(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】故障診断方法及び診断機器
(51)【国際特許分類】
H02S 50/00 20140101AFI20240430BHJP
【FI】
H02S50/00
(21)【出願番号】P 2022568451
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(86)【国際出願番号】 CN2020140475
(87)【国際公開番号】W WO2021253790
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】202010553975.2
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517112122
【氏名又は名称】陽光電源股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】雲 平
(72)【発明者】
【氏名】崔 ▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】徐 君
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-063212(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106911304(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109756188(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0320145(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106452352(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108226629(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109510595(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105827200(CN,A)
【文献】特開2013-168591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 50/00-50/15
G01R 1/00-35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
故障診断方法であって、両面太陽光発電機器に適用され、前記方法は、
診断対象の、放射照度が第1所定値以上である状況での高い放射照度IVデータセット、及び放射照度が第2所定値以下である状況での低い放射照度IVデータセットを取得するステップであって、前記第1所定値は前記第2所定値より大きいステップと、
目的IVデータセットから、変曲点データとしての目的IVデータを選別するステップであって、前記目的IVデータセットは前記高い放射照度IVデータセット及び前記低い放射照度IVデータセットのうちの1つであるステップと、
参照IVデータセットにおける、前記目的IVデータと同じ電圧値に対応するIVデータを取得し、参照IVデータを得るステップであって、前記参照IVデータセットは前記高い放射照度IVデータセット及び前記低い放射照度IVデータセットにおける、前記目的IVデータセットとしていないIVデータセットであるステップと、
前記参照IVデータが前記参照IVデータセットの変曲点データであるときに、
前記目的IVデータの電流値及び前記参照IVデータの電流値に対してそれぞれに規格化変換を行って、規格化変換された前記目的IVデータの電流値と規格化変換された前記参照IVデータの電流値に基づいて前記目的IVデータ及び前記参照IVデータが放射照度に応じて変化するか否かを判定し、
前記目的IVデータ及び前記参照IVデータが放射照度に応じて変化するときに、前記診断対象に裏面電流ミスマッチが発生したと決定し、前記目的IVデータ及び前記参照IVデータが放射照度に応じて変化しないときに、前記診断対象に前面電流ミスマッチが発生したと決定するステップと、を含むことを特徴とする故障診断方法。
【請求項2】
規格化変換された前記目的IVデータの電流値と規格化変換された前記参照IVデータの電流値に基づいて前記目的IVデータ及び前記参照IVデータが放射照度に応じて変化するか否かを判定するステップは、
規格化変換された前記目的IVデータの電流値と
規格化変換された前記参照IVデータの電流値との大きさ関係に基づき、前記目的IVデータ及び前記参照IVデータが放射照度に応じて変化するか否かを判定するステップを含むことを特徴とする請求項
1に記載の故障診断方法。
【請求項3】
前記目的IVデータの電流値及び前記参照IVデータの電流値に対してそれぞれに規格化変換を行うステップは、
所定基準条件に基づき、前記目的IVデータの電流値及び前記参照IVデータの電流値に対してそれぞれに規格化変換を行って、前記目的IVデータの電流値に対応する第1電流標準値、及び前記参照IVデータの電流値に対応する第2電流標準値を取得するステップを含み、
規格化変換された前記目的IVデータの電流値と
規格化変換された前記参照IVデータの電流値との大きさ関係に基づき、前記目的IVデータ及び前記参照IVデータが放射照度に応じて変化するか否かを判定するステップは
、
前記第1電流標準値と前記第2電流標準値との差値を計算し、電流差値を取得するステップと、
前記電流差値の絶対値が第1所定電流閾値より小さいときに、前記目的IVデータ及び前記参照IVデータが放射照度に応じて変化しないと判定するステップと、
