配置を調整することによって、レーザー955A及び955Bからの高エネルギーのビームを誘導することと同時に(
図9に示されるように)、またはその前に実行され得る。例えば、アプリケータ浴995Aは、液体935Aを基板表面905に塗布し、アプリケータ浴995Bは、液体935Bを基板表面985に塗布する。高エネルギーのビームは、レーザー955Aによって基板表面905に送達され得、高エネルギーのビームは、レーザー955Bによって基板表面985に送達され得る。レーザーエネルギーと、表面905及び985を覆う液体935A及び935Bとの間の相互作用は、それぞれ、処理表面907A及び907Bをもたらす。液体層935A及び935Bは、同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、浴995A及び995の液体層935A及び935Bは、両側905及び985に被覆を提供し得る。
図9に示される実施形態の場合、層935A及び935Bの厚さは最大で約5mmである。いくつかの実施形態では、層の厚さは、フィルムの厚さが一貫しており、レーザーと金属または金属合金表面との間の相互作用及び結合を可能にして、機能化及びテクスチャ加工して所望の特性を得ることができれば、5mmを超えることができる。
【0106】
図7~
図9のように、処理された表面707A、707B、807A、807B、907A、及び907Bは、結合に好適であり、例えば、オートシート製品として有用であり得る。オートシート製品としては、例えば、5xxxシリーズアルミニウム合金、6xxxシリーズアルミニウム合金、または7xxxシリーズアルミニウム合金が挙げられ得るが、これらに限定されない。オートシート製品は、DC鋳造、CC鋳造、クラッドなどであり得る。
【0107】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するのに役立つが、同時に、そのいかなる限定も構成するものではない。これに対して、本明細書の説明を読んだ後に、本発明の趣旨から逸脱することなく当業者にそれ自体を示唆し得る、様々な実施形態、それらの修正及び均等物が用いられ得ると明らかに理解されるべきである。以下の例に記載される研究中、別段記述されない限り、従来の手順に従った。手順の一部は、例示の目的のために以下に記載される。
【0108】
実施例1
アルミニウム合金製品試料を、直接チル(DC)鋳造、熱間圧延、冷間圧延、及び溶液熱処理によって調製し、0.9mm~2.0mmの最終ゲージ厚さでAA5182シート試料(O温度で試験)及びAA6451シート試料(T4温度で試験)を生成した。次いで、シート試料を、40nsのパルス持続時間、30%のオーバーラップ、最大1000W、0.85mmまたは1.4mmのスポットサイズ、及び10kHzまたは20kHzの周波数でナノ秒イッテルビウムレーザー(モデルYLPN、1064nm、IPGフォトニクス)に表面を曝露するように配置し、レーザービーム設定及び表面調整パラメータを調整して、AA5182試料については
図10A、
図10B、
図10C、ならびにAA6451試料については
図10D及び
図10Eに示すように異なる表面テクスチャに影響を与えるように調整した。
図10Aは、10kHzで100W~1000Wで処理したAA5182合金の、0.85mmのスポットサイズによる表面テクスチャの進化を示す。同様に、
図10Bは、10kHzで100W~1000Wで処理したAA5182合金の、1.4mmのスポットサイズによる表面テクスチャの進化を示す。
図10Cは、100W~1000Wで20kHzで処理したAA5182合金の、1.4mmのスポットサイズによる表面テクスチャの進化を示す。AA6451試料の
図10D~10Eは、10の異なる電力レジームにおける表面テクスチャの進化を示しており、上部で100Wから下部で1000Wまで、それぞれ10kHz及び20kHzで、1.4mmのスポットサイズで開始することが示されている。示されている表面のテクスチャ化は、電力が増加するにつれて増加する。レーザービームエネルギーの関数として、得られた表面との水の接触角は、標準的な技術によって、液滴接触角測定を使用して得られた。
【0109】
図11Aは、イッテルビウムレーザーのエネルギー密度(mJ/mm
2)に対応するx軸と、結果として得られる試料表面についての接触角(度)に対応するy軸とを含むプロットを示す。元のAA5182表面は、76度の接触角を有するように測定された。レーザーのエネルギー密度が0から約15mJ/mm
2に増加するにつれて、接触角は10度未満に急激に減少した。より低い接触角は、改善された濡れ性と良好な結合耐久性の挙動とを示している。約15mJ/mm
2を上回るエネルギー密度をさらに増加させると、接触角が、約15mJ/mm
2~100mJ/mm
2を超えるエネルギー密度で、約5度で安定して低いままであることが示された。
【0110】
図11Bは、イッテルビウムレーザーのエネルギー密度(mJ/mm
2)に対応するx軸と、結果として得られる試料表面についての接触角(度)に対応するy軸とを含むプロットを示す。元のAA6451表面は、75度の接触角を有するように測定された。レーザーのエネルギー密度が0から約15mJ/mm
2に増加するにつれて、接触角は約10度に急激に減少した。約15mJ/mm
2を上回るエネルギー密度をさらに増加させると、接触角が、約5度まで約52mJ/mm
2で減少することが示された。
【0111】
