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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】絶縁監視装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/52 20200101AFI20240501BHJP
   H02H 3/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G01R31/52
H02H3/00 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022204538
(22)【出願日】2022-12-21
【審査請求日】2024-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592208806
【氏名又は名称】一般財団法人関東電気保安協会
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213702
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 芳則
(72)【発明者】
【氏名】内田 英知
(72)【発明者】
【氏名】小野 賢司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】山北 潤
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-84949(JP,A)
【文献】特開2015-206741(JP,A)
【文献】特許第5455430(JP,B2)
【文献】特開昭58-129272(JP,A)
【文献】中国実用新案第209709686(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第114563733(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
H02H 3/00
H02H 7/00
H02H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器のB種接地線に設けられ、電流抑制抵抗を有する電流抑制部と、
前記B種接地線に流れる漏洩電流を検出する電流検出部と、
前記B種接地線の抵抗値を変化させて漏洩電流の非抑制状態又は抑制状態を切り替える制御部と、
前記非抑制状態において前記電流検出部により検出される漏洩電流から地絡相の対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流を算出する第一計算機能、前記抑制状態において前記電流検出部により検出される漏洩電流から地絡相の対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流及び対地静電容量に起因する容量成分漏洩電流を算出する第二計算機能、及び、前記抑制状態において前記電流検出部により検出される漏洩電流から前記非抑制状態に切り替えた場合の地絡相の対地絶縁抵抗に起因する想定抵抗成分漏洩電流を算出する第三計算機能を有する算出部と、
を備え、
前記制御部は、前記第一計算機能により算出された抵抗成分漏洩電流が予め定めされた第一閾値よりも大きいことにより切り替えられた前記抑制状態において、前記第二計算機能又は前記第三計算機能による算出結果が予め定めた閾値を満たす場合に前記非抑制状態に切り替える、
絶縁監視装置。
【請求項2】
前記電流抑制部は、前記電流抑制抵抗と、前記電流抑制抵抗に対して並列に配置された切替スイッチとを有し、
前記電流抑制抵抗及び前記切替スイッチに対して直列に配置され、前記電流抑制抵抗よりも低抵抗の第二電流抑制抵抗を接地点側にさらに備える、
請求項1に記載の絶縁監視装置。
【請求項3】
前記電流抑制抵抗は、可変式である請求項1に記載の絶縁監視装置。
【請求項4】
前記電流検出部は、前記変圧器の低圧電路に配置される各遮断器の二次側電路の地絡電流を検出する請求項1に記載の絶縁監視装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記抑制状態において、前記第二計算機能又は前記第三計算機能による算出結果が予め定めた遮断閾値を満たす場合に、前記遮断器の電路を遮断する、請求項4に記載の絶縁監視装置。
【請求項6】
前記B種接地線は、4つ以上の複数の前記変圧器に対して接続される請求項1に記載の絶縁監視装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、絶縁監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器の低圧電路の地絡を監視する絶縁監視装置は、高圧自家用設備の低圧電路を常時絶縁監視することにより、漏電による感電や火災事故、停電故障などを未然に防止する等、電気保安レベルの向上に寄与している。このような絶縁監視技術として、例えば、特許文献1に、変圧器二次側の一端と大地との間に設けられ変圧器二次側の低圧電路の漏電を防止する漏電防止装置と、漏電防止装置に流れる電流が所定値以上となったとき警報を出力する監視装置とを備える漏電防止監視システムが開示されている。この漏電防止監視システムは、電流制限素子と電圧制限素子との並列回路に常時は閉じている直接接地用接点を並列接続し、監視装置が変圧器の二次側に地絡事故が発生したことを検出したときは、直接接地用接点を開くように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5455430号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシステムでは、変圧器に対応して設置されている漏電防止装置と、監視装置の各機能が異なる装置に配置されている。このような絶縁監視システムにおいて、配置スペースの削減、設置コストの抑制又は複数の電路を監視する機能を持たせる等の機能性の向上が望まれている。
