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特許7480526在空判定装置、在空判定方法、および在空判定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】在空判定装置、在空判定方法、および在空判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/22 20060101AFI20240501BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G08B21/22
G08B25/04 K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020033430
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021135905
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】中澤 寛生
【審査官】大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-227104(JP,A)
【文献】米国特許第10169975(US,B1)
【文献】特開2019-168858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間が人のいる在状態であるか、前記対象空間が人のいない空状態であるかを判定する在空判定装置であって、
前記対象空間で、第1センサによって第1観測対象である二酸化炭素濃度について観測された第1観測データ、および第2センサによって前記第1観測対象とは異なる第2観測対象について観測された第2観測データを取得する観測データ取得部と、
前記第2観測データに基づいて、前記第2観測対象に予め定めた変化が生じたタイミングを検知し、そのタイミングを基準タイミングに設定する基準タイミング設定部と、
前記基準タイミング後における、前記第1観測データである前記対象空間の前記二酸化炭素濃度の変化に基づき、当該対象空間が人のいる在状態であるか、人のいない空状態であるかを判定する判定部と、を備え
前記判定部は、前記基準タイミングの直前における前記対象空間の状態を在状態であると判定していた場合、前記基準タイミング後に設定される第2設定期間に、前記対象空間の前記二酸化炭素濃度が下降すると、前記対象空間の状態を空状態であると判定する、在空判定装置。
【請求項2】
前記第2観測対象は、前記対象空間の出入口に設けられた扉であり、
前記第2センサは、前記扉の開閉状態を観測する、請求項1に記載の在空判定装置。
【請求項3】
前記基準タイミング設定部は、前記第2観測対象である前記扉が開状態から閉状態に変化したタイミングを検知し、前記基準タイミングに設定する、請求項2に記載の在空判定装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記基準タイミングの直前における前記対象空間の状態を空状態であると判定していた場合、前記基準タイミング後に設定される第1設定期間に、前記対象空間の前記二酸化炭素濃度が上昇すると、前記対象空間の状態を在状態であると判定する、請求項1~3のいずれかに記載の在空判定装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記第1設定期間に、前記対象空間の前記二酸化炭素濃度が、前記基準タイミングの直前よりも所定の割合を超えて増加したとき、前記対象空間の状態を在状態であると判定する、請求項4に記載の在空判定装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記基準タイミングの直前の前記二酸化炭素濃度が設定値以上であったとき、前記対象空間の前記二酸化炭素濃度が、前記第2設定期間に、前記設定値未満に低下すると、前記対象空間の状態を空状態であると判定する、請求項1~5のいずれかに記載の在空判定装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記対象空間の前記二酸化炭素濃度が第1閾値を超えると、前記対象空間の状態を在状態であると判定し、また、前記対象空間の前記二酸化炭素濃度が前記第1閾値よりも小さい第2閾値未満に低下すると、前記対象空間の状態を空状態であると判定する、請求項1~のいずれかに記載の在空判定装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記対象空間外に設置したリファレンスセンサによって観測された前記二酸化炭素濃度に基づき、前記第1閾値、および前記第2閾値を設定する、請求項に記載の在空判定装置。
