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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】ワイヤロープ絡み付き防止冶具
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/00 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
B66C13/00 G
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020055481
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021155151
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】弁理士法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 晃
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-086981(JP,U)
【文献】実開昭61-191391(JP,U)
【文献】実開昭50-134873(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1のフックと、第2のフックと、前記第1のフックを支持する第1のワイヤロープと、前記第2のフックを支持する第2のワイヤロープと、ブームとを有する作業車両用のワイヤロープ絡み付き防止冶具であって、
前記第1のワイヤロープを挿通する第1の領域と、
前記第1の領域と同一の水平面内に位置し、前記第2のワイヤロープを挿通する第2の領域と、
前記第1の領域に対して前記第2の領域を前記水平面内で回動可能に構成された回動軸と、
を有し、
前記第1のフックの上面又は前記第2のフックの上面に前記ワイヤロープ絡み付き防止治具の底面が載置される、
ワイヤロープ絡み付き防止治具。
【請求項2】
前記回動軸は、前記作業車両に前記ワイヤロープ絡み付き防止治具を取り付けた際に、前記第1の領域と前記第2の領域とが前記ブームの前後方向に並ぶ第1の相対位置と、前記第1の領域と前記第2の領域とが前記ブームの左右方向に並ぶ第2の相対位置との間で、前記第1の領域に対して前記第2の領域を前記水平面内で回動可能に構成されている、
請求項1に記載のワイヤロープ絡み付き防止治具。
【請求項3】
前記第1の領域及び前記第2の領域は、外形が枠状部材で構成されており、
前記第1の領域には、前記枠状部材が形成する面の第1の軸方向に伸長し、前記第1のワイヤロープをガイドする第1のガイド部材と、前記第1のガイド部材と平行に伸長する第2のガイド部材と、前記枠状部材が形成する面の第2の軸方向に伸長する第1のピンと、前記第1のピンと平行に伸長する第2のピンと、が設けられており、
前記第2の領域には、前記枠状部材が形成する面の第3の軸方向に伸長し、前記第2のワイヤロープをガイドする第3のガイド部材と、前記第3のガイド部材と平行に伸長する第4のガイド部材と、前記枠状部材が形成する面の第4の軸方向に伸長する第3のピンと、前記第3のピンと平行に伸長する第4のピンと、が設けられている、
請求項1又は2に記載のワイヤロープ絡み付き防止治具。
【請求項4】
前記第1の領域は、第1の領域側第1の固定部材及び第1の領域側第2の固定部材を有し、
前記第2の領域は、第2の領域側第1の固定部材及び第2の領域側第2の固定部材を有し、
前記第1の領域と前記第2の領域とが前記第1の相対位置にある場合に、前記第1の領域側第1の固定部材が、前記第2の領域側第1の固定部材に固定可能となるように構成されており、
前記第1の領域と前記第2の領域とが前記第2の相対位置にある場合に、前記第1の領域側第2の固定部材が、前記第2の領域側第1の固定部材に固定可能となるように構成されている、
請求項2に記載のワイヤロープ絡み付き防止治具。
【請求項5】
少なくとも第1のフックと、第2のフックと、前記第1のフックを支持する第1のワイヤロープと、前記第2のフックを支持する第2のワイヤロープと、ブームとを有する作業車両用のワイヤロープ絡み付き防止冶具であって、
前記第1のワイヤロープを挿通する第1の領域と、
前記第1の領域と同一の水平面内に位置し、前記第2のワイヤロープを挿通する第2の領域と、
前記第1の領域に対して前記第2の領域を前記水平面内で回動可能に構成された回動軸と、
を有し、
前記第1のフックの上面又は前記第2のフックの上面に前記ワイヤロープ絡み付き防止治具の底面が載置されており、