15mJ/mm2、23.1mJ/mm2、及び57.8mJ/mm2で処理及び表面テクスチャ化されたAA5182シート試料は、それぞれ、1.4mmのスポットサイズを有し、接着結合され、結合耐久性を決定するための例示的な標準試験に従って結合耐久性試験に供された。FLTM BV 101-07標準試験、Stress Durability Test for Adhesive Lap Shear Joints(接着ラップせん断接合の応力耐久性試験)(2017)。結合耐久性試験の間、各試料は、2枚のアルミニウム合金製品シートからなり、同一の条件下で調製及び処理され、次いで、エポキシ接着剤を使用して、6つの結合部位で一緒に結合された。次に、各試料を、塩溶液中に浸漬すること、湿潤条件への曝露、乾燥条件への曝露、及び/または応力もしくはひずみを誘発する力の適用のうちの1つ以上を含む様々な試験条件に供された。各試料は、そのような試験条件下で多数の結合耐久性サイクルに供された。試料が供されたサイクル数は、機械的故障に到達するためのサイクル数または60サイクル以上のいずれかであった。15mJ/mm2で表面処理したAA5182試料についての結合耐久性性能試験は、平均60サイクルをもたらし、23.1mJ/mm2で表面処理及びテクスチャ化されたAA5182合金試料表面は、115サイクルの結合耐久性性能の増加をもたらした。57.8mJ/mm2の高エネルギーレベルで調製したAA5182試料は、10サイクル未満で早期故障をもたらした。
【0112】
実施例2
アルミニウム合金製品試料を、DC鋳造、熱間圧延、冷間圧延、480℃で5分間の実験室熱処理によって調製し、熱間成形温度をシミュレートし、125℃で24時間人工的にT6温度までエージングして、約2.8mmの最終ゲージを有するAA7075シート試料を作製した。次いで、シート試料の表面を、15kHz~40kHzの周波数範囲を有するCL300 Wattの高強度レーザー(Adapt Laser, LLC)に曝露した。レーザーは、300W及び428μmのスポットサイズで、後続のパルスごとに、変動するレベルのオーバーラップ(25%及び50%)で表面にわたってパルス化した。
図12A~12Cに示されるように、レーザー処理の前後の試料の表面のトポグラフィを測定した。比較として、
図12Aは、AA7075シート試料の元のミル仕上げ表面または「処理されていない」表面上で測定されたトポグラフィを示す。
図12Bは、AA7075シート試料の表面上で測定されたトポグラフィを示し、高エネルギーのパルスレーザービームは、パルス間の25%のオーバーラップを伴って露出表面上に誘導された。
図12Cは、AA7075シート試料の表面上で測定されたトポグラフィを示し、高エネルギーのパルスレーザービームは、パルス間の50%のオーバーラップを伴って露出表面上に誘導された。25%から50%へのオーバーラップの増加は、測定されたトポグラフィ上の色出力の範囲によって示されるように、より粗い表面トポグラフィをもたらした。結果は、オーバーラップ割合を増加させることにより、より高い表面粗さ(3Dで測定した場合のSa)が生じることを示した。Sa値は、処理されていない表面(
図12Aに示されるように)では0.3μm、パルス間の25%オーバーラップでレーザー処理された表面(
図12Bに示されるように)では約1.1μm、パルス間の50%オーバーラップでレーザー処理された表面(
図12Cに示されるように)では約1.4μmであることが測定された。
【0113】
試料を接着結合し、実施例1で上述した標準試験方法FLTM BV 101-07に従って結合耐久性試験に供された。結合耐久性試験の間、各試料は、2つのアルミニウム合金製品で作製され、同じ条件を使用して調製及び処理され、エポキシ接着剤を使用して6つの結合部位を介して結合された。次に、各試料を様々な試験条件に供した。例えば、試験条件は、塩溶液中に浸漬すること、湿潤条件への曝露、乾燥条件への曝露、または応力もしくはひずみを誘発する力の適用のうちの1つ以上を含んだ。各試料を、これらの試験条件の多数のサイクルに供した。試料が供されたサイクル数は、機械的故障に到達するためのサイクル数またはこの特定の標準試験で使用される最大サイクル数である60サイクルのいずれかであった。機械的故障には、接着剤の故障または破損が含まれる。T6を使用したAA7075についての接着耐久性性能試験は、15kHzでレーザーCL300を用いて50%オーバーラップで表面処理された試料を含み、試験された12個の試料すべてで最大60サイクルをもたらした。15kHzでレーザーCL300を用いて20%オーバーラップで処理したAA7075(T6)試料表面は、試験した5個の試料について最大60サイクルをもたらし、第6の試料は43サイクルで失敗した。3ヶ月エージングさせ、上記のAA7075(T6)を50%オーバーラップさせた結果、試験した12個について試料の平均結合耐久性は95サイクルとなった。6ヶ月エージングさせ、上記のAA7075(T6)を50%オーバーラップさせた結果、試験した12個の試料のうちの10個について、試験した最大60サイクルの結合耐久性をもたらし、第11の試料は51サイクルで失敗し、第12の試料は60サイクルで失敗した。
【0114】
図13は、AA7075の比較例についての20μm、20K X倍率の全幅視野における走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、元のミル仕上げ表面(表面処理なし)とともに得られた画像である。圧入酸化物、金属間粒子、及びボイドなどの近接表面微細構造1320は、表面1305の下の微粒子形態によって明らかである。表面1305は、SEMを使用して撮像目的で金(Au)でコーティングされる。金属間粒子は、明るく着色された1340fに見え、近接表面微細構造1320全体に分布する。
