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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/06 20060101AFI20240501BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20240501BHJP
   F28D 9/02 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
F28F3/06 A
F28F3/08 301A
F28D9/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019182356
(22)【出願日】2019-10-02
(65)【公開番号】P2020079693
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2018212962
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】川口 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】玉田 功
(72)【発明者】
【氏名】二田 智史
(72)【発明者】
【氏名】高木 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】村松 憲志郎
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-531684(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0011331(US,A1)
【文献】米国特許第04899808(US,A)
【文献】特開2018-009460(JP,A)
【文献】特開2016-205802(JP,A)
【文献】特開平01-098896(JP,A)
【文献】特開平09-196590(JP,A)
【文献】特開昭63-123990(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102155851(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/06
F28F 3/08
F28D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層して配置される複数のプレート部材(11)により冷媒流路(60,60a,60b,60c)及び流体流路(61)が形成され、前記冷媒流路を流れる冷媒と、前記流体流路を流れる流体との間で熱交換が行われ、冷媒は液相又は気液2相から気相に相変化する自動車用の熱交換器(10)であって、
前記冷媒流路に配置されるインナフィン(80,80a,80b、80c)を備え、
前記インナフィンは、所定方向に延びるように形成され、且つ互いに平行に配置される複数の側壁部(81)を有し、
互いに対向する前記側壁部の間に形成される隙間は、冷媒が流れる流路部(83)となっており、
前記側壁部には、前記所定方向に複数の開口部(84)が並べて形成され、
前記所定方向における前記冷媒流路の一端部には、前記冷媒流路に冷媒を流入させる流入口(40,40a,40b,40c)が形成され、
前記所定方向における前記冷媒流路の他端部には、前記冷媒流路を流れた冷媒を排出する排出口(41,41a,41b,41c)が形成され、
前記側壁部において隣り合う開口部の間に位置する部分には、前記所定方向に対して傾斜する傾斜面(85)が形成され、
前記側壁部のうち、前記所定方向において中央部よりも前記流入口に近い部分には、前記傾斜面として、冷媒の流れ方向を前記排出口から離間する方向に変化させるように傾斜する傾斜面(85a)のみが形成され、
前記側壁部のうち、前記所定方向において中央部よりも前記排出口に近い部分には、前記傾斜面として、冷媒の流れ方向を前記排出口に向かう方向に変化させるように傾斜する傾斜面(85b)のみが形成され
前記インナフィンは、
波状に形成されており、
隣り合う前記側壁部を互いに連結する、湾曲している連結部(82)を更に有するものであり、
前記開口部及び前記傾斜面は、前記連結部には形成されておらず、前記側壁部のみに形成され、
前記プレート部材の対角に位置する2つの角部に前記流入口(40)及び前記排出口(41)がそれぞれ形成され、前記冷媒流路(60)の幅(H1)に対して前記流入口(40)の幅(H2)及び前記排出口(41)の幅(H3)が短い
熱交換器。
【請求項2】
積層して配置される複数のプレート部材(11)により冷媒流路(60,60a,60b,60c)及び流体流路(61)が形成され、前記冷媒流路を流れる冷媒と、前記流体流路を流れる流体との間で熱交換が行われ、冷媒は気相から液相に相変化する自動車用の熱交換器(10)であって、
前記冷媒流路に配置されるインナフィン(80,80a,80b、80c)を備え、
前記インナフィンは、所定方向に延びるように形成され、且つ互いに平行に配置される複数の側壁部(81)を有し、
互いに対向する前記側壁部の間に形成される隙間は、冷媒が流れる流路部(83)となっており、
前記側壁部には、前記所定方向に複数の開口部(84)が並べて形成され、
前記所定方向における前記冷媒流路の一端部には、前記冷媒流路に冷媒を流入させる流入口(40)が形成され、
前記所定方向における前記冷媒流路の他端部には、前記冷媒流路を流れた冷媒を排出する排出口(41)が形成され、
前記側壁部において隣り合う開口部の間に位置する部分には、前記所定方向に対して傾斜する傾斜面(85)が形成され、
前記側壁部のうち、前記所定方向において中央部よりも前記流入口に近い部分には、前記傾斜面として、冷媒の流れ方向を前記排出口に向かう方向に変化させるように傾斜する傾斜面(85b)のみが形成され、
前記側壁部のうち、前記所定方向において中央部よりも前記排出口に近い部分には、前記傾斜面として、冷媒の流れ方向を前記排出口から離間する方向に変化させるように傾斜する前記傾斜面(85a)のみが形成され
前記インナフィンは、
波状に形成されており、
隣り合う前記側壁部を互いに連結する、湾曲している連結部(82)を更に有するものであり、
前記開口部及び前記傾斜面は、前記連結部には形成されておらず、前記側壁部のみに形成され、
