(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】被動補助給水系統の被動凝縮タンク冷却システム
(51)【国際特許分類】
G21C 15/18 20060101AFI20240430BHJP
G21D 1/00 20060101ALI20240430BHJP
G21C 15/14 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
G21C15/18 A
G21C15/18 R
G21D1/00 Q
G21C15/14
(21)【出願番号】P 2023504447
(86)(22)【出願日】2021-07-13
(86)【国際出願番号】 KR2021008976
(87)【国際公開番号】W WO2022019559
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0091358
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518442000
【氏名又は名称】コリア ハイドロ アンド ニュークリアー パワー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ホ リム
(72)【発明者】
【氏名】カン,サン ヒー
(72)【発明者】
【氏名】ハ,フイン
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1665551(KR,B1)
【文献】特表2016-505158(JP,A)
【文献】特開2013-195318(JP,A)
【文献】特開平02-247598(JP,A)
【文献】特開昭62-187291(JP,A)
【文献】特開昭52-063599(JP,A)
【文献】特開昭56-158993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 15/18
G21C 15/14
G21C 19/07
G21D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換水が貯水される貯水空間を有する被動凝縮タンクと、
前記被動凝縮タンクの熱交換水に浸かって設置された凝縮器と、を含む被動補助給水系統が設けられ、
前記被動凝縮タンクは、
被動凝縮タンクの最外側の外壁を構成する外壁と、前記外壁から離間して前記貯水空間を形成する内壁と、を含み、
前記外壁と前記内壁との間には、熱交換水の熱を吸収することが可能な
流体が介在し
、
前記流体を被動凝縮タンクの外部へ循環させる循環流路が設置され、前記循環流路には、前記流体を熱交換させる熱交換器と、前記流体を循環させる動力を提供する循環ポンプとが設置されたことを特徴とする、被動補助給水系統の被動凝縮タンク冷却システム。
【請求項2】
前記外壁はコンクリートで構成され、前記内壁は金属であることを特徴とする、請求項1に記載の被動補助給水系統の被動凝縮タンク冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被動補助給水系統の被動凝縮タンク冷却システムに係り、より詳細には、被動凝縮タンクにおける凝縮過程時に熱交換水の水温上昇を抑制して被動補助給水系統の冷却性能を向上させることができるようにした、被動補助給水系統の被動凝縮タンク冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所は、燃料の核分裂によって生成された熱エネルギーを利用して、蒸気発生器を通過する水に熱を伝達して蒸気を発生させ、発生した蒸気によってタービンと発電機を稼動させて電気エネルギーを得る設備である。原子力発電所は、核燃料を保有している原子炉炉心と、原子炉から発生した熱エネルギーを二次側へ伝達する原子炉冷却材系統を設計基準範囲内で安全に運転されるようにすることにより、原子力発電所の安全状態を維持し且つ放射性物質の拡散を防止するための設備が備えられなければならない。
これを達成するために、原子力発電所は、事故発生の際に発電所を安全に停止させることができるように工学的安全設備系統を備えている。工学的安全設備系統は、格納容器系統(Containment System)、非常用炉心冷却系統(Emergency Core Cooling System)、及び被動補助給水系統(Passive Auxiliary Feedwater System)を含む。
【0003】
前記被動補助給水系統の一例として、
図1は、特許文献1に開示された軽水炉の被動二次側凝縮系統を示すものである。
図1を参照すると、従来の軽水炉の被動二次側凝縮系統は、原子炉の熱によって蒸気を発生させる蒸気発生器10と、前記蒸気発生器10の熱をタービン側に供給する主蒸気管11と、タービンを経た蒸気が冷却水との熱交換により凝縮した水が蒸気発生器10へ回収される主給水管12と、原子炉運転の中断時にタービン側への蒸気供給を遮断し、主蒸気管11から分岐する蒸気供給管13を介して流入する蒸気を、被動凝縮タンク30内に収められた凝縮器20での熱交換によって水に凝縮させた後、凝縮器20の出口に連結された凝縮水回収管14を介して凝縮した水を主給水管12に合流させるように構成されており、凝縮水回収管14には、凝縮した水の逆流防止のための逆流防止部40が設置された構成が開示されている。