【0005】
本開示は、多数の監視対象電路と接続しても全体のシステムを簡易に構成可能な絶縁監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本開示に係る絶縁監視装置は、変圧器のB種接地線に設けられ、電流抑制抵抗を有する電流抑制部と、前記B種接地線に流れる漏洩電流を検出する電流検出部と、前記B種接地線の抵抗値を変化させて漏洩電流の非抑制状態又は抑制状態を切り替える制御部と、前記非抑制状態において前記電流検出部により検出される漏洩電流から地絡相の対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流を算出する第一計算機能、前記抑制状態において前記電流検出部により検出される漏洩電流から地絡相の対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流及び対地静電容量に起因する容量成分漏洩電流を算出する第二計算機能、及び、前記抑制状態において前記電流検出部により検出される漏洩電流から前記非抑制状態に切り替えた場合の地絡相の対地絶縁抵抗に起因する想定抵抗成分漏洩電流を算出する第三計算機能を有する算出部と、を備え、前記制御部は、前記第一計算機能により算出された抵抗成分漏洩電流が予め定めされた第一閾値よりも大きいことにより切り替えられた前記抑制状態において、前記第二計算機能又は前記第三計算機能による算出結果が予め定めた閾値を満たす場合に前記非抑制状態に切り替える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、多数の監視対象電路と接続しても全体のシステムを簡易に構成可能な絶縁監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1における絶縁監視システムの構成図である。
図2】絶縁監視システムの変電装置側の回路構成図である。
図3】絶縁監視装置の構成図である。
図4】地絡電流抑制装置が電流の非抑制状態に計算する第一計算機能を説明する図である。
図5】地絡電流抑制装置が電流の抑制状態に計算する第二計算機能を説明する図である。
図6】地絡電流抑制装置が電流の抑制状態に計算する第三計算機能を説明する図である。
図7】絶縁監視システムの地絡電流と絶縁監視装置による電流の抑制状態及び非抑制状態との関係を示すタイミングチャートである。
図8】実施形態2における絶縁監視システムの構成図である。
図9】実施形態3における絶縁監視装置の構成図である。
図10】変形例1における絶縁監視装置の構成図である。
図11】変形例2における絶縁監視装置の構成図である。
図12】変形例3における絶縁監視装置を含む絶縁監視システムの変電装置側の回路構成図である。
図13】変形例4における絶縁監視装置を含む絶縁監視システムの変電装置側の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態1]
以下、本開示の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、絶縁監視システム1の構成図である。絶縁監視システム1は、変電装置2(キュービクル等)及び出力装置3を備える。変電装置2は、変圧器13と、変圧器13の低圧側の二次電路12(監視対象電路)に接続される地絡電流抑制装置4と、二次電路12により電力が供給される負荷である電気機器(不図示)の対地絶縁を常時監視する絶縁監視装置5と、を備える。変圧器13は、高圧側の一次電路11及び低圧側の二次電路12に接続される。絶縁監視装置5と出力装置3は、ネットワークを通じて有線又は無線により通信可能に接続される。
【0011】
図2は、絶縁監視システム1の変電装置2側の回路構成図である。絶縁監視装置5は、監視対象である二次電路12の漏洩電流Iを計測して異常漏電等の監視情報を検出し、計測結果や検出した監視情報又は異常判定結果を外部の出力装置3に通知する機能を有する。絶縁監視装置5は、漏洩電流Iの計測を、二次電路12を一時停電させることなく活線状態で行うことができる。漏洩電流Iは、絶縁抵抗に直接関与している対地絶縁抵抗R2に起因する抵抗成分漏洩電流Irと、対地静電容量に起因する容量成分漏洩電流Icとを含む。本実施形態の絶縁監視システム1は、絶縁監視装置5により漏洩電流Iを測定して、二次電路12の結線方式に応じて抵抗成分漏洩電流Ir及び容量成分漏洩電流Icを計測できるIr測定方式を採用している。図2では、一次電路11は第一相11a及び第二相11bを含む単相2線式の交流回路として図示される。また、二次電路12は第一相12a及び第二相12bを含む単相2線式の交流回路として図示される。二次電路12の第一相12aは接地相である。
【0012】
地絡電流抑制装置4は、変圧器13のB種接地線121に設けられる。具体的に、B種接地線121は、図2に示す二次電路12の第一相12aに接続される。また、地絡電流抑制装置4は、電流抑制部として機能する。地絡電流抑制装置4は、各々並列に接続された切替スイッチSW、電流抑制抵抗R1、及びガス入り放電管GDT(Gas Discharge Tubes)を有する。切替スイッチSWと電流抑制抵抗R1は、電流制御部41として機能する。
【0013】
