(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】歩行訓練器具
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
A61H1/02 R
A61H1/02 N
(21)【出願番号】P 2023013578
(22)【出願日】2023-01-16
(62)【分割の表示】P 2020196374の分割
【原出願日】2020-11-10
【審査請求日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2019213668
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】512010409
【氏名又は名称】株式会社YAK-OH
(72)【発明者】
【氏名】法元 寛
(72)【発明者】
【氏名】岡田 嘉展
(72)【発明者】
【氏名】小林 寛道
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-145755(JP,U)
【文献】実開昭55-085055(JP,U)
【文献】特開2004-105438(JP,A)
【文献】特開2001-238711(JP,A)
【文献】特開2010-184107(JP,A)
【文献】特開平08-206165(JP,A)
【文献】特開2012-115630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項9】
請求項1に記載の歩行訓練器具において、前記アブミ部分が、左右の両端にバンドフックの取り付け部を有する構造であることを特徴とする歩行訓練器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の同側の手と足を連携して動作する歩行(以下、「同側型歩行」と称する)の訓練、および、歩行の支援に用いられる器具に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会が進む日本において、高齢者が健康で活動的な生活を送るために、歩行能力の改善、生活行動や日常動作を自由に行うことができる動作能力の改善、健康状態の改善、生きがいや楽しさなど精神・心理面での改善、などが図られることが望ましい。
【0003】
非特許文献1には、こうした心身の生活行動の質的向上を図るためのトレーニング方法の一つとして、「QOMトレーニング」が提案されている。ここで、QOMとはQuality of Motionの略で、運動の質という意味である。「QOMトレーニング」は、歩行動作の改善など日常生活活動にかかわるすべての動作がスムーズに遂行できることを目的としており、神経系のトレーニングを主として、全身の運動での身体操作性機能を高めることに特徴がある。この「QOMトレーニング」の中で、「コアストレッチング・ウォーキング」と称される、足を出した側の膝と腰を前方に運ぶ歩行動作が提唱されている。
【0004】
非特許文献2には、この「コアストレッチング・ウォーキング」を身につけるために、まず、ナンバ歩きを練習することが良いことが記載されている。ナンバ歩きとは、古武道などにおいて広く知られており、右手、右足、右腰を同時に前方に出し、次に左手、左足、左腰を前方に運んで歩く、すなわち、身体の同側の手足を同時に動作させる、同側型歩行である。
【0005】
このナンバ歩きの動作を訓練するためのトレーニングマシンが非特許文献1に記載されているが、このトレーニングマシンを設置するためにある程度の広さの場所を必要とし、手軽に訓練できるものではない。また、なんば歩きを訓練する器具として、従来から、例えば、竹馬のような遊具が存在している。竹馬は、足を置く台が地上より高い位置にあり、バランスがとりづらく、初心者や高齢者にとって、転倒する危険性があった。
【0006】
特許文献1に記載されている発明は、ポールのグリップにおいて、握り部のほかに前腕を支持する部を設け、杖にかける手の力を腕全体に分散し、使用者の負担を軽減するものである。
【0007】
特許文献2に記載されている発明は、ポールの接地面に弾性変形可能な変形部を設けることにより、底部の接地面を地面に確実に接触させて、歩行補助効果を高めることを目的としたものである。
【0008】
しかし、特許文献1、および、特許文献2の発明とも、足は手の動きと連携することなく自由に動作できるものであり、同側型歩行運動を効果的に訓練することに適切な器具ではない。
【先行技術文献】
【0009】
【文献】特開2016-015997公報
【文献】特開2014-147614公報
