(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
E04H 1/04 20060101AFI20240501BHJP
E04F 17/06 20060101ALI20240501BHJP
E04D 13/03 20060101ALI20240501BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
E04H1/04 C
E04F17/06 Z
E04D13/03 P
E04F13/08 H
(21)【出願番号】P 2020040075
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2022-12-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 積水ハウス株式会社は、建築現場にて、中原潤平が発明した「建物」を公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中原 潤平
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-192628(JP,A)
【文献】特開平10-046841(JP,A)
【文献】特開2005-097849(JP,A)
【文献】特開2015-081488(JP,A)
【文献】特開2008-063886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/00-1/14
E04H 3/00-4/16
E04F 17/00-19/10
E04D 1/00-3/40
E04D 13/00-15/07
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3以上の階と、3以上の階にわたる吹抜部と、前記吹抜部に設けられる階段と、前記吹抜部の上部に設けられる天窓とを備え、
前記吹抜部には、
上下階を繋ぐ階段の折り返し部分に設けられる踊り場において、展示物が配置される配置部が設けられ、
前記吹抜部は、前記踊り場側において、高さ方向に延びて前記各階の通行部と対向するように設けられる第1壁と、高さ方向に延びて前記第1壁の一方の端に繋がる第2壁と、高さ方向に延びて前記第1壁の他方の端に繋がる第3壁とを有し、
前記第1壁、前記第2壁、および、前記第3壁の少なくとも1つの壁は、各階の部屋の壁よりも暗い色の壁に構成され、
前記階段には光透過部が設けられる
建物。
【請求項2】
前記光透過部は、
前記階段の蹴込部が省略されることによって2つの踏板の間に設けられる貫通孔として、構成される、
請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記光透過部は、前記階段の踏板、蹴込部および桁部の少なくとも一部分に設けられる透明部として構成される
請求項1に記載の建物。
【請求項4】
前記配置部を照らす照明部を備える
請求項1~3のいずれか一項に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段を有する建物に関する。
【背景技術】
【0002】
階段に展示物を展示する建物が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、階段を構成する段部と収納棚とが一体になった家具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の階段は、展示物を鑑賞させるための空間として構成されておらず、展示物を鑑賞する空間としては改善の余地がある。そこで、展示物を鑑賞し易い階段スペースを有する建築物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決する建物は、3以上の階と、3以上の階にわたる吹抜部と、前記吹抜部に設けられる階段と、前記吹抜部の上部に設けられる天窓とを備え、前記吹抜部には、展示物が配置される配置部が設けられ、前記階段には光透過部が設けられる。この構成によれば、吹抜部に差し込む太陽光によって展示物が照明される。太陽光およびその反射光は、階段の光透過部を通過するため、階段裏の暗さが和らぎ、吹抜部の全体が鑑賞に適した適度な明るさになる。このようにして、展示物を鑑賞し易い空間が形成される。
【0006】