切替スイッチSWは、電流制御部41の電流の抑制状態又は非抑制状態を切り替える機能を有する。切替スイッチSWは、絶縁監視装置5により制御される。電流抑制抵抗R1は、地絡事故等が発生した際にB種接地線121を流れる地絡電流(漏洩電流I)を抑制する機能を有する。電流抑制抵抗R1は、例えば、数kΩの抵抗値に設定された固定抵抗である。ガス入り放電管GDTは、高抵抗接地時に、変圧器13に混触事故などが発生した場合に、二次電路12の第一相12aと接地点との間の電圧上昇を抑制する機能を有する。ガス入り放電管GDTの直流放電開始電圧は、例えば、数百Vの閾値に設定される。
【0014】
次に絶縁監視装置5について説明する。絶縁監視装置5は、図3に示すように、制御部51,基準電圧取得部52、電流検出部53、算出部54、計時部55、通信部56、及び記憶部57を備える。制御部51は、切替スイッチSWを切り替えて、B種接地線121を流れる漏洩電流Iが切替スイッチSWを介して流れる非抑制状態又は電流抑制抵抗R1を介して流れる抑制状態に切り替える機能を有する。
【0015】
基準電圧取得部52は、二次電路12の基準電圧Vrefを測定する機能を有する。本実施形態は、第一相12a及び第二相12b間の電圧(線間電圧)を基準電圧Vrefとして検出する。基準電圧Vrefを測定するための測定端子及び配線の構成は、図示を省略する。また、基準電圧取得部52は、基準電圧Vrefの実効値RMS(Vref)、周波数F(Vref)、及び基準電圧Vrefに対する漏洩電流Iの位相差θ(Vref)を算出してもよい。漏洩電流Iの位相差θは、例えば、ゼロクロス法により求められる。基準電圧Vrefの周波数F(Vref)は、基準周波数ともいう。電流検出部53は、零相変流器58(いわゆるZCT)と接続され、B種接地線121に流れる漏洩電流Iを検出する。
【0016】
算出部54は、第一計算機能、第二計算機能及び第三計算機能を有する。第一計算機能は、非抑制状態において電流検出部53により検出される漏洩電流Iから地絡相(図4の第二相12b)の対地絶縁抵抗R2に起因する抵抗成分漏洩電流Irを算出する機能である。第二計算機能は、抑制状態において電流検出部53により検出される漏洩電流Iから地絡相の対地絶縁抵抗R2に起因する抵抗成分漏洩電流Ir及び対地静電容量C2に起因する容量成分漏洩電流Ic(Ic2)を算出する機能である。また、第三計算機能は、抑制状態において電流検出部53により検出される漏洩電流Iから非抑制状態に切り替えた場合の地絡相の対地絶縁抵抗R2に起因する想定抵抗成分漏洩電流Ir’を算出する機能である。第一計算機能、第二計算機能及び第三計算機能の詳細は、後述する。
【0017】
計時部55は、経過時間を計時する機能を有する。本実施形態の計時部55は、例えば、地絡電流抑制装置4が漏洩電流Iの抑制状態に切り替わってから経過した時間を計時する第四計算機能を有する。通信部56は、絶縁監視装置5が外部装置と情報の送信及び受信を行う機能を有する。絶縁監視装置5は、通信部56を介して、図1に示した出力装置3等と有線又は無線により通信を行う。
【0018】
記憶部57は、絶縁監視装置5の制御プログラム、基準電圧取得部52及び電流検出部53が取得又は算出した測定値、算出部54が算出した各種の計算結果、第一計算機能乃至第四計算機能による計算結果の判定に必要な閾値(第一閾値乃至第四閾値、及び、後述する実施形態2では遮断閾値を含む)等の判定条件、並びに、その他の制御プログラムの動作に必要な各種のデータ等を記憶してもよい。記憶部57は、地絡電流抑制装置4が電流の抑制状態又は非抑制状態のいずれの状態であるのかをフラグ情報として記憶する。制御部51は、例えば、このフラグ情報を参照することにより、抑制状態又は非抑制状態であるのかの情報を判定することができる。
【0019】
図2に示される絶縁監視システム1は、切替スイッチSWが閉状態である場合について示している。つまり、地絡電流抑制装置4は、B種接地線121を流れる漏洩電流Iが切替スイッチSWを流れる非抑制状態である。図2の絶縁監視システム1では、二次電路12に地絡が発生していないため、活線である第二相12bの対地絶縁抵抗R2による抵抗成分漏洩電流Irは流れず、対地静電容量C2による容量成分漏洩電流Icが流れる。また、切替スイッチSWが閉状態であるため、第一相12aは接地されており、第一相12aの対地静電容量C1は無視できる。従って、図2のB種接地線121を流れる漏洩電流Iは、容量成分漏洩電流Icと等しいといえる。なお、本実施形態において、二次電路12の各相の対地静電容量は、略同じ既知の値である。対地静電容量C1及び対地静電容量C2は、設計値等により予め与えられた値であってもよいし、算出部54が電流の非抑制状態において、例えば、C2=Ic/jωVref(ωは基準電圧Vrefの角周波数である)により求めた値であってもよい。また、算出部54は、対地静電容量C1を、C1=C2により算出することができる。
【0020】
次に、第一計算機能、第二計算機能及び第三計算機能の詳細についてそれぞれ説明する。まず、第一計算機能は、図4に示すように地絡電流抑制装置4が電流の非抑制状態である場合に、地絡が発生したか又は地絡の予兆となる事象が発生したか否かの被判定値を計算する機能である。具体的に、制御部51は、零相変流器58によって電流検出部53が検出した漏洩電流Iの測定値を取得する。地絡電流抑制装置4が電流の非抑制状態である場合、二次電路12に地絡が発生していない状態であることから、I(漏洩電流)=Ic(容量成分漏洩電流)=Ic2(対地静電容量C2を流れる容量成分漏洩電流)である。算出部54は、第二相12bの抵抗成分漏洩電流Irを、
Ir=I・cosθ ・・・(1)
[θは、基準電圧Vrefに対する漏洩電流Iの位相差である。]
により算出する。
第一計算機能では、抵抗成分漏洩電流Irが地絡電流Imとして求められる。制御部51は、第一計算機能として求めた計算結果である抵抗成分漏洩電流Ir(地絡電流Im)を、予め定めた第一閾値と比較して、電流の非抑制状態から抑制状態に切り替えるか否かを判定する。
【0021】
