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  • 特許-樹脂枠付き膜電極接合体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】樹脂枠付き膜電極接合体
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0273 20160101AFI20240501BHJP
   H01M 8/0276 20160101ALI20240501BHJP
   H01M 8/0284 20160101ALI20240501BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240501BHJP
【FI】
H01M8/0273
H01M8/0276
H01M8/0284
H01M8/10 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020010777
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021118100
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-08-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山浦 訓寛
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-035311(JP,A)
【文献】特開2009-026528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に開口部を有する硬質樹脂製の枠部材、前記枠部材に重ね合わされて前記開口部を覆う膜電極接合体、及び前記枠部材の一方の面に設けられ、前記開口部の周縁に沿って延在する第1接着面と、前記膜電極接合体の一方の面に設けられる第2接着面とにより挟まれて、前記枠部材と前記膜電極接合体とを接着する接着シートを備える樹脂枠付き膜電極接合体において、
前記枠部材は、前記第1接着面に係合部を有しており、
前記接着シートは、前記係合部に係合される被係合部を有しており、
前記係合部は、前記膜電極接合体を貫通しないものである、
樹脂枠付き膜電極接合体。
【請求項2】
前記係合部及び前記被係合部が、前記第1接着面の延在方向において互いに間隔をおいて複数設けられている、
請求項1に記載の樹脂枠付き膜電極接合体。
【請求項3】
前記係合部は、前記第1接着面から前記膜電極接合体に向かって突出する突部であり、
前記被係合部は、前記突部に係合される孔または凹部である、
請求項1または請求項2に記載の樹脂枠付き膜電極接合体。
【請求項4】
前記突部は、前記接着シートを貫通しており、
前記膜電極接合体には、前記突部の先端が嵌合する嵌合部が設けられている、
請求項3に記載の樹脂枠付き膜電極接合体。
【請求項5】
請求項1~請求項4に記載の樹脂枠付き膜電極接合体を組み立てる組立方法であって、
前記接着シートを前記枠部材の前記第1接着面に載置する第1載置工程と、
前記第1接着面と前記第2接着面とによって前記接着シートを挟むように前記枠部材及び前記接着シートに前記膜電極接合体を載置する第2載置工程と、を備え、
前記第1載置工程では、前記被係合部が前記係合部に係合されることで前記枠部材に対する前記接着シートの変位が規制される、
樹脂枠付き膜電極接合体の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂枠付き膜電極接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池は、単セルを複数積層して構成される燃料電池スタックを備えている。単セルは、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly、以下、MEA)と、MEAの周縁部を支持する樹脂枠部材と、膜電極接合体及び樹脂枠部材を挟む一対のセパレータとを備えている。
【0003】
MEAは、固体高分子電解質膜(以下、電解質膜)と、電解質膜の一方の面に接合されたアノード電極と、電解質膜の他方の面に接合されたカソード電極とを有している。
特許文献1には、MEAと樹脂枠部材とが一体に組み付けられた樹脂枠付きMEAが開示されている。樹脂枠部材におけるMEA側には内側肉薄部が設けられている。内側肉薄部に設けられた接合面と、MEAの外周部に設けられた露出面との間に、熱可塑性樹脂を含む接着剤シートを配置した状態で、加熱処理と加圧処理とを同時に施すことによって接着剤シートが加熱溶融されることでMEAと樹脂枠部材とが接着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-68956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうした樹脂枠付きMEAにおいては、接着剤シートが薄く、軽いことから、樹脂枠部材上の所定の位置に接着剤シートを載置する際に、静電気や、風、MEAとの接触等によって接着剤シートが所定の位置からずれやすいといった問題がある。
【0006】
本発明の目的は、接着シートの位置ずれを抑制することのできる樹脂枠付き膜電極接合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための樹脂枠付き膜電極接合体は、中央に開口部を有する硬質樹脂製の枠部材、前記枠部材に重ね合わされて前記開口部を覆う膜電極接合体、及び前記枠部材の一方の面に設けられ、前記開口部の周縁に沿って延在する第1接着面と、前記膜電極接合体の一方の面に設けられる第2接着面とにより挟まれて、前記枠部材と前記膜電極接合体とを接着する接着シートを備える。前記枠部材は、前記第1接着面に係合部を有しており、前記接着シートは、前記係合部に係合される被係合部を有している。
【0008】
同構成によれば、枠部材と膜電極接合体とを接着シートを介して接着するに先立ち、接着シートを枠部材の第1接着面に載置する際、接着シートの被係合部が第1接着面に設けられた係合部に係合される。これにより、枠部材に対する接着シートの変位が規制されるようになる。したがって、接着シートの位置ずれを抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接着シートの位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】樹脂枠付き膜電極接合体の一実施形態について、枠部材、接着シート、及び膜電極接合体を分離して示す斜視図。
図2】同実施形態の樹脂枠付き膜電極接合体を示す平面図。
図3図2の3-3線に沿った断面図。
