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特許7480350ビーム放射半導体チップおよびビーム放射半導体チップの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】ビーム放射半導体チップおよびビーム放射半導体チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/10 20210101AFI20240430BHJP
【FI】
H01S5/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022568773
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2021062303
(87)【国際公開番号】W WO2021228755
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】102020205940.3
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】エイエムエス-オスラム インターナショナル ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ams-OSRAM International GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D-93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ アイヒラー
(72)【発明者】
【氏名】ラース ネーレ
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン ゲアハート
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-267387(JP,A)
【文献】特開昭63-302586(JP,A)
【文献】特開2019-125738(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0356108(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02302747(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム放射半導体チップ(1)であって、前記ビーム放射半導体チップ(1)は、
電磁ビームを生成するように構成されている活性領域(3)を含む半導体基体(2)と
第1端部領域(7)および第2端部領域(8)を含む共振器(6)と、
前記活性領域(3)を完全に貫通する、前記半導体基体(2)における少なくとも1つの凹部(11)と有し、
前記活性領域(3)は、前記共振器(6)に配置されており、
前記凹部(11)により、前記電磁ビームに対する反射率があらかじめ設定され、
前記第2端部領域(8)では、前記半導体基体(2)に高反射性ミラー層(12)が配置されており、
電流を前記半導体基体(2)に印加するように構成されている第1コンタクト層(15)が前記半導体基体(2)に配置されており、
前記半導体基体(2)には、第2コンタクト層(16)が配置されており、
前記第1コンタクト層(15)は横方向に、前記第2コンタクト層(16)に対して離隔されており、かつ
前記凹部(11)は、前記第1コンタクト層(15)と前記第2コンタクト層(16)との間に配置されており、かつ
前記凹部(11)は、前記第1端部領域(7)に配置されているか、または
前記凹部(11)は、前記第1端部領域(7)と前記第2端部領域(8)との間に配置されている、ビーム放射半導体チップ(1)。
【請求項2】
誘電体層(17)が、前記凹部(11)に配置されている、請求項1記載のビーム放射半導体チップ(1)。
【請求項3】
前記誘電体層(17)は、前記凹部の少なくとも1つの側面(20)を完全に覆っているか、または
前記誘電体層(17)は、前記凹部のそれぞれの側面(20)に対して離隔されて配置されている、請求項記載のビーム放射半導体チップ(1)。
【請求項4】
別の誘電体層(18)が前記誘電体層(17)に配置されており、かつ/または
前記別の誘電体層(18)は、前記凹部の少なくとも1つの側面(20)に配置されているか、または、
前記別の誘電体層(18)は、前記凹部のそれぞれの側面(20)に対して離隔されて配置されている、請求項1記載のビーム放射半導体チップ(1)。
【請求項5】
