(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】プリント回路基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 Q
(21)【出願番号】P 2022207605
(22)【出願日】2022-12-23
(62)【分割の表示】P 2018113223の分割
【原出願日】2018-06-14
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】10-2017-0136879
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミン、タエ-ホン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュ-ホ
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-122790(JP,A)
【文献】特開2016-81961(JP,A)
【文献】特開2013-214578(JP,A)
【文献】特開平7-307575(JP,A)
【文献】特開2001-68858(JP,A)
【文献】特開平6-291521(JP,A)
【文献】特開2007-194516(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0176348(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁部と、
前記第1絶縁部上に配置され、キャビティを有する第2絶縁部と、
前記キャビティに配置され、複数の第3絶縁層を含む連結構造体と、を含み、
前記複数の第3絶縁層のうち少なくとも一層の誘電正接は、前記第2絶縁部の誘電正接よりも小さい、プリント回路基板。
【請求項2】
前記第1絶縁部上に又は内にそれぞれ配置される複数の第1配線層と、
前記第1絶縁部内にそれぞれ配置される1つ以上の第1ビアと、
前記第2絶縁部上に又は内にそれぞれ配置される複数の第2配線層と、
前記第2絶縁部内にそれぞれ配置される1つ以上の第2ビアと、をさらに含む、請求項1に記載のプリント回路基板。
【請求項3】
前記複数の第1配線層の少なくとも一部は、前記キャビティに露出する、請求項2に記載のプリント回路基板。
【請求項4】
前記第1絶縁部は、複数の第1絶縁層を含み、
前記複数の第3絶縁層のうち少なくとも一層の誘電正接は、前記複数の第1絶縁層のそれぞれの誘電正接よりも小さい、請求項1に記載のプリント回路基板。
【請求項5】
前記第2絶縁部は、複数の第2絶縁層を含み、
前記複数の第3絶縁層のうち少なくとも一層の誘電正接は、前記複数の第2絶縁層のそれぞれの誘電正接よりも小さい、請求項1に記載のプリント回路基板。
【請求項6】
前記第1絶縁部と前記連結構造体との間に配置される接着層をさらに含む、請求項1に記載のプリント回路基板。
【請求項7】
前記接着層の厚さは、前記複数の第3絶縁層のうち少なくとも一層の厚さよりも薄い、請求項6に記載のプリント回路基板。
【請求項8】
前記連結構造体は、前記複数の第3絶縁層上に又は内にそれぞれ配置される複数の第3配線層をさらに含む、請求項2に記載のプリント回路基板。
【請求項9】
前記第2絶縁部及び前記連結構造体上に配置される第1素子と、
前記第2絶縁部及び前記連結構造体上に配置される第2素子と、をさらに含む、請求項8に記載のプリント回路基板。
【請求項10】
前記第1素子及び前記第2素子は、前記複数の第3配線層によって互いに電気的に連結され、
前記第1素子及び前記第2素子は、それぞれ前記複数の第2配線層と電気的に連結される、請求項9に記載のプリント回路基板。
【請求項11】
前記第1素子と連結される前記複数の第2配線層の伝送速度は、前記第1素子及び前記第2素子を連結する前記複数の第3配線層の伝送速度よりも小さい、請求項10に記載のプリント回路基板。
【請求項12】
前記第2素子と連結される前記複数の第2配線層の伝送速度は、前記第1素子及び前記第2素子を互いに連結する前記複数の第3配線層の伝送速度よりも小さい、請求項11に記載のプリント回路基板。
【請求項13】
前記第1絶縁部と前記連結構造体との間に配置される接着層をさらに含み、
前記第1絶縁部及び前記第2絶縁部は、それぞれ複数の第1絶縁層及び複数の第2絶縁層を含み、
前記複数の第3絶縁層のうち少なくとも一層の誘電正接は、前記複数の第1絶縁層のそれぞれの誘電正接、前記複数の第2絶縁層のそれぞれの誘電正接、及び前記接着層の誘電正接よりも小さい、請求項1に記載のプリント回路基板。
【請求項14】
前記第1絶縁部と前記連結構造体との間に配置される接着層をさらに含み、
前記第1絶縁部及び前記第2絶縁部は、それぞれ複数の第1絶縁層及び複数の第2絶縁層を含み、
