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特許7480390センサ装置、センサシステム、センサ装置の使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】センサ装置、センサシステム、センサ装置の使用方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/2962 20220101AFI20240430BHJP
   G01F 23/00 20220101ALI20240430BHJP
【FI】
G01F23/2962
G01F23/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023071718
(22)【出願日】2023-04-25
(62)【分割の表示】P 2019104568の分割
【原出願日】2019-06-04
(65)【公開番号】P2023083570
(43)【公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2019024886
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出来 信久
(72)【発明者】
【氏名】世継 和也
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 大悟
(72)【発明者】
【氏名】井戸 健一
(72)【発明者】
【氏名】古田 兼三
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-79716(JP,U)
【文献】実開平3-10222(JP,U)
【文献】特開2010-91455(JP,A)
【文献】特開2001-241998(JP,A)
【文献】特開昭60-73312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/00
G01F 23/2962
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を発信してから、測定対象によって反射された前記超音波の反射波を受信するまでの時間を計測して、当該時間に基づく情報を外部に送信可能な超音波センサと、
前記超音波センサを収容する筐体と、
前記超音波センサが河川或いは海の水面の上方に位置するように、前記超音波センサを支持する支持体と
支持具とを備え、
前記支持体は、水平方向に延びるアームを備え、
前記アームの一端側は、上下方向に延びる支柱に締結されており、前記筐体の開口部から出射された前記超音波が河川或いは海の水面に向かうように、前記アームの他端側に前記筐体が取り付けられ、
前記支持具は、前記アームの下側且つ近傍において前記支柱に着脱自在に取り付けられるものであって、前記支柱への前記アームの一端側の締結を緩めることで、前記アームの一端側を前記支持具に支持させた状態で、前記アームを前記支柱回りに回転させることが可能であり、
前記支柱への前記アームの一端側の締結を緩め、且つ、前記支柱から前記支持具を取り外すことで、前記アームを前記支柱に沿って上下方向にスライドさせて、前記筐体を上下動させることが可能であるセンサ装置。
【請求項2】
前記アームの上側且つ近傍において前記支柱に着脱自在に取り付けられる抑付具をさらに備え、
前記支柱への前記アームの一端側の締結を緩めた際には、前記支持具に支持される前記アームの一端側を、前記抑付具によって下方に抑え付けることが可能であり、
前記支柱への前記アームの一端側の締結を緩め、且つ、前記支柱から前記支持具及び前記抑付具を取り外すことで、前記アームを前記支柱に沿って上下方向にスライドさせて、前記筐体を上下動させることが可能である請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記筐体は、水平方向にスライド自在に前記アームに取り付けられている請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のセンサ装置を備えるセンサシステムであって、
前記超音波センサによって計測された時間と、前記超音波の発信時或いは前記反射波の受信時における前記超音波センサ付近の気温を用いて求められる音速とに基づき、前記超音波センサから前記測定対象までの距離を示す情報を取得する距離取得手段を備えるセンサシステム。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかの記載のセンサ装置の使用方法であって、
前記超音波センサは、超音波を発信してから、測定対象によって反射された前記超音波の反射波を受信するまでの時間を計測して、当該時間に基づく情報を外部に送信可能なものであり、河川或いは海の危険水位よりも下方に位置する固体の部分に前記超音波が向かうように、前記超音波センサは配置され、
前記固体の部分と前記超音波センサとの間の距離は、前記超音波センサが前記反射波を検知可能な最大の距離よりも短いセンサ装置の使用方法。
【請求項6】
前記固体は、河川の堤防である請求項5に記載のセンサ装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサを備えるセンサ装置、及び超音波センサの配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川が危険水位になった時を特定するために、超音波センサを使用する技術が提案されている。この種の技術として、特許文献1には、川岸から延ばしたアームに超音波センサを取り付けることで、水面上方の所定高さに超音波センサを設置する技術が開示されている。特許文献1では、超音波センサが、水面に向けて超音波を送信してから、水面で反射した反射波(超音波の反射波)が受信するまでの時間に基づき、センサと水面との間の距離(以下、センサ水面間距離と適宜記す)を検知する。そして、アームを水平方向に回動させることで、超音波センサの水平位置が変更可能とされる(つまり超音波センサによるセンサ水面間距離の検知位置を水平方向に変更できる)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-174516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1では、上述のようにアームの回動によって超音波センサの水平位置を変更できるものの、超音波センサの上下位置は一定とされる。このため、汎用されている超音波センサが使用される場合には、超音波センサの出力が低いことで、センサ水面間距離が短い状況(例えばセンサ水面間距離が4m以下となる状況)でしか、センサ水面間距離を検知できない。水位の低下によってセンサ水面間距離が大きくなる可能性がある場合には、出力の高い超音波センサを使用する必要があり、高額なコストを要することになる。
【0005】
また特許文献1では、超音波センサの上下位置が一定とされることで、超音波センサが故障でセンサ水面間距離を検知しないにもかかわらず、管理者が、センサ水面間距離が検知しないのは、水位が低下してセンサ水面間距離が大きくなったためと思い込む虞がある。その結果、超音波センサに生じた故障が放置されたままとされて、危険水位になった時に超音波センサが動作せず、危険水位になった時を特定できない虞がある。
【0006】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであって、その目的は、コストを安価に抑えつつ、河川或いは海が危険水位になった時を確実に特定可能な情報を得るセンサ装置及び超音波センサの配置方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
【0008】
項1.超音波を発信してから、測定対象によって反射された前記超音波の反射波を受信するまでの時間を計測して、当該時間に基づく情報を外部に送信可能な超音波センサと、 前記超音波センサが河川或いは海の水面の上方に位置するように、前記超音波センサを支持する支持体とを備え、
前記超音波が河川或いは海の水面に向かうように、前記超音波センサが前記支持体に取り付けられ、
前記支持体は、前記超音波センサを上下動させることが可能であるセンサ装置。
【0009】
項2.前記超音波センサを収容する筐体をさらに備え、
前記筐体の開口部から出射された前記超音波が河川或いは海の水面に向かうように、前記筐体が前記支持体に取り付けられ、
前記支持体は、前記筐体を上下動させることが可能である項1に記載のセンサ装置。
【0010】
項3.虫の接近を防止するための忌避材が、前記筐体を形成する材料に含まれている項2に記載のセンサ装置。
【0011】
項4.虫の接近を防止するための忌避材が、前記筐体の表面の少なくとも一部に塗布されている項2又は3に記載のセンサ装置。
【0012】
項5.前記筐体の表面には撥水剤が塗布されている項1乃至4のいずれかに記載のセンサ装置。
【0013】
項6.前記筐体の開口部は、虫の侵入を防止するためのシートで覆われている項1乃至5のいずれかに記載のセンサ装置。
【0014】
項7.前記支持体は、上下方向に延びるポールを備え、
前記ポールを上下方向にスライドさせることで、前記筐体を上下動させることが可能である項2乃至6のいずれかに記載のセンサ装置。
【0015】
項8.前記支持体は、水平方向に延びるアームを備え、
前記アームの一端側に前記ポールが取り付けられ、前記アームの他端側に前記筐体が取り付けられる項7に記載のセンサ装置。
【0016】
項9.前記超音波センサに接続されるアンテナを備え、
前記アンテナは、前記アームの長手方向に延びるように、前記アームに取り付けられるもの、或いは前記アンテナは前記アームによって構成されるものであって、
前記超音波センサは、前記時間に基づく情報を前記アンテナから外部に送信する項8に記載のセンサ装置。
【0017】
項10.支持具をさらに備え、
前記支持体は、前記筐体が取り付けられるアームを備え、
前記アームは、水平方向に延びるものであって、前記アームの一端側は、上下方向に延びる支柱に締結されており、
前記支持具は、前記アームの下側且つ近傍において前記支柱に着脱自在に取り付けられるものであって、前記支柱への前記アームの一端側の締結を緩めることで、前記アームの一端側を前記支持具に支持させた状態で、前記アームを前記支柱回りに回転させることが可能であり、
前記支柱への前記アームの一端側の締結を緩め、且つ、前記支柱から前記支持具を取り外すことで、前記アームを前記支柱に沿って上下方向にスライドさせて、前記筐体を上下動させることが可能である項2乃至6のいずれかに記載のセンサ装置。
【0018】
項11.前記アームの上側且つ近傍において前記支柱に着脱自在に取り付けられる抑付具をさらに備え、
前記支柱への前記アームの一端側の締結を緩めた際には、前記支持具に支持される前記アームの一端側を、前記抑付具によって下方に抑え付けることが可能であり、
前記支柱への前記アームの一端側の締結を緩め、且つ、前記支柱から前記支持具及び前記抑付具を取り外すことで、前記アームを前記支柱に沿って上下方向にスライドさせて、前記筐体を上下動させることが可能である項10に記載のセンサ装置。
【0019】
項12.前記筐体は、水平方向にスライド自在に前記アームに取り付けられている項8乃至11のいずれかに記載のセンサ装置。
【0020】
項13.項1乃至12のいずれかに記載のセンサ装置を備えるセンサシステムであって、