前記電流差値の絶対値が前記第1所定電流閾値以上であるときに、前記目的IVデータ及び前記参照IVデータが放射照度に応じて変化すると判定するステップと、を含むことを特徴とする請求項
2に記載の故障診断方法。
【請求項4】
前記参照IVデータセットにおける、前記目的IVデータと同じ電圧値に対応するIVデータを取得し、参照IVデータを得た後、前記参照IVデータが前記参照IVデータセットの変曲点データではなく、且つ前記目的IVデータセットが前記高い放射照度IVデータセットであるときに、前記診断対象に高い放射照度前面電流ミスマッチ故障が存在すると決定することを特徴とする請求項1に記載の故障診断方法。
【請求項5】
前記参照IVデータセットにおける、前記目的IVデータと同じ電圧値に対応するIVデータを取得し、参照IVデータを得た後、前記参照IVデータは前記参照IVデータセットの変曲点データではなく、且つ前記目的IVデータセットが前記低い放射照度IVデータセットであるときに、前記診断対象に低い放射照度前面電流ミスマッチ故障が存在すると決定することを特徴とする請求項1に記載の故障診断方法。
【請求項6】
前記目的IVデータセットから、変曲点データとしての目的IVデータを選別できていないときに、前記参照IVデータセットにおける、前記目的IVデータと同じ電圧値に対応するIVデータを取得し、参照IVデータを得る前に、前記方法は、
前記高い放射照度IVデータセット及び前記低い放射照度IVデータセットにおけるユニット開回路電圧値をそれぞれに読み取り、前記高い放射照度IVデータセットに対応する第1開回路電圧値、及び前記低い放射照度IVデータセットに対応する第2開回路電圧値を取得するステップと、
前記第1開回路電圧値と前記第2開回路電圧値との大きさ関係に基づき、前記診断対象にPID機能故障が発生したか否かを判定するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の故障診断方法。
【請求項7】
前記第1開回路電圧値と前記第2開回路電圧値との大きさ関係に基づき、前記診断対象にPID機能故障が発生したか否かを判定するステップは、
前記第1開回路電圧値と前記第2開回路電圧値との差値を計算し、電圧差値を取得するステップと、
前記電圧差値の絶対値が所定電圧閾値以上であるときに、前記診断対象にPID機能故障が発生したと判定するステップと、を含むことを特徴とする請求項
6に記載の故障診断方法。
【請求項8】
前記第1開回路電圧値と前記第2開回路電圧値との差値を計算し、電圧差値を取得した後、前記電圧差値の絶対値が前記所定電圧閾値より小さいときに、前記方法は、
前記診断対象のフィルファクターを計算するステップと、
前記フィルファクターが所定フィルファクター閾値以下であるときに、前記診断対象に劣化故障が発生したと判定するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項
7に記載の故障診断方法。
【請求項9】
前記診断対象のフィルファクターを計算するステップは、
所定基準条件に基づき、前記高い放射照度IVデータセットにおけるIVデータを変換し、規格化された高い放射照度IVデータセットを取得するステップと、
前記規格化された高い放射照度IVデータセットにおける規格化されたIVデータに基づき、前記診断対象のフィルファクターを計算するステップと、を含むことを特徴とする請求項
8に記載の故障診断方法。
【請求項10】
前記所定基準条件は、前記高い放射照度IVデータセットに対応するテスト条件、前記低い放射照度IVデータセットに対応するテスト条件、及び標準テスト条件STCのうちの1つを含むことを特徴とする請求項
3に記載の故障診断方法。
【請求項11】
診断機器であって、メモリ及びプロセッサを含み、前記メモリには前記プロセッサに実行されるプログラムが記憶されることで、請求項1~
10の何れか1項に記載の故障診断方法を実現することを特徴とする診断機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年06月17日にて中国特許庁に提出され、出願番号が202010553975.2であり、発明の名称が「故障診断方法及び診断機器」である中国特許出願の優先権を主張して、その全ての内容は本出願に援用される。
【0002】
本発明は、太陽光発電の技術分野に関して、特に故障診断方法及び診断機器に関する。
【背景技術】
【0003】
太陽光発電ユニット又はストリングのIVデータは、太陽光発電ユニット又はストリングの運転過程での電流―電圧データを指す。実際の応用において、検出機器によって、太陽光発電ユニット又はストリングに対してIV走査を行うと、相応的なIVデータセットを取得でき、データセットには複数の値のペアが含まれ、各値のペアは何れも1つの電流値、及び当該電流値と同一サンプリング時間にある電圧値からなる。IVデータは太陽光発電ユニット又はストリングの運転状態を直接的に反映できるため、IVデータは太陽光発電ユニット又はストリングの故障診断に大幅に適用される。
【0004】
従来技術の診断方法は、ほとんど検出対象、即ち、太陽光発電ユニット又はストリングのIVデータセットに基づきIV曲線を描画し、得られたIV曲線に、検出対象の運転異常を表徴する変曲点が含まれ、即ち、IVデータセットに変曲点データが含まれると、検出対象にミスマッチ故障が発生したと判定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者は、両面ユニット又はストリングにとって、そのIVデータは前面ユニット及び裏面ユニットの出力特徴の重畳結果であり、従来の通常の診断方法は、一般的に、片面ユニット又はストリングのIVデータに基づき実現され、片面ユニット又はストリングのみに対して、よい適応性及び診断精度を具備し、両面ユニット又はストリングに対して、従来の診断方法はミスマッチ故障の具体的な原因を決定できず、即ち、ミスマッチ故障が前面電流ミスマッチから引き起されるか、それとも、裏面電流ミスマッチから引き起されるかを決定できず、実際の応用ニーズを満たしにくいことを発見した。
