(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
B05B 12/08 20060101AFI20240501BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B05B12/08
B05C5/00 101
(21)【出願番号】P 2020014618
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 祐司
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼ 康善
(72)【発明者】
【氏名】小島 英揮
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-071916(JP,A)
【文献】特開平11-104534(JP,A)
【文献】特開2012-147981(JP,A)
【文献】特開2016-198845(JP,A)
【文献】特開平08-257997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B12/00-16/80
B05C7/00-21/00
A61B13/00-18/18
A61F2/01
A61N7/00-7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液体を第1方向に噴射する噴射部と、
前記第1方向における前記ノズルからの延長線上で第1光路及び第2光路が交差する配置で前記第1光路の光及び前記第2光路の光を照射する光源部と、
を備え、
前記噴射部は、前記ノズルから液体を連続的に噴射する構成であって、前記延長線上の液滴化位置で連続状態の液体が液滴化する構成であることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置において、
前記光源部は、前記第1光路及び前記第2光路の前記延長線上での交差位置を調整可能であることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項
1に記載の液体噴射装置において、
前記第1光路及び前記第2光路の前記延長線上での交差位置が、前記液滴化位置であることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の液体噴射装置において、
前記噴射部による液体の噴射状態の制御及び前記光源部による前記交差位置の調整をする制御部を備え、
前記制御部は、前記噴射状態に応じて前記交差位置を調整することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の液体噴射装置において、
前記ノズル内における液体の流量を変更するポンプと、前記流量を測定する測定部と、前記流量に基づく前記交差位置に関するデータを記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、前記測定部による前記流量の測定結果と前記記憶部に記憶された前記データとに基づいて、前記交差位置を調整することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか1項に記載の液体噴射装置において、
前記第1光路の光及び前記第2光路の光は、ともに可視光であり、互いの波長が異なる光であることを特徴とする液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、対象物に対して液体を噴射させる様々な液体噴射装置が使用されている。このような液体噴射装置においては、対象物に対して好ましい間隔となる位置で液体を噴射させることが要求される。例えば、インクジェットプリンターにおいては、インクの噴射ノズルから記録がなされる媒体までの距離をシビアに調整している。また、例えば、特許文献1では、対象物である患部を照明で照らしながら患部に液体を噴射することが可能な可視歯ブラシが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、インクジェットプリンターにおける噴射ノズルから媒体までの距離を調整する機構は複雑な構成などになりやすい。また、特許文献1の可視歯ブラシのような、単に対象物を照明で照らしながら対象物に液体を噴射する構成では、対象物に対する適正な位置を指示するわけではないため、噴射部から対象物までの好ましい間隔を把握することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の液体噴射装置は、ノズルから液体を第1方向に噴射する噴射部と、前記第1方向における前記ノズルからの延長線上で第1光路及び第2光路が交差する配置で前記第1光路の光及び前記第2光路の光を照射する光源部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施例1の液体噴射装置を表す概略図であって、第1光路及び第2光路の交差位置が液滴化位置である状態を表す図。
