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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】ハードコートフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240501BHJP
   C08J 7/046 20200101ALI20240501BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20240501BHJP
【FI】
B32B27/00 A
C08J7/046 Z CEZ
G02B1/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020011950
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021115805
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130812
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100164161
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 彩
(72)【発明者】
【氏名】泉 香
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 慎
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉川 英汰
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小泉 準也
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-017991(JP,A)
【文献】特開2014-162889(JP,A)
【文献】特開2007-246907(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079429(WO,A1)
【文献】特開2006-190189(JP,A)
【文献】特開2004-269605(JP,A)
【文献】特開2012-173627(JP,A)
【文献】特開2001-205179(JP,A)
【文献】特開2017-020007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
C08J 7/04-7/06
G02B 1/10-1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニルスルホンを主成分とする基材フィルム上に厚さ1.0μm~12.0μmのハードコート層を設けたハードコートフィルム。
【請求項2】
前記ポリフェニルスルホンを主成分とする基材フィルムの厚さが30μm~100μmであることを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
前記ハードコートフィルムのJIS-K-5600-5-4に準じた試験法による鉛筆硬度がB以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
ポリフェニルスルホンを主成分とする厚さが30μm~100μmである基材フィルム上に厚さ1.0μm~12.0μmのハードコート層を設けたハードコートフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン系樹脂を主成分とする基材フィルム上に、ハードコート層を設けたハードコートフィルムに関する。更に詳しくは、エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置等のパネルディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、タッチパネル等の表示装置部品等に用いるフィルムとして使用することができるハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の表示面には、取り扱い時に傷が付いて視認性が低下しないように耐擦傷性を付与することが要求されている。そのため、基材フィルムにハードコート層を設けたハードコートフィルムを利用して、ディスプレイの表示面の耐擦傷性を付与することが一般的に行われている。近年、表示画面上で表示を見ながら指やペン等でタッチすることでデータや指示を入力できるタッチパネルの普及により、この様な光学部材に用いるハードコートフィルムに対する機能的要求はさらに高まっている。
【0003】
このようなハードコートフィルムとしては、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等の基材フィルム上に、ハードコート層を形成したものが一般的に用いられているが、TACフィルムは耐湿熱性に劣るという欠点があり、耐久性を改善するためにポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いることが開示されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-7352号公報
