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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】斜板式圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 27/18 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
F04B27/18 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022573333
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 KR2021005799
(87)【国際公開番号】W WO2021241911
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0063872
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516011246
【氏名又は名称】ハンオン システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン,セ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,オク ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,グァン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ドン ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソン ミョン
(72)【発明者】
【氏名】ホン,キ サン
【審査官】森 秀太
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-220048(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0009554(KR,A)
【文献】特開昭59-200877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/18
F04D 49/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング、
前記ハウジングに回転可能に取り付けられる回転軸、
前記ハウジングのクランク室に収容され、前記回転軸と共に回転する斜板、
前記ハウジングと共に圧縮室を形成し、前記斜板に連動して往復運動するピストン、
前記斜板の傾斜角が調節されるように前記クランク室の冷媒を前記ハウジングの吸入室に案内する排出流路、及び
前記排出流路に備えられるバルブチャンバと、前記バルブチャンバの内部で往復運動するバルブコアとを有する排出流路調節バルブ、を含み、
前記バルブコアは、前記排出流路を常時連通させる第1連通路、及び前記クランク室の圧力と前記吸入室の圧力との間の差圧が一定の圧力範囲に含まれる場合、前記排出流路を連通させる第2連通路を含み、
前記排出流路調節バルブは、
前記差圧が第1圧力以下または第2圧力以上の場合、前記排出流路の流動断面積を第1面積に調節し、
前記差圧が前記第1圧力より大きくかつ前記第2圧力より小さい場合、前記排出流路の流動断面積を前記第1面積より大きく調節するように形成され、
前記差圧が増加するほど、前記排出流路の流動断面積が増加してから減少する区間を含むことを特徴とする斜板式圧縮機。
【請求項2】
前記排出流路調節バルブは、
前記クランク室と前記バルブチャンバとを連通させるバルブ入口、
前記吸入室と前記バルブチャンバとを連通させるバルブ出口、及び
前記バルブコアを前記バルブ入口側に加圧する弾性部材、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の斜板式圧縮機。
【請求項3】
前記バルブチャンバは、前記バルブ入口と連通する入口部、及び前記バルブ出口と連通する出口部を含み、
前記入口部の内径は、前記出口部の内径より大きく形成され、前記入口部と前記出口部との間に第2段差面が形成されることを特徴とする請求項2に記載の斜板式圧縮機。
【請求項4】
前記バルブコアは、
前記バルブ入口に対向する第1圧力面と、前記バルブ出口に対向する第2圧力面とを有する基底板、及び
前記第2圧力面の外周部から環状に突出する側板、を含み、
前記第1連通路は、前記第1圧力面から前記第2圧力面まで前記基底板を貫通して形成され、
前記第2連通路は、前記側板の外周面から前記側板の内周面まで前記側板を貫通して形成されることを特徴とする請求項3に記載の斜板式圧縮機。
【請求項5】
前記バルブコアの往復運動方向を軸方向とすると、前記第2連通路は軸方向に延長形成されることを特徴とする請求項4に記載の斜板式圧縮機。
【請求項6】
前記バルブ入口の内径は、前記バルブコアの外径より小さく形成され、前記入口部と前記バルブ入口との間に前記第1圧力面と接触可能な第1段差面が形成され、
前記バルブ出口の内径は、前記バルブコアの外径より小さく形成され、前記出口部と前記バルブ出口との間に前記側板の先端面と接触可能な第3段差面が形成されることを特徴とする請求項4に記載の斜板式圧縮機。
【請求項7】
前記弾性部材は、一端部が前記第2圧力面に支持され、他端部が前記第3段差面に支持されるコイルスプリングで形成されることを特徴とする請求項6に記載の斜板式圧縮機。
【請求項8】
前記第1連通路の内径は、前記バルブ入口の内径より小さく形成されることを特徴とする請求項6に記載の斜板式圧縮機。
【請求項9】
前記第2連通路で前記側板の先端面から軸方向に最も遠く離隔した部位を第2連通路の開始部とすると、前記側板の先端面と前記第2連通路の開始部との間の軸方向距離は、前記出口部の軸方向長さより小さく形成され、前記基底板の第1圧力面と前記第2連通路の開始部との間の軸方向距離は、前記入口部の軸方向長さより小さく形成されることを特徴とする請求項6に記載の斜板式圧縮機。
【請求項10】