第二計算機能は、図5に示すように、地絡電流抑制装置4が電流の抑制状態である場合に、地絡又はその予兆となる事象が解消されたか否かの被判定値を計算する機能である。具体的に、制御部51は、零相変流器58によって電流検出部53が検出した漏洩電流Iの測定値を取得する。制御部51は、地絡電流抑制装置4が電流の抑制状態である場合、二次電路12に地絡が発生していることから、第一相12a及び第二相12bにそれぞれ対地静電容量C1及び対地静電容量C2が発生しているものとして、算出部54に、抵抗成分漏洩電流Ir、地絡相(第二相12b)の容量成分漏洩電流Ic2、及び接地相(第一相12a)の容量成分漏洩電流Ic1の算出を行わせる。
【0022】
まず、算出部54は、電流検出部53が検出した漏洩電流I及び既知の電流抑制抵抗R1の値から、式(2)により第一相12aの対地電圧V1を求める。
V1=I・R1 ・・・ (2)
また、算出部54は、対地静電容量C1の容量成分漏洩電流Ic1を、式(3)により求める。
Ic1=V1・j・ω・C1
=I・R1・j・ω・C1 ・・・ (3)
算出部54は、第一相12aに対する第二相12bの線間電圧である基準電圧Vrefが既知であることから、対地静電容量C2の容量成分漏洩電流Ic2を、式(4)により求める。
Ic2=(Vref-I・R1)・j・ω・C2 ・・・ (4)
従って、対地絶縁抵抗R2を流れる抵抗成分漏洩電流Irは、式(3)及び(4)で求めたIc1及びIc2を用いて、式(5)で求められる。
Ir=(I+Ic1)-Ic2 ・・・ (5)
なお算出部54は、式(5)で求めた抵抗成分漏洩電流Irを用いて、
R2=(Vref-R1・I)/Ir ・・・(6)
により、地絡電流抑制装置4の抑制状態における現在の対地絶縁抵抗R2を求めることができる。
【0023】
第二計算機能では、漏洩電流Iと容量成分漏洩電流Ic1の合成電流が、抵抗成分漏洩電流Irと容量成分漏洩電流Ic2の合成電流と等しいため、漏洩電流Iと容量成分漏洩電流Ic1の合成電流を、第二相12bに対する地絡電流Imと等しいものとして求められる。従って、上記の式(4)~(6)の計算は、第二計算機能の処理内容から省略することもできる。制御部51は、第二計算機能として求めた計算結果である抵抗成分漏洩電流Irと容量成分漏洩電流Ic2の合成電流を、予め定めた第二閾値と比較して、電流の非抑制状態に切り替えるか否かを判定する。
【0024】
第三計算機能は、図6に示すように、地絡電流抑制装置4が電流の抑制状態である場合に、地絡又はその予兆となる事象が解消されたか否かの被判定値を計算する機能である。具体的に、制御部51は、地絡電流抑制装置4が電流の抑制状態である場合、算出部54に、地絡電流抑制装置4を電流の抑制状態から非抑制状態に切り替えた場合(切替スイッチSWを破線に示すように閉状態に切り替えた場合)に想定される対地絶縁抵抗R2を流れる想定抵抗成分漏洩電流Ir’の算出を行わせる。
【0025】
まず、算出部54は、第二計算機能で説明した式(2)から式(6)までの計算等を行い、現在の対地絶縁抵抗R2を算出する。算出部54は、切替スイッチSWを破線に示すように閉状態に切り替えた場合の対地絶縁抵抗を流れる想定抵抗成分漏洩電流Ir’を、現在の対地絶縁抵抗R2及び基準電圧Vrefを用いて
Ir’=Vref/R2 ・・・ (7)
により算出する。
【0026】
第三計算機能では、式(7)により求めた対地絶縁抵抗R2の想定抵抗成分漏洩電流Ir’が、地絡電流Imとして求められる。制御部51は、第三計算機能として求めた計算結果である想定抵抗成分漏洩電流Ir’を、予め定めた第三閾値と比較して、電流の抑制状態又は非抑制状態に切り替えるか否かを判定する。
【0027】
なお、算出部54は、第一計算機能、第二計算機能及び第三計算機能による地絡電流Imの計算を、予め定めた周期(又はサンプリング周波数)で、実行することができる。地絡電流Imの計算周期は、例えば、数分又は数時間に設定される。また、地絡電流Imの計算周期は、第一計算機能、第二計算機能及び第三計算機能の一部又は全部において異なる設定であってもよい。
【0028】
次に、絶縁監視システム1の動作について説明する。図7は、絶縁監視システム1の地絡電流と絶縁監視装置5による電流の抑制状態及び非抑制状態との関係を示すタイミングチャートである。本タイミングチャートでは、横軸に時間を示し、縦軸に地絡電流Imを示している。以下、制御部51が、地絡電流抑制装置4を電流の抑制状態又は非抑制状態の何れに切り替えるかの判定方法として、判定例1乃至判定例8について説明するが、各判定例は任意の複数を組み合わせてもよい。
【0029】
(判定例1)
まず、判定例1について説明する。
【0030】
図7において、タイミングt0からタイミングt1までの地絡電流Imが0[mA]である期間において、地絡電流抑制装置4は初期状態として切替スイッチSWを閉状態に制御しており、非抑制状態に設定されている。また、制御部51は、タイミングt0からタイミングt1までにおいて、算出部54に第一計算機能により地絡電流Imの計算を行わせる。タイミングt1は、例えば、地絡事故が発生したタイミングである。制御部51は、第一計算機能による計算の結果、地絡電流Imが第一閾値(例えば、50[mA]以上の電流値を60[秒]間継続)を満たすことを検出すると、タイミングt2で切替スイッチSWを開状態に切り替えて、地絡電流抑制装置4を電流の抑制状態に切り替える。図7のタイミングt0からタイミングt2までの期間D1は初期状態から切替スイッチSWを開状態に切り替えるまでの期間を示している。また、タイミングt1からタイミングt2までの期間D3は、地絡事故が発生したタイミングt1から切替スイッチSWを開状態に切り替えるまでの期間を示している。
【0031】