前記回動軸は、前記作業車両に前記ワイヤロープ絡み付き防止治具を取り付けた際に、前記第1の領域と前記第2の領域とが前記ブームの前後方向に並ぶ第1の相対位置と、前記第1の領域と前記第2の領域とが前記ブームの左右方向に並ぶ第2の相対位置との間で、前記第1の領域に対して前記第2の領域を前記水平面内で回動可能に構成されており、
前記第1の領域及び前記第2の領域は、外形が枠状部材で構成されており、
前記第1の領域には、前記枠状部材が形成する面の第1の軸方向に伸長し、前記第1のワイヤロープをガイドする第1のガイド部材と、前記第1のガイド部材と平行に伸長する第2のガイド部材と、前記枠状部材が形成する面の第2の軸方向に伸長する第1のピンと、前記第1のピンと平行に伸長する第2のピンと、が設けられており、
前記第2の領域には、前記枠状部材が形成する面の第3の軸方向に伸長し、前記第2のワイヤロープをガイドする第3のガイド部材と、前記第3のガイド部材と平行に伸長する第4のガイド部材と、前記枠状部材が形成する面の第4の軸方向に伸長する第3のピンと、前記第3のピンと平行に伸長する第4のピンと、が設けられており、
前記第2の領域は、第1のストッパ及び第2のストッパを有し、
前記第1のストッパは、前記第2の領域の前記枠状部材から外側に突出する棒状部材であり、前記第1の領域と前記第2の領域とが前記第1の相対位置にある場合に、前記第1のストッパの先端部分は、前記第1の領域の前記枠状部材に当接するよう構成され、
前記第2のストッパは、前記第2の領域の前記枠状部材から外側に突出する棒状部材であり、前記第1の領域と前記第2の領域とが前記第2の相対位置にある場合に、前記第1のストッパの先端部分は、前記第1の領域の前記枠状部材に当接するよう構成されている、ワイヤロープ絡み付き防止治具。
【請求項6】
前記第1の軸方向と前記第3の軸方向とは同じ方向であり、前記第2の軸方向と前記第4の軸方向とは同じ方向であり、前記第1の軸方向と前記第2の軸方向とは直交する、
請求項3に記載のワイヤロープ絡み付き防止治具。
【請求項7】
前記第1の領域には、前記第1の軸方向に伸長する第5のガイド部材と、前記第5のガイド部材と平行に伸長する第6のガイド部材と、前記第2の軸方向に伸長する第5のピンと、前記第5のピンと平行に伸長する第6のピンと、が設けられている、
請求項3に記載のワイヤロープ絡み付き防止治具。
【請求項8】
前記枠状部材の前記第1の領域の一方の側面側には、前記第1のワイヤロープを挿通するための第1の窓部が設けられており、
前記枠状部材の前記第2の領域の一方の側面側には、前記第2のワイヤロープを挿通するための第2の窓部が設けられている、
請求項3に記載のワイヤロープ絡み付き防止治具。
【請求項9】
前記枠状部材の前記第1の領域及び/又は前記第2の領域の底面側には、板状部材が設けられている、
請求項3に記載のワイヤロープ絡み付き防止治具。
【請求項10】
前記枠状部材の前記第1の領域の底面側には、前記第1のフックの外周形状に追従する傘状部材が設けられており、
前記枠状部材の前記第2の領域の底面側には、前記第2のフックの外周形状に追従する傘状部材が設けられている、
請求項3に記載のワイヤロープ絡み付き防止治具。
【請求項11】
前記枠状部材の前記第2の領域の底面側には、前記第2のフックの外周形状に追従する傘状部材が、前記第2のフックの前記第1のフック側にだけ設けられている、
請求項3に記載のワイヤロープ絡み付き防止治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーンなどの作業車両のワイヤロープの絡み付きを防止するワイヤロープ絡み付き防止冶具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、移動式クレーンなどの作業車両の多くでは、主巻フックと補巻フックとの2つのフックを有しており、主巻フックには、ワイヤロープを複数本掛け、補巻フックにはワイヤロープを1本掛けで使用される。
【0003】
通常、主巻フックと補巻フックとのいずれは一方のフックを使用して作業する場合、使用しない他方のフックをできるだけ巻き上げてワイヤを短くすることで、使用している側のワイヤロープに使用していないフックが絡みつくことを防止する。しかしながら、この方法では絡み付きを完全には抑制できないため、特許文献1には、過巻検出用のブロックに複数のワイヤロープを通すことで、絡み付きを防止する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平5-40289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1の方法では、完全に絡み付きを防止することはできず、また、使用していない側のフックが繰り出されている場合には、絡み付き防止の効果が少ない。特に、実際の作業現場では、作業効率の観点等から使用していない側のフックも繰り出されたままであることも多く、その場合でも絡み付きを防止する方法が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、2個のフックと2本のワイヤロープに対して、一方のフックがもう一方のフックを支持するワイヤロープに絡みつくのを防止するワイヤロープ絡み付き防止冶具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