前記差圧が前記第1圧力以下の場合、前記第1圧力面が前記第1段差面に接触し、前記クランク室の冷媒が前記バルブ入口、前記第1連通路、及び前記バルブ出口を介して前記吸入室に移動し、
前記差圧が前記第1圧力より大きくかつ前記第圧力より小さい場合、前記第1圧力面が前記第1段差面と離隔し、前記第2連通路の少なくとも一部が前記入口部の内周面によって開放され、前記クランク室の冷媒が前記バルブ入口、前記入口部、前記第1連通路、前記第2連通路、及び前記バルブ出口を介して前記吸入室に移動し、
前記差圧が前記第圧力以上の場合、前記第1圧力面が前記第1段差面と離隔し、前記第2連通路が前記出口部の内周面によって閉鎖され、前記クランク室の冷媒が前記バルブ入口、前記入口部、前記第1連通路、及び前記バルブ出口を介して前記吸入室に移動することを特徴とすることを特徴とする請求項9に記載の斜板式圧縮機。
【請求項11】
前記ハウジングは、前記ピストンが収容されるボアを有するシリンダーブロック、前記シリンダーブロックの一側に結合し、前記クランク室を有するフロントハウジング、前記シリンダーブロックの他側に結合し、前記吸入室を有するリアハウジングを含み、
前記シリンダーブロックと前記リアハウジングとの間に前記吸入室と前記圧縮室とを連通及び遮蔽するバルブ機構が介在され、
前記リアハウジングは前記バルブ機構に支持されるポスト部を含み、
前記バルブ入口は前記バルブ機構に形成され、
前記バルブ出口及び前記バルブチャンバは前記ポスト部に形成されることを特徴とする請求項2に記載の斜板式圧縮機。
【請求項12】
前記排出流路調節バルブは、前記差圧が前記第1圧力より大きくかつ前記第2圧力より小さい範囲内で増加するほど、前記排出流路の流動断面積が減少するように形成されることを特徴とする請求項1に記載の斜板式圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は斜板式圧縮機に関し、より詳しくは、斜板が備えられるクランク室の圧力を調節することで斜板の傾斜角を調節するようにした斜板式圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両用冷却システムにおいて冷媒を圧縮させる役割をする圧縮機は多様な形態で開発されており、このような圧縮機には、冷媒を圧縮する構成として、往復運動をしながら圧縮を行う往復式と、回転運動をしながら圧縮を行う回転式とがある。また、往復式としては、駆動源の駆動力を、クランクを用いて複数のピストンに伝達するクランク式、斜板が設けられた回転軸に伝達する斜板式、及びウォブルプレートを用いるウォブルプレート式があり、回転式としては、回転するロータリ軸とベーンを用いるベーンロータリー式、及び旋回スクロールと固定スクロールを用いるスクロール式がある。
【0003】
ここで、斜板式圧縮機とは、回転軸と共に回転する斜板でピストンを往復運動させて冷媒を圧縮する圧縮機構を意味し、最近では圧縮機の性能及び効率の向上のために斜板の傾斜角を調節してピストンのストロークを調節することで冷媒吐出量を調節する、いわゆる可変容量方式で形成されている。
【0004】
図1は、従来の可変容量方式で形成された斜板式圧縮機を示す斜視図である。
添付の図1を参照すると、従来の斜板式圧縮機は、ボア(114)、吸入室(S1)、吐出室(S3)、及びクランク室(S4)を有するハウジング(100)、前記ハウジング(100)に回転可能に支持される回転軸(210)、前記回転軸(210)に連動して前記クランク室(S4)の内部で回転する斜板(220)、前記斜板(220)に連動して前記ボア(114)の内部で往復運動し、前記ボア(114)と共に圧縮室を形成するピストン(230)、前記吸入室(S1)と前記吐出室(S3)を前記圧縮室と連通及び遮蔽するバルブ機構(300)、及び前記回転軸(210)に対する前記斜板(220)の傾斜角を調節する傾斜調節機構(400)を含む。
【0005】
前記傾斜調節機構(400)は、前記吐出室(S3)の冷媒を前記クランク室(S4)に案内する流入流路(430)、及び前記クランク室(S4)の冷媒を前記吸入室(S1)に案内する排出流路(450)を含む。
前記流入流路(430)には、前記吐出室(S3)から前記流入流路(430)に流入する冷媒量を調節する圧力調節バルブ(図示せず)が形成される。
前記排出流路(450)には、前記排出流路(450)を通過する流体を減圧させるオリフィスホール(H)が形成される。
【0006】
このような構成による従来の斜板式圧縮機は、駆動源(図示せず)(例えば、車両のエンジン)から前記回転軸(210)に動力が伝達されると、前記回転軸(210)と前記斜板(220)が共に回転する。
また、前記ピストン(230)は、前記斜板(220)の回転運動を直線運動に変換して前記ボア(114)の内部で往復運動する。
また、前記ピストン(230)が上死点から下死点に移動するとき、前記圧縮室は、前記バルブ機構(300)によって前記吸入室(S1)とは連通し、前記吐出室(S3)とは遮蔽され、前記吸入室(S1)の冷媒が前記圧縮室に吸入される。
【0007】
また、前記ピストン(230)が下死点から上死点に移動するとき、前記圧縮室は、前記バルブ機構(300)によって前記吸入室(S1)及び前記吐出室(S3)と遮蔽され、前記圧縮室の冷媒が圧縮される。また、前記ピストン(230)が上死点に到達するとき、前記圧縮室は、前記バルブ機構(300)によって前記吸入室(S1)とは遮蔽され、前記吐出室(S3)とは連通し、前記圧縮室で圧縮された冷媒が前記吐出室(S3)に吐出される。
【0008】
ここで、従来の斜板式圧縮機は、要求される冷媒吐出量によって、前記吐出室(S3)から前記流入流路(430)に流入する冷媒量が前記圧力調節バルブ(図示せず)によって調節されることで、前記クランク室(S4)の圧力が調節され、前記ピストン(230)のストロークが調節され、前記斜板(220)の傾斜角が調節され、冷媒吐出量が調節される。
【0009】
具体的に、前記クランク室(S4)の圧力による斜板(220)のモーメントと、前記斜板(220)のリターンスプリングによるモーメントとの和(以下、第1モーメント)が前記ピストン(230)の圧縮反力によるモーメント(以下、第2モーメント)より大きい場合、前記斜板(220)の傾斜角は減少し、上記と逆の場合は、前記斜板(220)の傾斜角が増加する。