【請求項9】
対象空間が人のいる在状態であるか、前記対象空間が人のいない空状態であるかをコンピュータが判定する在空判定方法であって、
前記コンピュータが、
前記対象空間で、第1センサによって第1観測対象である二酸化炭素濃度について観測された第1観測データ、および第2センサによって前記第1観測対象とは異なる第2観測対象について観測された第2観測データを取得する観測データ取得ステップと、
前記第2観測データに基づいて、前記第2観測対象に予め定めた変化が生じたタイミングを検知し、そのタイミングを基準タイミングに設定する基準タイミング設定ステップと、
前記基準タイミング後における、前記第1観測データである前記対象空間の前記二酸化炭素濃度の変化に基づき、当該対象空間が人のいる在状態であるか、人のいない空状態であるかを判定する判定ステップと、
を実行し、
前記判定ステップは、前記基準タイミングの直前における前記対象空間の状態を在状態であると判定していた場合、前記基準タイミング後に設定される第2設定期間に、前記対象空間の前記二酸化炭素濃度が下降すると、前記対象空間の状態を空状態であると判定するステップである、在空判定方法。
【請求項10】
対象空間が人のいる在状態であるか、前記対象空間が人のいない空状態であるかをコンピュータに判定させる在空判定プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記対象空間で、第1センサによって第1観測対象である二酸化炭素濃度について観測された第1観測データ、および第2センサによって前記第1観測対象とは異なる第2観測対象について観測された第2観測データを取得する観測データ取得ステップと、
前記第2観測データに基づいて、前記第2観測対象に予め定めた変化が生じたタイミングを検知し、そのタイミングを基準タイミングに設定する基準タイミング設定ステップと、
前記基準タイミング後における、前記第1観測データである前記対象空間の前記二酸化炭素濃度の変化に基づき、当該対象空間が人のいる在状態であるか、人のいない空状態であるかを判定する判定ステップと、
を実行させ
前記判定ステップは、前記基準タイミングの直前における前記対象空間の状態を在状態であると判定していた場合、前記基準タイミング後に設定される第2設定期間に、前記対象空間の前記二酸化炭素濃度が下降すると、前記対象空間の状態を空状態であると判定するステップである、在空判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象空間が人のいる在状態であるか、人のいない空状態であるかを判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多くの宿泊施設(ホテル、旅館等)では、係員による客室内の清掃を、宿泊客が在室していないときに行うようにしている。係員が、客室のドアをノックして、宿泊客が在室しているかどうかを確認する運用では、睡眠中の宿泊客がドアのノックによって起こされることになる。したがって、宿泊客が在室しているかどうかを確認するために、客室のドアをノックすることは、宿泊客に対するサービスの低下をまねく。このようなことから、センサを客室内に設置し、このセンサの観測データに基づいて、宿泊客が在室しているかどうかを判定する技術が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された装置は、客室内に設置された二酸化炭素の濃度を観測するセンサ(CO2濃度センサ)により観測された二酸化炭素濃度の時間変動によって、宿泊客が在室しているかどうかを判定する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-16185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、客室の二酸化炭素濃度は、在室している宿泊客の呼吸によって放出される二酸化炭素の量の変動にともなって変動する。人が呼吸により放出する二酸化炭素の量は、その人の身体状況の変化にともなって変動する。人の身体状況は、入浴、姿勢の変化、運動量の変化等の様々な要因によって変化する。
