(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】ナノサイズUV吸収剤の調製
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20240501BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20240501BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20240501BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/04
A61K8/60
A61Q17/04
(21)【出願番号】P 2019518259
(86)(22)【出願日】2017-10-09
(86)【国際出願番号】 EP2017075584
(87)【国際公開番号】W WO2018069200
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-06-11
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-08
(32)【優先日】2016-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】シュレーゲル, ベルント
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】齊藤 真由美
【審判官】宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-531842(JP,A)
【文献】特開平4-295420(JP,A)
【文献】Journal of Colloid and Interface Science,2004年,Vol.271,p.136-144
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99, A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
200nm未満である光散乱により決定される粒径Dv50を有するナノサイズ不溶性有機UV吸収剤の水性分散体を調製するための方法であって、200nm未満の粒子Dv50が得られるまで、イットリウム安定化酸化ジルコニウム研削ビーズを用いるボールミル内で、水およびアルキルポリグルコシドの混合物中の不溶性有機UV吸収剤の粗粒子の懸濁液(消泡剤を含有しない)を粉砕するステップを含む方法において、前記不溶性有機UV吸収剤の粗粒子が、1~200μmの範囲であるレーザー回折で決定される粒径Dv90を示すことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ナノサイズ不溶性有機UV吸収剤の粒径Dv50が、50~150nmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不溶性有機UV吸収剤の粗粒子が、1~150μmの範囲の粒径Dv90を示すことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記不溶性有機UV吸収剤が、式(I)
【化1】
(式中、R
1はC
1~C
18アルキル基であり、任意選択的に、フェニルによって置換されている)
の化合物であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記式(I)の化合物が、式(Ia)
【化2】
の化合物である、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、200nm未満である光散乱により決定される平均粒径分布(Dv50)を有するナノサイズ有機UV吸収剤を製造するための改善された方法に関する。
【0002】
例えば、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール(Tinosorb(登録商標)M)などのナノサイズ有機UV吸収剤は、例えば、化粧品における遮光剤として使用され得る非常に有効なUV吸収剤である。
【0003】
微粉化有機UV吸収剤の粒径は、その有効性のために重要なパラメータである。ナノサイズ範囲の粒径を有する微粉化有機UV光吸収化合物は、UV放射線の悪影響から皮膚を保護するために有効なUV吸収剤であることが示されている。しかしながら、SAZセラミック研削ビーズを用いる従来の研削技術では、このような微粉化有機UVフィルタ化合物は、エネルギー入力が高い場合にだけ得ることができる。