【
図2】実施例1の液体噴射装置を表す概略図であって、第1光路及び第2光路の交差位置が液滴化位置ではない状態を表す図。
【
図3】実施例1の液体噴射装置の噴射部を表す断面図。
【
図4】実施例1の液体噴射装置において、噴射部から対象物までの間隔が噴射部から第1光路及び第2光路の交差位置までの距離に合っている状態を表す図。
【
図5】
図4の状態のときの対象物上の第1光路及び第2光路の位置を表す概略図。
【
図6】実施例1の液体噴射装置において、噴射部から対象物までの間隔が噴射部から第1光路及び第2光路の交差位置までの距離よりも広くなっている状態を表す図。
【
図7】
図6の状態のときの対象物上の第1光路及び第2光路の位置を表す概略図。
【
図8】実施例1の液体噴射装置において、噴射部から対象物までの間隔が噴射部から第1光路及び第2光路の交差位置までの距離よりも狭くなっている状態を表す図。
【
図9】
図8の状態のときの対象物上の第1光路及び第2光路の位置を表す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
最初に、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の液体噴射装置は、ノズルから液体を第1方向に噴射する噴射部と、前記第1方向における前記ノズルからの延長線上で第1光路及び第2光路が交差する配置で前記第1光路の光及び前記第2光路の光を照射する光源部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、液体の噴射方向である第1方向におけるノズルからの延長線上で第1光路及び第2光路を交差させる。このため、第1光路及び第2光路をノズルからの延長線上で交差させるという簡単な構成で、第1光路及び第2光路の交差位置を基準として対象物に対して好ましい間隔となる位置を容易に把握することを可能にし、容易に対象物に対する好ましい間隔に配置することを可能にする。
【0009】
本発明の第2の態様の液体噴射装置は、前記第1の態様において、前記光源部は、前記第1光路及び前記第2光路の前記延長線上での交差位置を調整可能であることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、光源部は第1光路及び第2光路の延長線上での交差位置を調整可能である。このため、液体の噴射状態に応じて対象物に対する好ましい間隔が変化する場合において、交差位置を調整することで容易に対象物に対する好ましい間隔に配置することを可能にする。
【0011】
本発明の第3の態様の液体噴射装置は、前記第1または第2の態様において、前記噴射部は、前記ノズルから液体を連続的に噴射する構成であって、前記延長線上の液滴化位置で連続状態の液体が液滴化する構成であることを特徴とする。
【0012】
噴射部がノズルから液体を連続的に噴射する構成であって延長線上の液滴化位置で連続状態の液体が液滴化する構成の液体噴射装置を使用する場合においては、対象物に対して好ましい間隔となるように、液体が液滴化する位置に対象物が配置されるように液体噴射装置を配置することが好ましい。本態様によれば、このような構成の液体噴射装置において、容易に液体噴射装置を好ましい位置に配置することができる。
【0013】
本発明の第4の態様の液体噴射装置は、前記第3の態様において、前記第1光路及び前記第2光路の前記延長線上での交差位置が、前記液滴化位置であることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、光源部は、第1光路及び第2光路の延長線上での交差位置が、液滴化位置である。このため、容易に液体噴射装置を好ましい位置に配置することができる。
【0015】
本発明の第5の態様の液体噴射装置は、前記第4の態様において、前記噴射部による液体の噴射状態の制御及び前記光源部による前記交差位置の調整をする制御部を備え、前記制御部は、前記噴射状態に応じて前記交差位置を調整することを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、制御部は、噴射部による液体の噴射状態に応じて第1光路及び第2光路の延長線上での交差位置を調整する。このため、噴射部による液体の噴射状態が変化した場合においても、制御部による自動制御で交差位置を調整することができるので、容易に液体噴射装置を好ましい位置に配置することができる。