【0010】
【文献】「健康寿命をのばす認知動作型QOMトレーニング」東京大学教授 小林寛道著 出版社:杏林書院、発行日:2013年1月20日
【文献】「ランニングパフォーマンスを高めるスポーツ動作の創造」東京大学教授 小林寛道著 出版社:杏林書院、発行日:2001年11月22日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、高齢者が健康で活動的な生活を送れるために歩行能力を改善することを目的とした、同側型歩行の訓練を、大きな設備を用いることなく、高齢者や初心者が容易に、かつ安全に実施できる器具を提供するものである。
本発明は、高齢者が自宅で寛ぎながら、身体に大きな負担を強いることなく、同側型歩行を訓練することができる器具を提供するものである。
本発明は、片側の脚力が低下して歩行に支障をきたしている人が、脚力が低下した足に装着することにより歩行を支援することができる器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかわる歩行訓練器具は、長棒状のポールの上端にグリップ部を設け、前記ポールの下端にアブミ部を設けた構造であることを特徴とする。
【0013】
本発明にかかわる歩行訓練器具は、長棒状のポールの上端にグリップ部を設け、前記ポールの下端にアブミ部を設けた一対の構造であることを特徴とする。
【0014】
本発明にかかわる歩行訓練器具は、前記アブミ部が、足、または、靴の、甲、側面、底面を帯状に被覆する構造であることを特徴とする。
【0015】
本発明にかかわる歩行訓練器具は、前記アブミ部が、アブミ部の外側の端部と前記ポールとの連結部を有することを特徴とする。
【0016】
本発明にかかわる歩行訓練器具は、前記アブミ部が、アブミ部と前記ポールの連結部が弾性変形可能な構造であることを特徴とする。
【0017】
本発明にかかわる歩行訓練器具は、前記グリップ部が、前方向に湾曲した形状を有することを特徴とする。
【0018】
本発明にかかわる歩行訓練器具は、前記グリップ部が、手で握ると弾性変形が可能な構造であることを特徴とする。
【0019】
本発明にかかわる歩行訓練器具は、前記ポールが、弾性部材で構成された円筒状のパイプであり、前後左右の方向から力を加えるとしなる構造であることを特徴とする。
【0020】
本発明にかかわる歩行訓練器具は、前記アブミ部が、足、または、靴の、甲、側面、底面を帯状に被覆する部分と、前記ポールと連結する部分が、異なる材料で構成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明にかかわる歩行訓練器具は、前記アブミ部分の、足、または、靴を置く部分と、前記ポールと連結する部分が、弾性変形可能な材料を用いて、一体で構成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明にかかわる歩行訓練器具は、前記アブミ部分の、足、または、靴を置く部分が弾性変形可能な材料を用いて構成され、前記部分と足、または、靴を帯状に覆う部分で足を保持する構造であることを特徴とする。
【0023】
本発明にかかわる歩行訓練器具は、前記アブミ部分の、足、または、靴を置く部分の裏面に帯状の溝が形成されていることを特徴とする。
【0024】
本発明にかかわる歩行訓練器具は、前記アブミ部が、左右の両端にバンドフックの取り付け部を有する構造であることを特徴とする。
【0025】
本発明にかかわる歩行訓練器具は、前記グリップ部が、前記ポールの軸のまわりに左右に回転できる構造であることを特徴とする。
【0026】
本発明にかかわる歩行訓練器具は、前記グリップ部が、前記ポールの向きに対して回転軸を自在に変えることができる構造であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の歩行訓練器具のアブミ部に左右それぞれの足を挿入し、また、グリップ部を左右それぞれの手で保持することで、右手と右足、左手と左足を、それぞれ、強制的に連携して動作させることができる。これによって同側型歩行の基本動作を訓練することが可能となる。
【0028】
本発明の歩行訓練器具のアブミ部が足、または、靴を帯状に被覆する構造となっているため、足、または、靴がアブミ部によくフィットし、アブミ部から外れにくくすることが可能となる。
【0029】
本発明の歩行訓練器具のアブミ部とポールの連結部が弾性変形可能な構造であるため、歩行の際、安定に着地、あるいは、離地することが可能となる。
【0030】
本発明の歩行訓練器具のグリップ部が前方に湾曲した構造となっているため、グリップ部を握る手の位置を変えることによって、腕の伸ばし方を変えて歩行訓練を行うことが可能となる。