【0006】
本発明が提供する故障診断方法及び診断機器において、異なる照射条件でのIVデータを分析することで、両面ユニット又はストリングのミスマッチ故障が前面電流ミスマッチであるか、それとも裏面電流ミスマッチであるかを決定し、故障診断の精度を向上させ、実際の応用ニーズを満たす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を実現するために、本発明が提供する技術案は以下の通りである。
第1態様によれば、本発明は故障診断方法を提供し、前記方法は両面太陽光発電機器に適用される。前記方法は、
診断対象の、放射照度が第1所定値の以上である状況での高い放射照度IVデータセット、及び放射照度が第2所定値以下である状況での低い放射照度IVデータセットを取得するステップであって、前記第1所定値は前記第2所定値より大きいステップと、
目的IVデータセットから、変曲点データとしての目的IVデータを選別するステップであって、前記目的IVデータセットは前記高い放射照度IVデータセット及び前記低い放射照度IVデータセットのうちの1つであるステップと、
参照IVデータセットにおける、前記目的IVデータと同じ電圧値に対応するIVデータを取得し、参照IVデータを得るステップであって、前記参照IVデータセットは前記高い放射照度IVデータセット及び前記低い放射照度IVデータセットにおける、前記目的IVデータセットとしていないIVデータセットであるステップと、
前記参照IVデータが前記参照IVデータセットの変曲点データであるときに、前記目的IVデータ及び前記参照IVデータが放射照度に応じて変化するか否かを判定し、判定結果に基づき、前記診断対象に前面電流ミスマッチが発生したか、又は裏面電流ミスマッチが発生したかを決定するステップと、を含む。
【0008】
好ましくは、前記目的IVデータ及び前記参照IVデータが放射照度に応じて変化するか否かを判定し、判定結果に基づき、前記診断対象に前面電流ミスマッチが発生したか、又は裏面電流ミスマッチが発生したかを決定するステップは、
前記目的IVデータ及び前記参照IVデータが放射照度に応じて変化するか否かを判定するステップと、
前記目的IVデータ及び前記参照IVデータが放射照度に応じて変化するときに、前記診断対象に裏面電流ミスマッチが発生したと決定するステップと、
前記目的IVデータ及び前記参照IVデータが放射照度に応じて変化しないときに、前記診断対象に前面電流ミスマッチが発生したと決定するステップと、を含む。
【0009】
好ましくは、前記目的IVデータ及び前記参照IVデータが放射照度に応じて変化するか否かを判定するステップは、
前記目的IVデータの電流値と前記参照IVデータの電流値との大きさ関係に基づき、前記目的IVデータ及び前記参照IVデータが放射照度に応じて変化するか否かを判定するステップを含む。
【0010】
好ましくは、前記目的IVデータの電流値と前記参照IVデータの電流値との大きさ関係に基づき、前記目的IVデータ及び前記参照IVデータが放射照度に応じて変化するか否かを判定するステップは、
所定基準条件に基づき、前記目的IVデータの電流値及び前記参照IVデータの電流値に対してそれぞれに規格化変換を行って、前記目的IVデータの電流値に対応する第1電流標準値、及び前記参照IVデータの電流値に対応する第2電流標準値を取得するステップと、
前記第1電流標準値と前記第2電流標準値との差値を計算し、電流差値を取得するステップと、
前記電流差値の絶対値が第1所定電流閾値より小さいときに、前記目的IVデータ及び前記参照IVデータが放射照度に応じて変化しないと判定するステップと、
前記電流差値の絶対値が前記第1所定電流閾値以上であるときに、前記目的IVデータ及び前記参照IVデータが放射照度に応じて変化すると判定するステップと、を含む。
【0011】
好ましくは、前記参照IVデータセットにおける、前記目的IVデータと同じ電圧値に対応するIVデータを取得し、参照IVデータを得た後、前記参照IVデータが前記参照IVデータセットの変曲点データではなく、且つ前記目的IVデータセットが前記高い放射照度IVデータセットであるときに、前記診断対象に高い放射照度前面電流ミスマッチ故障が存在すると決定する。
【0012】
好ましくは、前記参照IVデータセットにおける、前記目的IVデータと同じ電圧値に対応するIVデータを取得し、参照IVデータを得た後、前記参照IVデータが前記参照IVデータセットの変曲点データではなく、且つ前記目的IVデータセットが前記低い放射照度IVデータセットであるときに、前記診断対象に低い放射照度前面電流ミスマッチ故障が存在すると決定する。
【0013】
好ましくは、前記目的IVデータセットから、変曲点データとしての目的IVデータを選別できていないときに、前記参照IVデータセットにおける、前記目的IVデータと同じ電圧値に対応するIVデータを取得し、参照IVデータを得る前に、前記方法は、
前記高い放射照度IVデータセット及び前記低い放射照度IVデータセットにおけるユニット開回路電圧値をそれぞれに読み取り、前記高い放射照度IVデータセットに対応する第1開回路電圧値、及び前記低い放射照度IVデータセットに対応する第2開回路電圧値を取得するステップと、
前記第1開回路電圧値と前記第2開回路電圧値との大きさ関係に基づき、前記診断対象にPID機能故障が発生したか否かを判定するステップと、をさらに含む。
【0014】
好ましくは、前記第1開回路電圧値と前記第2開回路電圧値との大きさ関係に基づき、前記診断対象にPID機能故障が発生したか否かを判定するステップは、
前記第1開回路電圧値と前記第2開回路電圧値との差値を計算し、電圧差値を取得するステップと、
前記電圧差値の絶対値が所定電圧閾値以上であるときに、前記診断対象にPID機能故障が発生したと判定するステップと、を含む。