タイミングt2からタイミングt3の期間D2は、地絡電流抑制装置4が切替スイッチSWを開状態に切り替えた電流の抑制状態の期間を示している。期間D2において、制御部51は、算出部54に第二計算機能、第三計算機能若しくは第四計算機能又はその他の処理によって非抑制状態に切り替えるか否かの判定を行う。例えば、制御部51は、第二計算機能による計算結果として求めた地絡電流Imが予め定めた第二閾値を満たすことを検出すると、タイミングt3で切替スイッチSWを閉状態に切り替えて、地絡電流抑制装置4を電流の非抑制状態に切り替える。予め定めた第二閾値を満たすか否かは、例えば、地絡電流Imが50[mA]以下又は未満の電流値であるか否かで判定される。
【0032】
なお、期間D2において、電流の非抑制状態に切り替える際の判定条件は、地絡電流抑制装置4が電流の抑制状態に切り替わってから非抑制状態に復帰するまでの間に遅延時間(又は、待ち時間)が設けられるように設定されるとよい。具体的には、電流の非抑制状態に切り替える際の判定条件は、電流の抑制状態に切り替える際の判定条件よりも厳しく設定される。例えば、第二計算機能により算出された地絡電流Imには容量成分漏洩電流Icと抵抗成分漏洩電流Irが含まれる一方で、第一計算機能により算出された地絡電流Imには抵抗成分漏洩電流Irが含まれ、容量成分漏洩電流Icが含まれない。従って、この場合は、第一計算機能により算出した地絡電流Imと、第二計算機能により算出した地絡電流Imの閾値が同じであっても、電流の非抑制状態に切り替える際の判定条件のほうが、電流の抑制状態に切り替える際の判定条件よりも、抵抗成分漏洩電流Irを評価する閾値としては厳しく設定されることとなる。
【0033】
タイミングt3以降の期間D1では、地絡電流抑制装置4は電流の非抑制状態であり、制御部51はタイミングt0からタイミングt2と同様に第一計算機能により漏洩電流I(地絡電流Im)を監視する。
【0034】
なお、制御部51は、期間D2において、地絡電流Imが予め定めた閾値を満たす場合に、警告等の出力処理を行わせてもよい。警告等の出力処理を行わせるか否かを判定する閾値は、例えば、第一閾値よりも大きい値以上に設定される。出力処理は、例えば、制御部51が警告の指示を、通信部56を介して外部の出力装置3(図1参照)に送信する。出力処理は、人が知覚可能な処理とすることができ、例えば、出力装置3に設けられた表示装置による表示、発光装置による発光、スピーカによる放音、出力装置3と通信接続される端末等への報知、等任意の手段を用いることができる。
【0035】
例えば、絶縁監視装置5は、期間D1の第一計算機能の計算により地絡電流Imが50mA以上であった場合に切替スイッチSWを開状態に切り替える。このとき、出力装置3は切替スイッチSWを開状態に切り替わった旨を出力処理により出力する。また、出力装置3は、期間D2において、地絡電流Imが50mA未満の状態から50mA以上に遷移した場合に第一アラートを出力する出力処理を行う。また、出力装置3は、期間D2において、地絡電流Imが50mA以上且つ200mA未満の状態から、200mA以上に遷移した場合に第二アラートを出力する出力処理を行う。第二アラートは、第一アラートよりも強い警報レベルに設定される。
【0036】
(判定例2)
次に、期間D2の電流の抑制状態における他の判定例について説明する。判定例2では、制御部51は、期間D2の電流の抑制状態において、第三計算機能による算出結果である地絡電流Imが予め定めた第三閾値(例えば、50[mA])未満又は以下であった場合に非抑制状態に切り替える。
【0037】
(判定例3)
また、期間D2の電流の抑制状態における判定例3では、制御部51は、抑制状態において、第二計算機能及び第三計算機能による算出結果である地絡電流Imが各々予め定めた第二閾値(例えば、50[mA])以下及び第三閾値(例えば、50[mA])以下であった場合に非抑制状態に切り替える。
【0038】
(判定例4)
また、期間D2の電流の抑制状態における判定例4では、制御部51は、抑制状態において、第四計算機能により取得した経過時間が予め定めた第四閾値(例えば、1時間)以上であった場合に非抑制状態に切り替える。
【0039】
(判定例5)
また、期間D2の電流の抑制状態における判定例5では、制御部51は、抑制状態において、第四計算機能により取得した経過時間が予め定めた第四閾値(例えば、1時間)以上、且つ、第二計算機能による算出結果が予め定めた第二閾値(例えば、50[mA])未満又は以下であった場合に非抑制状態に切り替える。
【0040】
なお、判定例5において、制御部51は、第四計算機能により取得した経過時間が第四閾値未満である場合に、第二計算機能、又は、第二計算機能及び第三計算機能を予め定めたサンプリング周期で実行する。
【0041】
(判定例6)
期間D2の電流の抑制状態における判定例6では、制御部51は、抑制状態において、第四計算機能により取得した経過時間が予め定めた閾値以上(例えば、1時間以上)、且つ、第三計算機能による算出結果が予め定めた閾値(例えば、50[mA])以下であった場合に非抑制状態に切り替える。
【0042】
なお、判定例6において、制御部51は、第四計算機能により取得した経過時間が第四閾値未満である場合に、第三計算機能、又は、第二計算機能及び第三計算機能を予め定めたサンプリング周期で実行する。すなわち、制御部51は、判定例5又は判定例6において、第四計算機能により取得した経過時間が第四閾値未満で取得した場合に、第二計算機能及び第三計算機能の一方又は両方を予め定めたサンプリング周期で実行する構成とすることができる。
【0043】
(判定例7)
期間D2の電流の抑制状態における判定例7では、制御部51は、抑制状態において、第四計算機能により取得した経過時間が予め定めた閾値以上、且つ、第二計算機能及び第三計算機能による算出結果が各々予め定めた第二閾値以下及び第三閾値以下であった場合に非抑制状態に切り替える。
【0044】