【0004】
国際公開第2009003934号パンフレットには、中程度のエネルギー入力しか必要としないように従来技術の欠点を克服するナノサイズ範囲の不溶性有機UV吸収剤を調製するための方法が開示されている。前記方法は、イットリウム安定化酸化ジルコニウム研削ビーズを含むボールミル内で、Plantacare 200 UP、C8~C16アルキルポリグルコシド(多義のINCI名「デシルグルコシド」でも言及される)であるアルキルポリグルコシド、および分散剤の補助としての消泡剤の存在下、有機UV吸収剤を粉砕することを包含する。
【0005】
しかしながら、国際公開第2009003934号パンフレットに開示される方法の欠点は、ボールミル粉砕プロセス中の起泡を制御するために消泡剤が必要なことである。しかしながら、消泡剤は全ての最終製品用途のために望ましくないので、消泡剤を含まない製品形態が必要とされている。
【0006】
従って、低いエネルギー入力を必要としながら消泡剤の非存在下で実行されるボールミル粉砕によって微粉化不溶性有機UV吸収剤を調製するための、簡単で産業的に実現可能であり、かつスケーラブルな方法を開発することが、当該技術分野において継続して必要とされている。
【0007】
驚くことに、ボールミル粉砕を受ける懸濁液中で使用される不溶性有機UV吸収剤の粗粒子(その乾燥粉末形態)が、150μm未満であるレーザー回折で決定される規格化粒径分布Dv90を示すと、起泡が著しく低減され得ることが見出された。別の利点は、このような不溶性有機UVフィルタの粗粒子を含む懸濁液がより液体状であり、従ってより容易に脱気および投与できることである。さらに、特定のアルキルポリグルコシドの使用は起泡をさらに低減することが見出された。
【0008】
従って、本発明は、200nm未満である光散乱により決定される粒径Dv50を有するナノサイズ不溶性有機UV吸収剤の水性分散体を調製するための方法(A)に関し、前記方法は、200nm未満の粒径Dv50が得られるまで、イットリウム安定化酸化ジルコニウム研削ビーズを用いるボールミル内で、水およびアルキルポリグルコシドの混合物中の不溶性有機UV吸収剤の粗粒子の懸濁液を粉砕するステップを含み、不溶性有機UV吸収剤の粗粒子は、1~200μmの範囲であるレーザー回折で決定される粒径Dv90を示すことを特徴とする。
【0009】
ボールミル粉砕ステップにおいて得られるナノサイズ不溶性有機UV吸収剤の全ての粒径は、Beckman Coulter Delsa Nano Sを用いて光散乱により決定される(すなわち光子相関分光法(PCS))。この粒径特性評価法に関するさらなる情報は、例えば、Renliang Xu,Kluwer Academic Publishersによる“Particle Characterization:Light Scattering Methods”(ISBN 0-306-47124-8)において見出すことができる。他に何も記述されなければ、ナノサイズ不溶性有機UV吸収剤に関する全ての粒径は、光散乱により決定されるDv50値(体積直径、母集団の50%はこの点よりも下にあり、50%はこの点よりも上にある)である。粒径は、一般的に、好ましくは3mg/mlの濃度レベルで、超純水(Mili-Q精製)などの水中のナノサイズ不溶性有機UV吸収剤の懸濁液において決定される。
【0010】
好ましくは、本発明の全ての実施形態において、ボールミル粉砕ステップで得られるナノサイズ不溶性有機UV吸収剤の粒径Dv50は、50~150nmの範囲、より好ましくは75~125nmの範囲、最も好ましくは80~110nmの範囲である。さらにより好ましい実施形態では、ナノサイズ不溶性有機UV吸収剤は、50~80nmの範囲のDv10、75~125nmの範囲のDv50および140~180nmの範囲のDv90を示し、より好ましくは、55~75nmの範囲のDv10、80~110nmの範囲のDv50および150~175nmの範囲のDv90を示す。
【0011】