前記誘電体層(17)および/または前記別の誘電体層(18)が配置されている前記凹部(11)に導波構造体(19)が配置されている、請求項記載のビーム放射半導体チップ(1)。
【請求項6】
ビーム放射半導体デバイス(22)であって、前記ビーム放射半導体デバイス(22)は、
請求項1からまでのいずれか1項記載の少なくとも2つのビーム放射半導体チップ(1)を有し、
前記半導体チップ(1)は、横方向に並んで配置されている、ビーム放射半導体デバイス(22)。
【請求項7】
ビーム放射半導体チップ(1)の製造方法であって、前記ビーム放射半導体チップ(1)の製造方法は、
電磁ビームを生成するように構成されている活性領域(3)を含む半導体基体(2)を準備するステップと、
前記活性領域(3)を完全に貫通する、前記半導体基体(2)における凹部(11)を作製するステップと、
第1端部領域(7)および第2端部領域(8)を含み、前記活性領域(3)が配置されている共振器(6)を作製するステップとを有し、
前記凹部(11)により、前記電磁ビームに対する反射率があらかじめ設定され、
前記第2端部領域(8)では、前記半導体基体(2)に高反射性ミラー層(12)が配置されており、
電流を前記半導体基体(2)に印加するように構成されている第1コンタクト層(15)が前記半導体基体(2)に配置されており、
前記半導体基体(2)には、第2コンタクト層(16)が配置されており、
前記第1コンタクト層(15)は横方向に、前記第2コンタクト層(16)に対して離隔されており、かつ
前記凹部(11)は、前記第1コンタクト層(15)と前記第2コンタクト層(16)との間に配置されており、かつ
前記凹部(11)は、前記第1端部領域(7)に配置されているか、または
前記凹部(11)は、前記第1端部領域(7)と前記第2端部領域(8)との間に配置されている、ビーム放射半導体チップ(1)の製造方法。
【請求項8】
ビーム放射半導体デバイス(22)の製造方法であって、前記ビーム放射半導体デバイス(22)の製造方法は、次のステップ、すなわち、
それぞれ電磁ビームを生成するために構成されている活性領域(3)を含む半導体ウェーハ(28)を準備するステップと、
前記活性領域(3)をそれぞれ完全に貫通する凹部(11)を前記半導体ウェーハ(28)に作製するステップと、
それぞれ1つの第1端部領域(7)および第2端部領域(8)を含む共振器(6)を作製し、この際にそれぞれ1つの前記活性領域(3)が、それぞれ1つの前記共振器(6)に配置されるようにするステップと、
前記半導体ウェーハ(28)を半導体デバイス(22)に個片化するステップとを有し、
それぞれの1つの前記共振器(6)に隣接している前記凹部(11)により、前記第1端部領域(7)において、前記電磁ビームに対する第1反射率をあらかじめ設定し、前記第2端部領域(8)において、前記電磁ビームに対する第2反射率をあらかじめ設定し、
前記凹部(11)に積層体(23)を作製し、
前記凹部(11)の第2領域(27)において、少なくとも部分的に前記積層体(23)をそれぞれ除去する、ビーム放射半導体デバイス(22)の製造方法。
【請求項9】
前記積層体(23)にマスク層(25)を被着し、
前記マスク層(25)により、前記凹部(11)において前記積層体(23)のそれぞれ1つの第1領域(26)を覆う、請求項記載の方法。
【請求項10】
前記積層体(23)は、前記積層体(23)の誘電体層間に配置されているエッチングストップ層を有する、請求項記載の方法。
【請求項11】
前記凹部(11)において前記マスク層および前記積層体(23)に別の積層体を作製し、
前記凹部(11)における前記第1領域(26)では、前記別の積層体をそれぞれ完全に除去する、請求項記載の方法。
【請求項12】
前記半導体ウェーハ(28)を前記凹部(11)によって個片化し、
前記積層体(23)により、前記第1領域(26)においてそれぞれ前記第1反射率をあらかじめ設定し、前記積層体(23)により、前記第2領域(27)においてそれぞれ前記第2反射率をあらかじめ設定する、請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明では、ビーム放射半導体チップが示される。さらに、ビーム放射半導体チップの製造方法が示される。
【0002】
解決すべき課題は、改善されたビーム放射半導体チップを示すことである。さらに、このような半導体チップの製造方法を示したい。
【0003】
これらの課題は、請求項1の特徴的構成を有する半導体チップによって、また請求項10のステップを有する方法によって解決される。半導体チップおよび半導体チップの製造方法の有利な実施形態は、それぞれの従属請求項の対象である。