【0006】
したがって、特許文献1に記載された構成では、在室している人が身体状況の変化にともなって、呼吸により放出する二酸化炭素の量が減少すると、在室していないと誤判定されることがある。
【0007】
なお、特許文献1にも示されているように、光学センサを用いて在室を判定する技術では、センサの死角をなくさなければ、在室しているかどうかの判定精度を確保することができない。すなわち、多数の光学センサを用いなければならない。
【0008】
この発明の目的は、観測された対象空間の二酸化炭素の濃度を用いて、この対象空間が人のいる在状態であるか、人のいない空状態であるかを精度よく判定できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の在空判定装置は、上記目的を達成するため以下に示すように構成している。
【0010】
観測データ取得部が、対象空間で、第1センサによって第1観測対象である二酸化炭素濃度について観測された第1観測データ、および第2センサによって第1観測対象とは異なる第2観測対象について観測された第2観測データを取得する。第2観測対象は、対象空間に対して、人が出入りした可能性を判断できればよい。例えば、第2観測対象は、対象空間の出入り口に設けられた扉(ドア)の開閉であってもよいし、対象空間内に定めた観測領域の温度分布であってもよいし、対象空間内に定めた観測領域の物体(人を含む)の動きであってもよい。
【0011】
基準タイミング設定部が、第2観測データに基づいて、第2観測対象に予め定めた変化が生じたタイミングを検知し、そのタイミングを基準タイミングに設定する。例えば、基準タイミング設定部は、人が対象空間に出入りした可能性のあるタイミングを検知すると、そのタイミングを基準タイミングに設定する。
【0012】
例えば、基準タイミング設定部は、対象空間の出入口に設けられた扉の開閉状態が第2センサによって観測される場合、扉の開閉状態が変化した時点を、対象空間に対して人の出入りがあった可能性があるタイミングとして検知し、基準タイミングに設定する。また、基準タイミング設定部は、対象空間内に定めた観測領域の温度分布が第2センサによって観測される場合、観測領域の温度分布の変化が予め定めた判定基準よりも大きかった時点を、対象空間に対して人の出入りがあった可能性があるタイミングとして検知し、基準タイミングに設定する。また、基準タイミング設定部は、対象空間内に定めた観測領域の物体(人を含む)の動きが第2センサによって観測される場合、観測領域の物体の動きの変化が予め定めた判定基準よりも大きかった時点を、対象空間に対して人の出入りがあった可能性があるタイミングとして検知し、基準タイミングに設定する。
【0013】
なお、上記したように、基準タイミング設定部は、対象空間に対して人の出入りがあった可能性があると判断した時点を基準タイミングに設定しているのであって、対象空間に対して人の出入りがあった時点を基準タイミングに設定しているわけではない。すなわち、基準タイミング設定部が設定した基準タイミングに、対象空間に対して人の出入りがあったとは限らない。
【0014】
判定部が、基準タイミング後における、対象空間の二酸化炭素濃度の変化に基づき、当該対象空間が人のいる在状態であるか、人のいない空状態であるかを判定する。
【0015】
この構成では、対象空間が人のいる在状態であるときに、この人が身体状況の変化にともなって、呼吸により放出する二酸化炭素の量が減少しても、基準タイミング設定部が基準タイミングを設定しないので(対象空間に対して人の出入りがあった可能性があると判断しないので、)、判定部によって対象空間が人のいない空状態であると誤判定されることがない。また、基準タイミング設定部が基準タイミングを設定すると(対象空間に対して人の出入りがあった可能性があると判断すると、)、判定部が対象空間の状態を判定する。すなわち、判定部は、対象空間の状態を常時判定するのではなく、対象空間に対して人の出入りがあった可能性があるときに、対象空間の状態を判定するので、処理負荷を抑えることができる。
【0016】
また、判定部は、例えば、基準タイミングの直前における対象空間の状態を空状態であると判定していた場合、基準タイミング後に設定される第1設定期間に、対象空間の二酸化炭素濃度が上昇すると、対象空間の状態を在状態であると判定する、構成にしてもよい。この場合、人以外の外的要因による二酸化炭素濃度の変化の影響を抑えるため、判定部を、第1設定期間に、対象空間の二酸化炭素濃度が、基準タイミングの直前よりも所定の割合を超えて増加したとき、対象空間の状態を在状態であると判定する、構成にしてもよい。
