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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】化粧シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240501BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240501BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240501BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240501BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/20 A
B32B27/32 Z
B32B7/023
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020022279
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021126811
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】青木 英士
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-059581(JP,A)
【文献】特開2006-284689(JP,A)
【文献】特開2019-064139(JP,A)
【文献】特開2019-038195(JP,A)
【文献】特開2017-145338(JP,A)
【文献】特開2021-063165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B05D
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、白色シートと絵柄層とをこの順に積層した化粧シートであって、
前記絵柄層は、前記白色シートの表面に形成され少なくとも1種類の青色顔料を含有し、
前記絵柄層側から測色した分光反射率が、500nm以上650nm以下の範囲内の波長領域に極小値を持ち、
前記絵柄層側からD65光源を用いて反射色度を測色した場合に、
Lab表色系におけるL*が+90以上+100以下の範囲内であり、a*が-1.5以上+1.5以下の範囲内であり、b*が-1.5以上+2.0以下の範囲内であること
を特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記青色顔料として、群青(ウルトラマリン)、紺青(ミロリーブルー)、コバルトブルー、セルリアンブルー、及び呉須のうち少なくとも1種類を含有すること
を特徴とする請求項1に記載した化粧シート。
【請求項3】
前記絵柄層は、顔料として前記青色顔料のみ又は、前記青色顔料及び酸化チタンのみを含み、前記青色顔料として群青(ウルトラマリン)又はコバルトブルーのうち一方を含有すること
を特徴とする請求項2に記載した化粧シート。
【請求項4】
前記白色シート及び前記絵柄層のうち少なくとも一方に酸化チタンを含有すること
を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項5】
前記白色シート及び前記絵柄層のうち少なくとも一方に含有される酸化チタンの合計を100質量部とした場合、前記青色顔料の添加量が0.3質量部以上3質量部以下の範囲内であること
を特徴とする請求項4に記載した化粧シート。
【請求項6】
前記絵柄層に酸化チタンを含有すること
を特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項7】
前記白色シートの主成分がポリプロピレン及び酸化チタンであること
を特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項8】
前記白色シートの主成分がポリエチレン及び酸化チタンであること
を特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項9】
前記化粧シートの厚さが40μm以上200μm以下の範囲内であること
を特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載した化粧シートの製造方法であって、
前記白色シートの表面に前記絵柄層を形成し、前記青色顔料を前記絵柄層に添加することで、500nm以上650nm以下の範囲内の波長領域に前記絵柄層側から測色した分光反射率の極小値を持ち、前記絵柄層側からD65光源を用いて反射色度を測色した場合に、Lab表色系におけるL*が+90以上+100以下の範囲内であり、a*が-1.5以上+1.5以下の範囲内であり、b*が-1.5以上+2.0以下の範囲内である前記化粧シートを作製すること
を特徴とする化粧シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護上の問題が懸念されているポリ塩化ビニル製の化粧シートに替わる化粧シートとして、オレフィン系樹脂を使用した化粧シート(例えば、ポリプロピレンシート)が数多く提案されている。オレフィン系樹脂を使用した化粧シートに関する技術としては、例えば、特許文献1に記載された技術がある。
これらの化粧シートは、塩化ビニル樹脂を使用しないことで、焼却時における有毒ガス等の発生が抑制される。しかし、一般的にポリプロピレンシートは、弾性率が低いために耐傷性に劣ることや、印刷等のシート作製時等においてシートに張力を掛けたときに伸び易いことがある。
【0003】
ところで化粧シートは、木質基板、金属基板、不燃基板等の基板表面に貼り付けることで化粧板となり、化粧シートは化粧板に対して目的に応じた意匠性を付与する。従って、化粧シートは、必要に応じて基板の表面が完全に見えなくなるように覆い隠す必要がある。この場合、少なくとも顔料によって着色され、隠蔽性が付与された化粧シートを用いる必要がある。そして、最も単純な化粧シートの構成としては、着色されたシート単体(単層)からなる構成が挙げられる。このような単層からなる化粧シートの場合、通常は、付与できる意匠が柄の無い単色に限定されてしまうが、例えば顔料としてアルミフレークやパール顔料等の光輝材を添加することで光輝感を付与することはできるため、必要十分な意匠表現は可能である。また、更なる高意匠を付与したい場合は、シート単体の表面に印刷等の加飾を施すことも有効である。
【0004】
化粧シートの中で白色シートは、ドア枠、巾木、各種収納等に用いられる。白色シートは基板の表面が透けて見え易く、隠蔽性を付与するために多量の顔料を添加する必要がある。しかしながら、多量の顔料を添加することで白色シート全体が硬くなり、破断し易くなるという問題がある。例えば、特許文献2には、無機顔料をベシクル化された状態で配合し、顔料の添加量を増大させることで隠蔽性が優れる化粧シートが提案されている。しかしながら、特許文献2の化粧シートでは、顔料の添加量が増大することを回避することはできず、白色シートの曲げ加工性が低減して破断し易くなるという問題は解消されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3271022号公報
【文献】特開2016-155233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、無機顔料の添加量の増大を回避可能であって、曲げ加工性等の柔軟性に優れ、且つ、隠蔽性に優れた化粧シート、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは種々検討及び実験を重ね、例えば、少なくとも1種類の青色顔料を絵柄層に添加することで、所定範囲内の波長領域に分光反射率の極小値を持ち、隠蔽性に優れた化粧シート及びその製造方法を提供できることを見出した。
【0008】
すなわち、上記課題を達成するべく、本発明の一態様に係る化粧シートは、少なくとも、白色シートと絵柄層とをこの順に積層した化粧シートであって、前記絵柄層は、前記白色シートの表面に形成され少なくとも1種類の青色顔料を含有し、前記絵柄層側から測色した分光反射率が、500nm以上650nm以下の範囲内の波長領域に極小値を持ち、前記絵柄層側からD65光源を用いて反射色度を測色した場合に、Lab表色系におけるL*が+90以上+100以下の範囲内であり、a*が-1.5以上+1.5以下の範囲内であり、b*が-1.5以上+2.0以下の範囲内であることを要旨とする。