前記複数の第3絶縁層のうち少なくとも一層の誘電損失は、前記複数の第1絶縁層のそれぞれの誘電損失、前記複数の第2絶縁層のそれぞれの誘電損失、及び前記接着層の誘電損失よりも小さい、請求項1に記載のプリント回路基板。
【請求項15】
第1絶縁部及び前記第1絶縁部上に配置され、キャビティを有する第2絶縁部を含む基板と、
前記キャビティに配置され、第3絶縁層及び第3絶縁層に埋め込まれ、一面が第3絶縁層の一面に露出する第3配線層を含む連結構造体と、
前記第1絶縁部及び前記連結構造体の間に配置される接着層と、を含み、
前記接着層の厚さは、前記第3絶縁層の厚さよりも薄
く、
前記第1絶縁部は、第1絶縁層を含み、
前記接着層の誘電正接は、前記第1絶縁層の誘電正接よりも小さい、プリント回路基板。
【請求項16】
前記基板は、前記第1絶縁部上に又は内にそれぞれ配置される複数の第1配線層、前記第1絶縁部内にそれぞれ配置される1つ以上の第1ビア、前記第2絶縁部上に又は内にそれぞれ配置される複数の第2配線層、及び前記第2絶縁部内に配置される1つ以上の第2ビアをさらに含む、請求項15に記載のプリント回路基板。
【請求項17】
前記複数の第1配線層の少なくとも一部は、前記キャビティに露出し、
前記接着層は、前記複数の第1配線層の少なくとも一部を覆う、請求項16に記載のプリント回路基板。
【請求項18】
前記第1絶縁部は、複数の
前記第1絶縁層を含み、
前記第2絶縁部は、複数の第2絶縁層を含む、請求項17に記載のプリント回路基板。
【請求項19】
前記基板及び前記連結構造体上に配置される第1素子と、
前記基板及び前記連結構造体上に配置される第2素子と、をさらに含む、請求項18に記載のプリント回路基板。
【請求項20】
前記第1素子及び前記第2素子は、前記第3配線層によって互いに電気的に連結され、
前記第1素子及び前記第2素子は、それぞれ前記複数の第2配線層と電気的に連結される、請求項19に記載のプリント回路基板。
【請求項21】
前記第1素子と連結される前記複数の第2配線層の伝送速度は、前記第1素子及び前記第2素子を互いに連結する前記第3配線層の伝送速度よりも小さい、請求項20に記載のプリント回路基板。
【請求項22】
前記第2素子と連結される前記複数の第2配線層の伝送速度は、前記第1素子及び前記第2素子を互いに連結する前記第3配線層の伝送速度よりも小さい、請求項21に記載のプリント回路基板。
【請求項23】
第1絶縁部を準備する段階と、
前記第1絶縁部上に第2絶縁部を形成する段階と、
前記第2絶縁部の少なくとも一部を貫通するキャビティを形成する段階と、
前記キャビティに複数の第3絶縁層を含む連結構造体を配置する段階と、を含み、
前記複数の第3絶縁層のうち少なくとも一層の誘電正接は、前記第2絶縁部の誘電正接よりも小さい、プリント回路基板の製造方法。
【請求項24】
前記第1絶縁部を準備する段階は、前記第1絶縁部上に又は内に複数の第1配線層を形成する段階、及び前記第1絶縁部内に1つ以上の第1ビアをそれぞれ形成する段階を含み、
前記第1絶縁部上に前記第2絶縁部を形成する段階は、前記第2絶縁部上に又は内に複数の第2配線層を形成する段階、及び前記第2絶縁部内に1つ以上の第2ビアを形成する段階を含む、請求項23に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項25】
前記複数の第1配線層の少なくとも一部は、前記キャビティに露出する、請求項24に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項26】
前記第1絶縁部は、複数の第1絶縁層を含み、
前記複数の第3絶縁層のうち少なくとも一層の誘電正接は、前記複数の第1絶縁層のそれぞれの誘電正接よりも小さい、請求項24に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項27】
前記第2絶縁部は、複数の第2絶縁層を含み、
前記複数の第3絶縁層のうち少なくとも一層の誘電正接は、前記複数の第2絶縁層のそれぞれの誘電正接よりも小さい、請求項24に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項28】
前記キャビティに前記連結構造体を配置する段階は、前記第1絶縁部上に接着層を形成する段階、及び前記接着層上に前記連結構造体を配置する段階で構成される、請求項23に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項29】
前記接着層の厚さは、前記複数の第3絶縁層のうち少なくとも一層の厚さよりも薄い、請求項28に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項30】
前記連結構造体は、前記複数の第3絶縁層上に又は内にそれぞれ配置される複数の第3配線層をさらに含む、請求項24に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項31】