【文献】特開2018-83915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2では、耐薬品性や熱収縮率等の面でハードコートフィルムとして用いるには不十分であった。
【0006】
そこで、本発明は高い耐熱性、寸法安定性、を有しているとともに、耐擦傷性、鉛筆硬度、インク密着性、耐薬品性、透過率、表面平滑性、水蒸気バリア性、滑り性、巻取適正が向上したハードコートフィルムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は下記の(1)~(4)を提供する。
(1) スルホン系樹脂を主成分とする基材フィルム上にハードコート層を設けたハードコートフィルム。
(2) 前記スルホン系樹脂が、ポリエーテルスルホンであることを特徴とする(1)に記載のハードコートフィルム。
(3) 前記スルホン系樹脂が、ポリフェニルスルホンであることを特徴とする(1)に記載のハードコートフィルム。
(4) スルホン系樹脂を主成分とする基材フィルム上にハードコート層を設けたハードコートフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い耐熱性、寸法安定性、を有しているとともに、耐擦傷性、鉛筆硬度、インク密着性、ハードコート層密着性、耐薬品性、熱安定性、透過率、表面平滑性、水蒸気バリア性、滑り性、巻取適正が向上したハードコートフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明はスルホン系樹脂を主成分とする基材フィルム上に、ハードコート層を設けたハードコートフィルムである。
【0010】
本発明において、スルホン系樹脂を主成分とする基材フィルムとは、その主鎖に少なくとも炭素およびスルホニル基を含む結合を形成する反応によって得られる高分子化合物の組成物からなるスルホン系樹脂を主成分とする透明な基材フィルムのことである。
【0011】
本発明において、スルホン系樹脂とは、その主鎖に少なくとも炭素およびスルホニル基を含む結合を形成する反応によって得られる高分子化合物の組成物からなるスルホン系樹脂であり、具体的にはポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルスルホン(PPSU)などが挙げられる。これらのPES、PPSUを主成分とする基材フィルムの膜厚は、PESは25~100μm程度、PPSUは30~100μm程度であることが好ましいが、その限りではない。
【0012】
上記基材フィルム成形の方法としては、例えば、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法等、任意の適切なフィルム成形法が挙げられる。溶融押出法が好ましい。溶融押出法は溶剤を使用しないので、製造コストや溶剤による地球環境や作業環境への負荷を低減することができる。
【0013】
上記溶融押出法としては、例えば、Tダイ法、インフレーション法等が挙げられる。成形温度は、好ましくは150~350℃、より好ましくは200~300℃である。
【0014】
上記Tダイ法でフィルム成形する場合は、公知の単軸押出機や二軸押出機の先端部にTダイを取り付け、フィルム状に押出されたフィルムを巻取って、ロール状のフィルムを得ることができる。この際、巻取りロールの温度を適宜調整して、押出方向に延伸を加えることで、1軸延伸することも可能である。また、押出方向と垂直な方向にフィルムを延伸することにより、同時2軸延伸、逐次2軸延伸等を行うこともできる。
【0015】
本発明において、ハードコート層は、電離線硬化型樹脂及びレベリング剤の他に、必要に応じて重合開始剤、消泡剤、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、湿潤分散剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤、その他の添加剤等を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができ、これらを適当な溶媒に溶解、分散したハードコート塗料を基材フィルム上に塗工、乾燥、硬化して形成される。
【0016】
本発明において、ハードコート層の電離線(電離放射線)硬化型樹脂は、電子線または紫外線等を照射することによって硬化する透明な樹脂であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ウレタンアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、及びエポキシアクリレート系樹脂等の中から適宜選択することができる。これらの中で電離線硬化型樹脂として好ましいものは、透明フィルム基材との良好な密着性を得るために分子内
に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化可能な多官能アクリレートからなるものが挙げられる。分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化可能な多官能アクリレートの具体例としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、ネオペンチルグリ
コールジグリシジルエーテルのジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなどのエポキシ(メタ)アクリレート、多価アルコールと多価カルボン酸及び/またはその無水物とアクリル酸とをエステル化することによって得ることができるポリエステル(メタ)アクリレート、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基主成分と(メタ)アクリレートを反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレート、ポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの中で、ハードコート層を形成した際のハード性と柔軟性の両方に優れる、ウレタンアクリレートを用いることが望ましい。
【0017】
これらハードコート層の電離線硬化型樹脂は、単独でも2種以上を混合し使用しても良い。
【0018】
本発明において、ハードコート層の厚さは、特に制約されるわけではないが、例えば1.0μmから12.0μmの範囲であることが好適である。塗膜厚さが1.0μm未満では必要な表面硬度が得られ難くなる。また、塗膜厚さが12.0μm超の場合はカールが強く筒カール製造工程などで取扱い性が低下するため好ましくない。なお、ハードコート層の厚さは、マイクロメーターで実測することにより測定可能である。
【0019】
本発明のハードコート層にはシリカ等の無機粒子かつ/または有機粒子を含有していても良い。フィルム同士が圧着しにくくなり、巻取適性が向上するため、シリカを含有することが特に好ましい。シリカ等の無機粒子かつ/または有機粒子の含有率は、10~90%が好ましく、30~70%がより好ましく、40~60%がさらに好ましい。
【0020】
本発明のハードコート層は、電離放射線(UV)照射にて硬化することが好ましく、さらに窒素雰囲気下で硬化することがより好ましい。
【0021】
本発明に用いることができる溶媒としては、配合される前記樹脂の溶解性に応じて適宜選択でき、少なくとも固形分(樹脂、重合開始剤、その他添加剤)を均一に溶解あるいは分散できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、n-ヘプタンなどの芳香族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピ
ル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール系等のアルコール系溶剤等の公知の有機溶剤を単独或いは適宜数種類組み合わせて使用することもできる。
【0022】
本発明のハードコート層の塗工方法については、特に限定はないが、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、ファウンテンバー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知の塗工方式で塗設した後、通常50~120℃程度の温度で乾燥し、溶媒が除去される。該乾燥温度は、特に100℃以上140℃以下が望ましい。100℃未満では溶剤が揮発した後の紫外線硬化性樹脂の流動性が得られず、フィルム基材との密着性が十分に得られない。また、140℃よりも高いと、フィルム基材のガラス転移温度より高くなり、基材自身の平坦性が損なわれる恐れがあるため好ましくない。ハードコート層はフィルム基材の片面もしくは両面に、単層もしくは多層の塗工を行うことで得られる。
【0023】
基材フィルム上に塗工し、溶媒を除去されたハードコート塗料を硬化させる方法としては、電子線又は紫外線を照射させる方法を用いることができる。その照射条件などは、使用する電子線硬化型樹脂、その他添加する各種薬品にあわせて適宜調整すればよいが、例えば、紫外線を用いた場合には波長200~400nmの範囲が好ましく、照度80~120mW/cm2、照射量70~500mJ/cm2であることが望ましい。紫外線の照射
装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプなどのランプ光源、アルゴンイオンレーザーやヘリウムネオンレーザーなどのパルス、連続のレーザー光源などを備える照射装置を用いることが可能である。なお、硬化反応時に窒素ガス雰囲気下など、酸素濃度を低下させ実施することができる。
【0024】
ハードコートフィルムに形成されたハードコート層の塗工厚みは、マイクロメーターを用いて測定するなどの既知の方法によって測定することができる。
【0025】
本発明において、ハードコード層に主成分とされるレベリング剤は、フッ素系、アクリル系、シロキサン系のレベリング剤を挙げることができる。
【0026】
本発明に用いるレベリング剤としては、フッ素系が好ましく、反応性を有しているものがより好ましい。さらに、塗工後の水接触角が60~90度になるのが好ましく、70~80度になることがより好ましい。
【実施例
【0027】
