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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】重荷重用空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
B60C15/06 G
B60C15/06 B
B60C15/06 N
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020060497
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021155007
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】久嶋 健人
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-214016(JP,A)
【文献】特開2013-039844(JP,A)
【文献】特開平07-081334(JP,A)
【文献】特開平11-011118(JP,A)
【文献】特開2017-013538(JP,A)
【文献】特開2015-134587(JP,A)
【文献】特開平10-119518(JP,A)
【文献】特許第4315473(JP,B2)
【文献】特開平10-076820(JP,A)
【文献】特開2000-108616(JP,A)
【文献】特開2018-111433(JP,A)
【文献】特開2017-043281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重荷重用空気入りタイヤであって、
トレッド部と、
一対のサイドウォール部と、
ビードコアがそれぞれ埋設された一対のビード部と、
前記一対のビード部の間をトロイド状に跨るカーカスとを備え、
前記カーカスは、前記ビード部の間を延びる本体部と、前記本体部に連なりかつビードコアの周りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部とを備えたカーカスプライを含み、
前記各ビード部は、前記本体部と前記折返し部との間を前記ビードコアからタイヤ半径方向外側に延びるビードエーペックスゴムと、
前記折返し部のタイヤ軸方向の外側に配された部分と、前記ビードコアのタイヤ半径方向の内側に配された部分とを有する補強コード層とを含み、
前記ビードエーペックスゴムは、前記ビードコアから延びる第1ゴム部と、前記第1ゴム部よりも小さいゴム硬さを有しかつ前記第1ゴム部のタイヤ軸方向外側に配された第2ゴム部とを含み、
前記補強コード層は、前記補強コード層のタイヤ半径方向の外端と内端との間に前記折返し部のタイヤ半径方向の外端が位置するように配置されており、
タイヤ横断面において、前記ビードエーペックスゴムの前記第1ゴム部及び前記第2ゴム部は、前記折返し部の外端を通って前記本体部と直交するカーカス法線と交差するように配置され、
前記カーカス法線上において、前記第2ゴム部の厚さt2は前記第1ゴム部の厚さt1以上であり、
前記補強コード層は、前記折返し部のタイヤ軸方向の外側の領域において、最も前記折返し部側に配された内側層と、前記内側層のタイヤ軸方向外側に配された外側層とを含み、
前記内側層のタイヤ半径方向の内端は、前記ビードコアをタイヤ内腔面に向かってタイヤ軸方向に平行に延長した領域と重複する、
重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記外側層のタイヤ半径方向の内端は、前記ビードコアをタイヤ半径方向内側に向かってタイヤ半径方向に平行に延長した領域と重複する、請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ビード部は、前記本体部及び前記折返し部に沿って略U字状に延びるU字補強層を含み、
前記U字補強層は、前記本体部に沿って延びる部分のタイヤ半径方向の第1外端と、前記折返し部に沿って延びる部分のタイヤ半径方向の第2外端とを含み、
前記U字補強層の前記第1外端は、前記折返し部の前記外端よりもタイヤ半径方向外側に位置している、請求項1又は2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ビードエーペックスゴムは、前記第1ゴム部と前記第2ゴム部とが接合された界面を含み、