【0015】
好ましくは、前記第1開回路電圧値と前記第2開回路電圧値との差値を計算し、電圧差値を取得した後、前記電圧差値の絶対値が前記所定電圧閾値より小さいときに、前記方法は、
前記診断対象のフィルファクターを計算するステップと、
前記フィルファクターが所定フィルファクター閾値以下であるときに、前記診断対象に劣化故障が発生したと判定するステップと、をさらに含む。
【0016】
好ましくは、前記診断対象のフィルファクターを計算するステップは、
所定基準条件に基づき、前記高い放射照度IVデータセットにおけるIVデータを変換し、規格化された高い放射照度IVデータセットを取得するステップと、
前記規格化された高い放射照度IVデータセットにおける規格化されたIVデータに基づき、前記診断対象のフィルファクターを計算するステップと、を含む。
【0017】
好ましくは、前記所定基準条件は、前記高い放射照度IVデータセットに対応するテスト条件、前記低い放射照度IVデータセットに対応するテスト条件、及び標準テスト条件STCのうちの1つを含む。
【0018】
第2態様によれば、本発明は診断機器を提供し、前記診断機器はメモリ及びプロセッサを含む。前記メモリには前記プロセッサに実行されるプログラムが記憶されることで、本発明の第1態様の何れか1項に記載の故障診断方法を実現する。
【発明の効果】
【0019】
本発明が提供する故障診断方法において、診断対象の高い放射照度IVデータセット及び低い放射照度IVデータセットを取得した後、何れか1つのIVデータセットを目的IVデータセットとして、当該目的IVデータセットから、変曲点データとしての目的IVデータを選別し、高い放射照度IVデータセット及び低い放射照度IVデータセットにおける、目的IVデータセットとしていないIVデータセットを参照IVデータセットとし、参照IVデータとして、参照IVデータセットから、目的IVデータと同じ電圧値に対応するIVデータを選別する。参照IVデータが同じく参照IVデータセットにおける変曲点データであれば、目的IVデータ及び参照IVデータが放射照度に連れて変化するか否かをさらに判定し、判定結果に基づき、診断対象には前面電流ミスマッチが発生したか、それとも裏面電流ミスマッチが発生したか、を決定する。本発明が提供する診断方法によって、従来技術に加えて、異なる照射条件でのIVデータを分析することで、両面ユニット又はストリングのミスマッチ故障が前面電流ミスマッチであるか、それとも裏面電流ミスマッチであるかを決定し、診断対象の前面電流ミスマッチ故障と裏面電流ミスマッチ故障判定のデカップリングを実現し、故障診断の精度を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の実施例又は従来技術の技術案を明らかに説明するために、以下は実施例又は従来技術の記載の必要な図面を簡単に紹介し、明らかに、以下に記載の図面は本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、進歩性に値する労働をしない前提として、これらの図面に基づき、他の図面を取得できる。
【
図1】本発明出願が提供する故障診断方法のフロ一チャ一卜
【
図3】本発明出願が提供する正常な太陽光発電機器の開回路電圧―放射照度の関係模式図
【
図4】本発明出願が提供する故障の太陽光発電機器の開回路電圧―放射照度の関係模式図
【
図5】本発明出願が提供する診断機器の構成ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下は本出願の実施例の図面を結合して、本出願の実施例の技術案を明らか且つ完全に記載し、明らかに、記載の実施例は全ての実施例ではなく、本出願の一部の実施例に過ぎない。本出願の実施例に基づき、当業者が進歩性に値する労働をしない前提として、取得した他の全ての実施例は、何れも本出願の保護範囲に属する。
【0022】
図1を参照し、
図1は、本発明の実施例が提供する故障診断方法のフロ一チャ一卜である。本発明が提供する故障診断方法は主に、両面太陽光発電機器、例えば両面ユニット又はストリングに対して故障診断を行って、当該方法は電子機器に適用される。当該電子機器はノートパソコン、PC(パーソナルコンピュータ)、データサーバなどのような、画像、データ処理能力を有する電子機器であってもよい。明らかに、ある状況で、当該電子機器はネットワーク側のサーバを選択して実現されてもよい。
図1を参照し、本発明の実施例が提供する故障診断方法は以下のステップを含む。
S100:診断対象の、放射照度が第1所定値以上である状況での高い放射照度IVデータセット、及び放射照度が第2所定値以下である状況での低い放射照度IVデータセットを取得する。
【0023】
以上のように、本発明が提供する故障診断方法は主に、両面ユニット又は両面ストリングなどの両面太陽光発電機器の故障診断に適用されるため、本発明の各実施例に言及された診断対象は、実際の応用における両面太陽光発電ユニット、又は両面太陽光発電ストリングなどの両面太陽光発電機器を指す。無論、両面太陽光発電機器と同様又は近似の太陽光発電特性を有する他の太陽光発電機器であってもよい。
【0024】
さらに、本発明の実施例が提供する故障診断方法において、高い放射照度IVデータセット及び低い放射照度IVデータセットの取得条件をより明瞭にするために、第1所定値及び第2所定値を設定し、第1所定値は第2所定値より大きい。放射照度が第1所定値の以上である状況で取得したIVデータセットを高い放射照度IVデータセットとし、対応するように、放射照度が第2所定値以下である状況で取得したIVデータセットを低照射IVデータセットとする。例えば、第1所定値を500W/m2に設定し、第2所定値を300 W/m2に設定する。
【0025】
ここで、診断対象の各IVデータセットについて、従来技術における検出機器を利用して、従来のIV走査方法に従って取得してもよく、本発明はIVデータセットの取得過程に対して具体的に限定しない。