【0017】
本発明の第6の態様の液体噴射装置は、前記第5の態様において、前記ノズル内における液体の流量を変更するポンプと、前記流量を測定する測定部と、前記流量に基づく前記交差位置に関するデータを記憶する記憶部と、を備え、前記制御部は、前記測定部による前記流量の測定結果と前記記憶部に記憶された前記データとに基づいて、前記交差位置を調整することを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、ポンプにより液体の流量を容易に変更することができる。また、液体の流量を変更することで噴射部による液体の噴射状態が変化した場合においても、制御部による自動制御で交差位置を調整することができるので、容易に液体噴射装置を好ましい位置に配置することができる。
【0019】
本発明の第7の態様の液体噴射装置は、前記第1から第6のいずれか1つの態様において、前記第1光路の光及び前記第2光路の光は、ともに可視光であり、互いの波長が異なる光であることを特徴とする。
【0020】
第1光路の光及び第2光路の光の波長が同じであれば、第1光路及び第2光路の延長線上での交差位置がずれていた場合、対象物に対する間隔が近い側にずれているのか遠い側にずれているのかの判断がしづらい場合がある。しかしながら、本態様によれば、第1光路の光及び第2光路の光は互いに波長が異なる可視光なので、対象物に対する間隔が近い側にずれているのか遠い側にずれているのかで、第1光路の光と第2光路の光との位置関係が逆になる。このため、容易に液体噴射装置を好ましい位置に配置することができる。
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
[実施例1]
最初に、本発明の液体噴射装置1としての実施例1の液体噴射装置1Aについて
図1から
図9を参照して説明する。詳細は後述するが、本実施例の液体噴射装置1Aの噴射部2は、ノズル22から液体4を連続的に噴射し、液体4の噴射方向Dの延長線上の液滴化位置4cで連続状態の液体4aが液滴4bに液滴化することを可能にする構成である。しかしながら、本発明はこのような噴射部を備える液体噴射装置に限定されない。例えば、一般的なインクジェットプリンターで使用されるような噴射部を備える構成であってもよい。
【0022】
図1及び
図2に示す液体噴射装置1Aは、噴射部2と、光源部3と、液体4を貯留する液体容器8と、噴射部2と液体容器8とをつなぐ液体供給管7と、ポンプ6と、制御部5と、を備えている。このような液体噴射装置1Aは、光源部3を用いて噴射部2を対象物Oに対して所望の間隔に配置させ、噴射部2から液体4を噴射させ、
図4などで表されるような対象物Oに衝突させることにより、各種作業を行う。各種作業とは、例えば、洗浄、バリ取り、剥離、はつり、切除、切開、破砕等が挙げられる。以下、液体噴射装置1Aの各部について詳述する。
【0023】
[噴射部]
噴射部2は、
図3に示すように、ノズル22と、液体搬送管24と、脈動生成部26と、を備えている。このうち、ノズル22は、液体4を対象物Oに向けて噴射させる。また、液体搬送管24は、ノズル22と脈動生成部26とをつなぐ流路である。この液体搬送管24は、脈動生成部26からノズル22まで液体4を搬送する。さらに、脈動生成部26は、液体容器8から液体供給管7を介して供給された液体4に対し、流量脈動を付与する。このようにして液体4に脈動を付与することにより、ノズル22から噴射する液体4の流速が周期的に変動する。これにより、ノズル22から噴射される連続状態の液体4aが液滴4bに変化するまでの距離、いわゆる液滴化距離を短縮することができる。すなわち、本実施例の噴射部2は、液滴化位置4cのノズル22に対する距離を変更可能な構成となっている。なお、液滴化された液体4bはいずれ噴射方向Dの延長線上から著しく外れる拡散噴流となる。この場合、噴射方向Dの延長線上での液滴4bの数が減少するため所望の効果が得られない。つまり、連続的な液体4aが液滴4bとなる位置から拡散噴流となる位置までを示す液滴化位置4cは、ノズル22から噴射された液体4が外部に与えるエネルギーが最も大きくなる位置である。なお、液滴化位置4cと拡散噴流領域との境界は、液滴4bの飛行が噴射方向Dの延長線上から著しく外れる等の理由により噴射方向Dの延長線上における対象物Oの位置を変えたときに対象物Oへのエネルギー付与が著しく変化することで判断ができる。また、対象物Oへのエネルギー付与を測らずとも、液滴4bの飛行が噴射方向Dの延長線上からどの程度外れたかの閾値を設ける、液滴4bが再結合する、等を液滴4bの飛行を観察することで判断することもできる。