ボールミル粉砕ステップで使用される不溶性有機UV吸収剤の粗粒子の全ての粒径は、Malvern Instruments Ltd.,UKの「Mastersizer 3000」を用いてレーザー回折技術により決定される。この粒径特性評価法に関するさらなる情報は、例えば、“Basic principles of particle size analytics”,Dr.Alan Rawle,Malvern Instruments Limited,Enigma Business Part,Grovewood Road,Malvern,Worcestershire,WR14 1XZ,UKおよび“Manual of Malvern particle size analyzer”において見出すことができる。特に、ユーザーマニュアル番号MAN0096(Issue 1.0,Nov.1994)が言及される。他に何も記述されなければ、不溶性有機UV吸収剤の粗粒子に関する全ての粒径は、レーザー回折により決定されるDv90値(体積直径、母集団の90%はこの点よりも下にあり、10%はこの点よりも上にある)である。粒径は、乾燥形態、すなわち粉末として、または懸濁液中で決定され得る。好ましくは、不溶性有機UVフィルタの粗粒子の粒径は、粉末として決定される。
【0012】
好ましくは、本発明の全ての実施形態において、不溶性有機UV吸収剤の粗粒子は、1~150μmの範囲、好ましくは25~125μmの範囲、最も好ましくは50~100μmの範囲、例えば、特に75~90μmの範囲である、レーザー回折で決定されるDv90を示す。特に好ましい実施形態では、不溶性有機UV吸収剤の粗粒子は、1~15μmの範囲のDv10、10~40μmの範囲のDv50および70~100μmの範囲のDv90を示し、より好ましくは、5~10μmの範囲のDv10、20~35μmの範囲のDv50および75~90μmの範囲のDv90を示す。
【0013】
「不溶性」という用語は、例えば、C12~15アルキルベンゾアート、プロピレングリコール、鉱油などの一般的な化粧用油中で溶解性を示すが、水中でも0.01重量%未満、好ましくは0.05重量%未満、最も好ましくは0.03重量%未満の溶解性を示すUV吸収剤を指す。
【0014】
好ましくは、UV吸収剤は、式(I)
【化1】
(式中、R
1はC
1~C
18アルキル基であり、任意選択的に、フェニルによって置換されている)
の化合物から選択される。
【0015】
C1~C18アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル-、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,3,3-テトラメチルブチル基 1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、n-ヘプチル、2-エチルヘキシル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、およびn-ドデシルなどの分枝状または非分枝状アルキル基である。好ましくは、R1は、分枝状C3~C8アルキル基、例えば、最も好ましくは1,1,3,3-テトラメチルブチル基などである。
【0016】
本発明の全ての実施形態において最も好ましくは、式(I)のUV吸収剤は、式(Ia)
【化2】
の化合物であり、これは、2,2’-メチレン-ビス-(6(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノール[CAS 103597-45-1]として知られている。
【0017】
不溶性有機UV吸収剤の粗粒子は、例えば、適切な結晶化または乾式もしくは湿式予備粉砕(例えば、コロイドミルによる)によって調製することができる。2,2’-メチレン-ビス-(6(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールの適切な粗粒子は、例えば、Hongkun Group(中国)により供給されるGrandsorb UV360を購入し、適切な粒径Dv90を示すバッチを選択することによって得ることができる。
【0018】
特定の実施形態では、本発明は、ナノサイズ不溶性有機UV吸収剤を含む水性分散体を調製するための方法(B)に関し、これは、連続的なステップ
(i)不溶性有機UV吸収剤の粗粒子を水およびアルキルポリグルコシドの混合物中に懸濁させるステップと、その後の
(ii)このようにして得られた懸濁液を、200nm未満である光散乱により決定される粒径Dv50が得られるまで、イットリウム安定化酸化ジルコニウム研削ビーズを含むボールミル内で粉砕するステップと
を含む、上記で概説された全ての選択および定義を有する方法(A)である。
【0019】