前記プレート部材の対角に位置する2つの角部に前記流入口(40)及び前記排出口(41)がそれぞれ形成され、前記冷媒流路(60)の幅(H1)に対して前記流入口(40)の幅(H2)及び前記排出口(41)の幅(H3)が短い
熱交換器。
【請求項3】
前記複数のプレート部材(11)は、前記冷媒流路を有する複数の冷媒用プレート部材(111)と、前記流体流路を有する複数の冷却水用プレート部材(112)と、を有し、
前記複数の冷媒用プレート部材(111)のそれぞれの流入口(40)及び前記複数の冷却水用プレート部材(112)のそれぞれの連通孔(52)は、前記複数の冷媒用プレート部材(111)のそれぞれの冷媒流路(60)に冷媒を分配させる入口側冷媒タンクとしての機能を有し、
前記複数の冷媒用プレート部材(111)のそれぞれの排出口(41)及び前記複数の冷却水用プレート部材(112)のそれぞれの連通孔(53)は、前記複数の冷媒用プレート部材(111)のそれぞれの冷媒流路(60)を流れる冷媒を集合させる出口側冷媒タンクとしての機能を有している
請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
最も上方に配置される前記プレート部材には、冷媒用流入パイプ(20)と、冷媒用排出パイプ(21)と、が設けられ、
冷媒は、前記冷媒用流入パイプから導入され、前記冷媒用排出パイプから排出される
請求項1又は2に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載の熱交換器がある。特許文献1に記載の熱交換器は、複数のプレート部材が積層して配置された構造を有している。プレート部材には、冷媒が流れる冷媒流路、及び冷却水が流れる冷却水流路が形成されている。この熱交換器では、プレート部材により形成される冷媒流路及び冷却水流路がプレート部材の積層方向に交互に配置されている。この熱交換器では、冷媒流路を流れる冷媒と、冷却水流路を流れる冷却水との間で熱交換が行われる。
【0003】
特許文献1に記載の熱交換器では、冷媒流路にインナフィンが配置されている。インナフィンは、互いに平行に配置された板状の側壁部を有している。互いに対向する側壁部の間には、直線状の冷媒通路が形成されている。側壁部には、隣り合う冷媒通路を連通させる開口部が形成されている第1部分と、開口部が形成されていない第2部分とが冷媒通路の伸びる方向に沿って交互に並ぶように配置されている。開口部の内周部分には、冷媒通路に突出する板状の部分からなるルーバ部が形成されている。ルーバ部は、冷媒通路が延びる方向に対して平行に配置されている。
【0004】
特許文献1に記載の熱交換器では、冷媒が第1部分においてルーバ部に衝突することと、第2部分に沿って直線的に流れることとを交互に繰り返しながら流れていく。このため、冷媒の圧力は、第1部分において高くなり、第2部分において低くなる。このような冷媒の圧力の変動により冷媒流路における冷媒の分配性を高めることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-44680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の熱交換器では、冷媒の流速や流路、物性等の様々な要因により第1部分及び第2部分のそれぞれにおける冷媒の流れ方が変化するため、それらの要因により、第1部分及び第2部分に生じる冷媒の圧力差が変化する。すなわち、第1部分及び第2部分のそれぞれにおける冷媒の圧力差は、それらの要因により成り行きで変化する可能性があるため、場合によっては、冷媒流路における冷媒の分配性を高めることができないおそれがある。このように、従来の熱交換器にあっては、冷媒の分配性に改善の余地を残すものとなっている。
【0007】
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より的確に冷媒の分配性を高めることが可能な熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、積層して配置される複数のプレート部材(11)により冷媒流路(60,60a,60b,60c)及び流体流路(61)が形成され、冷媒流路を流れる冷媒と、流体流路を流れる流体との間で熱交換が行われ、冷媒は液相又は気液2相から気相に相変化する自動車用の熱交換器(10)は、冷媒流路に配置されるインナフィン(80,80a,80b、80c)を備える。インナフィンは、所定方向に延びるように形成され、且つ互いに平行に配置される複数の側壁部(81)を有する。互いに対向する側壁部の間に形成される隙間は、冷媒が流れる流路部(83)となっている。側壁部には、所定方向に複数の開口部(84)が並べて形成される。所定方向における冷媒流路の一端部には、冷媒流路に冷媒を流入させる流入口(40,40a,40b,40c)が形成される。所定方向における冷媒流路の他端部には、冷媒流路を流れた冷媒を排出する排出口(41,41a,41b,41c)が形成される。側壁部において隣り合う開口部の間に位置する部分には、所定方向に対して傾斜する傾斜面(85)が形成されている。側壁部のうち、所定方向において中央部よりも流入口に近い部分には、傾斜面として、冷媒の流れ方向を排出口から離間する方向に変化させるように傾斜する傾斜面(85a)のみが形成される。側壁部のうち、所定方向において中央部よりも排出口に近い部分には、傾斜面として、冷媒の流れ方向を排出口に向かう方向に変化させるように傾斜する傾斜面(85b)のみが形成されている。インナフィンは、波状に形成されている。インナフィンは、隣り合う側壁部を互いに連結する、湾曲している連結部(82)を更に有するものである。開口部及び傾斜面は、連結部には形成されておらず、側壁部のみに形成される。プレート部材の対角に位置する2つの角部に流入口(40)及び排出口(41)がそれぞれ形成され、冷媒流路(60)の幅(H1)に対して流入口(40)の幅(H2)及び排出口(41)の幅(H3)が短い。
