(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】スリーブ状容器
(51)【国際特許分類】
B65D 71/14 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
B65D71/14
(21)【出願番号】P 2019161979
(22)【出願日】2019-09-05
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】古澤 和夫
(72)【発明者】
【氏名】石川 千雄
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-255962(JP,A)
【文献】特開2014-227184(JP,A)
【文献】特開2014-058321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 71/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板紙を折り曲げて形成され、底面、左側面、天面、右側面がこの順で連接され、前面、後面が開口した角筒状のスリーブ状容器であって、前記天面の、前記左側面および前記右側面と接する辺が、左右方向に入り込んだ入込部を有し、前記左側面および前記右側面に、前記入込部の入り込みの頂点から前記底面に向かって、内側に凸の折罫線が設けられており、前記天面の、前記左側面
と接する辺のうち、前記入り込みの頂点より前側の辺と、前記天面の、前記左側面と接する辺のうち、前記入り込みの頂点より後側の辺と、が交わるとともに、前記天面の、前記右側面と接する辺のうち、前記入り込みの頂点より前側の辺と、前記天面の、前記右側面と接する辺のうち、前記入り込みの頂点より後側の辺と、が交わることを特徴とするスリーブ状容器。
【請求項2】
前記左側面および
前記右側面が、前後方向に延びる外側に凸の折罫線を少なくとも1本有し、前記内側に凸の折罫線が、該外側に凸の折罫線の最も天面側のものに達していることを特徴とする請求項1に記載のスリーブ状容器。
【請求項3】
前記入込部の、前記左側面側の入り込みの頂点と前記右側面側の入り込みの頂点の間の間隔が、被収納物を挟持する幅であることを特徴とする請求項1または2に記載のスリーブ状容器。
【請求項4】
前記入込部が、前記左側面と接する辺または
前記右側面と接する辺またはその両方に、2か所設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のスリーブ状容器。
【請求項5】
前記左側面および前記右側面が前記底面と接する辺に、切り欠き部が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のスリーブ状容器。
【請求項6】
前記板紙が、坪量100~500g/m
2、より好ましくは200~400g/m
2であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のスリーブ状容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状に形成されて内部に物品を保持するスリーブ状容器に関し、収納する物品が脱落しない様に保持する機能を有するスリーブ状容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品を4面から取り囲み、残る2面が開口したスリーブ状の包装容器が知られている。この様なスリーブ状容器は、開口した面から被収納物が脱落しない様に、被収納物を容器内に保持する構造を設けることが行われている。例えば特許文献1には、複数の円筒状の缶を収納するスリーブ状のカートンが開示され、このカートンには缶の踵部を保持する切り欠き部が設けられている。缶は一般的には金属製であり、剛性が高く変形しにくいため、このような切り欠き部により良好に保持され、また、切り欠き部から露出した踵部が大きなダメージを受けることも少ないため、有効なものと推察される。
【0003】
また、特許文献2には、ボトルを並列させて収納する、板紙シートを組み上げた巻き付け式のカートンが開示されており、ボトルの底部および頂部に当たる部位に切り欠きや切込みを設けてボトルの角部を保持しやすくしている。ボトルは一般にガラスやPETなど、保形性の高い素材で形成されるため、同様に良好に保持され得るものと推察される。
【0004】
また特許文献3には、いわゆるゲーベルトップ型のカートンを複数収納するカートンホルダーが開示され、カートンの屋根部の合掌貼着片をスリットに嵌入させてカートンを係止するとしている。ゲーベルトップ型という特定形状のカートンの保持に適したものである。以上の様に、スリーブ状容器に被収納物を収納する場合は、その一部に切り欠きやスリットを設け、被収納物の一部を嵌め込むことで保持性を高めることが広く行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3154489号公報
【文献】特許第6163873号公報
【文献】実開平4-84161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし一方では、スリーブ状容器に切り欠きやスリットを設けるには、切り欠きやスリットの形状に合わせた専用の型抜き刃が必要とされ、型抜きの工程が別に発生するため、作成に手間とコストがかかっていた。