前記超音波センサによって計測された時間と、前記超音波の発信時或いは前記反射波の受信時における前記超音波センサ付近の気温を用いて求められる音速とに基づき、前記超音波センサから前記測定対象までの距離を示す情報を取得する距離取得手段を備えるセンサシステム。
【0021】
項14.超音波センサの配置方法であって、
前記超音波センサは、超音波を発信してから、測定対象によって反射された前記超音波の反射波を受信するまでの時間を計測して、当該時間に基づく情報を外部に送信可能なものであり、河川或いは海の危険水位よりも下方に位置する固体の部分に前記超音波が向かうように、前記超音波センサは配置され、
前記固体の部分と前記超音波センサとの間の距離は、前記超音波センサが前記反射波を検知可能な最大の距離よりも短い超音波センサの配置方法。
【0022】
項15.前記固体は、河川の堤防である項14に記載の超音波センサの配置方法。
【0023】
項16.河川或いは海の水面の上方に配置される超音波センサと、
前記超音波センサと前記水面との間に配置される反射板とを備え、
前記超音波センサは、下側に向けて超音波を放射状に発信するものであって、超音波を発信することに伴い前記超音波に関する信号を出力し、測定対象によって反射された前記超音波の反射波を受信することに伴い当該反射波に関する信号を出力することが可能であり、
前記反射板と前記超音波センサとの間の距離は、前記超音波センサが前記反射波を検知可能な最大の距離よりも短く、
前記超音波センサから発せられる超音波のうち、一部の超音波が前記反射板に向かい、残りの超音波が前記反射板よりも下側に向かうものとされるセンサ装置。
【0024】
項17.前記超音波センサと河川或いは海の危険水位との間の距離は、前記超音波センサが前記反射波を検知可能な最大の距離以下である項16に記載のセンサ装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明のセンサ装置によれば、支持体が超音波センサを上下動させることが可能であることで、河川或いは海の水面と超音波センサとの間の距離を、超音波センサによって検知可能な最大の距離(以下、最大検知距離と適宜記す)よりも短くすることができる。このため、超音波センサは、故障が生じない限り、常時、反射波を検知することで、超音波を発信してから、測定対象によって反射された超音波の反射波を受信するまでの時間時間を計測して、当該時間に基づく情報を送信するものとなる。したがって、超音波センサに故障が生じた場合には、上記の情報が超音波センサから送信されなくなることで、管理者は超音波センサに故障が生じたと認識する(従来のように、超音波センサが距離を検知しないのは、距離が大きいためであると、管理者が思い込むことを回避できる)。したがって、超音波センサを修理する対応が迅速に取られるので、河川或いは海が危険水位になる時に確実に超音波センサを正常に動作させることができる。これにより超音波センサが検知する距離によって、河川或いは海が危険水位になったことを確実に特定できる。
【0026】
また本発明のセンサ装置によれば、支持体が超音波センサを上下動させることが可能であることで、汎用されている低出力の超音波センサが使用されて、最大検知距離が短くなる場合でも、河川或いは海の水面と超音波センサとの間の距離を、最大検知距離よりも短くすることができる。したがって、低出力の超音波センサが使用される場合でも、超音波センサが常時反射波を検知可能な状態にすることができるので、高出力の超音波センサを使用する必要がない。したがってコストを安価に抑えることができる。また橋梁内等の施工しやすい箇所で超音波センサをアームに取り付け、その後、ポールを用いて計測のために配置すべき高さに調整して配置することができる。これにより、足場設置などのコストを掛けずに、安全に超音波センサを配置することができる。同様に、超音波センサの電池、バッテリー等の給電部(装置)の寿命が終わった際の更新や故障等による交換等のメンテナンス時も、安全かつ安価に作業をすることができる。更に、河川が危険水位を超えるような増水時に漂流物の衝突よる超音波センサの破損を防ぐため、水位計測を止めて超音波センサの配置高さを上げる、または超音波センサを回収する際にも同様の効果を得ることができる。
【0027】
また本発明の超音波センサの配置方法によれば、固体の部分の高さが一定であり、且つ、固体の部分と超音波センサとの間の距離が、最大検知距離よりも短くされる。これにより、河川或いは海の水位が危険水位よりも下方にある場合には、超音波センサに故障が生じない限り、超音波センサは、常に、反射波を検知することで、超音波を発信してから、測定対象によって反射された反射波を受信するまでの時間を計測して、当該時間に基づく情報を送信するものとなる。したがって、超音波センサに故障が生じた場合には、超音波センサから上記の情報が送信されなくなることで、管理者は超音波センサに故障が生じたと認識する。このため、超音波センサを修理する対応が迅速に取られる。これにより、河川或いは海が危険水位になった際に確実に超音波センサを正常に動作させることができるので、超音波センサが検知する距離によって、河川或いは海が危険水位になったことを確実に特定できる。
【0028】
また、汎用されている低出力の超音波センサが使用される場合でも、固体の部分と超音波センサとの間の距離を最大検知距離よりも短くすることで、超音波センサが常時反射波を検知可能な状態にすることができる。このため、高出力の超音波センサを使用する必要がないので、コストを安価に抑えることができる。
【0029】
また本発明のセンサ装置によれば、反射板と超音波センサとの間の距離が最大検知距離よりも短くされることで、超音波センサに不具合が生じない限り、超音波センサは、常に、反射板からの反射波に関する信号を出力するものとなる。したがって、超音波センサに不具合が生じた場合には、超音波センサが上記信号を出力しなくなることで、管理者は、超音波センサに不具合が生じたと認識する。このため、超音波センサを修理する対応が迅速に取られる。これにより、河川或いは海が危険水位になった際に確実に超音波センサを正常に動作させることができるので、河川或いは海が危険水位になったことを確実に特定できる。
【0030】
また、汎用されている低出力の超音波センサが使用される場合でも、反射板と超音波センサとの間の距離を最大検知距離よりも短くすることで、超音波センサは、反射板からの反射波に関する信号を出力するものとなる。したがって高出力の超音波センサを使用する必要がないので、コストを安価に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1実施形態に係るセンサ装置を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係るセンサ装置が河川の上方に配置された状態を示す概略図である。
図3】第1実施形態に係るセンサ装置が河川の上方に配置された状態を示す概略図である。
図4】ポールが締結具によって支柱に取り付けられた状態を示す側面図である。
図5】ポールを支柱に取り付けるために使用される締結具を示す平面図である。
図6】第1実施形態のセンサ装置が組み込まれるセンサシステムを示す概略図である。
図7】超音波センサを収容する筐体を示す平面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るセンサ装置が河川の上方に配置された状態を示す概略図である。
図9】本発明の第2実施形態に係るセンサ装置が河川の上方に配置された状態を示す概略図である。
図10】本発明の第3実施形態に係るセンサ装置を示す斜視図である。
図11】本発明の第3実施形態に係るセンサ装置の変形例を示す斜視図である。
図12】第3実施形態のセンサ装置が組み込まれるセンサシステムを示す概略図である。
図13】気象協会発表の気温の時間推移や筐体の内側の気温の時間推移を示すグラフである。
図14】超音波センサが計測した発信受信時間を用いて求められる超音波センサと河川の水面との間の距離の時間推移を示すグラフである。
図15】本発明の第4実施形態に係るセンサ装置を示す斜視図である。
図16】第4実施形態に係るセンサ装置を示す概略側面図である。
図17】第4実施形態に係るセンサ装置を示す概略平面図である。
図18】支持具或いは抑付具として使用可能な器具を示す斜視図である。
図19】第4実施形態に係るセンサ装置の変形例を示す図であって、(A)は概略側面図、(B)は概略平面図である。
図20】本発明の変形例に係るセンサ装置が河川或いは海の上方に配置された状態を示す概略図である。
図21】本発明の変形例に係るセンサ装置が河川或いは海の上方に配置された状態を示す概略図である。
図22】超音波センサの出力信号に示される波の強度と時間との関係を示すグラフである。
図23】超音波センサの出力信号に示される波の強度と時間との関係を示すグラフである。
図24】管理サーバーによって実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図25】本発明の変形例に係るセンサ装置を示す図であって、(A)は斜視図、(B)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の第1実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るセンサ装置1を示す斜視図である。図2及び図3は、第1実施形態に係るセンサ装置1を河川Kの上方に配置した状態を示す概略図である。図2は、河川Kが通常水位にある時の状態を示し、図3は、河川Kが危険水位になった時の状態を示している。危険水位とは、例えば、気象庁が指定する氾濫危険水位、避難判断水位、氾濫注意水位、水防団待機水位のいずれかである。
【0033】
第1実施形態のセンサ装置1は、河川Kが危険水位になった時を特定するために使用される。図2及び図3に示す例では、河川Kの上方を横切る橋桁BのガードレールRにセンサ装置1が吊り下げられることで、センサ装置1は河川Kの上方に位置している。
【0034】
図1図3に示すように、センサ装置1は、超音波センサ2と、筐体3と、支持体4と、アンテナ5とを備える。
【0035】
支持体4は、上下方向に延びるポール7と、水平方向に延びるアーム8とを備える。ポール7は、樹脂、FRP、カーボン又は、アルミ等の防錆力に優れた金属、或いは塗装や樹脂被覆等の防錆処理を施した金属等によって形成される。ポール7は、上下方向にスライド自在にガードレールRの支柱6に取り付けられる(図2図3)。この取り付けは、例えば、図4及び図5に示す締結具50を用いて行われる。締結具50は、親子バンドと称されるものであって、従来、防護柵や標識にポールを取り付けるために使用されている。
【0036】
締結具50は、一方側に配置される半円状バンド51,51と、他方側に配置される半円状バンド52,52とを備える。半円状バンド51,51の各々では、一方側端部に締結片53が外方に延設され、他方側端部に締結片54が外方に延設される。半円状バンド52,52の各々では、一方側端部に締結片55が外方に延設され、他方側端部に締結片56が外方に延設される。
【0037】
上記の締結具50の使用時には、半円状バンド51,51が相対し、半円状バンド52,52が相対し、且つ、半円状バンド52,52の締結片55,55の間に半円状バンド51,51の締結片54,54が位置するものとされる。
【0038】
