(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/12 20060101AFI20240501BHJP
H01H 50/38 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
H01H50/12 G
H01H50/38 H
(21)【出願番号】P 2020069971
(22)【出願日】2020-04-08
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100206760
【氏名又は名称】黒川 惇
(72)【発明者】
【氏名】針持 裕之
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 亮太
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-053922(JP,A)
【文献】特開2012-195102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/12
H01H 50/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点と、外部機器に接続される外部接続部とを含む固定端子と、
前記固定接点に接触可能な可動接点を含む可動接触片と、
前記固定端子を支持する支持部材と、
前記支持部材と別体であり、前記固定接点と前記可動接点とが接触した状態において前記固定端子に接触し、前記固定接点から前記外部接続部までの間の前記固定端子における熱容量よりも熱容量が大きい吸熱部材と、
を備え、
前記吸熱部材は、セラミック、アルミニウム、ウレタンのうちのいずれかからなる、電磁継電器。
【請求項2】
固定接点と、外部機器に接続される外部接続部とを含む固定端子と、
前記固定接点に接触可能な可動接点を含む可動接触片と、
前記固定端子を支持する支持部材と、
前記支持部材と別体であり、前記固定接点と前記可動接点とが接触した状態において前記固定端子に接触し、前記固定接点から前記外部接続部までの間の前記固定端子における熱容量よりも熱容量が大きい吸熱部材と、
を備え、
前記吸熱部材は、前記固定接点と前記可動接点とが開離した状態のときに前記固定端子に接触しない、
電磁継電器。
【請求項3】
固定接点と、外部機器に接続される外部接続部とを含む固定端子と、
前記固定接点に接触可能な可動接点を含む可動接触片と、
前記固定端子を支持する支持部材と、
前記支持部材と別体であり、前記固定接点と前記可動接点とが接触した状態において前記固定端子に接触し、前記固定接点から前記外部接続部までの間の前記固定端子における熱容量よりも熱容量が大きい吸熱部材と、
を備え、
前記吸熱部材の少なくとも一部を覆う断熱部材をさらに備え、
前記断熱部材の熱伝導率は、前記吸熱部材の熱伝導率よりも小さい、
電磁継電器。
【請求項4】
前記吸熱部材の熱伝導率は、前記固定端子の熱伝導率よりも高い、
請求項2
又は3に記載の電磁継電器。
【請求項5】
前記固定接点及び前記可動接点が収容されるケースをさらに備え、
前記吸熱部材は、一部が前記ケースから外部に露出する、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電磁継電器は、ベースと、固定接点を含む固定端子と、可動接点を含む可動接触片と、可動接触片を移動させる可動機構と、電磁石ブロックとを備えている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電磁継電器は、急速充電などの装置に用いられることがある。この場合、通電時において接点間に短時間の間だけ大電流が流れることがあり、固定接点及び可動接点で発生した熱による可動接触片や固定端子の急激な温度上昇が問題になる。
【0005】
本発明の課題は、電磁継電器において、通電時における固定端子の温度上昇を遅らせることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電磁継電器は、固定端子と、可動接触片と、支持部材と、吸熱部材と、を備える。固定端子は、固定接点と、外部機器に接続される外部接続部とを含む。可動接触片は、固定接点に接触可能な可動接点を含む。支持部材は、固定端子を支持する。吸熱部材は、支持部材と別体であり、固定接点と可動接点とが接触した状態において固定端子に接触し、固定接点から外部接続部までの間の固定端子における熱容量よりも熱容量が大きい。
【0007】
この電磁継電器では、吸熱部材の熱容量が固定接点から外部接続部までの間の固定端子における熱容量よりも大きい。これにより、通電時に固定端子に接触する吸熱部材によって、通電時における固定端子の温度上昇を遅らせることができる。