また、本発明の一態様に係る化粧シートの製造方法は、前記白色シートの表面に前記絵柄層を形成し、前記青色顔料を前記絵柄層に添加することで、500nm以上650nm以下の範囲内の波長領域に前記絵柄層側から測色した分光反射率の極小値を持ち、Lab表色系におけるL*が+90以上+100以下の範囲内であり、a*が-1.5以上+1.5以下の範囲内であり、b*が-1.5以上+2.0以下の範囲内である前記化粧シートを作製することを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、無機顔料の添加量の増大を回避可能であって、曲げ加工性等の柔軟性に優れ、且つ、隠蔽性に優れた化粧シート、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る化粧シートの構造の一例を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る他の化粧シートの構造の一例を示す断面図である
図3】酸化チタンのみを含有する白色シートの分光反射率を示すグラフである。
図4】絵柄層に青色顔料として、コバルトブルー、ウルトラマリンブルーをそれぞれ含有する化粧シートの分光反射率を示すグラフである。
図5】同一の白色シートについて、白下地、黒下地でそれぞれ測定した分光反射率を示すグラフである。
図6】実施例1-4の化粧シート及び比較例1の化粧シートそれぞれの分光反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状及び構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
「構成」
図1に示す実施形態の化粧シート1は、白色シート2と絵柄層5とを積層して作製した場合の例である。本実施形態の白色シート2は、少なくとも、無機顔料をポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂に混合してなる着色層3、すなわち無機顔料とポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂とを含む着色層3を有する。また、白色シート2は、着色層3と、ポリプロピレン樹脂からなるスキン層4とから構成されていてもよい。スキン層4は、着色層3の少なくとも一方の面に形成されていればよい。スキン層4は、着色層3に含まれる無機顔料がブリードして、化粧シート1の製造工程において製造設備(例えば、押出機)に付着し、製膜不良となることを防ぐ狙いがある。スキン層4には、ポリプロピレン樹脂の結晶化度を向上させるため、ナノサイズの造核剤を含有してもよい。ポリプロピレン樹脂の結晶化度を向上させることにより、耐傷性が良化する。なお、本実施形態では、造核剤は、例えば、外膜で包含されてベシクル化した造核剤ベシクルの状態で含有されていてもよい。また、白色シート2の一方の面には、化粧シート1の意匠性を向上させるための、絵柄層5が形成(積層)されている。
【0013】
図2に示すように、化粧シート1は、絵柄層5上、つまり絵柄層5の一方の面側に、必要に応じて透明樹脂層6及びトップコート層7の少なくとも一方の層を積層した構造を有していてもよい。図2に例示した化粧シート1は、白色シート2の一方の面に、絵柄層5、透明樹脂層6及びトップコート層7がこの順に積層した例である。また、透明樹脂層6又はトップコート層7の一方が省略されていてもよい。
【0014】
ここで、透明樹脂層6及びトップコート層7の少なくとも一方の層には、意匠性の要求によっては、エンボスによる凹凸模様(エンボス模様6a)を付与してもよい。エンボス模様6aには、インキを埋め込み、さらに意匠性を向上させることも可能である。また、絵柄層5と透明樹脂層6との密着性に問題があれば、絵柄層5と透明樹脂層6との密着性を向上させるための接着性樹脂層6bを適宜設けても構わない。接着性樹脂層6bを設ける場合、透明樹脂層6と接着性樹脂層6bとの共押出法で形成してもよい。接着性樹脂層6bは、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル系等の樹脂に酸変性を施したもの、すなわち酸変性樹脂で形成されてもよい。接着性樹脂層6bの厚さは、接着力向上の目的から2μm以上であることが望ましい。更に、耐傷性等の要求から、透明樹脂層6及びトップコート層7の少なくとも一方の層を複数層積層することも可能である。なお、本実施形態による化粧シート1については、その他、公知の他の層を配置する構成としてもよい。
【0015】
図1及び図2中、符号Bは、基板を表している。基板Bは、化粧シート1が貼り合わせられる基板である。基板Bとしては、特に限定は無いが、例えば、木質ボード類、無機系ボード類、金属板等の、複数の材料で形成される複合板等が例示できる。化粧シート1と基板Bとの間に、適宜、プライマー層8や隠蔽層(不図示)等を設けてもよい。
【0016】
本実施形態の化粧シート1の引張弾性率、特に白色シート2単体の引張弾性率の範囲が、1000MPa以上2200MPa以下の範囲内であることが好ましい。引張弾性率が1000MPa未満の場合、耐傷性が悪くなる傾向がある。また、引張弾性率が2200MPaを超える場合、結晶性が高すぎるため、造核剤(例えば、造核剤ベシクル)を用いた場合でも、曲げ加工において白化や割れといった不具合が生じてしまうおそれがある。
【0017】
次に、化粧シート1を構成する各層について説明する。
【0018】
<白色シート>
白色シート2は、例えば、無機顔料を適当な配合で樹脂に混合してなる着色層3を有する。着色層3が最外層にあると、着色層3に含まれる顔料成分がブリードし、押出機のTダイや搬送中のロール等が汚染する可能性があるため、着色層3の両面にスキン層4を設けることが望ましい。スキン層4が薄いと着色層3に含まれる顔料成分がブリードしてくるため、スキン層4の厚さは3μm以上20μm以下の範囲内であることが好ましい。なお、スキン層4は、耐傷性向上の目的であれば、着色層3の少なくとも一方の面に形成されていればよい。
【0019】
(無機顔料)
無機顔料は、白色シート2に隠蔽性を付与するため、例えば、酸化チタンを含有する。白色シート2は、基板Bの模様を隠蔽する役割を担う。化粧シート1の意匠性の観点から要求される隠蔽性を得るために、白色シート2の光透過率が40%以下であることが好ましい。白色シート2の隠蔽性が低い場合、白色シート2を透過して基板Bの模様が視認される。このため、化粧シート1において絵柄層5の模様と基板Bの模様とが混在し、好ましくない。白色シート2を構成する着色層3に無機顔料を含有することにより、隠蔽性が良好な化粧シート1を得ることができる。着色層3における無機顔料全体の混合量(添加量)は、樹脂材料を100質量部として、5質量部以上70質量部以下の範囲内とすることが好ましい。無機顔料の混合量が5質量部未満の場合は白色シート2の隠蔽性が悪く、また、無機顔料の混合量が70質量部を超える場合は白色シート2の脆化が起こるため、好ましくない。ここで、図3に、着色層3における無機顔料として酸化チタンのみを含有する白色シート2の分光反射率のグラフを示す。図3に示すように、白色シート2において、短波長側の光(ここでは、波長450nm未満)は分光反射率が低いが、450nm以上700nm以下の波長領域では90%以上の分光反射率を示す。
【0020】
なお、本実施形態において、分光反射率の測定には、コニカミノルタ株式会社製蛍光分光濃度計(FD-7)を用い、400nm以上700nm以下の波長領域における分光反射率を得た。また、下地の色の影響を考慮し、BYK-GARDNER社製の隠蔽試験紙(byko-chart高明度2A)の白下地の上で、分光反射率を測定した。
【0021】
白色シート2において着色層3が含有する無機顔料は、上記、酸化チタン以外であってもよい。例えば、無機顔料として、公知の無機顔料を混合して用いることができる。混合する無機顔料としては、特に限定されないが、例えば天然無機顔料、合成無機顔料が挙げられる。天然無機顔料としては、例えば、土系顔料、焼成土、鉱物性顔料等が挙げられる。合成無機顔料としては、例えば、酸化物顔料、水酸化物顔料、硫化物顔料、珪酸塩顔料、燐酸塩顔料、炭酸塩顔料、金属粉顔料、炭素顔料等が挙げられる。また、天然無機顔料、合成無機顔料の中から、1種類または2種類以上を混合した混合顔料を用いてもよい。また、着色層3において、フタロシアニン、カーボンブラックのような有機顔料を併用しても構わない。
【0022】