前記第2絶縁部及び前記連結構造体上に第1素子を配置する段階と、
前記第2絶縁部及び前記連結構造体上に第2素子を配置する段階と、をさらに含む、請求項30に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項32】
前記第1素子及び前記第2素子は、前記複数の第3配線層によって互いに電気的に連結され、
前記第1素子及び前記第2素子は、それぞれ前記複数の第2配線層と電気的に連結される、請求項31に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項33】
前記第1素子と連結される前記複数の第2配線層の伝送速度は、前記第1素子及び前記第2素子を連結する前記複数の第3配線層の伝送速度よりも小さい、請求項32に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項34】
前記第2素子と連結される前記複数の第2配線層の伝送速度は、前記第1素子及び前記第2素子を互いに連結する前記複数の第3配線層の伝送速度よりも小さい、請求項33に記載のプリント回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント回路基板(printed circuit board)に関する。
【背景技術】
【0002】
韓国及び日本を含む各国は、世界的に5Gの商用化のための技術開発に全力を注いでいる。5G時代の10GHz以上周波数帯域での安定的な信号伝送のためには、従来の材料及び構造では対応し難いことがある。このため、受信された高周波信号を損失なくメインボードまで伝送するための新たな材料及び構造開発が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0002112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、信号損失を低減したプリント回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面によれば、複数の第1絶縁層で形成され、上側に開放されたキャビティを備えた第1基板と、複数の第2絶縁層で形成され、上記キャビティ内に位置する第2基板と、を含み、上記第2絶縁層の誘電正接は、上記第1絶縁層の誘電正接よりも小さいプリント回路基板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1a】本発明の実施例に係るプリント回路基板が適用された端末機を示す図である。
【
図1b】本発明の実施例に係るプリント回路基板が適用された端末機を示す図である。
【
図2】本発明の一実施例に係るプリント回路基板を示す図である。
【
図3】本発明の他の実施例に係るプリント回路基板を示す図である。
【
図4】本発明の一実施例に係るプリント回路基板の製造方法を示す図である。
【
図6】本発明の他の実施例に係るプリント回路基板の製造方法を説明するための図である。
【
図7】本発明の他の実施例に係るプリント回路基板の製造方法を説明するための図である。
【
図8】本発明の他の実施例に係るプリント回路基板の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に係るプリント回路基板の実施例を添付図面を参照して詳細に説明し、添付図面を参照して説明するに当たって、同一または対応する構成要素には同一の図面符号を付し、これに対する重複説明を省略する。
【0008】
また、以下で使用する「第1」、「第2」等の用語は、同一または対応する構成要素を区別するための識別記号に過ぎず、同一または対応する構成要素が第1、第2等の用語により限定されることはない。
【0009】
また、「結合」とは、各構成要素間の接触関係において、各構成要素が物理的に直接接触する場合のみを意味するものではなく、他の構成が各構成要素の間に介在され、該他の構成に、構成要素がそれぞれ接触している場合まで包括する概念として使用する。
【0010】
図1a及び
図1bは、本発明の実施例に係るプリント回路基板が適用された端末機1を示す図である。
【0011】
図1a及び
図1bを参照すると、電子機器の端末機1にプリント回路基板10が内蔵される。ここで、上記プリント回路基板10は、メインボードであることができる。プリント回路基板10は、第1基板100及び第2基板200で構成されており、第2基板200の誘電損失は、第1基板100の誘電損失よりも小さい。特に、第2基板200を形成する第2絶縁層210の誘電正接は、第1基板100を形成する第1絶縁層110の誘電正接よりも小さい。
【0012】
第1基板100は、メインボードであるプリント回路基板10の大部分を占め、第2基板200は、プリント回路基板10の所定の領域に限って形成される。特にプリント回路基板10には、第1素子300、第2素子400及び第3素子410等を実装することができ、第1素子300は、RF処理部であり、第2素子400は、IF処理部であることができる。第2基板200は、第1素子300と第2素子400とを接続する連結回路500の周辺部に形成されることができる。