【0031】
本発明の歩行訓練器具のグリップ部に弾性材料を用いることにより、グリップを握る手の感触が脳に適度の刺激を与え、訓練の効果を高めることが可能となる。
【0032】
本発明の歩行訓練器具のポールに弾性材料を用いた円筒状のパイプを用いると、ポールに前後左右方向から力が加わる時に、ポールがしなるので、転倒などにより足や膝がポールと接触した場合に、足や膝に与える衝撃が緩和されることが可能となる。
【0033】
本発明の歩行訓練器具の前記アブミ部において、足、または、靴を帯状に被覆する部分と、前記ポールと連結する部分を異なる材料で構成しているため、足、または、靴を覆う部分には伸縮可能で柔らかい材料を用い、ポールとの連結部にはより変形が小さい材料を用いるというように、各部分に機能を実現する最適な材料を用いることができ、より快適な装着感を得ることが可能となる。
【0034】
本発明の歩行訓練器具の前記アブミ部において、足、または、靴を置く部分と、前記ポールと連結する部分が一体で構成されているため、足、または、靴とポールの距離が一定となり、より安全で歩行しやすくすることが可能である。
【0035】
本発明の歩行訓練器具の前記アブミ部において、足、または、靴を置く部分が弾性変形可能で、前記部分と足、または、靴を帯状に覆う部分により、足を保持する構造であるため、足、または、靴を置いた時に、はみ出した部分が足、または、靴の側面を被覆し、アブミ部が足、または、靴を、より密着して保持することが可能となる。
【0036】
請求項1に記載の歩行訓練器具において、
前記アブミ部分の、足を置く部分の裏面に帯状の溝が形成されているため、足、または、靴を覆うベルトがアブミ部から外れにくくすることが可能である。
【0037】
本発明の歩行訓練器具のアブミ部の左右の両端にバンド、あるいは、ゴムバンドのフックの取り付け部を有する構造であるため、足のかかとを覆ったバンドフックをかけることにより、足のかかとがアブミから外れにくくすることが可能となる。
【0038】
本発明の歩行訓練器具のグリップ部が、ポールの軸のまわりに左右に回転できる構造であるため、足を前後方向、横方向、斜め前方向など様々な方向に踏み出しても、手首の向きを一定に保ちながら歩行訓練を実施することが可能となる。
【0039】
本発明の歩行訓練器具のグリップ部が、ポールに対して自在な軸の周りに回転できる構造であるため、手首の向きを自由に変えながら歩行訓練を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明を実施するための形態の第一の例を示す、左右一対の歩行訓練器具の全体斜視図である。
【
図3】本歩行訓練器具のグリップ部を示す斜視図である。
【
図4】本歩行訓練器具のグリップ部を示す図であり、
図3のA-A線における断面図である。
【
図5】本歩行訓練器具のアブミ部を示す斜視図である。
【
図6】本歩行訓練器具のアブミ部を示す図であり、
図5のB-B線における断面図である。
【
図7】本歩行訓練器具の第2の実施例のアブミ部を示す斜視図である。
【
図8】本歩行訓練器具の第2の実施例のアブミ部を示す図であり、
図7のC-C線における断面図である。
【
図9】本歩行訓練器具の第3の実施例のアブミ部を示す斜視図である。
【
図10】本歩行訓練器具の第3の実施例のアブミ部を示す図であり、
図9のD-D線における断面図である。
【
図11】本歩行訓練器具の第3の実施例のアブミ部を示す図であり、
図9のE-E線における断面図である。
【
図12】本歩行訓練器具の第2の例のグリップ部の一部を示す図であり、
図3のA-A線と同様の面における断面図である。
【
図13】本歩行訓練器具の第3の例のグリップ部の一部を示す図であり、
図3のA-A線と同様の面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、本発明を実施するための形態の第1の例を示す、左右一対の歩行訓練器具の全体斜視図である。ステンレス製のポール1の上端部に、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンを用いた共重合合成樹脂)を用いて三次元造形したグリップ部2を連結し、前記ポールの下端部にTPU樹脂(熱可塑性ウレタン)で三次元造形したアブミ部3を連結している。本歩行訓練器具の全長は100~140cm程度である。前記ポール1と前記グリップ部2は、左右で同じ形状であるが、前記アブミ部3は左右で形状が異なる。
【0042】
図2は本発明にかかわる歩行訓練器具の使用状態を示す図である。この図を用いて、本歩行器具を使用した同側型歩行の訓練方法を以下に説明する。