【0017】
また、判定部は、例えば準タイミングの直前における対象空間の状態を在状態であると判定していた場合、基準タイミング後に設定される第2設定期間に、対象空間の二酸化炭素濃度が下降すると、対象空間の状態を空状態であると判定する、構成にしてもよい。この場合、人以外の外的要因による二酸化炭素濃度の変化の影響を抑えるため、判定部を、基準タイミングの直前の二酸化炭素濃度が設定値以上であったとき、対象空間の二酸化炭素濃度が、第2設定期間に、設定値未満に低下すると、対象空間の状態を空状態であると判定する構成にしてもよい。
【0018】
また、判定部は、例えば、対象空間の二酸化炭素濃度が第1閾値を超えると、対象空間の状態を在状態であると判定し、また、対象空間の二酸化炭素濃度が第1閾値よりも小さい第2閾値未満に低下すると、対象空間の状態を空状態であると判定する、構成にしてもよい。この場合、判定部は、対象空間外に設置したリファレンスセンサによって観測された二酸化炭素濃度に基づき、第1閾値、および第2閾値を設定する構成にしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、対象空間が人のいる在状態であるか、人のいない空状態であるかを精度よく判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この例にかかる在室判定装置によって、宿泊客が在室しているかどうかの判定が行われるホテルの客室を示す概略図である。
図2】この例にかかる在室判定装置の主要部の構成を示すブロック図である。
図3】在室判定装置が実行する状態判定処理を示すフローチャートである。
図4】変形例1の在室判定装置が実行する状態判定処理を示すフローチャートである。
図5】別の例にかかる在室判定装置によって、宿泊客が在室しているかどうかの判定が行われるホテルの客室を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0022】
<1.適用例>
図1は、この例にかかる在室判定装置によって、宿泊客(人)が在室しているかどうかの判定が行われるホテルの客室を示す概略図である。
【0023】
客室には、テーブル、イス、ベッド等の家具が設置されているとともに、バス、トイレ等の設備が設けられている。また、客室内には、この客室内の二酸化炭素濃度を観測(センシング)する二酸化炭素濃度センサ2(CO2濃度センサ2)が設置されている。図1に示す例では、二酸化炭素濃度センサ2は、テーブルの下に設置されている例を示している。二酸化炭素は、空気中の成分である窒素や酸素よりも重いことから、室内の低い位置に蓄積する。このことから、二酸化炭素濃度センサ2は、比較的低い位置(例えば、床面からの高さが50cm未満の位置)に設置するのが好ましい。また、この例では、二酸化炭素濃度センサ2は、テーブルの下に設置されているとしているが、イスの座面の反対面に取り付けてもよいし、ベッドの下に設置してもよいし、客室内であれば、これら以外の場所に設置してもよい。
【0024】
また、客室の出入口に設けられ、この客室に対して出入りする人が開閉するドア5には、このドア5の開閉状態を観測するドアセンサ3が取り付けられている。
【0025】
この例では、客室が、この発明で言う対象空間に相当する。また、二酸化炭素濃度センサ2が、この発明で言う第1センサに相当し、ドアセンサ3が、この発明で言う第2センサに相当する。
【0026】
在室判定装置1は、二酸化炭素濃度センサ2、およびドアセンサ3と有線、または無線で接続される。在室判定装置1は、二酸化炭素濃度センサ2により観測された客室内の二酸化炭素濃度の観測データ(この発明で言う、第1観測データに相当する。)、およびドアセンサ3により観測された客室のドア5の開閉状態の観測データ(この発明で言う、第2観測データに相当する。)を取得する。図1では、在室判定装置1は、客室外に設置されている例を示しているが、客室内に設置されていてもよい。
【0027】
この例の在室判定装置1は、ドアセンサ3の観測データに基づき、ドア5が開状態から、閉状態に変化したタイミングを検知すると、このタイミングを基準タイミングに設定する。在室判定装置1は、設定した基準タイミング後における、客室内の二酸化炭素濃度の変化により、宿泊客がいる在室状態(在状態)であるか、宿泊客がいない空室状態(空状態)であるかを判定する。客室内の二酸化炭素濃度の変化は、二酸化炭素濃度センサ2の観測データから得られる。