【0024】
以下、噴射部2の各部について詳述する。ノズル22は、液体搬送管24の先端部に装着されている。ノズル22は、その内部に、液体4が通過するノズル流路220を備えている。ノズル流路220は、その基端部の内径よりも先端部の内径が小さくなっている。液体搬送管24内をノズル22に向かって搬送されてきた液体4は、ノズル流路220を介して細流状に成形され、噴射される。なお、ノズル22は、液体搬送管24とは別の部材であっても、一体であってもよい。
【0025】
液体搬送管24は、ノズル22と脈動生成部26とをつなぐ管体であり、その内部に、液体4を搬送する液体流路240を備えている。前述したノズル流路220は、液体流路240を経て、液体供給管7に連通している。液体供給管7は、直管であっても、一部または全部が湾曲した湾曲管であってもよい。
【0026】
ノズル22及び液体搬送管24は、液体4を噴射する際に変形しない程度の剛性を有していればよい。ノズル22の構成材料としては、例えば、金属材料、セラミックス材料、樹脂材料等が挙げられる。液体搬送管24の構成材料としては、例えば、金属材料、樹脂材料等が挙げられ、特に金属材料が好ましく用いられる。
【0027】
ノズル流路220の内径は、作業内容や対象物Oの材質等に応じて適宜選択されるが、一例として、0.01以上1.00mm以下であるのが好ましく、0.02以上0.30mm以下であるのがより好ましい。
【0028】
脈動生成部26は、筐体261と、筐体261内に設けられている圧電素子262及び補強板263と、ダイアフラム264と、を備えている。筐体261は、箱状をなしており、第1ケース261a、第2ケース261b及び第3ケース261cの各部位を含んでいる。第1ケース261a及び第2ケース261bは、それぞれ基端から先端にかけて貫通する貫通孔を備えた筒状をなしている。そして、第1ケース261aの基端側の開口と第2ケース261bの先端側の開口との間には、ダイアフラム264が挟まれている。ダイアフラム264は、例えば弾性または可撓性を有する膜状の部材である。
【0029】
第3ケース261cは、板状をなしている。そして、第2ケース261bの基端側の開口には、第3ケース261cが固着されている。第2ケース261b、第3ケース261c及びダイアフラム264で形成される空間が、収容室265である。収容室265には、圧電素子262及び補強板263が収容されている。圧電素子262の基端は、第3ケース261cに接続され、圧電素子262の先端は、補強板263を介してダイアフラム264に接続されている。
【0030】
また、第1ケース261aが有する貫通孔は、基端から先端にかけて貫通している。このような貫通孔は、内径が相対的に大きい基端側の領域と、内径が相対的に小さい先端側の領域と、を含んでいる。このうち、内径が小さい領域には、先端側の開口から液体搬送管24が挿入されている。また、内径が大きい領域には、基端側からダイアフラム264が被せられた状態になっている。そして、内径が大きい領域とダイアフラム264とで形成される空間が、液体室266である。
【0031】
さらに、液体室266と液体搬送管24との間の空間が、出口流路267である。一方、液体室266には、出口流路267とは異なる入口流路268が連通している。入口流路268の一端は液体室266に連通し、他端には液体供給管7が挿入されている。これにより、液体供給管7の内部流路は、入口流路268、液体室266、出口流路267、液体流路240及びノズル流路220に連通する。その結果、液体供給管7を介して入口流路268に供給された液体4は、液体室266、出口流路267、液体流路240及びノズル流路220を順次経由して噴射されることになる。
【0032】
圧電素子262からは、筐体261を介して配線291が引き出されている。この配線291を介して、圧電素子262と制御部5とが電気的に接続されている。圧電素子262は、制御部5から供給される駆動信号Sにより、逆圧電効果に基づいて、
図3中に矢印B1で示すように、X軸に沿って伸長及び収縮を繰り返すように振動する。圧電素子262が伸長すると、ダイアフラム264が第1ケース261a側に押される。このため、液体室266の容積が減少し、液体室266内の液体4が、出口流路267で加速される。一方、圧電素子262が収縮すると、ダイアフラム264が第3ケース261c側に引っ張られる。このため、液体室266の容積が拡大し、入口流路268内の液体4が減速もしくは逆流する。