まず、本発明の歩行訓練器具の左右のアブミ部3に、それぞれ、左右の足を挿入し、グリップ部2を左右それぞれの手で握りながら直立する。
【0043】
この状態から、右足を前に踏み出すと、アブミ部3とグリップ部2がポール1を介して連結されているため、右足とともに強制的に右手も前に出る。次に、左足を前に踏み出すと、同様にして左手も左足と一緒に前に出る。この動作を交互に繰り返すことにより、同側型歩行運動を訓練することができる。
【0044】
このように本発明にかかわる歩行訓練器具は、右手と右足、左手と左足を、それぞれ、強制的に連結して動作させることができ、これによって同側型歩行の基本動作を訓練することができる。
【0045】
また、本発明の歩行訓練器具を用いた訓練として、手の動きを足の動きに先導して歩行動作を行うこともできる。すなわち、右手を持ち上げながら前に出すと右足が右手と一緒に前に出る。次に左手を持ち上げながら前に出すと、左足が左手と一緒に前に出る。このようにして、意識的に手を動かして足をそれに追随させる同側型歩行運動の訓練も可能である。
【0046】
本発明を実施するための形態の歩行訓練器具において、前記ポール1の素材は、ステンレスに限定されるものではなく、炭素繊維強化プラスティック、木材、その他の軽量で剛性が高い素材を用いても、同様の効果が得られる。
【0047】
本発明を実施するための形態の歩行訓練器具において、前記ポール1として、PVC(ポリ塩化ビニル)材料を用いた、外径18mm、内径13mmの円筒状のパイプを用いると、ポールに前後左右方向から力が加わる時に、ポールがしなるので、転倒などにより足や膝がポールに接触した際に、ポールから受ける衝撃が緩和される効果が得られる。
【0048】
図3は、本発明にかかわる歩行訓練器具のグリップ部2を示す斜視図である。
グリップ部2の下端部21はポール1と同じく上下方向を向いているが、グリップ部2の中端部22からグリップ部の上端部23にかけて、前方向に楕円の円弧状に湾曲した形状としており、グリップ部2の上端部23はポール1に対して垂直、地面に対して平行な向きに位置される構造となっている。
【0049】
この構造において、グリップ部の上端部23を手で握ると、親指の根元の向きが腕の向きと同じになり、腕が前に伸びた状態で歩行訓練ができる。他方、グリップ部の下端部21を手で握りながら腕を前に出すと、親指の根元の向きと腕の向きが直行した一般的な杖を突く状態で歩行訓練ができる。
【0050】
このように、本歩行訓練器具のグリップ部2の上端部23が前方向に湾曲した形状を有しているので、グリップ部2を握る手の位置を変えることによって、腕の伸ばし方を変えて訓練することができる。
また、グリップ部2の上端部23を握る方が下端部21を握るよりもよりポール1を持ち上げやすくなるので、手の動作で足の動作を先導する訓練も容易にできるようになる。
【0051】
図4は、本発明を実施するための形態の歩行訓練器具のグリップ部2の一部を示す図であり、
図3のA-A線における断面図である。
図4におけるグリップ部の下端部21に前記ポール1を挿入する開口部24を設けている。このような形状を有するグリップ部2は、ABS樹脂を用いて三次元造形によって作成できる。
【0052】
本発明を実施するための形態の歩行訓練器具において、前記グリップ部2の素材は、ABS樹脂以外にも、炭素繊維強化プラスティック、木材、その他の軽量で剛性が高い素材であれば同様の効果が得られる。
【0053】
本発明を実施するための形態の歩行訓練器具において、前記グリップ部2の素材として、ウレタン樹脂、軟質PVC、シリコンなどの弾性素材を用いる、あるいは、弾性材料で表面を被覆することにより、グリップ部2を握る手の感触が脳に適度の刺激を与え、訓練の効果を高めることができる。
【0054】
図5は、本発明を実施するための形態の歩行訓練器具におけるアブミ部を示す斜視図である。アブミ部3は、足の親指の付け根部を含めて、足の甲の部31、側面32、底部33を帯状に被覆する構造となっている。また、アブミ部3の外側の端部に、ポールを挿入するための開口部34を設け、ここに前記ポール1を挿入して、前記ポール1と前記アブミ部3が連結する構造となっている。
【0055】
アブミ部3は弾性変形が可能な素材を用いているので、足が着地、および、離地する際、前記ポール1とアブミ部3との角度が90度±45度程度まで変化しても、安定して着地、および、離地できる構造となっている。
【0056】
本発明を実施するための形態の歩行訓練器具において、前記アブミ部3の素材は、TPU樹脂に限定されるものではなく、ゴム、その他の弾性素材を用いても同様な効果が得られる。