以上、実施形態1では、絶縁監視システム1は、変圧器13のB種接地線121に設けられ、並列に配置された切替スイッチSW及び電流抑制抵抗R1を有する電流抑制部(地絡電流抑制装置4等)と、B種接地線121に流れる漏洩電流Iを検出する電流検出部53と、切替スイッチSWを切り替えてB種接地線121を流れる漏洩電流Iが切替スイッチSWを流れる非抑制状態又は電流抑制抵抗R1を流れる抑制状態に切り替える制御部51と、第一計算機能乃至第四計算機能を有する算出部54又は計時部55と、を備える構成について説明した。ここで、第一計算機能は、非抑制状態において電流検出部53により検出される漏洩電流Iから地絡相の対地絶縁抵抗R2に起因する抵抗成分漏洩電流Irを算出する機能である。第二計算機能は、抑制状態において電流検出部53により検出される漏洩電流Iから地絡相の対地絶縁抵抗R2に起因する抵抗成分漏洩電流Ir及び対地静電容量C2に起因する容量成分漏洩電流Icを算出する機能である。第三計算機能は、抑制状態において電流検出部53により検出される漏洩電流Iから非抑制状態に切り替えた場合の地絡相の対地絶縁抵抗R2に起因する想定抵抗成分漏洩電流Ir’を算出する機能である。そして、第四計算機能は、抑制状態に切り替わってからの時間を計時する機能である。
【0045】
また、地絡電流抑制装置4の抑制状態において行われる計算として、制御部51は、第一計算機能により算出された抵抗成分漏洩電流Irが予め定めされた第一閾値よりも大きいことにより切り替えられた抑制状態において、第二計算機能、第三計算機能又は第四計算機能による算出結果が予め定めた閾値(第二閾値、第三閾値又は第四閾値)を満たす場合に非抑制状態に切り替える構成についても説明した。
【0046】
地絡電流抑制装置4は、電流の抑制状態に切り替える際の判定条件を第一計算機能の計算結果を用いて実行し、電流の非抑制状態に切り替える際の判定条件を第一計算機能とは異なる計算機能(第二計算機能乃至第四計算機能)により実行している。電流の抑制状態に切り替える際の判定条件よりも、電流の非抑制状態に切り替える際の判定条件のほうを厳しくしたり(例えば、判定例1~3、判定例5~7)、第四計算機能の計算結果である経過時間を非抑制状態に切り替えるための条件に利用することにより(例えば、判定例4~7)、地絡電流抑制装置4が電流の抑制状態に切り替わってから非抑制状態に復帰するまでの間に遅延時間(又は、待ち時間)を設けることが可能である。このため、地絡の解消された状態が安定していないのにも関わらず地絡電流抑制装置4が電流の非抑制状態に復帰すること又は抑制状態と非抑制状態が短期間に繰り返される現象の発生を防止できる。したがって、地絡電流抑制部に流れる地絡電流を安定して制御する絶縁監視システム及び絶縁監視装置を構成することができる。
【0047】
[実施形態2]
次に、実施形態2の絶縁監視システム1Aについて説明する。図8は、絶縁監視システム1Aの構成図である。絶縁監視システム1Aは、変電装置2の代わりに監視対象システムである変電装置2Aを有し、出力装置3の代わりに監視対象システムとネットワークを通じて通信可能に接続される監視システムである出力装置3Aを有する。また、変電装置2Aは、実施形態1の絶縁監視装置5の代わりに絶縁監視装置5Aを有する。なお、絶縁監視システム1Aの説明において、実施形態1の絶縁監視システム1と異なる構成について説明し、その他の構成は絶縁監視システム1と同様であるので同一の符号を付す等して説明を省略又は簡略化する。
【0048】
出力装置3Aは、制御部31、算出部32、計時部33、通信部34、記憶部35及び出力部36を備える。制御部31、算出部32及び計時部33は、それぞれ図3の絶縁監視装置5の制御部51、算出部54及び計時部55と同様の機能を有する。算出部32は、算出部54は、第一計算機能、第二計算機能及び第三計算機能を有する。また、計時部33は、第四計算機能を有する。
【0049】
制御部31は、実施形態1で説明した判定例1~7等に応じた第一計算機能、第二計算機能、第三計算機能及び第四計算機能のいずれかの計算結果を用い、それぞれ予め定めた第一閾値と比較して、電流の抑制状態又は非抑制状態に切り替えるか否かを判定する。制御部31は、通信部34と、絶縁監視装置5Aが備える通信部56とにより、ネットワークを介して、地絡電流抑制装置4の非抑制状態又は抑制状態に切り替える制御機能を有する。
【0050】
なお、絶縁監視装置5Aは、算出部54及び計時部55(図3参照)を設けない構成としてもよい。
【0051】
実施形態2の絶縁監視システム1Aでは、監視対象システムと監視システム(図8では、変電装置2Aと出力装置3A)を遠隔地に設けることもできるため、監視対象システムである変電装置2Aを簡易に構成することができる。
【0052】
[実施形態3]
次に、実施形態3について説明する。図9は、絶縁監視システム1に適用可能な絶縁監視装置6の構成図である。絶縁監視装置6は、電流抑制部として機能する地絡電流抑制部4Bと、絶縁監視部5Bとを備える。地絡電流抑制部4Bは、地絡電流抑制装置4と同様の構成を有する。また、絶縁監視部5Bは、図3に示した絶縁監視装置5と同様の構成を有する。
【0053】
このように、絶縁監視装置6は、それぞれ絶縁監視部5B及び地絡電流抑制部4Bを一体の装置に設けたため、実施形態1(判定例1~7を含む)における地絡電流抑制装置4の機能と絶縁監視装置5の機能を備えながら、全体を小型に構成することができる。
【0054】
(変形例1)