上記課題を解決するために、積層して配置される複数のプレート部材(11)により冷媒流路(60,60a,60b,60c)及び流体流路(61)が形成され、冷媒流路を流れる冷媒と、流体流路を流れる流体との間で熱交換が行われ、冷媒は気相から液相に相変化する自動車用の他の熱交換器(10)は、冷媒流路に配置されるインナフィン(80,80a,80b、80c)を備える。インナフィンは、所定方向に延びるように形成され、且つ互いに平行に配置される複数の側壁部(81)を有する。互いに対向する側壁部の間に形成される隙間は、冷媒が流れる流路部(83)となっている。側壁部には、所定方向に複数の開口部(84)が並べて形成される。所定方向における冷媒流路の一端部には、冷媒流路に冷媒を流入させる流入口(40)が形成される。所定方向における冷媒流路の他端部には、冷媒流路を流れた冷媒を排出する排出口(41)が形成される。側壁部において隣り合う開口部の間に位置する部分には、所定方向に対して傾斜する傾斜面(85)が形成される。側壁部のうち、所定方向において中央部よりも流入口に近い部分には、傾斜面として、冷媒の流れ方向を排出口に向かう方向に変化させるように傾斜する傾斜面(85b)のみが形成される側壁部のうち、所定方向において中央部よりも排出口に近い部分には、傾斜面として、冷媒の流れ方向を排出口から離間する方向に変化させるように傾斜する傾斜面(85a)のみが形成されている。インナフィンは、波状に形成されている。インナフィンは、隣り合う側壁部を互いに連結する、湾曲している連結部(82)を更に有するものである。開口部及び傾斜面は、連結部には形成されておらず、側壁部のみに形成される。プレート部材の対角に位置する2つの角部に流入口(40)及び排出口(41)がそれぞれ形成され、冷媒流路(60)の幅(H1)に対して流入口(40)の幅(H2)及び排出口(41)の幅(H3)が短い。
【0009】
この構成によれば、流路部を流れる冷媒が傾斜面に沿って流れることにより、冷媒の流れ方向を、所定方向に対して傾斜する方向に変化させることができる。これにより、冷媒の流れ方向が、所定方向に対して交差する方向に変化するため、例えば冷媒流路において圧力損失が高くなる経路から圧力損失が低くなる経路に気相冷媒を流すことができる。よって、冷媒流路における液相冷媒の分配性を向上させることができる。
【0010】
なお、上記手段、特許請求の範囲に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、より的確に冷媒の分配性を高めることが可能な熱交換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態の熱交換器の正面構造を示す正面図である。
図2図2は、第1実施形態の冷媒用プレート部材の断面構造を示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態のインナフィンの斜視構造を示す斜視図である。
図4図4は、第1実施形態の冷却水用プレート部材の断面構造を示す断面図である。
図5図5は、第1実施形態の熱交換器の平面構造を示す平面図である。
図6図6は、第1実施形態の変形例の冷媒用プレート部材の断面構造を示す断面図である。
図7図7は、第2実施形態の冷媒用プレート部材の断面構造を示す断面図である。
図8図8は、第2実施形態の変形例の冷媒用プレート部材の断面構造を示す断面図である。
図9図9は、第2実施形態の他の変形例の冷媒用プレート部材の断面構造を示す断面図である。
図10図10は、第2実施形態の他の変形例の冷媒用プレート部材の断面構造を示す断面図である。
図11図11は、第2実施形態の他の変形例の冷媒用プレート部材の断面構造を示す断面図である。
図12図12は、第3実施形態の冷媒用プレート部材の断面構造を示す断面図である。
図13図13は、第4実施形態の冷媒用プレート部材の断面構造を示す断面図である。
図14図14は、第5実施形態の冷媒用プレート部材の断面構造を示す断面図である。
図15図15は、第6実施形態の冷媒用プレート部材の断面構造を示す断面図である。
図16図16は、第7実施形態の冷媒用プレート部材の断面構造を示す断面図である。
図17図17は、第9実施形態の熱交換器の正面構造を示す正面図である。
図18図18は、第9実施形態の第1冷媒用プレート部材の断面構造を示す断面図である。
図19図19は、第9実施形態の第2冷媒用プレート部材の断面構造を示す断面図である。
図20図20は、第9実施形態の第3冷媒用プレート部材の断面構造を示す断面図である。
図21図21は、第9実施形態の第2冷媒用プレート部材の変形例の断面構造を示す断面図である。
図22図22は、第9実施形態の第1冷媒用プレート部材の変形例の断面構造を示す断面図である。
図23図23は、第9実施形態の第3冷媒用プレート部材の変形例の断面構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、熱交換器の一実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
はじめに、図1に示される第1実施形態の熱交換器10について説明する。この熱交換器10は、例えば自動車用冷凍サイクルと電池冷却用冷却水回路との間の熱交換を担う電池冷却用チラーに用いられるものであって、LLC等の冷却水と冷媒との間で熱交換を行う。したがって、本実施形態の熱交換器10では、冷媒と熱交換を行う流体として、冷却水が用いられている。熱交換器10は、アルミニウム合金等の金属材料により形成されている。
【0014】
熱交換器10は、図中に矢印Zで示される方向に積層された複数のプレート部材11を備えている。各プレート部材11は、ろう付け等により互いに接合されている。以下では、矢印Zで示される方向を「プレート積層方向Z」とも称する。互いに隣り合うプレート部材11の間には隙間が形成されている。この隙間が、冷媒の流れる冷媒流路、又は冷却水の流れる冷却水流路を構成している。本実施形態では、冷却水流路が流体流路に相当する。以下では、プレート部材11のうち、冷媒流路を有するプレート部材を冷媒用プレート部材111と称し、冷却水流路を有するプレート部材を冷却水用プレート部材112と称する。冷媒用プレート部材111及び冷却水用プレート部材112は、プレート積層方向Zにおいて交互に配置されている。
【0015】
図2に示されるように、冷媒用プレート部材111は、プレート積層方向Zに直交する断面形状が略矩形カップ状に形成されている。この冷媒用プレート部材111の内部空間により冷媒流路60が構成されている。
