IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイ・エム・エスの特許一覧

<>
  • 特許-電気伝導率測定部 図1
  • 特許-電気伝導率測定部 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】電気伝導率測定部
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/22 20060101AFI20240501BHJP
   G01N 27/06 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G01R27/22 Z
G01N27/06 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020054688
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021156624
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】松井 寿定
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 祐次
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 真千子
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】実公昭35-5175(JP,Y1)
【文献】米国特許第4427945(US,A)
【文献】特開平2-216441(JP,A)
【文献】実開昭49-125096(JP,U)
【文献】特開2005-148007(JP,A)
【文献】特表2018-509605(JP,A)
【文献】特表2016-512463(JP,A)
【文献】特開2019-155297(JP,A)
【文献】特開2019-109224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/00
G01N 27/00
A61J 3/06
A61J 3/07
A61M 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定水の電気伝導率を測定する電気伝導率測定部であって、
電極台座と、
前記電極台座に取り付けられ、所定方向に延びる一対の電極であって、基端側が前記電極台座の内部に配置されると共に、先端側が前記電極台座の外部に配置される一対の電極と、
前記一対の電極のうち何れか一方又は両方の電極において、前記電極における前記電極台座の外部に露出する部分の長手方向の長さを調整可能な長さ調整機構と、を備え
前記長さ調整機構は、前記電極と前記電極台座との間に形成される調整用隙間を有する電気伝導率測定部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気伝導率測定装置に用いられる電気伝導率測定部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気伝導率測定装置において、一対の電極により、溶液(測定水)の電気伝導率を測定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。電気伝導率測定装置は、制御基板を有する装置本体と、一対の電極を有する電気伝導率測定部と、を備える。
【0003】
一対の電極により溶液の電気伝導率を測定する場合に、一対の電極の製造上のバラツキ(電極の形状のバラツキ、組み立て時のバラツキなど)により、溶液の電気伝導率の測定値にバラツキが生じて、溶液の電気伝導率の測定精度に影響を及ぼすことがある。一対の電極の製造上のバラツキにより溶液の電気伝導率の測定値にバラツキが生じた場合には、装置本体の制御基板側において、電気伝導率の測定値の補正を行うことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5304203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
装置本体又は電気伝導率測定部を故障により交換した場合には、装置本体の制御基板側において各々の電気伝導率の測定値の補正を行うことが必要となるため、電気伝導率の測定値の補正を行う調整作業が生じる。装置本体の制御基板側において電気伝導率の測定値の補正を行う調整作業は、技術的作業が伴うため、困難である。一方、電気伝導率測定部において、電極の製造上の公差を厳しくすることで、溶液の電気伝導率の測定値のバラツキを低減できる。しかし、電極の製造上の公差を厳しくする場合には、製造コストが高くなる。そのため、電気伝導率測定部において、簡易な構成で、溶液の電気伝導率の測定値のバラツキを低減することで、溶液の電気伝導率の測定精度の低下を抑制できることが望まれている。
【0006】
本発明は、簡易な構成で、測定水の電気伝導率の測定精度の低下を抑制できる電気伝導率測定部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、測定水の電気伝導率を測定する電気伝導率測定部であって、所定方向に延びる一対の電極と、前記一対の電極のうち何れか一方又は両方の電極において、前記電極における外部に露出する部分の長手方向の長さを調整可能な長さ調整機構と、を備える電気伝導率測定部に関する。