タイヤ横断面において、前記界面は少なくとも1つの変曲点を有するように湾曲している、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記界面は、タイヤ軸方向の一方側に凸の第1湾曲部と、タイヤ軸方向の他方側に凸の第2湾曲部とを含む、請求項4に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記補強コード層は、有機繊維コードプライを含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記外側層のタイヤ半径方向の内端は、前記内側層のタイヤ半径方向の内端よりもタイヤ半径方向内側に位置している、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記外側層のタイヤ半径方向の外端は、前記内側層のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向外側に位置している、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記ビード部のビードヒール面には、凹部が設けられている、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の重荷重用空気入りタイヤは、そのビード部の耐久性の向上が要求されている。下記特許文献1には、ビード部の耐久性を向上させるために、カーカスプライの折返し部のタイヤ軸方向外側に補強層が設けられた重荷重用空気入りタイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-111433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の重荷重用空気入りタイヤでは、前記補強層により、前記折返し部のタイヤ半径方向の外端での損傷を抑制することができた。しかしながら、特許文献1のように、カーカスプライの外側に補強層を設けた構成では、走行時の歪が前記カーカスプライの折返し部とビードエーペックスゴムとの間に移行し、この部分が新たな損傷の起点になり易いことが分かった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、優れたビード部の耐久性を発揮し得る重荷重用空気入りタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、重荷重用空気入りタイヤであって、トレッド部と、一対のサイドウォール部と、ビードコアがそれぞれ埋設された一対のビード部と、前記一対のビード部の間をトロイド状に跨るカーカスとを備え、前記カーカスは、前記ビード部の間を延びる本体部と、前記本体部に連なりかつビードコアの周りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部とを備えたカーカスプライを含み、前記各ビード部は、前記本体部と前記折返し部との間を前記ビードコアからタイヤ半径方向外側に延びるビードエーペックスゴムと、前記折返し部のタイヤ軸方向の外側に配された補強コード層とを含み、前記ビードエーペックスゴムは、前記ビードコアから延びる第1ゴム部と、前記第1ゴム部よりも小さいゴム硬さを有しかつ前記第1ゴム部のタイヤ軸方向外側に配された第2ゴム部とを含み、前記補強コード層は、前記補強コード層のタイヤ半径方向の外端と内端との間に前記折返し部のタイヤ半径方向の外端が位置するように配置されており、タイヤ横断面において、前記ビードエーペックスゴムの前記第1ゴム部及び前記第2ゴム部は、前記折返し部の外端を通って前記本体部と直交するカーカス法線と交差するように配置され、前記カーカス法線上において、前記第2ゴム部の厚さt2は前記第1ゴム部の厚さt1以上である。
【0007】
本発明の重荷重用空気入りタイヤにおいて、前記第2ゴム部の前記厚さt2は、前記第1ゴム部の前記厚さt1の1.0~3.0倍であるのが望ましい。
【0008】
本発明の重荷重用空気入りタイヤにおいて、前記第1ゴム部の前記厚さt1は、3.0~7.0mmであるのが望ましい。
【0009】
本発明の重荷重用空気入りタイヤにおいて、前記ビードエーペックスゴムは、前記第1ゴム部と前記第2ゴム部とが接合された界面を含み、タイヤ横断面において、前記界面は少なくとも1つの変曲点を有するように湾曲しているのが望ましい。
【0010】
本発明の重荷重用空気入りタイヤにおいて、前記界面は、タイヤ軸方向の一方側に凸の第1湾曲部と、タイヤ軸方向の他方側に凸の第2湾曲部とを含むのが望ましい。
【0011】
本発明の重荷重用空気入りタイヤにおいて、前記補強コード層は、有機繊維コードプライを含むのが望ましい。
【0012】
本発明の重荷重用空気入りタイヤにおいて、前記補強コード層は、最も前記折返し部側に配された内側層を含み、前記内側層のタイヤ半径方向の内端は、前記ビードコアのタイヤ半径方向外側の外面よりもタイヤ半径方向内側に位置しているのが望ましい。
【0013】
本発明の重荷重用空気入りタイヤにおいて、前記補強コード層は、最も前記折返し部側に配された内側層と、前記内側層のタイヤ軸方向外側に配された外側層とを含み、前記外側層のタイヤ半径方向の内端は、前記内側層のタイヤ半径方向の内端よりもタイヤ半径方向内側に位置しているのが望ましい。