冷媒用プレート部材111の対角に位置する2つの角部には、冷媒用の流入口40及び排出口41がそれぞれ形成されている。したがって、流入口40は冷媒流路60の一端部に形成され、排出口41は冷媒流路60の他端部に形成されている。流入口40は、冷媒流路60に冷媒を導入する部分である。排出口41は、冷媒流路60を流れた冷媒を排出する部分である。この冷媒用プレート部材111では、流入口40から排出口41に向かって冷媒が流れる。すなわち、冷媒は、図2に矢印Lで示される方向に流れる。以下では、便宜上、矢印Lで示される方向を「冷媒の主流方向L」とも称する。本実施形態では、冷媒の主流方向Lが所定方向に相当する。また、矢印Lで示される方向と直交する方向を「幅方向W」とも称する。なお、幅方向Wにおける流入口40及び排出口41のそれぞれの幅H2,H3は、冷媒流路60の幅方向Wの幅H1よりも短い。
【0016】
冷媒用プレート部材111の他方の対角に位置する2つの角部には、冷却水用の連通孔50,51がそれぞれ形成されている。連通孔50,51は、冷媒用プレート部材111の両隣に配置される冷却水用プレート部材112,112のそれぞれの冷却水流路を連通させるためのものである。冷媒用プレート部材111の内部には、冷媒流路60と連通孔50,51とを仕切るための隔壁70,71が形成されている。隔壁70,71は、冷媒流路60を流れる冷媒が連通孔50,51に流れ込むことを抑制するとともに、連通孔50,51を流れる冷却水が冷媒流路60に流れ込むことを抑制するためのものである。
【0017】
冷媒用プレート部材111の冷媒流路60には、インナフィン80が配置されている。図3に示されるように、インナフィン80は、幅方向Wにおいて平板状の金属部材を波状に折り曲げることにより形成された、いわゆるコルゲートフィンからなる。インナフィン80は、冷媒の伝熱面積を増加させるために設けられている。なお、図2では、インナフィン80の構造を模式的に示している。
【0018】
図4に示されるように、冷却水用プレート部材112は、冷媒用プレート部材111と略同一の構造を有している。但し、冷却水用プレート部材112の内部空間は冷却水流路61を構成している。また、冷却水用プレート部材112では、冷媒用プレート部材111において流入口40及び排出口41が配置されている位置に連通孔52,53がそれぞれ形成されている。連通孔52は、冷却水用プレート部材112の両隣に位置する冷媒用プレート部材111,111のそれぞれの流入口40を連通させるためのものである。連通孔53は、冷却水用プレート部材112の両隣に位置する冷媒用プレート部材111,111のそれぞれの排出口41を連通させるためのものである。
【0019】
冷却水用プレート部材112では、冷媒用プレート部材111において連通孔50,51が配置されている位置に、流入口42及び排出口43がそれぞれ形成されている。冷媒用プレート部材111を挟んで隣り合う2つの冷却水用プレート部材112,112のそれぞれの流入口42,42は、冷媒用プレート部材111の連通孔50を通じて互いに連通されている。同様に、冷媒用プレート部材111を挟んで隣り合う2つの冷却水用プレート部材112,112のそれぞれの排出口43,43は、冷媒用プレート部材111の連通孔51を通じて互いに連通されている。
【0020】
なお、図4には、インナフィンが設けられていない冷却水用プレート部材112が図示されているが、冷媒用プレート部材111と同様に、冷却水用プレート部材112の冷却水流路61にインナフィンを配置してもよい。
図1に示されるように、最も上方に配置されるプレート部材11には、冷媒用流入パイプ20、冷媒用排出パイプ21、冷却水用流入パイプ30、及び冷却水用排出パイプ31が設けられている。各パイプ20,21,30,31の内径は、図2に示される冷媒流路60の幅H1よりも短い。
【0021】
図5に示されるように、冷媒用流入パイプ20は、各冷媒用プレート部材111の流入口40及び各冷却水用プレート部材112の連通孔52に対応する位置に設けられている。冷媒用排出パイプ21は、各冷媒用プレート部材111の排出口41及び各冷却水用プレート部材112の連通孔53に対応する位置に設けられている。冷却水用流入パイプ30は、各冷却水用プレート部材112の流入口42及び各冷媒用プレート部材111の連通孔50に対応する位置に設けられている。冷却水用排出パイプ31は、各冷却水用プレート部材112の排出口43及び各冷媒用プレート部材111の連通孔51に対応する位置に設けられている。
【0022】
この熱交換器10では、冷媒用流入パイプ20から冷媒が導入される。この冷媒は、各冷媒用プレート部材111の流入口40及び各冷却水用プレート部材112の連通孔52を通じて各冷媒用プレート部材111の冷媒流路60に分配される。このように、各冷媒用プレート部材111の流入口40及び各冷却水用プレート部材112の連通孔52は、各冷媒用プレート部材111の冷媒流路60に冷媒を分配させる入口側冷媒タンクとしての機能を有している。各冷媒用プレート部材111の冷媒流路60を流れた冷媒は、各冷媒用プレート部材111の排出口41及び各冷却水用プレート部材112の連通孔53で集められた後、冷媒用排出パイプ21から排出される。このように、各冷媒用プレート部材111の排出口41及び各冷却水用プレート部材112の連通孔53は、各冷媒用プレート部材111の冷媒流路60を流れる冷媒を集合させる出口側冷媒タンクとしての機能を有している。
【0023】
また、この熱交換器10では、冷却水用流入パイプ30から冷却水が導入される。この冷却水は、各冷却水用プレート部材112の流入口42及び各冷媒用プレート部材111の連通孔50を通じて各冷却水用プレート部材112の冷却水流路61に分配される。また、各冷却水用プレート部材112の冷却水流路61を流れた冷却水は、各冷却水用プレート部材112の排出口43及び各冷媒用プレート部材111の連通孔51を通じて冷却水用排出パイプ31から排出される。
【0024】
このような熱交換器10の構造により、図1に一点鎖線L10で示されるように冷媒が流れるとともに、図1に二点鎖線L20で示されるように冷却水が流れる。この熱交換器10では、各冷媒用プレート部材111の冷媒流路60を流れる冷媒と、各冷却水用プレート部材112の冷却水流路61を流れる冷却水との間で熱交換が行われる。各冷媒用プレート部材111の流入口40から冷媒流路60に流入する際、冷媒は、液相冷媒と気相冷媒とが混合した2相冷媒となっている。冷媒流路60を流れる冷媒は、冷却水流路61を流れる冷却水と熱交換を行うことにより、冷却水の熱を吸収する。したがって、冷媒流路60では、流入口40から排出口41に向かうほど、気相冷媒が多くなる。
【0025】