【0033】
圧電素子262は、伸縮振動する素子であってもよく、屈曲振動する素子であってもよい。圧電素子262は、例えば、圧電体と、圧電体に設けられた電極と、を備える。圧電体の構成材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、タンタル酸ストロンチウムビスマス(SBT)、メタニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等の圧電セラミックス等が挙げられる。
【0034】
圧電素子262は、ダイアフラム264を変位させ得る任意の素子や機械要素で代替可能である。かかる素子または機械要素としては、例えば、磁歪素子、電磁アクチュエーター、モーターとカムとの組み合わせ等が挙げられる。なお、筐体261は、液体室266内の圧力が上昇または低下したとき、変形しない程度の剛性を有していればよい。
【0035】
また、
図3に示す脈動生成部26は、液体搬送管24の基端部に設けられているが、その位置は特に限定されない。例えば、脈動生成部26は、液体搬送管24の途中に設けられていてもよい。
【0036】
[光源部]
本実施例の液体噴射装置1Aは、光源部3として、第1光照射部31と第2光照射部32とを備える光源部3Aを備えている。光源部3Aは、第1光照射部31と第2光照射部32とが共に所定の角度でアーム部38に固定されており、
図1及び
図2を比較するとわかるように噴射部2に対して液体4の噴射方向Dに沿う方向である移動方向Mに移動可能な構成となっている。
【0037】
図1及び
図2で表されるように、光源部3Aは、第1光照射部31から照射される第1光路L1と第2光照射部32から照射される第2光路L2とが、噴射方向Dにおけるノズル22からの延長線上で交差する配置となるように、第1光照射部31及び第2光照射部32が設けられている。移動方向Mは噴射方向Dに沿う方向であるので、光源部3Aを噴射部2に対して移動方向Mに移動させても、常に、噴射方向Dにおけるノズル22からの延長線上で第1光路L1及び第2光路L2が交差する。
【0038】
光源部3Aを噴射部2に対して移動方向Mに移動させて位置を調整することで、
図1で表されるように、第1光路L1及び第2光路L2の交差位置Lcが液滴化位置4cと重なるように調整することができる。本実施例の光源部3Aは、制御部5の制御により噴射部2に対して自動で動かすことが可能な構成となっているが、噴射部2に対してユーザーが手動で動かすことも可能な構成となっている。
図1及び
図2で表されるように、本実施例の噴射部2には目盛2aが形成されており、ユーザーは目盛2aを参照して噴射部2に対する光源部3Aの位置合わせをすることができる。
【0039】
[液体容器]
液体容器8は、液体4を貯留する。液体容器8に貯留された液体4は、液体供給管7を介して噴射部2に供給される。液体4としては、例えば水が好ましく用いられるが、有機溶剤等であってもよい。また、水や有機溶剤には、任意の溶質が溶解していてもよく、任意の分散質が分散していてもよい。液体容器8は、密閉された容器であってもよく、開放された容器であってもよい。
【0040】
[ポンプ]
ポンプ6は、液体供給管7の途中または端部に設けられる。液体容器8に貯留された液体4は、ポンプ6によって吸引され、所定の圧力で噴射部2に供給される。また、ポンプ6には、配線292を介して制御部5が電気的に接続されている。ポンプ6は、制御部5から出力される駆動信号に基づいて、供給する液体4の流量を変更する機能を有する。ポンプ6の流量は、一例として、1mL/min]以上100[mL/min]以下であるのが好ましく、2[mL/min]以上50[mL/min]以下であるのがより好ましい。また、ポンプ6には、実際の流量を測定する測定部6aが設けられている。
【0041】
[制御部]
制御部5は、配線291を介して噴射部2と電気的に接続されている。また、制御部5は、配線292を介してポンプ6と電気的に接続されている。さらに、制御部5は、配線293を介して光源部3と電気的に接続されている。
図1及び
図2に示す制御部5は、圧電素子制御部51と、ポンプ制御部52と、光源部駆動制御部53と、記憶部54と、を有している。
【0042】