(2)上記(1)の建物において、前記光透過部は、前記階段に設けられる貫通孔として構成される。この構成によれば、光が階段の貫通孔を通過し、階段の裏側が明るくなる。
【0007】
(3)上記(2)の建物において、前記光透過部は、前記階段の踏板、蹴込部および桁部の少なくとも一部分に設けられる透明部として構成される。この構成によれば、光が階段の透明部を通過するため、階段の裏側が明るくなる。
【0008】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つの建物において、前記吹抜部は、高さ方向に延びて前記各階の通行部と対向するように設けられる第1壁と、高さ方向に延びて前記第1壁の一方の端に繋がる第2壁と、高さ方向に延びて前記第1壁の他方の端に繋がる第3壁とを有し、前記第1壁、前記第2壁、および、前記第3壁の少なくとも1つの壁は、各階の部屋の壁よりも暗い色の壁に構成される。この構成によれば、吹抜部を各階の部屋の明るさよりも暗くすることができ、配置部に置かれる展示物に注意を向けさせることができる。
【0009】
(5)上記(4)の建物において、前記配置部を照らす照明部を備える。この構成によれば、展示物を照らすことができる。
【発明の効果】
【0010】
上記建物によれば、展示物を鑑賞し易い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】
図1のIII-III線に沿う建物の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~
図6を参照して、建物について説明する。
図1は、建物1の斜視図である。
図2および
図3に示されるように、建物1は、3以上の階と、吹抜部10と、吹抜部10に設けられる階段30とを備える。
【0013】
本実施形態では、建物1は、地下1階および地上3階の建物である。階段30は、地階1Dから3階1Cまで延びる。
地階1Dは、2回折り返す第1階段31によって1階1Aに繋がる。第1階段31は、第1踊場32と、第1踊場32よりも上に設けられる第2踊場33と、地階1Dと第1踊場32とに渡る第1階段部34と、第1踊場32と第2踊場33とに渡る第2階段部35と、第2踊場33と1階1Aとに渡る第3階段部36とを備える。
【0014】
1階1Aは、1回折り返す第2階段41によって2階1Bに繋がる。第2階段41は、第3踊場42と、1階1Aと第3踊場42とに渡る第4階段部43と、第3踊場42と2階1Bに渡る第5階段部44とを備える。
【0015】
2階1Bは、1回折り返す第3階段46によって3階1Cに繋がる。第3階段46は、第4踊場47と、2階1Bと第4踊場47とに渡る第6階段部48と、第4踊場47と3階1Cに渡る第7階段部49とを備える。
【0016】
1階1Aには、第1階段31と第2階段41とを繋ぐ第1通行部51が設けられる。2階1Bには、第2階段41と第3階段46とを繋ぐ第2通行部52が設けられる。3階1Cには、第3階段46が繋がる第3通行部53が設けられる。
【0017】
第1踊場32の上に、第1通行部51が配置される。第1通行部51の上に、第2通行部52が配置される。第2通行部52の上に、第3通行部53が配置される。建物1において、平面視で、第1踊場32、第1通行部51、第2通行部52、および、第3通行部53は、同じ位置に配置される。第1踊場32、第1通行部51、第2通行部52、および、第3通行部53は、吹抜部10において第1壁11(後述参照)に対向する位置に設けられる。
【0018】
第2踊場33の上に、第3踊場42が配置される。第3踊場42の上に、第4踊場47が配置される。建物1において、平面視で、第2踊場33、第3踊場42、および第4踊場47は、同じ位置に配置される。第2踊場33、第3踊場42、および第4踊場47は、吹抜部10において第1壁11側に設けられる。
【0019】
第1階段部34、第3階段部36、第5階段部44、および第7階段部49は、吹抜部10において第2壁12側に設けられる。
第2階段部35、第4階段部43、および、第6階段部48は、吹抜部10において第3壁13側に設けられる。
【0020】
平面視において階段30の上りと下りの方向を第1方向D1とした場合に、第1方向D1に交差する方向を第2方向D2と定義する。平面視で、第2方向D2において、第1階段部34、第3階段部36、第5階段部44、および第7階段部49の第1群と、第2階段部35、第4階段部43、および、第6階段部48の第2群との間には、隙間50(