次に、冷媒流路60に配置されるインナフィン80の具体的な構造について説明する。
図3に示されるように、インナフィン80は、波状に形成されており、互いに平行に配置される複数の側壁部81と、隣り合う側壁部81,81の上端部同士又は下端部同士を連結する連結部82とを有する構造となっている。
【0026】
側壁部81は、冷媒の主流方向Lに延びるように形成されている。互いに対向する側壁部81,81の間に形成される隙間は、冷媒が流れる流路部83となっている。
側壁部81には、冷媒の主流方向Lに並べて複数の開口部84が形成されている。側壁部81において隣り合う開口部84,84の間に位置する部分には、冷媒の主流方向Lに対して傾斜する傾斜面85が形成されている。開口部84及び傾斜面85は、連結部82には形成されておらず、側壁部81のみに形成されている。
【0027】
図2に示されるように、傾斜面85には、互いに傾斜方向の異なる第1傾斜面85a及び第2傾斜面85bが含まれている。具体的には、側壁部81のうち、冷媒の主流方向Lにおいて中央部よりも流入口40に近い部分には、冷媒の流れ方向を排出口41から離間する方向に変化させるように傾斜する第1傾斜面85aが形成されている。また、側壁部81のうち、冷媒の主流方向Lにおいて中央よりも排出口41に近い部分には、冷媒の流れ方向を排出口41に向かう方向に変化させるように傾斜する第2傾斜面85bが形成されている。
【0028】
次に、本実施形態の熱交換器10の動作例について説明する。
図2に示されるように、流入口40及び排出口41が対角に配置されている冷媒用プレート部材111にあっては、例えばインナフィン80が設けられていない場合、流入口40から冷媒流路60に流入した冷媒は、圧力損失の最も小さい経路である、排出口41に向かった最短経路を流れ易い。そのため、図2に二点鎖線で示される領域A1,A2に流れる冷媒流量は相対的に小さくなる。冷媒流量が少ない領域では、冷却水との熱交換による2相冷媒から気相冷媒への変化が流体経路前半で完了し、気相冷媒として流れる経路長が相対的に長くなるため、その部分を冷媒が流れる際の圧力損失がより高くなり、冷媒が更に流れ難くなる。これが、冷媒流路60における冷媒の分配性を悪化させる要因となる。
【0029】
この点、本実施形態の熱交換器10では、流入口40から冷媒流路60に流入した冷媒がインナフィン80の流路部83を通過する際に第1傾斜面85aに沿って流れることにより、冷媒の流れ方向を、幅方向Wに、より詳細には領域A1及び領域A2を通過する気相冷媒を領域A1及び領域A2外に向かう方向に変化させることができる。これにより、領域A1及び領域A2に液相冷媒が流れ易くなる、すなわち圧力損失の高い経路から圧力損失の低い経路に気相冷媒を流すことができるため、経路間の圧力損失差を低減でき、液相冷媒の分布の偏りを抑制することが可能である。よって、冷媒流路60における液相冷媒の分配性を向上させることができる。
【0030】
以上説明した本実施形態の熱交換器10によれば、以下の(1)~(4)に示される作用及び効果を得ることができる。
(1)インナフィン80に形成された傾斜面85により、冷媒の流れ方向を幅方向Wに変化させることができる。このように冷媒の流れ方向を傾斜面85により積極的に変化させることで、冷媒流路60において圧力損失が高くなる経路から圧力損失が低くなる経路に気相冷媒を流すことができるため、経路間の圧力損失差を低減でき、冷媒流路60における液相冷媒の分配性を向上させることができる。
【0031】
特に、図2に示されるように、本実施形態の熱交換器10のように、冷媒流路60の幅H1に対して流入口40及び排出口41の幅H2,H3が短い等の理由により、冷媒の分布の偏りが予め定まっているような構造が採用されている場合には、傾斜面85により、分配を均一化することの可能な方向へ冷媒の流れを制御することができるため、より的確に冷媒の分配性を向上させることが可能である。
【0032】
また、図2に示されるように冷媒流路60内で幅方向Wに冷媒の流量分布に偏りが存在する場合、温度分布にも幅方向Wに偏りが生じることになる。したがって、本実施形態の熱交換器10により冷媒の流量分布の偏りを低減することができれば、結果的に温度分布の偏りを低減することも可能である。さらに、気相及び液相を問わず、冷媒の全体的な流れを最適化することが可能であるため、インナフィン80を流れる際に冷媒に作用する圧力損失を低減することができる。
【0033】
(2)開口部84及び傾斜面85は、インナフィン80の切り込み及び変形により形成されている。このような構成によれば、インナフィン80の伝熱面積を減らすことなく、インナフィン80に開口部84及び傾斜面85を形成することができるため、伝熱面積を最大化することができる。よって、熱交換性能を向上させることができる。また、流路部83を矢印Lで示される方向に流れる冷媒が傾斜面85に衝突するため、衝突による前縁効果により、局所的な熱伝達率を向上させる効果が奏される。さらに、このようなインナフィン80の製造方法によれば、端材が発生しないため、製造性を向上させることができる。
【0034】
(3)冷媒が気相及び液相の2相状態である場合、液相冷媒は、その表面張力により、湾曲している連結部82の付近に張り付くように流れ易い。すなわち、液相冷媒は、プレート積層方向Zにおける側壁部81の上端部及び下端部に沿って流れ易い。これに対し、気相冷媒は側壁部81の中央部を流れ易い。この点、本実施形態の熱交換器10のように開口部84及び傾斜面85が側壁部81のみに形成されていれば、側壁部81に形成された傾斜面85により、気相冷媒の流れ方向を幅方向Wに変化させ易くなる。これにより、圧力損失の主要因である気相冷媒が開口部84を通過し易くなるため、複数の流路部83間の圧力損失のバランスを均一化することができる。よって、特に幅方向Wにおける冷媒分布の均一化の効果に関して高い効果を期待することができる。また、インナフィン80の製造の際に、曲げ加工が必要な連結部82と、切り込み加工が必要な側壁部81とを別々の箇所として加工することができるため、インナフィン80の製造が容易となる。よって、インナフィン80の製造性を向上させることができる。
【0035】