圧電素子制御部51は、圧電素子262に駆動信号Sを出力する。この駆動信号Sにより、圧電素子262の駆動が制御される。これにより、例えば所定の周波数及び所定の変位量で、ダイアフラム264を変位させることができる。ポンプ制御部52は、ポンプ6に駆動信号を出力する。この駆動信号により、ポンプ6の駆動が制御される。これにより、例えば所定の圧力および所定の駆動時間で、噴射部2に液体4を供給することができる。光源部駆動制御部53は、第1光照射部31及び第2光照射部32の移動方向Mへの移動を制御する。なお、制御部5は、ポンプ6の駆動と、圧電素子262の駆動と、を協調して制御することもできる。
【0043】
制御部5は、不図示の制御パネルなどを用いてユーザーにより設定された設定流量、または、ポンプ6に設けられた測定部6aの測定結果としての測定流量に基づいて、記憶部54に記憶された最適な距離データを読み出す。該距離データとは、液滴化位置4cのノズル22に対する距離のデータであって、最適なノズル22から対象物Oまでの距離のデータに対応する。記憶部54には、設定流量及び測定流量に応じた最適な距離データのテーブルが記憶されており、該テーブルに基づいて、光源部駆動制御部53は噴射部2に対して光源部3を所望に位置に移動させる。具体的には、例えば、噴射部2に対する光源部3の位置を、
図2で表される状態から
図1で表される状態まで変化させる。なお、本実施例では、記憶部54には、設定流量及び測定流量と距離データとを対応させたテーブルが記憶されているが、このようなテーブルの代わりに設定流量及び測定流量と距離データとを対応させた関係式を記憶させておいてもよい。
【0044】
このような制御部5の機能は、演算装置、メモリー、外部インターフェース等のハードウェアによって実現される。このうち、演算装置としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等が挙げられる。また、メモリーとしては、ROM(Read Only Memory)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク等が挙げられる。
【0045】
[対象物に対する液体噴射装置の位置]
次に、本実施例の液体噴射装置1Aを用いてどのように対象物Oに対する液体噴射装置1Aの位置を合わせるかについて説明する。
【0046】
最初に、制御部5の制御により噴射部2に対する光源部3の位置を所望の位置に調整した後、ユーザーは、液体噴射装置1Aを対象物Oに対して仮の位置にセットする。ここで、所望の位置とは、
図1で表されるように、第1光路L1と第2光路L2との交差位置Lcがちょうど液滴化位置4cにある位置である。そして、第1光照射部31及び第2光照射部32から光を対象物Oに向けて照射させる。
【0047】
図4及び
図5は、第1光路L1と第2光路L2との交差位置Lcが、ちょうど対象物Oの作業対象部分にある場合を表している。上記の通り、第1光路L1と第2光路L2との交差位置Lcがちょうど液滴化位置4cにあるように調整されているので、
図4及び
図5で表される状態は、対象物Oの作業対象部分は、最も作業効率の良い液滴化位置4cに位置している。このため、ユーザーは、液体噴射装置1Aの仮のセット位置が
図4及び
図5で表される状態のときは、そのまま作業をすることで効率の良い作業を行うことができる。
【0048】
図6及び
図7は、第1光路L1と第2光路L2との交差位置Lcが、対象物Oの作業対象部分より手前側にある場合を表している。上記の通り、第1光路L1と第2光路L2との交差位置Lcがちょうど液滴化位置4cにあるように調整されているので、
図6及び
図7で表される状態は、対象物Oの作業対象部分は、最も作業効率の良い液滴化位置4cに対して遠い側に位置している。このため、ユーザーは、液体噴射装置1Aの仮のセット位置が
図6及び
図7で表される状態のときは、液体噴射装置1Aを対象物Oに対して近づけ、
図4及び
図5で表される状態となるように液体噴射装置1Aのセット位置を変更することで、効率の良い作業を行うことができる。
【0049】
図8及び
図9は、第1光路L1と第2光路L2との交差位置Lcが、対象物Oの作業対象部分より奥側にある場合を表している。上記の通り、第1光路L1と第2光路L2との交差位置Lcがちょうど液滴化位置4cにあるように調整されているので、
図8及び
図9で表される状態は、対象物Oの作業対象部分は、最も作業効率の良い液滴化位置4cに対して近い側に位置している。このため、ユーザーは、液体噴射装置1Aの仮のセット位置が
図8及び
図9で表される状態のときは、液体噴射装置1Aを対象物Oに対して遠ざけ、
図4及び
図5で表される状態となるように液体噴射装置1Aのセット位置を変更することで、効率の良い作業を行うことができる。
【0050】