【0004】
1つの実施形態によると、半導体チップには、電磁ビームを生成するように構成されている活性領域を備えた半導体基体が含まれている。好ましくは、半導体基体は、半導体基体の第1端面と、半導体基体の第2端面との間に横方向に延在している。半導体チップの少なくとも1つの実施形態によると、活性領域は、共振器に配置されている。
【0005】
1つの実施形態によると、半導体チップには、第1端部領域および第2端部領域を含む共振器が含まれている。
【0006】
1つの実施形態によると、半導体チップには、活性領域を完全に貫通する少なくとも1つの凹部が半導体基体に含まれている。凹部は好ましくは、垂直方向に延びる側面を有する。
【0007】
半導体チップの1つの実施形態によると、凹部により、電磁ビームに対する反射率が あらかじめ設定される。反射率に応じて、半導体チップは、例えば、半導体レーザダイオードであるか、またはスーパールミネッセント発光ダイオード、略してSLEDである。半導体チップがSLEDである場合、生成されるビームは、共振器においてスーパールミネッセントビームに増幅される。半導体チップがレーザダイオードである場合、生成されるビームは、共振器においてレーザビームに増幅される。
【0008】
半導体チップの1つの実施形態によると、第2端部領域では、半導体基体に高反射性ミラー層が配置されている。高反射性ミラー層は、活性領域で生成されるビームに対して好ましくは、少なくとも95%の、特に少なくとも99%の反射率を有する。
【0009】
半導体チップの1つの実施形態によると、凹部は、第1端部領域に配置されている。この実施形態では、凹部は好ましくは、半導体チップによって送出されるビームの特性を設定するように構成されている。
【0010】
半導体チップがSLEDである場合、凹部は、活性領域において生成されるビームおよび/またはスーパールミネッセントビームに対して好ましくは、最大で10%、特に最大で1%の反射率を有する。半導体チップがレーザダイオードである場合、凹部は、活性領域において生成されるビームおよび/またはレーザビームに対して好ましくは、最大で90%、特に最大で10%の反射率を有する。
【0011】
凹部が第1端部領域に配置される場合、第1端面には好ましくは、反射防止層が配置される。反射防止層は、活性領域において生成されるビームに対して好ましくは、最大で1%、特に最大で0.01%の反射率を有する。
【0012】
半導体チップの1つの実施形態によると、凹部は、第1端部領域と第2端部領域との間に配置されている。この実施形態では、凹部は好ましくは、半導体チップの領域を互いに電気的に絶縁するように構成されている。この実施形態では凹部は、活性領域において生成されるビームに対して好ましくは、最大で1%、特に最大で0.01%の反射率を有する。
【0013】
凹部が第1端部領域と第2端部領域との間に配置される場合、第1端面には好ましくは、部分反射層が配置される。部分反射層は、活性領域において生成されるビームに対して好ましくは、最大で90%、特に最大で10%の反射率を有する。
【0014】
半導体チップの1つの実施形態によると、半導体基体には、電流を半導体基体に印加するように構成されている第1コンタクト層が配置されている。
【0015】
半導体チップの1つの実施形態によると、半導体基体には、第2コンタクト層が配置されている。この実施形態では、半導体チップは、セグメント化された半導体レーザである。
【0016】
半導体チップの1つの実施形態によると、凹部は、第1コンタクト層と第2コンタクト層との間に配置されている。
【0017】
半導体チップの1つの実施形態によると、凹部には誘電体層が配置されている。
【0018】
半導体チップの1つの実施形態によると、誘電体層は、凹部の少なくとも1つの側面を完全に覆っている。誘電体層は好ましくは、凹部の側面に直接に接触接続されている。
【0019】
半導体チップの1つの実施形態によると、誘電体層は、凹部のそれぞれの側面に対して離隔されて配置されている。
【0020】
半導体チップの1つの実施形態によると、別の誘電体層が、誘電体層に配置されている。別の誘電体層は好ましくは、誘電体層と直接に接触接続されている。
【0021】
半導体チップの1つの実施形態によると、別の誘電体層は、凹部の少なくとも1つの側面に配置されている。例えば、別の誘電体層と、凹部の側面との間には誘電体層が配置されている。択一的には、別の誘電体層は、凹部の側面に直接に接触接続されている。
【0022】
半導体チップの1つの実施形態によると、別の誘電体層は、凹部のそれぞれの側面に対して離隔されて配置されている。
【0023】