特定の実施形態では、方法(B)は、ステップ(i)の後に行われる付加的なステップ(ia)を包含し、このステップは、例えば攪拌による、得られた懸濁液の脱気(すなわち、その中に懸濁された気泡の除去)である。好ましくは、脱気は、0.5~3時間にわたって、より好ましくは1~2時間にわたって、そして20~80℃の範囲、好ましくは50~80℃の範囲、最も好ましくは55~75℃の範囲、例えば60~70℃の範囲で選択される温度において行われる。最も好ましくは、脱気は、60~70℃の範囲で選択される温度で約1~2時間にわたって行われ、その後、懸濁液は、最も好ましくは室温(すなわち、約20~22℃)まで冷却される。
【0020】
アルキルポリグルコシドは、好ましくは、式
CnH2n+1O(C6H10O5)xH (II)
(式中、nは、8~16の整数であり、かつ
xはグルコシド部分(C6H10O5)の平均重合レベルであり、1~1.7、好ましくは1.1~1.7、例えば1.2~1.7、または1.4~1.6の範囲である)
を示す。
【0021】
本発明に従う適切なアルキルポリグルコシドは、特に、例えば、BASFからPlantaCare 2000 UPとして入手可能なC8~16アルキルポリグルコシド、または例えば、Zheijang Taizhou Tu-Poly Co.LtdからAPG Green APG 0810として、もしくはCognisからGlucopon 225DKとして市販されているC8~10アルキルポリグルコシドなどの、INCI名「デシルグルコシド」でも知られているアルキルポリグルコシド[CAS 68515-73-1]である。
【0022】
本発明に従う特に有利なアルキルポリグルコシドは、C8~10アルキルポリグルコシド、より好ましくはカプリリル(C8)およびカプリル(C10)ポリグルコシドから本質的になるアルキルポリグルコシドである。好ましくは、このようなカプリリル(C8)およびカプリル(C10)ポリグルコシドはさらに、3:1~1:3の範囲、好ましくは約2:1~1:2の範囲、最も好ましくは1.5:1~1:1.5の範囲である、カプリリル(C8)モノグルコシド対カプリル(C10)モノグルコシドの比率(%/%、ここで、全ての%は、HPLC-MSにより決定される面積%である)を示す。さらに、HPLC-MSにより決定され、実施例において説明されるように、このようなC8~10アルキルポリグルコシドは、好ましくは、3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、最も好ましくは1.5重量%以下のC12アルキルモノグルコシドを含有する。このようなアルキルポリグルコシドは、高級(すなわちC14~16)アルキルポリグルコシドを少しも含まない(すなわち、全く含有しない)ことが理解される。
【0023】
これらのC8~10アルキルポリグルコシドは、さらにより好ましくは、1~1.7、好ましくは1.1~1.6、最も好ましくは1.1~1.4の範囲、例えば、特に1.1~1.3の範囲であるグルコシド部分の平均重合レベルxを示す。
【0024】
さらに、カプリリル(C8)およびカプリル(C10)ポリグルコシドから本質的になる本発明に従うC8~10アルキルポリグルコシドは、例えばHPLC-MSにより決定されるように、少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、最も好ましくは少なくとも70%のそれぞれのモノグルコシドを有利に含有する。
【0025】
本発明に従うC8~10アルキルポリグルコシドは、実質的に(すなわち、本質的に)C9アルキルポリグルコシドを少しも含まない、すなわち本質的にC9アルキルポリグルコシドを全く含有しないことがさらに好ましい。これは、C8~10アルキルポリグルコシド中のあらゆるC9アルキルポリグルコシドの量が、C8~10アルキルポリグルコシドの全重量を基準として、0.1重量%未満、好ましくは0.05重量%未満、最も好ましくは0.01%未満、例えば、特に0.005重量%未満であることを意味する。
【0026】
本発明に従う全ての実施形態において最も好ましいのは、C8~16アルキルポリグルコシドの使用と比較して起泡のさらなる低減をもたらすので、トウモロコシ由来のグルコースと、ココナッツおよびパーム核油に由来するC8およびC10脂肪アルコールとから製造されたC8~10アルキルポリグルコシドなどのC8~10アルキルポリグルコシドの使用であり、これは、例えば、Shanghai Fine Chemicalにより、水性分散体として商品名Green APG 0810で販売されている。
【0027】