【0004】
このような被動二次側凝縮系統によれば、ポンプなどの別途の能動手段を備えず、自然対流方式によって、蒸気発生器10から発生した蒸気を凝縮器20で凝縮させた後、蒸気発生器10へ還水させて原子炉を冷却させることにより、原子力発電所の事故時に原子炉の過熱を防止することができるという利点がある。
【0005】
しかし、上述した従来の被動補助給水系統は、凝縮器20を介して凝縮水が作られる過程で、被動凝縮タンク30に貯水された熱交換水は、高温の蒸気を通る凝縮器20と熱交換されながら水温が上昇して凝縮器20の熱交換効率性を低下させるおそれがあるという問題点がある。すなわち、従来の被動補助給水系統は、熱交換水の水温上昇により凝縮器20の熱交換効率性を低下させることがあるため、凝縮水の発生量を低下させるおそれがあり、原子炉事故発生の際に被動補助給水系統の冷却性能を低下させるおそれがあるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、その目的は、被動凝縮タンクに冷却手段を設けて凝縮器による熱交換過程で熱交換水の温度上昇を抑制することにより、被動補助給水系統の冷却性能を向上させることができるようにした、被動補助給水系統の被動凝縮タンク冷却システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、熱交換水が貯水される貯水空間を有する被動凝縮タンクと、前記被動凝縮タンクの熱交換水に浸かって設置された凝縮器と、を含む被動補助給水系統が設けられ、前記被動凝縮タンクは、被動凝縮タンクの最外側の外壁を構成する外壁と、前記外壁から離間して前記貯水空間を形成する内壁と、を含み、前記外壁と前記内壁との間には、熱交換水の熱を吸収することが可能な冷却手段が介在していることを特徴とする、被動補助給水系統の被動凝縮タンク冷却システムを提供する。
【0009】
このとき、前記外壁はコンクリートで構成され、前記内壁は金属であることが好ましい。
【0010】
また、前記冷却手段は流体であることが好ましい。
【0011】
このとき、前記冷却手段を被動凝縮タンクの外部へ循環させる循環流路が設置され、前記循環流路には、冷却手段を熱交換させる熱交換器と、流体を循環させる動力を提供する循環ポンプとが設置されたことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明による被動補助給水系統の被動凝縮タンク冷却システムは、被動凝縮タンクが内壁と外壁を含むようにし、内壁と外壁との間には冷却手段が介在するようにすることにより、被動凝縮タンクにおける熱交換過程で熱交換水の水温が上昇することを抑制させることができるという効果がある。さらに、被動補助給水系統の被動凝縮タンク冷却システムは、原子炉事故発生の際に凝縮器による被動補助給水系統の冷却性能を向上させることができるという効果がある。
【0013】
また、本発明は、被動補助給水系統の冷却機能を延長し、冷却性能を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】従来技術による原子力発電施設の被動補助給水系統を示す系統図である。
【
図2】本発明の好適な実施形態による被動補助給水系統の被動凝縮タンク冷却システムを要部のみ概略的に示す図である。
【
図3】本発明の他の実施形態による被動補助給水系統の被動凝縮タンク冷却システムを要部のみ概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書及び請求の範囲で使用された用語又は単語は、通常的又は辞書的な意味に限定解釈されるものではなく、発明者はその発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即し、本発明の技術的思想に合致する意味及び概念で解釈されなければならない。
【0016】
以下、添付の
図2を参照して、本発明の好適な実施形態による被動補助給水系統の被動凝縮タンク冷却システム(以下、「冷却システム」という)について説明する。説明の前に、従来技術と同一の構成については、符号を併記し、詳細な説明は省略する。
【0017】
冷却システムは、被動凝縮タンクを二重の壁で構成し、二重の壁の間に冷却手段を介在させた。これにより、冷却システムは、冷却手段を介して、被動凝縮タンクの熱交換水の水温上昇を抑制して凝縮器の熱交換性能が持続的に維持されるようにすることにより、被動補助給水系統の冷却性能を向上させることができるようにした。
【0018】
図2に示すように、蒸気発生器10が設けられ、冷却システムは、被動凝縮タンク100と冷却手段200と、を含む。
【0019】