【0028】
在室判定装置1は、客室について判定した判定結果(在室状態、または空室状態)を上位装置(不図示)等に出力する。
【0029】
<2.構成例>
図2は、この例にかかる在室判定装置の主要部の構成を示すブロック図である。この例の在室判定装置1は、制御ユニット11と、センサ接続部12と、出力部13とを備えている。
【0030】
制御ユニット11は、在室判定装置1本体各部の動作を制御する。また、制御ユニット11は、基準タイミング設定部11a、および判定部11bを有している。基準タイミング設定部11a、および判定部11bについては、後述する。
【0031】
センサ接続部12には、二酸化炭素濃度センサ2、およびドアセンサ3が接続される。センサ接続部12は、二酸化炭素濃度センサ2、およびドアセンサ3を有線で接続するインタフェースであってもよいし、二酸化炭素濃度センサ2、およびドアセンサ3と無線通信を行う無線通信部であってもよい。センサ接続部12が、この発明で言う観測データ取得部に相当する。
【0032】
なお、二酸化炭素濃度センサ2、およびドアセンサ3は、センサ接続部12の構成に応じたものである。具体的には、二酸化炭素濃度センサ2、およびドアセンサ3がセンサ接続部12に有線で接続される場合、二酸化炭素濃度センサ2、およびドアセンサ3は、在室判定装置1に有線で接続するためのインタフェースを備えている。また、二酸化炭素濃度センサ2、およびドアセンサ3がセンサ接続部12に無線で接続される場合、二酸化炭素濃度センサ2、およびドアセンサ3は、在室判定装置1と無線通信を行う無線通信部を備えている。
【0033】
出力部13は、客室について判定した判定結果(在室状態、または空室状態)を上位装置等の外部機器(不図示)に出力する。出力部13も、センサ接続部12と同様に、外部機器が有線で接続されるインタフェースであってもよいし、外部機器と無線通信を行う無線通信部であってもよい。
【0034】
次に、制御ユニット11が有する、基準タイミング設定部11a、および判定部11bについて説明する。
【0035】
基準タイミング設定部11aは、センサ接続部12に接続されているドアセンサ3の観測データによって、ドア5が開状態から閉状態に変化したタイミングを検知し、このタイミングを基準タイミングに設定する。
【0036】
判定部11bは、基準タイミング設定部11aによって設定された基準タイミング後における、客室内の二酸化炭素濃度の変化により、宿泊客がいる在室状態(在状態)であるか、宿泊客がいない空室状態(空状態)であるかを判定する。客室内の二酸化炭素濃度の変化は、二酸化炭素濃度センサ2の観測データから取得できる。
【0037】
なお、基準タイミング設定部11aは、センサ接続部12に接続されているドアセンサ3の観測データによって、ドア5が閉状態から開状態に変化したタイミングを検知し、このタイミングを基準タイミングに設定する、構成であってもよい。
【0038】
このように、この例の判定部11bは、客室のドア5が開閉し、人が客室内に出入りした可能性があるときに、宿泊客がいる在室状態(在状態)であるか、宿泊客がいない空室状態(空状態)であるかの判定を行う。
【0039】
在室判定装置1は、特に、図2に示していないが、二酸化炭素濃度センサ2による数時間(1~3時間)分の観測データを記憶する記憶部を備えている。この記憶部は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の記録媒体で構成してもよいし、制御ユニット11が有するメモリに記憶領域を設けてもよい。制御ユニット11は、最近の二酸化炭素濃度の観測データが記憶部に記憶されるように制御する。具体的には、制御ユニット11は、二酸化炭素濃度の観測データを記憶する記憶領域がいっぱいであるとき、時間的に最も古い観測データを削除し、その時点で観測された観測データを記憶する。すなわち、制御ユニット11は、二酸化炭素濃度の観測データの記憶領域を、所謂FIFO方式で使用する。
【0040】