ポール7を支柱6に取り付ける際には、半円状バンド51,51によって構成される環体の内側に支柱6を通し、半円状バンド52,52によって構成される環体の内側にポール7を通すことが行われる。そして締結片53,53を貫通するボルト57にナット58を螺合させ、締結片54,54,55,55を貫通するボルト59にナット60を螺合させ、締結片56,56を貫通するボルト61にナット62を螺合させることが行われる。以上の作業により、支柱6が半円状バンド51,51に締め付けられ、ポール7が半円状バンド52,52に締め付けられることで、締結具50を介してポール7が支柱6に取り付けられた状態になる。そして上記の締結具50によれば、ボルト61及びナット62による締結片53,53の締結を緩め、さらに必要あらば、ボルト59及びナット60による締結片54,54,55,55の締結も緩めることで、半円状バンド52,52によるポール7の締め付けを弱めることができる。これによりポール7を上下方向にスライドさせることができる。なお、支柱6にポール7を取り付けるために使用可能な締結具は、上記の締結具50に限定されず、ポール7を上下方向にスライド自在に支柱6に取り付け可能な公知の締結具を使用できる。
【0039】
アーム8(図1図3)は、樹脂、FRP、カーボン又は、アルミ等の防錆力に優れた金属、或いは塗装や樹脂被覆等の防錆処理を施した金属等によって形成される。アーム8の一端側は、ポール7に固定される。図1に示す例では、金属製のU字クランプ9の内側にポール7を通した状態で、ボルト10を用いてU字クランプ9の両端部をアーム8の一端側に締結することで、アーム8の一端側がポール7に固定されている。なおU字クランプ9以外の公知の手段によって、アーム8の一端側がポール7に固定されてもよい。また図示例では、ポール7の下端にアーム8が固定されているが、ポール7の任意の高さ位置にアーム8は固定され得る。なお河川Kの水面Sに近い位置に超音波センサ2を配置可能とすべく、ポール7の下側にアーム8を固定することが好ましい。
【0040】
アーム8は、長手方向に延びる空洞を有する。アンテナ5は、アーム8の空洞に配置されて、アーム8の長手方向に延びるものとされる。
【0041】
筐体3は、箱状を呈するものであり、アーム8の他端側に取り付けられる。筐体3は、樹脂、FRP、或いは通信のための電波を通す構造を有するアルミ等の防錆力に優れた金属等から形成される。筐体3に虫が接近することを防止するために、筐体3の材料には、虫の忌避材が含まれる。忌避材は、例えば、ピレスロイド系化合物、有機リン系化合物、有機塩素系化合物、有機ケイ素系化合物、カーバメイト系化合物、オキサジアゾール系化合物、ネライストキシン系化合物、アミジノヒドラゾン系化合物、フェニルピラゾール系化合物、イソキサゾリン系化合物、マクロライド系化合物、IGR剤、ネオニコチノイド、オレイン酸ナトリウム、脂肪酸グリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、多硫化石灰、ホウ酸、フルベンジアミド、ジアフェンチロウン、ピメトロジン、ベンジルアルコール、リチウムスルフォネート、マシン油、珪藻土、ロテノン、硫酸ニコチン、ナフタレン、樟脳、ディート、イカリジン、ファルネシルアセトン、イソプロチオラン、チウラム、ジラム、ブチルアセチルアミノプロピオン酸エチル、p-メンタン-3,8-ジオール、シナモン、酢酸シンナミル、ターピネオールのうちのいずれか1種以上を含むものである。
【0042】
超音波センサ2は、超音波Pを発信する送波器と、反射波Hを受信する受波器と、送波器及び受波器の駆動を制御する制御装置とを備える。
【0043】
制御装置は、筐体3の内部に配置される。制御装置は、ケーブル12を介してアンテナ5と接続されており、この接続によって制御装置はアンテナ5から情報を送信可能である(ケーブル12の一端側は、筐体3を貫通して、制御装置に接続され、ケーブル12の他端側は、アーム8を貫通して、アンテナ5に接続されている)。なお必ずしもケーブル12を筐体3の外側に配置する必要はなく、筐体3の内部にケーブル12を配置してもよい。
【0044】
筐体3の壁面3aには開口部17(図1)が形成されており、送波器から発信された超音波Pが開口部17から出射し、且つ、開口部17を通過する反射波Hが受波器に受信されるように、開口部17に送波器や受波器が配置される。
【0045】
そして図2図3に示すように、開口部17の形成された筐体3の壁面3aが河川K側(下側)を向くように、センサ装置1が河川Kの上方に配置される。これにより、開口部17から出射された超音波Pが、河川Kの水面Sに向かうものとなり、水面Sで反射された反射波Hのうち、開口部17に入った反射波Hが受波器に受信される。
【0046】
超音波センサ2の制御装置は、受波器が反射波Hを受信するたびに、超音波Pを発信してから反射波Hを受信するまでの時間(以下、発信受信時間)を計測する。そして制御装置は、上記の発信受信時間に基づく情報を、アンテナ5から外部に送信する。
【0047】
例えば、上記の「発信受信時間に基づく情報」は、「発信受信時間の計測値を示す情報」とされる。この場合、例えば、制御装置は、所定時間が経過するたびに、当該所定時間内に計測された発信受信時間の計測値を示す情報を、アンテナ5から外部に送信する。
【0048】
或いは、上記の「発信受信時間に基づく情報」は、所定時間内に計測された発信受信時間の計測値のうち、最大値、最小値、最頻値、或いは最終値(最後に検知された発信受信時間の値)を示す情報とされる。この場合、制御装置23は、所定時間が経過するたびに、上記の最大値、最小値、最頻値、或いは最終値を示す情報を、アンテナ5から外部に送信する。
【0049】
或いは、上記の「発信受信時間に基づく情報」は、所定時間内に計測された複数の発信受信時間の平均値を示す情報」とされる。この場合、制御装置23は、所定時間が経過するたびに、当該所定時間内に計測された発信受信時間の平均値を求めて、当該平均値を示す情報を、アンテナ5から外部に送信する。
【0050】
或いは、上記の「発信受信時間に基づく情報」は、「発信受信時間の変動値を示す情報」とされる。この場合、制御装置は、発信受信時間を計測するたびに、「今回計測された発信受信時間と前回計測された発信受信時間との差」/「前回の発信受信時間を計測してから今回の発信受信時間を計測するまでの時間」の計算によって、「発信受信時間の変動値」を求めて、当該変動値を示す情報を、アンテナ5から外部に送信する。
【0051】
なお上記の「発信受信時間の変動値」を求める計算は、後述の管理サーバー22(図6)で行われてもよい。この場合、超音波センサ2の制御装置は、発信受信時間を計測するたびに、「発信受信時間の計測値を示す情報」を管理サーバー22に送信する。管理サーバー22は、超音波センサ2から受信された情報を用いて、「発信受信時間の変動値」を求める。
【0052】
また、上記の「発信受信時間に基づく情報」は、例えば、「超音波センサ2と水面との間の距離Lの値を示す情報とされる。この場合、制御装置は、発信受信時間を計測するたびに、当該発信受信時間の値と音速とから、超音波センサ2と水面との間の距離Lの値を求める。そして制御装置23は、所定時間が経過するたびに、当該所定時間内に求められた距離Lの値を示す情報を、アンテナ5から外部に送信する。
【0053】
或いは、上記の「発信受信時間に基づく情報」は、所定時間内に求められた距離Lの値のうち、最大値、最小値、最頻値、或いは最終値(最後に検知された距離Lの絶対値)を示す情報とされる。この場合、制御装置23は、所定時間が経過するたびに、当該所定時間内に求めた複数の距離Lの値のうち、最大値、最小値、最頻値、或いは最終値を示す情報を、アンテナ5から外部に送信する。
【0054】
或いは、「発信受信時間に基づく情報」は、「複数の距離Lの平均値を示す情報」とされる。この場合、制御装置23は、所定時間が経過するたびに、当該所定時間内に求めた距離Lの平均値を求めて、当該距離Lの平均値を示す情報をアンテナ5から外部に送信する。
【0055】
或いは、上記の「発信受信時間に基づく情報」は、「距離Lの変動値」とされる。この場合、制御装置は、発信受信時間を計測するたびに、当該発信受信時間の値と音速とから距離Lの値を求めるとともに、「今回求めた距離Lの値と前回求めた距離Lとの差」/「前回の距離Lの値を求めてから今回の距離Lの値を求めるまでの時間」の計算によって、「距離Lの変動値」を求める。そして制御装置は、当該変動値を示す情報を、アンテナ5から外部に送信する。
【0056】
なお上記の「距離Lの値」、「距離Lの最大値・最小値・最頻値・最終値」、「距離Lの平均値」、或いは「距離Lの変動値」を求める処理は、後述の管理サーバー22(図6)で行われてもよい。この場合、超音波センサ2の制御装置は、発信受信時間を計測するたびに、「発信受信時間の計測値を示す情報」を管理サーバー22に送信する。管理サーバー22は、超音波センサ2から受信された情報を用いて、「距離Lの値」、「距離Lの最大値・最小値・最頻値・最終値」、「距離Lの平均値」、或いは「距離Lの変動値」を求める。
【0057】
ここで、超音波センサ2から水面Sに向かう超音波Pや、水面Sから超音波センサ2に向かう反射波Hは、空間を伝搬する過程で、強度が減衰する。このことから、超音波センサ2が反射波Hを検知可能な距離Lには、限界がある(以下、超音波センサ2が水面Sで反射された反射波Hを検知可能な最大の「超音波センサ2と水面Sとの間の距離L」を、「最大検知距離Lmax」と記す)。
【0058】
そこで第1実施形態では、ポール7の上下方向のスライドで超音波センサ2を上下動させることで(具体的には、ポール7のスライドによって、アーム8を上下動させ、これに伴い超音波センサ2が収容される筐体3を上下動させることで)、超音波センサ2と水面Sとの間の距離Lが、最大検知距離Lmaxよりも短くされる。例えば河川Kが通常水位にある平時では、ポール7のスライドによって、超音波センサ2と通常水位との間の距離Lが、最大検知距離Lmaxよりも短くされることで、超音波センサ2が反射波Hを検知可能な状態とされる(図2)。また大雨や台風等の到来で河川Kが危険水位に上昇する虞がある期間では、ポール7のスライドによって、超音波センサ2と危険水位との間の距離Lが、最大検知距離Lmaxよりも短くされることで、超音波センサ2が反射波Hを検知可能な状態とされる(図3)。
【0059】
図6は、第1実施形態のセンサ装置1が組み込まれるセンサシステム20の一例を示している(なお本発明のセンサ装置1が組み込むことの可能なセンサシステムは図6に示すものに限定されない)。
【0060】
図6に示すセンサシステム20は、上述したセンサ装置1と、基地局21と、管理サーバー22とを有する。このセンサシステム20では、無線又は有線のネットワークNを介して、基地局21と管理サーバー22との通信が可能である。また、LPWA(Low Power Wide Area)やWi-Fi(登録商標)や3Gや4G等の通信方式によって、超音波センサ2と基地局21との通信が可能である。なお消費電力を抑えて遠距離通信を実現する観点から、通信方式はLPWAであることが好ましい。また第1実施形態では、アーム8に沿ってアンテナ5(図1)を長く延ばすことで、基地局21からセンサ装置1が遠く離れる場合でも、超音波センサ2と基地局21との通信が可能である。なおアーム8がアンテナを構成するものとされてもよい。この場合でも、アンテナの長さを大きくすることができるので、基地局21からセンサ装置1が遠く離れる場合でも、超音波センサ2と基地局21との通信が可能である。なおアンテナは、筐体3の内部に設けられるものであってもよい。