ところが、前記吐出室(S3)から前記流入流路(430)に流入する冷媒量が前記圧力調節バルブ(図示せず)によって増加し、前記流入流路(430)を介して前記クランク室(S4)に流入する冷媒量が増加すると、前記クランク室(S4)の圧力が増加し、前記第1モーメントが増加する。
【0010】
ここで、前記クランク室(S4)の冷媒が前記排出流路(450)を介して前記吸入室(S1)に吐出されるが、前記クランク室(S4)から前記排出流路(450)を介して前記吸入室(S1)に吐出される冷媒量よりも、前記吐出室(S3)から前記流入流路(430)を介して前記吸入室(S1)に流入する冷媒量が多い場合、前記クランク室(S4)の圧力が増加する。
また、前記第1モーメントが前記第2モーメントより大きくなる場合、前記斜板(220)の傾斜角は減少し、前記ピストン(230)のストロークが減少し、冷媒吐出量が減少する。
【0011】
一方、前記吐出室(S3)から前記流入流路(430)に流入する冷媒量が前記圧力調節バルブ(図示せず)によって減少し、前記流入流路(430)を介して前記クランク室(S4)に流入する冷媒量が減少すると、前記クランク室(S4)の圧力が減少し、前記第1モーメントが減少する。
【0012】
ここで、前記吐出室(S3)の冷媒が前記流入流路(430)を介して前記クランク室(S4)に流入しても、前記吐出室(S3)から前記流入流路(430)を介して前記クランク室(S4)に流入する冷媒量よりも、前記クランク室(S4)から前記排出流路(450)を介して前記吸入室(S1)に吐出される冷媒量が多い場合、前記クランク室(S4)の圧力が減少する。
【0013】
また、前記第1モーメントが前記第2モーメントより小くなる場合、前記斜板(220)の傾斜角は増加し、前記ピストン(230)のストロークが増加し、冷媒吐出量が増加する。
【0014】
一方、前記第1モーメントと前記第2モーメントが同一である場合、前記斜板(220)の傾斜角は定常状態(steady state)に維持され、前記ピストン(230)のストロークと冷媒吐出量が一定に維持される。
【0015】
ここで、前記ピストン(230)の圧縮反力は圧縮量に比例するため、前記ピストン(230)の圧縮反力及び前記第2モーメントは前記斜板(220)の傾斜角が大きくなるほど増加する。これによって、前記斜板(220)の傾斜角が増加するほど、前記斜板(220)の傾斜角を維持するための前記クランク室(S4)の圧力も増加する。すなわち、前記斜板(220)の傾斜角が相対的に大きい状態で定常状態に維持される場合の前記クランク室(S4)の圧力は、前記斜板(220)の傾斜角が相対的に小さい状態で定常状態に維持される場合の前記クランク室(S4)の圧力よりもさらに大きな圧力が要求される。
【0016】
一方、前記クランク室(S4)の冷媒が前記排出流路(450)を介して前記吸入室(S1)に流動するとき、前記オリフィスホール(H)によって吸入圧のレベルに減圧され、前記吸入室(S1)の圧力が増加することが防止される。しかし、このような従来の斜板式圧縮機においては、冷媒吐出量の迅速な調節と圧縮機の効率低下防止を同時に達成できない問題点があった。
【0017】
具体的に、上述のように、前記クランク室(S4)の圧力減少による冷媒吐出量の増加のために、前記クランク室(S4)は、前記排出流路(450)を介して前記吸入室(S1)と連通している。また通常、冷媒吐出量の増加に対する応答性の向上のために、前記排出流路(450)のオリフィスホール(H)の断面積はできるだけ最大に形成される。すなわち、前記クランク室(S4)の冷媒が前記吸入室(S1)に迅速に吐出されることで、前記クランク室(S4)の圧力が迅速に減少し、前記ピストン(230)のストロークが迅速に増加し、前記斜板(220)の傾斜角が迅速に増加して、冷媒吐出量が迅速に増加するように、前記オリフィスホール(H)は固定オリフィスホール(H)として形成され、前記オリフィスホール(H)の断面積は、前記排出流路(450)を通過する冷媒を十分に減圧させる範囲内で最大に形成される。
【0018】
ところが、前記オリフィスホール(H)の断面積ができるだけ最大に形成される場合、前記クランク室(S4)から前記吸入室(S1)に漏洩する冷媒量が相当多い。これによって、最小モードまたは可変モード(最小モードと最大モードとの間で冷媒吐出量が増加または維持または減少するモード)で、前記クランク室(S4)の圧力を所望のレベルに合わせるためには、前記オリフィスホール(H)の断面積が相対的に小さく形成される場合よりも、前記流入流路(430)を介して前記吐出室(S3)から前記クランク室(S4)に流入する冷媒量が増加しなければならない。これによって、圧縮された冷媒の中で冷却サイクルに吐出される冷媒量が減少するため、所望の冷房または暖房のレベルを達成するためには、圧縮機がさらに多くの冷媒を圧縮するように、前記圧縮機に投入される動力が増加しなければならず、圧縮機の効率が低下する。
【0019】
また、駆動初期の応答性が低下する問題点があった。すなわち、前記オリフィスホール(H)の断面積が前記排出流路(450)を通過する冷媒を十分に減圧させる範囲内で最大に形成されても、前記クランク室(S4)の冷媒が前記吸入室(S1)に迅速に排出されるのに限界があり、駆動初期の最大モードへの切り替えに要する時間が増加する問題点があった。また、駆動前に前記クランク室(S4)に液冷媒が存在することがあり、液冷媒が前記オリフィスホール(H)に詰まり、最大モードへの切り替えに要する時間がさらに増加する問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、本発明は、冷媒吐出量の迅速な調節と圧縮機の効率低下防止を同時に達成することができる斜板式圧縮機を提供することを目的とする。
また、本発明は、駆動初期の応答性を向上させることができる斜板式圧縮機を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記のような目的を達成するため、本発明による斜板式圧縮機は、ハウジング、前記ハウジングに回転可能に取り付けられる回転軸、前記ハウジングのクランク室に収容され、前記回転軸と共に回転する斜板、前記ハウジングと共に圧縮室を形成し、前記斜板に連動して往復運動するピストン、前記斜板の傾斜角が調節されるように前記クランク室の冷媒を前記ハウジングの吸入室に案内する排出流路、及び前記排出流路に備えられるバルブチャンバと、前記バルブチャンバの内部で往復運動するバルブコアとを有する排出流路調節バルブ、を含み、前記バルブコアは、前記排出流路を常時連通させる第1連通路、及び前記クランク室の圧力と前記吸入室の圧力との間の差圧が一定の圧力範囲に含まれる場合、前記排出流路を連通させる第2連通路を含むことを特徴とする。