(樹脂)
白色シート2の着色層3において無機顔料と混合する樹脂は、環境保護の観点からオレフィン系樹脂が好ましい。オレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン単独重合体、エチレン-プロピレンのブロック共重合体、ランダム共重合体等が挙げられる。またこれら以外にも、オレフィン系樹脂として、エチレン及びプロピレンの少なくとも一種とブテン、ペンテン、ヘキセン等のうち少なくとも一種の他のオレフィンとの共重合体、エチレン及びプロピレンの少なくとも一種と酢酸ビニル、ビニルアルコール等の少なくとも一種の他の単量体との共重合体等が挙げられる。なかでも、優れた耐傷性と良好な曲げ加工性とを得る観点から、着色層3に用いる樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。つまり本実施形態において、白色シート2は、主成分がポリエチレン及び酸化チタンであるか、又は主成分がポリプロピレン及び酸化チタンであることが好ましい。ここで、本実施形態で主成分とは、特に特定が無い場合には、対象とする材料の90質量%以上を指す。
【0023】
[ポリエチレン樹脂]
着色層3において無機顔料と混合するポリエチレンは、エチレンの単独重合体であってもよいし、エチレンと、エチレンと共重合可能な他のコモノマー(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のαオレフィン、酢酸ビニル、ビニルアルコール等)との共重合体であってもよい。ポリエチレン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、架橋ポリエチレン(PEX)等が挙げられる。これらのポリエチレンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
[ポリプロピレン樹脂]
着色層3において無機顔料と混合するポリプロピレン樹脂は、後述する高結晶性ポリプロピレンを用いることが好ましいが、高結晶性ホモポリプロピレンに対し、例えば、所定の範囲内でエチレンコンテンツを有するランダムポリプロピレン樹脂や公知の非晶性ポリプロピレン樹脂を混合して用いることができる。
【0025】
本実施形態においては、無機顔料と混合するポリプロピレン樹脂として、結晶性の高いポリプロピレン樹脂を用いることが好適である。特に、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上のプロピレン単重合体である高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を、全ポリプロピレン樹脂の質量に対して50質量%以上100質量%以下の範囲内で用いることが好ましい。
【0026】
ポリプロピレン樹脂の結晶化温度は、一般的に100℃以上130℃以下の範囲内とされており、造核剤を添加すると110℃以上140℃以下の範囲内とされる。また、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%未満のポリプロピレン樹脂を用いた場合、結晶性が不足する。このため、製造プロセスをコントロールしても、引張弾性率が好適な範囲よりも低くなってしまうことがある。また、高結晶性ホモポリプロピレン樹脂が50質量%未満の場合も同様に、結晶性が不足する。このため、製造プロセスをコントロールしても引張弾性率が好適な範囲よりも低くなってしまうことがある。
【0027】
ここで、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、質量13の炭素C(核種)を用いた13C-NMR測定法(核磁気共鳴測定法)により、樹脂材料を所定の共鳴周波数にて共鳴させて得られる数値(電磁波吸収率)から算出されるものであり、樹脂材料中の原子配置、電子構造、分子の微細構造を規定するものである。そして、結晶性ポリプロピレン樹脂のペンタッド分率とは、13C-NMRにより求めたプロピレン単位が5個並んだ割合のことであって、結晶化度あるいは立体規則性の尺度として用いられる。ペンタッド分率は、主に表面の耐擦傷性を決定付ける重要な要因の一つであり、基本的にはペンタッド分率が高いほど結晶化度が高いことを表す。
【0028】
化粧シート1において、白色シート2がオレフィン系樹脂のような樹脂で形成され、表面が不活性な場合は、白色シート2の表裏両方の面に、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等を行うことが望ましい。
【0029】
更に、分散性の向上や、押出適性を改善するために脂肪酸金属塩等の添加剤を、ポリプロピレン樹脂等の樹脂に加えても構わない。
【0030】
<絵柄層5>
白色シート2の表面には、化粧シート1に柄模様を付加するための絵柄層5を設けることができる。柄模様としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形等を用いることができる。
【0031】
絵柄層5は、少なくとも1種類の青色顔料を含有する。青色顔料として、古来には美しい青紫色の顔料にラピスラズリ(瑠璃)を粉にしたものが用いられていた。これは遠い海の彼方から運ばれてきたのでウルトラマリンと呼ばれていた。現在では、ウルトラマリンは合成することができ、群青として知られている。ウルトラマリンは、例えば粘土鉱物のカオリンと硫黄、活性炭等とを混ぜて焼くことにより作製することができる。ウルトラマリンを構成する3次元のアルミノシリケート格子中には、結合してイオンを形成した3つの硫黄原子が含まれる。顔料の青色は不対電子を持つラジカルアニオンによるもので、酸に弱い。なお、ウルトラマリンには、例えば、硫黄を含んだケイ酸ナトリウムの錯体(Na8-10AlSi242-4)がある。
【0032】
また、紺青(ミロリーブルー)はドイツで生まれた最初の合成顔料で、プルシアンブルーとも呼ばれる顔料である。また、明るい青色顔料としては、コバルトブルーもある。これらの他にも、青色顔料として、セルリアンブルー、呉須等の無機顔料を用いることができる。なお、紺青(ミロリーブルー)は、例えば、Fe[Fe(CN)の組成式で示される顔料である。また、コバルトブルーは、例えば、CoAlやCoOAlの組成式で示される顔料である。また、セルリアンブルーは、例えば、CoO・nSnO・mMgO(n=1.5~3.5、m=2~6)の組成式で示される顔料である。また、呉須は、例えば、石英・ハロイサイト・リシオホライト鉱(Lithiopholite)である。本実施形態による化粧シート1は、青色顔料として、群青(ウルトラマリン)、紺青(ミロリーブルー)、コバルトブルー、セルリアンブルー、及び呉須のうち少なくとも1種類を含有していればよい。
【0033】
図4に示すグラフは、青色顔料として絵柄層5にコバルトブルーを単独で含有する化粧シート、及び青色顔料として絵柄層5にウルトラマリンを単独で含有する化粧シートそれぞれの分光反射率の一例を示している。青色顔料の種類によって分光反射率に違いはあるが、定性的には、絵柄層5に少なくとも1種類の青色顔料を含有する化粧シートは、絵柄層5側から測色した分光反射率が、500nm以上650nm以下の範囲内の波長領域に極小値を持つ。これにより、化粧シート1は、良好な隠蔽性を得ることができる。
【0034】
化粧シートにおける隠蔽性は、下地が白色である場合と、下地が黒色である場合との色差で優劣を判断するが、図5に示すように、白色シートにおける分光反射率は、500nm以上の長波長側で差が表れる。このため、白色シート2に積層する絵柄層5に少なくとも1種類の青色顔料を添加して、図4に示すように500nm以上650nm以下の範囲内の波長領域に分光反射率の極小値を持たせることで、長波長側の分光反射率を低減させ、隠蔽性が良好な化粧シート1を得ることができる。つまり、化粧シート1は、絵柄層5が少なくとも1種類の青色顔料を含有することで、顔料の添加量を増大させることなく良好な隠蔽性を得ることができる。このため、本実施形態による化粧シート1は、顔料の添加量を増大回避であって、無機顔料の添加量の増大を回避可能であって、曲げ加工性等の柔軟性に優れ、且つ、隠蔽性に優れている。
【0035】
また、化粧シート1の隠蔽性をさらに良化させるため、絵柄層5において青色以外の顔料として酸化チタンを併用すること、すなわち絵柄層5に青色顔料と酸化チタンとを含有することが望ましい。本実施形態による化粧シート1は、白色シート2及び絵柄層5のうち少なくとも一方に酸化チタンを含有していればよい。本実施形態において、化粧シート1における酸化チタンと青色顔料との適当な配合比は以下のとおりである。