図14は、40μmの全幅視野で、より低い10K X倍率でSEMで得られた画像であり、処理されていないミル仕上げ表面1405の表面に対する金属間粒子1440fの近接性を示す。
【0115】
図15は、20μmの全幅視野でのSEM、20K X倍率を用いて得られた画像であり、
図16は、10K X倍率での40μmの全幅視野でのSEMで得られた画像であり、例えば、表面をパルス間の50%のオーバーラップでレーザーアブレーションしたAA7075の例である(300Wでの後続パルス当たり50%のオーバーラップでのCL300 Watt高強度レーザー、及び428μmのスポットサイズ)。
図15に示されるように、圧入酸化物、金属間粒子1540f、及びボイドなどの表面近傍の微細構造は、微粒子形態が欠如しているため、レーザー処理された表面の表面1505の下のほうが少ないか、またはまったく明らかではない。
図16に示されるように、
図14に示されるような比較例では、ミル仕上げ表面の表面と比較して、表面1605から約5μmの深さまで明らかな金属間粒子1640fは少ない。
【0116】
実例となる態様
以下で使用されるように、一連の態様(例:「態様1~4」)または非列挙的な態様群(例えば、「先行または後続態様のいずれか1つ」)へのいかなる言及も、それらの態様の各々に対する言及として離接的に理解されるべきである(例えば、「態様1~4」は「態様1、2、3、または4」として理解されるべきである)。
【0117】
態様1は、方法であって、バルク及び第1の表面を有するアルミニウム合金製品を提供することと、第1の表面にわたって高エネルギーのビームを走査することであって、高エネルギーのビームが、第1の表面と相互作用して、第1の表面を物理的に修正して、処理された第1の表面を形成する、走査することと、を含む、方法である。
【0118】
態様2は、高エネルギーのビームを走査する前に、第1の表面上に第1の液体層を塗布することをさらに含み、高エネルギーのビームを走査することが、第1の液体層にわたり、高エネルギーのビームが、第1の液体層と相互作用して、処理された第1の表面を形成する、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0119】
態様3は、処理された第1の表面が、FLTM BV 101-07標準試験に従って、45サイクル~125サイクル、またはそれ以上の結合耐久性を呈する、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0120】
態様4は、アルミニウム合金製品が、5xxxシリーズアルミニウム合金、6xxxシリーズアルミニウム合金、または7xxxシリーズアルミニウム合金を含む、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0121】
態様5は、高エネルギーのビームが、第1の液体層と相互作用して、金属間粒子と、アルミニウム合金の粒を含むマトリックスと、を含む、バルクの少なくとも一部分を物理的に修正して、処理された表面下層を形成する、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0122】
態様6は、処理された表面下層が、高エネルギーのビームによって以前に溶融されているアルミニウム合金の再凝固層を含み、表面下層が、アルミニウム合金製品の1μm~10μmの深さを占め、処理された表面下層中の金属間粒子の第1の濃度が、バルク中の金属間粒子の第2の濃度未満である、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0123】
態様7は、第1の液体層が、1nm~1mmの厚さを有する、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0124】
態様8は、第1の液体層が、1mm~5mmの厚さを有する、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0125】
態様9は、第2の表面に第2の液体層を塗布することをさらに含み、第2の表面が、第1の表面とは反対である、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0126】
態様10は、第2の液体が、1nm~1mmの厚さを有する、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0127】
態様11は、第2の液体層が、1mm~5mmの厚さを有する、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0128】
態様12は、第2の液体層が、第1の液体層と同じである、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0129】
態様13は、第2の液体層が、第1の液体層とは異なる、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0130】
態様14は、第1の液体層及び第2の液体層のうちの少なくとも1つが、凝縮蒸気を含む、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0131】