また、在室判定装置1の制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ、その他の電子回路によって構成されている。ハードウェアCPUが、この発明にかかる在室判定プログラムを実行したときに、基準タイミング設定部11a、および判定部11bとして動作する。また、メモリは、この発明にかかる在室判定プログラムを展開する領域や、この在室判定プログラムの実行時に生じたデータ等を一時記憶する領域を有している。制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ等を一体化したLSIであってもよい。また、ハードウェアCPUが、この発明にかかる在室判定方法を実行するコンピュータである。
【0041】
<3.動作例>
在室判定装置1は、センサ接続部12において、二酸化炭素濃度センサ2により観測された客室内の二酸化炭素濃度の観測データを取得すると、取得した観測データと観測時刻とを対応付けて記憶部に記憶させる処理を行う。
【0042】
図3は、在室判定装置における状態判定処理を示すフローチャートである。在室判定装置1は、基準タイミング設定部11aが、客室のドア5が開状態から閉状態に変化したタイミングを検知するのを待つ(s1)。基準タイミング設定部11aは、センサ接続部12で取得されたドアセンサ3の観測データによって、客室のドア5が開状態から閉状態に変化したタイミングを検知する。基準タイミング設定部11aは、ドア5が開状態から閉状態に変化したタイミングを基準タイミングに設定する(s2)。
【0043】
在室判定装置1は、s2で基準タイミングを設定すると、この基準タイミングから一定時間(例えば、数分~数十分)経過するか、ドア5が開されるのを待つ(s3、s4)。在室判定装置1は、一定時間経過する前に、ドア5が開されたことを検知すると、s1に戻る。この一定時間が、この発明で言う第1設定期間、および第2設定期間に相当する。この例では、第1設定期間と第2設定期間とが同じである場合を例にしているが、第1設定期間と第2設定期間とが異なる期間であってもよい。
【0044】
在室判定装置1は、ドア5が開されたことを検知することなく、基準タイミングから一定時間経過すると、判定部11bが客室の直前の状態が空室状態であったか、在室状態であったかを判定する(s5)。s5では、前回の判定結果が、空室状態であったか、在室状態であったかを判定している。
【0045】
判定部11bは、s5で直前の状態が空室状態であったと判定すると、s2で設定した基準タイミングから、一定時間経過するまでの期間(この発明で言う第1設定期間に相当する。)における、客室内の二酸化炭素濃度の観測データの変化が予め定めた在室条件を満足するかどうかを判定する(s6)。
【0046】
この在室条件は、例えば、客室内の二酸化炭素濃度が、一定期間に、s2で設定した基準タイミングにおける客室内の二酸化炭素濃度の所定の割合(例えば、5%)以上上昇したかという条件である。判定部11bは、客室内の二酸化炭素濃度が所定の割合以上上昇していた場合、在室条件を満足すると判定する。言い換えれば、判定部11bは、客室内の二酸化炭素濃度の上昇が所定の割合未満であった場合、在室条件を満足しないと判定する。
【0047】
判定部11bは、s6で在室条件を満足すると判定すると、客室の状態を在室状態と判定する(s7)。反対に、判定部11bは、s6で在室条件を満足しないと判定すると、客室の状態を空室状態と判定する(s8)。すなわち、判定部11bは、今回設定した基準タイミング直前の客室の状態が空室状態で有った場合、s7では、空室状態から在室状態に変化したと判定し、s8では空室状態が継続していると判定する。
【0048】
また、判定部11bは、s5で直前の状態が在室状態であったと判定すると、s2で設定した基準タイミングから、一定時間経過するまでの期間(この発明で言う第1設定期間に相当する。)における、客室内の二酸化炭素濃度の観測データの変化が予め定めた空室条件を満足するかどうかを判定する(s9)。
【0049】
この空室条件は、例えば、s2で設定した基準タイミングにおける客室内の二酸化炭素濃度が設定濃度(例えば、1000ppm)以上であれば、客室内の二酸化炭素濃度が一定期間経過後に設定濃度未満であるかという条件と、s2で設定した基準タイミングにおける客室内の二酸化炭素濃度が設定濃度未満であれば、客室内の二酸化炭素濃度が時間経過にともなって減少している減少傾向であるかという、2つの条件である。
【0050】
判定部11bは、s2で設定した基準タイミングにおける客室内の二酸化炭素濃度が設定濃度以上であった場合、客室内の二酸化炭素濃度が一定期間経過後に設定濃度未満であると、空室条件を満足すると判定する。言い換えれば、判定部11bは、s2で設定した基準タイミングにおける客室内の二酸化炭素濃度が設定濃度以上であった場合、客室内の二酸化炭素濃度が一定期間経過後も設定濃度以上であると、空室条件を満足しないと判定する。