【0008】
また、前記一対の電極が取り付けられる電極台座を更に備え、前記長さ調整機構は、前記一方の電極と前記電極台座との間に形成される調整用隙間を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構成で、測定水の電気伝導率の測定精度の低下を抑制できる電気伝導率測定部を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る電気伝導率測定装置の構成を示す図である。
図2】一方の電極の長さを調整した場合のセル定数の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る電気伝導率測定部3を含む電気伝導率測定装置1について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電気伝導率測定装置1の構成を示す図である。図2は、一方の電極37の長さを調整した場合のセル定数の変化を示すグラフである。
【0012】
本実施形態の電気伝導率測定装置1は、例えば、透析用水などの溶液(測定水)の電気伝導率を測定する装置である。図1に示すように、電気伝導率測定装置1は、装置本体2と、溶液の電気伝導率を測定する電気伝導率測定部3と、を有する。
【0013】
電気伝導率測定部3は、透析用水の溶液の電気伝導率を測定する場合に、少なくとも一対の電極36,37が、溶液中に配置される。電気伝導率測定部3は、ケーブル41及びコネクタ42を介して、装置本体2の制御基板21に接続される。電気伝導率測定部3は、全体として、所定方向に延びて形成される。
【0014】
本実施形態においては、電気伝導率測定部3が延びる所定方向を、長手方向Dという。電気伝導率測定部3の長手方向Dにおいて、基端側ケース31のケーブル41側の端部側を第1側D1といい、一対の電極36,37の先端側を第2側D2という。
【0015】
電気伝導率測定部3は、基端側ケース31と、電極台座32と、一対の電極36,37と、電極長さ調整機構38(長さ調整機構)と、を有する。
【0016】
基端側ケース31は、長手方向Dに延びる筒状に形成される。基端側ケース31は、第1側D1に配置される同径筒状部311と、第2側D2に配置されると共に同径筒状部311に連通する拡径筒状部312と、を有する。同径筒状部311は、第1側D1から第2側D2に向かって同径で延びる。拡径筒状部312は、同径筒状部311の第2側D2に接続され、第1側D1から第2側D2に向かうに従って径が大きくなるように延びる。拡径筒状部312の第2側D2の端部は、開放して形成される。
【0017】
電極台座32は、基端側ケース31の拡径筒状部312の第2側D2の端部に取り付けられる。電極台座32は、台座側係合部33と、一対の電極取付穴34,35と、を有する。台座側係合部33は、基端側ケース31の拡径筒状部312の第2側D2の端部に形成されるケース側係合部312aに係合される。
【0018】
一対の電極取付穴34,35は、それぞれ、電極台座32を長手方向Dに貫通して長手方向Dに延びる。一対の電極取付穴34,35は、それぞれ、第1側D1に形成される小径穴341,351と、第2側D2に形成され小径穴341,351に連通する大径穴342,352と、小径穴341,351と大径穴342,352との間に形成される段差343,353と、を有する。
【0019】
大径穴342,352の長手方向Dの長さは、小径穴341,351の長手方向Dの長さよりも短く形成される。段差343,353は、小径穴341,351の第1側D1の端部と大径穴342,352の第2側D2の端部とを径方向につなぐ円環状の平面により形成される。段差343,353の円環状の平面は、第2側D2側を向いて形成される。
【0020】
一対の電極36,37は、電極台座32に取り付けられ、いずれも、所定方向に延びる。一対の電極36,37の延びる所定方向は、長手方向Dに一致する。一対の電極36,37は、それぞれ、電極台座32の電極取付穴34,35に挿通して配置され、長手方向Dの第2側D2の端部において長さL1,L2の部分が外部に露出する。
【0021】
一対の電極36,37は、それぞれ、第1側D1に形成される小径部361,371と、第2側D2に形成され小径部361,371に接続される大径部362,372と、小径部361,371と大径部362,372との間に形成される段差363,373と、を有する。
【0022】
段差363,373は、小径部361,371の第1側D1の端部と大径部362,372の第2側D2の端部とを径方向につなぐ円環状の平面により形成される。段差363,373の円環状の平面は、第1側D1を向いて形成される。小径部361,371は、電極台座32の小径穴341,351に配置される。大径部362,372は、電極台座32の大径穴342,352に配置される。段差363,373は、電極台座32の段差343,353に対向して配置される。
【0023】
小径部361,371の基端側の外周面には、ネジ溝361a,371aが形成される。大径部362,372の第1側D1の外周面には、Oリング362a,372aが取り付けられている。Oリング362a,372aは、大径部362,372の第1側D1の外周面と電極取付穴34,35の小径穴341,351との間に配置される。
【0024】