半導体チップの1つの実施形態によると、誘電体層および/または別の誘電体層が配置されている凹部には、導波構造体が配置されている。導波構造体は好ましくは、半導体基体と同じ屈折率を有する。
【0024】
さらに本発明では、本明細書で説明する少なくとも2つの半導体チップを含むビーム放射半導体デバイスが示される。これらの半導体チップは、1つの実施形態によると、横方向に並んで配置されている。
【0025】
さらに、本明細書で説明する半導体チップを製造することが可能な、半導体チップの製造方法が示される。
【0026】
したがって、半導体チップに関連して開示したすべての特徴的構成および実施形態は、方法および/または半導体デバイスにも関連して適用可能であり、その逆も同様である。
【0027】
この方法の1つの実施形態によると、電磁ビームを生成するように構成されている活性領域を含む半導体基体を準備する。
【0028】
この方法の1つの実施形態によると、活性領域を完全に貫通する凹部を半導体基体に作製する。好ましくは、次の式によって凹部の目標幅dSollを特定する。すなわち、dSoll=m×λ/(nHL(4-0.33588×sqrt(R)))であり、mは奇数の自然数であり、λは凹部におけるビームの波長であり、nHLは、半導体基体の屈折率であり、Rは、あらかじめ設定されるべき反射率である。さらに、nHLについては、許容範囲は最大で±10%であり、dSollについては、許容範囲は最大で±50%である。
【0029】
この方法の1つの実施形態によると、第1端部領域および第2端部領域を含み、活性領域が配置されている共振器を作製する。
【0030】
この方法の1つの実施形態によると、凹部により、電磁ビームに対する反射率をあらかじめ設定する。好ましくは、凹部を作製した後、凹部の横方向の幅を特定する。例えば、凹部は、エッチングされ、好ましくはλ/4よりも幅が広い凹部は、例えば、最大で10μmの、特に最大で2μmの幅を有する。凹部の幅を特定した後、凹部の幅に応じ、例えば、伝達マトリクス法により、被着すべき誘電体層の幅および/または被着すべき別の誘電体層の幅を特定する。列または凹部における反射率についてのプロセスばらつきは、示した方法により、有利にはあとから調整することができ、これにより、歩留まりが良好になり、ひいてはコストが小さくなる。
【0031】
さらに、本明細書で説明している半導体デバイスを製造することが可能な、半導体デバイスの製造方法が示される。したがって、上記の方法に関連して開示したすべての特徴的構成および実施形態は、半導体チップの製造方法、半導体チップおよび/または半導体デバイスにも関連して適用可能であり、その逆も同様である。
【0032】
この方法の1つの実施形態によると、電磁ビームを生成するようにそれぞれ構成されている活性領域を含む半導体ウェーハを準備する。
【0033】
この方法の1つの実施形態によると、活性領域をそれぞれ完全に貫通する凹部を半導体ウェーハに作製する。例えば、マトリクス状に、行および列に沿って凹部を配置する。
【0034】
この方法の1つの実施形態によると、第1端部領域および第2端部領域をそれぞれ含む共振器を作製し、その際にそれぞれ1つの共振器にそれぞれ1つの活性領域を配置する。
【0035】
この方法の1つの実施形態によると、半導体ウェーハを半導体デバイスに個片化する。例えば、ソーイング、レーザ切断、ステルスダイシングまたブレークによって半導体ウェーハを個片化する。
【0036】
この方法の1つの実施形態によると、1つの共振器にそれぞれ隣接している凹部により、第1端部領域において、電磁ビームに対して第1反射率をあらかじめ設定し、第2端部領域において、電磁ビームに対する第2反射率をあらかじめ設定する。
【0037】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、凹部において積層体を作製する。積層体には、例えば、複数の誘電体層から成る積層体が含まれている。積層体の誘電体層間にはさらに、例えば、金属層または半導体層のような1つまたは複数の中間層を配置することができる。付加的または択一的には、積層体の外側の誘電体層に中間層を配置することも可能である。積層体の複数の誘電体層は、少なくとも部分的に互いに異なって構成されている。積層体の誘電体層には、例えば、少なくとも部分的に相異なる材料が含まれており、かつ/または少なくとも部分的に相異なる厚さで構成されている。
【0038】
さらに、次に、凹部において積層体に金属層を作製することができる。金属層は、少なくとも1つの金属を含むかまたは少なくとも1つの金属から構成される。金属層は、例えば、生成されるビームに対して反射性を有するように構成されている。この場合、金属層は、生成されるビームに対し、少なくとも90%の、特に少なくとも95%または98%の反射率を有する。