【0061】
上記のセンサシステム20では、超音波センサ2から送信された「発信受信時間に基づく情報」が、基地局21に受信される。そしてネットワークNを介して、基地局21から送信された「発信受信時間に基づく情報」が管理サーバー22に受信される。管理サーバー22は、「発信受信時間に基づく情報」に示される値と閾値とを比較して、比較結果に基づく情報を出力する。例えば、「発信受信時間に基づく情報」が上記の「発信受信時間の計測値・平均値・最大値・最小値・最頻値・最終値を示す情報」や「距離Lの値・平均値・最大値・最小値・最頻値・最終値を示す情報」である場合には、管理サーバー22は、情報に示される値が閾値よりも小さくなったときに、河川Kが危険水位になったことを示す情報を出力する。また「発信受信時間に基づく情報」が上記の「発信受信時間の変動値を示す情報」や「距離Lの変動値を示す情報」である場合には、管理サーバー22は、情報に示される変動値が閾値よりも大きくなったときに、河川Kが危険水位になる可能性が高いことを示す情報を出力する。
【0062】
また超音波センサ2に故障が生じた場合には、超音波センサ2は、超音波Pを発信しないことや、反射波Hを検知しないことで、発信受信時間を計測しないものとなる。その結果、「発信受信時間に基づく情報」が超音波センサ2から送信されなくなる。そして、管理サーバー22は、所定時間、「発信受信時間に基づく情報」が受信されない場合、超音波センサ2に故障が生じたことを示す情報を出力する。
【0063】
以上説明した第1実施形態によれば、ポール7のスライドで超音波センサ2を上下動させることで、超音波センサ2と水面Sとの間の距離Lを、最大検知距離Lmaxよりも短くすることができる(図2図3)。このため、超音波センサ2は、故障が生じない限り、常時、反射波Hを検知することで、発信受信時間を計測して、「発信受信時間に基づく情報」を送信するものとなる。これにより超音波センサ2に故障が生じた場合には、「発信受信時間に基づく情報」が超音波センサ2から送信されないことで、超音波センサ2に故障が生じたと管理者に認識させることができる(従来のように、超音波センサから情報が送信されないのは、超音波センサと水面との間の距離Lが大きいためであると、管理者が思い込むことを回避できる)。したがって超音波センサ2を修理する対応が迅速に取られるので、河川Kが危険水位になる時に確実に超音波センサ2を正常に動作させることができる。このため超音波センサ2が送信する「発信受信時間に基づく情報」によって、河川Kが危険水位になったことを確実に特定できる。
【0064】
さらに第1実施形態によれば、上述のようにポール7のスライドで超音波センサ2の上下動させることができるので、汎用されている低出力の超音波センサ2が使用される場合でも、センサ2と水面Sとの間の距離Lを、最大検知距離Lmaxよりも短くすることができる。このため、低出力の超音波センサ2が使用される場合でも、超音波センサ2が常時反射波を検知して発信受信時間を測定する状態にできるので、高出力の超音波センサ2を使用する必要がない。したがってコストを安価に抑えることができる。
【0065】
なお、ポール7をスライド自在に取り付ける対象(センサ装置1を吊り下げる対象)は橋桁Bに設けられるガードレールRの支柱6に限定されず、支柱6以外の橋桁Bの部分や、河川の岸或いは水底に立設させた支柱等としてもよい。また、ポール7を上下方向にスライド自在にすることの代わりに或いは加えて、アーム8を上下方向にスライド自在にポール7に取り付けてもよい。この場合でも、アーム8のスライドによって、超音波センサ2と水面Sとの間の距離Lを最大検知距離Lmaxよりも短くできるので、河川Kが危険水位になった時を特定できる。
【0066】
また第1実施形態によれば、筐体3の材料に虫の忌避材が含まれることで、筐体3に虫が接近することを防止できる。これにより、開口部17が虫に塞がれることで、開口部17から超音波Pが出射しないことや、反射波Hが開口部17を通過しないことが防止される。したがって、超音波センサ2による距離Lの検知が安定して行われる。
【0067】
なお上記の忌避材を筐体3の材料に含ませることの代わりに或いは加えて、筐体3の表面(内面及び外面)の少なくとも一部に、上記の忌避材を塗布してもよい。このようにしても開口部17に虫が接近することを防止できる。なおこの場合には、少なくとも開口部17の内面に忌避材を塗布することが好ましい。このようにすれば、虫が開口部17に接近することを確実に防止できる。
【0068】
また筐体3の表面に撥水剤を塗布してもよい。撥水剤は、例えば、フッ素系塗料や、シリコン系塗料である。筐体3の表面に撥水剤を塗布すれば、筐体3の表面が滑らかになるため、筐体3に虫が付くことを防止できる。そしてこのことから、虫が筐体3の表面に卵のうを産み付けることをも防止できる。したがって、虫そのものや、虫の卵のうによって、開口部17から超音波Pを出射しないことや、反射波Hが開口部17を通過しないことを防止できる。
【0069】
また図7に示すように、筐体3の開口部17を、虫の侵入を防止するためのシート63で覆ってもよい。シート63として、例えば、メッシュ状を呈するフィルム或いはクロスを使用できる。或いは、上記のシート63として、不織布やパンチング加工によって複数の孔が形成されたシートを使用できる。またシート63の材料として、例えば、樹脂、金属、金属酸化物を使用できる。上記のようにシート63で筐体3の開口部17を覆えば、虫が開口部17に入ることを防止できる。これにより、虫が開口部17に入ることで、開口部17から超音波Pが出射しないことや、反射波Hが開口部17を通過しないことを防止できる。なおシート63を構成する材料に、虫の忌避材を含ませてもよく、或いは、シート63の表面に虫の忌避材を塗布してもよい。このようにすれば、シート63に虫が付くことを防止できるので、開口部17から超音波Pを出射しないことや、反射波Hが開口部17を通過しないことを、より確実に防止できる。
【0070】
次に本発明の他の実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と相違する点を説明し、第1実施形態と共通する点については図面に同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0071】
図8及び図9は、第2実施形態に係るセンサ装置1が河川Kの上方に設置された状態を示す概略図である。図8は、河川Kが通常水位にある時の状態を示し、図9は、河川Kが危険水位になった時の状態を示している。
【0072】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様、河川Kが危険水位になった時を特定するために、超音波センサ2を備えるセンサ装置1が使用されて、当該センサ装置1が図6に示すセンサシステム20を構成するものとされるが、超音波センサ2の位置が第1実施形態と異なる。
【0073】
すなわち第2実施形態では、「河川Kの危険水位よりも下方に位置し、高さが一定である堤防Tの部分Ta(固体の部分)」に超音波Pが向かうように、超音波センサ2が配置される。この配置は、ガードレールRにおけるポール7の吊り下げ位置等を調整することで実現され得る(例えばポール7を吊り下げるガードレールRの支柱6を選択することで実現され得る)。
【0074】
そしてガードレールRに固定するポール7の高さ位置等を調整することにより、堤防Tの部分Taと超音波センサ2との間の距離Lが、超音波センサ2の最大検知距離Lmaxよりも短くされる。
【0075】
第2実施形態によれば、堤防Tの部分Taと超音波センサ2との間の距離Lが最大検知距離Lmaxよりも短くされる。このため図8に示すように、河川Kの水位が危険水位よりも下方にあり、堤防Tの部分Taが水面Sから露出する期間では、超音波センサ2は、故障が生じない限り常に、反射波Hを検知して、超音波Pを発信してから水面S(測定対象)で反射された反射波Hを受信するまでの時間(発信受信時間)を計測し、当該発信受信時間に基づく情報を送信する。したがって、超音波センサ2に故障が生じた場合には、超音波センサ2から上記の情報が送信されなくなることで、管理者は、超音波センサ2に故障が生じたと認識する。このため、超音波センサ2を修理する対応が迅速に取られる。これにより、図9に示すように河川Kが危険水位になった際に確実に超音波センサ2を正常に動作させることができるので、超音波センサ2が検知する発信受信時間或いは距離Lによって、河川Kが危険水位になったことを確実に特定できる。
【0076】
また、汎用されている低出力の超音波センサ2が使用される場合でも、堤防Tの部分Taと超音波センサ2との間の距離Lを最大検知距離Lmaxよりも短くすることで、超音波センサ2が、常時、反射波Hを検知可能な状態にすることができる。したがって高出力の超音波センサ2を使用する必要がないので、コストを安価に抑えることができる。
【0077】
なお第2実施形態でも、ポール7をスライド自在に取り付ける対象(センサ装置1を吊り下げる対象)は橋桁Bに設けられるガードレールRの支柱6に限定されず、支柱6以外の橋桁Bの部分や、河川の岸或いは水底に立設させた支柱等としてもよい。
【0078】
また第2実施形態では、必ずしも、ポール7をスライド自在にする必要はなく、ポール7の所定位置を、上記の橋桁Bや柱等に固定してもよい。さらにポール7を省略して、支持体4を、水平方向に延びるアーム8のみから構成してもよい。この場合でも、堤防Tの部分Taと超音波センサ2との間の距離Lが最大検知距離Lmaxよりも短くなるように、アーム8を上記の橋桁Bや柱等に取り付けることで、コストを安価に抑えつつ、河川Kが危険水位になったことを確実に特定できる。
【0079】
さらに超音波Pを向ける固体の部分は、上記の堤防Tの部分Taに限定されない。例えば、「河川Kの危険水位よりも下方に位置し、高さが一定である橋脚・橋台・岩・河川敷の部分(固体の部分)」に超音波が向かうように、超音波センサ2を配置してもよい。この場合でも、上記固体の部分と超音波センサ2との間の距離Lを、最大検知距離Lmaxよりも短くすれば、コストを安価に抑えつつ、河川Kが危険水位になったことを確実に特定できる。
【0080】
次に本発明の第3実施形態について説明する。図10は、本発明の第3実施形態に係るセンサ装置65を示す斜視図である。
【0081】
第3実施形態のセンサ装置65は、第1実施形態で示した構成(図1に示した構成)に加えて、温度センサ66をさらに備える。
【0082】
温度センサ66は、筐体3の内部に配置されるものであって、筐体3の内部の気温Tを計測する。温度センサ66が計測した気温Tは、有線又は無線の通信を介して、超音波センサ2の制御装置に入力される。
【0083】
超音波センサ2の制御装置は、受波器が反射波Hを受信するたびに、超音波Pを発信してから反射波Hを受信するまでの時間(発信受信時間)を計測するとともに、超音波Pの発信時或いは反射波Hの受信時における気温Tを温度センサ66から取得して、当該気温Tを用いて音速c(超音波P,Hの速度)を求める。そして超音波センサ2の制御装置は、上記の発信受信時間と音速cとに基づき、超音波センサ2と水面Sとの間の距離L(図2図3参照)の値を求めて、当該距離Lの値を示す情報を、管理サーバー22(図6)に送信する。
【0084】
例えば、超音波センサ2の制御装置は、距離Lの値を、音速c(m/s)と発信受信時間t(s)とを用いる下記の式1から求める。
【0085】
<式1>