(4)側壁部81のうち、冷媒の主流方向Lにおいて中央部よりも流入口40に近い部分には、冷媒の流れ方向を排出口41から離間する方向に変化させるように傾斜する第1傾斜面85aが形成されている。また、側壁部81のうち、冷媒の主流方向Lにおいて中央よりも排出口41に近い部分には、冷媒の流れ方向を排出口41に向かう方向に変化させるように傾斜する第2傾斜面85bが形成されている。このような構成は、図2に示されるように冷媒の流入口40及び排出口41が冷媒用プレート部材111の対角に配置されている熱交換器10における冷媒の分配性を向上させるために特に有効である。
【0036】
(変形例)
次に、第1実施形態の熱交換器10の第1変形例について説明する。
図6に示されるように、本変形例の熱交換器10では、側壁部81において第1傾斜面85aが形成されている部分の中間に、冷媒の主流方向Lに平行な直線部85dが形成されている。同様に、側壁部81において第2傾斜面85bが形成されている部分の中間にも、冷媒の主流方向Lに平行な直線部85cが形成されている。このような構成であっても、第1実施形態の熱交換器10と同一又は類似の作用及び効果を得ることができる。
【0037】
<第2実施形態>
次に、熱交換器10の第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態の熱交換器10との相違点を中心に説明する。
冷媒の表面張力等の物性や、開口部84の開き度合いによっては、第1実施形態のインナフィン80のように第1傾斜面85a及び第2傾斜面85bを形成した場合であっても、冷媒の分配性を向上させることができない可能性がある。そのため、インナフィン80に形成される傾斜面85の形状や個数等は適宜変更可能である。以下、その具体例を図7図11を参照して説明する。
【0038】
図7に示されるインナフィン80では、側壁部81のうち、冷媒の主流方向Lにおいて中央部よりも流入口40に近い部分に、冷媒の流れ方向を排出口41に向かう方向に変化させるように傾斜する第2傾斜面85bが形成されている。また、側壁部81のうち、冷媒の主流方向Lにおいて中央よりも排出口41に近い部分に、冷媒の流れ方向を排出口41から離間する方向に変化させるように傾斜する第1傾斜面85aが形成されている。
【0039】
図8に示されるインナフィン80では、側壁部81に、冷媒の流れ方向を排出口41に向かう方向に変化させるように傾斜する傾斜面85のみが形成されている。
図9に示されるインナフィン80は、第1フィン片801及び第2フィン片802に分割されて構成されている。第1フィン片801の側壁部81には、冷媒の流れ方向を排出口41に向かう方向に変化させるように傾斜する傾斜面85のみが形成されている。同様に、第2フィン片802にも、冷媒の流れ方向を排出口41に向かう方向に変化させるように傾斜する傾斜面85のみが形成されている。このような構成によれば、第1実施形態のインナフィン80を製造した後、それを中央部で切断するだけで第1フィン片801及び第2フィン片802を成形することができるため、インナフィン80の製造が容易となる。
【0040】
図10に示されるインナフィン80では、幅方向Wに並んで配置される複数の側壁部81のうちの一部のみ開口部84及び傾斜面85が形成されている。このようなインナフィン80を用いれば、冷媒流路60を流れる任意の一部の冷媒の流れを変化させることが可能である。
【0041】
図11に示されるインナフィン80では、側壁部81に、3つの傾斜面85a~85cが交互に形成されている。なお、側壁部には、4つ以上の傾斜面が交互に形成されていてもよい。
<第3実施形態>
次に、熱交換器10の第3実施形態について説明する。以下、第1実施形態の熱交換器10との相違点を中心に説明する。
【0042】
図12に示されるように、本実施形態の冷媒用プレート部材111では、その幅方向Wの一辺の両端に設けられる2つの角部に、冷媒用の流入口40及び排出口41がそれぞれ形成されている。また、幅方向Wにおける冷媒用プレート部材111の他方の一辺の両端に設けられる2つの角部には、冷却水用の連通孔50,51がそれぞれ形成されている。
【0043】
なお、冷却水用プレート部材112は、冷媒用プレート部材111に準じた構造を有しているため、その詳細な説明は割愛する。
図12に示されるように、冷媒用プレート部材111の冷媒流路60には、インナフィン80が配置されている。本実施形態のインナフィン80の構造は、第1実施形態のインナフィン80の構造と同一である。
【0044】
このような冷媒用プレート部材111を有する熱交換器10であっても、図12に示されるようなインナフィン80を用いることにより、冷媒流路60を流れる冷媒の流れ方向を幅方向Wに変化させることが可能であるため、冷媒の分配性を向上させることができる。
<第4実施形態>
次に、熱交換器10の第4実施形態について説明する。以下、第1実施形態の熱交換器10との相違点を中心に説明する。
【0045】
図13に示されるように、本実施形態の冷媒用プレート部材111では、その長手方向の一辺に沿って冷媒用の流入口40及び排出口41が並べて配置されている。また、長手方向における冷媒用プレート部材111の他方の一辺に沿って冷却水用の連通孔50,51が並べて配置されている。
【0046】
冷媒用プレート部材111の内部には、内壁73により区画された第1冷媒流路60a及び第2冷媒流路60bが形成されている。第1冷媒流路60aの一端部には流入口40が形成されている。第2冷媒流路60bの一端部には排出口41が形成されている。第1冷媒流路60a及び第2冷媒流路60bは、それぞれの他端部において互いに連通されている。冷媒流路60a,60bには、インナフィン80c,80dがそれぞれ配置されている。インナフィン80c,80dのそれぞれの構造は、第1実施形態のインナフィン80と同一である。
【0047】
本実施形態の冷媒用プレート部材111では、流入口40から第1冷媒流路60aに流入した冷媒が、まずは矢印L1で示される方向に流れる。その後、冷媒は、第1冷媒流路60aの他端部から第2冷媒流路60bの他端部に流入して、第2冷媒流路60bを矢印L2で示される方向に流れた後、排出口41から排出される。
【0048】
このような冷媒用プレート部材111を有する熱交換器10であっても、図13に示されるようなインナフィン80c,80dを用いることにより、冷媒流路60を流れる冷媒の流れ方向を幅方向Wに変化させることが可能であるため、冷媒の分配性を向上させることができる。
【0049】
<第5実施形態>
次に、熱交換器10の第5実施形態について説明する。以下、第1実施形態の熱交換器10との相違点を中心に説明する。