【0013】
図1aは、第1素子300及び第2素子400がプリント回路基板10に実装されている状態を示し、
図1bは、第1素子300及び第2素子400がプリント回路基板10に実装される前の状態であって、第1素子300の実装領域300'及び第2素子400の実装領域400'が示されている。
【0014】
図1bを参照すると、第2基板200は、第1素子300と第2素子400とを接続する連結回路500の周辺部に形成される。第1素子300と第2素子400とを接続する連結回路500には、10GHz以上の高周波信号が流れることがある。このため、高周波信号が流れる連結回路500の周辺部に誘電正接の小さい絶縁層を配置することにより信号損失を低減することができ、さらに誘電正接の小さい絶縁層の使用を最小化することによりコスト低減の効果を得ることができる。
【0015】
一方、
図1a及び
図1bでは、便宜上連結回路500が外部に露出するように示されているが、連結回路500は、第2基板200の内部に埋め込まれ、外部に露出されないようにできる。
【0016】
以下に、
図1aから
図3を参照しながら、本発明の実施例に係るプリント回路基板について具体的に説明する。
【0017】
図2は、本発明の一実施例に係るプリント回路基板を示す図である。
【0018】
図2を参照すると、本発明の一実施例に係るプリント回路基板は、第1基板100と、第2基板200とを含む。ここで、第2基板200の誘電損失(Dielectric Loss)は、第1基板100の誘電損失よりも小さい。誘電損失は、誘電体に交流性電界が形成されたときに発生する損失電力を意味する。
【0019】
第1基板100は、複数の第1絶縁層110で形成され、上側に開放されたキャビティCを備える。すなわち、キャビティCは、複数の第1絶縁層110のうちの最上部に位置する2つ以上の層を貫通する。
【0020】
第2基板200は、第1基板100のキャビティCに挿入される。第2基板200は、複数の第2絶縁層210で形成される。
【0021】
第1絶縁層110及び第2絶縁層210は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの様々な樹脂により形成されるが、具体的には、エポキシ樹脂またはポリイミドなどを用いることができる。ここで、エポキシ樹脂には、例えば、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂、クレゾールノボラック系エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、環型脂肪族系エポキシ樹脂、シリコン系エポキシ樹脂、窒素系エポキシ樹脂、リン系エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
第1絶縁層110及び第2絶縁層210は、上記樹脂にガラス繊維(glass cloth)等の繊維補強材が含有されるか、無機フィラー(filler)が充填されたものであることができる。前者の例として、プリプレグ(Prepreg;PPG)が挙げられ、後者の例としては、ABF(Ajinomoto Build-up Film)等のビルドアップフィルム(build up film)が挙げられる。
【0023】
第2絶縁層210の誘電正接(Dielectric dissipation factor、Df)は、第1絶縁層110の誘電正接より小さい。誘電正接は、誘電損失の度合いを表し、誘電正接と誘電損失とは比例する。
【0024】
第2絶縁層210の樹脂は、第1絶縁層110の樹脂と主材料が同じであってもよい。例えば、第1絶縁層110及び第2絶縁層210としては、PPG、ABF、PIを用いることができる。ただし、第2絶縁層210の誘電正接は、約0.003であればよく、これはPPG、ABF、PIに含有されるもの(充填材等)の種類、含量を調整することにより実現できる。
【0025】
第2絶縁層210は、第1絶縁層110とは全く異なる材料で形成してもよく、特に、第2絶縁層210は、誘電正接が0.002~0.0001の値を有するLCP(Liquid Crystal Polymer)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)、PPE(Polyphenylene Ether)、COP(Cyclo Olefin Polymer)、PFA(Perfluoroalkoxy)のうちの少なくとも1種により形成することができる。
【0026】
一方、第2絶縁層210の誘電率(Permittivity)、誘電定数(Dielectric Constant、Dk)は、第1絶縁層110の誘電率、誘電定数よりも小さい。