少なくとも第1のフックと、第2のフックと、前記第1のフックを支持する第1のワイヤロープと、前記第2のフックを支持する第2のワイヤロープとを有する作業車両用のワイヤロープ絡み付き防止冶具であって、
前記第1のワイヤロープを挿通する第1の領域と、
前記第1の領域と同一の水平面内に位置し、前記第2のワイヤロープを挿通する第2の領域と、
前記第1の領域に対して前記第2の領域を前記水平面内で回動可能に構成された回動軸と、
を有する、ワイヤロープ絡み付き防止治具。
【発明の効果】
【0008】
2個のフックと2本のワイヤロープに対して、一方のフックがもう一方のフックを支持するワイヤロープに絡みつくのを防止するワイヤロープ絡み付き防止冶具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る作業車両の一例の概略図である。
図2】本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具の一例の概略上面図である。
図3】本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具の一例の概略斜視図である。
図4】本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具の他の例の概略上面図である。
図5】本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具を装着したブーム周辺の概略斜視図である。
図6】格納時における、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具を装着したブーム周辺の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具を使用する作業車両としては、移動式クレーン、高所作業車、ホイルローダー、油圧ショベル等が挙げられる。移動式クレーンとしては、例えば、ラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーン、トラッククレーン、積載形トラッククレーン等が挙げられる。
【0011】
(クレーンの構成)
以下、本実施形態に係る一例としてのワイヤロープ絡み付き防止治具を使用する作業車両の全体構成について、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態に係る作業車両の一例の概略図を示す。なお、図1は、一例としてクレーン車1の主巻フック17に吊荷16が玉掛けされている様子を示している。
【0012】
本実施形態に係るクレーン車1は、走行体(キャリヤ)2と旋回台3とを備える。走行体2は、走行機能を有する車両の本体部分(車体)となり、複数の車輪と、車輪及び旋回台3を駆動する駆動源と、を有する。
【0013】
走行体2には、前側及び後側に各々、左右一対のアウトリガ4(図1には、走行体2の右側のみ図示している)が設けられる。各アウトリガ4は、左右に張り出しかつ格納を可能とし、適宜張り出して地面Gに接地することでブーム8を用いた作業時に走行体2を安定して支持する。
【0014】
旋回台3は、走行体2の上部に水平旋回可能に設けられ、一体的に旋回可能なキャビン5とブームサポート6とを有する。キャビン5には、作業者が各種の操作を行うための操作部7が設けられる。各種の操作としては、例えば、走行体2の走行、旋回台3の旋回、ブーム8の起伏及び伸縮、ブームサポート6に設けた主巻ウインチ12や補巻ウインチ14の巻上及び巻下、各アウトリガ4の張出及び格納、エンジンの始動及び停止等が挙げられる。
【0015】
ブームサポート6は、ブーム8を取り付ける箇所であり、ブーム8の基端部がブーム根本支点ピンを介して取り付けられ、そのブーム根本支点ピンを中心にしてブーム8を起伏可能とする。また、ブームサポート6には、ブーム8との間に起伏シリンダ9が設けられ、起伏シリンダ9を伸縮することでブーム8が起伏される。ブーム8は、複数のブーム部が外側から内側へと入れ子式に組み合わせて収納して構成され、各伸縮シリンダが伸縮することで伸縮する。なお、ブーム8は、箱型構造ジブとしているが、旋回台3の一端を支点とした腕となる構造体であればよく、ラチス構造ジブやブームを伸長するための補助ジブも含む。