以下、具体的実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例の態様に限定されるものではない。
【0028】
<実施例1>
ポリエーテルスルホン(PES)からなる基材フィルム(フィルム厚25μm)の両面に、下記組成からなるハードコート層形成用樹脂組成物を、バーコーターを用いて塗工し、80℃の乾燥炉で60秒間乾燥させ膜厚が3μmのハードコート層を形成した。これを、塗布面より60mmの高さにセットされたUV照射装置を用いUV照射量200mJ/cmにて硬化させハードコートフィルムを作製した。
【0029】
(ハードコート層形成用樹脂組成物)
電離線硬化型樹脂(ウレタンアクリレートおよびアクリルエステルを合計で19%、非晶質シリカを28%、光重合開始剤を2%、添加剤を4%含有し、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを47%含有する樹脂)を29.5%と、レベリング剤(フタージェント681を0.5%で配合し、メチルエチルケトン(MEK)にて最終濃度を30%に調製した。
【0030】
<実施例2>
実施例1のポリエーテルスルホンからなる基材フィルムを、ポリフェニルスルホンからなる基材フィルム(フィルム厚50μm)としたこと以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作成した。
【0031】
<比較例1>
実施例1のポリエーテルスルホンからなる基材フィルムを、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる基材フィルム(フィルム厚50μm)としたこと以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作成した。
【0032】
<比較例2>
実施例1のポリエーテルスルホンからなる基材フィルム(フィルム厚25μm)を評価した。
【0033】
<比較例3>
実施例2のポリフェニルスルホンからなる基材フィルム(50μm)を評価した。
【0034】
<評価>
以上のようにして作製された実施例及び比較例のハードコートフィルムおよび基材フィルムを次の項目について評価し、その結果を纏めて表1に示した。
【0035】
<塗膜の厚み>
易接着層及びハードコート層の塗膜の形成厚みは、Thin-Film Analyzer F20(商品名)(FILMETRICS社製)を用いて測定した。
【0036】
<密着性>
(初期密着性、湿熱密着性及び耐光密着性及びインク密着性) 初期密着性は、JIS-K5600-5-6に準じて、通常条件下、すなわち恒温恒湿条件下(23℃、50%RH)で、碁盤目剥離試験治具を用い1mm2のクロスカットを100個作製し、積水化学工業株式会社製の粘着テープNo.252をその上に貼り付け、ヘラを用いて均一に押し付け後、180度方向に剥離し、ハードコート層の残存個数を4段階評価した。評価基準は下記の通りであり、◎と○評価品(つまりハードコート層の残存率90%以上)を密着性は合格と判定した(◎:100個、○:99~90個、△:89~50個、×:49~0個)。
【0037】
また、湿熱密着性(湿熱条件下での経時密着性)は、各ハードコートフィルムを湿熱条件下(80℃、90%RH)に30日間保存した後、上記と同様にして碁盤目剥離試験を行い、ハードコート層の密着性を4段階評価した。評価基準は上記の初期密着性の場合と同様である。
【0038】
また、耐光密着性については、各ハードコートフィルムについて、スガ試験(株)紫外線オートフェードメーター「U48AU」(紫外線カーボンアークランプ)を用いて、試験条件を照射照度500W/m2、温度43度、湿度50%RHとし、照射時間が100時間の時点で、JIS-K5600-5-6に準じて、ハードコート層の密着性を上記と同様の碁盤目試験法で実施した。評価基準は上記の初期密着性の場合と同様である。
【0039】
また、インク密着性については、各ハードコートフィルムのハードコート層A上に、銅ナノ粒子ペースト(商品名:CP-100、ハリマ化成株式会社製)を用いて、小型手動印刷機(商品名:MT-Mini、マイクロ・テック株式会社製)で1辺5cmの正方形の印刷部を形成した。150度雰囲気下で30分間放置し乾燥させた後、評価を行った。インクの密着性を前述と同様の碁盤目試験法で実施した。評価基準は上記の初期密着性の場合と同様である。
【0040】
<ヘイズ>
実施例、比較例で作製した各ハードコートフィルムのヘイズは、JIS-K7136に基づき、村上色彩技術研究所製ヘイズメーター「HM150」を用いて測定した。
【0041】
<耐熱クラック>
実施例、比較例で作製した各ハードコートフィルムを、100℃の乾燥機中でサンプル掛けを用い5分間吊るし保存した後、ハードコートフィルムを取り出し、クラックの発生有無を目視評価した。クラックの発生程度を次の基準で評価した。
○:クラックの発生なし。
△:試験片端部にクラックが若干みられる。
×:試験片全面にクラックがみられる。
【0042】
<鉛筆硬度>
実施例、比較例で作製した各ハードコートフィルムについて、JIS-K-5600-5-4に準じた試験法により鉛筆硬度を測定した。表面に傷の発生なき硬度を標記した。判定基準については、硬度2B以上は合格とした。
【0043】
<耐擦傷性>