【0027】
第1基板100を構成する第1絶縁層110は、複数形成されるが、第1基板100に挿入される第2基板200の層数を考慮して、第1絶縁層110は少なくとも3層以上形成されることができる。例えば、プリント回路基板がスマートフォンに内蔵されるメインボードである場合は、第1基板100は、11個の第1絶縁層110で構成されて、回路層を基準にすると12層となることができる。
【0028】
第2基板200は、第1基板100のキャビティC内に挿入される基板である。第2基板200を構成する第2絶縁層210も複数形成される。上述したように、第2基板200の位置、すなわち、第1基板100のキャビティCの位置は、連結回路500の位置により決められる。すなわち、第2基板200は、連結回路500の周辺部に形成される。また、連結回路500の位置は、第1素子300と第2素子400、そして連結ビア510の位置により決められる。これについての具体的な説明は、後述する。
【0029】
第2基板200の厚さは、第1基板100の厚さよりも薄くてもよい。第2基板200の厚さは、第1基板100のキャビティCの厚さと略同一であってもよい。また、キャビティCが貫通する第1絶縁層110の数と、第2基板200を構成する第2絶縁層210の数とは、同一である。すなわち、キャビティCがN個の第1絶縁層110を貫通し、第2基板200がN個の第2絶縁層210で構成されることができる。ここで、第1絶縁層110及び第2絶縁層210のそれぞれの厚さは、実質的に同一であることができる。これにより、第1基板100の上面と第2基板200の上面とは、実質的に同一平面上に位置することができる。
【0030】
プリント回路基板には、第1素子300、第2素子400、第3素子410等が実装される。
【0031】
第1素子300は、アンテナを備え、RF等の高周波信号を処理できる。例えば、第1素子300は、RF処理部であり得る。RF処理部は、アンテナで受信された信号をノイズの除去、大きさの増幅、周波数の下向き変換(down converting)して第2素子400に送信する。反対に、第2素子400から受信された信号を増幅してアンテナに送信することができる。RF処理部は、antenna、amp、mixer、filter等で構成可能である。この第1素子300は、複数であってもよい。
図1a及び
図1bの端末機1では、第1素子が2つ(300、300a)で構成される。
【0032】
第2素子400は、第1素子300に接続され、中間周波数(intermediate frequency)を処理する。第2素子400は、IF処理部であり得る。第2素子400は、第1素子300と信号をやり取りすることができ、第1素子300と第2素子400とがやり取りする信号は、10GHz以上の周波数を有することができ、例えば、約11.2GHzの高周波であり得る。一方、第2素子400が第1素子300から受信する信号はアナログである反面、第2素子400で処理されて第3素子410に送信する信号はデジタル信号である。
【0033】
第1素子300が複数形成されても、第2素子400は1つ形成されることができる。
図1a及び
図1bの端末機1において、第1素子300は2つで構成されているが、第2素子400は1つで構成されている。しかし、本発明が第2素子400の複数形成されることを排除することではない。
【0034】
第3素子410は、第2素子400に接続され、第3素子410は、低周波基底帯域(base band)の信号を処理する。
【0035】
第1素子300は、第1基板100または第2基板200上に実装される。第2素子400も第1基板100または第2基板200上に実装される。第1素子300及び第2素子400は、第1基板100及び第2基板200にかけて実装されることもできる。すなわち、第1素子300及び第2素子400は、第1基板100及び第2基板200のうちの少なくともいずれか1つ上に実装されることができる。
【0036】
一方、第3素子410は、第1基板100に実装され、低周波を処理する第3素子410に接続している回路での信号損失率が大きくないと、第2基板200と無関係に第1基板100に実装されることができる。素子の実装は、第1基板100または第2基板200の最上層に位置している絶縁層に形成されたパッド220'にソルダーボール等の接合剤を介して可能となる。
【0037】
第1素子300と第2素子400とは、連結回路500を介して電気的に接続する。上述したように、連結回路500を介して伝送される信号は、10GHz以上の周波数を有することができる。
【0038】
第1素子300が複数形成される場合は、それぞれの第1素子300が1つの第2素子400に接続されるためのそれぞれの連結回路500が必要であるので、連結回路500を複数形成することができる。一方、1つの第1素子300と1つの第2素子400とを接続する連結回路500は複数であってもよい。このように連結回路500が複数である場合は、連結回路500間に互いに重ならないように、第2基板200の同一層または他の層に形成されることができる。