【0016】
ブーム8の先端には、ブームヘッド11が設けられている。ブームヘッド11には、主巻ウインチ12で巻き上げられる又は巻き下げられる主巻ワイヤロープ13と、補巻ウインチ14で巻き上げられる又は巻き下げられる補巻ワイヤロープ15とが巻き掛けられている。
【0017】
主巻ワイヤロープ13には、吊荷16等が玉掛けされる主巻フック17が吊り下げられ、主巻ウインチ12による巻き上げ又は巻き下げにより主巻フック17と共に吊荷16が昇降される。主巻フック17は、通常、複数の巻掛け数とされている。
【0018】
補巻ワイヤロープ15には、吊荷16等が玉掛けされる補巻フック18が吊り下げられ、補巻ウインチ14による巻き上げ又は巻き下げにより補巻フック18と共に吊荷16が昇降される。補巻フック18は、通常、単一の巻掛け数とされている。
【0019】
主巻ワイヤロープ13及び補巻ワイヤロープ15の所定の位置には各々、主巻フック17及び補巻フック18が過度に巻き上げられるのを防止するための過巻防止装置19を備えている。なお、この過巻防止装置19は、主巻フック17又は補巻フック18が過度に巻き上げられると、主巻フック17又は補巻フック18がブーム先端部に衝突するので、それを防止するためのものである。
【0020】
ブーム8は、使用時において、適宜起伏されるとともに各ブーム部が適宜進退乃至旋回され、使用している主巻フック17又は補巻フック18を適宜昇降させることで吊荷16を移動させる。また、ブーム8の非使用時(例えば走行時)には、主巻フック17及び補巻フック18は最も上昇され、各ブーム部は最も後退されて収納した状態とされる。
【0021】
ブーム8の伸縮、起伏及び旋回並びに主巻フック17、補巻フック18の昇降は、操作部7の操作に従って行われる。操作部7は、入力された操作に対応した操作信号を出力する。その操作信号は、油圧ポンプ、方向制御弁、流量制御弁等の駆動装置の動作を制御する。それらの動作により、旋回台3の旋回や、主巻ウインチ12または補巻ウインチ14の駆動のための油圧モータや、起伏シリンダ9や伸縮シリンダ等の油圧シリンダが作動して、ブーム8の伸縮、起伏および旋回や、主巻フック17または補巻フック18の昇降が行われる。
【0022】
(実施例1のワイヤロープ絡み付き防止治具の構成例)
次に、図2及び図3を参照して本実施形態に係る一例としてのワイヤロープ絡み付き防止治具の全体構成について説明する。図2(a)に、作業時における、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具の一例の概略上面図を、図2(b)に、格納時における、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具の一例の概略上面図を示す。また、図3(a)に、作業時における、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具の一例の概略斜視図を、図3(b)に、格納時における、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具の一例の概略斜視図を示す。
【0023】
図2(a)に示すように、実施例1に係るワイヤロープ絡み付き防止治具300aは、例えば、断面が好ましくは略矩形の枠状の構造部材で全体が構成されている第1の領域310と、前記第1の領域310と同一の水平面内に位置し、断面が好ましくは略矩形の枠状の構造部材で全体が構成されている第2の領域320と、前記第1の領域に対して前記第2の領域を前記水平面内で回動可能に構成された回動軸340と、を有している。
【0024】
第1の領域310は、主として、主巻ワイヤロープ13を挿通させる(拘束する)領域であり、第2の領域320は、補巻ワイヤロープ15を挿通させる(拘束する)領域である。そして、回動軸340は、第1の領域310と第2の領域320との相対的な位置関係において、図2(a)及び図3(a)に示す第1の相対位置(作業時)と、図2(b)及び図3(b)に示す第2の相対位置(格納時)との間で、第1の領域310に対して第2の領域320を回動可能に構成されている。各々の領域及び回動軸340について、詳細に説明する。
【0025】
(第1の領域310)