図14に示されるように、本実施形態の冷媒用プレート部材111では、冷媒用の流入口40及び排出口41が略矩形状に形成されている。排出口41の幅H3は流入口40の幅H2よりも長い。このような構造を有する熱交換器10であっても、第1実施形態で述べたインナフィン80を配置することが有効である。
【0050】
<第6実施形態>
次に、熱交換器10の第6実施形態について説明する。以下、第5実施形態の熱交換器10との相違点を中心に説明する。
図15に示されるように、本実施形態の熱交換器10では、図9に例示した熱交換器10のように、インナフィン80が第1フィン片801及び第2フィン片802に分割されて構成されている。第1フィン片801と第2フィン片802との間には隙間が形成されている。
【0051】
冷媒用プレート部材111の底面には、第1フィン片801と第2フィン片802との間の隙間に位置するように、複数の突出部110が形成されている。このような突出部110が冷媒用プレート部材111に形成されていることにより、冷媒用プレート部材111の伝熱面積を増加させることができるため、冷媒の伝熱性を促進させることができる。
【0052】
<第7実施形態>
次に、熱交換器10の第7実施形態について説明する。以下、第1実施形態の熱交換器10との相違点を中心に説明する。
図16に示されるように、本実施形態の熱交換器10では、インナフィン80が流入口40及び排出口41のそれぞれの一部に重なるように配置されている。このような構造を有する熱交換器10であっても、第1実施形態で述べたインナフィン80を配置することが有効である。
【0053】
なお、インナフィン80は、その矢印Lで示される方向端部が、流入口40及び排出口41の形状に合わせた形状に加工されていても良い。
<第8実施形態>
次に、熱交換器10の第8実施形態について説明する。以下、上記の各実施形態の熱交換器10との相違点を中心に説明する。
【0054】
上記の各実施形態の熱交換器10は、冷却水と冷媒との間で熱交換を行うことにより、冷却水が冷却される一方、冷媒が蒸発する、いわゆる蒸発器として用いられるものであった。これに対し、本実施形態の熱交換器10は、冷却水により冷媒を冷却して凝縮させる、いわゆる凝縮器として用いられる。凝縮器として用いられる熱交換器10にも、第1~第7実施形態の熱交換器10の構造を適用することが可能である。凝縮器として用いられる熱交換器10では、例えば冷媒用流入パイプ20に気相冷媒が流入する。冷媒用流入パイプ20に流入した気相冷媒は、各冷媒用プレート部材111の冷媒流路60を流れる際に、冷却水用プレート部材112を流れる冷却水と熱交換を行うことにより冷却されて凝縮される。凝縮した液相冷媒は冷媒用排出パイプ21から排出される。
【0055】
このように熱交換器10が凝縮器として用いられる場合には、図7に示されるようなインナフィン80を用いることが有効である。その理由は以下の通りである。
凝縮器として用いられる熱交換器10では、流入口40に近い冷媒流路60の上流側において、液相冷媒と比較して気相冷媒の割合が大きくなる。そのため、幅方向Wに冷媒が流れる際の冷媒の圧力損失に関しては、冷媒流路60の下流側の圧力損失よりも上流側の圧力損失の方が大きくなる。このような熱交換器10において、図7に示されるような傾斜面85を有するインナフィン80を用いれば、冷媒流路60の上流側において気相冷媒を排出口41に向かって導き易くなるため、例えば図7に示される経路P1を経由する冷媒の圧力損失と、経路P2を経由する冷媒の圧力損失との差を小さくすることができる。すなわち、経路間の圧力損失差を低減できるため、冷媒流路60における液相冷媒の分配性を向上させることができる。
【0056】
<第9実施形態>
次に、熱交換器10の第9実施形態について説明する。以下、第8実施形態の熱交換器10との相違点を中心に説明する。
本実施形態の熱交換器10は、図17に示されるような構造を有している。図17に示される本実施形態の熱交換器10は、第8実施形態の熱交換器10と同様に凝縮器として用いられるものである。なお、図17では、複数のプレート部材11のうち、各パイプ20,21,30,31が設けられる端部プレート部材に符号11aが付されるとともに、この端部プレート部材11aと反対に位置するプレート部材に符号11bが付されている。また、図17において矢印Y1で示される方向は「鉛直方向上方」を示し、矢印Y2で示される方向は「鉛直方向下方」を示す。
【0057】
図17に示されるように、熱交換器10では、端部プレート部材11bにレシーバ13が組み付けられている。レシーバ13は、熱交換器10の内部を流れる冷媒が一時的に貯留される部分であって、流入した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離する。
熱交換器10には、3種類の冷媒用プレート部材111a~111cが用いられている。冷媒用プレート部材111a~111cは、この順で端部プレート部材11aから端部プレート部材11bに向かって配置されている。
【0058】
図18に示されるように、第1冷媒用プレート部材111aにおいて対角に位置する2つの角部には、冷媒用の流入口40a及び排出口41aがそれぞれ形成されている。冷媒用の流入口40aと冷却水用の連通孔51との間には冷媒用の連通孔44aが形成されている。冷却水用の連通孔51及び冷媒用の連通孔44aは、隔壁71,74により区画された独立した2つの空間にそれぞれ設けられている。冷媒用の排出口41aと冷却水用の連通孔50との間には冷媒用の連通孔45aが形成されている。冷却水用の連通孔50及び冷媒用の連通孔45aは、隔壁70,72により区画された独立した2つの空間にそれぞれ設けられている。
【0059】
図19に示されるように、第2冷媒用プレート部材111bにおいて対角に位置する2つの角部には、冷媒用の流入口40b及び連通孔44bがそれぞれ形成されている。冷媒用の流入口40bと冷却水用の連通孔50との間には冷媒用の連通孔45bが形成されている。冷却水用の連通孔50及び冷媒用の連通孔45bは、隔壁70,72により区画される独立した2つの空間にそれぞれ設けられている。冷媒用の連通孔44bと冷却水用の連通孔51との間には冷媒用の排出口41bが形成されている。冷媒用の連通孔44b及び冷却水用の連通孔51は、隔壁71a,71bにより区画された独立した2つの空間にそれぞれ設けられている。
【0060】