態様15は、第1の液体層及び第2の液体層のうちの少なくとも1つが、水溶液を含む、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0132】
態様16は、第1の液体層及び第2の液体層のうちの少なくとも1つが、非水溶液を含む、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0133】
態様17は、第1の液体層及び第2の液体層のうちの少なくとも1つが、グリセリン、アルコール溶液、蒸気、またはこれらの任意の組み合わせを含む、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0134】
態様18は、第1の液体層及び第2の液体層のうちの少なくとも1つが、腐食を抑制することと、表面をテクスチャ加工することと、接着性を増加させることと、のうちの少なくとも1つを行うように構成されている、前処理化学物質を含み、前処理化学物質が、有機ホスホン酸、有機ホスフィン酸、シラン、カップリング剤、ポリマー、コポリマー、Zr/Mo前処理、Mnベースの前処理、Ceベースの前処理、またはこれらの組み合わせから選択される、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0135】
態様19は、第1の液体層及び第2の液体層が、2つ以上のアプリケータによって第1の表面及び第2の表面上に塗布される、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0136】
態様20は、2つ以上のアプリケータが、パルスを有するか、もしくは有しないスプレーアプリケータ、低圧高容量スプレーアプリケータ、低圧低容量スプレーアプリケータ、回転噴霧器、静電アプリケータ、ロールアプリケータ、またはこれらの任意の組み合わせを備える、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0137】
態様21は、2つ以上のアプリケータが、連続したラインにある、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0138】
態様22は、2つ以上のアプリケータが、2つ以上のアプリケータ浴として構成されている、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0139】
態様23は、第1の液体層にわたって高エネルギーのビームを走査することが、第1の液体層上にレーザーエネルギーのビームを誘導することを含む、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0140】
態様24は、レーザーエネルギーのビームが、連続レーザー、パルスレーザー、ナノ秒パルスレーザー、ピコ秒パルスレーザー、フェムト秒パルスレーザー、シングルパス構成、ダブルパス構成、連続波を有するレーザー、連続波を有しないレーザー、またはこれらの任意の組み合わせによって提供される、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0141】
態様25は、レーザーエネルギーのビームが、イッテルビウムレーザー、Nd-YAGレーザー、CO2レーザー、エキシマレーザー、またはこれらの任意の組み合わせによって提供される、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0142】
態様26は、レーザーエネルギーのビームが、約200nm~約1500nmの波長を有する、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0143】
態様27は、第1の液体層にわたって高エネルギーのビームを走査することが、第1の液体層上に少なくとも1つのレーザーエネルギーのビームを誘導することを含み、方法が、第2の液体層上に別の少なくとも1つのレーザーエネルギーのビームを誘導することをさらに含む、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0144】
態様28は、第1の表面が、処理されていない第1の表面である、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0145】
態様29は、処理されていない第1の表面が、その上に有機物、油、炭化水素、土壌、または無機残渣のうちの1つ以上を有し、処理された第1の表面が、有機物、油、炭化水素、土壌、または無機残渣のうちの1つ以上を欠いているか、または実質的に欠いている、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0146】
態様30は、処理されていない第1の表面が、化学的エッチング、酸性またはアルカリ性洗浄、溶媒洗浄、蒸気脱脂、機械的表面処理、ブラッシング、バフ研磨、機械的表面研磨、電気化学的研磨、化学的研磨、界面活性剤洗浄、及び変換コーティングから選択される1つ以上の湿潤加工工程に供されていない、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0147】
態様31は、処理されていない第1の表面が、処理されていない第1の表面上に高エネルギーのビームを誘導する前に、1つ以上の湿潤加工工程に供されていない、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0148】