【0039】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、積層体にマスク層を被着する。
【0040】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、マスク層により、凹部において積層体の第1領域をそれぞれ覆う。
【0041】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、凹部の第2領域において少なくとも部分的に積層体をそれぞれ除去する。さらに、凹部の第2領域において金属層もそれぞれ完全に除去する。
【0042】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、積層体は、積層体の誘電体層間に配置されているエッチングストップ層を有する。例えば、エッチング法により、エッチングストップ層まで積層体を除去する。
【0043】
エッチング層は、本発明では、例えば、エッチング耐性層によって形成される。択一的には、エッチングストップ層は、あらかじめ定められた材料組成を有するあらかじめ定められた層である。この場合、エッチングストップ層のあらかじめ定められた材料組成に依存して、凹部の第2領域において積層体を少なくとも部分的に除去する。例えば、エッチングストップ層は、エッチング耐性に構成されない。エッチングの際に、例えば、エッチングストップ層のあらかじめ定められた材料組成を検出すると、エッチングプロセスを停止する。
【0044】
第1領域および第2領域はそれぞれ、凹部の側面から凹部の中心に向かって延びている。例えば、第1領域および第2領域は同じ幅で構成されている。択一的には第1領域の幅と、第2領域の幅とは互いに異なっている。
【0045】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、凹部においてマスク層および積層体に別の積層体を作製する。別の積層体には、別の誘電体層および/または別の中間層が含まれていてよい。凹部の第1領域において、別の積層体をそれぞれ完全に除去する。例えば、凹部の第1領域において金属層もそれぞれ完全に除去する。この場合、マスク層を除去することにより、別の積層体を除去する。これは、例えば、リフトオフプロセスである。
【0046】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、凹部により、半導体ウェーハを個片化する。例えば、第1領域と第2領域との間で個片化されてよい。択一的には、第1領域による切断により、または第2領域による切断によって個片化されてよい。
【0047】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、積層体により、第1領域において第1反射率をそれぞれあらかじめ設定し、積層体により、第2領域において第2反射率をそれぞれあらかじめ設定する。
【0048】
択一的には、積層体および金属層により、例えば、第1領域においてそれぞれ第1反射率をあらかじめ設定し、積層体により、第2領域においてそれぞれ第2反射率をあらかじめ設定する。
【0049】
択一的には、積層体により、例えば、第1領域においてそれぞれ第1反射率をあらかじめ設定し、積層体および別の積層体により、第2領域においてそれぞれ第2反射率をあらかじめ設定する。
【0050】
積層体は、例えば、第1領域では、活性領域において生成されるビームに対して高反射性に構成されている。この場合、第1反射率は、生成されるビームに対し、少なくとも90%の、特に少なくとも95%または98%の反射率を有する。
【0051】
積層体は、例えば、第2領域では、活性領域において生成されるビームに対して反射を防止するように構成されている。この場合、第2反射率は、生成されるビームに対し、最大で80%の、最大で50%の、または最大で20%の、特に最大で1%もしくは最大で0.01%の反射率を有する。例えば、緑色の光が生成される場合、反射率は最大で80%であり、例えば、青色の光が生成される場合、反射率は最大で50%である。
【0052】
このようにして生成される半導体デバイスは、次いで半導体チップに個片化可能である。
【0053】
以下では、実施例および所属の図面に基づき、本明細書で説明する半導体チップ、半導体デバイス、および本明細書で説明する、半導体チップの製造方法を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】ウェブ21を含む半導体基体2を備えた、1つの実施例による半導体チップ1の平面図である。