【0022】
前記排出流路調節バルブは、前記クランク室と前記バルブチャンバとを連通させるバルブ入口、前記吸入室と前記バルブチャンバとを連通させるバルブ出口、及び前記バルブコアを前記バルブ入口側に加圧する弾性部材、をさらに含んでもよい。
【0023】
前記バルブチャンバは、前記バルブ入口と連通する入口部、及び前記バルブ出口と連通する出口部を含み、前記入口部の内径は、前記出口部の内径より大きく形成され、前記入口部と前記出口部との間に第2段差面が形成されてもよい。
【0024】
前記バルブコアは、前記バルブ入口に対向する第1圧力面と、前記バルブ出口に対向する第2圧力面と、を有する基底板、及び前記第2圧力面の外周部から環状に突出する側板、を含み、前記第1連通路は、前記第1圧力面から前記第2圧力面まで前記基底板を貫通して形成され、前記第2連通路は、前記側板の外周面から前記側板の内周面まで前記側板を貫通して形成されてもよい。
【0025】
前記バルブコアの往復運動方向を軸方向とすると、前記第2連通路は軸方向に延長形成されてもよい。
【0026】
前記バルブ入口の内径は、前記バルブコアの外径より小さく形成され、前記入口部と前記バルブ入口との間に前記第1圧力面と接触可能な第1段差面が形成され、前記バルブ出口の内径は、前記バルブコアの外径より小さく形成され、前記出口部と前記バルブ出口との間に前記側板の先端面と接触可能な第3段差面が形成されてもよい。
【0027】
前記弾性部材は、一端部が前記第2圧力面に支持され、他端部が前記第3段差面に支持されるコイルスプリングで形成されてもよい。
【0028】
前記第1連通路の内径は、前記バルブ入口の内径より小さく形成されてもよい。
【0029】
前記第2連通路で前記側板の先端面から軸方向に最も遠く離隔した部位を第2連通路の開始部とすると、前記側板の先端面と前記第2連通路の開始部との間の軸方向距離は、前記出口部の軸方向長さより小さく形成され、前記基底板の第1圧力面と前記第2連通路の開始部との間の軸方向距離は、前記入口部の軸方向長さより小さく形成されてもよい。
【0030】
前記差圧が前記第1圧力以下の場合、前記第1圧力面が前記第1段差面に接触し、前記クランク室の冷媒が前記バルブ入口、前記第1連通路、及び前記バルブ出口を介して前記吸入室に移動し、前記差圧が前記第1圧力より大きくかつ前記第圧力より小さい場合、前記第1圧力面が前記第1段差面と離隔し、前記第2連通路の少なくとも一部が前記入口部の内周面によって開放され、前記クランク室の冷媒が前記バルブ入口、前記入口部、前記第1連通路、前記第2連通路、及び前記バルブ出口を介して前記吸入室に移動し、前記差圧が前記第圧力以上の場合、前記第1圧力面が前記第1段差面と離隔し、前記第2連通路が前記出口部の内周面によって閉鎖され、前記クランク室の冷媒が前記バルブ入口、前記入口部、前記第1連通路、及び前記バルブ出口を介して前記吸入室に移動してもよい。


【0031】
前記ハウジングは、前記ピストンが収容されるボアを有するシリンダーブロック、前記シリンダーブロックの一側に結合し、前記クランク室を有するフロントハウジング、前記シリンダーブロックの他側に結合し、前記吸入室を有するリアハウジングを含み、前記シリンダーブロックと前記リアハウジングとの間に前記吸入室と前記圧縮室とを連通及び遮蔽するバルブ機構が介在され、前記リアハウジングは、前記バルブ機構に支持されるポスト部を含み、前記バルブ入口は前記バルブ機構に形成され、前記バルブ出口及び前記バルブチャンバは前記ポスト部に形成されてもよい。
【0032】
前記排出流路調節バルブは、前記差圧が第1圧力以下または第2圧力以上の場合、前記排出流路の流動断面積を第1面積に調節し、前記差圧が前記第1圧力より大きくかつ前記第2圧力より小さい場合、前記排出流路の流動断面積を前記第1面積より大きく調節するように形成されてもよい。
【0033】
前記排出流路調節バルブは、前記差圧が前記第1圧力より大きくかつ前記第2圧力より小さい範囲内で増加するほど、前記排出流路の流動断面積が減少するように形成されてもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明による斜板式圧縮機は、ハウジング、前記ハウジングに回転可能に取り付けられる回転軸、前記ハウジングのクランク室に収容され、前記回転軸と共に回転する斜板、前記ハウジングと共に圧縮室を形成し、前記斜板に連動して往復運動するピストン、前記斜板の傾斜角が調節されるように前記クランク室の冷媒を前記ハウジングの吸入室に案内する排出流路、及び前記排出流路に備えられるバルブチャンバと、前記バルブチャンバの内部で往復運動するバルブコアとを有する排出流路調節バルブ、を含み、前記バルブコアは、前記排出流路を常時連通させる第1連通路、及び前記クランク室の圧力と前記吸入室の圧力との間の差圧が一定の圧力範囲に含まれる場合、前記排出流路を連通させる第2連通路を含むことで、冷媒吐出量の迅速な調節と圧縮機の効率低下防止を同時に達成することができ、駆動初期の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】従来の斜板式圧縮機を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施例による斜板式圧縮機における排出流路を示す断面図であって、差圧が第1圧力以下の状態を示す断面図である。
図3図2の斜板式圧縮機における排出流路を示す断面図であって、差圧が第1圧力より大きくかつ第2圧力より小さい状態を示す断面図である。
図4図2の斜板式圧縮機における排出流路を示す断面図であって、差圧が第2圧力以上の状態を示す断面図である。
図5図2の斜板式圧縮機における排出流路調節バルブのバルブコアを示す斜視図である。
図6図5のバルブコアを切開して示す斜視図である。