【0014】
本発明の重荷重用空気入りタイヤにおいて、前記補強コード層は、最も折返し部側に配された内側層と、前記内側層のタイヤ軸方向外側に配された外側層とを含み、前記外側層のタイヤ半径方向の外端は、前記内側層のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向外側に位置しているのが望ましい。
【0015】
本発明の重荷重用空気入りタイヤにおいて、前記ビード部のビードヒール面には、凹部が設けられているのが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の重荷重用空気入りタイヤは、上記の構成を採用したことによって、優れたビード部の耐久性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態の重荷重用空気入りタイヤの断面図である。
図2図1のビード部の拡大図である。
図3図2のビードエーペックスゴムの拡大断面図である。
図4】本発明の他の実施形態のビードエーペックスゴムの拡大断面図である。
図5】本発明の他の実施形態のビードエーペックスゴムの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。なお、本明細書において説明されない技術事項には、公知のものを適用することが可能である。図1には、本実施形態の重荷重用空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1の正規状態におけるタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面図が示されている。なお、図1は、円環状に延びるタイヤ1をタイヤ周方向と直交する仮想平面で切断したときの、タイヤ赤道Cよりもタイヤ軸方向の一方側のタイヤ横断面を示す図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、大型トラックやバス等に用いられる。
【0019】
前記正規状態とは、各種の規格が定められたタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。タイヤ内部の部材の場合、その寸法等は、タイヤ断面の形状を前記正規状態における形状と実質的に同じとした状態における寸法を指す。なお、本明細書で説明された各構成は、ゴム成形品に含まれる通常の誤差を許容するものとする。
【0020】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0021】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0022】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、ビードコア5がそれぞれ埋設された一対のビード部4と、一対のビード部4の間をトロイド状に跨るカーカス6とを備えている。なお、図1において、トレッド部2の半分、一対のサイドウォール部3の一方、及び、一対のビード部4の一方は省略されている。
【0023】
カーカス6は、例えば、1枚のカーカスプライ6Aを含む。カーカス6は、例えば、複数のカーカスプライ6Aで構成されても良い。カーカスプライ6Aは、例えば、スチール製のカーカスコードがタイヤ周方向に対して70~90°の角度で配列されて構成される。
【0024】
カーカスプライ6Aは、本体部6aと折返し部6bとを備えている。本体部6aは、一対のビード部4の間を延びている。折返し部6bは、本体部6aに連なりかつビードコア5の周りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返されている。
【0025】
望ましい態様として、カーカス6の半径方向外側かつトレッド部2の内部には、ベルト層7が配される。ベルト層7は、例えば、スチール製のベルトコードを用いた複数のベルトプライから形成される。本実施形態のベルト層7は、例えば、第1~第4のベルトプライで形成された4枚構造である。
【0026】
図2には、ビード部4の拡大図が示されている。図2に示されるように、各ビード部4は、ビードエーペックスゴム8と、折返し部6bのタイヤ軸方向の外側に配された補強コード層9とを含む。ビードエーペックスゴム8は、本体部6aと折返し部6bとの間をビードコア5からタイヤ半径方向外側に延びている。補強コード層9は、折返し部6bのタイヤ軸方向の外側に配されている。
【0027】
ビードエーペックスゴム8は、例えば、タイヤ半径方向外側に向かって幅が小さくなっている三角形状である。また、ビードエーペックスゴム8は、第1ゴム部11と第2ゴム部12とを含む。第1ゴム部11は、ビードコア5から延びている。第2ゴム部12は、第1ゴム部11よりも小さいゴム硬さを有し、かつ、第1ゴム部11のタイヤ軸方向外側に配されている。
【0028】