実施例、比較例で作製した各ハードコートフィルムについて、JIS-K-5600-5-10に準じた試験法にて、ハードコート層面を、スチールウール#0000を用い、荷重1kgを掛け10往復摩擦し、傷のつき具合を次の基準で評価した。○評価品を耐擦傷性は良好とした。△評価品も製品として使用可能である。
○:傷の発生なし
△:傷が少し発生する
×:傷が無数に発生する
【0044】
<全光線透過率>
各ハードコートフィルムについて、村上色彩技術研究所(株)製ヘーズメータHM-150Nを用いて測定した。測定は、JIS-K7361の規格に基づき実施した。評価基準については、光線透過率90%以上を合格とした。
【0045】
<カール特性>
実施例、比較例で作製した各ハードコートフィルムについて、図2のように塗布方向(図示のMD方向)を基軸とした1辺10cmの正方形菱形状の試験片を切り出し、水平面にハードコート層面を上にして設置し、23℃、50%RH環境下に30分間保存した後、反り立っている4頂点(A,B,C,D)の水平面からの高さを測定し、その平均値をカール高さとした。評価基準については、カール高さ40mm以下であれば実用上用いることができ、数値が低いほど好ましい。
【0046】
<b*値>
実施例、比較例で作製した各ハードコートフィルムについて、村上色彩技術研究所製SPECTROPHOTOMETETR DOT-3Cにて測定した。評価基準については、b*値が1.5以下を合格と判定した。
【0047】
<耐薬品性>
各ハードコートフィルムのハードコート層A上に、フマル酸ジメチル(DMF)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)を80度に加温した状態で滴下し、3分間放置後のフィルム表面を観察した。評価基準は以下の通りである。
○:フィルム損傷なし
×:フィルム損傷あり
【0048】
<熱収縮率>
各ハードコートフィルムを150度雰囲気下で30分間放置後のフィルムの収縮率を算出した。(熱処理後のサンプル長)/(熱処理前のサンプル長)の算出結果を%で表記した。また、熱収救率は、フィルム流れ方向(Machine Direction;MD)及びフィルム幅方向(Transverse Direction;TD)の二方向について評価した。
【0049】
<インク密着性>
各ハードコートフィルムのハードコート層A上に、銅ナノ粒子ペースト(商品名:CP-100、ハリマ化成株式会社製)を用いて、小型手動印刷機(商品名:MT-Mini、マイクロ・テック株式会社製)で1辺5cmの正方形の印刷部を形成した。150度雰囲気下で30分間放置し乾燥させた後、評価を行った。インクの密着性を前述と同様の碁盤目試験法で実施した。評価基準は上記の初期密着性の場合と同様である。
【0050】
<表面粗さ>
(株)日立ハイテクサイエンス製のVertScanのR3300G Liteにて測定し、JIS-B0601の規格に基づき実施した。
【0051】
<巻取適性>
各ハードコートフィルムを1辺10cmの正方形に裁断したものを重ね合わせ、40度の雰囲気下にて10kgの重りを載せて24時間放置後のフィルムの圧着状態を観察した。評価基準は以下の通りである。
○:フィルム圧着なし
×:フィルム圧着あり
【0052】
<透湿度(水蒸気バリア性)>
JIS-0208の規格に準じた方法にて測定した。
【0053】
<滑り性>
協和界面科学(株)製の自動摩擦摩耗解析装置 TSf-502を用いた。各ハードコートフィルムを5cm×10cmに裁断したものの上に1cm×1cm片を設置し、200gの荷重をかけて100mm/minの速度で5cm移動させたときの静摩擦係数および動摩擦係数を測定した。
【0054】
<接触角>
JIS-3257の規格に準じた方法にて測定した。
【0055】
【表1】
【0056】
本発明によれば、表1に示される実施例1,2で明らかにされるように、高い耐熱性、寸法安定性、耐薬品性、を有しているとともに、耐擦傷性、鉛筆硬度、インク密着性、ハードコート層密着性、熱安定性、透過率、表面平滑性、水蒸気バリア性、巻取適正が向上したハードコートフィルムを得ることができる。特に基材フィルムにPETを用いた比較例1に比べ、本発明の実施例は表面粗さ、熱収縮率について優れている。
【0057】
本発明のハードコートフィルムは、各種製品やその部材又は部品の構成材として使用することができる。上記製品としては、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの表示装置;タッチパネルなどの入力装置:太陽電池;各種家電製品;各種電気・電子製品;携帯電子端末(例えば、ゲーム機器、パソコン、タブレット、スマートフォン、携帯電話等)の各種電気・電子製品;各種光学機器等が挙げられる。
【0058】
本発明のハードコートフィルムは、例えば、各種製品における表面保護フィルム、各種製品の部材又は部品における表面保護フィルム等として使用することもできる。また、本発明のハードコートフィルムが各種製品やその部材又は部品の構成材として使用される態様としては、例えば、タッチパネルにおけるハードコートフィルムと透明導電フィルムの積層体等に使用される態様等が挙げられる。本発明のハードコートフィルムは金属インキ密着性が優れるためフレキシブル配線板用ベースフィルム等に用いることが特に好ましい。