【0008】
吸熱部材は、固定接点と可動接点とが開離した状態のときに前記固定端子から離れていてもよい。この場合は、吸熱部材を常に固定端子に接触させなくてもよいので、設計の自由度が高まる。
【0009】
吸熱部材の熱伝導率は、固定端子の熱伝導率よりも高くてもよい。この場合は、吸熱部材によって固定端子の発熱を迅速に吸熱できる。
【0010】
吸熱部材は、セラミック、アルミニウム、ウレタンのうちのいずれかからなってもよい。この場合は、吸熱部材のコストを抑制できる。
【0011】
電磁継電器は、固定接点及び可動接点が収容されるケースをさらに備えてもよい。吸熱部材は、一部がケースから外部に露出してもよい。この場合は、吸熱部材の熱を外部に放熱することができる。
【0012】
電磁継電器は、固定接点と可動接点の間に磁界を発生させる永久磁石をさらに備えてもよい。吸熱部材は、磁性材料からなってもよい。この場合は、吸熱部材が永久磁石の磁束漏れを抑制するヨークとして機能するので、電磁継電器の遮断性能を向上させることができる。
【0013】
吸熱部材は、固定端子と一体であってもよい。この場合は、固定端子の一部によって吸熱部材が構成されることになるので、部品点数の削減ができる。
【0014】
電磁継電器は、吸熱部材の少なくとも一部を覆う断熱部材をさらに備えてもよい。断熱部材の熱伝導率は、吸熱部材の熱伝導率よりも小さい。この場合は、吸熱部材の周辺に配置される部材が吸熱部材の熱の影響を受けにくくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電磁継電器において、通電時における固定端子の温度上昇を遅らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】電磁継電器の内部を前方から見た模式図である。
【
図5】変形例に係る電磁継電器の内部を上方から見た模式図である。
【
図6】変形例に係る電磁継電器の内部を上方から見た模式図である。
【
図7】変形例に係る電磁継電器の内部を上方から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一態様に係る電磁継電器の実施形態について、図面を参照して説明する。図面を参照するときにおいて、説明を分かり易くするために
図1における上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」、紙面の手前側を「前」、紙面の奥側を「後」として説明する。
図1は電磁継電器100の内部を前方から見た模式図である。
図2及び
図3は、電磁継電器100の内部を上方から見た模式図である。
【0018】
電磁継電器100は、いわゆるヒンジ型の電磁継電器である。電磁継電器100は、ケース2と、接点装置3と、駆動装置4とを備えている。ケース2は、樹脂などの絶縁性を有する材料で形成されている。ケース2は、ベース2aと、カバー2bとを含む。なお、ケース2は、支持部材の一例であるが、本実施形態ではケース2が支持部材を兼ねている。
【0019】
ベース2aは、接点装置3と駆動装置4とを支持する。カバー2bは、下方に向けて開口する箱型の部材であり、ベース2aを上方から覆うようにベース2aに固定されている。
【0020】
接点装置3は、ベース2aに支持されている。接点装置3は、ケース2に収容されている。接点装置3は、固定端子6と、固定端子7と、可動接触片10と、可動機構11と、を含む。固定端子6,7及び可動接触片10は、板状の端子であり、銅などの導電性を有する材料で形成されている。固定端子6,7及び可動接触片10は、上下方向に延びており、ベース2aに圧入固定されている。
【0021】
固定端子6は、一部がケース2内に配置される。固定端子6は、固定接点6aと、外部接続部6bとを含む。固定接点6aは、ケース2内に配置されている。外部接続部6bは、ケース2から外部に突出しており、図示しない外部機器と電気的に接続される。
【0022】
固定端子7は、固定端子6と同様の形状である。固定端子7は、一部がケース2内に配置される。固定端子7は、固定端子6と前後方向に間隔を隔てて配置されている。固定端子7は、固定接点7aと、図示しない外部接続部とを含む。固定接点7aは、ケース2内に配置されている。外部接続部は、ケース2から外部に突出しており、図示しない外部機器と電気的に接続される。
【0023】