L=ct/2
音速:c(m/s)
発信受信時間:t(s)
【0086】
また例えば、超音波センサ2の制御装置は、式1で用いる音速c(m/s)を、温度センサ66の計測した気温T(℃)を用いる下記の式2から求められる。
【0087】
<式2>
c=331.5+0.61T
温度センサ66の計測した気温:T(℃)
【0088】
第3実施形態のセンサ装置65によれば、温度センサ66で測定された気温Tを用いて音速cが求められることで、当該音速cは、現実の超音波P,Hの速度に近いものとなる。そして上記の音速cを用いて距離Lの値が求められることで、当該求められる距離Lの値は、現実の距離Lの値に近いものとなる。したがって超音波センサ2から送信される「距離Lの値を示す情報」に基づき、河川Kの水位をより正確に特定できる。
【0089】
また第3実施形態では、筐体3の内部に温度センサ66が設けられることで、温度センサ66の防水を図ることができるとともに、温度センサ66の設置に要する手間やコストを軽減できる。
【0090】
なお必ずしも筐体3の内部に温度センサ66を設ける必要はなく、図11に示すように、筐体3の外側に温度センサ66を配置して、筐体3の外側の気温Tを計測してもよい。この場合には、温度センサ66が計測した「筐体3の外側の気温T」が、有線又は無線の通信を介して、超音波センサ2の制御装置に入力される(図示例では、ケーブル13(有線)を介して、温度センサ66が計測した気温Tが、超音波センサ2の制御装置に入力される)。上記の場合には、超音波P,Hが進行する筐体3の外側の空間の気温Tを用いて、音速cが求められるため、当該音速cは、現実の超音波P,Hの速度により近いものとなる。したがって音速cを用いて求められる距離Lの値は、より現実の値に近いものとなる。
【0091】
また上述した例では、超音波センサ2の制御装置が、超音波Pの発信時或いは反射波Hの受信時における超音波センサ2付近の気温Tを用いて音速を求め、且つ、音速cと超音波センサ2で計測された発信受信時間とに基づき距離Lを示す情報を取得する情報取得手段として機能したが、当該情報取得手段は、管理サーバー22に構成されてもよい。この場合、超音波センサ2の制御装置は、受波器が反射波Hを受信するたびに、発信受信時間を計測するとともに、反射波Hの受信時における気温Tを温度センサ66から取得して、上記の発信受信時間と気温Tとを示す情報を、管理サーバー22に送信する。
【0092】
そして管理サーバー22は、上記の情報を受信するたびに、情報に示される気温Tを用いて音速c(超音波P,Hの速度)を求めるとともに、当該求めた音速cと、情報に示される発信受信時間とに基づき、超音波センサ2と水面Sとの間の距離L(図2図3)の値を求める。
【0093】
また、データベースサーバーに格納される気温Tを用いて、音速c(超音波P,Hの速度)が求められてもよい。この場合、センサ装置が組み込まれるセンサシステムは、図12に示すように変更される。
【0094】
図12に示すセンサシステム67は、超音波センサ2を備えるセンサ装置68と、基地局21と、管理サーバー22と、データベースサーバー69とを有する。このセンサシステム67では、LPWA(Low Power Wide Area)やWi-Fi(登録商標)や3Gや4G等の通信方式によって、超音波センサ2と基地局21との通信が可能である。また、無線又は有線のネットワークNを介して、基地局21と管理サーバー22との通信や、管理サーバーとデータベースサーバー69との通信が可能である。
【0095】
データベースサーバー69は、超音波センサ2付近に設置された温度センサ(図示せず)が計測する気温Tを、所定の時間間隔で取得して、データベースに格納するものである。当該データベースサーバー69として、例えば、日本気象協会発表の外気温を格納するサーバーを使用できる。
【0096】
超音波センサ2の制御装置は、受波器が反射波Hを受信するたびに、超音波Pを発信してから反射波Hを受信するまでの時間(発信受信時間)を計測して、当該発信受信時間の値と、反射波Hの受信時点とを示す情報を、管理サーバー22に送信する。
【0097】
管理サーバー22は、上記の情報を受信するたびに、情報に示される「反射波の受信時点」における超音波センサ2付近の気温Tをデータベースサーバー69から取得して、当該気温Tを用いて音速c(超音波P,Hの速度)を求める。
【0098】
ここで上記の「超音波センサ2付近の気温T」とは、上記の「超音波センサ2付近に設置された温度センサが計測した気温T」である。「超音波センサ2付近に設置された温度センサ」とは、例えば「超音波センサ2が存在する市町村に設置された温度センサ」である。超音波センサ2が存在する市町村に複数の温度センサが設置されていて、当該複数の温度センサが計測した気温がデータベースサーバー69に格納される場合には、管理サーバー22は、超音波センサ2に最も近い温度センサが計測した気温Tを、データベースサーバー69から取得する。
【0099】
また「反射波Hの受信時点における気温T」とは、例えば、反射波Hが超音波センサ2に受信された時刻の直前或いは直後にデータベースサーバー69に格納された気温Tである。例えば、データベースサーバー69に12時・13時・14時に気温Tが格納され、反射波Hが13時12分20秒に超音波センサ2に受信された場合には、管理サーバー22は、13時12分20秒直前の13時の気温T、或いは13時12分20秒直後の14時の気温Tをデータベースサーバー69から取得する。
【0100】
そして管理サーバー22は、データベースサーバー69から取得した気温Tを用いて音速cを求めるとともに、当該音速cと、超音波センサ2から送信された情報に示される発信受信時間とに基づき、超音波センサ2と水面Sとの間の距離L(図1図2参照)の値を求める。
【0101】
なお音速cを求めるために、上述した反射波Hの受信時刻の直後にデータベースサーバー69に格納された気温T(以下、直後の気温T)が使用される場合には、反射波Hの受信時刻から、直後の気温Tがデータベースサーバー69に格納されるまでの間、管理サーバー22が音速c・距離Lを求めることができない(上記の例では、13時12分20秒~14時00分の47分40秒の間、音速c・距離Lを求めることができない)。したがってデータベースサーバー69に気温Tが格納される時間間隔が長い場合には、反射波Hの受信時刻の直前にデータベースサーバー69に格納された気温Tを用いて、音速cを求めることが好ましい。
【0102】
また管理サーバー22は、データベースサーバーに格納された気温のうち、反射波Hの受信時刻に最も近い時刻に格納された気温を取得して、当該気温を用いて音速cを求めてもよい。このようにすれば、音速cを求めるために使用される気温が、反射波Hの受信時刻の気温に近いものとなる。このため、音速cから求められる距離Lの値を、現実の値に近いものにすることができる。
【0103】
また上記の「反射波Hの受信時点における超音波センサ2付近の気温T」の代わりに、「超音波Pの発信時点における超音波センサ2付近の気温T」が使用されてもよい。この場合、今回の超音波Pが発信されてから次回の超音波Pが発信されるまでの間において、超音波センサ2の制御装置は、受波器が反射波Hを受信するたびに、今回の超音波Pを発信してから反射波Hを受信するまでの時間(発信受信時間)を計測して、当該発信受信時間の値と今回の超音波Pの発信時点とを示す情報を、管理サーバー22に送信する。管理サーバー22は、上記の情報を受信するたびに、情報に示される「今回の超音波Pの発信時点」における超音波センサ2付近の気温Tをデータベースサーバー69から取得して、当該気温Tを用いて音速c(超音波P,Hの速度)を求める。さらに管理サーバー22は、当該音速cと、超音波センサ2から送信された情報に示される発信受信時間とに基づき、超音波センサ2と水面Sとの間の距離L(図1図2参照)の値を求める。なお「超音波センサ2付近の気温T」とは、上記と同様、「超音波センサ2付近に設置された温度センサが計測した気温T」である。また「今回の超音波Pの発信時点」における気温Tとは、例えば、今回の超音波Pが超音波センサ2に発信された時刻の直前或いは直後にデータベースサーバー69に格納された気温Tである。データベースサーバー69に気温Tが格納される時間間隔が長い場合には、超音波Pの発信時刻の直前にデータベースサーバー69に格納された気温Tを用いて、音速cを求めることが好ましい。また管理サーバー22は、データベースサーバーに格納された気温のうち、反射波Hの受信時刻に最も近い時刻に格納された気温を取得して、当該気温を用いて音速cを求めてもよい。
【0104】
本発明者らは、超音波センサ2付近の気温を用いて音速を求めることによる効果を確認すべく、温度センサ66の計測した超音波センサ2付近の気温を用いて音速を求めるケース1と、日本気象協会が発表した超音波センサ2付近の気温を用いて音速を求めるケース2と、気温を一定値にして音速を求めるケース3とを比較する試験を行った。
【0105】
上記の試験では、筐体3の内側に温度センサ66が配置されたセンサ装置を、河川Kの上方に配置した。そして2018年10月19日午前0時~2018年10月20日午前0時の時間帯において、センサ装置が備える超音波センサ2や温度センサ66を作動させて、超音波センサ2が計測する発信受信時間と、筐体3の内側に配置された温度センサ66が計測する気温(以下、筐体3の内側の気温と略す)とを確認した。そして日本気象協会で発表されている気温のうち、2018年10月19日午前0時~2018年10月20日午前0時の時間帯における超音波センサ2付近の気温(以下、気象協会発表の気温と略す)を確認した。
【0106】
以下の表1は、試験を行った時間帯(2018年10月19日午前0時~2018年10月20日午前0時)における、気象協会発表の気温と、筐体3の内側の気温とを示す。また図13のA線は、気象協会発表の気温の時間推移を示し、図13のB線は、筐体3の内側の気温の時間推移を示している。
【0107】
【表1】
【0108】
表1に示す気象協会発表の気温の値によって、10月19日1時~6時の時間帯T1(図13)では、筐体3の外側の気温(図13のA線で示す気象協会発表の気温)が12℃~13℃の範囲内になることが確認された。また10月19日7時~19時の時間帯T2では、太陽光の照射によって、筐体3の外側の気温(気象協会発表の気温)が13℃から上昇して13℃~23℃の範囲内になることが確認された。さらに10月19日20時~10月20日0時の時間帯T3では、筐体3の外側の気温(気象協会発表の気温)が17℃から低下して14℃~17℃の範囲内になることが確認された。
【0109】
また表1に示す気象協会発表の気温と筐体3の内側の気温とを比較することで、時間帯T1,T3(T1:10月19日1時~6時、T3:10月19日20時~10月20日0時)では、図13のB線で示す筐体3の内側の気温が、筐体3の外側の気温(図13のA線で示す気象協会発表の気温)と、同程度(13℃~17℃)になることが確認された。しかしながら日中の時間帯T2(10月19日7時~19時)では、筐体3の内側の気温が、筐体3の外側の気温(気象協会発表の気温)よりも高くなることが確認された。
【0110】
そして本試験では、ケース1~3の各々について、以下に示す方法で、河川Kの水面Sと超音波センサ2との間の距離Lを求めた。
【0111】
ケース1:上記の式2で気温Tを一定値(14℃)にして、音速c(340m/s(=331.5+0.61×14))を求めるとともに、当該求めた音速c(340m/s)と、超音波センサ2が計測した発信受信時間tとを、上記の式1で用いて、距離Lを求める。