図7図1及び図2の斜板式圧縮機における差圧と排出流路の流動断面積との間の関係を比較して示す図表である。
図8図1及び図2の斜板式圧縮機における差圧と排出流路の流量との間の関係を比較して示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明による斜板式圧縮機を添付の図面を参照して詳しく説明する。
【0037】
図2は、本発明の一実施例による斜板式圧縮機における排出流路を示す断面図であり、差圧が第1圧力以下の状態を示す断面図であり、図3は、図2の斜板式圧縮機における排出流路を示す断面図であり、差圧が第1圧力より大きくかつ第2圧力より小さい状態を示す断面図であり、図4は、図2の斜板式圧縮機における排出流路を示す断面図であり、差圧が第2圧力以上の状態を示す断面図であり、図5は、図2の斜板式圧縮機における排出流路調節バルブのバルブコアを示す斜視図であり、図6は、図5のバルブコアを切開して示す斜視図であり、図7は、図1及び図2の斜板式圧縮機における差圧と排出流路の流動断面積との間の関係を比較して示す図表であり、図8は、図1及び図2の斜板式圧縮機における差圧と排出流路の流量との間の関係を比較して示す図表である。
【0038】
一方、図2ないし図8で示されていない構成要素は、説明の便宜上図1を参照する。添付の図2ないし図8、及び図1を参照すると、本発明の一実施例による斜板式圧縮機は、ハウジング(100)、ハウジング(100)の内部に備えられ、冷媒を圧縮する圧縮機構(200)を含んでもよい。
【0039】
ハウジング(100)は、圧縮機構(200)が収容されるシリンダーブロック(110)、シリンダーブロック(110)の前方に結合されるフロントハウジング(120)、及びシリンダーブロック(110)の後方に結合されるリアハウジング(130)を含む。シリンダーブロック(110)の中心側には後述する回転軸(210)が挿入される軸受孔(112)が形成され、シリンダーブロック(110)の外周部側には、後述するピストン(230)が挿入され、ピストン(230)と共に圧縮室をなすボア(114)が形成される。
【0040】
フロントハウジング(120)は、シリンダーブロック(110)と締結され、後述する斜板(220)が収容されるクランク室(S4)を形成する。リアハウジング(130)は、前記圧縮室に流入する冷媒が収容される吸入室(S1)、及び前記圧縮室から吐出される冷媒が収容される吐出室(S3)を含む。また、リアハウジング(130)は、リアハウジング(130)の変形が防止されるように、リアハウジング(130)の内壁面から延びて後述するバルブ機構に支持されるポスト部(134)を含み、ポスト部(134)には後述する排出流路(450)の一部が形成される。
【0041】
圧縮機構(200)は、ハウジング(100)に回転可能に支持され、駆動源(例えば、車両のエンジン)(図示せず)から回転力を伝達されて回転する回転軸(210)、回転軸(210)に連動してクランク室(S4)の内部で回転する斜板(220)、及び斜板(220)に連動してボア(114)の内部で往復運動するピストン(230)を含む。回転軸(210)は、一端部が軸受孔(112)に挿入されて回転可能に支持され、他端部がフロントハウジング(120)を貫通してハウジング(100)の外部に突出し、駆動源(図示せず)に連結される。
【0042】
斜板(220)は円板状に形成され、クランク室(S4)で回転軸(210)に傾くように締結される。ここで、斜板(220)は、斜板(220)の傾斜角が可変可能に回転軸(210)と締結され、これについては後述する。
【0043】
ピストン(230)は、ボア(114)に挿入される一端部、及び前記一端部からボア(114)の反対側に延び、クランク室(S4)で斜板(220)に連結される他端部を含む。また、本実施例による斜板式圧縮機は、吸入室(S1)及び吐出室(S3)を前記圧縮室と連通及び遮蔽するように、シリンダーブロック(110)とリアハウジング(130)との間に介在されるバルブ機構(300)をさらに含む。また、本実施例による斜板式圧縮機は、回転軸(210)に対する斜板(220)の傾斜角を調節する傾斜調節機構(400)をさらに含む。
【0044】
傾斜調節機構(400)は、斜板(220)が回転軸(210)に締結されるが、斜板(220)の傾斜角が可変可能に締結されるように、回転軸(210)に締結され、回転軸(210)と共に回転するローター(410)、及び斜板(220)とローター(410)とを連結するスライディングピン(420)を含む。
【0045】
また、傾斜調節機構(400)は、クランク室(S4)の圧力を調節することにより斜板(220)の傾斜角を調節するように、吐出室(S3)の冷媒をクランク室(S4)に案内する流入流路(430)、及びクランク室(S4)の冷媒を吸入室(S1)に案内する排出流路(450)を含む。
【0046】
流入流路(430)は、リアハウジング(130)、バルブ機構(300)、及びシリンダーブロック(110)を貫通して吐出室(S3)からクランク室(S4)まで延長形成される。また、流入流路(430)には、吐出室(S3)から流入流路(430)に流入する冷媒量を調節する圧力調節バルブ(図示せず)が形成され、圧力調節バルブ(図示せず)は、いわゆる機械式バルブ(MCV)または電子式バルブ(ECV)として形成される。
【0047】
排出流路(450)は、シリンダーブロック(110)とバルブ機構(300)とを貫通して、クランク室(S4)から吸入室(S1)まで延長形成される。また、排出流路(450)は、クランク室(S4)の圧力と吸入室(S1)の圧力との間の差圧(ΔP)によって、排出流路(450)の流動断面積を調節する排出流路調節バルブ(460)が形成される。
【0048】
排出流路調節バルブ(460)は、差圧(ΔP)が第1圧力(P1)以下であるか、または第1圧力(P1)より大きい第2圧力(P2)以上である場合、排出流路(450)の流動断面積を第1面積(後述する第1連通路(467b)の断面積)に調節し、差圧(ΔP)が第1圧力(P1)より大きくかつ第2圧力(P2)より小さい場合、排出流路(450)の流動断面積を第1面積より大きく調節するように形成される。
【0049】
また、排出流路調節バルブ(460)は、差圧(ΔP)が第1圧力(P1)より大きくかつ第2圧力(P2)より小さい範囲内で増加するほど、排出流路(450)の流動断面積が減少するように形成される。