次に、実施形態3の変形例1について説明する。図10は、絶縁監視システム1に適用可能な絶縁監視装置6Bの構成図である。地絡電流抑制部4B(電流抑制部)は、電流抑制抵抗R1、電流抑制抵抗R1に対して並列に配置された切替スイッチSW、及びガス入り放電管GDTを有する。また、絶縁監視装置6Bは、電流抑制抵抗R1及び切替スイッチSWに対して直列に配置され、電流抑制抵抗R1よりも低抵抗の電流抑制抵抗R3(第二電流抑制抵抗)を接地点側にさらに備える。図10では、電流抑制抵抗R3は、地絡電流抑制部4Bと接地点との間に直列に配置される。電流抑制抵抗R3は、数Ω~数十Ωに設定される。従って、絶縁監視装置6Bは、切替スイッチSWを閉じた電流の非抑制状態においても、電流抑制抵抗R3により接地抵抗を設定することができる。絶縁監視装置6Bは、B種接地線121の抵抗値が低い場合であっても、漏洩電流Iが過大に流れることを抑制することができる。従って、絶縁監視装置6や地絡電流抑制部4Bを過電流から保護することができる。
【0055】
なお、電流抑制抵抗R3は、地絡電流抑制部4Bの内部に設けてもよいし、絶縁監視装置6Dの外部に設けてもよい。
【0056】
(変形例2)
次に、実施形態3の変形例2について説明する。図11は、絶縁監視システム1に適用可能な絶縁監視装置6Cの構成図である。なお、絶縁監視装置6Cの説明において、絶縁監視装置6と同様の構成については、同一の符号を付す等してその説明を省略又は簡略化する。絶縁監視装置6Cに設けられた地絡電流抑制部4Cは、電流抑制抵抗R4及びガス入り放電管GDTを有する。電流抑制抵抗R4は、可変式の電流制限素子により構成される。電流抑制抵抗R4の抵抗値は、例えば、絶縁監視部5Bによる制御により0Ωから数kΩの幅で変更可能である。
【0057】
絶縁監視装置6Cは、切替スイッチSWを省略することができるため、全体を小型に構成することができる。
【0058】
(変形例3)
次に、実施形態3の変形例3について説明する。図12は、変形例3の絶縁監視装置6Dを用いた絶縁監視システム1Dを示す図である。なお、絶縁監視システム1Dの説明において、絶縁監視システム1等の前述した構成と同様の構成については、同一の符号を付す等してその説明を省略又は簡略化する。
【0059】
変電装置2Dは、地絡電流抑制部4B、絶縁監視部5D、及び二次電路12側に設けられた遮断器7,8を備える。本図の例では、遮断器7は主遮断器として配置され、遮断器7は一つ又は複数設けられた配線用遮断器として配置される。絶縁監視部5Dは、図9に示した絶縁監視部5Bと同様の構成を有するが、電流検出部53は二次電路12に接続される遮断器7の漏洩電流Iを零相変流器58により検出する機能を備える。すなわち、電流検出部53は、変圧器13の低圧電路である二次電路12に配置される各遮断器8の二次側電路の地絡電流を検出する。
【0060】
絶縁監視部5Dの制御部51は、電流の抑制状態において、実施形態1で説明した第二計算機能、第三計算機能又は第四計算機能による算出結果が予め定めた遮断閾値を満たす場合に、遮断器7及び遮断器8の一方又は両方の電路を遮断する機能を有する。遮断閾値を満たすか否かは、例えば、地絡電流抑制部4Bが電流の抑制状態(図7の期間D2における状態)であるにも関わらず、地絡電流Imが予め定めた閾値以上である場合と設定することができる。
【0061】
絶縁監視システム1Dは、地絡電流抑制部4Bにより地絡電流を抑制する機能と、遮断器8により二次電路12を切断する機能とを備えるため(又は、遮断器7により二次電路12を切断する機能とを備えるため)、二次電路12及び負荷側における電気機器を含む系統全体の安全性を向上させることができる。
【0062】
(変形例4)
次に、実施形態3の変形例4について説明する。図13は、変形例4の絶縁監視装置6Eを用いた絶縁監視システム1Eを示す図である。なお、絶縁監視システム1Eの説明において、絶縁監視システム1等の前述した構成と同様の構成については、同一の符号を付す等してその説明を省略又は簡略化する。
【0063】
絶縁監視システム1Eは、複数の変圧器13a~13d(13)の二次電路12に対して接続される。絶縁監視システム1Eは、例えば、実施形態1の絶縁監視システム1と同様の単相2線式の二次電路12に適用される。各変圧器13の接地相である第一相12a(図13では不図示)は、接地点に対して、共通のB種接地線121を介して接続される。絶縁監視装置6Eは、この共通のB種接地線121に設けられる。なお、B種接地線121は、4つの変圧器13の二次電路12に対して接続される構成に限らず、2つ以上の複数の変圧器13の二次電路12に対して接続される構成としてもよい。
【0064】
このように構成された絶縁監視システム1Eは、複数の二次電路12の何れかの系統に起因する地絡電流を抑制することができる。また、絶縁監視装置6Eは複数の二次電路12と接続可能であるため、システム構成の全体を小型化することができる。
【0065】
以上、変圧器のB種接地線に設けられ、電流抑制抵抗を有する電流抑制部と、前記B種接地線に流れる漏洩電流を検出する電流検出部と、前記B種接地線の抵抗値を変化させて漏洩電流の非抑制状態又は抑制状態を切り替える制御部と、前記非抑制状態において前記電流検出部により検出される漏洩電流から地絡相の対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流を算出する第一計算機能、前記抑制状態において前記電流検出部により検出される漏洩電流から地絡相の対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流及び対地静電容量に起因する容量成分漏洩電流を算出する第二計算機能、及び、前記抑制状態において前記電流検出部により検出される漏洩電流から前記非抑制状態に切り替えた場合の地絡相の対地絶縁抵抗に起因する想定抵抗成分漏洩電流を算出する第三計算機能を有する算出部と、を備える絶縁監視装置について説明した。また、制御部は、前記第一計算機能により算出された抵抗成分漏洩電流が予め定めされた第一閾値よりも大きいことにより切り替えられた前記抑制状態において、前記第二計算機能又は前記第三計算機能による算出結果が予め定めた閾値を満たす場合に前記非抑制状態に切り替える構成についても説明した。