【0026】
S110:目的IVデータセットから、変曲点データとしての目的IVデータを選別する。
【0027】
上記ステップから分かるように、本発明の実施例は診断対象の高い放射照度IVデータセット及び低い放射照度IVデータセットに関して、ここで、目的IVデータセットは上記高い放射照度IVデータセット及び低い放射照度IVデータセットのうちの任意の1つであってもよく、即ち、目的IVデータセットとして、高い放射照度IVデータセットを選択してもよいし、低照射IVデータセットを選択してもよい。
【0028】
高い放射照度条件で、太陽光発電機器は、より典型的な出力特性を表現し、IV走査過程での各種の誤差の、出力データに対する影響がより小さいため、実際の応用において、目的IVデータセットとして、高い放射照度IVデータを優先的に選択する。
【0029】
目的IVデータセットにおける変曲点データの選別について、従来技術の関連方法に従って実現してもよく、例えば、目的IVデータセットにおけるいくつかのIVデータに基づき、IV曲線を描画してから、IV曲線の変化状況に基づき、変曲点を決定し、当該変曲点に対応するIVデータを目的IVデータとする。
【0030】
ここで、目的IVデータセットから変曲点データを選別することは、2つの可能性が存在する。その1つは、変曲点データを選別でき、このような状況で上記的目的IVデータを取得する。もう1つは、目的IVデータセットから変曲点データを選別できず、このような状況で、診断対象には前面電流ミスマッチ又は裏面電流ミスマッチ故障が出現していないと判定できる。第2の状況について、本発明は、診断対象にPID故障又は劣化故障が存在するかを判定する方法をさらに提供し、ここで、詳しく記載しない。
【0031】
好ましくは、実際の応用において、高い放射照度IVデータセットか、低い放射照度IVデータセットかに関わらず、何れも若干のエラーデータ又は干渉データが存在する可能性があると考えると、具体的に選別する前、各IVデータセットに対して対応するノイズ除去処理、例えば、データ重複排除、ソーティング、異常点濾過、補間などを行ってもよく、ここで、贅言しない。
【0032】
S120:参照IVデータセットにおける、目的IVデータと同じ電圧値に対応するIVデータを取得し、参照IVデータを得る。
【0033】
目的IVデータセットの選択に類似し、本発明の実施例の参照IVデータセットは、高い放射照度IVデータセットであってもよいし、低照射IVデータセットであってもよいが、S110において、目的IVデータセットとして、両者のうちの1つを選択するため、当該ステップにおいて、参照IVデータセットは、高い放射照度IVデータセット及び低い放射照度IVデータセットにおける、目的IVデータセットとしていないIVデータセットである。例えば、高照射IVデータセットを目的IVデータセットとするときに、対応するように、参照IVデータセットとして、低い放射照度IVデータセットしか選択できない。
【0034】
実際の応用において、IVデータセットには若干のIVデータが含まれ、各IVデータには何れも電圧値及び電流値という2つのパラメータ値が含まれる。本発明の実施例が提供する診断方法において、変曲点位置の一致性に基づき診断対象に対して故障診断を行う。従って、目的IVデータを取得した後、参照IVデータセットから、目的IVデータと同じ電圧値に対応するIVデータを選別し、参照IVデータを得る必要がある。
【0035】
S130:参照IVデータが参照IVデータセットの変曲点データであるか否かを判定し、YESであれば、S140を実行し、NOであれば、S170を実行する。
【0036】
参照IVデータを得た後、参照IVデータが参照IVデータセットの変曲点データであるか否かを判定する。好ましくは、判定方法について、上記目的IVデータセットから変曲点データを選別する方法を参照して実現すればよく、ここで、贅言しない。
【0037】
参照IVデータが参照IVデータセットの変曲点データであるときに、S140を実行し、参照IVデータが参照IVデータセットの変曲点データでないときに、S170を実行する。
【0038】
S140:目的IVデータ及び参照IVデータが放射照度に応じて変化するか否かを判定し、YESであれば、S150を実行し、NOであれば、S160を実行する。
【0039】
同一電圧位置で、目的IVデータセット及び参照IVデータセットには何れも変曲点データが存在する状況で、診断対象に既に電流ミスマッチ故障が発生したと判定できるが、具体的に、前面電流ミスマッチ故障であるか、それとも裏面電流ミスマッチ故障であるかということは、上記内容に基づき、正確に判定しにくい。
【0040】
本発明の実施例が提供する故障診断方法において、目的IVデータ及び参照IVデータが放射照度に応じて変化するか否かをさらに判定し、判定結果に基づき、診断対象に前面電流ミスマッチが発生したか、又は裏面電流ミスマッチが発生したかを決定する。目的IVデータ及び参照IVデータが放射照度に応じて変化するときに、診断対象に裏面電流ミスマッチが発生したと決定でき、逆に、目的IVデータ及び参照IVデータが放射照度に応じて変化しないときに、診断対象に前面電流ミスマッチが発生したと決定できる。
【0041】
好ましくは、本発明の実施例は、目的IVデータの電流値と参照IVデータの電流値との大きさ関係に基づき、目的IVデータ及び参照IVデータが放射照度に応じて変化するか否かを判定する方法を提供する。
【0042】
具体的に、参照IVデータ及び目的IVデータは異なるテスト条件で取得され、診断対象が所在する外部環境が大きく異なっていると考えると、電流値の大きさ関係を具体的に比較する前、統一の所定基準条件に従って、目的IVデータ及び参照IVデータに対してデータ変換を行う必要がある。
【0043】