図2】共振器6が第1端面9と第2端面10との間に延在している、別の実施例による半導体チップ1の平面図である。
図3図2による4つの半導体チップ1を有する、1つの実施例による半導体デバイス22の平面図である。
図4】第1コンタクト層15だけを有する4つの半導体チップ1を有する、1つの実施例による半導体デバイス22の平面図である。
図5】半導体チップ1の共振器6はそれぞれ異なる長さを有する、1つの実施例による半導体デバイス22の平面図である。
図6】半導体チップ1の共振器6はそれぞれ異なる長さを有する、別の1つの実施例による半導体デバイス22の平面図である。
図7】半導体デバイス22を製造するための1つの方法ステージを示す図である。
図8】半導体デバイス22を製造するための別の1つの方法ステージを示す図である。
図9】半導体デバイス22を製造するためのさらに別の1つの方法ステージを示す図である。
図10】半導体デバイス22を製造するためのさらに別の1つの方法ステージを示す図である。
図11】半導体デバイス22を製造するためのさらに別の1つの方法ステージを示す図である。
図12】誘電体層17が配置されている凹部11の断面図である。
図13】誘電体層17が配置されている凹部11の別の断面図である。
図14】誘電体層17が配置されている凹部11のさらに別の断面図である。
図15】誘電体層17が配置されている凹部11のさらに別の断面図である。
図16】誘電体層17が配置されている凹部11のさらに別の断面図である。
図17】誘電体層17が配置されている凹部11のさらに別の断面図である。
図18】誘電体層17が配置されている凹部11のさらに別の断面図である。
図19】誘電体層17が配置されている凹部11のさらに別の断面図である。
図20】誘電体層17が配置されている凹部11のさらに別の断面図である。
図21】誘電体層17および別の誘電体層18が配置されている凹部11の断面図である。
図22】誘電体層17および別の誘電体層18が配置されている凹部11の別の断面図である。
図23】誘電体層17および別の誘電体層18が配置されている凹部11のさらに別の断面図である。
図24】誘電体層17および別の誘電体層18が配置されている凹部11のさらに別の断面図である。
図25】誘電体層17および別の誘電体層18が配置されている凹部11のさらに別の断面図である。
図26】誘電体層17および別の誘電体層18が配置されている凹部11のさらに別の断面図である。
図27】誘電体層17および別の誘電体層18が配置されている凹部11のさらに別の断面図である。
図28】誘電体層17が配置されている半導体チップ1における2つの凹部11の断面図である。
図29】誘電体層17が配置されている半導体チップ1における2つの凹部11の別の断面図である。
図30】導波構造体19が配置されている凹部11の断面図である。
図31図12および図13に図示した誘電体層17、例えばSiOを有する凹部11における、ビームに対する反射率Rの例示的な線図である。
図32図12および図13に図示した誘電体層17、例えばSiOを有する凹部11における、ビームに対する反射率Rの別の例示的な線図である。
図33図12および図13に図示した誘電体層17、例えばSiOを有する凹部11における、ビームに対する反射率Rのさらに別の例示的な線図である。
図34】誘電体層17を有する凹部11における、ビームに対する反射率Rの例示的な線図をビームの波長λに依存して示す図である。
図35】誘電体層17を有する凹部11における、ビームに対する反射率Rの例示的な線図をビームの波長λに依存して示す別の図である。
図36】誘電体層17を有する凹部11における、ビームに対する反射率Rの例示的な線図をビームの波長λに依存して示すさらに別の図である。
図37】誘電体層17を有する凹部11における、ビームに対する反射率Rの例示的な線図をビームの波長λに依存して示すさらに別の図である。
図38】反射率Rに依存してnHLによるnの商を示す例示的な線図である。
図39】半導体デバイス22を製造するための方法ステージを示す図である。
図40】半導体デバイス22を製造するための別の方法ステージを示す図である。
図41】凹部11に積層体23を装入する方法ステージを示す図である。
図42】凹部11に積層体23を装入する別の方法ステージを示す図である。
図43】凹部11に積層体23を装入するさらに別の方法ステージを示す図である。
図44】凹部11に積層体23を装入するさらに別の方法ステージを示す図である。
【0055】