化粧シート1に含有する酸化チタンの合計、つまり白色シート2及び絵柄層5のうち少なくとも一方に含有する酸化チタンの合計を100質量部とした場合、絵柄層5における青色顔料の添加量は、0.3質量部以上3質量部以下の範囲内であればよく、1質量部以上2質量部以下の範囲内であるとより好ましい。青色顔料の添加量が1質量部よりも少ないと隠蔽性を良化する効果が得にくい。また、青色顔料の添加量が2質量部よりも多いと絵柄層5の青味が強くなり、絵柄層5を積層した白色シート2が白色とは認識されないことがある。なお、絵柄層5が酸化チタンを含有しない場合、白色シート2が含有する酸化チタンの合計が、化粧シート1が含有する酸化チタンの合計を示す。また、白色シート2が酸化チタンを含有しない場合、絵柄層5が含有する酸化チタンの合計が、化粧シート1が含有する酸化チタンの合計を示す。
【0036】
本実施形態において、白色シート2と絵柄層5とで形成される化粧シート1は、酸化チタンと少なくとも1種類の青色顔料とを上述の適当な配合比で含有することにより、500nm以上650nm以下の範囲内の波長領域に極小値を持つ分光反射率がより確実に得られる。
【0037】
また、白色シート2と絵柄層5とで形成される化粧シート1は、絵柄層5側からD65光源を用いて反射色度を測色した場合、Lab表色系におけるLが+90以上+100以下の範囲内であり、aが-1.5以上+1.5以下の範囲内であり、bが-1.5以上2.0以下の範囲内であることが好ましい。これにより、本実施形態による化粧シート1は、より優れた隠蔽性を得ることができる。なお、反射色度の各値(L、a、b)の上記範囲を適正範囲という。本実施形態において、酸化チタンと、少なくとも1種類の青色顔料とを上述の適当な配合比で含有することにより、化粧シート1における反射色度の各値(L、a、b)を上述の適正範囲内とすることができる。
【0038】
なお、Lab表色系とは、CIE(国際照明委員会)が推奨する、3つの値(L)を使った座標で表す表色系である。Lは明るさを示し、0から100まで数値が大きいほど明るくなる。色味はa、bで表し、a、bともに0の場合は無彩色となる。aがプラスの方向になるほど赤味が強くなり、マイナスの方向になるほど緑味が強くなる。また、bがプラスの方向になるほど黄味が強くなり、マイナスの方向になるほど青味が強くなる。また、本実施形態において、化粧シート1における反射色度の測定には、X-rite社製の分光測色計(530JP/LP)を用い、国際照明委員会(CIE)により定義された標準光源であるD65光源で、BYK-GARDNER社製の隠蔽試験紙(byko-chart高明度2A)の白下地上で反射色度を測定した。
【0039】
絵柄層5が青色顔料、酸化チタン以外に含有する構成材料は、特に限定されるものではない。例えば、マトリックスと染料や顔料等の着色剤とを溶剤中に溶解、分散してなる印刷インキや、コーティング剤等を用いることができる。マトリックスとしては、例えば、油性の硝化綿樹脂、2液ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂類、又はこれらの混合物、共重合体等を用いることができる。また、着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、黄鉛、カドミウムレッド等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、又はこれらの混合物を用いることができる。また、溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、水等、又はこれらの混合物等を用いることができる。
【0040】
また、絵柄層5には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
【0041】
また、目的とする意匠の程度に応じて、下地ベタインキ層を絵柄層5として設けてもよい。下地ベタインキ層は、例えば、白色シート2の全面を被覆するようにして設けられる。また、下地ベタインキ層は、隠蔽性等、必要に応じて2層以上の多層としてもよい。更に、絵柄層5は、求められる意匠を表現するために必要な分版の数だけ積層して形成してもよい。このように、絵柄層5は、求められる意匠、つまり、表現したい意匠に応じて様々な組み合わせとなるが、特に限定されるものではない。
【0042】
ここで、絵柄層5は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法によって形成することができる。また、下地ベタインキ層は、白色シート2の全面を被覆しているため、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、マイクログラビアコート法、ダイコート法等の各種コーティング方法によっても形成することができる。これらの印刷方法、コーティング方法は、形成する層によって別々に選択してもよいが、同じ方法を選択して一括加工することが効率的である。
【0043】
絵柄層5の厚さは、3μm以上20μm以下の範囲内であることが好ましい。絵柄層5の厚さがこの範囲内である場合、印刷を明瞭にすることができるとともに、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、かつ製造コストを抑制することができる。
【0044】
また化粧シート1の厚さは、40μm以上200μm以下の範囲内であればよい。ここで、化粧シート1における絵柄層5、トップコート層7は層厚が非常に薄くなっている。このため、絵柄層5及びトップコート層7の厚さは無視して、白色シート2のみの厚さを考慮し、化粧シート1全体の総厚を40μm以上200μm以下となるように設計しても良い。本実施形態において、白色シート2の厚さは、40μm以上200μm以下の範囲内であればよく、50μm以上150μm以下の範囲内であるとより好ましい。化粧シート1の厚さが40μm未満の場合、化粧シート1を貼付する下地(例えば基板B)の凹凸をカバーする性能(耐不陸性)が大幅に低減するため、好ましくない。一方、化粧シート1の厚さが200μmを超える場合、曲げ加工性が低減して白化や割れといった不具合が生じてしまうおそれがある。
【0045】
<透明樹脂層>
透明樹脂層6の主成分として用いる樹脂材料は、オレフィン系樹脂で構成されることが好適であり、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4、4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等)を単独重合あるいは2種類以上を共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等のように、エチレン又はαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。また、化粧シート1の表面強度の向上を図る場合には、高結晶性のポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0046】
透明樹脂層6を設ける場合、透明樹脂層6の層厚は50μm以上100μm以下の範囲内が好ましい。透明樹脂層6の層厚が50μm未満の場合、透明樹脂層6表面の耐傷性の向上効果が低く、透明樹脂層6を設ける意義が少なくなってしまう。また、透明樹脂層6の層厚が100μmを超える場合、化粧シート1の剛性が高すぎて、曲げ加工において白化や割れといった不具合が生じてしまうおそれがある。
【0047】
もっとも、透明樹脂層6の上にトップコート層7を設ける場合には、透明樹脂層6の層厚は50μm未満としてもよい。
【0048】
なお、透明樹脂層6を構成する樹脂組成物には、必要に応じて、例えば、熱安定剤、光安定化剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種機能性添加剤を含有させてもよい。これらの各種機能性添加剤は、周知のものから適宜選択して用いることができる。
【0049】
また、絵柄層5と透明樹脂層6とを密着させるために用いる接着剤は、接着方法として任意の材料選定が可能であり、例えば、熱ラミネート、押出ラミネート、ドライラミネート等による積層方法がある。また、接着剤は、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の材料から選定できる。通常はその凝集力から、イソシアネートとポリオールとの反応を利用した2液硬化タイプのウレタン系材料が望ましい。なお、絵柄層5と透明樹脂層6との積層方法にも特に規制はないが、熱圧を応用した方法、押出ラミネート法、ドライラミネート法等が一般的である。また、エンボス模様6aを施す場合には、一旦各種方法でラミネートしたシートに後から熱圧によりエンボスを入れる方法や、冷却ロールに凹凸模様を設け押出ラミネートと同時にエンボスを施す方法がある。