態様32は、処理されていない第1の表面が、その上に圧延潤滑剤を有する圧延表面に対応する、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0149】
態様33は、処理されていない第1の表面上に高エネルギーのビームを誘導することが、乾燥洗浄プロセスに対応し、処理された第1の表面が、洗浄された表面に対応する、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0150】
態様34は、処理されていない第1の表面上に高エネルギーのビームを誘導することが、乾燥表面修正プロセスに対応し、処理された第1の表面が、接着剤との結合に好適な活性化された表面に対応する、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0151】
態様35は、第1の表面が、近接表面微細構造を含み、第1の表面上にエネルギーのビームを誘導することが、近接表面微細構造の少なくとも一部分を除去または排除する、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0152】
態様36は、第1の表面上に高エネルギーのビームを誘導することが、近接表面微細構造を熱的に修正する、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0153】
態様37は、処理された第1の表面が、0.1~0.5の乾燥静摩擦係数を呈する、先行または後続態様のいずれか1つに記載の方法である。
【0154】
態様38は、アルミニウム合金製品であって、圧延アルミニウム合金基板であって、圧延アルミニウム合金基板が、バルクであって、バルクが、金属間粒子と、アルミニウム合金の粒を含むマトリックスと、を含む、バルクと、バルクの第1の部分を覆うレーザー処理領域であって、レーザー処理領域が、処理された表面下層であって、処理された表面下層が、高エネルギーのビームによって以前に溶融されているアルミニウム合金の再凝固層を含み、表面下層が、アルミニウム合金製品の1μm~10μmの深さを占め、処理された表面下層中の金属間粒子の第1の濃度が、バルク中の金属間粒子の第2の濃度未満である、処理された表面下層と、レーザー加工された表面層であって、レーザー加工された表面層が、近接表面微細構造と、有機物、油、炭化水素、土壌、無機残渣、圧延酸化物、または陽極酸化物のうちの1つ以上と、を実質的に欠いており、レーザー加工された表面層が、10nm~300nmの厚さを有する第1の酸化層を含む、レーザー加工された表面層と、を含む、レーザー処理領域と、を含む、圧延アルミニウム合金基板を含む、アルミニウム合金製品である。
【0155】
態様39は、アルミニウム合金が、5xxxシリーズアルミニウム合金、6xxxシリーズアルミニウム合金、または7xxxシリーズアルミニウム合金を含む、先行または後続態様のいずれか1つに記載のアルミニウム合金製品である。
【0156】
態様40は、アルミニウム合金中のマグネシウムの濃度が、10重量%未満である、先行または後続態様のいずれか1つに記載のアルミニウム合金製品である。
【0157】
態様41は、バルク中のマグネシウムの濃度が、処理された表面下層中よりも大きいか、またはバルク中の亜鉛の濃度が、処理された表面下層中よりも大きい、先行または後続態様のいずれか1つに記載のアルミニウム合金製品である。
【0158】
態様42は、レーザー処理領域が、FLTM BV 101-07標準試験に従って、45サイクル~125サイクル、またはそれ以上の結合耐久性を呈する、先行または後続態様のいずれか1つに記載のアルミニウム合金製品である。
【0159】
態様43は、アルミニウム合金製品が、リン含有有機酸コーティングなどの、その上に官能化層を含まない、先行または後続態様のいずれか1つに記載のアルミニウム合金製品である。
【0160】
態様44は、バルクの第2の部分を覆う処理されていない領域をさらに含み、処理されていない領域が、レーザー処理プロセスに供されてないか、または供されたことがない、先行または後続態様のいずれか1つに記載のアルミニウム合金製品である。
【0161】
態様45は、レーザー処理領域の第1の算術平均高さ(Spk)が、処理されていない領域の第2の算術平均高さ未満である、先行または後続態様のいずれか1つに記載のアルミニウム合金製品である。
【0162】
態様46は、レーザー処理領域が、0.1μm~10μmの算術平均高さ(Sa)を呈する、先行または後続態様のいずれか1つに記載のアルミニウム合金製品である。
【0163】
態様47は、レーザー処理領域が、0.1%~80%の複雑さ(Sdr)を呈する、先行または後続態様のいずれか1つに記載のアルミニウム合金製品である。
【0164】
態様48は、レーザー処理領域が、最大3ヶ月の表面安定性を呈する、先行態様のいずれか1つに記載のアルミニウム合金製品である。
【0165】
上で引用されたすべての特許、刊行物、及び要約は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。例示された実施形態を含む実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的のためにのみ提示されており、網羅的であること、または開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。それらの多数の修正、適合、及び使用が、当業者には明らかであろう。