可動接触片10は、弾性変形可能な板バネで構成されている。可動接触片10は、可動接点10aと、可動接点10bと、接点支持部10cと、脚部10dとを含む。可動接点10a,10bは、ケース2に収容されている。可動接点10a,10bは、接点支持部10cに配置されている。可動接点10aは、固定接点6aに接触可能である。可動接点10bは、固定接点7aに接触可能である。可動接点10bは、可動接点10aと前後方向に間隔を隔てて配置されている。接点支持部10cは、脚部10dの上端から前後方向に延びており、可動接点10a,10bを支持する。脚部10dは、前後方向における接点支持部10cの中央から下方に延びており、ベース2aに固定されている。
【0024】
可動機構11は、従来と同様の構成であり、図示しない可動鉄片や復帰バネを含む。可動機構11は、可動接触片10と駆動装置4とに接続されている。なお、説明を分かり易くするために、
図2及び
図3では、可動機構11を2点鎖線で簡略化して示し、
図1では、可動機構11の図示を省略している。
【0025】
可動機構11は、可動接点10a,10bが固定接点6a,7aに接触する接触方向Z1と開離する開離方向Z2とに可動接触片10を移動させる。詳細には、可動機構11は、
図2に示す可動接点10a,10bが固定接点6a,7aから開離する開離位置と、
図3に示す可動接点10a,10bが固定接点6a,7aに接触する接触位置とに可動接触片10を移動させる。本実施形態における可動接触片10の移動方向は、左右方向と一致する。
【0026】
駆動装置4は、電磁力によって可動機構11を作動させる。可動機構11は、電磁力によって可動鉄片を回動させることによって、可動接触片10を接触位置と開離位置とに移動させる。
【0027】
駆動装置4は、従来と同様の構成であり、スプール、コイル、鉄心、ヨークなどを含む。駆動装置4は、ベース2aに支持されている。コイルに電圧が印加されて励磁されたときの電磁継電器100の動作については、従来と同様のため説明を省略する。
【0028】
電磁継電器100は、吸熱部材21,22をさらに備えている。吸熱部材21,22は、通電時における固定端子6,7の温度上昇を遅延させるために設けられている。吸熱部材21,22は、ケース2と別体である。吸熱部材21,22は、ベース2aに支持されている。吸熱部材21,22は、セラミック、アルミニウム、ウレタンのうちのいずれかからなる。
【0029】
吸熱部材21は、可動接点10a,10bと固定接点6a,7aとが接触した状態において固定端子6に接触している。本実施形態における吸熱部材21は、可動接点10a,10bと固定接点6a,7aとが開離した状態においても、固定端子6に接触している。吸熱部材21は、固定端子6の接触方向Z1側の表面に接触して配置されている。吸熱部材21は、左右方向において、固定接点6aと重なることが好ましい。
【0030】
吸熱部材21の熱容量は、固定端子6における固定接点6aから外部接続部6bまでの間の熱容量よりも大きい。
図4は、固定端子6の斜視図であり、固定接点6aから外部接続部6bまでの間の範囲を例示した図である。固定接点6aから外部接続部6bまでの間とは、例えば
図4に示すように、固定端子6の幅方向に平行かつ固定接点6aの中心を通る2点鎖線よりも下部の領域R1である。領域R1は、通電時に電流が流れる部分である。すなわち、領域R1は、固定端子6において通電に寄与する部分であり、通電機能に必要な形状部分である。一方、2点鎖線よりも上部の領域R2は、通電機能に寄与しない形状部分である。したがって、固定端子6における固定接点6aから外部接続部6bまでの間の熱容量とは、固定端子6における領域R1の熱容量である。熱容量は、重量と比熱との積、或いは体積と比重と比熱との積によって算出される。
【0031】
吸熱部材21は
図1に示すように、一部がケース2から外部に露出する。本実施形態では、吸熱部材21の一部がベース2aから露出している。例えば、ベース2aの下部には、吸熱部材21の一部を露出させるための開口2cが設けられている。
【0032】
吸熱部材22は、可動接点10a,10bと固定接点6a,7aとが接触した状態において固定端子7に接触している。吸熱部材22は、吸熱部材21と配置が異なることを除いて吸熱部材21と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0033】
上記構成の電磁継電器100では、吸熱部材21の熱容量が固定接点6aから外部接続部6bまでの間の固定端子6における熱容量よりも大きい。これにより、通電時に固定端子6に接触する吸熱部材21によって、通電時における固定端子6の温度上昇を遅らせることができる。同様に、吸熱部材22によって通電時における固定端子7の温度上昇を遅らせることができる。また、吸熱部材21の一部がケース2から外部に露出しているので、吸熱部材21の熱を外部に放熱することができる。
【0034】