被動凝縮タンク100は、蒸気発生器10から供給された高温のスチームを凝縮させて凝縮水を生成する構成であって、凝縮器20が収容され、熱交換水が貯水できる貯水空間100aを形成する。すなわち、被動凝縮タンク100の貯水空間100aには熱交換水が貯水され、凝縮器20は熱交換水に浸かっているように設置される。被動凝縮タンク100は、内壁110と外壁120とを含む。内壁110は、貯水空間100aを形成し、金属の材質で提供される。内壁110の金属材質は、特に限定されないが、熱伝達効率性の高い金属材質であることが好ましい。外壁120は、被動凝縮タンク100の外観及び最外側の外壁を構成する。外壁120は、剛性の高いコンクリート材であることが好ましい。外壁の材質も、コンクリートに限定されるものではなく、剛性の高い材質で提供されれば構わない。外壁120と内壁110とは互いに離間して設けられ、これにより、外壁120と内壁110との間には所定の空間部130が形成される。空間部130は、外壁120の側部と内壁110の側部との間、及び外壁120の底部と内壁110の底部との間に形成される。
【0020】
冷却手段200は、貯水空間100aにおいて凝縮器20が高温のスチームを凝縮させる過程で熱交換水の水温が上昇するのを抑制する役目をし、外壁120と内壁110との間に形成された空間部130に介在する。一般に、凝縮器20で凝縮作用が行われるとき、熱交換水の水温が急激に上昇して最高370K(99.8℃)まで到達するが、熱交換水の水温が上昇するにつれて凝縮器20の凝縮効率性が低下する可能性があるだけでなく、熱交換水が蒸発して熱交換水の水位が減少して熱交換水をさらに充水させなければならない状況が発生する可能性があるので、本発明は、冷却手段200を介して熱交換水の水温上昇を抑制して凝縮器20の凝縮効率性を維持させ、被動補助給水系統の冷却性能を向上させることができるようにした。冷却手段200は、特定の物質に限定するよりは、沸点と残熱吸収性能の高い冷媒として提供されることが好ましい。冷媒は、様々に提供でき、溶融塩(molten salt)、水、溶融塩+水などに加えて様々な冷媒として提供できる。
【0021】
一方、本発明は、冷却手段200を空間部130の内外に循環させて冷却手段200の冷却効率性を高めるように構成することもできる。これを本発明の他の実施形態として提示し、添付の
図3を参照して説明する。説明の前に、好適な実施形態と同じ構成については、符号を併記し、詳細な説明は省略する。
【0022】
別の実施形態による冷却システムは、
図3に示すように、被動凝縮タンク100と、循環流路300と、熱交換器400と、循環ポンプ500と、を含む。
【0023】
循環流路300は、内壁110と外壁120との間に形成された空間部130の冷却手段200を被動凝縮タンク100の外部へ循環させるための構成であって、吐出流路310と流入流路320を含む。吐出流路310は、空間部130の冷却手段200が外部へ吐出される管路を提供し、流入流路320は、吐出流路310を介して吐出された冷却手段200が空間部130に再流入する管路を提供する。
【0024】
熱交換器400は、冷却手段200が熱交換水の水温上昇を抑制させる過程で、前記冷却手段200を冷却させる役目をし、循環流路300に設置される。熱交換器400は、吐出流路310から吐出された冷却手段200を流入流路320に排出することができるように吐出流路310と流入流路320との間に設置される。熱交換器400の熱交換手段は、特に限定されない。
【0025】
循環ポンプ500は、空間部130の冷却手段200を循環流路300へ循環させる動力を提供し、循環流路300に設置される。循環ポンプ500は、冷却手段をポンピングして循環流路300上を循環させることができる構成であれば構わない。
【0026】
以下、上述した構成からなる冷却システムが設置された被動補助給水系統の冷却作用について説明する。
【0027】
原子力発電施設の正常稼働中に事故が発生した場合、蒸気発生器10からタービンへの蒸気の供給は遮断され、蒸気供給管13を介して被動凝縮タンク30の凝縮器20へ蒸気供給が行われる。
【0028】
高温の蒸気は、凝縮器20の入口を介して凝縮器20の出口へ吐出されるが、この過程で、高温の蒸気は、凝縮器20を介して、被動凝縮タンク30に貯水された熱交換水と熱交換されながら凝縮水を発生させる。このとき、熱交換水は、高温のスチームと熱交換されることにより水温が上昇しようとするが、冷却手段200は、熱交換水の熱を奪って熱交換水の水温上昇を抑制させる。
【0029】
また、この過程で、循環ポンプ500は、ポンピング動力を発生して循環流路300を介して冷却手段200を空間部130と被動凝縮タンク100の外部へ循環させる。冷却手段200は、熱交換器400を経て空間部130へ循環することにより冷却手段200の温度上昇は最小化されるので、熱交換水の水温上昇により冷却効率性が低下することを最小化させることができる。
【0030】
これまで説明したように、本発明による被動補助給水系統の被動凝縮タンク冷却システムは、被動凝縮タンク100が内壁110と外壁120を含むようにし、内壁110と外壁120との間に冷却手段200を介在させて、被動凝縮タンク100内での凝縮過程中に熱交換水の水温が上昇することを抑制することができるようにした。これにより、被動補助給水系統の被動凝縮タンク冷却システムは、被動補助給水系統の冷却性能を向上させることができ、極限災害事故の際に長期冷却機能の確保に寄与することができる。
【0031】
以上、本発明は、記載された具体例について詳細に説明されたが、本発明の技術思想の範囲内で様々な変形及び修正が可能であるのは、当業者にとって明らかであり、それらの変形及び修正も添付の特許請求の範囲に属するのは、当たり前である。