図4参照)が設けられる。
【0021】
図2および
図5に示されるように、階段30には、光透過部60が設けられる。
光透過部60は、階段30の各段に設けられる貫通孔61として構成される。具体的には、階段30は、複数の踏板37と、複数の踏板37を支持する桁部39とを備える。光透過部60としての貫通孔61は、踏板37と踏板37との間に設けられる。具体的には、階段30において蹴込部が省略されることによって、光透過部60としての貫通孔61が構成される。光透過部60は、階段30の各段に設けられてもよい。光透過部60は、階段30の各段において1つ飛ばしに設けられてもよい。光透過部60は、蹴込部に設けられる貫通孔61として構成されてもよい。
【0022】
図2~
図4を参照して、吹抜部10を説明する。吹抜部10は、3以上の階にわたるように構成される。本実施形態では、平面視で矩形に形成される。吹抜部10は、階段30を収容するように構成される。吹抜部10は、第1壁11と、第2壁12と、第3壁13とを備える。
【0023】
第1壁11は、吹抜空間Sを介して第1通行部51、第2通行部52、および、第3通行部53に対向する位置に設けられる。第1壁11は、高さ方向に延びる壁として構成される。第1壁11は、1階1Aの床4から3階1Cの天井3まで延びる(
図2参照)。
【0024】
第2壁12および第3壁13は、高さ方向に延びる。第2壁12は、第1壁11の一方の端に繋がり、第3壁13は、第1壁11の他方の端に繋がる。第3壁13は、吹抜空間Sを介して第2壁12に対向する(
図4参照)。第2壁12および第3壁13は、第1壁11に垂直に設けられる。第2壁12および第3壁13は、地階1Dの床5から3階1Cの天井3まで延びる(
図3参照)。
【0025】
図4は、2階1Bの平面図である。
図4に示されるように、吹抜部10は、2階1Bの部屋6Bから第1壁11、第2壁12および第3壁13で仕切られて、部分的に閉塞される。さらに、吹抜部10は、1階1Aの部屋6Aから第1壁11、第2壁12および第3壁13で仕切られて、部分的に閉塞される。さらに、吹抜部10は、3階1Cの部屋6Cから第1壁11、第2壁12および第3壁13で仕切られて、部分的に閉塞される。
【0026】
吹抜部10の上部には、天窓14が設けられる。
本実施形態では、天窓14は、建物1の屋根2に設けられる。天窓14は、屋根2と3階1Cの天井3とを貫く筒部15と、筒部15において上側開口部を塞ぐガラス窓16とを備える。ガラス窓16は、傾斜するように筒部15に設けられる。
【0027】
吹抜部10には、展示物Eが配置される配置部65が設けられる。配置部65は、第1壁11そのものであってもよい。例えば、展示物Eが絵画である場合、第1壁11が配置部65として使われる。配置部65は、第2壁12そのものであってもよい。配置部65は、第3壁13そのものであってもよい。配置部65は、棚または置台として構成されてもよい。配置部65としての棚は、第1壁11、第2壁12、または第3壁13の凹部として構成される。配置部65としての棚は、第1壁11、第2壁12、または第3壁13から突出する板状の凸部として構成されてもよい。配置部65としての置台は、第1踊場32、第2踊場33、第3踊場42、第1通行部51、第2通行部52、および第3通行部53の少なくとも1カ所に置かれる。展示物Eの例として、絵画、写真、彫刻、壺、草花、盆栽、生け花、フィギュア、水槽、表示装置によって表示される映像または画像等が挙げられる。表示装置は、第1壁11、第2壁12、および第3壁13のいずれかの少なくとも1つに埋め込まれてもよい。この場合、表示装置が埋め込められる部分が展示物Eの配置部65である。プロジェクターの映像または画像が第1壁11、第2壁12、および第3壁13の少なくとも1つに映し出されてもよい。この場合、映像または画像が映し出される部分が展示物Eの配置部65である。
【0028】
図5に示されるように、建物1は、配置部65を照らす照明部66を備えることが好ましい。照明部66は、吹抜部10において、配置部65を含む部分を照らすように構成される。照明部66は、スポットライトとして構成されてもよい。照明部66は、間接照明として構成されてもよい。この場合、照明部66は、配置部65の上または下に配置されて、反射光によって展示物Eを照明する。
【0029】
第1壁11、第2壁12、および、第3壁13の少なくとも1つの壁は、各階の部屋の壁よりも暗い色の壁に構成される。