【0007】
また、切り欠き等の保持部を設けても、被収納物が比較的剛性の低いプラスチック製のトレイ状容器などである場合は、被収納物が容易に変形して輸送時などに保持部から抜け出てしまう、保持部から出た部分の形状が安定せず不ぞろいで見た目が悪い、保持部から出た容器の角部などの部分がぶつかるなどしてダメージを受けやすい、といった問題を生じる恐れがあり、特に、これらの容器を複数積み上げた状態で収納する場合は、より抜け出やすいため、改良が望まれていた。
【0008】
そこで本発明は、作成の工程やコストを抑えることができると共に、被収納物として比較的変形しやすいトレイ状などのプラスチック樹脂製容器を一つまたは複数収納した場合であっても、スリーブから抜け落ちにくいスリーブ状の容器を提供することを課題とする
。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、
板紙を折り曲げて形成され、底面、左側面、天面、右側面がこの順で連接され、前面、後面が開口した角筒状のスリーブ状容器であって、
前記天面の、前記左側面および前記右側面と接する辺が、左右方向に入り込んだ入込部を有し、
前記左側面および前記右側面に、前記入込部の入り込みの頂点から前記底面に向かって、内側に凸の折罫線が設けられていることを特徴とするスリーブ状容器である。
【0010】
すなわち、角筒状で前後が開口したスリーブ状容器において、天面部が入込部を有し、入込部の頂点から底面に向かって左右の側面部に形成された、内側に凸の折罫線に、被収納物の側部が押さえられる態様となることで、被収納物が抜け落ちにくいスリーブ状容器を構成できる。
【0011】
上記スリーブ状容器において、
前記左側面および右側面が、前後方向に延びる外側に凸の折罫線を少なくとも1本有し、前記内側に凸の折罫線が、該外側に凸の折罫線の最も天面側のものに達している態様であって良い。外側に凸の折罫線があることで、左右の側面の上部側の部分が内側に倒れやすくなり、被収納物を効果的に押さえることができる。
【0012】
上記スリーブ状容器において、
前記入込部の、前記左側面側の入り込みの頂点と前記右側面側の入り込みの頂点の間の間隔が、被収納物を挟持する幅であって良い。被収納物をより強く押さえることができる。
【0013】
上記スリーブ状容器において、
前記入込部が、前記左側面と接する辺または右側面と接する辺またはその両方に、2か所設けられていて良い。被収納物をより安定して押さえることができる。
【0014】
上記スリーブ状容器において、
前記左側面および前記右側面が前記底面と接する辺に、切り欠き部が設けられても良い。
【0015】
上記スリーブ状容器において、
前記板紙が、坪量100~500g/m2、より好ましくは200~400g/m2であって良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被収納物の保持のための切り欠きやスリットを型刃などを用意して形成する必要なく、単に板紙を折罫線で折り立てることで形成でき、作成が容易でありながら被収納物が抜け落ちにくいスリーブ状容器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のスリーブ状容器の一実施形態の略示外観図。
【
図2】本発明のスリーブ状容器の一実施形態を形成するブランクシートの平面図。
【
図3】本発明のスリーブ状容器の一実施形態で被収納物を保持する状態の説明図。
【
図4】本発明のスリーブ状容器の第2の実施形態の略示外観図。
【
図5】入込部に2か所の頂点が設けられたブランクシートの例の平面図。
【
図6】入込部に2か所の頂点が設けられたスリーブ状容器で被収納物を保持する状態の説明図。
【
図7】本発明のスリーブ状容器の第3の実施形態の略示外観図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、以下において同等の部材等には同一の符号を付して説明を省略することがある。
【0019】
図1は、本発明のスリーブ状容器の一実施形態の略示外観図であり、被収納物を収納した状態を示している。
図2は
図1のスリーブ状容器の一実施形態を形成するブランクシートの平面図である。スリーブ状容器1は、板紙のブランクシート1aを折り立てて形成され、底面2、左側面3、天面4、右側面5が連接して角筒状となっており、前面、後面が開口している。ここで左側面、右側面と称するのは単に区別のためであって、どちらを左とし、右とするかは任意である。また底面2には補強のための補強板2aが重ねられ、糊代2bで貼り合されている。
【0020】
天面4は、前後方向の中央部が左右方向に入り込んで幅狭にくびれた形状となった入込部6が形成されている。そして、例えば右側面5で説明すると、右側面5に入り込みの頂点7から、底面2に向かって内側に凸の折罫線8が設けられ、右側面5に設けられた前後方向に延びる外側に凸の折罫線9に達している。このため、外側に凸の折罫線9よりも天面側の部分5aは、天面4側が入込部6により内側に引き込まれ、外側に凸の折罫線9側が外側に張り出すため、内側に凸の折罫線8の部分を頂点として内側に折れ曲がった態様となり、
図3(a)に示す様に、入り込みの頂点7の部位で収納された被収納物11の側部に当接して押さえる態様とすることができる。