一対の電極36,37それぞれが電極台座32の電極取付穴34,35に挿通された状態において、一対の電極36,37それぞれの第1側D1の端部側は、ネジ溝361a、371aにおいて、ナットNにより固定される。本実施形態においては、一対の電極36,37のうち、一方の電極37は、ナットNを緩めることで、電極長さ調整機構38により、外部に露出する部分の長手方向Dの長さを調整可能である。
【0025】
電極長さ調整機構38は、一方の電極37における外部に露出する部分の長手方向Dの長さL2を調整可能である。電極長さ調整機構38は、一方の電極37と電極台座32との間に形成される調整用隙間381を有する。調整用隙間381は、電極台座32の電極取付穴35の段差353と一方の電極37の段差373との間の隙間である。電極37を固定するナットNを緩めることで、調整用隙間381において電極37を長手方向に移動させることができるため、電極37の外部に露出する部分の長手方向Dの長さL2を調整できる。
【0026】
装置本体2は、制御基板21を備える。制御基板21は、制御部211を有する。制御部211は、電気伝導率測定部3の一対の電極36,37により測定された測定値に基づいて、溶液の電気伝導率を算出する。
【0027】
JIS K0130に定められる電気伝導率測定法には、溶液の電気伝導率は、「面積1mの2個の平面電極が、距離1mで対向している容器に電解質水溶液を満たして測定した電気抵抗の逆数」と定義されている。
【0028】
溶液の電気伝導率は、次の(1)式により算出できる。
溶液の電気伝導率(μS/cm)=一対の電極36,37の電極間の抵抗値の逆数(S)×セル定数(cm-1)・・・(1)
【0029】
セル定数は、次の(2)式により算出することができる。
セル定数(cm-1)=一対の電極の電極間の距離(cm)/電極の表面積(cm)・・・(2)
【0030】
(2)式により、セル定数は、一対の電極の電極間の距離に比例し、電極の表面積に反比例する。そのため、上記(2)式により、電極の表面積を変更することで、セル定数を変更できる。本実施形態においては、電気伝導率測定部3は、電極長さ調整機構38により、一方の電極37の外部に露出する部分の長手方向Dの長さを変更することで、一方の電極37の外部に露出される表面積を変更できる。これにより、電極の表面積を変更することで、セル定数を変更できる。
【0031】
例えば、図2に示すように、複数の電極37のサンプルを用いて、電極37の外部に露出する部分の長手方向Dの長さを調整することによるセル定数の変化を実験により検証した。図2に示す実験結果のグラフによれば、電極37の外部に露出する部分の長手方向Dの長さを長くするに従って、セル定数が小さくなる傾向があることを検証できた。
【0032】
以上の電気伝導率測定部3によれば、電極37の外部に露出する部分の長手方向Dの長さを変更することで、電極37の外部に露出する表面積を変更して、上記(2)式により、セル定数を変更できる。これにより、電極37の外部に露出する部分の長手方向Dの長さを変更することでセル定数を変更することで、上記(1)式により、溶液の電気伝導率の測定値を調整できる。よって、電極37の外部に露出する部分の長手方向Dの長さを変更することで溶液の電気伝導率の測定値を調整できるため、一対の電極36,37に製造上のバラツキ(電極の形状のバラツキ、組み立て時のバラツキなど)があったとしても、簡易な構成で、溶液の電気伝導率の測定値のバラツキを低減することで、溶液の電気伝導率の測定精度の低下を抑制できる。
【0033】
上述した本実施形態の電気伝導率測定部3によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
【0034】
電気伝導率測定部3を、所定方向に延びる一対の電極36,37と、一対の電極36,37のうち一方の電極37において、電極37における外部に露出する部分の長手方向Dの長さL2を調整可能な電極長さ調整機構38と、を備えて構成した。
【0035】
これにより、電極37の外部に露出する部分の長手方向Dの長さL2を調整することで、セル定数を変更できるため、一対の電極36,37に製造上のバラツキがあったとしても、簡易な構成で、溶液の電気伝導率の測定精度の低下を抑制できる。例えば、電気伝導率測定部3を故障などにより交換した場合において、装置本体2側で電気伝導率の補正を行わなくてよいため、有効的である。
また、電極37の外部に露出する部分の長手方向Dの長さL2を調整するだけで、溶液の電気伝導率の測定精度の低下を抑制できるため、電極36,37の製造公差を厳しく設定しなくてよいため、製造コストを低減できる。
【0036】
電極長さ調整機構38は、一方の電極37と電極台座32との間に形成される調整用隙間381を有する。これにより、電極37の外部に露出する部分の長手方向Dの長さL2を容易に調整できるため、溶液の電気伝導率の測定精度の低下を容易に抑制できる。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施形態においては、一方の電極37のみにおいて、電極37における外部に露出する部分の長手方向Dの長さL2を調整可能に構成したが、これに限らない。他方の電極36のみについて、電極36における外部に露出する部分の長手方向Dの長さL1を調整可能に構成してもよいし、一方の電極37及び他方の電極36の両方において、電極36,37の両方における外部に露出する部分の長手方向Dの長さL1,L2を調整可能に構成してもよい。
【符号の説明】
【0038】
3 電気伝導率測定部
36 電極
37 電極(一方の電極)
38 電極長さ調整機構(長さ調整機構)
381 調整用隙間
図1
図2