図4】変形例の樹脂枠付き膜電極接合体を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図4を参照して、一実施形態について説明する。
図1及び図2に示すように、樹脂枠付き膜電極接合体は、燃料電池スタックの単セルの一部を構成するものであり、中央に開口部11を有する枠部材10、枠部材10に重ね合わされて開口部11を覆う膜電極接合体(以下、MEA20)、及び枠部材10とMEA20とを接着する接着シート30を備えており、全体として長方形板状である。
【0012】
以下、樹脂枠付きMEAを構成する各部品について詳細に説明する。
<MEA20>
図1及び図2に示すように、MEA20は、固体高分子電解質膜(以下、電解質膜)と、電解質膜の一方の面に接合されたカソード電極と、電解質膜の他方の面に接合されたアノード電極(いずれも図示略)とを有している。
【0013】
MEA20は、平面視四角形状である。なお、MEA20の両面には、ガス拡散層(図示略)が接合されている。
<枠部材10>
図1及び図2に示すように、枠部材10は、長方形枠状であり、中央に平面視長方形状の開口部11を有している。枠部材10は、硬質樹脂製である。
【0014】
図1図3に示すように、枠部材10の一方の面(図1及び図3の上面)の内周部には、開口部11の周縁に沿って平面視長方形枠状の第1接着面12が延在している。
図1及び図2に示すように、第1接着面12には、MEA20に向かって突出する円柱状の複数の突部13が設けられている。各突部13が、本発明に係る係合部に相当する。突部13の突出高さは、後述する接着シート30の厚さと同一である。突部13は、第1接着面12の延在方向において互いに間隔をおいて設けられている。より詳しくは、突部13は、第1接着面12における各辺の中央部に1つずつ設けられている。
【0015】
<接着シート30>
図1及び図2に示すように、接着シート30は、熱可塑性樹脂を接着剤として含む所謂ホットメルト接着シートであり、平面視長方形枠状である。接着シート30の外縁形状は、MEA20の外縁形状と同一であり、枠部材10の第1接着面12の外縁形状よりも僅かに小さい。接着シート30の内縁形状は、枠部材10の第1接着面12の内縁形状よりも僅かに大きい。
【0016】
図1及び図3に示すように、接着シート30は、枠部材10の第1接着面12と、MEA20の一方の面(図1及び図3の下面)に設けられる第2接着面22とにより挟まれて、枠部材10とMEA20とを接着する。
【0017】
接着シート30は、各突部13に係合される複数の孔33を有している。各孔33が、本発明に係る被係合部に相当する。
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0018】
枠部材10とMEA20とを接着シート30を介して接着するに先立ち、接着シート30を枠部材10の第1接着面12に載置する際、接着シート30の孔33が第1接着面12に設けられた突部13に係合される。これにより、枠部材10に対する接着シート30の変位、特に面方向の変位が規制されるようになる(以上、作用1)。
【0019】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)枠部材10は、第1接着面12に係合部としての突部13を有しており、接着シート30は、係合部としての突部13に係合される被係合部としての孔33を有している。
【0020】
こうした構成によれば、上述した作用1を奏する。したがって、接着シート30の位置ずれを抑制することができる。
(2)係合部としての突部13及び被係合部としての孔33が、第1接着面12の延在方向において互いに間隔をおいて複数設けられている。
【0021】
こうした構成によれば、枠部材10に対する接着シート30の面方向の変位が一層規制されるようになる。したがって、接着シート30の位置ずれをより抑制することができる。
【0022】
(3)係合部は、第1接着面12からMEA20に向かって突出する突部13であり、被係合部は、突部13に係合される孔33である。
枠部材10は、接着シート30に比べて厚いことから、容易に形成することができ、形状の自由度も大きい。
【0023】
上記構成によれば、接着シート30に設けられる被係合部が孔33であるため、接着シート30を容易に形成することができる。
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0024】
・枠部材10の外周部には、酸化ガスの供給を行うマニホールド孔、冷却液の供給を行うマニホールド孔、燃料ガスの供給を行うマニホールド孔、酸化ガスの排出を行うマニホールド孔、冷却液の排出を行うマニホールド孔、燃料ガスの排出を行うマニホールド孔が設けられていてもよい。
【0025】
図3に示すように、突部13が、接着シート30を貫通してもよい。この場合、MEA20に、突部13の先端が嵌合する嵌合部23が設けられていてもよい。
こうした構成によれば、枠部材10とMEA20とを接着シート30を介して接着するに先立ち、接着シート30が枠部材10の第1接着面12に載置されると、枠部材10の第1接着面12に設けられた突部13が接着シート30を貫通する。次に、MEA20が枠部材10及び接着シート30に載置されると、接着シート30から突出している突部13の先端がMEA20の嵌合部23に嵌合される。これにより、枠部材10に対するMEA20の変位が規制されるようになる。したがって、接着シート30及びMEA20の双方の位置ずれを抑制することができる。
【0026】
・係合部及び被係合部は、本実施形態で例示した形状に限定されない。例えば、被係合部は、係合部としての突部13が貫通しない凹部であってもよい。また、図4に示すように、接着シート30の外縁から外周側に突出する突部33aを被係合部とし、枠部材10に設けられて突部33aが係合する凹部13aを係合部としてもよい。この場合、枠部材10の一方の面の内周部には、外周部よりも板厚が薄い平面視長方形枠状の薄肉部14を設けるようにすればよい。このとき、薄肉部14の表面を第1接着面12とすればよい。
【0027】
・本実施形態では、第1接着面12の各辺に1つずつ係合部が設けられているものを例示したが、係合部の数はこれに限られるものではない。すなわち、第1接着面12の各辺に2つ以上の係合部を設けるようにしてもよい。また、例えば対向する一対の辺のいずれか一方に係合部を設けるようにしてもよい。また、枠部材に設けられる係合部は1つでもよい。ここで、上記のように係合部を変更した場合、それに伴って被係合部は、係合部に対応する位置に設けるようにすればよい。
【符号の説明】
【0028】
10…枠部材
11…開口部
12…第1接着面
13…突部
13a…凹部
14…薄肉部
20…MEA
22…第2接着面
23…嵌合部
30…接着シート
33…孔
33a…突部
図1
図2
図3
図4