図20に示されるように、第3冷媒用プレート部材111cにおいて対角に位置する2つの角部には、冷媒用の流入口40c及び連通孔45cがそれぞれ形成されている。冷媒用の流入口40cと冷却水用の連通孔51との間には冷媒用の連通孔44cが形成されている。冷却水用の連通孔51及び冷媒用の連通孔44cは、隔壁71、74により区画された独立した2つの空間にそれぞれ設けられている。冷媒用の連通孔45cと冷却水用の連通孔50との間には冷媒用の排出口41cが形成されている。冷媒用の連通孔45c及び冷却水用の連通孔50は、隔壁70a,70bにより区画された独立した2つの空間にそれぞれ設けられている。
【0061】
なお、図18図20では、各冷媒用プレート部材111a~111cにおいて閉塞されている孔に点ハッチングが付されている。すなわち、図18に示される第1冷媒用プレート部材111aでは冷媒用の連通孔44aが閉塞されている。また、図19に示される第2冷媒用プレート部材111bでは、冷媒用の連通孔44bが閉塞されている。さらに、図20に示される第3冷媒用プレート部材111cでは、冷媒用の連通孔45cが閉塞されている。
【0062】
また、図18図20に示される各冷媒用プレート部材111a~111cの冷媒流路には符号60a~60cがそれぞれ付されている。
さらに、熱交換器10では、図18に示される第1冷媒用プレート部材111aの排出口41aと、図19に示される第2冷媒用プレート部材111bの流入口40bとが連通されている。また、図19に示される第2冷媒用プレート部材111bの排出口41bと、図20に示される第3冷媒用プレート部材111cの連通孔44cとが連通されている。さらに、図18に示される第1冷媒用プレート部材111aの連通孔45a、図19に示される第2冷媒用プレート部材111bの連通孔45b、及び図20に示される第3冷媒用プレート部材111cの排出口41cが連通されている。
【0063】
以上のような構造により、図17に一点鎖線L10で示されるように冷媒が流れる。すなわち、熱交換器10では、冷媒用流入パイプ20から導入された気相冷媒は、第1冷媒用プレート部材111aの流入口40aから冷媒流路60aに流入した後、排出口41aへと流れる。第1冷媒用プレート部材111aの排出口41aに流入した冷媒は、第2冷媒用プレート部材111bの流入口40bから冷媒流路60bに流入した後、排出口41bへと流れる。第2冷媒用プレート部材111bの排出口41bに流入した冷媒は、第3冷媒用プレート部材111cの連通孔44cを通じてレシーバ13に流入する。冷媒用流入パイプ20から導入された気相冷媒は、レシーバ13に到達するまでの間に、冷却水用プレート部材112を流れる冷却水と熱交換を行うことにより冷却されて凝縮し、気相冷媒及び液相冷媒が混合した2相冷媒となる。レシーバ13では、気相冷媒と液相冷媒とが分離される。リザーブタンク13に貯留されている液相冷媒は、第3冷媒用プレート部材111cの流入口40cから冷媒流路60cに流入した後、排出口41cへと流れる。この際、液相冷媒は、冷却水用プレート部材112を流れる冷却水と更に熱交換を行うことにより過冷却される。第3冷媒用プレート部材111cの排出口41cに流入した冷媒は、第2冷媒用プレート部材111bの連通孔45b、及び第1冷媒用プレート部材111aの連通孔45aを順に流れた後、冷媒用排出パイプ21から排出される。
【0064】
このような構造からなる熱交換器10では、第1冷媒用プレート部材111aの冷媒流路60aに、図18に示されるようなインナフィン80aが配置されている。インナフィン80aにおいて流入口40aの近くに設けられる第1傾斜面85aは、冷媒の流れ方向を排出口41aに向かう方向に変化させるように傾斜している。また、インナフィン80aにおいて排出口41aの近くに設けられる第2傾斜面85bは、冷媒の流れ方向を排出口41aから離間させる方向に変化させるように傾斜している。
【0065】
図19及び図20に示されるように、第2冷媒用プレート部材111b及び第3冷媒用プレート部材111cにも、第1冷媒用プレート部材111aのインナフィン80aと同様の形状を有するインナフィン80b,80cがそれぞれ配置されている。
以上のような構造を有する熱交換器10によれば、冷媒と冷却水との間の熱交換をより効率的に行うことが可能となる。また、本実施形態の熱交換器10によれば、第8実施形態の熱交換器10と同様に、経路間の圧力損失差を低減することができるため、各冷媒流路60a~60cにおける液相冷媒の分配性を向上させることが可能となる。
【0066】
なお、各冷媒用プレート部材111a~111cには、傾斜面85の向きが同じ向きになるようにインナフィン80a~80cが配置されていてもよい。具体的には、図18及び図20に示されるようなインナフィン80a,80cを第1冷媒用プレート部材111a及び第3冷媒用プレート部材1cに配置した上で、図21に示されるようなインナフィン80bを第2冷媒用プレート部材111bに配置してもよい。また、熱交換器10では、図19に示されるようなインナフィン80bを第2冷媒用プレート部材111bに配置した上で、図22及び図23に示されるようなインナフィン80a,80cを第1冷媒用プレート部材111a及び第3冷媒用プレート部材1cに配置してもよい。このような構造によれば、各冷媒用プレート部材111a~111cに対してインナフィン80a~80cを同一の向きで配置することができるため、熱交換器10の製造が容易となる。
<他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
【0067】
・各実施形態のインナフィン80,80a,80b、80cでは、開口部84及び傾斜面85のそれぞれの個数や、傾斜面85の傾斜方向や傾斜角度等を任意に変更することが可能である。
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0068】
10:熱交換器
11:プレート部材
40,40a,40b,40c:流入口
41,41a,41b,41c:排出口
60,60a,60b,60c:冷媒流路
61:冷却水流路(流体流路)
80,80a,80b、80c:インナフィン
81:側壁部
82:連結部
83:流路部
84:開口部
85:傾斜面
85a:第1傾斜面
85b:第2傾斜面
図1
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