【0057】
また、本発明を実施するための形態の歩行訓練器具におけるアブミ部3の側面には、バンドフック掛け35を設けている。このバンドフック掛け35に、足のかかとを覆ったバンドフックをかけることにより、足がアブミ部3から外れにくくすることができる。これにより、本歩行訓練器具を用いて、歩行運動のみならず、例えば、ジャンプや舞踏などのより動きの激しい運動を行うことも可能となる。
【0058】
図6は、本発明を実施するための形態の歩行訓練器具のアブミ部3の
図5のB-B線における断面図である。アブミ底部33は、足首の側の開口部分が足の先端側の機構部分より狭い構造となっている。これにより、アブミ3が足の形状にフィットしやすく、足がアブミ3から外れにくくなる。
【0059】
図7は、本発明を実施するための形態の歩行訓練器具の第二の実施例のアブミ部を示す図である。アブミ部のポールとの連結部41は、ポール挿入のための開口部42と、足を被覆するベルトの挿入口44を有し、TPU樹脂を用いて形成されている。また、足を被覆するベルト43はゴムベルトを用いている。このようにアブミ部が異なる部材を用いて構成されている。
【0060】
図8は、本発明を実施するための形態の歩行訓練器具の第二の実施例のアブミ部の一部を示す図であり、
図7のC-C線における断面図である。アブミ部のポールとの連結部41の上部に設けたベルト挿入口44に、足を帯状に被覆するベルト43を挿入し、貫通孔45を通して、アブミ部の下部のベルト挿入口44からベルトを引き出す構造としている。
【0061】
アブミ部のポール1との連結部41には弾性を有するTPU樹脂を用いているので、足が着地、および、離地する際、安定して着地、および、離地することが可能である。また、前記アブミ部のポール1との連結部の素材は、TPU樹脂に限定されるものではなく、ゴム、その他の弾性材料を用いても同様な効果が得られる。
【0062】
アブミ部の足を被覆するベルト43には伸縮可能でやわらかいゴムベルトを用いているので、足の大きさに依存することなく、アブミ部が足に密着し、激しい運動をしてもアブミが足から外れにくい。また、素足、あるいは靴下をした状態で足を挿入しても痛くない。さらに、足のかかとを覆ったバンドフックをつける必要がなくなる。
【0063】
このように、アブミ部において、足を帯状に覆うベルトの材料には、伸縮可能で、柔らかいゴムベルトを用い、ポールと連結部には、より変形が小さい弾性材料を用いることにより、各部分ごとに、機能を実現するための最適な材料を用いることができ、より簡単な構造で、快適な装着感を得ることが可能となる。
【0064】
さらに、アブミ部の上下に設けた足を被覆するベルトの挿入口44の、ベルトを通す部分に溝46を形成しているので、ベルトがアブミ部から外れにくい。
【0065】
実施例二では、アブミ部の足を帯状に覆うベルト部分にゴムベルトを用いたが、長さが調節できるベルトやマジックテープなどを用いても、同様の効果が得られる。
【0066】
図9は、本発明を実施するための形態の歩行訓練器具の第三の実施例のアブミ部を示す図である。ポールとの連結部51と足を置く部分53を、TPU樹脂を用いて、一体として形成した構造としている。これにより、足とポールの距離が一定となり、より安全で快適な歩行が可能となる。
【0067】
図10は、本発明を実施するための形態の歩行訓練器具の第三の実施例のアブミ部を示す図であり、
図9のD-D線における断面図である。アブミ部のポールとの連結部51には、足を被覆するベルト54を挿入するための貫通孔56が設けられている。
【0068】
ゴムベルトを用いた足を被覆するベルト54を、アブミ部のポールとの連結部51の上部のベルト挿入口55に挿入し、貫通孔56を通してアブミ部の下部のベルト挿入口55から引き出し、足を置く部分53の下側を通して、足を置く部分53の端部に設けたベルト挿入口55から上部に引き出す構造としている。これにより、足を被覆するベルト54がアブミ部の足を置く部分53の外側から足全体を帯状に覆うことができる。
【0069】
アブミ部の足を置く部分53が弾性材料を用いて形成され、足を被覆するベルト54が足を置く部分53の外側から足全体を帯状に覆う構造としているため、足を置く部分53の、足からはみ出した部分が足の側面を被覆するので、アブミ部が、足の大きさによらず、足に密着し、足を保持することが可能となる。
【0070】
図11は、本発明を実施するための形態の歩行訓練器具の第三の実施例のアブミ部を示す図であり、
