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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】顕微鏡システム及び光学モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/36 20060101AFI20240501BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240501BHJP
   G01N 21/76 20060101ALI20240501BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G02B21/36
G01N21/64 E
G01N21/76
G02B21/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018071587
(22)【出願日】2018-04-03
(65)【公開番号】P2019184668
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-25
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】505246789
【氏名又は名称】学校法人自治医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123319
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【弁理士】
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 剛
(72)【発明者】
【氏名】西村 智
【合議体】
【審判長】秋田 将行
【審判官】齋藤 卓司
【審判官】野村 伸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-225096(JP,A)
【文献】特開2004-93721(JP,A)
【文献】特開2016-11844(JP,A)
【文献】国際公開第2014/080932(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G02B19/00-21/00
IPC G02B21/06-21/36
IPC G01N21/62-21/74
IPC G01N21/75-21/83
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被観察物に対して配置される対物レンズを備える観察光学系と、
前記被観察物にレーザー光を照射する光源と、
前記レーザー光を所定面内で走査させる走査手段と、を有する顕微鏡システムであって、
前記観察光学系は、
前記レーザー光が照射されることによって励起され、前記対物レンズから前記観察光学系に入光した前記被観察物の蛍光を感知する第1の像取得手段を備え、前記被観察物の狭視野高倍率のミクロ画像を取得する第1の画像取得経路と、
前記対物レンズから前記観察光学系に入光した前記被観察物における化学発光を増幅する光増幅手段、及び該光増幅手段よって増幅された前記化学発光を感知する第2の像取得手段を備え、前記被観察物の広視野低倍率のマクロ画像を取得する第2の画像取得経路と、
前記対物レンズから前記観察光学系に入光した光の進路を、前記第1の画像取得経路又は前記第2の画像取得経路に切り替え、シームレスに蛍光画像と発光画像とを見比べ可能にする切替手段と、を備え、
前記第2の像取得手段は前記被観察物における化学発光の像を取得することを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項2】
前記光増幅手段はイメージインテンシファイアであることを特徴とする、請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項3】
前記第2の像取得手段は、CMOSイメージセンサであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の顕微鏡システム。
【請求項4】
前記第1の像取得手段が取得した蛍光画像及び、前記第2の像取得手段が取得した化学発光画像を記録する記録手段と、
前記記録手段に記録された前記化学発光画像と前記蛍光画像とを合成した画像を生成する画像処理手段と、をさらに有することを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
【請求項5】
前記第2の像取得手段は、前記被観察物が可視光を反射した像を取得し、
前記記録手段は、前記第2の像取得手段が取得した可視光反射画像を記録し、