【0021】
右側面5の底面側の部分5bは外側に凸の折罫線9に向かって迫り出す態様となるが、外側に凸の折罫線は複数設けても良く、複数設けた外側に凸の折罫線により、右側面5の底面側の部分5bを外側に膨らんだ形状とすることもでき、例えば下側の被収納物12の側面が膨らんだ形状の場合に、それに沿わせた形状とすることもできる。その場合、内側に凸の折罫線8は最も天面側の外側に凸の折罫線まで達していればよい。
【0022】
以上の様な構成および効果は、左側面3においても同様である。
【0023】
入込部6は、単に入り込んでいるだけでなく、その頂点7から内側に凸の折罫線8が設けられていることで、入り込んだ形状が維持されやすく、内側に凸の折罫線8を被収納物11の側部にしっかりと当接して押さえることができ、被収納物11の保持が好適に維持される。左側面3においても同様の態様となるため、被収納物11を左右から挟み込む態様が安定し、抜け落ちにくい態様となる。
【0024】
すなわち、従来は被収納物の保持のための切り欠きやスリットを、型刃などを用意して形成していたところ、本発明のスリーブ状容器においては、板紙を折罫線で折り立てて貼り合わせる簡易な作製方法で作製できるにもかかわらず、被収納物が抜け落ちにくいスリーブ状容器とすることができる。
【0025】
また、
図1に例示した様に、トレイ状の被収納物11、12が複数重ねて収納された場合でも、一般的には上に重ねた被収納物11が抜け落ちやすいが、上に重ねた被収納物11の側面が内側に凸の折罫線8で斜め上方から押さえられる様に挟み込まれるため、下側の被収納物12も抜け落ちにくくなり、被収納物を抜け落ち難くすることができる。
【0026】
なお入込部6の形状は、
図3(a)に例示した様に直線的に入り込んでいても、
図3(b)に示す様に曲線的に入り込んでいても良い。入込部6の頂点7、7の左右方向の間隔は、被収納物の大きさに合わせて適宜設定すればよいが、被収納物の左右方向の幅と同等以下であれば良く、若干狭く設定して、より強く挟持できる様にしても良い。
【0027】
また本発明のスリーブ状容器は、
図4に例示する様に、左側面3および右側面5が底面2と接する辺に切り欠き13が設けられた形態としても良い。切り欠き13の部分に下側となった被収納物12の側部が嵌まり込むことで、被収納物12がより抜け落ちにくくなり、入り込みの頂点7の部位で挟み込まれて抜け落ちにくくされた上側の被収納物11と合わせてさらに抜け落ちにくい態様とすることができる。
【0028】
本発明のスリーブ状容器を構成するブランクシートを作製する際には、被収納物の重量、大きさなどに応じて、一般のカートン容器に用いられるコートボール紙などの板紙から適宜選択して適用することができ、板紙から作成されるブランクシートを折り立てて形成できる。板紙の坪量としては100~500g/m2のものが好適であり、200~400g/m2とするとより好適である。
【0029】
図5は本発明のスリーブ状容器を構成するブランクシートの別形態を例示するもので、入込部に2か所の頂点が設けられたブランクシートの例の平面図である。
図5(a)の例では、例えば右側面5で説明すると、入込部6に2か所の入り込みの頂点7、7が設けられ、右側面5に頂点7、7から底面2に向かって内側に凸の折罫線8、8が設けられ、右側面5に設けられた前後方向に延びる外側に凸の折罫線9に達している。折罫線8、8は外側に凸の折罫線9上で1点に集まっている。頂点7、7に挟まれた逆向きの頂点15は外側に凸となっており、折罫線16も外側に凸となっている。左側面3においても上記と同様の態様である。
【0030】
入込部に2か所の頂点が設けられたブランクシートは、
図5(b)のように入り込みの頂点7、7が曲線によって連絡した形状であっても良い。
図5(b)の例ではまた、内側に凸の折罫線8、8は平行に底面に向かって延びている。この様に入込部6に2か所の入り込みの頂点7、7を設けると、例えば
図6(a)に示した様に、被収納物17の外形が円形に近いものであった場合に、頂点が1か所であると保持が不安定になりやすいが、2か所の頂点7、7で保持することで、より安定して抜け落ちにくい状態で保持できる。保持が安定する効果は被収納物が矩形状であっても同様に得られる。
【0031】
入込部6に2か所の入り込みの頂点を設ける場合、左右いずれかの側面側にのみ2か所の頂点を設ける様にしても良く、例えば
図6(b)に例示した様に、左側面側に1か所頂点7を設け、右側面側に2か所頂点7、7を設ける様にしても良い。また、この様な内側に凸の折罫線は、同様にして3本以上設けることもでき、被収納物の形状などに合わせて適宜設けることができる。
【0032】
また本発明のスリーブ状容器は、従来のスリーブ状容器において公知の、例えば
図7に例示した様な、スリーブを切り裂くためのジッパー部18や、引き起こして持ち手とすることができる持ち手部19を設けることもできる。
【符号の説明】
【0033】
1・・・スリーブ状容器
1a、1b、1c・・・ブランクシート
2・・・底面
3・・・左側面
4・・・天面
5・・・右側面
6・・・入込部
7・・・入り込みの頂点
8・・・内側に凸の折罫線
9・・・外側に凸の折罫線
11、12、17・・・被収納物
13・・・切り欠き
15・・・逆向きの頂点
16・・・折罫線
18・・・ジッパー部
19・・・持ち手部