【0050】
具体的に、排出流路調節バルブ(460)は、クランク室(S4)と連通するバルブ入口(462)、吸入室(S1)と連通するバルブ出口(466)、バルブ入口(462)とバルブ出口(466)との間に形成されるバルブチャンバ(464)、バルブチャンバ(464)の内部で往復運動するバルブコア(467)、及びバルブコア(467)をバルブ入口(462)側に加圧する弾性部材(468)を含む。
【0051】
バルブ入口(462)はバルブ機構(300)に形成され、バルブ出口(466)とバルブチャンバ(464)はリアハウジング(130)のポスト部(134)に形成される。ここで、本実施例による排出流路調節バルブ(460)は、コスト削減のために別のバルブケーシングを含んでいない。すなわち、バルブ入口(462)がバルブ機構(300)に形成され、バルブ出口(466)及びバルブチャンバ(464)がポスト部(134)に形成される。しかし、これらに限定されるのではなく、排出流路調節バルブ(460)は別のバルブケーシングを含み、バルブ入口(462)、バルブ出口(466)、及びバルブチャンバ(464)がバルブケーシングに形成されてもよい。
【0052】
バルブチャンバ(464)は、バルブ入口(462)と連通する入口部(464a)、及びバルブ出口(466)と連通する出口部(464c)を含む。入口部(464a)は、バルブコア(467)がバルブ入口(462)に挿入されないように、入口部(464a)の内径がバルブ入口(462)の内径より大きく形成される。すなわち、入口部(464a)とバルブ入口(462)との間に、後述する第1圧力面(F1)と接触可能な第1段差面(463)が形成される。
【0053】
また、入口部(464a)は、バルブ入口(462)の冷媒の一部がバルブコア(467)と入口部(464a)との間に流入可能になるように、入口部(464a)の内径が出口部(464c)の内径より大きく形成され、入口部(464a)と出口部(464c)との間に第2段差面(464b)が形成される。また、入口部(464a)は、バルブコア(467)が出口部(464c)から完全に離脱しないように、入口部(464a)の軸方向長さがバルブコア(467)の軸方向長さよりも短く形成される。
【0054】
また、入口部(464a)は、バルブコア(467)がバルブ入口(462)側に移動するとき、後述する第2連通路(467d)が入口部(464a)によって開放されるように、入口部(464a)の軸方向長さが後述する第1圧力面(F1)と後述する第2連通路(467d)の開始部との間の軸方向距離より大きく形成される。
【0055】
出口部(464c)は、バルブコア(467)がバルブ出口(466)に挿入されないように、出口部(464c)の内径がバルブ出口(466)の内径より大きく形成される。すなわち、出口部(464c)とバルブ出口(466)との間に、後述する側板(467c)の先端面と接触可能な第3段差面(465)が形成される。
【0056】
また、出口部(464c)は、バルブコア(467)が出口部(464c)の内部で往復運動可能であるが、バルブコア(467)と入口部(464a)との間の冷媒が、後述する第2連通路(467d)を介してのみバルブ出口(466)に流動可能になるように、すなわちバルブコア(467)と入口部(464a)との間の冷媒が、バルブコア(467)と出口部(464c)との間を介して後述する第2連通路(467d)に流動しないように、出口部(464c)の内径がバルブコア(467)の外径(さらに正確には、後述する基底板(467a)の外径、及び後述する側板(467c)の外径)と同等のレベルに(同一であるかまたは少し大きく)形成される。
【0057】
また、出口部(464c)は、バルブコア(467)がバルブ出口(466)側に移動するとき、後述する第2連通路(467d)が出口部(464c)によって漸進的に減少して閉鎖されるように、出口部(464c)の軸方向長さが、後述する側板(467c)の先端面と第2連通路(467d)の開始部(側板(467c)の先端面から軸方向に最も遠く離隔した部位)との間の軸方向距離より大きく形成される。
【0058】
また、出口部(464c)は、バルブコア(467)が出口部(464c)に完全に挿入されないように、出口部(464c)の軸方向長さがバルブコア(467)の軸方向長さよりも短く形成される。
【0059】
バルブコア(467)は、バルブ入口(462)に対向する第1圧力面(F1)と、バルブ出口(466)に対向する第2圧力面(F2)とを有する基底板(467a)、第2圧力面(F2)の外周部から環状に突出する側板(467c)、第1圧力面(F1)から第2圧力面(F2)まで基底板(467a)を貫通する第1連通路(467b)、及び側板(467c)の外周面から側板(467c)の内周面まで側板(467c)を貫通する第2連通路(467d)を含む。
【0060】
弾性部材(468)は、第2連通路(467d)と類似の効果(バルブコア(467)がバルブ出口(466)側に移動するほど排出流路(450)の流動断面積を減少させる効果)を発揮するように、一端部が第2圧力面(F2)に支持され、他端部が第3段差面(465)に支持されるコイルスプリングで形成される。
【0061】
ここで、第1連通路(467b)を通過してバルブ出口(466)に流動する冷媒が弾性部材(468)によって妨害されないように、第1連通路(467b)の入口はバルブ入口(462)に対向して形成され、第1連通路(467b)の出口は弾性部材(468)(さらに正確には、コイルスプリング)の内側に対向して形成される。
【0062】
また、第1圧力面(F1)が第1段差面(463)に接触した状態でもバルブ入口(462)の冷媒によって圧力を受けることができるように、第1連通路(467b)の内径がバルブ入口(462)の内径より小さく形成される。また、バルブコア(467)がバルブ出口(466)側に移動するほど第2連通路(467d)の流動断面積が減少するように、第2連通路(467d)は、バルブコア(467)の往復運動方向(軸方向)に延びる長孔で形成される。
【0063】