ケース2:上記の式2で気温Tとして気象協会発表の気温を用いて音速cを求めるとともに、当該求めた音速cと、超音波センサ2が計測した発信受信時間tとを、上記の式1で用いて、距離Lを求める。
ケース3:上記の式2で気温Tとして筐体3の内側の気温を用いて音速cを求めるとともに、当該求めた音速cと、超音波センサ2が計測した発信受信時間tとを、上記の式1で用いて、距離Lを求める。
【0112】
ケース1で用いた気温の値(14℃)は、時間帯T1,T2(T1:10月19日1時~6時,T2:10月19日20時~10月20日0時)における気象協会発表の気温(筐体3の外側の気温)の平均値であり、(13℃+13℃+13℃+13℃+12℃+12℃+17℃+16℃+16℃+15℃+14℃)/11の計算で求めている。ケース1は、上記の「時間帯T1,T2における気温の平均値(14℃)」を用いて音速cを求めることで、太陽光の照射によって気温が上昇することを考慮せずに、音速c・距離Lを求めるケースといえる。
【0113】
さらに本試験では、河川Kの水面Sとセンサ装置との間の距離Lをスケールで計測すべく、河川Kの底にスケールを立設させた。このスケールは、河川Kの水中を通過した後、水面Sから空中に延び出て、センサ装置の側方(真横)を通過するものである。本試験では、以下の作業1~4によって得られた距離Lの平均値272cmを、距離Lの真値とした。
【0114】
作業1:河川Kの水面Sが横切るスケールの位置Aと、センサ装置の側方(真横)にあるスケールの位置Bとが写るように、定点カメラでスケールを撮影する。
作業2:定点カメラが撮影した動画から、10分間隔で、複数の静止画像を抽出する。作業3:作業2で抽出した各静止画像に写されているスケールの位置A,Bの目盛りを確認することで、各静止画像の撮影時点における位置A,B間の距離Lを特定する。
作業4:作業3で静止画像毎に特定された距離Lの平均値を求める(本試験で距離Lの真値とした上記の272cmは、作業4で求められた距離Lの平均値である)。
【0115】
図14は、ケース1~3で求められた距離Lの時間推移を示すグラフである。図14のC線は、気温を一定値(14℃)にして音速cを求めるケース1で得られた距離Lを示している。図14のD線は、気象協会発表の気温(筐体3の外側の気温)を用いて音速cを求めるケース2で得られた距離Lを示している。図14のE線は、筐体3の内側の気温を用いて音速cを求めるケース3で得られた距離Lを示している。
【0116】
気温を一定値(14℃)にして音速cを求めたケース1では、太陽光の照射によって気温が上昇する時間帯T2(10月19日7時~19時)で、音速c(340m/s)から求めた距離Lの値が、距離Lの真値(272cm)よりも小さくなる傾向がみられた(図14のC線)。しかしながら、距離Lの真値(272cm)との差(以下、距離差と略す)は、5cm以内に抑えられた。また時間帯T1(10月19日1時~6時)や、時間帯T3(10月19日20時~10月20日0時)では、音速c(340m/s)から求められる距離Lの値が、距離Lの真値(272cm)とほぼ一致した。
【0117】
気象協会発表の気温を用いて音速cを求めたケース2では、試験を行った全時間帯(10月19日午前0時~10月20日午前0時)において、音速cから求められる距離Lの値が、距離Lの真値(272cm)とほぼ等しくなる傾向がみられ(図14のD線)、距離差は2cm以内に抑えられた。
【0118】
筐体3の内側の気温を用いて音速cを求めたケース3では、太陽光の照射によって気温が上昇する時間帯T2(10月19日7時~19時)で、音速cから求めた距離Lの値が、距離Lの真値(272cm)よりも大きくなる傾向がみられたが(図14のE線)、距離差は4cm以内に抑えられた。また時間帯T1(10月19日1時~6時)や、時間帯T2(10月19日20時~10月20日0時)では、音速(340m/S)から求められる距離Lの値が、距離Lの真値(272cm)とほぼ一致した。
【0119】
以上の結果から、気温を一定値(14℃)にして音速cを求めるケース1、気象協会発表の気温を用いて音速cを求めるケース2、及び筐体3の内側の気温を用いて音速cを求めるケース3のいずれにおいても、音速cから求める距離Lの値と距離Lの真値との差を、cmオーダーに抑えることができることが確認された。さらに気象協会発表の気温を用いるケース2や、筐体3の内側の気温を用いるケース3では、気温を一定値(14℃)にするケース1に比して、太陽光の照射で気温が上昇する時間帯T2の距離Lの値を、精度よく求められることが確認された。
【0120】
また、筐体3の内部に温度センサ66を配置する場合には、日中の時間帯T2で、筐体3の内側の気温(図13のB線)が筐体3の外側の気温(図13のA線)よりも高くなり、音速cから求められる距離Lの値(図14のC線)が、距離Lの真値(272cm)よりも大きくなることが確認された。したがって、筐体3の内部に温度センサ66を配置する場合には、筐体3の内側の気温を筐体3の外側の気温と同等とするために、以下の対策1~13のうちいずれか1つ或いは複数を行うことが好ましい。
【0121】
対策1:赤外線を反射させる反射材(例えばアルミ箔)を、筐体3の外面に貼り付けること。
対策2:赤外線を反射させる塗料(例えばアルミ粉を含む塗料)を、筐体3の外面に塗布すること。
対策3:放熱性の高いシート又はプレートを、筐体3の外面に貼り付けること。
対策4:放熱性の高い塗料を、筐体3の外面に塗布すること。
対策5:放熱性の高いフィラーを含有する材料を用いて、筐体3を形成すること。
対策6:筐体3の外面に突起を設けることで、筐体3の外側の表面積を大きくすること(例えば、間隔をあけて並ぶ複数の突条体を、上記の突起として、筐体3の外面に設けること)。
対策7:赤外線を反射させる反射材(例えばアルミ箔)を、支持体4の外面に貼り付けること(特に、上記の反射材をアーム8の外面に貼り付けることが好ましい)。
対策8:赤外線を反射させる塗料(例えばアルミ粉を含む塗料)を、支持体4の外面に塗布すること(特に、上記の塗料をアーム8の外面に塗布することが好ましい) 。
対策9:放熱性の高いシート又はプレートを、支持体4の外面に貼り付けること(特に、上記の放熱性の高いシート又はプレートを、アーム8の外面に塗布することが好ましい)。
対策10:放熱性の高い塗料を、支持体4の外面に塗布すること(特に、上記の塗料を、アーム8の外面に塗布することが好ましい)。
対策11:放熱性の高いフィラーを含有する材料を用いて、支持体4を形成すること(特に、上記の材料を用いてアーム8を形成することが好ましい)。
対策12:支持体4の外面に突起を設けることで、支持体4の外側の表面積を大きくすること(例えば、間隔をあけて並ぶ複数の突条体を、上記の突起として、アーム8の外面に設けること)。
対策13:支持体4と筐体3との間(図示例ではアーム8と筐体3との間)に、断熱材(発泡体等)を配置すること。
【0122】
対策1,2によれば、筐体3に照射される太陽光の赤外線が反射することで、筐体3の内部の温度が高くなることを防止できる。
【0123】
対策3~6によれば、赤外線の照射等によって筐体3に加えられた熱や、筐体3内部の熱が、筐体3の外側に放熱されることで、筐体3の内部の温度が高くなることを防止できる。
【0124】
対策7,8によれば、支持体4に照射される太陽光の赤外線が反射することで、支持体4の温度が高くなることを防止できる。そしてこのことから、支持体4から筐体3に伝わる熱を小さく抑えることができるので、筐体3の内部の温度が高くなることを防止できる。
【0125】
対策9~12によれば、赤外線の照射等によって支持体4に加えられた熱が放熱されることで、支持体4の温度が高くなることを防止できる。そしてこのことから、支持体4から筐体3に伝わる熱を小さく抑えることができるので、筐体3の内部の温度が高くなることを防止できる。
【0126】
対策13によれば、支持体4と筐体3との間に断熱材が配置されることで、支持体4から筐体3に伝わる熱を小さく抑えることができる。このため、筐体3の内部の温度が高くなることを防止できる。
【0127】
上記の対策1~13が行われる場合には、上述のように筐体3の内部の温度が上昇することを防止できるので、温度センサ66が測定する筐体3の内部の気温を、超音波P,Hが進行する筐体3の外側の気温と同等にすることができる。これにより、温度センサ66が測定した気温を用いて求める音速cを、超音波P,Hの実際の速度に近づけることができる。そしてこのことから、音速cを用いて求める距離Lの値を、現実の超音波センサ2と水面Sとの間の距離Lの値に近づけることができるので、超音波センサ2から送信される「距離Lを示す情報」に基づき、河川Kの水位を正確に特定できる。
【0128】
次に本発明の第4実施形態について説明する。図15は、第4実施形態に係るセンサ装置70を示す斜視図である。図16は、第4実施形態に係るセンサ装置70を示す概略側面図である。図17は、第4実施形態に係るセンサ装置70を示す概略平面図である。
【0129】
第4実施形態に係るセンサ装置70は、筐体3を支持する支持体として、水平方向に延びるアーム72を備えるものである。
【0130】
アーム72は、図1に示すアーム8と同様の構造を有するものである。アーム72の一端側は、締結具9を用いて、上下方向に延びる支柱6(橋桁Bに設けられるガードレールRの支柱6)に締結されており、アーム72の他端側に筐体3が取り付けられる。
【0131】
図示例では、締結具9としてU字クランプが使用されており、ガードレールRの支柱6を、U字クランプ9の内側に通した状態で、ボルト10を用いてU字クランプ9の両端部をアーム72の一端側に締結することで、U字クランプ9が支柱6を強く締め付けるものとなり、アーム72の一端側が支柱6に固定される。そしてボルト10の締結を緩めて、支柱6へのU字クランプ9の締め付けを緩くすることで、アーム72を支柱6回りに回転させることができる。そして当該アーム72の回転によって、図17に示すように、超音波センサ2を収容する筐体3を、橋桁Bの近傍に移動させることができる。これにより、橋桁B上に立つ管理者Pは、超音波センサ2のメンテナンス及び交換を行うことができる。
【0132】
なお締結具9は、上記のU字クランプに限定されない。上記の締結具9として、アーム72を支柱6に締結可能であり、且つ、締結を緩めることでアーム72を支柱6回りに回転可能な公知の締結具を使用できる。
【0133】
さらに第4実施形態に係るセンサ装置70では、締結具9による支柱6へのアーム72の締結を緩めた際に、アーム72が落下することを防止すべく、図17に支す支持具73が設けられる。
【0134】
支持具73は、アーム72の下側且つ近傍において、支柱6に着脱自在に取り付けられるものである。締結具9によるアーム72の一端側の締結を緩めた際には、アーム72の一端側を支持具73に支持させた状態で、アーム72を支柱6回りに回転させることできる。これにより、アーム72が落下することなく(つまりアーム72を一定高さに維持したままで)、アーム72を円滑に回転させることができる。したがってアーム72の回転操作によって、筐体3を管理者の近傍に近づけることを容易に実現できる。なお上記の「締結具9によるアーム72の一端側の締結を緩めた状態」では、支柱6の外周回りを延びる締結具9が、ボルト10によってアーム72の一端側に接続された状態にある。また、支持具73は、アーム72の一端側に接触することで、アーム72の一端側を直接的に支持するものであってもよく、或いは、締結具9に接触することで、締結具9を介して、アーム72の一端側を間接的に支持するものであってもよい。