本明細書において、ゴム硬さとは、JIS-K6253に基づきデュロメータータイプAにより、23℃の環境下で測定されたデュロメータA硬さである。第1ゴム部11のゴム硬さは、例えば、80~95°である。第2ゴム部12のゴム硬さは、例えば、50~70°である。但し、このような態様に限定されるものではない。
【0029】
補強コード層9は、補強コード層9のタイヤ半径方向の外端と内端との間に折返し部6bのタイヤ半径方向の外端13が位置するように配置されている。
【0030】
図3には、ビードエーペックスゴム8の拡大断面図が示されている。図3に示されるように、タイヤ横断面において、ビードエーペックスゴム8の第1ゴム部11及び第2ゴム部12は、カーカス法線15と交差するように配置されている。カーカス法線15は、折返し部6bの外端13を通って本体部6aと直交する仮想線である。
【0031】
本発明では、カーカス法線15上において、第2ゴム部12の厚さt2は第1ゴム部11の厚さt1以上である。本発明のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、優れたビード部4の耐久性を発揮することができる。その理由としては、以下のメカニズムが推察される。
【0032】
本発明では、補強コード層9(図2に示す)により、折返し部6bのタイヤ半径方向の外端13での損傷を抑制することができる。一方、折返し部6bの外側に補強コード層9を設けた構成では、走行時の歪がカーカスプライ6Aの折返し部6bとビードエーペックスゴム8との間に移行し、この部分が新たな損傷の起点になり易い。本発明では、相対的に小さいゴム硬さを有する第2ゴム部12の厚さを確保することにより、折返し部6bの外端13周辺での歪を吸収し、前記外端13周辺を起点とする損傷の発生を抑制できると考えられる。このようなメカニズムにより、本発明のタイヤは、優れたビード部4の耐久性を発揮できると考えられる。
【0033】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0034】
図2に示されるように、ビードベースラインBLからビードエーペックスゴム8のタイヤ半径方向の外端までのタイヤ半径方向の高さh2(以下、「ビードエーペックスゴム8の高さh2」という場合がある。)は、タイヤ全高さh1(図1に示す)の35%~45%である。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。なお、タイヤ全高さh1は、前記正規状態におけるビードベースラインBLからトレッド部2のタイヤ半径方向の外端までのタイヤ半径方向の距離に相当する。また、ビードベースラインBLは、タイヤが基づく規格で定まるリム径位置を通るタイヤ軸方向線である。
【0035】
ビードベースラインBLから折返し部6bの外端13までの折返し部6bの高さh3は、例えば、ビードエーペックスゴム8の高さh2の30%~60%である。これにより、タイヤ重量の過度な増加が抑制されつつ、ビード部4の剛性が確保される。
【0036】
本実施形態の第1ゴム部11は、ビードコア5からタイヤ半径方向外側に向かって幅が小さくなっており、三角形状である。第1ゴム部11のタイヤ半径方向内側の内側面は、例えば、ビードコア5のタイヤ半径方向外側の外面の全体と接触している。また、第1ゴム部11のタイヤ内腔面側の側面は、その全体が本体部6aと接触している。また、第1ゴム部11のタイヤ外面側の側面は、その一部(第1ゴム部11の根元部分)が折返し部6bと接触し、これよりもタイヤ半径方向外側において第2ゴム部12と接合している。
【0037】
ビードベースラインBLから第1ゴム部11のタイヤ半径方向の外端までの高さh4(以下、「第1ゴム部11の高さh4」という場合がある。)は、例えば、ビードエーペックスゴム8の高さh2の55%~75%である。
【0038】
図3に示されるように、第1ゴム部11のカーカス法線15上の厚さt1は、3.0~7.0mmであるのが望ましい。これにより、ビードエーペックスゴム8の倒れ込みが効果的に抑制される。
【0039】
第1ゴム部11のカーカス法線15上の厚さt1は、例えば、サイドウォール部3の最小幅t3(図1に示す)よりも小さいのが望ましい。第1ゴム部11のカーカス法線15上の厚さt1は、前記最小幅t3の20%~50%である。これにより、サイドウォール部3及びビード部4において局所的な変形が抑制され、これらの領域の耐久性が向上する。
【0040】
走行時において、ビードエーペックスゴム8は、局所的な変形を起こすことなく、全体的に撓むように変形するのが望ましい。このような変形が生じ易いように、第1ゴム部11の中間厚さt4は、第1ゴム部11のカーカス法線15上の厚さt1の1.5倍~3.0倍であるのが望ましい。前記中間厚さt4は、ビード中間法線16上における第1ゴム部11の厚さに相当する。ビード中間法線16は、カーカス法線15と平行に延び、かつ、カーカス法線15からタイヤ半径方向内側に第1ゴム部11の高さh4(図2に示す)の20%離れた仮想線である。これにより、第1ゴム部11の形状が適正化し、ビードエーペックスゴム8の局所的な変形が抑制され、ひいてはビード部4の耐久性が向上する。