前述したようにワイヤロープ絡み付き防止治具300の第1の領域310は、主巻ワイヤロープ13を挿通させる領域である。第1の領域310は、断面が好ましくは略矩形の枠状の構造部材で全体が構成されており、この枠状の構造部材が形成する面の第1の軸方向に伸長する第1の主巻側ガイドローラ302aと、前記第1の主巻側ガイドローラ302aと平行に伸長する第2の主巻側ガイドローラ302bと、前記ワイヤロープ絡み付き防止治具300が形成する面の第2の軸方向に伸長する第1の主巻側ピン304aと、前記第1の主巻側ピン304aと平行に伸長する第2の主巻側ピン304bと、が設けられている。通常、第1の軸方向と、第2の軸方向とは、直交するが、直交していなくても良い。なお、第1の主巻側ガイドローラ302a及び第2の主巻側ガイドローラ302b、並びに、後述する第3の主巻側ガイドローラ302c、第4の主巻側ガイドローラ302d、第1の補巻側ガイドローラ322a及び第2の補巻側ガイドローラ322bは、各々対応するワイヤロープをガイドすることができれば、他の構造であっても良い。
【0026】
第1の領域310において、第1のワイヤロープとしての主巻ワイヤロープ13は、第1の主巻側ガイドローラ302aと、第2の主巻側ガイドローラ302bと、第1の主巻側ピン304aと、第2の主巻側ピン304bとで囲まれる領域(空間)に挿通される。別の言い方をすると、主巻ワイヤロープ13は、第1の主巻側ガイドローラ302aと、第2の主巻側ガイドローラ302bと、第1の主巻側ピン304aと、第2の主巻側ピン304bとで拘束される。
【0027】
クレーンの構成等によって、主巻ワイヤロープ13は、複数巻掛、例えば、2本掛、3本掛、4本掛、6本掛される場合がある。その場合、主巻ワイヤロープ13は、ブーム側のワイヤロープ(群)と、補巻フック側のワイヤロープ(群)とに分類される。そのため、図2及び図3に示すように、ワイヤロープ絡み付き防止治具300には、前記ワイヤロープ絡み付き防止治具300が形成する面の前記第1の軸方向に伸長する第3の主巻側ガイドローラ302cと、前記第3の主巻側ガイドローラ302cと平行に伸長する第4の主巻側ガイドローラ302dと、前記ワイヤロープ絡み付き防止治具300が形成する面の前記第2の軸方向に伸長する第3の主巻側ピン304cと、前記第3の主巻側ピン304cと平行に伸長する第4の主巻側ピン304dと、を設けても良い。この場合、例えば、ブーム側のワイヤロープ(群)が、第1の主巻側ガイドローラ302aと、第2の主巻側ガイドローラ302bと、第1の主巻側ピン304aと、第2の主巻側ピン304bとで囲まれる領域(空間)に挿通され、補巻フック側のワイヤロープ(群)が、第3の主巻側ガイドローラ302cと、第4の主巻側ガイドローラ302dと、第3の主巻側ピン304cと、第4の主巻側ピン304dとで囲まれる領域(空間)に挿通される。
【0028】
なお、主巻ワイヤロープ13を複数巻掛する場合であっても、第3の主巻側ガイドローラ302cと、第4の主巻側ガイドローラ302dと、第3の主巻側ピン304cと、第4の主巻側ピン304dとを設けない構成であっても良い。例えば、ブーム側のワイヤロープ(群)を、第1の主巻側ガイドローラ302aと、第2の主巻側ガイドローラ302bと、第1の主巻側ピン304aと、第2の主巻側ピン304bとで囲まれる領域(空間)に挿通し、補巻フック側のワイヤロープ(群)は、単に、ワイヤロープ絡み付き防止治具300を通過する構成であっても良い。
【0029】
ワイヤロープ絡み付き防止治具300の第1の領域310の一方の側面側には、ブーム側のワイヤロープ(群)をワイヤロープ絡み付き防止治具300内に挿通するための第1の窓部306aが設けられており、また、補巻フック側のワイヤロープ(群)をワイヤロープ絡み付き防止治具300内に挿通するための第2の窓部306bが設けられている。そのため、第1の主巻側ガイドローラ302a、第2の主巻側ガイドローラ302b、第3の主巻側ガイドローラ302c、第4の主巻側ガイドローラ302d、第1の主巻側ピン304a、第2の主巻側ピン304b、第3の主巻側ピン304c及び第4の主巻側ピン304dは、ワイヤロープ絡み付き防止治具300に対して、着脱可能に構成されていることが好ましい。
【0030】
主巻フック17の上面にワイヤロープ絡み付き防止治具300の底面を載置できるように、ワイヤロープ絡み付き防止治具300の第1の領域310の面の少なくとも一部には、板状部材308を設けることが好ましい。
【0031】
また、ワイヤロープ絡み付き防止治具300の第1の領域310の底面側には、主巻フック17の上面にワイヤロープ絡み付き防止治具300の底面を載置した際に、主巻フック17の外周形状に追従するように、図示しない傘状部材が設けても良い。
【0032】
(第2の領域320)
ワイヤロープ絡み付き防止治具300の第2の領域320は、補巻ワイヤロープ15を挿通させる領域である。第2の領域320は、第1の領域310と同一の水平面内に位置し、断面が好ましくは略矩形の枠状の構造部材で全体が構成されており、この枠状の構造部材が形成する面の第3の軸方向に伸長する第1の補巻側ガイドローラ322aと、前記第1の補巻側ガイドローラ322aと平行に伸長する第2の補巻側ガイドローラ322bと、枠状の前記ワイヤロープ絡み付き防止治具300が形成する面の第4の軸方向に伸長する第1の補巻側ピン324aと、前記第1の補巻側ピン324aと平行に伸長する第2の補巻側ピン324bと、が設けられている。限定されないが、第3の軸方向は、第1の軸方向と同じ方向にし、第4の軸方向は第2の軸方向と同じ方向にすることが好ましい。