本発明の実施例で言及された所定基準条件は、高い放射照度IVデータセットに対応するテスト条件、低い放射照度IVデータセットに対応するテスト条件、及びSTC(standard test condition、標準テスト条件)のうちの1つであってもよいし、無論、他のテスト条件であってもよい。高い放射照度IVデータセット及び低い放射照度IVデータセットにおけるIVデータを同一標準に統一に変換できるテスト条件は、何れも好適なものであり、本発明のコアアイデア範囲を超えないことを前提として、何れも本発明の保護範囲に属する。
【0044】
具体的な規格化変換過程について、従来技術を参照して実現すればよい。以下は、通常の変換方法を簡単に紹介し、当該方法は太陽光発電単一ダイオード5パラメータモデルを利用して、各データセットにおけるIVデータを変換する。
【0045】
まず、式(1)~式(4)を参照し、異なる放射照度で取得した放射照度G、太陽光発電ユニット温度T、及びIVデータセットに基づき算出した開回路電圧Voc、短絡電流Isc、太陽光発電ユニット等価直列抵抗Rs、太陽光発電ユニット等価並列抵抗Rshを利用して、ユニットのメーカーが提供した開回路電圧温度係数β、短絡電流温度係数αを参照し、STC条件下での以下のパラメータ、すなわち、
STCでの開回路電圧Voc.ref、STCでの短絡電流Isc.ref、STCでの太陽光発電ユニット等価直列抵抗Rs.ref、STCでの太陽光発電ユニット等価並列抵抗Rsh.refを決定して取得する。無論、STC条件での放射照度Gref=1000W/m2、及び太陽光発電ユニット標準温度Tref=(273.15+25)Kを代入する必要がある。
【0046】
そして、式(5)及び式(6)を利用して、上記算出したVoc.ref、Isc.ref、Rs.ref、Rsh.refを結合し、STCでの逆飽和電流Io、STCでの光電流ILを 計算する。
【0047】
最後、STCで算出した以上の5パラメータを式(7)に代入し、STCでのIV方程式を取得し、得られたIV方程式に基づき、他の非STC条件でのデータセットにおける各IVデータに対して換算すると、対応するSTC条件でのIVデータセットを取得できる。本発明の実施例において、上記目的IVデータ、及び参照IVデータの規格化変換を完成でき、目的IVデータの電流値に対応する第1電流標準値、及び参照IVデータの電流値に対応する第2電流標準値を取得できる。関連式における電池理想係数aに対して経験値を選択でき、本発明はこれを限定しない。
【0048】
【0049】
ここで、IVデータの規格化変換過程について、高い放射照度IVデータセット及び低い放射照度IVデータセットを取得した後、すぐに行って、規格化された高い放射照度IVデータセット及び規格化された低い放射照度IVデータセットを取得してから、後続の変曲点データの選別過程を実行し、このような状況で取得した目的IVデータ及び参照IVデータは既に同一標準での規格化されたデータである。IVデータセットを取得した後、すぐに規格化変換過程を行うと、IVデータセットにおける各IVデータに対して規格化変換を行う必要があり、上記の目的IVデータ及び参照IVデータのみに対して規格化変換を行う処理方式より、処理を必要とするデータが多く、より多くの時間及びハードウェアリソースを消費する恐れがある。
【0050】
目的IVデータの電流値に対応する第1電流標準値、及び参照IVデータの電流値に対応する第2電流標準値を取得した後、第1電流標準値と第2電流標準値との差値を計算し、電流差値を取得する。取得した電流差値の絶対値が第1所定電流閾値より小さいときに、目的IVデータ及び参照IVデータが放射照度に応じて変化しないと判定する。逆に、取得した電流差値の絶対値が第1所定電流閾値以上であるときに、目的IVデータ及び参照IVデータが放射照度に応じて変化すると判定する。第1所定電流閾値は、診断精度の要求に基づき、上記IVデータセットに対応するIV曲線のノイズ及び特徴値強度を結合して決定してもよく、本発明は第1所定電流閾値の具体的な値を限定しない。
【0051】
S150:診断対象に裏面電流ミスマッチが発生したと決定する。
【0052】
目的IVデータ及び参照IVデータが放射照度に応じて変化する状況で、診断対象に裏面電流ミスマッチが発生したと決定できる。
【0053】
S160:診断対象に前面電流ミスマッチが発生したと決定する。
【0054】
目的IVデータ及び参照IVデータは放射照度に応じて変化しない状況で、診断対象に前面電流ミスマッチが発生したと決定できる。
【0055】
以下、本発明の実施例が提供する故障診断方法が、前面電流ミスマッチ故障と裏面電流ミスマッチ故障とのデカップリング認識を実現できる原理を説明する。
【0056】
診断対象の、同一電圧位置での電流値差値の絶対値、即ち、上記第1電流標準値と第2電流標準値との差値の絶対値が、第1所定電流閾値以上であるときに、変曲点位置での電流値の利得は、規格化変換の際に採用された電流利得と既に異なって、このような状況は前面電流ミスマッチではなく、裏面電流ミスマッチから引き起されることを説明する。
【0057】
具体的に、
図2を参照し、
図2は、本発明出願が提供するIV曲線模式図であり、模式図において、低い放射照度IV曲線にミスマッチされた変曲点データが存在し、高い放射照度IV曲線の同一電圧位置にもミスマッチされた変曲点データが存在すると仮定すると、IV曲線でのミスマッチ変曲点に対応する電流値の利得の大きさをさらに観察することで、「裏面電流ミスマッチ」と「前面電流ミスマッチ」とをデカップリングする必要がある。
【0058】
図2は、低い放射照度条件で、同じミスマッチ特徴を有する「前面電流ミスマッチ」、「裏面電流ミスマッチ」、及びそれぞれが同じ高い放射照度でテストされたIVデータの対比を示す。診断対象の、高、低い放射照度での電流利得(即ち、短絡電流の比値)をKに定義すると、K=Isc2/Isc1である。これを前提として、低い放射照度でのミスマッチ特徴は「前面電流ミスマッチ」から引き起こされると、