以上、本発明の一態様に係る電磁継電器の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、駆動装置4の構成が変更されてもよい。ケース2、接点装置3、可動機構11及び吸熱部材21,22の形状、或いは配置が変更されてもよい。
【0035】
前記実施形態では、電磁継電器100が複数の固定端子6,7を備えていたが、1つの固定端子を備える電磁継電器に本発明を適用してもよい。また、前記実施形態では、可動機構11によって可動接触片10を駆動装置4側に引き込む構成であったが、固定端子6,7と可動接触片10の配置を入れ替えて、可動機構11によって可動接触片10を駆動装置4から離れる方向に押し込む構成であってもよい。
【0036】
吸熱部材21及び吸熱部材22の一方が省略されてもよい。吸熱部材21,22は、必ずしもケース2から外部に露出していなくてもよい。吸熱部材21,22は、他の部材に支持されてもよい。例えば、固定端子6,7に支持されていてもよい。吸熱部材21,22の熱伝導率は、固定端子6,7の熱伝導率よりも高くてもよい。すなわち、吸熱部材21,22は、固定端子6,7よりも熱伝導率が高い材料で形成されていてもよい。
【0037】
固定接点6aは、固定端子6と一体であってもよいし、別体であってもよい。固定接点7aは、固定端子7と一体であってもよいし、別体であってもよい。可動接点10a,10bは、可動接触片8と一体であってもよいし、別体であってもよい。なお、固定接点6aが固定端子6にカシメ固定される場合において、固定接点6aの裏面側を吸熱部材21に接触させてもよい。同様に固定接点7aが固定端子7にカシメ固定される場合において、固定接点7aの裏面側を吸熱部材22に接触させてもよい。
【0038】
図5は、第1変形例に係る電磁継電器100の内部を上方から見た模式図である。
図5に示すように、吸熱部材21,22は、可動接点10a,10bと固定接点6a,7aとが開離した状態のときに固定端子6,7から離れていてもよい。すなわち、可動接触片10が開離位置にあるときに、吸熱部材21,22は、固定端子6,7に接触しない位置に配置されている。ここでは、吸熱部材21,22は、固定端子6,7と前後方向に間隔を隔てて配置されている。この場合、固定端子6,7は、例えば、弾性変形可能な板バネで構成されており、可動接触片10に接触方向Z1に押圧されて、通電時に吸熱部材21,22に接触する。
【0039】
図6は、第2変形例に係る電磁継電器100の内部を上方から見た模式図である。
図6に示すように、電磁継電器100は、断熱部材31,32をさらに備えてもよい。断熱部材31,32を設けることで、駆動装置4や吸熱部材21,22の周辺に配置される部材が吸熱部材21,22の熱の影響を受けにくくなる。断熱部材31,32の熱伝導率は、吸熱部材21,22の熱伝導率よりも小さい。すなわち、断熱部材31,32は、吸熱部材21,22よりも熱伝導率が小さい材料で形成されている。断熱部材31は、固定端子6を接触方向Z1側から覆うように配置されている。断熱部材32は、固定端子7を接触方向Z1側から覆うように配置されている。
【0040】
図7は、第3変形例に係る電磁継電器100の内部を上方から見た模式図である。
図7に示すように、電磁継電器100は、永久磁石25a,25bをさらに備えてもよい。この場合において、吸熱部材21,22を鉄などの磁性材料で形成して、吸熱部材21,22を永久磁石25a,25bの磁束漏れを抑制するヨークとして機能させてもよい。永久磁石25a,25bは、例えば、ケース2に支持されている。吸熱部材21,22をヨークとして機能させることで、電磁継電器100の遮断性能を向上させることができる。なお、永久磁石25a,25bの配置は特に限定されない。また、永久磁石は、1つであってもよい。
【0041】
図8は、吸熱部材21の変形例を示す図である。前記実施形態では、吸熱部材21が固定端子6と別体であったが、吸熱部材21は、固定端子6と一体であってもよい。この場合、吸熱部材21は、銅などの固定端子6と同じ材料で形成されることになる。すなわち、ここでは領域R2の部分が吸熱部材21として機能する。したがって、この場合における固定端子6は、領域R1の重量よりも領域R2の重量が大きくなるように構成される。なお、領域R2の形状は、特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、電磁継電器において、通電時における固定端子の温度上昇を遅らせることができる。
【符号の説明】
【0043】
2 ケース
4 駆動装置
6 固定端子
6a 固定接点
10 可動接触片
10a 可動接点
11 可動機構
21 吸熱部材
25a 永久磁石
100 電磁継電器