前記画像処理手段は、前記記録手段に記録された可視光反射画像と、前記化学発光画像及び/又は前記蛍光画像を合成した画像を生成する、ことを特徴とする請求項に記載の顕微鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、観察対象の発光現象(化学発光)を撮像するためには、発光を観察するための専用の装置が用いられている。例えば、生物発光を観察する装置として、米国パーキンエルマー社製のIVIS Imaging System(非特許文献1)、オリンパス社製の発光イメージングシステム(非特許文献2)などが知られている。このような装置を用いることで、観察対象において発生する発光現象を観察することができる。
【0003】
しかしながら、このような発光を観察するための専用の機材は高額なため、各研究機関において容易に導入することができないという実情がある。また、発光を観察するためにカメラ機能を有する簡素な機材も存在するが、従来の機材は、顕微鏡に比べて解像度・収差などが劣る、観察箇所を三次元的に位置決めしづらい、迷光の影響を受けやすい、といった問題があった。さらに、上記の様な発光観察装置を用いても、観察対象の生物発光と、励起光による明瞭な蛍光画像とをシームレスに切り替えて表示することは困難であるという問題もあった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】住商ファーマインターナショナル株式会社、「IVIS Imaging System」、[online]、[平成30年2月7日検索]、インターネット〈URL:http://www.summitpharma.co.jp/japanese/service/products/xenogen/index.html〉
【文献】オリンパス株式会社、「LV200 倒立顕微鏡」、[online]、[平成30年2月7日検索]、インターネット〈URL:https://www.olympus-lifescience.com/ja/microscopes/inverted/lv200/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような状況に鑑み、被観察物の蛍光画像と発光画像とを容易に切り替えて観察できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係る顕微鏡システムは、前記被観察物に対して配置される対物レンズを備える観察光学系と、前記被観察物にレーザー光を照射する光源と、前記レーザー光を所定面内で走査させる走査手段と、を有する顕微鏡システムであって、前記観察光学系は、前記レーザー光が照射されることによって励起された前記被観察物の蛍光を感知する第1の像取得手段を備える第1の画像取得経路と、前記対物レンズから前記観察光学系に入光した光を増幅する光増幅手段、及び該光増幅手段よって増幅された光を感知する第2の像取得手段を備える第2の画像取得経路と、前記対物レンズから前記観察光学系に入光した光の進路を、前記第1の画像取得経路又は前記第2の画像取得経路に切り替える切替手段と、を備え、前記第2の像取得手段は前記被観察物における発光の像を取得することを特徴とする。
【0007】
このような構成によって、落射照明により被観察物の蛍光画像を取得する一般的なレーザー顕微鏡に、被観察物の発光の像を取得する機能を付加することが可能になる。即ち、顕微鏡の特性により、観察する箇所を三次元的に規定しやすく、これによって定量性に優
れた発光の観察が可能になる。また蛍光画像と、発光画像を切り替え可能に取得できるため、シームレスに蛍光画像と発光画像とを見比べることができる。
【0008】
また、前記観察光学系は、取得する像の倍率を変更する倍率変更手段を備えており、前記倍率変更手段は、前記第1の像取得経路により前記被観察物の狭視野高倍率のミクロ画像を取得する第1の状態と、前記第2の像取得経路により前記被観察物の広視野低倍率のマクロ画像を取得する第2の状態とを切り替えることによって、前記倍率を変更してもよい。なお、以下では、ミクロ画像を取得することをミクロ観察、マクロ画像を取得することをマクロ観察ともいう。
【0009】
このような構成であると、発光についてマクロ観察により効率よく光をあつめられるため、時間解像度をあげてリアルタイムの観察を行うことが可能になる。
【0010】
また、前記第1の状態においては、前記第1の像取得手段は前記被観察物の実像を取得し、前記第2の状態においては、前記第2の像取得手段は前記被観察物の虚像を取得したうえで実像化する、ようにしてもよい。
【0011】
また、前記光増幅手段はイメージインテンシファイアであってもよい。このような構成であれば、微弱な発光であっても感知可能に増感することができるため、感光(画像取得)に要する時間を短縮することができる。
【0012】