本発明に従う方法において使用される水は、好ましくは、特に、イオン、カルシウム、ナトリウム、およびクロライドなどのミネラル含量および溶解イオン含量の大部分が除去された脱イオン(DI)水などの精製水である。DI水は、その使用に応じていくつかのタイプに分類される。好ましくは、本発明に従う方法において、タイプIIのDI水またはタイプIIIのDI水(U.S.National Committee for Clinical Laboratory Standards(NCCLS):Maximum Contaminant Levels in Type I-III Purified Waterに従う)が使用される。
【0028】
ステップ(i)で調製される懸濁液は、好ましくは、懸濁液の全重量を基準として、かつ成分a)~c)の合計が100重量%になることを条件として、
a)45~55重量%、好ましくは48~52重量%の不溶性有機UV吸収剤の粗粒子、
b)10~20重量%、好ましくは13~17重量%のアルキルポリグルコシド、および
c)25~40重量%、好ましくは30~35重量%の水
からなる。
【0029】
本発明に従って使用される「からなる」という用語は、不溶性有機UV吸収剤、アルキルポリグルコシドおよび水の総量が、理想的に、合計して100重量%になることを意味する。しかしながら、それぞれの原材料により導入される少量の不純物または添加剤が存在し得ることは排除されない。しかしながら、本発明に従うボールミル粉砕プロセスにおいて使用される懸濁液が消泡剤を含有しないことは十分に理解される。
【0030】
ボールミル粉砕ステップ中の温度は重要でなく、当業者によって容易に選択することができる。好ましくは、ボールミル粉砕は、20~45℃の範囲、例えば、好ましくは25~35℃の範囲で選択される温度(懸濁液容器内で測定される)で実施される。
【0031】
本発明で使用されるイットリウム安定化酸化ジルコニウム研削ビーズは高密度を示し、かつ高度に球状であり、これにより、特に水平ミルに適する。本発明に従う典型的なイットリウム安定化酸化ジルコニウム研削ビーズは、以下の特性:
化学組成 :95%ZrO2、5%Y2O3
比密度(Specific Density):6.1g/cm3
曲げ強度 :1200MPa
硬度(Hv10) :1250
弾性係数 :210GPa
15破壊靭性 :6.0Mpam0
を有する。このような研削ビーズは、例えば、Tosho Ceramics(日本)で市販されている。
【0032】
研削ビーズの直径は、ナノサイズ不溶性有機UV吸収剤の起泡および最終粒径分布を考慮して、これが特定の良好な結果をもたらすので、好ましくは、0.1~0.5mmの範囲、好ましくは0.1~0.4mmの範囲、より好ましくは0.2~0.4mmの範囲、最も好ましくは0.25~0.35mmの範囲で選択される。
【0033】
不溶性のナノサイズ有機UV吸収剤を調製するためのボールミル粉砕装置として、例えば、現代のボールミルが使用され得る;これらのタイプのミルの製造業者は、例えば、Netzsch(LMZミル)、またはBachhoferである。本発明に従う好ましい粉砕装置は、NetzschによるLMZ(例えば、LMZ4またはLMZ60)およびWilly A.Bachofen AGからのDyno-Mill ECM-APなどの攪拌ボールミルである。
【0034】
従って、本発明は、ボールミルがLMZおよびDyno-Mill ECM-APからなる群から選択される、本発明に従う方法も包含する。
【0035】
粉砕(ステップ(ii))で得られた水性分散体におけるナノサイズUV吸収剤の沈下を回避するために、好ましくは、キサンタンガム[CAS 11138-66-2]、ジェランガム[CAS 71010-52-1]および/またはカルボキシメチルセルロース[CAS 9000-11-7/9004-32-4]などの適切な増粘剤、好ましくはキサンタンガムが、後続のステップで、好ましくは研削ビーズを除去した後に添加される。本発明に従って使用される特定の好ましいキサンタンガムグレードはRhodicare Sとして入手可能であり、これは、1%のKCl溶液として1200~1600cpsの粘度を有する(Brookfield LVT、60rpm、スピンドル3、24℃)。
【0036】
本発明に従うナノサイズ不溶性有機UV吸収剤を含む水性分散体に添加される増粘剤の量は、水性分散体の全重量を基準として、好ましくは、0.05~2重量%の範囲、例えば、より好ましくは0.1~1重量%の範囲、例えば、最も好ましくは0.1~0.5重量%の範囲で選択される。