【0066】
このような構成により、絶縁監視装置6,6B~6Eは、地絡電流抑制機能と絶縁監視機能とを有しながら、全体を小型に構成することができる。また、絶縁監視装置6D,6Eは、複数の電路の測定点を同時に監視することができる。従って、多数の監視対象電路と接続しても全体のシステムを簡易に構成可能な絶縁監視装置6,6B~6Eを構成することができる。
【0067】
以上、本開示の実施形態1,2を説明したが、各実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。
【0068】
例えば、実施形態1~3では、一次電路11及び二次電路12は単相2線式である地絡電流監視システムについて説明したが、単相3線式、三相3線式、又は、三相4線式であっても構わない。
【0069】
また、絶縁監視装置5及び絶縁監視部5B,5Dは、内部に通信部56を備える構成について説明したが、通信装置(例えば、ゲートウェイ)の一部の機能として設けられてもよい。
【0070】
また、実施形態1において、二次電路12の各相の対地静電容量は、略同じ(C1=C2)既知の値であるものとして説明したが、各相の対地静電容量C1,C2は不平衡(C1≠C2)の値であってもよい。
【0071】
以上説明した本開示の技術を例示すると以下のとおりである。
[1]
変圧器のB種接地線に設けられ、電流抑制抵抗を有する電流抑制部と、
前記B種接地線に流れる漏洩電流を検出する電流検出部と、
前記B種接地線の抵抗値を変化させて漏洩電流の非抑制状態又は抑制状態を切り替える制御部と、
前記非抑制状態において前記電流検出部により検出される漏洩電流から地絡相の対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流を算出する第一計算機能、前記抑制状態において前記電流検出部により検出される漏洩電流から地絡相の対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流及び対地静電容量に起因する容量成分漏洩電流を算出する第二計算機能、及び、前記抑制状態において前記電流検出部により検出される漏洩電流から前記非抑制状態に切り替えた場合の地絡相の対地絶縁抵抗に起因する想定抵抗成分漏洩電流を算出する第三計算機能を有する算出部と、
を備え、
前記制御部は、前記第一計算機能により算出された抵抗成分漏洩電流が予め定めされた第一閾値よりも大きいことにより切り替えられた前記抑制状態において、前記第二計算機能又は前記第三計算機能による算出結果が予め定めた閾値を満たす場合に前記非抑制状態に切り替える、
絶縁監視装置。
[2]
前記電流抑制部は、前記電流抑制抵抗と、前記電流抑制抵抗に対して並列に配置された切替スイッチとを有し、
前記電流抑制抵抗及び前記切替スイッチに対して直列に配置され、前記電流抑制抵抗よりも低抵抗の第二電流抑制抵抗を接地点側にさらに備える、
[1]に記載の絶縁監視装置。
[3]
前記電流抑制抵抗は、可変式である[1]に記載の絶縁監視装置。
[4]
前記電流検出部は、前記変圧器の低圧電路に配置される各遮断器の二次側電路の地絡電流を検出する[1]に記載の絶縁監視装置。
[5]
前記制御部は、前記抑制状態において、前記第二計算機能又は前記第三計算機能による算出結果が予め定めた遮断閾値を満たす場合に、前記遮断器の電路を遮断する、[4]に記載の絶縁監視装置。
[6]
前記B種接地線は、4つ以上の複数の前記変圧器に対して接続される[1]に記載の絶縁監視装置。
【符号の説明】
【0072】
1,1A,1D,1E 絶縁監視システム
2,2A,2D,2F 変電装置
3,3A 出力装置
4 地絡電流抑制装置
4B,4C 地絡電流抑制部
5,5A 絶縁監視装置
5B,5D 絶縁監視部
6,6B~6E 絶縁監視装置
7 遮断器
8 遮断器
11 一次電路
11a 第一相
11b 第二相
12 二次電路
12a 第一相
12b 第二相
13,13a~13d 変圧器
31 制御部
32 算出部
33 計時部
34 通信部
35 記憶部
36 出力部
41 電流制御部
51 制御部
52 基準電圧取得部
53 電流検出部
54 算出部
55 計時部
56 通信部
57 記憶部
58 零相変流器
121 B種接地線
C1 対地静電容量
C2 対地静電容量
D1~D3 期間
F 周波数
GDT ガス入り放電管
漏洩電流
Ic,Ic1,Ic2 容量成分漏洩電流
Im 地絡電流
Ir 抵抗成分漏洩電流
Ir' 想定抵抗成分漏洩電流
R1 電流抑制抵抗
R2 対地絶縁抵抗
R3 電流抑制抵抗
R4 電流抑制抵抗
SW 切替スイッチ
V1 対地電圧
ref 基準電圧
t0 タイミング
t1 タイミング
t2 タイミング
t3 タイミング
θ 位相差

【要約】
【課題】多数の監視対象電路と接続しても全体のシステムを簡易に構成可能な絶縁監視装置を提供すること。
【解決手段】絶縁監視装置は、変圧器のB種接地線に設けられ電流抑制部と、B種接地線に流れる漏洩電流を検出する電流検出部と、B種接地線を流れる漏洩電流の非抑制状態又は抑制状態を切り替える制御部と、非抑制状態において地絡相の対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流を算出する第一計算機能、抑制状態において地絡相の対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流及び対地静電容量に起因する容量成分漏洩電流を算出する第二計算機能、及び、抑制状態において非抑制状態に切り替えた場合の地絡相の対地絶縁抵抗に起因する想定抵抗成分漏洩電流を算出する第三計算機能を有する算出部と、を備える。
【選択図】図10

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13