また、押出しと同時にエンボスを施した絵柄層5と透明樹脂層6とを熱あるいはドライラミネートで貼り合わせる方法等を用いることができる。
【0050】
また、押出ラミネート法でさらなるラミネート強度を求める場合、透明樹脂層6と接着剤との間に接着性樹脂層6bを設けてもよい。接着性樹脂層6bを設ける場合、透明樹脂層6と接着性樹脂層6bとの共押出法でラミネートを行う。接着性樹脂層6bは、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル系等の樹脂に酸変性を施したもの、すなわち酸変性樹脂で形成してもよい。接着性樹脂層6bの厚さは、接着力向上の目的から2μm以上であることが望ましい。
【0051】
<トップコート層>
更なる耐傷性の向上や艶の調整が必要な場合は、透明樹脂層6の表面にトップコート層7を設けることができる。
【0052】
トップコート層7の主成分の樹脂材料としては、例えば、ポリウレタン系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系等の樹脂材料から適宜選択して用いることができる。樹脂材料の形態は、水性、エマルジョン、溶剤系など特に限定されるものではない。硬化法についても1液タイプ、2液タイプ、紫外線硬化法などから適宜選択して行うことができる。
【0053】
トップコート層7の主成分として用いる樹脂材料としては、イソシアネートを用いたウレタン系のものが作業性、価格、樹脂自体の凝集力等の観点から好適である。イソシアネートには、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等の誘導体であるアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等の硬化剤より適宜選定して用いることができるが、耐候性を考慮すると、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)もしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)をベースとする硬化剤が好適である。この他にも、表面硬度の向上を図る場合には、紫外線や電子線等の活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることが好ましい。なお、これらの樹脂は相互に組み合わせて用いることが可能であり、例えば、熱硬化型と光硬化型とのハイブリッド型とすることにより、表面硬度の向上、硬化収縮の抑制及び密着性の向上を図ることができる。
【0054】
トップコート層7には艶調整のために艶調整剤を添加することができる。艶調整剤は市販されている公知の物を用いればよい。艶調整剤としては、例えば、シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機材料からなる微粒子を用いてもよい。又は、艶調整剤としてアクリル等の有機材料からなる微粒子を用いることもできる。ただし、高い透明性が要求される場合には、透明性の高いシリカ、ガラス、アクリル等の微粒子を用いることが望ましい。特に、シリカやガラス等の微粒子のなかでも、中実の真球状粒子ではなく、微細な1次粒子が2次凝集してなる嵩密度の低い艶調整剤は添加量に対する艶消し効果が高い。それゆえ、このような艶調整剤を用いることで、艶調整剤の添加量を少なくすることができる。
【0055】
また、トップコート層7に各種機能を付与するために、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤を添加してもよい。また、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定化剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系を用いることができる。また、光安定化剤としては、ヒンダードアミン系を用いることができる。
【0056】
トップコート層7の層厚は3μm以上15μm以下の範囲内が好ましい。トップコート層7の層厚が3μm未満の場合、耐傷性の向上効果が低く、トップコート層7を設ける意義が少なくなってしまうことがある。また、トップコート層7の層厚が15μmを超える場合、曲げ加工時においてクラックや割れが生じてしまい、意匠上の問題や耐候性が悪化する問題が発生することがある。
【0057】
<プライマー層>
プライマー層8の材料としては、基本的に絵柄層5と同じ材料を用いることができる。化粧シート1の裏面に施され、ウエブ状で巻取りを行うことを考慮すると、プライマー層8には、例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤を添加させてもよい。これにより、巻き取りによるプライマー層8のブロッキングを避け、接着剤との密着を高めることができる。プライマー層8の塗布厚さは、基板Bとの密着を確保することが目的であるので、0.1μm以上3.0μm以下の範囲内が好ましい。なお、プライマー層8は、白色シート2がオレフィン系材料のように表面が不活性なものである場合には必要であるが、表面が活性なものである場合には特に必要なものではない。
【0058】
「製造方法」
化粧シート1の製造方法の一例について説明する。
白色シート2の着色層3には、無機顔料を分散し易くするため、所定の範囲内でポリプロピレン樹脂を混合することが望ましい。また、混合するポリプロプレン樹脂は、エチレンコンテンツを有するランダムポリプロピレン樹脂や公知の非晶性ポリプロピレン樹脂が望ましい。また、白色シート2のスキン層4に使用するポリプロピレン樹脂は、結晶性の高いホモポリプロピレン樹脂を用いることが好適である。ポリプロピレン樹脂は、単独で用いてもよいが、併用することもできる。また、着色層3は所定の範囲内でポリエチレン樹脂を混合してもよい。
【0059】
上述した白色シート2用の樹脂材料を加熱溶融し、押出成形等によって、厚さが40μm以上200μm以下(好ましくは50μm以上150μm以下)の範囲内であるシート状に成形して白色シート2とする。
【0060】
更に、白色シート2の上面に絵柄層5を印刷によって形成する。絵柄層5には、青色顔料を上述の適正範囲内で添加する。これにより、化粧シート1は、500nm以上650nm以下の範囲内の波長領域に、絵柄層5側から測色した分光反射率の極小値を持つ。また必要に応じて、絵柄層5上に透明樹脂層6及びトップコート層7の少なくとも一方の層を形成する。
【0061】
<作用その他>
(1)本実施形態による化粧シート1は、白色シート2と絵柄層5とをこの順に積層し、絵柄層5には青色顔料を少なくとも1種類含有し、絵柄層5側から測色した分光反射率が、500nm以上650nm以下の範囲内の波長領域に極小値を持つ。
このような構成であれば、従来技術に比べて無機顔料の添加量を増大させる必要がないために柔軟性に優れ、且つ、隠蔽性に優れた化粧シート1を提供することができる。
(2)本実施形態による化粧シート1は、絵柄層5側からD65光源を用いて反射色度を測色した場合に、Lab表色系におけるLが+90以上+100以下の範囲内であり、aが-1.5以上+1.5以下の範囲内であり、bが-1.5以上+2.0以下の範囲内である。このような構成であれば、隠蔽性がさらに優れた化粧シート1を提供することができる。
【0062】
(3)本実施形態の化粧シート1は、絵柄層5に青色顔料として、群青(ウルトラマリン)、紺青(ミロリーブルー)、コバルトブルー、セルリアンブルー、及び呉須のうち少なくとも1種類を含有する。このような構成であれば、隠蔽性がさらに優れた化粧シート1を確実に提供することができる。
【0063】
(4)本実施形態の化粧シート1は、白色シート2及び絵柄層5のうち少なくとも一方に酸化チタンを含有してもよい。このような構成であれば、隠蔽性がさらに優れた化粧シート1を確実に提供することができる。
(5)本実施形態の化粧シート1は、白色シート2及び絵柄層5のうち少なくとも一方に含有される酸化チタンの合計を100質量部とした場合、青色顔料の添加量が0.3質量部以上3質量部以下の範囲内であってもよい。このような構成であれば、隠蔽性がさらに優れた化粧シート1を確実に提供することができる。