例えば、第1壁11、第2壁12、および、第3壁13は、明度5以下の色に構成される。第1壁11、第2壁12、および、第3壁13は、同じ色相、等しい明度、等しい彩度に構成されてもよいし、第1壁11、第2壁12、および、第3壁13は、異なる色相、異なる明度、異なる彩度に構成されてもよい。
【0030】
本実施形態の作用を説明する。
吹抜部10は、3以上の階にわたって高さ方向に延びる第1壁11、第2壁12、および第3壁13によって仕切られている。吹抜部10は、上に高く延びて、吹抜部10以外の部屋から3つの壁で仕切られて部分的に閉塞された空間を構成する。吹抜部10が3つの壁で仕切られることによって、吹抜部10内に音が伝わり難くなり、吹抜部10が周囲に比べて静かな空間になる。吹抜部10には天窓14から太陽光が差し込む。吹抜部10に差し込む光は、直接に展示物Eを照らすとともに、吹抜部10を構成する壁に反射して間接的に展示物Eを照らす。また、階段30には、光透過部60が設けられているため、最下階まで光が到達し易く、かつ、反射する光の一部は、階段30を通過して展示物Eを照らす。
【0031】
図6に示されるように、太陽光または部屋から漏れる光は、階段30の光透過部60を通過するため、踏板37の後端部37Bは、踏板37の前端部37Aよりも明るくなる。特に、天窓14から差し込む光が弱い場合、この効果が大きい。踏板37の前端部37Aと一つ下の段の踏板37の後端部37Bとの明暗によって、踏板37の前端縁が視認し易くなり、階段30が下り易くなる。
【0032】
本実施形態の効果を説明する。
(1)建物1は、3以上の階と、3以上の階にわたる吹抜部10と、吹抜部10に設けられる階段30と、吹抜部10の上部に設けられる天窓14とを備える。吹抜部10には、展示物Eが配置される配置部65が設けられ、階段30には光透過部60が設けられる。この構成によれば、吹抜部10に差し込む太陽光によって展示物Eが照明される。また、太陽光およびその反射光は、階段30の光透過部60を通過するため、階段30裏の暗さが和らぎ、吹抜部10の全体が鑑賞に適した適度な明るさになる。このようにして、展示物Eを鑑賞し易い空間が形成される。
【0033】
(2)光透過部60は、階段30に設けられる貫通孔61として構成される。この構成によれば、光が階段30の貫通孔61を通過し、階段30の裏側が明るくなる。
(3)吹抜部10は、高さ方向に延びて各階の第1通行部51~第3通行部53と対向するように設けられる第1壁11と、第2壁12と、第3壁13とを有する。第1壁11、第2壁12、および、第3壁13の少なくとも1つの壁は、各階の部屋の壁よりも暗い色の壁に構成される。この構成によれば、吹抜部10を各階の部屋の明るさよりも暗くすることができ、配置部65に置かれる展示物Eに注意を向けさせることができる。例えば、部屋から出て階段30の上り下りのために吹抜部10に入ると、吹抜部10の暗さによって、落ち着いた気分になる。また、吹抜部10の暗さのために、瞳孔が開き、自然と展示物Eに注目するようになる。
【0034】
(4)建物1は、配置部65を照らす照明部66を備えてもよい。この構成によれば、展示物Eを照らすことができる。展示物Eが照らされることによって、展示物Eに注意を引かせることができる。
【0035】
<変形例>
上記実施形態は、建物1が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。建物1は実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の一例を示す。
【0036】
・上記実施形態では、階段30に設けられる光透過部60は、貫通孔61として構成されるが、光透過部60は、階段30の踏板37、蹴込部38および桁部39の少なくとも一部分に設けられる透明部70として構成されてもよい。例えば、透明部70は、アクリル樹脂によって構成される。
【0037】
例えば、
図7に示されるように、蹴込部38が透明部70に構成される。この構成によれば、光が階段30の透明部70を通過するため、階段30の裏側が明るくなる。例えば、蹴込部38が透明アクリル樹脂によって構成される。
【符号の説明】
【0038】
E…展示物
1…建物
6A…部屋
6B…部屋
6C…部屋
10…吹抜部
11…第1壁
12…第2壁
13…第3壁
14…天窓
30…階段
37…踏板
38…蹴込部
39…桁部
60…光透過部
61…貫通孔
65…配置部
66…照明部