また、第2連通路(467d)を通過してバルブ出口(466)に流動する冷媒が弾性部材(468)によって妨害されるように、特にバルブコア(467)がバルブ出口(466)側に移動するほど、第2連通路(467d)を通過してバルブ出口(466)に流動する冷媒が弾性部材(468)によってさらに大きく妨害されるように、第2連通路(467d)は弾性部材(468)(さらに正確には、コイルスプリング)の外側に形成され、バルブ出口(466)は弾性部材(468)(さらに正確には、コイルスプリング)の内側に対向して形成される。
【0064】
以下、本実施例による斜板式圧縮機の作用効果について説明する。すなわち、駆動源(図示せず)から回転軸(210)に動力が伝達されると、回転軸(210)と斜板(220)が共に回転する。また、ピストン(230)は、斜板(220)の回転運動を直線運動に変換してボア(114)の内部で往復運動してもよい。
【0065】
また、ピストン(230)が上死点から下死点に移動するとき、圧縮室は、バルブ機構(300)によって吸入室(S1)とは連通し、吐出室(S3)とは遮蔽され、吸入室(S1)の冷媒が圧縮室に吸入される。
【0066】
また、ピストン(230)が下死点から上死点に移動するとき、圧縮室は、バルブ機構(300)によって吸入室(S1)及び吐出室(S3)と遮蔽され、圧縮室の冷媒が圧縮される。
【0067】
また、ピストン(230)が上死点に到達するとき、圧縮室は、バルブ機構(300)によって吸入室(S1)とは遮蔽され、吐出室(S3)とは連通することによって、圧縮室で圧縮された冷媒が吐出室(S3)に吐出される。
【0068】
ここで、本実施例による斜板式圧縮機は、下記のように冷媒吐出量を調節することができる。すなわち、まず、停止時に冷媒吐出量が最小である最小モードに設定される。すなわち、斜板(220)が回転軸(210)に垂直に近く配置され、斜板(220)の傾斜角がゼロ(0)に近くなる。ここで、斜板(220)の傾斜角は、斜板(220)の回転中心を基準として斜板(220)の回転軸(210)と斜板(220)の法線との間の角度として測定することができる。
【0069】
次いで、運転が開始すると、一応、冷媒吐出量が最大である最大モードに調節される。すなわち、流入流路(430)が圧力調節バルブ(図示せず)によって閉鎖され、クランク室(S4)の圧力が吸入圧のレベルに減少する。すなわち、クランク室(S4)の圧力が最小に減少する。これによって、クランク室(S4)の圧力による斜板(220)のモーメントと、斜板(220)のリターンスプリングによるモーメントとの和(以下、第1モーメント)が、ピストン(230)の圧縮反力によるモーメント(以下、第2モーメント)より小さくなり、斜板(220)の傾斜角が最大に増加し、ピストン(230)のストロークが最大に増加することで、冷媒吐出量が最大に増加できる。
【0070】
次いで、最大モードの後には、要求される冷媒吐出量によって、吐出室(S3)から流入流路(430)に流入する冷媒量が圧力調節バルブ(図示せず)により調節され、クランク室(S4)の圧力が調節され、ピストン(230)のストロークが調節され、斜板(220)の傾斜角が調節されることで、冷媒吐出量が調節される。
【0071】
すなわち、冷媒吐出量の減少が必要な場合、吐出室(S3)から流入流路(430)に流入する冷媒量が圧力調節バルブ(図示せず)によって増加し、流入流路(430)を介してクランク室(S4)に流入する冷媒量が増加すると、クランク室(S4)の圧力が増加し、第1モーメントが増加できる。また、第1モーメントが第2モーメントより大きくなり、斜板(220)の傾斜角は減少し、ピストン(230)のストロークが減少することで、冷媒吐出量が減少できる。
【0072】
一方、冷媒吐出量の増加が必要な場合、吐出室(S3)から流入流路(430)に流入する冷媒量が圧力調節バルブ(図示せず)によって減少し、流入流路(430)を介してクランク室(S4)に流入する冷媒量が減少すると、クランク室(S4)の圧力が減少し、第1モーメントが減少できる。また、第1モーメントが第2モーメントより小さくなり、斜板(220)の傾斜角は増加し、ピストン(230)のストロークが増加することで、冷媒吐出量が増加できる。
【0073】
一方、第1モーメントと第2モーメントが同一である場合、斜板(220)の傾斜角は定常状態(steady state)に維持され、ピストン(230)のストロークと冷媒吐出量を一定に維持することができる。
【0074】
ここで、ピストン(230)の圧縮反力は圧縮量に比例するため、ピストン(230)の圧縮反力及び第2モーメントは斜板(220)の傾斜角が大きくなるほど増加する。これによって、斜板(220)の傾斜角が増加するほど、斜板(220)の傾斜角を維持するためのクランク室(S4)の圧力も増加する。すなわち、斜板(220)の傾斜角が相対的に大きい状態で定常状態に維持される場合のクランク室(S4)の圧力は、斜板(220)の傾斜角が相対的に小さい状態で定常状態に維持される場合のクランク室(S4)の圧力よりさらに大きな圧力が要求される。
【0075】
一方、クランク室(S4)の圧力が減少するためには、流入流路(430)の開度量が減少され、吐出室(S3)からクランク室(S4)に流入する冷媒量が減少されなければならないだけでなく、クランク室(S4)の冷媒がクランク室(S4)の外部に排出されなければならず、このためにクランク室(S4)の冷媒を吸入室(S1)に案内する排出流路(450)が備えられる。
【0076】
ここで、本実施例による斜板式圧縮機は、クランク室(S4)の圧力と吸入室(S1)の圧力との間の差圧(ΔP)によって排出流路(450)の流動断面積を調節する排出流路調節バルブ(460)を含むことによって、排出流路(450)を通過する冷媒が減圧され、吸入室(S1)の圧力が上昇することが防止されるだけでなく、冷媒吐出量の迅速な調節と圧縮機の効率低下防止、及び駆動初期の応答性の向上を同時に達成することができる。
【0077】
具体的に、図2を参照すると、差圧(ΔP)が第1圧力(P1)以下の場合、第2圧力面(F2)に印加される力が第1圧力面(F1)に印加される力より大きいため、バルブコア(467)がバルブ入口(462)側に移動することができる。また、第1圧力面(F1)が第1段差面(463)に接触することができる。これによって、クランク室(S4)の冷媒は、バルブ入口(462)、第1連通路(467b)、及びバルブ出口(466)を通過して吸入室(S1)に流動し、このとき、排出流路(450)の流動断面積は第1連通路(467b)の断面積で決定される。