【0033】
そして、補巻ワイヤロープ15は、第1の補巻側ガイドローラ322aと、第2の補巻側ガイドローラ322bと、第1の補巻側ピン324aと、第2の補巻側ピン324bとで囲まれる領域(空間)に挿通される。別の言い方をすると、補巻ワイヤロープ15は、第1の補巻側ガイドローラ322aと、第2の補巻側ガイドローラ322bと、第1の補巻側ピン324aと、第2の補巻側ピン324bとで拘束される。
【0034】
ワイヤロープ絡み付き防止治具300の第2の領域320の一方の側面側には、補巻ワイ
ヤロープをワイヤロープ絡み付き防止治具300内に挿通するための第3の窓部326が設けられている。なお、第1の窓部306a、第2の窓部306b及び第3の窓部326は、ワイヤロープ絡み付き防止治具300の同じ側面側に設けられていても良いし、各々別の側面側に設けられていても良い。そのため、第1の補巻側ガイドローラ322a、第2の補巻側ガイドローラ322b、第1の補巻側ピン324a及び第2の補巻側ピン324bは、ワイヤロープ絡み付き防止治具300に対して、着脱可能に構成されていることが好ましい。
【0035】
補巻フック18の上面にワイヤロープ絡み付き防止治具300の底面を載置できるように、ワイヤロープ絡み付き防止治具300の第2の領域320の底面の少なくとも一部にも、板状部材328を設けることが好ましい。
【0036】
また、ワイヤロープ絡み付き防止治具300の第2の領域320の底面側には、図3(a)及び図3(b)に示すように、補巻フック18の上面にワイヤロープ絡み付き防止治具300の底面を載置した際に、補巻フック18の外周形状に追従するように、傘状部材350を設けても良い。ワイヤロープ絡み付き防止治具300の第2の領域320の底面側に傘状部材350を設ける場合、補巻フック18の外周全体の形状に追従するように傘状部材を設けても良いが、図3(a)及び図3(b)に示すように、補巻フック18の外周の主巻フック17側だけといったように、一部だけに傘状部材350を設けても良い。
【0037】
なお、本実施形態においては、第1の領域310と、第2の領域320とは、同一の水平面内に設けることが好ましい。別の言い方をすると、第1の領域310及び第2の領域320の水平位置は(地面から距離)、同じであることが好ましい。使用するクレーンの仕様によって、主巻ワイヤロープ13側の過巻防止装置の地面からの距離と、補巻ワイヤロープ15側の過巻防止装置の地面からの距離とが、異なる場合がある。主巻ワイヤロープ13側の過巻防止装置の地面からの距離が補巻ワイヤロープ15側の過巻防止装置の地面からの距離より長い場合であっても、その逆の場合であっても、全ての起伏角度で揚程の損失が少なくなるように、第1の領域310と、第2の領域320とは、同一の水平面内に設けることが好ましい。
【0038】
また、第2の領域320の上方に、第2の領域320に配置される第1の補巻側ガイドローラ322a、第2の補巻側ガイドローラ322b、第1の補巻側ピン324a及び第2の補巻側ピン324bと同様の構成を有する図示しない第3の領域を設けても良い。即ち、補巻ワイヤロープ15側には、高さ方向に複数のガイドローラを設けても良い。これにより、補巻フック18上にワイヤロープ絡み付き防止治具300を載置した場合に、補巻フック18の傾きを抑制できるため、見栄えが良くなる。
【0039】
(回動軸340)
回動軸340は、第1の領域310に対して同じ水平面内で第2の領域320が回動できる軸であり、例えばピン等の部材により構成されている。より具体的には、クレーン1を使用した作業時においては、第1の領域310と第2の領域320とは、図1に示すブーム8の前後方向に並ぶような第1の相対位置に位置する(合わせて後述する図5参照)。一方、クレーン1を使用した作業後にブーム8を格納する際には、第1の領域310と第2の領域320とは、上述の第1の相対位置から回動軸340まわりに第2の領域320を、限定されないが例えば90度回動させることで、図1に示すブーム8の左右方向に並ぶような第2の相対位置に位置する。
【0040】
(その他の構成)
また、実施例1に係るワイヤロープ絡み付き防止治具300aは、その他の構成として、第1の領域310に、第1の領域側第1の固定部材342a及び第1の領域側第2の固定部材344aが設けられており、第2の領域320に、第2の領域側第1の固定部材342b及び第2の領域側第2の固定部材344bが設けられている。