【0039】
また、第1素子300及び第2素子400は、連結回路500と連結ビア510を介して接続する。連結ビア510は、第1基板100または第2基板200を貫通して形成されることができる。各素子と連結回路500とを接続する連結ビア510は、複数であってもよい。
【0040】
連結回路500の少なくとも一部は、第2基板200内に形成される。第2絶縁層210は、連結回路500の少なくとも一部を覆うように形成される。例えば、2つの第2絶縁層210の間に、連結回路500の少なくとも一部が位置することができる。
【0041】
ここで「一部」とは、1つの連結回路500においての所定の面積を意味するか、複数の連結回路500のうちの選択された1つ(またはいくつか)の連結回路500を意味することができる。また、前者と後者の両方を意味する場合もある。
【0042】
すなわち、「連結回路500の少なくとも一部は、第2基板200内に形成される」とは、1つの第1素子300と第2素子400とを接続する1つの連結回路500の一部または全部が第2基板200内に形成されるとの意味であり得る。
【0043】
または、「連結回路500の少なくとも一部は、第2基板200内に形成される」とは、連結回路500が複数形成され、複数の連結回路500のうちの選択された1つ以上の連結回路500が第2基板200内に形成されるとの意味であり得る。または、上記2つの意味をすべて包括することもできる。
【0044】
一方、連結回路500の第2基板200内に形成されない部分や、複数の連結回路500のうちの第2基板200内に形成されないものは、第1基板100内に位置する。
【0045】
以下、(1)1つの連結回路500の全領域が第2基板200内に形成される場合、(2)1つの連結回路500のうちの一部領域のみが第2基板200内に形成される場合、(3)複数の連結回路500のうちの選択されたいくつかが第2基板200内に形成される場合を分けて説明する。しかし、本発明がこれらの場合に限定されることはない。
【0046】
(1)の場合であって、先ず連結回路500が単数である場合について説明する。すなわち、第1素子300及び第2素子400が両方とも1つずつ形成された場合について先に説明する。しかし、第1素子300が複数である場合にも説明は同様に適用可能である。
【0047】
プリント回路基板に第1素子300及び第2素子400が実装され、第1素子300及び第2素子400が、'第2基板200'内に形成された連結ビア510を介して連結回路500に接続する場合、連結回路500は、第2基板200の第2絶縁層210により覆われて、連結回路500の全領域が第2基板200内に位置する。
【0048】
言い換えれば、第1基板100のキャビティCが、連結ビア510領域及び連結回路500領域のすべてを含むように形成され、これにより、第2基板200も連結ビア510領域及び連結回路500領域のすべてをカバーするように形成される。これは、
図1bにより理解することができる。ただし、
図1bには、第1素子300及び第2素子400のそれぞれに連結ビア510が1つずつ示されているが、第1素子300及び第2素子400の各連結ビア510は、複数形成されることが可能である。
【0049】
若し、第1素子300が複数である場合は、第2基板200も複数形成され、1つの第2基板200が1つの連結回路500を含むことができる。
【0050】
(2)の場合であって、先ず第1素子300及び第2素子400が1つずつ形成された場合について説明するが、第1素子300が複数である場合も同様である。
【0051】
図面には示されていないが、第1素子300と連結回路500とを接続する連結ビア510が'第1基板100'を貫通する場合、第2基板200は連結回路500の周辺に形成されて、連結ビア510の周辺には形成されないことにより、連結回路500の一部の領域は第2基板200領域から外れることがある。ただし、この場合にも、連結回路500の大部分の領域が第2基板200内に位置するので、信号損失低減効果の一部を発揮できる。
【0052】
第2素子400と連結回路500とを接続する連結ビア510が第1基板100を貫通する場合にも同様であり、各素子と連結回路500とを接続する複数の連結ビア510のうちの少なくとも1つが第1基板100を貫通する場合にも同様である。
【0053】
(3)の場合は、連結回路500が複数形成されることを前提とし、これは、例えば第1素子300が複数形成される場合であって、
図1a及び
図1bを参照して説明することができる。
【0054】
図1a及び
図1bには、プリント回路基板に2つの第1素子300が実装されており、各第1素子300と第2素子400とを接続する連結回路500も2つである。ただし、第2基板200は1つの連結回路500の周辺部にのみ形成される。その他の連結回路500は、第1基板100内に形成されている。