上記のように、本実施例の液体噴射装置1Aは、ノズル22から液体4を第1方向としての噴射方向Dに噴射する噴射部2と、噴射方向Dにおけるノズル22からの延長線上で第1光路L1及び第2光路L2が交差する配置で第1光路L1の光及び第2光路L2の光を照射する光源部3と、を備えている。本実施例の液体噴射装置1Aは、このような構成であるため、第1光路L1及び第2光路L2をノズル22からの延長線上で交差させるという簡単な構成で、第1光路L1及び第2光路L2の交差位置Lcを基準として対象物Oに対して好ましい間隔となる位置を容易に把握することを可能にし、容易に対象物Oに対する好ましい間隔に配置することを可能にしている。
【0051】
また、上記のように、本実施例の光源部3Aは、第1光路L1及び第2光路L2の交差位置Lcを調整可能である。このため、本実施例の液体噴射装置1Aは、液体4の噴射状態に応じて対象物Oに対する好ましい間隔が変化する場合などにおいて、交差位置Lcを調整することで、容易に対象物Oに対する好ましい間隔に配置することを可能にしている。
【0052】
また、上記のように、本実施例の噴射部2は、ノズル22から液体4を連続的に噴射する構成であって、噴射方向Dにおけるノズル22からの延長線上の液滴化位置4cで連続状態の液体4aが液滴4bに液滴化する構成である。噴射部2がノズル22から液体4を連続的に噴射する構成であって噴射方向Dにおけるノズル22からの延長線上の液滴化位置4cで連続状態の液体4aが液滴化する構成の液体噴射装置を使用する場合においては、対象物Oに対して好ましい間隔となるように、液体4が液滴化する位置に対象物Oが配置されるように液体噴射装置を配置することが好ましい。本実施例の液体噴射装置1Aは、容易に対象物Oに対して好ましい位置に配置することを可能にしている。
【0053】
また、上記のように、本実施例の光源部3Aは、第1光路L1及び第2光路L2の交差位置Lcが、液滴化位置4cに自動的に調整されることで、対象物Oに液体4を噴射する際には液滴化位置4cにある状態となっている。このため、本実施例の液体噴射装置1Aは、容易に対象物Oに対して好ましい位置に配置することを可能にしている。
【0054】
なお、本実施例の液体噴射装置1Aは、噴射部2からの液体の噴射流量を変更可能でありノズル22から液滴化位置4cまでの距離を変更可能であるため、交差位置Lcを調整可能な光源部3Aを有している。しかしながら、噴射部2からの液体の噴射流量が一定でありノズル22から液滴化位置4cまでの距離が一定である構成であれば、予め液滴化位置4cの位置に交差位置Lcの位置を合わせておくことで、交差位置Lcを調整する必要はなくなる。このため、ノズル22から液滴化位置4cまでの距離が一定である構成の液体噴射装置1であれば、交差位置Lcを調整できない光源部3を有していてもよい。
【0055】
また、上記のように、本実施例の液体噴射装置1Aは、噴射部2による液体4の噴射状態の制御及び光源部3による第1光路L1及び第2光路L2の交差位置Lcを調整する制御部5を備え、制御部5は、噴射部2による液体4の噴射状態に応じて交差位置Lcを調整する。このため、本実施例の液体噴射装置1Aは、噴射部2による液体4の噴射状態が例えば小流量から大流量に変化した場合などにおいても、制御部5による自動制御で交差位置Lcを調整することができるので、容易に対象物Oに対して好ましい位置に配置することを可能にしている。
【0056】
また、上記のように、本実施例の液体噴射装置1Aは、ノズル22内における液体4の流量を変更するポンプ6を備えている。ポンプ6には、液体4の流量を測定する測定部6aが設けられている。そして、記憶部54には、測定部6aによる測定流量に基づく交差位置Lcに関するデータとしてのテーブルが記憶されている。制御部5は、該テーブルに基づいて、交差位置Lcを調整することができる。このように、本実施例の液体噴射装置1Aは、ポンプ6を有することにより液体4の流量を容易に変更することができる。また、本実施例の液体噴射装置1Aは、液体4の流量を変更することで噴射部2による液体4の噴射状態が変化した場合においても、制御部5による自動制御で交差位置Lcを調整することができるので、容易に対象物Oに対して好ましい位置に配置することを可能にしている。
【0057】