【0041】
第1の領域側第1の固定部材342aは、第2の領域側第1の固定部材342bに固定可能に構成されており、より具体的には、第1の領域310と第2の領域320とが上述の第1の相対位置にある場合(即ち、作業時)に、第1の領域側第1の固定部材342aは、第2の領域側第1の固定部材342bに固定可能となるように構成されている。別の言い方をすると、第1の領域側第1の固定部材342a及び第2の領域側第1の固定部材342bの固定により、第1の領域310と第2の領域320とは、ブーム8の前後方向に固定することができる。
【0042】
そして、第1の領域側第2の固定部材344aは、第2の領域側第2の固定部材344bに固定可能に構成されており、より具体的には、第1の領域310と第2の領域320とが上述の第2の相対位置にある場合(即ち、格納時)に、第1の領域側第2の固定部材344aは、第2の領域側第2の固定部材344bに固定可能となるように構成されている。別の言い方をすると、第1の領域側第2の固定部材344a及び第2の領域側第2の固定部材344bの固定により、第1の領域310と第2の領域320とは、ブーム8の左右方向に固定することができる。
【0043】
(実施例2のワイヤロープ絡み付き防止治具の構成例)
次に、図4を参照して本実施形態に係る他の例としてのワイヤロープ絡み付き防止治具の全体構成について説明する。図4(a)に、作業時における、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具の他の例の概略上面図を、図4(b)に、格納時における、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具の他の例の概略上面図を示す。
【0044】
図4に示すように、実施例2に係るワイヤロープ絡み付き防止治具300bは、実施例1に係るワイヤロープ絡み付き防止治具300aと同様に、例えば、断面が好ましくは略矩形の枠状の構造部材で全体が構成されている第1の領域310と、前記第1の領域310と同一の水平面内に位置し、断面が好ましくは略矩形の枠状の構造部材で全体が構成されている第2の領域320と、前記第1の領域に対して前記第2の領域を前記水平面内で回動可能に構成された回動軸340と、を有している。第1の領域310、第2の領域及び回動軸340は、実施例1と同様の構成のものを採用することができるため、詳細については割愛する。
【0045】
(その他の構成)
実施例2に係るワイヤロープ絡み付き防止治具300bは、その他の構成として、図4に示すように、第1のストッパ346及び第2のストッパ348を有する点で、実施例1に係るワイヤロープ絡み付き防止治具300aと異なる。
【0046】
第1のストッパ346は、枠状の構造部材で構成されている第2の領域320の、1の領域310と第2の領域320とが上述の第1の相対位置に位置する場合に第1の領域310と対向する面から外側に突出する棒状部材である。そして、第1の領域310と第2の領域320とが上述の第1の相対位置に位置する場合に、第1のストッパ346の先端部分が、枠状の構造部材で構成されている第1の領域310に当接するよう構成されている。なお、第1のストッパ346は、例えば、ゴム等の弾性部材で構成することが、上記の当接時において、第1の領域310を傷つけることを防止できるため、好ましい。
【0047】
また、第2のストッパ348は、枠状の構造部材で構成されている第2の領域320の、第1の領域310と第2の領域320とが上述の第2の相対位置に位置する場合に第1の領域310と対向する面から外側に突出する棒状部材である。そして、第1の領域310と第2の領域320とが上述の第2の相対位置に位置する場合に、第2のストッパ348の先端部分が、枠状の構造部材で構成されている第1の領域310に当接するよう構成されている。なお、第2のストッパ348も、例えば、ゴム等の弾性部材で構成することが、上記の当接時において、第1の領域310を傷つけることを防止できるため、好ましい。
【0048】
(絡み付き防止治具の効果)
上記説明した、実施例1及び実施例2のワイヤロープ絡み付き防止治具300a、300bの効果について、図を参照して説明する。図5に、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具300を装着したブーム周辺の概略斜視図を示す。なお、図5は、作業時における、ワイヤロープ絡み付き防止治具300の様子を示すために、第1の領域310と第2の領域320とは、ブーム8の前後方向に並ぶような第1相対位置に位置している。
【0049】