【0135】
図15に示す例では、上記の支持具73として、一対の半円体74,74を備える器具(図18)が使用されている。この器具は、半円体74,74の一方端部同士がヒンジ75で結合されることでヒンジ75を軸として半円体74,74を開閉可能であり、半円体74,74の他方側端部には外方に延びる締結片76,76が設けられている。
【0136】
上記の器具(支持具73)を支柱6に取り付ける際には、半円体74,74を開状態にすることで締結片76,76の間に隙間を空けた後、当該隙間から支柱6を半円体74,74の間に通しながら半円体74,74を閉状態にする作業を行って、締結片76,76を突き合わせる。そして締結片76,76をボルト及びナットで締結することで、器具(支持具73)は、支柱6に取り付けられた状態となる。またボルト及びナットによる締結片76,76の締結を解除することで、支柱6から器具(支持具73)を取り外すことができる。
【0137】
さらに第4実施形態に係るセンサ装置70では、締結具9による支柱6へのアーム72の締結を緩めた際に、筐体3の重量等によりアーム72が傾くことを防止するために、抑付具77が設けられる。
【0138】
抑付具77は、アーム72の上側且つ近傍において、支柱6に着脱自在に取り付けられるものである。当該抑付具77は、締結具9による支柱6へのアーム72の一端側の締結が緩められた際に、支持具73に支持されるアーム72の一端側を下方に抑え付けることが可能である。これにより、筐体3の重量でアーム72が傾くことを防止できるので、より円滑にアーム72を回転させることができる。なお上記の抑付具77として、例えば、図18に示す器具を使用できる。
【0139】
また第4実施形態に係るセンサ装置70では、支柱6へのアーム72の一端側の締結を緩め、且つ、支柱6から支持具73及び抑付具77を取り外すことで、アーム72を支柱6に沿って上下方向にスライドさせて、超音波センサ2を収容する筐体3を上下動させることが可能である。図18に示す器具が支持具73及び抑付具77として使用される場合には、上記の支柱6から支持具73及び抑付具77を取り外すことは、ボルト及びナットによる締結片76,76の締結を解除することに相当し、この作業を行うことで、アーム72を支柱6に沿って上下方向にスライドさせることが可能となる。
【0140】
さらに第4実施形態に係るセンサ装置70では、アーム72の長さを大きくしても、支持具73及び抑付具77による締結具9或いはアーム72の挟み込みで、アーム72を水平方向に真っ直ぐ延ばした状態にすることができる。したがって、超音波センサ2が収容される筐体3の位置を、支柱6を支持する構造物B(橋桁)から遠ざけることができる。このため、支柱6を支持する構造物Bが、超音波Pの進行の妨げになることを回避できる(つまり、支柱6を支持する構造物Bが、超音波Pの放射範囲Zに入らないようにすることができる)。なお必ずしもセンサ装置70に抑付具77を設ける必要はなく、アーム72の長さが短い場合等には、抑付具77は省略され得る。
【0141】
なお支持具73や抑付具77として使用可能な器具は、図18に示す器具に限定されない。上記の支持具73として、支柱6に着脱自在に取り付けられて、アーム72の一端側を支持可能な公知の器具を使用できる。また上記の抑付具77として、支柱6に着脱自在に取り付けられ、アーム72をアーム72の一端側を下方に抑え付けることの可能な公知の器具を使用できる。
【0142】
またアーム72を取り付ける支柱や、図19に示すポール7を取り付ける支柱は、橋桁Bに設けられるガードレールRの支柱6に限定されず、河川Kの岸や水底に立設させた支柱としてもよい。
【0143】
また第4実施形態のセンサ装置は、図19に示すように変更され得る。
【0144】
図19に示すセンサ装置80は、上記の支持具73や抑付具77を、図1図3に示したセンサ装置1に追加したものである。
【0145】
図19に示すセンサ装置80では、締結具50の下側且つ近傍において、支持具73が支柱6に着脱自在に取り付けられる。締結具50の上側且つ近傍において、抑付具77が支柱6に着脱自在に取り付けられる。
【0146】
図19に示すセンサ装置80によれば、支柱6への締結具50の締め付けを緩めた際に(図5に示すボルト57及びナット58の締結を緩め、さらに必要あらばボルト59及びナット60の締結をも緩めた際に)、締結具50を支持具73に支持させた状態で、締結具50を支柱6回りに回転させることできる。そして上記の締結具50の回転に伴い、筐体3を支持する支持体4(ポール7及びアーム8)を水平方向に回転させることができる。したがって超音波センサを収容する筐体3を、管理者の近傍に近づけることができる。
【0147】
また図19に示すセンサ装置80によれば、支柱6への締結具50の締め付けを緩めた際に、抑付具77が、支持具73に支持される締結具50を下方に抑え付けることが可能である。これにより、筐体3等の重量で支持体4(ポール7及びアーム8)が傾くことを防止できるので、円滑に締結具50を回転させることができる。
【0148】
さらにセンサ装置80によれば、ポール7への締結具50の締め付けを緩めた際に(図5に示すボルト61及びナット62の締結を緩め、さらに必要あらば、ボルト59及びナット60の締結をも緩めた際に)、ポール7を上下方向にスライドさせることができる。そして当該ポール7のスライドに伴いアーム8を上下動させ、これに伴い、超音波センサ2を収容する筐体3を上下動させることが可能である。
【0149】
また第4実施形態では、アーム72(図15図17)を取り付ける支柱や、ポール7(図19)を取り付ける支柱は、橋桁Bに設けられるガードレールRの支柱6に限定されず、支柱6以外の橋桁Bの部分や、河川の岸或いは水底に立設させた支柱等としてもよい。
【0150】
本発明は、上記実施形態に示すものに限定されず、種々改変することができる。
【0151】
例えば第1~第4実施形態では、超音波センサ2を収容する筐体3を支持体4,72に取り付ける例を示したが、筐体3を省略して、超音波センサ2を支持体4,72に取り付けてもよい。
【0152】
また第1~第4実施形態では、河川Kが危険水位になった時点を特定するために、超音波センサ2を使用する例を示したが、海が危険水位になった時点を特定するために超音波センサ2が使用されてもよい。
【0153】
上記の場合には、本発明のセンサ装置1は、超音波センサ2が海の水面の上方に位置するように、超音波センサ2を支持する支持体4,72を備えるものとされる。そして超音波が海の水面に向かうように、超音波センサ2が支持体4,72に取り付けられて、支持体4,72は、超音波センサ2を上下動させることが可能なものとされる。
【0154】
或いは、海の危険水位よりも下方に位置する固体の部分に超音波が向かうように、超音波センサ2が配置されて、上記の固体の部分と超音波センサ2との間の距離が、超音波センサ2が検知可能な最大の距離よりも小さくされる。
【0155】
以上のようにすることで、上記実施形態に示したのと同様の理由から、コストを安価に抑えつつ、海が危険水位になった時を確実に特定できる。
【0156】
また、超音波センサ2が正常に作動していることを確認する手段は、第2実施形態で示した固体の部分(橋梁・橋脚・橋台・河川敷・岩などの部分)に限定されず、超音波Pを反射可能な反射板とすることができる。以下、図20図21を参照して、当該反射板を備えるセンサ装置30について説明する。
【0157】
図20及び図21に示すセンサ装置30は、河川或いは海の水面Sの上方に配置される超音波センサ2と、超音波センサ2と水面Sとの間に配置される反射板31とを備える。図示例では、超音波センサ2及び反射板31は、アーム32に支持される。
【0158】
アーム32は、本体部33と、分岐部34とを備える。本体部33は、水平方向に延びており、本体部33の一端は、河川或いは海に立設される支柱40に取り付けられる。分岐部34は、本体部33から下側に延びた後、水平方向に延びるものである。なおアーム32は、上記実施形態に示したポール7に取り付けられてもよい。
【0159】
超音波センサ2は、図1に示すものと同様、送波器と、受波器と、制御装置とを備えており、制御装置は筐体3の内部に配置され、送波器及び受波器は筐体3の開口部17に配置される。
【0160】
そして上記の筐体3がアーム32の本体部33の先端に取り付けられることで、超音波センサ2は、河川或いは海の水面Sの上方に位置するものとされる。なおアーム32の高さ等を調整することで、超音波センサ2と危険水位との間の距離L1が、超音波センサ2が反射波Hを検知可能な最大の距離Lmax以下とされる。距離L1が最大検知距離Lmaxと等しくされてもよいが、図20図21に示すように、距離L1が最大検知距離Lmaxよりも短くなるように超音波センサ2を配置することが更に好ましい(図20は、水面Sが危険水位よりも高く、超音波センサ2と水面Sとの間の距離Lが、最大検知距離Lmaxよりも小さい場合を示している。図21は、水面Sが危険水位よりも低く、超音波センサ2と水面Sとの間の距離Lが、最大検知距離Lmaxよりも大きい場合を示している)。
【0161】
また図20図21に示すセンサ装置30では、筐体3の開口部17の内面が、下側になるにつれて内径が大きくなるテーパ面とされることで、超音波センサ2は、下側に向けて超音波Pを放射状に発信する。そして超音波センサ2の制御装置は、超音波Pが発信されることに伴い超音波Pの強度を示す信号を出力して、当該信号をアンテナを介して外部に送信する。また制御装置は、測定対象によって反射された超音波Pの反射波Hが受波器に受信されることに伴い、当該反射波Hの強度を示す信号を出力して、当該信号をアンテナを介して外部に送信する。上記のアンテナは、アーム32に沿って延びるようにアーム32に取り付けられるもの、或いは、アーム32によって構成されるものである。なお、アンテナは、筐体3の内部に設けられるものであってもよい。
【0162】
反射板31は、フィルム状、シート状、或いはプレート状を呈する。反射板31の材質は、樹脂、FRP、炭素繊維を含有した成形体、金属、金属酸化物のいずれか、或いはこれらの混合物とされる。
【0163】
図20図21に示す例では、反射板31がアーム32の分岐部34の先端に取り付けられることで、反射板31は、超音波センサ2と水面Sとの間に配置される。また分岐部34の先端の高さ等が調整されることで、反射板31と超音波センサ2との間の距離L2は、最大検知距離Lmaxよりも短いものとされる。
【0164】
そしてセンサ装置30では、分岐部34の先端に取り付けられた反射板31が、超音波の放射範囲H内の位置であって、超音波センサ2の直下でない位置に配置されることで、超音波センサ2から発せられる超音波Pのうち、一部の超音波P1が反射板31に向かい、残りの超音波P2が反射板31よりも下側に向かうものとされる。
【0165】
上記のセンサ装置30は、基地局やサーバーと共にセンサシステムを構成するものとされる。このセンサシステムでは、LPWA(Low Power Wide Area)やWi-Fi(登録商標)や3Gや4G等の通信方式によって、超音波センサが出力する信号を基地局に送信する。さらに基地局が受信した信号を、無線又は有線のネットワークを介して管理サーバーに送信する。
【0166】