【0064】
(6)本実施形態の化粧シート1は、絵柄層5に酸化チタンを含有してもよい。このような構成であれば、隠蔽性がさらに優れた化粧シート1を確実に提供することができる。
【0065】
(7)本実施形態の化粧シート1は、白色シート2の主成分がポリプロピレン及び酸化チタンであってもよい。このような構成であれば、従来技術に比べて無機顔料の添加量を増大させる必要がないために柔軟性に優れ、且つ、隠蔽性に優れた化粧シート1を提供することができる。
(8)本実施形態の化粧シート1は、白色シート2の主成分がポリエチレン及び酸化チタンであってもよい。このような構成であれば、従来技術に比べて無機顔料の添加量を増大させる必要がないために柔軟性に優れ、且つ、隠蔽性に優れた化粧シート1を提供することができる。
【0066】
(9)本実施形態の化粧シート1の厚さが、40μm以上200μm以下の範囲内であってもよい。このような構成であれば、化粧シート1に耐不陸性と曲げ加工性との両方を付与することができる。
(10)本実施形態において、青色顔料を絵柄層5に添加することで、500nm以上650nm以下の範囲内の波長領域に絵柄層5側から測色した分光反射率の極小値を持つ化粧シート1を作製する。これにより、従来技術に比べて無機顔料の添加量を増大させることなく、柔軟性に優れ、且つ、隠蔽性に優れた化粧シート1を製造することができる。
【0067】
[実施例]
以下に、本実施形態の化粧シート1の具体的な実施例について説明する。
【0068】
(実施例1)
着色層3の原料として、ポリプロピレン樹脂60質量部に対し、無機顔料として酸化チタン顔料が40質量部となるように添加して混合した。また、スキン層4の原料として、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、ヒンダードアミン系光安定化剤(BASF社製「キマソーブ944」)0.5質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF社製「チヌビン328」)0.5質量部となるように添加して混合した。また、着色層3の混合物、スキン層4の混合物を、スキン層4、着色層3、スキン層4の順に、10μm:120μm:10μmの厚さになるように溶融押出機を用いて共押出しして、厚さ140μmの白色シート2を製膜した。
【0069】
厚さ140μmの白色シート2の表面に絵柄印刷を施して、絵柄層5を形成した。絵柄層5において、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ株式会社製)に、当該インキのバインダー樹脂分に対して、青色顔料としてコバルトブルー顔料を添加した。コバルトブルー顔料の添加量は、着色層3に添加された酸化チタン顔料40質量部に対して0.4質量部とした。さらに、当該インキに、ヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5質量部添加したインキを用いて形成した。また、白色シート2の裏面にプライマー層8を形成した。プライマー層8は絵柄層5と同様の2液型ウレタンインキを印刷することにより形成した。こうして、実施例1の化粧シート1を得た。
【0070】
(実施例2)
上述の絵柄層5に添加する青色顔料に関して、コバルトブルー顔料を0.8質量部となるように添加した以外は実施例1と同様に、実施例2の化粧シート1を形成した。
【0071】
(実施例3)
上述の絵柄層5に添加する青色顔料に関して、ウルトラマリンブルー顔料を0.4質量部となるように添加した以外は実施例1と同様に、実施例3の化粧シート1を形成した。
【0072】
(実施例4)
上述の絵柄層5に添加する青色顔料に関して、コバルトブルー顔料を0.2質量部となるように添加した以外は実施例1と同様に、実施例4の化粧シート1を形成した。
【0073】
(実施例5)
上述の絵柄層5に添加する青色顔料に関して、コバルトブルー顔料を1.0質量部となるように添加した以外は実施例1と同様に、実施例5の化粧シート1を形成した。
【0074】
(実施例6)
上述の絵柄層5に添加する青色顔料に関して、コバルトブルー顔料を0.2質量部となるように添加し、さらに絵柄層5に酸化チタンを20質量部となるように添加した以外は実施例1と同様に、実施例6の化粧シート1を形成した。
【0075】
(実施例7)
実施例1と同様の着色層3の混合物、スキン層4の混合物を用いて、スキン層4、着色層3、スキン層4の順に、3μm:44μm:3μmの厚さになるように溶融押出機を用いて共押出しして、厚さ50μmの白色シート2を製膜した。
【0076】
上記厚さ50μmの白色シート2の表面に、実施例1と同様に絵柄層5を形成し、実施例7の化粧シート1を得た。
【0077】
(実施例8)
実施例1と同様の着色層3の混合物、スキン層4の混合物を用いて、スキン層4、着色層3、スキン層4の順に、3μm:94μm:3μmの厚さになるように溶融押出機を用いて共押出しして、厚さ100μmの白色シート2を製膜した。
【0078】
上記厚さ100μmの白色シート2の表面に、実施例1と同様に絵柄層5を形成し、実施例8の化粧シート1を得た。
【0079】
(実施例9)
実施例1と同様の着色層3の混合物、スキン層4の混合物を用いて、スキン層4、着色層3、スキン層4の順に、3μm:34μm:3μmの厚さになるように溶融押出機を用いて共押出しして、厚さ40μmの白色シート2を製膜した。
【0080】
上記厚さ40μmの白色シート2の表面に、実施例1と同様に絵柄層5を形成し、実施例9の化粧シート1を得た。
【0081】
(実施例10)
実施例1と同様の着色層3の混合物、スキン層4の混合物を用いて、スキン層4、着色層3、スキン層4の順に、10μm:160μm:10μmの厚さになるように溶融押出機を用いて共押出しして、厚さ180μmの白色シート2を製膜した。
【0082】
上記厚さ180μmの白色シート2の表面に、実施例1と同様に絵柄層5を形成し、実施例10の化粧シート1を得た。
【0083】
(実施例11)
着色層3の原料として、ポリプロピレン樹脂60質量部に対し、無機顔料として酸化チタン顔料40質量部、ヒンダードアミン系光安定化剤(BASF社製「キマソーブ944」)0.3質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF社製「チヌビン328」)0.3質量部となるように添加して混合した。スキン層4は形成せず、着色層3を120μmの厚さになるように溶融押出機を用いて押出して、白色シート2を製膜した。
【0084】
上記厚さ120μmの白色シート2の表面に、実施例1と同様に絵柄層5を形成し、実施例11の化粧シート1を得た。
【0085】
(実施例12)
着色層3の原料として、ポリエチレン樹脂60質量部に対し、無機顔料として酸化チタン顔料が40質量部となるように添加して混合した。また、スキン層4の原料として、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、ヒンダードアミン系光安定化剤(BASF社製「キマソーブ944」)0.5質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF社製「チヌビン328」)0.5質量部となるように添加して混合した。着色層3の混合物、スキン層4の混合物を、スキン層4、着色層3、スキン層4の順に、10μm:120μm:10μmの厚さになるように溶融押出機を用いて共押出しして、厚さ140μmの白色シート2を製膜した。
【0086】
上記厚さ140μmの白色シート2の表面に、実施例1と同様に絵柄層5を形成し、実施例12の化粧シート1を得た。
【0087】
(実施例13)
上述の着色層3の原料として、ポリプロピレン樹脂70質量部、酸化チタン顔料を30質量部となるようにした以外は実施例1と同様にして、溶融押出機を用いて共押出しして、厚さ140μmの白色シート2を製膜した。
【0088】
上記厚さ140μmの白色シート2の表面に絵柄印刷を施して、絵柄層5を形成した。絵柄層5は、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ株式会社製)に、当該インキのバインダー樹脂分に対して、青色顔料としてコバルトブルー顔料を添加した。コバルトブルー顔料の添加量は、着色層3に添加された酸化チタン顔料30質量部に対して0.3質量部とした。さらに、当該インキにヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5質量部添加したインキを用いて形成した。また、白色シート2の裏面にプライマー層8を形成した。プライマー層8は絵柄層5と同様の2液型ウレタンインキを印刷することにより形成した。こうして、実施例13の化粧シート1を得た。