図2に示すように、ミスマッチ変曲点の電流利得は、IV曲線における他の正常なIVデータ点の電流利得と基本的に同様であり、なぜならば、太陽光発電ユニットの前面は、太陽光線を直接的に利用するためである。低い放射照度でのミスマッチ故障が「裏面電流ミスマッチ」から引き起こされると、ミスマッチ変曲点の電流利得は、IV曲線における他の正常なIVデータ点の電流利得と異なって、なぜならば、当該変曲点は「裏面電流ミスマッチ」から代入され、このような状況での変曲点電流利得は、太陽光発電ユニットの前面受光部分を含まず、太陽光発電ユニットの裏面受光部分のみから出力されるためである。
【0059】
「裏面電流ミスマッチ」の、太陽光発電ユニットの全体性能に対する影響程度について、太陽光発電ユニットの裏面が受ける光線の比例に依存し、当該比例は放射照度、地面反射率、空間散乱などの要素に影響され、一般的に、5%~30%である。最大の30%を例として、IV曲線における正常なIVデータの電流利得はK1であると仮定すると、「裏面電流ミスマッチ」の状況で、ミスマッチ変曲点の電流利得は30%*K1であり、「前面電流ミスマッチ」のミスマッチ変曲点の電流利得は約K1であり、2つの状況での電流利得の差は明らかに大きい。本発明が提供する故障診断方法は、当該特徴に基づき、診断対象の前面電流ミスマッチ故障と裏面電流ミスマッチ故障とのデカップリングを行う。
【0060】
S170:目的IVデータセットが高い放射照度IVデータセットであるか否かを判定し、YESであれば、S180を実行し、NOであれば、S190を実行する。
【0061】
参照IVデータが参照IVデータセットの変曲点データではない状況で、1つの放射照度条件のみで、診断対象に前面電流ミスマッチが出現したことを説明し、このような状況で、さらに、変曲点データの由来に基づき、診断対象が高照射条件下での前面電流ミスマッチであるか、それとも、低い放射照度条件での前面電流ミスマッチであるかを判定することができる。
【0062】
当該ステップにおいて、同じように、目的IVデータセットが高い放射照度IVデータセットであるか否かを直接的に判定でき、変曲点データとしての目的IVデータの由来を確認する。
【0063】
S180:診断対象に高い放射照度前面電流ミスマッチ故障が存在すると決定する。
【0064】
目的IVデータセットが高い放射照度IVデータセットであり、即ち、変曲点データは高い放射照度IVデータセットに由来するときに、診断対象に高い放射照度前面電流ミスマッチ故障が存在すると決定できる。
【0065】
S190:診断対象に低い放射照度前面電流ミスマッチ故障が存在すると決定する。
【0066】
目的IVデータセットが低い放射照度IVデータセットであり、即ち、変曲点データは低い放射照度IVデータセットに由来するときに、診断対象に低い放射照度前面電流ミスマッチが存在すると決定する。
【0067】
以上のように、本発明が提供する診断方法によって、従来技術に加えて、異なる照射条件でのIVデータを分析することで、両面ユニット又はストリングの電流ミスマッチ故障が前面電流ミスマッチであるか、それとも裏面電流ミスマッチであるかを決定し、診断対象の前面電流ミスマッチ故障と裏面電流ミスマッチ故障判定のデカップリングを実現し、故障診断の精度を向上させる。
【0068】
上記したように、目的IVデータセットから変曲点データを選別できていないときに、診断対象に電流ミスマッチ故障が発生していないと判定でき、この状況で、本発明は、診断対象にPID機能故障、及び劣化故障が発生したか否かを判定する診断方法をさらに提供する。
【0069】
ここで、診断対象に電流ミスマッチ故障が発生していないと判定することを前提として、PID機能故障及び劣化故障の診断を行う主な理由は以下の通りである。即ち、PID機能故障及び劣化故障によって診断対象のIVデータに変曲点が出現することはく、従って、診断対象に電流ミスマッチ故障が存在することを前提として、PID機能故障及び劣化故障の診断を行うと、診断対象のIVデータに変曲点データが含まれ、PID機能故障及び劣化故障の診断結果が不正確になる。
【0070】
好ましくは、診断対象に対してIV走査を行う過程で、取得したIVデータには診断対象のユニット開回路電圧値がさらに含まれるため、上記ステップに基づき診断対象の高い放射照度IVデータセット及び低い放射照度IVデータセットを取得し、高い放射照度IVデータセット及び低い放射照度IVデータセットにおけるユニット開回路電圧値をそれぞれに読み取り、高い放射照度IVデータセットに対応する第1開回路電圧値、及び低い放射照度IVデータセットに対応する第2開回路電圧値を取得する。
【0071】
さらに、太陽光発電ユニット又はストリングのPID機能故障が発生した際の典型的な特徴は電位の劣化(電圧減衰)であり、出力電圧が明らかに変化するため、第1開回路電圧値と第2開回路電圧値との大きさ関係に基づき、診断対象にPID機能故障が発生したか否かを判定できる。
【0072】
具体的に、
図3及び
図4を結合し、
図3は本発明出願が提供する正常な太陽光発電機器の開回路電圧―放射照度の関係模式図であり、
図4は本発明出願が提供するPID機能故障が発生した太陽光発電機器の開回路電圧―放射照度の関係模式図である。
図3から分かるように、正常な太陽光発電機器の開回路電圧V
ocは放射照度Gの変化による明らかな変化がほとんどなく、即ち、太陽光発電機器の開回路電圧は安定的である。それに対して、
図4に示すように、PID機能故障が発生した太陽光発電機器の開回路電圧は、放射照度Gの増加に応じて増加している。
【0073】
上記実際の状況に基づき、第1開回路電圧値及び第2開回路電圧値を取得した後、第1開回路電圧値と第2開回路電圧値との差値を計算し、電圧差値を取得する。取得した電圧差値の絶対値が所定電圧閾値以上であるときに、異なる放射照度の状況で、診断対象の開回路電圧の差が大きいことを説明し、そうすれば、診断対象にPID機能故障が発生したと判定し、逆に、取得した電圧差値の絶対値が所定電圧閾値より小さいときに、診断対象にPID機能故障が発生していないと判定する。