【0055】
複数の連結回路500のうち、所定の長さ以上に形成される連結回路500のみが第2基板200内に形成され得る。連結回路500の長さは、第1素子300と第2素子400との間の距離に応じて決められる。連結回路500の長さが長くなるほど、当該連結回路500を介して伝送される信号の損失率が大きくなるので、連結回路500の長さが所定の長さ以上である場合に限って、その周辺部に第2基板200を配置することにより、コスト低減を図ることができる。
【0056】
ここで、'所定の長さ'とは、使用者により変更可能であり、回路長さによる信号損失率を考慮して設定することができる。
【0057】
図1a及び
図1bには、2つの連結回路500、500'のうちの1つの連結回路500の長さが、その他の500'の長さよりも長い。これは、1つの第1素子300が他の1つ300aよりも第2素子400から遠く離れているからである。このため、長さの長い連結回路500のみが第2基板200内に含まれ、長さの短い連結回路500'は第1基板100内に含まれている。勿論、長さの長い連結回路500は、上述した'所定の長さ'以上に形成されたものである。また、長さの短い連結回路500'は、'所定の長さ'未満に形成されたものである。言い換えれば、第2基板200が所定の長さよりも長い連結回路500の周辺部に対してのみ位置する。
【0058】
第1基板100は、第1回路120を含むことができる。第1回路120は、複数の第1絶縁層110の各層に形成されることができる。互いに異なる層に形成されている第1回路120の間には、第1ビア130が形成されて、層間接続を可能とする。
【0059】
第1回路120は、連結回路500に接続しなくてもよいが、回路設計によって第1回路120が連結回路500に接続してもよい。
【0060】
一方、第1回路120'の一部は、キャビティCを介して露出され、キャビティC内に第2基板200が挿入されたとき、第2絶縁層210と接触することができる。
【0061】
第2基板200は、第2回路220を含むことができる。第2回路220は、複数の第2絶縁層210の各層に形成されることができる。互いに異なる層に形成されている第2回路220の間には、第2ビア230が形成されて、層間接続を可能とする。また、最上部に位置した第2回路の一部は、パッド220'となる。
【0062】
第2回路220は、連結回路500に接続しなくてもよいが、回路設計によって第2回路220が連結回路500に接続してもよい。
図2及び
図3には、第2ビア230が連結回路500に接続せず、点線に示されている。
【0063】
第1回路120と第2回路220とは互いに接続することができる。第1回路120と第2回路220とは、第2基板200を貫通する第2ビア230を介して接続することができる。
【0064】
一方、本発明の一実施例に係るプリント回路基板は、ソルダーレジスト層600をさらに含むことができ、ソルダーレジスト層600は、第1基板100の上面及び第2基板200の上面に形成される。ソルダーレジスト層600は、第1基板100と第2基板200にかけて形成されることができる。
【0065】
図3は、本発明の他の実施例に係るプリント回路基板を示す図である。
【0066】
図3を参照すると、本発明の他の実施例に係るプリント回路基板は、
図2を参照して説明した本発明の一実施例に係るプリント回路基板と類似であり、ただし、接着層Aをさらに含む。
【0067】
接着層Aは、第1基板100と第2基板200との間に介在されることができる。接着層Aの厚さは、第2絶縁層210の1つの厚さよりも極めて薄くて、第2基板200の全厚さに影響を及ぼさないようにできる。接着層Aの誘電正接は、第1絶縁層110の誘電正接よりも小さいことにより、接着層Aが第2基板200の誘電損失に影響を及ぼさないようにできる。接着層Aの誘電正接は、第2絶縁層210の誘電正接と類似であってもよい。
【0068】
第1基板100の第1回路120のうち、キャビティCの底面に位置する第1回路120'は、接着層Aを貫通してもよい。
【0069】
その他の説明は、本発明の一実施例に係るプリント回路基板と同様であり、省略する。
【0070】
図4は、本発明の一実施例に係るプリント回路基板の製造方法を示し、
図5は、
図4の一部、特に
図4の(i)を示す図である。
【0071】
本発明の一実施例に係るプリント回路基板の製造方法では、コアを用いた両面積層方式により第1基板100を製造し、第1基板100を順次製造するとともに第2基板200を順次製造する。
【0072】
具体的に、
図4を参照すると、(a)~(h)に示すように、第1基板100の一部を両面積層方式により製造する。特に、金属箔Mが第1絶縁層110の両面に積層されている原資材を用いて、テンティング(tenting)方式により第1回路120及び第1ビア130を形成する。テンティング方式により第1回路120を形成するとき、第1回路120の領域に対応するエッチングレジストRを用いることができる。しかし、第1回路120及び第1ビア130は、テンティング以外の他の方式により形成することも可能である。