図1には、ウェブ21を含む半導体基体2を備えた、1つの実施例による半導体チップ1の平面図が示されている。さらに、半導体基体2には、第1コンタクト層15および第2コンタクト層16が配置されている。第1コンタクト層15と第2コンタクト層16との間には凹部11が配置されており、この凹部11には誘電体層17が配置されている。半導体基体2は第1端面9から第2端面10まで延在している。第1端面9には反射防止層13が配置されており、第2端面10には高反射性ミラー層12が配置されている。さらに、共振器6が、第1端部領域7と第2端部領域8との間に延在している。
【0056】
第1コンタクト層15により、半導体基体2に一定の電流が供給されるのに対し、第2コンタクト層16により、活性領域3によって生成されたビームが変調される。
【0057】
図2には、共振器6が第1端面9と第2端面10との間に延在している、別の実施例による半導体チップ1の平面図が示されている。例えば、半導体チップ1は、第2コンタクト層16を作動させることによってオンおよびオフすることができる。これにより、有利にはより高いスイッチング速度を達成することができる。
【0058】
図3には、図2による4つの半導体チップ1を有する、1つの実施例による半導体デバイス22の平面図が示されている。少なくとも2つの凹部11は、異なる反射率を有することができる。これにより、半導体チップ1の相異なる熱結合によって生じる相違を均一化することができる。内側にある半導体チップ1の凹部11は、外側にある半導体チップ1の凹部11よりも高い反射率を有し得る。というのは、内側にある半導体チップ1は、冷却がより悪く、したがってより高いレーザ閾値を有するからである。
【0059】
図4には、4つの半導体チップ1を有する、1つの実施例による半導体デバイス22の平面図が示されており、これらの半導体チップ1は、図1とは異なり、第1コンタクト層15だけを有する。
【0060】
図5および図6には、1つの実施例による半導体デバイス22のそれぞれ1つの平面図が示されており、半導体チップ1の共振器6はそれぞれ異なる長さを有する。
【0061】
図7図8および図9ならびに図10および図11には、半導体デバイス22を製造するための方法ステージが示されている。ウェーハレベルではまず第1凹部11を作製する(図7)。凹部11には、それぞれ1つの誘電体層17を装入する。次いでウェーハレベルの半導体チップ1を半導体デバイス22に個片化する。
【0062】
図12図13図14図15図16図17図18図19および図20には、誘電体層17が配置されている凹部11のそれぞれ1つの断面図が示されている。図21図22図23図24図25図26および図27には、誘電体層17および別の誘電体層18が配置されている凹部11のそれぞれ1つの断面図が示されている。
【0063】
図28および図29には、誘電体層17が配置されている半導体チップ1における2つの凹部11のそれぞれ1つの断面図が示されている。
【0064】
図30には、導波構造体19が配置されている凹部11の断面図が示されている。
【0065】
図31図32および図33には、図12および図13に図示したように、誘電体層17、例えばSiOを有する凹部11における、ビームに対する反射率Rの例示的な線図が示されている。幅d1は、凹部の側面20に配置されている誘電体層17の幅である。図31では、凹部は幅d=d1+d2+d1=500nmであり、半導体基体の屈折率はnHL=2.4であり、誘電体層の屈折率はn=1.5である。これとは異なり、図31では凹部は幅d=d1+d2+d1=560nmであり、図33ではd=d1+d2+d1=620nmである。好ましくは、反射率の局所的な最大値または最小値が得られる幅d1を選択し、これにより、幅の小さな変化は、反射率に実質的に作用を及ぼさない。
【0066】
図34図35図36および図37にはそれぞれ、誘電体層17を有する凹部11における、ビームに対する反射率Rの例示的な線図が、ビームの波長λに依存して示されている。ここで、nHLはそれぞれ約2.47である。図34では、凹部は幅d=570nmであり、n=1.47を有する誘電体層17、例えばSiOの幅d1およびd3はそれぞれ41nmである。図35では、凹部は幅d=600nmであり、n=1.47を有する誘電体層17、例えばSiOの幅d1は9nmであり、n=2.08を有する別の誘電体層18、例えばSiNの幅d3は22nmである。図35とは異なり、凹部は幅d=630nmであり、n=1.47を有する誘電体層17、例えばSiOの幅d1は165nmであり、n=2.08を有する別の誘電体層18、例えばSiNの幅d3は51nmである。図37では、凹部は幅d=630nmであり、n=2.08を有する誘電体層17、例えばSiNの幅d1およびd3はそれぞれ41nmである。