また、前記第2の像取得手段は、CMOSイメージセンサであってもよい。このような構成によって、安価に第2の像取得手段を構成することができるため、コストの面で好ましい。
【0013】
また、前記顕微鏡システムは、前記第1の像取得手段が取得した蛍光画像及び、前記第2の像取得手段が取得した発光画像を記録する記録手段と、前記記録手段に記録された蛍光画像及び発光画像を合成した画像を生成する画像処理手段と、をさらに有していてもよい。
【0014】
このような構成であれば、蛍光画像と発光画像を合成した画像を生成し、被観察物において発光が生じている箇所を蛍光画像上で確認することが可能になる。
【0015】
また、前記第2の像取得手段は、前記被観察物が可視光を反射した像を取得し、前記記録手段は、前記第2の像取得手段が取得した可視光反射画像を記録し、前記画像処理手段は、前記記録手段に記録された可視光反射画像と、前記発光画像及び/又は前記蛍光画像を合成した画像を生成してもよい。
【0016】
このような構成であれば、可視光により取得された被観察物の画像に、発光画像及び/又は蛍光画像を合成することができ、被観察物の多様な光学的観察が可能になる。
【0017】
また、上記の課題を解決するため、本発明に係る光学モジュールは、イメージインテンシファイア及び撮像素子を備え、共焦点顕微鏡又は多光子顕微鏡に組み付けられることによって、前記共焦点顕微鏡又は前記多光子顕微鏡に、被観察対象物の発光の像を取得する新たな画像取得経路を付加する。また、前記新たな画像取得経路は、前記被観察物の広視野低倍率のマクロ画像を取得する経路であってもよい。
【0018】
このような構成によると、既にある共焦点顕微鏡又は多光子顕微鏡のサイドポートに、光学モジュールをアドオンすることで、被観察物の発光の像を取得する機能を付加することができるため、新たな装置を導入するよりも低いコストで、被観察物の発光画像と蛍光
画像を切り替え可能に取得できる装置を導入することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被観察物の蛍光画像と発光画像とを容易に切り替えて観察できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、は実施例1に係る顕微鏡システムの概要を表す概略図である。
図2図2Aは、実施例1に係る顕微鏡システムで取得される蛍光画像を示す図である。図2Bは、実施例1に係る顕微鏡システムで取得される発光画像を示す図である。図2Cは、実施例1に係る顕微鏡システムで生成される合成画像を示す図である。
図3図3Aは、変形例に係る顕微鏡システムで取得される可視光反射画像を示す図である。図3Bは、変形例に係る顕微鏡システムで生成される合成画像を示す図である。
図4図4は、実施例2に係る顕微鏡システムの概要を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照しながら、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
<実施例1>
(システム構成)
図1は本実施例に係る顕微鏡システム1の主要な構成を表す概略図である。図1に示すように、本実施例に係る顕微鏡システム1は光学系及び被観察物Tを載置するステージ等を含む顕微鏡筐体10と、制御端末20とから構成されている。制御端末20は、図示しないがCPU(プロセッサ)、主記憶装置(メモリ)、補助記憶装置(ハードディスクなど)、入力装置(キーボード、マウス、コントローラ、タッチパネルなど)、出力装置(ディスプレイ、プリンタ、スピーカなど)などを具備する汎用的なコンピュータシステムにより構成される。なお、図中の破線矢印は光の経路を示している。
【0023】
顕微鏡筐体10は、概略、レーザー光源111、XY走査機構112(例えば、ガルバノミラー)、ビームスプリッター113、対物レンズ121(例えば液浸系対物レンズ)、光路切替機構122、ピンホール123、フォトマルチプライヤー124、イメージインテンシファイア131、CMOSイメージセンサ132、ステージ141、ステージ駆動機構142(例えばモーター)、及び図示しない各種のリレーレンズを備えている。また、顕微鏡筐体10は、外部からの光を遮光可能なように、ステージ141及び対物レンズ121周辺を覆う開閉式のカバー(図示しない)を備えている。
なお、本実施例においては、ステージ141に載置される被観察物Tは、生体試料であるとして以下の説明を行う。
【0024】
上記構成において、対物レンズ121から観察光学系に入光した光がピンホール123、フォトマルチプライヤー124へと向かう経路を、第1の画像取得経路とし、観察光学系に入光した光がイメージインテンシファイア131、CMOSイメージセンサ132へと向かう経路を第2の画像取得経路とする。そして、例えばフリップミラーなどで構成される光路切替機構122によって、観察光学系に入光した光の経路が、第1の画像取得経路と第2の画像取得経路とに切り替えられる。