ここで、本実施例の液体噴射装置1Aにおいては、第1光路L1の光は緑色の可視光であり、第2光路L2の光は赤色の可視光である。そして、交差位置Lcにおける光の色は、第1光路L1の光と第2光路L2の光とが合わさって黄色となる。このように、第1光路L1の光及び第2光路L2の光は、ともに可視光であり、互いの波長が異なる光であることが好ましい。第1光路L1の光及び第2光路L2の光の波長が同じであれば、交差位置Lcがずれていた場合、対象物Oに対する間隔が近い側にずれているのか遠い側にずれているのかの判断がしづらい場合がある。しかしながら、第1光路L1の光及び第2光路L2の光が互いに波長が異なる可視光であれば、
図7と
図9とを比較すると明らかなように、対象物Oに対する液体噴射装置の間隔が近い側にずれているのか遠い側にずれているのかで、第1光路L1の光と第2光路L2の光との位置関係が逆になる。このため、第1光路L1の光及び第2光路L2の光がともに可視光であり互いの波長が異なる光であれば、容易に液体噴射装置を好ましい位置に配置することができる。
【0058】
[実施例2]
次に、本発明の液体噴射装置1としての実施例2の液体噴射装置1Bについて、
図10を参照して説明する。なお、
図10は実施例1の液体噴射装置1における
図1及び
図2に対応する図であるとともに、
図10において上記実施例1と共通する構成部材は同じ符号で示しており、詳細な説明は省略する。ここで、本実施例の液体噴射装置1Bは、上記で説明した実施例1の液体噴射装置1Aと同様の特徴を有しているとともに、下記での説明箇所以外は実施例1の液体噴射装置1Aと同様の構成をしている。具体的には、光源部3の構成以外は、実施例1の液体噴射装置1Aと同様の構成をしている。
【0059】
図1及び
図2で表されるように、実施例1の液体噴射装置1Aにおける光源部3Aは、光源部3A全体が噴射部2に対して噴射方向Dに沿う移動方向Mに移動することで、液滴化位置4cに対する交差位置Lcを変更可能な構成であった。一方、本実施例の液体噴射装置1Bにおける光源部3Bは、
図10で表されるように、搖動方向R1に搖動可能な第1光照射部33と搖動方向R2に搖動可能な第2光照射部34とを有し、制御部5の制御により第1光照射部33及び第2光照射部34の配置される角度を変えることで、液滴化位置4cに対する交差位置Lcを変更可能な構成である。
【0060】
[実施例3]
次に、本発明の液体噴射装置1としての実施例3の液体噴射装置1Cについて、
図11を参照して説明する。なお、
図11は実施例1の液体噴射装置1における
図1及び
図2に対応する図であるとともに、
図11において上記実施例1及び実施例2と共通する構成部材は同じ符号で示しており、詳細な説明は省略する。ここで、本実施例の液体噴射装置1Cは、上記で説明した実施例1の液体噴射装置1A及び実施例2の液体噴射装置1Bと同様の特徴を有しているとともに、下記での説明箇所以外は実施例1の液体噴射装置1A及び実施例2の液体噴射装置1Bと同様の構成をしている。具体的には、光源部3の構成以外は、実施例1の液体噴射装置1A及び実施例2の液体噴射装置1Bと同様の構成をしている。
【0061】
上記のように、実施例1の液体噴射装置1Aにおける光源部3A及び実施例2の液体噴射装置1Bにおける光源部3Bは、2つの光照射部を備えていた。一方、本実施例の液体噴射装置1Cにおける光源部3Cは、
図11で表されるように、1つの光照射部35と、入射光を2方向に出射させる光スプリッター36と、光スプリッター36で分けられた光の一方を反射するミラー37と、を備えている。そして、制御部5の制御により光照射部35、光スプリッター36及びミラー37の配置される角度を変化させることで、液滴化位置4cに対する交差位置Lcを変更可能な構成である。
【0062】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…液体噴射装置、1A…液体噴射装置、1B…液体噴射装置、1C…液体噴射装置、
2…噴射部、2a…目盛、3…光源部、3A…光源部、3B…光源部、3C…光源部、
4…液体、4a…連続状態の液体、4b…液滴、4c…液滴化位置、5…制御部、
6…ポンプ、6a…測定部、7…液体供給管、8…液体容器、22…ノズル、
24…液体搬送管、26…脈動生成部、31…第1光照射部、32…第2光照射部、
33…第1光照射部、34…第2光照射部、35…光照射部、36…光スプリッター、
37…ミラー、38…アーム部、51…圧電素子制御部、52…ポンプ制御部、
53…光源部駆動制御部、54…記憶部、220…ノズル流路、240…液体流路、
261…筐体、261a…第1ケース、261b…第2ケース、
261c…第3ケース、262…圧電素子、263…補強板、264…ダイアフラム、
265…収容室、266…液体室、267…出口流路、268…入口流路、
291…配線、292…配線、293…配線、L1…第1光路、L2…第2光路、
Lc…交差位置、O…対象物