図9のE-E線における断面図である。アブミ部の足を置く部分53の下側に、足を被覆するベルト54をはめ込むための溝57を形成し、その周辺に凸部58を形成した構造としているため、足を被覆するベルト54が、足を置く部分53から外れにくくすることができる。
【0071】
アブミ部分の足を置く部分53の幅を4cm、厚みを3mm以下とすることにより、アブミ部に素足を挿入しても、アブミ部の段差を特に感じることがなく、安全で快適な歩行が可能となる。
【0072】
図12は、本発明を実施するための形態の歩行訓練器具の第四の実施例のグリップの一部を示す図であり、
図3のA-A線と同様の面における断面図である。第四の実施例では、グリップ2において、下端部21と中端部22とを切り離し、グリップ部の下端部21の上部に円板状突起部分25を設け、この円板状突起部25を包み込むように、グリップ部の中端部22の下部に凹部部分26を形成している。
【0073】
この構造により、グリップ部の下端部21がポールに固定されている状態で、グリップ部の中端部22と上端部23を、前記ポール1の軸のまわりに回転させることができる。これにより、アブミ部3に挿入した足を斜め前に踏み出して、足の向きが変化した場合でも、グリップ部2を握る手首の向きを、まっすぐに前方を向いた状態に保つことができる。
このように、グリップ部が回転できる構造にすることによって、足を前後方向、横方向、斜め前方向など様々な方向に踏み出しても、手首の向きを一定に保ちながら歩行訓練を実施することが可能となる。
【0074】
図13は、本発明を実施するための形態の歩行訓練器具の第五の実施例のグリップの一部を示す図であり、
図3のA-A線と同様の面における断面図である。第五の実施例では、グリップ部において、下端部21と中端部22とを切り離し、グリップの下端部21の上部に球状突起部27を設け、前記球状突起部27を包み込むように、グリップ部の中端部22の下部に凹部部分28を形成している。
【0075】
この構造により、グリップ部の下端部21がポールに固定されている状態で、グリップ部の中端部22、および、上端部21を、前記ポール1に対して自由な角度の軸のまわりに回転させることができる。
グリップ部2が、ポール1に対して自由な軸の周りに回転できる構造にすることによって、手首の向きを自由に変えながら同側型歩行運動を訓練することが可能となる。
【0076】
本発明を実施するための形態の歩行訓練器具は、本発明の歩行訓練器具のうち1本を用いて、片側の脚力が低下して歩行に支障をきたしている人の、歩行を支援することも可能である。
【0077】
本発明の歩行訓練器具を脚力が低下した足に装着した状態で歩行すると、着地した時に足がポールとアブミで支えられ、安全に歩行することができる。また、歩行訓練器具の着地点が足の着地点と一致するので、人ごみの中で歩行する時に他の人と接触することが避けられるなどの効果がある。
【0078】
第一から第五の実施例で示したグリップ部、アブミ部は、三次元造形技術を用いて作製したが、この作製方法に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本歩行訓練器具を用いることで、高齢者や初心者が、同側型歩行運動を、比較的簡便に、楽しく、訓練することができ、その結果、歩行能力を改善し、健康で自立した、生きがいのある生活を営むことができるようになることが期待できる。本歩行訓練器具を用いて、同側型歩行運動をさらに広く普及させることで、幸福で豊かな高齢化社会を実現することが期待できる。
【符号の説明】
【0080】
1 ポール
2 グリップ部
3 アブミ部
21 グリップ部の下端部
22 グリップ部の中端部
23 グリップ部の上端部
24 グリップ部の下端部のポール挿入のための溝部
25 グリップ部の下端部の上部円板状突起部分
26 グリップ部の中端部の下部凹部部分
27 グリップ部の下端部の上部球状突起部部分
28 グリップ部の中端部の下部凹部部分
31 アブミ部の足の甲の被覆部
32 アブミ部の足の側面の被覆部
33 アブミ部の足の底部の被覆部
34 ポール挿入のための開口部
35 バンドフック掛け
41 アブミ部のポールとの連結部分
42 ポール挿入のための開口部
43 アブミ部の足を被覆するベルト
44 アブミ部の足を被覆するベルトの挿入口
45 アブミ部の足を被覆するベルトを通す貫通孔
46 アブミ部の足を被覆するベルトの挿入口の溝
51 アブミ部のポールとの連結部分
52 ポール挿入のための開口部
53 アブミ部の足を置く部分
54 アブミ部の足を被覆するベルト
55 アブミ部の足を被覆するベルトの挿入口
56 アブミ部の足を被覆するベルトを通す貫通孔
57 アブミ部の足を置く部分の下側に形成したベルトを通す溝
58 アブミ部の足を置く部分の下側に形成した凸部