【0025】
また、顕微鏡筐体10と制御端末20とは電気的に接続されており、例えばフォトマル
チプライヤー124及びCMOSイメージセンサ132が感知した光は電気的な信号として出力され、制御端末20のディスプレイに画像が表示される。また、制御端末20の入力装置を操作することによりステージ駆動機構142を介してステージを任意の位置に移動させることもできる。
【0026】
(被観察物Tの画像の取得)
次に、本実施例に係る顕微鏡システム1を用いて、被観察物Tの画像を取得する流れについて、光の経路を中心に説明する。
【0027】
本実施例に係る顕微鏡システム1によって、被観察物Tの蛍光画像を得る場合を説明すると、レーザー光源111から射出されたレーザー光は、XY走査機構112で偏向され、ビームスプリッター113を経て、対物レンズ121を介して被観察物T上で走査される。なお、この際、走査と同時に被観察物Tと対物レンズ121とは相対的に上下に移動される。そして、被観察物Tによって反射・散乱したレーザー光(励起光)と、レーザー光によって励起された蛍光が対物レンズ121へと入光し、ビームスプリッター113、ピンホール123によって焦点の合った蛍光のみがフォトマルチプライヤー124へと導かれて感知される。この際、光路切替機構122は対物レンズ121から観察光学系に入光した光が第1の画像取得経路へと向かうように光の経路を構成している。
【0028】
上記のようにして、フォトマルチプライヤー124で感知された光は電気信号として出力され、制御端末20で画像処理された上で、被観察物Tの蛍光画像としてディスプレイ装置に表示され、及び/又は、記録媒体に記録される。画像処理は、例えば、画像上の画素ごとに最も明るくなった輝度値を合成することで、立体的形状を有する被観察物Tのすべての高さ位置に焦点のあった画像を得るようにすればよい。
【0029】
一方、本実施例に係る顕微鏡システム1によって、レーザー光などの照明光が照射されていない状態で被観察物Tの像を得る場合を説明する。この場合、光路切替機構122は観察光学系に入光した光が第2の画像取得経路へと向かうように、光の経路を構成している。ここで、被観察物Tにおいて生物発光(化学発光)が生じた場合、当該光は対物レンズ121から観察光学系へと入光し、第2の画像取得経路へと向かう。発光による光は非常に微弱であるものの、イメージインテンシファイア131によって増幅されることによって、CMOSイメージセンサ132で感知される。
【0030】
このようにして、CMOSイメージセンサ132で感知された光は電気信号として出力され、被観察物Tの発光画像として制御端末20でディスプレイ装置に表示され、及び/又は、記録媒体に記録される。
【0031】
上記において、フォトマルチプライヤー124によって取得される画像は狭視野高倍率のミクロ画像であり、CMOSイメージセンサ132によって取得される画像は、広視野低倍率のマクロ画像であり、取得される被観察物Tの像の倍率は異なるものとなる。即ち、本実施例においては、光路切替機構122が、本発明における倍率変更手段を兼ねる構成となっている。また、フォトマルチプライヤー124は被観察物Tの実像を取得し、CMOSイメージセンサ132は被観察物Tの(発光)像の虚像を取得したうえで実像化するようになっている。なお、CMOSイメージセンサ132が取得する像は必ずしも虚像である必要は無く、マクロ観察が可能であれば実像を取得するのであってもよい。
【0032】
なお、近年、低倍率かつ高開口数の顕微鏡レンズの開発が進んでおり、対物レンズ121としてこのようなものを用いれば、顕微鏡光学系の最新技術を有効活用して、より鮮明な観察画像を得る事ができる。
【0033】
(画像合成処理)
次に、図2に基づいて、本実施例に係る顕微鏡システム1で取得した蛍光画像と発光画像を合成する処理について説明する。図2Aは上記の様にして取得された被観察物Tの蛍光画像の一例を示し、図2Bは同様に被観察物Tの発光画像の一例を示している。これらの画像は記録媒体に記録されており、制御端末20における画像処理によって、蛍光画像と発光画像が合成された画像が生成される。図2Cは合成された画像の一例を示している。
【0034】
上記のような構成の顕微鏡システムによって、生体試料の蛍光画像と発光画像とを容易に切り替えて観察でき、これらの画像を合成した画像を生成することで、生体試料の光学的観察を効率的に行うことが可能になる。
【0035】
特に、生体試料を観察する場合において、被観察物からの発光を検出できれば、当該発光箇所が特に着目すべき箇所であるということを認識することができる。このため、より鮮明に被観察物の像を取得することができる蛍光画像において、発光を検出した箇所を詳細に観察することができ、生体試料の観察効率を向上させることができる。また、蛍光画像として観察可能であるのみならず、レーザー顕微鏡としての機能により三次元スキャンが可能であるため、発光箇所の鮮明な像を得る事ができる。