【0067】
図38には、反射率Rに依存してnHLによるnの商が示されている例示的な線図が示されている。ここでは、n/nHL=1-0.08397×sqrt(R)が成り立つ。この関係式は、図19および図20による完全に充填された凹部11にも当てはまる。
【0068】
図39および図40には、半導体デバイス22を製造するための方法ステージが示されている。ウェーハレベルではまず半導体ウェーハ28に第1凹部11を作製する。凹部11には、図41図42図43および図44の方法ステージにしたがい、それぞれ1つの積層体23を装入する。次いでウェーハレベルの半導体ウェーハ28を半導体デバイス22に個片化する。
【0069】
例えば、ソーイング、レーザ切断、ステルスダイシングまたブレークにより、ウェーハレベルの半導体ウェーハ28を半導体デバイス22に個片化する。
【0070】
図41によると、凹部11に積層体23を作製する。この実施例では、積層体23には上下に積層された6つの誘電体層が含まれている。凹部の側面20では、誘電体層が横方向に上下に積層されており、凹部の底面では、誘電体層が鉛直方向に上下に積層されている。
【0071】
積層体23の誘電体層は、例えば、原子層堆積プロセス(英語:"atomic layer deposition",ALD)または化学気相成長法(英語:"chemical vapour deposition",CVD)を用いて半導体基体2に順次にデポジットされる。択一的には、スパッタリングプロセスまたは蒸着プロセスにより、積層体23の誘電体層を被着することも可能である。誘電体層は、例えば、これらのプロセスの組合せから被着されてよい。
【0072】
この実施例では、6つの誘電体層の第4の誘電体層は、エッチングストップ層24として構成されている。例えば、エッチングストップ層24には酸化タンタルが含まれている。
【0073】
図42によると、凹部11において積層体23の第1領域26を覆うマスク層25を積層体23に被着する。第1領域26に直接に隣接する第2領域27にはマスク層25がない。マスク層25は、例えば、フォトマスクまたはエッチング耐性保護層である。
【0074】
続いて、エッチングプロセスを用い、第2領域27においてエッチングストップ層24まで積層体23の誘電体層を除去する。
【0075】
図43によると、続いて、マスク層25を除去する。第1領域26では、マスク層25を使用することにより、積層体23の誘電体層は除去されていない。
【0076】
第1領域26における誘電体層は、例えば、活性領域において生成されるビームに対して高反射性に構成されている。第2領域27における誘電体層は、例えば、活性領域において生成されるビームに対して反射を防止するように構成されている。
【0077】
図44によると、半導体チップ1は半導体デバイス22に個片化される。凹部11において第1領域26と第2領域27とが互いに隣接している箇所で半導体チップ1を切り離すことよって個片化を行う。
【0078】
有利にはこのようにして、高反射性に構成される誘電体層を第1端部領域7にそれぞれ有し、かつ反射を防止するように構成されている誘電体層を第2端部領域8に有する複数の半導体デバイス22を作製する。これによって有利には、特に簡単かつ正確に共振器を作製することができる。
【0079】
本発明は、実施例に基づく説明によってこれらの実施例に限定されるものではない。
【0080】
本特許出願は、ドイツ特許出願第102020205940.3号の優先権を主張し、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0081】
1 ビーム放射半導体チップ
2 半導体基体
3 活性領域
4 第1半導体積層体
5 第2半導体積層体
6 共振器
7 第1端部領域
8 第2端部領域
9 第1端面
10 第2端面
11 凹部
12 高反射性ミラー層
13 反射防止層
14 部分反射層
15 第1コンタクト層
16 第2コンタクト層
17 誘電体層
18 別の誘電体層
19 導波構造体
20 凹部の側面
21 ウェブ
22 ビーム放射半導体デバイス
23 積層体
24 エッチングストップ層
25 マスク層
26 第1領域
27 第2領域
28 半導体ウェーハ
HL 半導体基体の屈折率
誘電体層の屈折率
d 凹部の幅
d1…d6 幅
λ 波長
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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