【0051】
また、判定部11bは、s2で設定した基準タイミングにおける客室内の二酸化炭素濃度が設定濃度未満であった場合、客室内の二酸化炭素濃度が、時間経過にともなって増加している増加傾向、時間経過にともなってほとんど変化していない維持傾向、または時間経過にともなって減少している減少傾向のいずれであるかを判定する。判定部11bは、客室内の二酸化炭素濃度の変化が減少傾向であると、空室条件を満足すると判定する。言い換えれば、判定部11bは、s2で設定した基準タイミングにおける客室内の二酸化炭素濃度が設定濃度未満であった場合、客室内の二酸化炭素濃度の変化が時間経過にともなう減少傾向でなければ、空室条件を満足しないと判定する。
【0052】
判定部11bは、s9で空室条件を満足すると判定すると、客室の状態を空室状態と判定する(s8)。反対に、判定部11bは、s9で空室条件を満足しないと判定すると、客室の状態を在室状態と判定する(s7)。すなわち、判定部11bは、今回設定した基準タイミング直前の客室の状態が在室状態で有った場合、s7では、在室状態が継続していると判定し、s8では、在室状態から空室状態に変化したと判定する。
【0053】
在室判定装置1は、s7、またはs8の判定結果を制御ユニット11のメモリに記憶するとともに、今回の判定結果を上位装置に出力し(s10、s11)、s1に戻る。
【0054】
このように、この例の在室判定装置1は、宿泊客が客室にいる在室状態であるときに、この人が身体状況の変化にともなって、呼吸により放出する二酸化炭素の量が減少しても、基準タイミング設定部11aが基準タイミングを設定しないので、判定部11bによって宿泊客が客室にいない空室状態であると誤判定されるのを防止できる。また、この例に在室判定装置1は、ドア5の開閉によって、客室に対して人の出入りがあった可能性があると判断し、基準タイミングを設定して、客室の状態を判定する。すなわち、この例の在室判定装置1は、客室の状態を常時判定するのではなく、客室に対して人の出入りがあった可能性がある場合に、客室の状態を判定するので、処理負荷を抑えることができる。
【0055】
また、上記の例では、s3で一定時間を経過するのを待ってから、s6、またはs9にかかる判定を実行するとしたが、s3で一定時間を経過するのを待つことなく、s6、またはs9にかかる判定を実行してもよい。この場合、一定時間経過する前に、判定部11bによって、客室が在室状態、または空室状態であると判定されることがある。すなわち、客室の状態が実際に変化してから、その状態が判定部11bによって判定されるまでの時間を短縮できる。
【0056】
また、s3、s4の前に、s5の判定を行い、その判定結果に応じて、s3で経過するのを待つ時間を異ならせれば、この発明で言う第1設定期間と、第2設定期間とを異なる期間に設定できる。
【0057】
<4.変形例>
・変形例1
この変形例1の在室判定装置1も上記した図2に示す構成である。また、この変形例1の在室判定装置1は、図3に示した状態判定処理に替えて、図4に示す状態判定処理を実行する点で、上記の例と異なる。
【0058】
図4は、変形例1の在室判定装置が実行する状態訂正処理を示すフローチャートである。この変形例1の在室判定装置1は、客室のドアが閉状態である間、以下に示すs21~s27にかかる処理を実行し、客室のドアが閉状態から開状態に変化すると、上記したs1~s11の処理を実行する。
【0059】
この変形例1の在室判定装置1は、客室のドアが閉状態であると(s21)、二酸化炭素濃度センサ2により観測された客室内の二酸化炭素濃度の観測データが第1閾値(例えば、1000ppm)以上であるかどうか(s22)、または第2閾値(例えば、400ppm)以下であるかを判定する(s25)。在室判定装置1は、観測された客室内の二酸化炭素濃度が第1閾値以上であると、その時点における客室の状態を空室状態と判定していれば、在室状態に訂正し(s23、s24)、s21に戻る。また、在室判定装置1は、観測された客室内の二酸化炭素濃度が第2の閾値未満であると、その時点における客室の状態を在室状態と判定していれば、空室状態に訂正し(s26、s27)、s21に戻る。
【0060】
s24、s27では、訂正した客室の状態を制御ユニット11のメモリに記憶するとともに、訂正した客室の状態を上位装置に出力する。
【0061】