【0036】
また、画像の合成は、上記のように画像の倍率を合わせて重畳させるもののみに限らず、複数の異なる取得画像を、一目で観察できるように組み合わせるものであってもよい。
【0037】
以上述べたような本実施例の構成によると、観察箇所の三次元的な位置決めを容易に行うことができ、従来の発光観察装置に比べて、定量性に優れた発光の観察が可能になる。また、カメラがベースとなっている従来の発光観察装置に比べて、優れた信号品質を得る事ができ、優れた時間解像度を得る事ができる。このことは、特に生体試料の観察を行う場合には大きな利点となる。
【0038】
(変形例)
なお、上記実施例1に係る顕微鏡システム1は、可視光の反射による被観察物Tの像も取得可能に構成されていてもよい。例えば、顕微鏡システム1は、被観察物Tに白色光を照射する照明光学系を備え、対物レンズ121から観察光学系に入光した当該白色光の反射光をCMOSイメージセンサ132によって感知するようにすればよい。そして、CMOSイメージセンサ132で感知された光は電気信号として出力され、被観察物Tの可視光反射画像として制御端末20でディスプレイ装置に表示され、及び/又は、記録媒体に記録される。図3Aにこのようにして得られた被観察物Tの可視光反射画像の一例を示す。
【0039】
さらに、上記のようにして得られた可視光反射画像は、制御端末20における画像処理によって、蛍光画像及び/又は発光画像と合成できるようになっていてもよい。図3Bに、被観察物Tの蛍光画像、発光画像、可視光反射画像が合成された画像の一例を示す。
【0040】
このような変形例の構成によると、可視光で認識される被観察物の画像と、蛍光画像及び/又は発光画像を合成することができ、多様な方法により生体試料の光学的観察を行うことができる。
【0041】
(変形例2)
上記の各例で、画像処理で行う画像の重畳的な合成は、取得した画像の倍率が同一になるようにデータ処理を行うようにしてもよいが、画像の倍率をデータの処理で合わせるのではなく、光学的に合わせるようにしてもよい。また、光学的に倍率が近い像を取得した
うえで、データ処理により倍率を合わせるようにしてもよい。
【0042】
具体的には、第2の画像取得経路は、取得する像の倍率を変動させる光学系を備える構成とする。例えば、第2の画像取得経路は、結像点を光軸方向に複数有するように構成されており、該複数の結像点における像のいずれをCMOSイメージセンサ132によって取得するかを切替え可能に選択する機構を備える。即ち、第2の画像取得経路に、発光像をミクロ観察とマクロ観察とを切替え可能に取得する倍率変更手段をさらに備える(倍率変更手段が複数である)構成である。このような構成によって、複数の結像点で結像される像の中から合成に適した倍率(大きさ)の像を取得することで、マクロ観察とミクロ観察とを切替え、合成画像を生成することができる。
【0043】
<実施例2>
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例においては、既存の顕微鏡に、光増幅手段と固体撮像素子を組み合わせた光学モジュールを取り付けることにより、当該顕微鏡の機能を強化する例について説明する。
【0044】
上述の実施例で示したように、顕微鏡筐体内に第1の画像取得経路及び第2の画像取得経路を設ける態様において、本発明の効果を発揮することが可能である。これに加え、多くの光学顕微鏡や特殊顕微鏡などに、別体としての光学モジュールをアドオンすることで、既存の顕微鏡の機能の強化することが可能となる。
【0045】
例えば共焦点顕微鏡又は多光子顕微鏡等のレーザー顕微鏡の多くには、記録用カメラポートが具備されており、上記のような光学モジュールを記録用カメラポートにマウントアダプタを用いて取り付けることにより、マクロ観察により被観察物Tの発光の像を取得して、必要な観察部分、測定部分を特定し、そのうえで、ミクロ観察により微細観察、状態把握を行うといった使い方が可能となる。顕微鏡側のカメラポートには、通常F、Cマウントアダプタが設置されているので、光学モジュールにいずれかのアダプタに合致するマウントをとりつけるだけで上述した効果を発揮することができる。さらに、このマウントに目盛板、比較チャート、方眼ラインなどの各種レクチルをとりつけることで比較測定や寸法測定を含む観察を容易に行うことが可能となる。さらに、マウントには、蛍光、赤外、コントラストなどのフィルタを取り付けることで、より多用途で簡便な観察が可能となる。
【0046】