図5に示すように、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具300により、主巻ワイヤロープ13は、第1の領域310に拘束され、補巻ワイヤロープ15は、第2の領域に拘束されている。即ち、主巻ワイヤロープ13と補巻ワイヤロープ15とは、常に一定距離を保っているため、ワイヤロープ間の接触及び絡み付きは発生しない。
【0050】
なお、ワイヤロープ絡み付き防止治具300として、実施例2のワイヤロープ絡み付き防止治具300bを使用した場合、作業時のフックの振れ等によって、第2の領域320が第1の領域310間で回転する可能性はあるが、主巻ワイヤロープ13と補巻ワイヤロープ15とは、常に一定距離を保っているため、ワイヤロープ間の接触及び絡み付きは発生しない。
【0051】
また、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具300を使用することで、絡み付き防止治具を装着した状態で、クレーン作業時のブーム姿勢から、フック格納時のブーム姿勢へと移行することができる。図6に、格納時における、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具を装着したブーム周辺の概略斜視図を示す。なお、図6では、説明のために、ブーム8を省略して示している。
【0052】
図5に示した作業時におけるワイヤロープ絡み付き防止治具合300から主巻フック17及び補巻フック18を格納する場合、先ず、回動軸340まわりに、第2の領域320を第1の領域310に対して回動させることで、第1の領域310と第2の領域320とを、上述の第1の相対位置から、第2の相対位置へと移動させる。
【0053】
そして、図6(a)に示すように、クレーン1の例えば旋回台3等に、ブーム8の左右方向に予め設けられた第1の格納金具400a及び第2の格納金具400bに、各々、主巻フック17及び補巻フック18を、例えばロープ402a、402b等を介して引っ掛ける。この状態で、図6(b)に示すように、ブーム8を伏せながら主巻ワイヤロープ13及び補巻ワイヤロープ15を巻き上げることで、絡み付き防止治具300を取り付けたまま、主巻フック17及び補巻フック18を格納することができる。なお、第1の格納金具400a及び第2の格納金具400bは、ブーム8の左右方向に並べて設けられることが好ましい。ブーム8の前後方向に格納金具400a、400bを設けた場合、一方のフック例えば、補巻フック18が、もう一方のフック例えば主巻フック17の下敷きとなるため、補巻フック18が破損することがある。また、主巻フック17の座りが悪化して、走行中に主巻フック17がクレーン上から落下することがある。
【0054】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1:クレーン車
2:走行体
3:旋回台
4:アウトリガ
5:キャビン
6:ブームサポート
8:ブーム
9:起伏シリンダ
11:ブームヘッド
12:主巻ウインチ
13:主巻ワイヤロープ
14:補巻ウインチ
15:補巻ワイヤロープ
16:吊荷
17:主巻フック
18:補巻フック
19:過巻防止装置
300:ワイヤロープ絡み付き防止治具
302a:第1の主巻側ガイドローラ(特許請求の範囲の第1のガイド部材に対応)
302b:第2の主巻側ガイドローラ(特許請求の範囲の第2のガイド部材に対応)
302c:第3の主巻側ガイドローラ(特許請求の範囲の第5のガイド部材に対応)
302d:第4の主巻側ガイドローラ(特許請求の範囲の第6のガイド部材に対応)
304a:第1の主巻側ピン(特許請求の範囲の第1のピンに対応)
304b:第2の主巻側ピン(特許請求の範囲の第2のピンに対応)
304c:第3の主巻側ピン(特許請求の範囲の第5のピンに対応)
304d:第4の主巻側ピン(特許請求の範囲の第6のピンに対応)
306a:第1の窓部(特許請求の範囲の第1の窓部に対応)
306b:第2の窓部(特許請求の範囲の第1の窓部に対応)
308:第1の板状部材
310:第1の領域
320:第2の領域
322a:第1の補巻側ガイドローラ(特許請求の範囲の第3のガイド部材に対応)
322b:第2の補巻側ガイドローラ(特許請求の範囲の第4のガイド部材に対応)
324a:第1の補巻側ピン(特許請求の範囲の第3のピンに対応)
324b:第2の補巻側ピン(特許請求の範囲の第4のピンに対応)
326:第3の窓部(特許請求の範囲の第2の窓部に対応)
328:第2の板状部材
340:回動軸
342a:第1の領域側第1の固定部材
342b:第2の領域側第1の固定部材
344a:第1の領域側第2の固定部材
344b:第2の領域側第2の固定部材
346:第1のストッパ
348:第2のストッパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6