【0078】
ここで、第1連通路(467b)の断面積は、バルブ入口(462)の断面積及びバルブ出口(466)の断面積より小さいため、排出流路(450)を通過する冷媒が減圧され、吸入室(S1)の圧力上昇を防止することができる。また、第1連通路(467b)の断面積は、図7に示すように従来のオリフィスホール(H)の流動断面積よりは小さいものであるため、図8に示すようにクランク室(S4)の冷媒が不要に吸入室(S1)に漏洩することが抑制され、冷媒の漏洩による圧縮機の効率低下を抑制することができる。
【0079】
また、図3を参照すると、差圧(ΔP)が第1圧力(P1)より大きくかつ第2圧力(P2)より小さい場合、第1圧力面(F1)に印加される力が第2圧力面(F2)に印加される力より大きくなり、バルブコア(467)がバルブ出口(466)側に移動することができる。また、第1圧力面(F1)が第1段差面(463)から離隔することができる。
【0080】
これによって、クランク室(S4)の冷媒の一部は、バルブ入口(462)、入口部(464a)、第1連通路(467b)、及びバルブ出口(466)を通過して吸入室(S1)に流動し、クランク室(S4)の冷媒の残りは、バルブ入口(462)、入口部(464a)、第2連通路(467d)、及びバルブ出口(466)を通過して吸入室(S1)に流動し、このとき、排出流路(450)の流動断面積は第1連通路(467b)より増加できる。ここで、排出流路(450)の流動断面積は、バルブ入口(462)の断面積及びバルブ出口(466)の断面積より小さいため、排出流路(450)を通過する冷媒が減圧され、吸入室(S1)の圧力上昇を防止することができる。
【0081】
また、排出流路(450)の流動断面積は、図7に示すように従来のオリフィスホール(H)の流動断面積より大きいため、例えば駆動初期のような場合に、クランク室(S4)の冷媒(液冷媒を含む)を吸入室(S1)に迅速に排出することができ、斜板(220)の傾斜角調節及び冷媒吐出量調節に要する時間が減少できる。すなわち、応答性を向上させることができる。
【0082】
一方、排出流路(450)の流動断面積が従来のオリフィスホール(H)の流動断面積より大きいが、排出流路調節バルブ(460)内の流動距離及び流動抵抗によって図8に示すように従来に対して冷媒漏洩量が減少し、冷媒の漏洩による圧縮機の効率低下を抑制することができる。一方、差圧(ΔP)が第1圧力(P1)より大きくかつ第2圧力(P2)より小さい範囲内で差圧(ΔP)が増加するほど、バルブコア(467)はバルブ出口(466)側にさらに移動し、第2連通路(467d)の有効断面積が漸進的に減少することで、排出流路(450)の流動断面積は漸進的に減少するが、依然として第1連通路(467b)の断面積よりは大きいことがある。
【0083】
ここで、排出流路(450)の流動断面積は、バルブ入口(462)の断面積及びバルブ出口(466)の断面積より小さいため、排出流路(450)を通過する冷媒が減圧され、吸入室(S1)の圧力上昇を防止することができる。また、排出流路(450)の流動断面積は、図7に示すように従来のオリフィスホール(H)の流動断面積より小くなることがあるため、図8に示すように差圧(ΔP)が増加しなければならないときは冷媒漏洩量が減少し、冷媒の漏洩による圧縮機の効率低下を抑制することができる。
【0084】
また、図4を参照すると、差圧(ΔP)が第2圧力(P2)以上の場合、第1圧力面(F1)に印加される力が第2圧力面(F2)に印加される力よりさらに大きくなり、バルブコア(467)がバルブ出口(466)側にさらに移動することができる。また、第1圧力面(F1)が第1段差面(463)からさらに離隔することができる。
【0085】
また、側板(467c)の先端面が第3段差面(465)に接触し、第2連通路(467d)は出口部(464c)に完全に覆われて閉鎖されてもよい。これによって、クランク室(S4)の冷媒は、バルブ入口(462)、入口部(464a)、第1連通路(467b)、及びバルブ出口(466)を通過して吸入室(S1)に流動し、このとき、排出流路(450)の流動断面積は、また第1連通路(467b)の断面積で決定される。
【0086】
ここで、排出流路(450)の流動断面積は、バルブ入口(462)の断面積及びバルブ出口(466)の断面積より小さいため、排出流路(450)を通過する冷媒が減圧され、吸入室(S1)の圧力上昇を防止することができる。また、排出流路(450)の流動断面積は、図7に示すように従来のオリフィスホール(H)の流動断面積よりは小さなものであるため、図8に示すように差圧(ΔP)が大きい状態での冷媒漏洩量も減少し、冷媒の漏洩による圧縮機の効率低下を抑制することができる。
【0087】
一方、排出流路調節バルブ(460)は構造が単純であるため、排出流路調節バルブ(460)によるコスト増加幅が小さいことがある。また、液冷媒によって排出流路(450)が詰まることが防止されるため、例えば、圧力調節バルブ(図示せず)などに液冷媒を除去するための装置を別途備える必要がなく、圧縮機のコストを削減することができる。
【符号の説明】
【0088】
100 ハウジング
110 シリンダーブロック
112 軸受孔
114 ボア
120 フロントハウジング
130 リアハウジング
134 ポスト部
200 圧縮機構
210 回転軸
220 斜板
230 ピストン
300 バルブ機構
400 傾斜調節機構
410 ローター
420 スライディングピン
430 排出流路
450 排出流路
460 排出流路調節バルブ
462 バルブ入口
463 第1段差面
464 バルブチャンバ
464a 入口部
464b 第2段差面
464c 出口部
465 第3段差面
466 バルブ出口
467 バルブコア
467a 基底板
467b 第1連通路
467c 側板
467d 第2連通路
468 弾性部材
S1 吸入室
S3 吐出室
S4 クランク室
F1 第1圧力面
F2 第2圧力面
H オリフィスホール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8