【0041】
図2に示されるように、本実施形態では、第2ゴム部12のタイヤ内腔面側の側面は、第1ゴム部11及び本体部6aと接触している。また、第2ゴム部12のタイヤ外面側の側面の一部は、折返し部6bと接している。また、第2ゴム部12は、その最大幅部分からタイヤ半径方向の内外に向かって幅が小さくなっている。
【0042】
第2ゴム部12のタイヤ半径方向の内端から外端までのタイヤ半径方向の高さh5(以下、「第2ゴム部12の高さh5」という場合がある。)は、例えば、ビードエーペックスゴム8の高さh2の70%~90%である。
【0043】
図3に示されるように、第2ゴム部12のカーカス法線15上の厚さt2は、7.0~11.0mmであるのが望ましい。これにより、折返し部6bとビードエーペックスゴム8との間での損傷が効果的に抑制される。
【0044】
第2ゴム部12の厚さt2は、第1ゴム部11の厚さt1の望ましくは1.0~3.0倍が望ましく、より望ましくは1.5~2.5倍である。これにより、ビード部4の剛性が確保され、かつ、前記損傷が効果的に抑制される。したがって、ビード部4の耐久性がより一層向上する。
【0045】
第2ゴム部12の先端部厚さt5は、第2ゴム部12のカーカス法線15上の厚さt2の100%~150%であるのが望ましい。前記先端部厚さt5は、ビード先端部法線17上における第2ゴム部12の厚さに相当する。ビード先端部法線17は、補強コード層9(図2に示す)のタイヤ半径方向の外端を通ってカーカス法線15と平行に延びる仮想線である。先端部厚さt2が上述の通り特定されることにより、とりわけ折返し部6bの外端13と補強コード層9の外端との間におけるビードエーペックスゴム8の局所的な変形が抑制される。したがって、ビード部4の耐久性がより一層向上する。
【0046】
ビードエーペックスゴム8は、第1ゴム部11と第2ゴム部12とが接合された界面20を含む。タイヤ横断面において、界面20は湾曲している。本実施形態の界面20は、タイヤ軸方向内側に向かって凸となる向きに湾曲している。これにより、第1ゴム部11と第2ゴム部12との剥離が抑制される。但し、界面の形状はこのような態様に限定されず、その他の態様が後述される。
【0047】
図2に示されるように、補強コード層9は、複数の有機繊維コードが傾斜配列された有機繊維コードプライを含むのが望ましい。有機繊維コードとしては、例えば、ナイロンコード、ポリエステルコード、芳香族ポリアミドコード、又は、高張力ビニロンコード等が好適に用いられる。このような補強コード層9は、適度な柔軟性を有し、折返し部6bの外端13の周辺における損傷を効果的に抑制できる。
【0048】
補強コード層9は、最も折返し部6b側に配された内側層21と、内側層21のタイヤ軸方向外側に配された外側層22とを含む。本実施形態の補強コード層9は、内側層21及び外側層22の2層で構成されている。但し、このような態様に限定されるものではなく、補強コード層9は、1層のみで構成されても良いし、3層以上で構成されても良い。
【0049】
内側層21のタイヤ半径方向の内端21aは、ビードコア5のタイヤ半径方向外側の外面よりもタイヤ半径方向内側に位置している。より望ましい態様では、内側層21の前記内端21aは、ビードコア5をタイヤ内腔面に向かってタイヤ軸方向に平行に延長した領域と重複する。これにより、前記内端21a周辺を起点としたビード部4の損傷が抑制される。
【0050】
内側層21のタイヤ半径方向の外端21bは、折返し部6bの外端13よりもタイヤ半径方向外側に位置している。
【0051】
外側層22のタイヤ半径方向の内端22aは、内側層21のタイヤ半径方向の内端21aよりもタイヤ半径方向内側に位置している。より望ましい態様では、外側層22の前記内端22aは、ビードコア5をタイヤ半径方向内側に向かってタイヤ半径方向に平行に延長した領域と重複する。これにより、内端22a周辺を起点としたビード部4の損傷が抑制される。
【0052】
外側層22のタイヤ半径方向の外端22bは、内側層21のタイヤ半径方向の外端21bよりもタイヤ半径方向外側に位置しているのが望ましい。これにより、内側層21の剥離が抑制され、ビード部4の耐久性がより一層向上する。
【0053】
本実施形態のビード部4は、U字補強層25を含んでいる。U字補強層25は、カーカスプライ6Aの本体部6a及び折返し部6bに沿って延びる略U字状である。U字補強層25は、例えば、複数のスチールコードが配列されたスチールプライで構成されている。このようなU字補強層25は、ビード部4の曲げ剛性を高め、ひいてはビード部4の耐久性を向上させるのに役立つ。
【0054】