図4には、このような例として、本発明に係る光学モジュール35を二光子顕微鏡に取り付けた場合の構成例を図示する。本実施例に係る顕微鏡システム3は顕微鏡筐体30と、制御端末39とから構成されている。制御端末39は、図示しないがCPU(プロセッサ)、主記憶装置(メモリ)、補助記憶装置(ハードディスクなど)、入力装置(キーボード、マウス、コントローラ、タッチパネルなど)、出力装置(ディスプレイ、プリンタ、スピーカなど)などを具備する汎用的なコンピュータシステムにより構成される。なお、図中の破線矢印は光の経路を示している。
【0047】
顕微鏡筐体30は、概略、光源であるフェムト秒レーザー311、ガルバノミラー312、ビームスプリッター313、対物レンズ321、光路切替機構322、フィルタ323、フォトマルチプライヤー324、ステージ341、ステージ駆動機構342(例えばモーター)、及び図示しない各種のレンズを備えている。また、顕微鏡筐体30は、外部からの光を遮光可能なように、開閉式のカバー(図示しない)を備えている。
【0048】
また、顕微鏡筐体30はカメラポートを有しており、該カメラポートに取り付けられたマウントアダプタ351を介して、本発明係る光学モジュール35が、顕微鏡筐体に接続される。光学モジュール35は、イメージインテンシファイアなどの光増幅器354、及
びCMOSイメージセンサなどの固体撮像素子355を備えており、制御端末39と電気的に接続される。
【0049】
フェムト秒レーザー311から照射されたパルス光は、ガルバノミラー312にて方向を制御され、対物レンズ321によって被観察物Tの目的箇所に集光される。そして、二光子励起過程で生じ、被観察物Tから放射された略1/2波長の放射光は、対物レンズ321、ビームスプリッター313、蛍光フィルタ等のフィルタ323を通過した後、フォトマルチプライヤー324で検出される。
【0050】
一方、レーザー光などの照明光が照射されていない状態では、光路切替機構322は観察光学系に入光した光が、第2の画像取得経路へと向かうように、光の経路を構成している。ここで、被観察物Tにおいて生物発光(化学発光)が生じた場合、当該光は対物レンズ321から観察光学系へと入光し、顕微鏡筐体30のカメラポートに取り付けられたマウントアダプタ351及び、フィルタ等352、マウント353を介して、本発明に係る光学モジュール35に入射される。発光による光は非常に微弱であるものの、光増幅器354によって増幅されることによって、固体撮像素子355で感知される。
【0051】
このような構成においては、フィルタ等352として、蛍光フィルタを取り付けることにより顕微鏡筐体30のフォトマルチプライヤー324による観察と併用し、2画面または多種倍率観察を行うことが可能となる。また、フィルタ等352として赤外線検知フィルタを取り付けることで熱分布観察が可能となり、顕微鏡筐体30による可視光観察と比較、測定などが可能となる。つまり、より超微細な観察を行う光学顕微鏡において観察部位の特定を容易に行う機能に加え、多種類の観察顕微鏡や倍率顕微鏡を構成することが可能となる。
【0052】
また、光学モジュール35は、その内部に結像点を光軸方向に複数有するような光学系(各種レンズ)を備えており、該複数の結像点における像のいずれを固体撮像素子355によって取得するかを切替え可能に選択できるようにしてもよい。即ち、光学モジュール35は、マクロ観察とミクロ観察とを切替え可能な構成であってもよい。
【0053】
上記のような本実施例の構成によると、比較的廉価で流通している一般的な生物用顕微鏡に発光観察用のモジュールをアドオンすることで、容易に観察対象の発光を観察する事ができる。従来の発光観察のための機材は非常に高価なものであり、これに蛍光画像を観察する機能を加えると、さらに価格が高くなってしまっていた。これに比べ、本実施例の顕微鏡システムでは、広く普及している既存の蛍光観察用の顕微鏡に発光モジュールをアドオンするだけでよいので、低コストで、蛍光検出性能に優れた発光観察手段を得る事ができる。
【0054】
<その他>
なお、上記の実施例は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な態様には限定されない。本発明は、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、イメージインテンシファイアと組み合わせる固体撮像素子について、上記のCMOSイメージセンサの代わりに、CCDイメージセンサなどの他の撮像素子を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1・・・顕微鏡システム
10・・・顕微鏡筐体
20・・・制御端末
111・・・レーザー光源
112・・・XY走査機構
113・・・ビームスプリッター
121・・・対物レンズ
122・・・光路切替機構
123・・・ピンホール
124・・・フォトマルチプライヤー
131・・・イメージインテンシファイア
132・・・CMOSイメージセンサ
141・・・ステージ
142・・・ステージ駆動機構
図1
図2
図3
図4