【0089】
(実施例14)
着色層3の原料として、ポリプロピレン樹脂80質量部、酸化チタン顔料を20質量部となるようにした以外は実施例1と同様にして、溶融押出機を用いて共押出しして、厚さ140μmの白色シート2を製膜した。
【0090】
上記厚さ140μmの白色シート2の表面に絵柄印刷を施して絵柄層5を形成した。絵柄層5は、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ株式会社製)に、当該インキのバインダー樹脂分に対して、青色顔料としてコバルトブルー顔料を添加した。コバルトブルー顔料の添加量は、着色層3に添加された酸化チタン顔料20質量部に対して0.2質量部とした。さらに、当該インキにヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5質量部添加したインキを用いて形成した。また、白色シート2の裏面にプライマー層8を形成した。プライマー層8は絵柄層5と同様の2液型ウレタンインキを印刷することにより形成した。こうして、実施例14の化粧シート1を得た。
【0091】
(実施例15)
着色層3の原料として、ポリプロピレン樹脂80質量部、酸化チタン顔料を20質量部となるようにした以外は実施例1と同様にして、溶融押出機を用いて共押出しして、厚さ140μmの白色シート2を製膜した。
【0092】
また、上述の絵柄層5に添加する顔料として、酸化チタンを20質量部となるように添加し、白色シート2及び絵柄層5が含有する酸化チタンの合計40質量部に対して、コバルトブルー顔料の添加量を0.2質量部とした以外は実施例1と同様にして、実施例15の化粧シート1を形成した。
【0093】
(実施例16)
実施例1と同様に作製した厚さ140μmの白色シート2の表面に絵柄印刷を施して、実施例1と同様に絵柄層5を形成し、さらに絵柄層5上に、2液硬化型ウレタントップコート(DICグラフィックス社製「W184」)を塗布量3g/mで塗布して、トップコート層7を形成した。こうして、実施例16の化粧シート1を得た。
【0094】
(実施例17)
実施例1と同様に作製した厚さ140μmの白色シート2の表面に、実施例2と同様の絵柄層5を形成し、さらに絵柄層5に対し、実施例16と同様にトップコート層7を形成し、実施例17の化粧シート1を得た。
【0095】
(実施例18)
実施例1と同様に作製した厚さ140μmの白色シート2の表面に、実施例3と同様の絵柄層5を形成し、さらに絵柄層5に対し、実施例16と同様にトップコート層7を形成し、実施例18の化粧シート1を得た。
【0096】
(実施例19)
実施例1と同様に作製した厚さ140μmの白色シート2の表面に、実施例4と同様の絵柄層5を形成し、さらに絵柄層5に対し、実施例16と同様にトップコート層7を形成し、実施例19の化粧シート1を得た。
【0097】
(実施例20)
実施例1と同様に作製した、厚さ140μmの白色シート2の表面に、実施例5と同様の絵柄層5を形成し、さらに絵柄層5に対し、実施例16と同様にトップコート層7を形成し、実施例20の化粧シート1を得た。
【0098】
(実施例21)
実施例1と同様に作製した、厚さ140μmの白色シート2の表面に、実施例6と同様の絵柄層5を形成し、さらに絵柄層5に対し、実施例16と同様にトップコート層7を形成し、実施例21の化粧シート1を得た。
【0099】
(実施例22)
実施例7と同様に作製した、厚さ50μmの白色シート2の表面に実施例7と同様の絵柄層5を形成し、さらに絵柄層5に対し、実施例16と同様にトップコート層7を形成し、実施例22の化粧シート1を得た。
【0100】
(実施例23)
実施例8と同様に作製した、厚さ100μmの白色シート2の表面に実施例8と同様の絵柄層5を形成し、さらに絵柄層5に対し、実施例16と同様にトップコート層7を形成し、実施例23の化粧シート1を得た。
【0101】
(実施例24)
実施例9と同様に作製した、厚さ40μmの白色シート2の表面に実施例9と同様の絵柄層5を形成し、さらに絵柄層5に対し、実施例16と同様にトップコート層7を形成し、実施例24の化粧シート1を得た。
【0102】
(実施例25)
実施例10と同様に作製した、厚さ180μmの白色シート2の表面に実施例10と同様の絵柄層5を形成し、さらに絵柄層5に対し、実施例16と同様にトップコート層7を形成し、実施例25の化粧シート1を得た。
【0103】
(実施例26)
実施例11と同様に作製した、厚さ120μmの白色シート2の表面に実施例11と同様の絵柄層5を形成し、さらに絵柄層5に対し、実施例16と同様にトップコート層7を形成し、実施例26の化粧シート1を得た。
【0104】
(実施例27)
実施例12と同様に作製した、厚さ140μmの白色シート2の表面に実施例12と同様の絵柄層5を形成し、さらに絵柄層5に対し、実施例16と同様にトップコート層7を形成し、実施例27の化粧シート1を得た。
【0105】
(実施例28)
実施例13と同様に作製した、厚さ140μmの白色シート2の表面に実施例13と同様の絵柄層5を形成し、さらに絵柄層5に対し、実施例16と同様にトップコート層7を形成し、実施例28の化粧シート1を得た。
【0106】
(実施例29)
実施例14と同様に作製した、厚さ140μmの白色シート2の表面に実施例14と同様の絵柄層5を形成し、さらに絵柄層5に対し、実施例16と同様にトップコート層7を形成し、実施例29の化粧シート1を得た。
【0107】
(実施例30)
実施例15と同様に作製した、厚さ140μmの白色シート2の表面に実施例15と同様の絵柄層5を形成し、さらに絵柄層5に対し、実施例16と同様にトップコート層7を形成し、実施例30の化粧シート1を得た。
【0108】
(比較例1)
上述の絵柄層5に青色顔料を添加しない以外は、実施例7と同様にして、比較例1の化粧シート1を形成した。
【0109】
(比較例2)
比較例1と同様に作製した、厚さ50μmの白色シートに2の表面に比較例1と同様の絵柄層5を形成し、さらに絵柄層5に対し、実施例16と同様にトップコート層7を形成し、比較例2の化粧シート1を得た。
【0110】
(比較例3)
上述の絵柄層5に添加する青色顔料に関して、コバルトブルー顔料を1.2質量部となるように添加した以外は実施例1と同様に、比較例3の化粧シート1を形成した。
【0111】
[評価]
以上の実施例1-30、比較例1-3の各化粧シート1について、分光反射率、色相、隠蔽性及び曲げ加工性の評価を行った。
【0112】
<分光反射率>
分光反射率測定は、コニカミノルタ株式会社製蛍光分光濃度計(FD-7)を用い、400nm以上700nm以下の波長領域における分光反射率を得た。白色シート2の隠蔽性が低い場合、下地の色の影響を受けてしまうため、実施例1-30、比較例1-3の全ての化粧シート1に関して、BYK-GARDNER社製の隠蔽試験紙(byko-chart高明度2A)の白下地の上で測定した。
【0113】
<色相>
色相の評価は、X-rite社の分光測色計(530JP/LP)を用い、国際照明委員会(CIE)により定義された標準光源であるD65光源で、BYK-GARDNER社製の隠蔽試験紙(byko-chart高明度2A)の白下地上で測定した色度(反射色度)を評価した。
【0114】
<隠蔽性>
隠蔽性の評価は、X-rite社の分光測色計(530JP/LP)を用い、BYK-GARDNER社製の隠蔽試験紙(byko-chart高明度2A)の白下地上と黒下地上とのそれぞれで測定した色差で判断した。色差が小さい程、隠蔽性が良好であり、色差が0.5以下の場合を「◎」、0.5超0.7以下の場合を「○」、0.7超1.0以下の場合を「△」、1.0超の場合を「×」とした。なお、「△」以上の評価であれば、実用上問題ない。
【0115】
<曲げ加工性>
曲げ加工性の評価は、以下の曲げ加工適性試験によって評価した。
曲げ加工適性試験においては、まず、化粧シート1を張り付ける基板Bとして、中質繊維板(MDF)を用いた。基板Bの一方の面に対して、上記の方法により得られた実施例1-30及び比較例1-3の各化粧シート1をウレタン系の接着剤を用いて貼り付けた。基板Bの他方の面に対しては、反対側に貼り付けた化粧シート1にキズが付かないように、基板Bと化粧シート1とを貼り合わせている境界までV型の溝を入れた。次に、化粧シート1を貼付した面が山折りとなるようにして、基板Bを当該V型の溝に沿って90度まで曲げ、化粧シート1の表面の折れ曲がった部分に白化や亀裂等が生じていないかをマイクロスコープ(キーエンス製 VHX-1000)を用いて観察し、曲げ加工性の状態について評価を行った。