図22は、図20に示すように、超音波センサ2と水面Sとの間の距離L2が、最大検知距離Lmaxよりも小さい場合に、超音波センサから出力される信号が示す「波P,Hの強度」と時間との関係を示すグラフである。図23は、図21に示すように、超音波センサ2と水面Sとの間の距離L2が、最大検知距離Lmaxよりも大きい場合に、超音波センサから出力される信号が示す「波P,Hの強度」と時間との関係を示すグラフである。
【0167】
上記のセンサ装置30によれば、反射板31の方向に向かう超音波P1と水面Sの方向に向かう超音波P2とが、超音波センサ2から同時に発信される。この発信時には、超音波センサ2は、強度の高い出力信号A(図22図23)を出力して、当該出力信号Aが管理サーバーに送られる。
【0168】
そして、距離の近い反射板31からの反射波H1が超音波センサ2に受信されることに伴い、超音波センサ2は、反射板31からの反射波H1由来の信号B(図22図23)を出力して、当該信号Bが管理サーバーに送られる。
【0169】
そして図20に示すように、水面Sが危険水位よりも高い場合には、超音波センサ2と水面Sとの間の距離Lが、最大検知距離Lmaxよりも小さいことで、水面Sからの反射波H2が遅れて超音波センサ2に受信される。これにより、超音波センサ2は、水面Sからの反射波H2由来の信号C(図22)を出力して、当該信号Cが管理サーバーに送られる。
【0170】
一方、図21に示すように、水面Sが危険水位よりも低く、超音波センサ2と水面Sとの間の距離Lが、最大検知距離Lmaxよりも大きい場合には、水面Sからの反射波H2は、超音波センサ2に到達した際に、強度が著しく減衰されたものとなる。これにより、超音波センサ2は、水面Sからの反射波H2由来の信号Cを出力しないので(図23)、当該信号Cは管理サーバーに送られない。
【0171】
図24は、管理サーバーによって実行される処理の一例を示すフローチャートである。以下、図24に示す処理について説明する。
【0172】
図24の処理では、ステップS1で「出力信号A」が管理サーバーに受信されてから所定時間内に、「反射板31からの反射波H1由来の信号B」が管理サーバーに受信されたか否かが判定される(ステップS2)。そしてステップS2の後のステップS3或いはステップS4において、ステップS1で出力信号Aが受信されてから所定時間内に、「水面Sからの反射波H2由来の信号C」が管理サーバーに受信されたか否かが判定される。
【0173】
そしてステップS2でNO、ステップS3でNOである場合には、管理サーバーは、「センサ装置30が不具合を起こしている」ことを示唆する情報を出力する(ステップS5)。
【0174】
ステップS2でNO,ステップS3でYESである場合には、管理サーバーは、「センサ2は正常に動作しているが、反射板31またはセンサ2の周辺に、異物或いは水が付着している可能性がある」ことを示唆する情報を出力する(ステップS6)。
【0175】
ステップS2でYES,ステップS4でNOである場合には、管理サーバーは、「装置30は正常に動作しており、水面Sが危険水位以下である」ことを示唆する情報を出力する(ステップS7)。
【0176】
ステップS2でYES,ステップS4でYESである場合には、管理サーバーは、「装置30は正常に動作しており、水面Sが危険水位よりも高くなった」ことを示唆する情報を出力する(ステップS8)。
【0177】
なお、ステップS5,S6,S7,S8で出力される情報は、管理者の能力等に応じて適宜変更され得る。管理者がセンサ装置30に精通している場合には、単に信号B,Cが受信されたか否かを示す情報がステップS5,S6,S7,S8で出力されてもよい(センサ装置に精通した管理者であれば、例えばステップS5で出力される「信号B,Cが受信されていないことを示す情報」が「装置が不具合を起こしていること」を示唆するものと理解できる。また例えばステップS6で出力される「信号Bが受信されず、信号Cが受信されたことを示す情報」が「センサ2は正常に動作しているが、反射板31またはセンサ2の周辺に、異物或いは水が付着している可能性があること」を示唆するものと理解できる)。
【0178】
以上説明したセンサ装置30によれば、反射板31と超音波センサ2との間の距離L2が最大検知距離Lmaxよりも短くされることで、超音波センサ2に不具合が生じない限り、超音波センサ2は、常に、反射板31からの反射波H1由来の信号B(図22図23)を出力するものとなる。したがって、超音波センサ2に不具合が生じた場合には、超音波センサ2が信号Bを出力しなくなることで(図19のステップS2,S3でNOとなる場合に相当)、管理者は、超音波センサ2に不具合が生じたと認識する。このため、超音波センサ2を修理する対応が迅速に取られる。これにより、河川或いは海が危険水位になった際に確実に超音波センサ2を正常に動作させることができるので、河川或いは海が危険水位になったことを確実に特定できる。
【0179】
なお、上記の管理サーバーによって実行される処理は、センサ装置30の有する制御装置等で行われてもよい。
【0180】
また、汎用されている低出力の超音波センサ2が使用される場合でも、反射板31と超音波センサ2との間の距離L2を最大検知距離Lmaxよりも短くすることで、超音波センサ2は、「反射板31からの反射波H1由来の信号B(図22図23)」を出力するものとなる。したがって高出力の超音波センサ2を使用する必要がないので、コストを安価に抑えることができる。
【0181】
またセンサ装置30によれば、超音波センサ2が正常に作動していることを確認する手段として反射板31が使用されることで、堤防等の無い河川或いは海で、センサ2と水面Sまでの距離Lが大きくなる状況でも、センサ2の動作確認ができる。また反射物のピークにより計測距離の精度ずれを把握できる。
【0182】
また超音波センサ2と危険水位Sとの間の距離L1を最大検知距離Lmaxと等しくすれば、超音波センサ2が「水面Sからの反射波H2由来の信号C」を出力するか否かに基づき、河川或いは海の水面Sが危険水位よりも高くなったか否かを特定できる。また距離L1を最大検知距離Lmax以下にする場合には、管理サーバー、或いはセンサ装置30の有する制御装置が、例えば、信号Cが示す反射波H2の強度に基づき、河川或いは海の水面Sが危険水位よりも高くなったかを判定し、水面Sが危険水位よりも高くなったと判定した場合、その旨を示す情報を出力するようにしてもよい。
【0183】
また超音波センサ2や反射板31を支持する手段は、図20図21に示すアーム32に限定されず、超音波センサ2を水面Sの上方に配置し、反射板31を超音波センサ2と水面Sとの間に配置可能な様々な手段を使用できる。また、超音波センサ2と反射板31とを別々の手段によって支持してもよい。
【0184】
また超音波センサ2から出力される信号は、波P,Hの強度を示す信号に限定されず、強度以外の波P,Hに関する信号とすることができる。例えば、超音波センサ2は、超音波Pを発信した時刻を示す信号や、反射波Hが受信された時刻を示す信号を出力するものであってもよい。このようにしても、反射板31と超音波センサ2との間の距離L2を最大検知距離Lmaxよりも短くすれば、上記と同様の理由から、コストを安価に抑えつつ、河川或いは海が危険水位になった時を確実に特定できる。
【0185】
また第1~第4実施形態では、アーム8(図1図3図6図8図12図19)や、アーム72(図15図17)の代わりに、図25に示すアーム90を使用できる(図25(A)はアーム90を示す斜視図であり、図25(B)はアーム90を示す断面図である。
【0186】
アーム90は、水平方向に延びるものである。アーム90の一端側は、締結具9を用いて、上下方向に延びる支柱6或いはポール7に締結される。図示例では、締結具9として、第1実施形態で示したU字クランプが使用されている。
【0187】
アーム90には、溝91が形成される、溝91は、アーム90の長手方向(水平方向)に延びるものであって、アーム90の側面90aに開口する。
【0188】
アーム90には、溝91に沿ってスライド可能なスライド部材92が取り付けられており、当該スライド部材92に、超音波センサを収容する筐体3が取り付けられる。
【0189】
溝91は、一端側がアーム90の側面90aに開口する幅狭部91aと、幅狭部91aの他端側に連なる幅広部91bとから構成される。
【0190】
スライド部材92は、L字状の断面を呈するものであって、上下方向に延びるプレート92aと、当該プレート92aの下端から水平方向に延びるプレート92bとを備える。プレート92aは、溝91の幅狭部91aを覆うように、アーム90の側面90aに沿って配置される。筐体3は、開口部17の形成された筐体3の壁面3aが河川側(下側)を向くように、プレート92bに締結される(図示例では、ボルト100及びナット101を用いて、筐体3がプレート92bに締結される)。これにより、開口部17から出射された超音波Pが、河川の水面に向かうものとなり、水面で反射された反射波Hのうち、開口部17に入った反射波Hが受波器に受信される。
【0191】
図25(B)に示すように、溝91の幅広部91bには、ボルト93の頭部93aが配置され、溝91の幅狭部91aにはボルト93の柱部93bが通される(柱部93bは、頭部93aから延びるものであって、柱部93bの径は頭部93aの径よりも小さい)。柱部93bの先端側は、プレート92aを貫通して、プレート92aからアーム90の反対側(図25(B)の左側)に延び出る。
【0192】
上記のアーム90では、プレート92aから延び出た柱部93bの先端側にナット98を締結することで、筐体3を支持するスライド部材92をアーム90に固定でき、ナット98を緩めることで、スライド部材92を溝91に沿ってスライドさせることができる。そして当該スライド部材92のスライドによって、超音波センサ2を収容する筐体3をアーム90の長手方向(水平方向)に移動させることができるので、超音波Pの照射位置を調整できる。またスライド部材92をスライドさせる際には、ボルト93の頭部93aが溝91内を摺動することで、スライド部材92のスライドがガイドされる。
【0193】
なお上記のアーム90が使用される場合には、例えばアーム90にアンテナが設けられて、超音波センサは、上記のアンテナを介して、発信受信時間に基づく情報を外部に送信可能とされる。また例えば、上記のアンテナが溝91内に配置されることで、上記のアンテナは、アーム8の長手方向に延びるものとされる。或いは、溝91とは別に形成されるアーム90の空洞にアンテナが配置されることで、アンテナはアーム8の長手方向に延びるものとされる。またアンテナは、アーム90によって構成されるものであってもよく、或いはアンテナは、筐体3の内部に設けられるものであってもよい。
【0194】
またアーム90の長手方向(水平方向)に筐体3を移動させるための手段は、上記の溝91・スライド部材92に限定されない。筐体3を移動させるための手段として、溝91・スライド部材92以外の公知の手段をアーム90に設けてもよい。
【符号の説明】
【0195】
1,30,65,68,70,80 センサ装置
2 超音波センサ
3 筐体
4 支持体
5 アンテナ
7 ポール
8,32,72,90 アーム
17 筐体の開口部
20, 67 センサシステム、
K 河川
S 水面
T 堤防(固体)
Ta 堤防の部分(固体の部分)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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