【0037】
好ましくは、本発明に従うナノサイズ不溶性有機UV吸収剤を含む水性分散体の粘度は、50~1500mPasの範囲、例えば、好ましくは100~1250mPasの範囲、最も好ましくは100~1000mPasの範囲で選択される(DIN53019に従う)。
【0038】
さらに、本発明に従うナノサイズ不溶性有機UV吸収剤を含む水性分散体は、有利に、付加的な量のプロピレングリコールをさらに含み、これも、粉砕ステップ(ii)および研削ビーズの除去の後に添加される。好ましくは、水性分散体中のプロピレングリコールの量は、ナノサイズ不溶性有機UV吸収剤を含む水性分散体の全重量を基準として、0.05~2重量%の範囲、例えば、より好ましくは0.1~1重量%の範囲、例えば、最も好ましくは0.1~0.5重量%の範囲で選択される。
【0039】
最も好ましくは、キサンタンガムおよびプロピレングリコールの混合物が、粉砕ステップ(ii)および研削ビーズの除去の後に、水性分散体に添加される。
【0040】
従って、特定の有利な実施形態では、本発明は、後続するステップ
(iii)研削ビーズを除去するステップと、その後の
(iv)粉砕された懸濁液に、増粘剤、好ましくはキサンタンガムと、プロピレングリコールとの混合物を添加するステップと
を含む、上記で概説された全ての選択および定義を有する方法(B)である方法(C)を包含する。
【0041】
本発明の全ての実施形態において、ナノサイズ不溶性有機UV吸収剤の水性分散体に添加されるプロピレングリコールおよびキサンタンガムの混合物の重量比(w/w)は、好ましくは、3:1~1:3の範囲、より好ましくは2.5:1~1:1の範囲、最も好ましくは約2:1の範囲で選択される。
【0042】
ステップ(iv)の温度は、好ましくは、30~50℃の範囲、例えば、より好ましくは35~45℃の範囲で選択される。
【0043】
以下の実施例は、本発明の組成物および効果をさらに説明するために提供される。これらの実施例は単なる実例であって、本発明の範囲を限定することは全く意図されない。
【0044】
[実施例1:粉砕]
a)30~35℃において100lの容器に22kgの精製水を添加した。その後、9.8kgのGreen APG 0810を添加した。次に、86μm(Malvern Mastersizer 3000、粉末測定、空気圧0.2バールを用いてレーザー回折により測定)の粗い粒径Dv90を有する33kgのGrandsorb UV360を30分間にわたってゆっくり添加した後、得られた懸濁液を65℃において穏やかな攪拌下で2時間脱気した。次に、得られた懸濁液を25~30℃まで冷却した。その後、約100nm(3mg/mlの調整濃度において、Coulter Delsa Nano Sを用いて光散乱により測定)の粒径Dv50が得られるまで、イットリウム安定化酸化ジルコニウム研削ビーズ(0.3mm、95%ZrO2、5%Y2O3 Tosoh Ceramic(日本)から)を用いて、50kgの得られた懸濁液をLMZ4において粉砕した。粉砕中にほんのわずかな泡の形成が観察され、これは、粉砕プロセスにより十分に容認されるものであった。研削ビーズを除去した後、161gのプロピレングリコールおよび80.5gのキサンタンからなる懸濁液を約40℃において穏やかな攪拌下でゆっくり添加し、最終製品形態が得られた。
b)262μmの粗い粒径Dv90を有するGrandsorb UV360を用いて、a)に概説されるものと同じ実験を繰り返した。この場合、粉砕の開始の直後に、粉砕プロセスの終了につながる制御されない起泡が観察された。
c)PlantaCare 2000 UPを用いて、a)に概説されるものと同じ実験を繰り返した。この場合、粉砕の間にGreen APG 0810と比べてより多くの起泡が観察されたが、まだプロセスを最後まで実行するために容認できた。
【0045】
[実施例2:アルキルポリグルコシドの分析]
それぞれのサンプルをテトラヒドロフラン/水(50/50)の混合物中に溶解させ(約1mg/ml)、0.1%メタンスルホン酸を含む水/アセトニトリル勾配(15分かけて5~>90%アセトニトリル)で逆相YMC Pro C4カラムを用いてHPLC質量分析により分析した。検出は、ESポジティブモードで動作するAgilent 6130シングルMSDにおいて実施した。TICおよびEICを使用して、対象の化合物の相対分布を決定した。アルキルモノグルコシドの相対分布は、表1において概説される。全ての%は面積%である。
【0046】