U字補強層25は、本体部6aに沿って延びる部分のタイヤ半径方向の第1外端25aと、折返し部6bに沿って延びる部分のタイヤ半径方向の第2外端25bとを含む。第1外端25aは、例えば、折返し部6bの外端13よりもタイヤ半径方向外側に位置している。また、第1外端25aは、補強コード層9の外側層22の外端22bよりもタイヤ半径方向内側に位置している。これにより、ビードエーペックスゴム8のタイヤ内腔面側とタイヤ外面側との補強の程度が適正となり、ビード部4の局所的な変形が抑制される。
【0055】
第2外端25bは、例えば、ビードコア5の外面よりもタイヤ半径方向外側に位置している。また、第2外端25bは、補強コード層9の内側層21の外端21b及び外側層22の外端22bよりもタイヤ半径方向内側に位置している。また、第2外端25bは、折返し部6bの外端13よりもタイヤ半径方向内側に位置している。これにより、ビード部4が適度に補強される。
【0056】
本実施形態のビード部4のビードヒール面27には、凹部28が設けられているのが望ましい。凹部28は、折返し部6bの外端13よりもタイヤ半径方向内側に位置している。このような凹部28は、折返し部6bをリムフランジとビードヒール面27と当接部分から遠ざけ、ビード部4の耐久性を向上させるのに役立つ。
【0057】
本実施形態のビード部4には、折返し部6bの外端13と補強コード層9との間の接着ゴム層23と、折返し部6bの外端13と第2ゴム部12との間の内側コード層24とを含んでいる。これにより、折返し部6bの外端13が、接着ゴム層23と内側コード層24とに挟まれている。これにより、折返し部6bの外端13を起点とした損傷がより一層抑制される。
【0058】
以下、本発明の他の実施形態が説明される。他の実施形態を示す図において、既に説明された要素には、上述のものと同じ符号が付されており、上述の構成を適用することができる。
【0059】
図4及び図5には、他の実施形態のビードエーペックスゴム8の拡大断面図が示されている。図4及び図5に示される実施形態において、第1ゴム部11と第2ゴム部12とが接合された界面20は、少なくとも1つの変曲点30を有するように湾曲している。変曲点30とは、タイヤ軸方向の一方側に凸の第1湾曲部31と、タイヤ軸方向の他方側に凸の第2湾曲部32との境界となる点である。これにより、第1ゴム部11と第2ゴム部12との剥離がさらに抑制される。
【0060】
図4に示されるビードエーペックスゴム8の界面20は、タイヤ軸方向の外側に凸の第1湾曲部31と、そのタイヤ半径方向内側に、タイヤ軸方向の内側に凸の第2湾曲部32とを含んでいる。このような界面20を有するビードエーペックスゴム8は、第2ゴム部12のゴムボリュームを大きく確保し、折返し部6bの外端13を起点とした損傷を抑制できる。
【0061】
図5に示されるビードエーペックスゴム8の界面20は、タイヤ軸方向の内側に凸の第1湾曲部31と、そのタイヤ半径方向内側に、タイヤ軸方向の外側に凸の第2湾曲部32とを含んでいる。このような界面20を有するビードエーペックスゴム8は、ビードコア5側において第1ゴム部11のゴムボリュームを大きく確保し、ビード部4の剛性を向上させる。
【0062】
以上、本発明の一実施形態の重荷重用空気入りタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例
【0063】
図1の基本構造を有するサイズ11R22.5の重荷重用空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、カーカス法線上において、第2ゴム部の厚さt2が前記第1ゴム部の厚さt1よりも小さい重荷重用空気入りタイヤが試作された。各テストタイヤは、上述の事項を除き、実質的に同じ構成を備えている。各テストタイヤのビード部の耐久性がテストされた。各テストタイヤの共通仕様及びテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:22.5×9.00
タイヤ内圧:1000kPa
【0064】
<ビード部の耐久性>
下記の条件でドラム試験機上で上記テストタイヤを走行させ、ビード部に損傷が発生するまでの走行距離が測定された。結果は、比較例を100とする指数であり、数値が大きい程、ビード部の耐久性が優れていることを示す。
テスト結果が表1に示される。
【0065】
【表1】
【0066】
テストの結果、実施例のタイヤは、優れたビード部の耐久性を発揮していることが確認できた。
【符号の説明】
【0067】
2 トレッド部
3 サイドウォール部
5 ビードコア
4 ビード部
6 カーカス
6A カーカスプライ
6a 本体部
6b 折返し部
8 ビードエーペックスゴム
9 補強コード層
11 第1ゴム部
12 第2ゴム部
15 カーカス法線
t1 カーカス法線上における第1ゴムの厚さ
t2 カーカス法線上における第2ゴムの厚さ
図1
図2
図3
図4
図5