光学顕微鏡での観察結果として、白化や亀裂等が全く見られない場合を「◎」、一部に僅かに白化が見える場合を「○」、一部に白化が見える場合を「△」、全面に白化が見える又は一部に亀裂が見える場合を「×」とした。なお、「△」以上の評価であれば、実用上問題ない。
【0116】
これらの評価結果を表1に示す。
【表1】
【0117】
(分光反射率の評価結果)
表1に示すように、実施例1-30の化粧シート1は、青色顔料を絵柄層5に含有することで、分光反射率の極小値を持つ結果(「あり」)となった。
ここで、代表例として、実施例1-4、及び比較例1の化粧シート1における分光反射率を図6に示す。実施例1-4の化粧シート1では、絵柄層5に青色顔料を添加しているため、500nm以上650nm以下の波長領域に分光反射率の極小値を持つ。また、図示は省略するが、実施例5-30も実施例1-4と同様の分光反射率特性を有し、実施例1-4と同様の波長領域に極小値を持つ。これにより、実施例1-30の化粧シート1は、隠蔽性の評価結果が「△」以上となり、少なくとも実用上問題の無いレベルの隠蔽性を得ることができる。一方、比較例1の化粧シート1は、青色顔料を絵柄層5に添加していないので、単調減少な分光反射率を示す。また比較例2の化粧シート1も比較例1と同様の分光反射率特性を有し、比較例1と同様に単調減少な分光反射率を示す(図示省略)。したがって、比較例1及び2の化粧シート1は、いずれも隠蔽性の評価結果が「×」となり、隠蔽性が実用に耐えないレベルとなった。
【0118】
(隠蔽性及び曲げ加工性の評価結果)
表1に示すように、実施例1-3、実施例16-18の各化粧シート1では、白色シート2に酸化チタン40質量部、絵柄層5に青色顔料0.4質量部以上含有しているため、隠蔽性が非常に良好であり、隠蔽性の評価結果が「◎」となった。また、曲げ加工性についても良好であり、曲げ加工性の評価結果が「〇」となった。更に、実施例16-18の各化粧シート1は、実施例1-3の各化粧シート1において絵柄層5上にトップコート層7を積層した構造を有する。表1に示すように、トップコート層7を設けた実施例16-18の各化粧シート1は、高意匠を付与しながら、優れた隠蔽性と優れた曲げ加工性とを両立できていることが分かる。
【0119】
また表1に示すように、実施例4、19の各化粧シート1は隠蔽性の評価結果が「〇」であった。実施例4、19の各化粧シート1は、白色シート2に酸化チタン40質量部、絵柄層5に青色顔料0.2質量部を含有しており、絵柄層5における青色顔料の添加量が少ない。このため実施例1-3との化粧シート1と比較すると隠蔽性が若干低減するものの、良好なレベルであった。また、実施例4、19の各化粧シート1は、曲げ加工性が良好(評価結果が「〇」)であった。
【0120】
実施例5、20の各化粧シート1は、白色シート2の酸化チタンの添加量が40質量部に対し、青色顔料の添加量が1.0質量部と多い配合で絵柄層5を作製した。このため、後述のように、色相が青味(b*がマイナス側)に寄ったものとなったが、隠蔽性が非常に良好(評価結果が「◎」)であった。
【0121】
実施例6、21の各化粧シート1では、白色シート2に酸化チタン40質量部、絵柄層5に青色顔料0.2質量部及び酸化チタン20質量部を含有している。このため、隠蔽性が非常に良好(評価結果が「◎」)であった。また、顔料成分が多いために、実施例1-3との化粧シート1と比較すると曲げ加工性が低減したが、実用上問題のないレベル(評価結果が「△」)であった。
【0122】
実施例8、23の各化粧シート1は、着色層3の厚さが94μmと、例えば実施例1-3の化粧シート1の着色層3と比べて薄くなるように作製した。このため、隠蔽性が低減するものの、良好なレベル(評価結果が「〇」)であった。また、実施例8、23の各化粧シート1は曲げ加工性が良好(評価結果が「〇」)であった。
【0123】
実施例7、22の各化粧シート1は、着色層3の厚さが44μmと、実施例8、23の化粧シート1よりも薄くなるように作製した。このため、隠蔽性が低減したが、良好なレベル(評価結果が「〇」)であった。また、実施例7、22の各化粧シート1は曲げ加工性が良好(評価結果が「〇」)であった。
【0124】
実施例9、24の各化粧シート1は、着色層の厚さが34μmと、実施例7、22の化粧シートよりもさらに薄くなるように作製した。このため、隠蔽性がかなり低減したが、実用上問題のないレベル(評価結果が「△」)であった。また、実施例9、24の各化粧シート1は曲げ加工性が良好(評価結果が「〇」)であった。
【0125】
実施例10、25の各化粧シート1は、着色層の厚さが160μmと、例えば実施例1-3の化粧シート1の着色層3と比べて厚くなるように作製した。このため、隠蔽性は非常に良好(評価結果が「◎」)であった。一方で、曲げ加工適性が低減したが、実用上問題のないレベル(評価結果が「△」)であった。
【0126】
実施例11、26の各化粧シート1は、隠蔽性も、曲げ加工適性も良好(評価結果が「〇」)であった。また、実施例11、26の各化粧シート1は、白色シート2にスキン層4が形成されず、着色層3の顔料成分のブリードアウトが懸念されたが、今回の評価では製膜不良は見られなかった。
【0127】
実施例12、27の化粧シート1は、ポリプロピレン樹脂の代わりにポリエチレン樹脂を用いたが、隠蔽性は非常に良好(評価結果が「◎」)であり、また曲げ加工適性も良好(評価結果が「〇」)であって、問題のない仕上がりであった。
【0128】
実施例13、28の化粧シートは、白色シート2における酸化チタンの添加量が30質量部と実施例1に比べて少ないため、隠蔽性が若干低減するが、良好なレベル(評価結果が「〇」)であった。また、曲げ加工性も良好(評価結果が「〇」)であった。
【0129】
実施例14、29の化粧シート1は、白色シート2における酸化チタンの添加量が20質量部と実施例1に比べてかなり少ないため、隠蔽性がさらに低減するが、実用上問題のないレベル(評価結果が「△」)であった。また、曲げ加工性も良好(評価結果が「〇」)であった。
【0130】
実施例15、30の化粧シート1は、白色シート2の酸化チタンの添加量が20質量部と実施例1に比べてかなり少ないものの、絵柄層5の酸化チタンの添加量が20質量部であって、酸化チタンの添加量合計が40質量部となる。このため、隠蔽性が良好(評価結果が「〇」)であり、曲げ加工適性も良好なレベル(評価結果が「〇」)であった。
【0131】
比較例1、2の化粧シートは、絵柄層5に青色顔料を含まない。このため、上述のように500nm以上650nm以下の波長領域に分光反射率に極小値を持たず、結果として隠蔽性が見劣りし、実用に耐えないレベル(評価結果「×」)の化粧シートになった。
【0132】
(色相の評価結果)
上述のように、実施例5、20の各化粧シート1は、酸化チタンの添加量合計が40質量部に対して、青色顔料の添加量が1.0質量部と多い配合で絵柄層5を作製した。このため、色相が青味(b*がマイナス側)に寄ったものの、実用上問題のないレベルであった。 実施例5、20以外の各実施例の化粧シート1では、色相が青味側へ寄ることはなかった。
一方、比較例3の化粧シート1は、青色顔料の添加量が1.2質量部と非常に多い配合で絵柄層5を作製した。このため、比較例3の化粧シート1は色相が大幅に青味に寄っており(b*の値が-1.75)、白色シート2を白色とは認識できないレベルであった。結果として、比較例3の化粧シート1は、実用に耐えないレベルの化粧シートになった。
【0133】
以上から、実施例1-30の化粧シート1は、無機顔料の添加量の増大を回避可能であって、曲げ加工性等の柔軟性に優れ、且つ、隠蔽性に優れた化粧シートであることが明らかとなった。
なお、本発明の化粧シートは、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0134】
以上説明したように、本発明は、特に、建築物の外装及び内装用の建装材、建具の表面、家電品の表面材等に用いられる化粧シートに好適な技術である。
【符号の説明】
【0135】
1 化粧シート
2 白色シート
3 着色層
4 スキン層
5 絵柄層
6 透明樹脂層
6a エンボス模様
6b 接着性樹脂層
7 トップコート層
8 プライマー層
B 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6