【0074】
実際の応用において、太陽光発電ユニットの使用年数が増えることに連れて、紫外線照射、水蒸気侵食、冷熱衝撃などの影響を受けるため、太陽光発電ユニットの絶縁性能が低下し、漏電が増えて、パッケージ内部の導電体の腐食酸化などの現象を招き、太陽光発電ユニットが劣化する。劣化の主な特徴は、太陽光発電ユニット内の等価の直列抵抗の増加及び並列抵抗の減少であり、総合的な表現は、太陽光発電ユニットのフィルファクターの低下にある。
【0075】
これに基づき、診断対象にPID機能故障が発生していないと判定した状況で、本発明の実施例が提供する故障診断方法はさらに、診断対象の劣化故障の診断を完成できる。
【0076】
好ましくは、上記所定基準条件に基づき、高い放射照度IVデータセットにおけるIVデータを変換し、規格化された高い放射照度IVデータセットを取得してから、規格化された高い放射照度IVデータセットにおける規格化されたIVデータに基づき、診断対象のフィルファクターを計算する。
【0077】
診断対象のフィルファクターが所定フィルファクター閾値以下であるときに、診断対象に劣化故障が発生したと判定し、逆に、診断対象のフィルファクターが所定フィルファクター閾値より大きいと、診断対象に劣化故障が発生していないと判定する。
【0078】
ここで、実際の操作で、同じように、低い放射照度IVデータセットに基づき、フィルファクターを計算してもよい。また、フィルファクターの具体的な計算方法について、従来技術の計算方式を参照して実現してもよく、本発明はフィルファクターの具体的な計算過程に対して、限定しない。
【0079】
また、ここで、PID機能故障に係る所定電圧閾値、及び劣化故障診断に係る所定フィルファクター閾値について、何れも診断対象の出力功率、及び運転中の許容可能な電力損失を結合して変換して設定してもよく、本発明は上記閾値の具体的な選択に対して、具体的に限定しない。
【0080】
図5は、本発明の実施例が提供する診断機器の構成ブロック図であり、
図5を参照し、診断機器は、少なくとも1つのプロセッサ100、少なくとも1つの通信インターフェース200、少なくとも1つのメモリ300及び少なくとも1つの通信バス400を含む。
本発明の実施例において、プロセッサ100、通信インターフェース200、メモリ300、通信バス400の数は少なくとも1つであり、プロセッサ100、通信インターフェース200、メモリ300は通信バス400によって、相互の間の通信を完成し、明らかに、
図5のプロセッサ100、通信インターフェース200、メモリ300及び通信バス400による通信接続の例示はただ選択可能なものである。
通信インターフェース200は、通信モジュールのインターフェース、例えば、GSMモジュールのインターフェースであってもよい。
プロセッサ100は、中央プロセッサCPU、又は特定用途向け集積回路ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、或いは本発明の実施例を実施するように配置される1つ又は複数の集積回路であってもよい。
メモリ300はアプリケーションプログラムが記憶され、高速RAMメモリ、又は不揮発性メモリ(non―volatile memory)、例えば少なくとも1つの磁気ディスクメモリを含む可能性がある。
【0081】
プロセッサ100は具体的に、メモリ内のアプリケーションプログラムを実行することで、上記に記載の故障診断方法の何れか1つの実施例を実現する。
【0082】
本明細書における各実施例に対して漸進の方式で記載し、各実施例は何れも他の実施例との相違点を主に説明し、各実施例の間の同様又は類似の部分について、互いに参照すればよい。実施例が開示した装置に対して、実施例が開示した方法に対応するため、その記載は簡単であり、関するところについて、方法部分の説明を参照すればよい。
【0083】
本明細書が開示した実施例を結合して記載する各例示的なユニット及びアルゴリズムステップは、電子ハードウエア、コンピュータソフトウエア又は両者の結合で実現してもよく、ハードウエアとソフトウエアの互換性を明らかに説明するために、上記説明において、機能に応じて各例示的な構成及びステップを一般的に記載する。これらの機能は、ハードウエアで実行されるか、それともソフトウエア形態で実行されるかということは、技術案の特定の応用及び設計制約条件に依存する。当業者は各特定の応用に対して、異なる方法を利用して、記載の機能を実現できるが、このような実現は本発明の範囲を超えるとみなされるべきではない。
【0084】
本明細書が開示した実施例を結合して記載する方法又はアルゴリズムのステップは、直接的にハードウエア、プロセッサが実行するソフトウエアモジュール、又は両者の結合を利用して実施してもよい。ソフトウエアモジュールはランダムメモリ(RAM)、内部メモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、電気的プログラム可能ROM、電気的消去可能プログラム可能ROM、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD―ROM、又は技術分野内の公知の他の任意の形態の記憶媒体に設けられてもよい。
【0085】
開示の実施例に対する上記説明によって、当業者は本発明を実現、又は使用できる。これらの実施例に対する多種の補正は当業者にとって自明であり、本明細書に定義された一般的な原理は、本発明のコアアイデア又は範囲から逸脱しない状況で、他の実施例で実現できる。従って、本発明は、本明細書に記載のこれらの実施例に限定されず、本明細書が開示した原理及び新規の技術的特徴と一致する、最も幅広い範囲に相応する。