また、在室判定装置1は、s21で客室のドアが閉状態でない(すなわち、客室のドアが開状態である。)と判定すると、上記したs1~s11にかかる処理を実行する。
【0062】
第1閾値は、客室に宿泊客が在室していなければ超えないと想定される二酸化炭素濃度である。言い換えれば、客室内の二酸化炭素濃度の観測データが第1閾値以上であれば、宿泊客が客室に在室している可能性が極めて高い。また、第2閾値は、客室に宿泊客が在室していれば超えると想定される二酸化炭素濃度である。言い換えれば、客室内の二酸化炭素濃度の観測データが第2閾値未満であれば、宿泊客が客室に在室している可能性が極めて低い。
【0063】
なお、上記した説明から明らかなように、第1閾値は、第2閾値よりも大きい(第2閾値は、第1閾値よりも小さい。)。
【0064】
この変形例1の在室判定装置1は、s21~s27の処理を行うことによって、何らかの要因で、s7、またはs8で客室の状態を誤判定した場合であっても、客室のドア5が開されるよりも前に、この誤判定を訂正することができる。
【0065】
また、状態を判定する客室と同じフロア(階)であって、人の影響を受け難い場所(例えば、アメニティ等の備品を保管している備品保管室)にリファレンスセンサとして、別の二酸化炭素濃度センサ2aを設置し(図5参照)、この二酸化炭素濃度センサ2aによる二酸化炭素濃度の観測データに基づき、上記した例の空室条件の設定濃度、第1閾値、第2閾値等を決定する構成にしてもよい。
【0066】
このように構成すれば、客室の状態を、客室の周囲環境を考慮して判定することができる。
【0067】
また、上記の例で示したドアセンサ3を、客室内に定めた観測領域の温度分布を観測するセンサに置き換えてもよいし、客室内に定めた観測領域における物体(人を含む)の動きを検出するセンサに置き換えてもよい。この場合、客室内に定めた観測領域の温度分布の変化が予め定めた判定基準よりも大きかった時点や、客室内に定めた観測領域における物体の動きの変化が予め定めた判定基準よりも大きかった時点を、客室に対して人の出入りがあった可能性があるタイミングとして検知し、基準タイミングに設定すればよい。
【0068】
また、在室判定装置1は、上記したドアセンサ3だけでなく、客室内に定めた観測領域の温度分布を観測するセンサ、客室内に定めた観測領域における物体(人を含む)の動きを検出するセンサ等、複数種類のセンサを使用し、いずれかのセンサの観測データによって、客室に対して人が出入りした可能性があると判定された時点を、基準タイミングに設定する構成にしてもよい。
【0069】
また、在室判定装置1は、複数の客室に設置された二酸化炭素濃度センサ2、およびドアセンサ3を接続し、客室毎に状態を判定する構成にしてもよい。
【0070】
また、在室判定装置1は、二酸化炭素濃度センサ2を内蔵する構成であってもよい。
【0071】
また、在室判定装置1は、ホテル、旅館等の宿泊施設の客室に限らず、オフィスの会議室、農作物栽培のためのビニールハウス等を対象空間とし、この対象空間の状態が、人がいる在状態であるか、人がいない空状態であるかを判定する装置として利用できる。
【0072】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0073】
さらに、この発明に係る構成と上述した実施形態に係る構成との対応関係は、以下の付記のように記載できる。
<付記>
対象空間が人のいる在状態であるか、前記対象空間が人のいない空状態であるかを判定する在空判定装置(1)であって、
前記対象空間で、第1センサ(2)によって第1観測対象である二酸化炭素濃度について観測された第1観測データ、および第2センサ(3)によって前記第1観測対象とは異なる第2観測対象について観測された第2観測データを取得する観測データ取得部(12)と、
前記第2観測データに基づいて、前記第2観測対象に予め定めた変化が生じたタイミングを検知し、そのタイミングを基準タイミングに設定する基準タイミング設定部(11a)と、
前記基準タイミング後における、前記第1観測データである前記対象空間の前記二酸化炭素濃度の変化に基づき、当該対象空間が人のいる在状態であるか、人のいない空状態であるかを判定する判定部(11b)と、を備えた在空判定装置(1)。
【符号の説明】
【0074】
1…在室判定装置
2、2a…二酸化炭素濃度センサ
3…ドアセンサ
5…ドア
11…制御ユニット
11a…基準タイミング設定部
11b…判定部
12…センサ接続部
13…出力部
図1
図2
図3
図4
図5