【0073】
本実施例では、プリント回路基板の第1基板100が総9個の第1絶縁層110で構成され、第2基板200は、2つの第2絶縁層200で構成されて、回路層基準にして10層のプリント回路基板となる。
【0074】
先ず5個の第1絶縁層110により第1基板100を製造し(図(h))、その後、第2基板200を構成する第2絶縁層210を積層する(図(i))。以後に、両面積層方式を適用して一部製造された第1基板100の下部に一般の第1絶縁層110を積層し、上部には第2絶縁層210に対応するホールを備えた第1絶縁層110を積層する(図(j))。第1回路120、第2回路220、連結回路500を同時に形成し(図(k))、同じ方式により第1絶縁層110と第2絶縁層210とを再度積層する(図(l))。その後、必要によって、第1回路120、第2回路220、第1ビア130、第2ビア230を連結ビア510とともに形成する(図(m))。最後に第1基板100及び第2基板200にソルダーレジスト層600を積層し、最も上部にある第1回路120または第2回路220の一部は、素子を実装するためのパッド220'となるように露出させる(図(m))。
【0075】
図5には、一部が製造された第1基板100上に第2絶縁層210を積層する転写方式が示されている。ロール形態の転写紙Pの下面には、第2絶縁層210が離型層などにより臨時付着されており、転写紙Pが、一部製造された第1基板100と接触した状態で回転しながら移動し、離型層が分離されることにより、第2絶縁層210を第1基板100上に積層することができる。この転写紙Pは、屈曲可能なPI、PETなどの素材で形成可能である。
【0076】
工程の効率のために転写を含むプリント回路基板の製造は、ストリップ(strip) 単位に実施され、最終的にユニット毎に分離されることができる。
【0077】
図6から
図8は、本発明の他の実施例に係るプリント回路基板の製造方法を示す図である。
【0078】
本発明の他の実施例に係るプリント回路基板の製造方法では、第1基板100と第2基板200を別途の過程により別に製造した後に、第1基板100のキャビティC内に第2基板200を挿入する方式を採用する。
【0079】
【0080】
第2絶縁層210の両面に金属箔Mが積層されている原資材に、連結回路500、連結ビア510、及び第2回路220と第2ビア(図示せず)をテンティング等の方式により形成する(図(a)~(g))。第2絶縁層210をさらに1層積層し、必要によって接着層Aを第2基板200の下部に形成する。このように製造された第2基板200は、転写紙Pの下面に離型層を用いて臨時付着することができる。
【0081】
【0082】
第1絶縁層110の両面に金属箔Mが積層されている原資材に、エッチングレジストRを用いるテンティング等の方式により第1回路120及び第1ビア130を形成する。この工程は、所望する層数になるまで繰り返すことができる(図(a)~(g))。これは
図4を参照して説明したプリント回路基板の製造方法と同様である。その後に、ホールの形成された第1絶縁層110を上部に積層し、ホールが形成されていない一般の第1絶縁層110を下部に積層してキャビティCを形成する(図(h))。必要によって、一般の第1絶縁層110を両面積層した後に、キャビティCの加工工程を行う方式を採用することも可能である。
【0083】
図8では、第1基板100のキャビティC内に第2基板200を挿入する工程を示している。
【0084】
第1基板100のキャビティC内に第2基板200を挿入する工程は、転写方式により実施できる。転写紙Pの下面に離型層により臨時付着された第2基板200が第1基板100のキャビティC内に転写される。このとき、接着層Aにより第1基板100と第2基板200とが接着されてもよい。
【0085】
以後に、ソルダーレジスト層600を形成する工程を追加してもよい。
【0086】
以上、本発明の一実施例について説明したが、当該技術分野で通常の知識を有する者であれば特許請求の範囲に記載した本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除または追加などにより本発明を様々に修正及び変更することができ、これも本発明の権利範囲内に含まれるものといえよう。
【符号の説明】
【0087】
1 端末機
10 プリント回路基板
100 第1基板
110 第1絶縁層
120、120' 第1回路
130 第1ビア
C キャビティ
200 第2基板
210 第2絶縁層
220 第2回路
220' パッド
230 第2ビア
A 接着層
300 第1素子
400 第2素子
410 第3素子
500 連結回路
510 連結ビア
600 ソルダーレジスト層
M 金属箔
P 転写紙
R エッチングレジスト