(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 3/033 20120101AFI20240501BHJP
D01D 5/098 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
D04H3/033
D01D5/098
(21)【出願番号】P 2020070932
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神野 文夫
(72)【発明者】
【氏名】徐 暁師
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特公昭64-06305(JP,B2)
【文献】特開昭50-136411(JP,A)
【文献】特開昭51-007270(JP,A)
【文献】特開2001-207368(JP,A)
【文献】特開平08-226063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00 - 13/02
D04H 1/00 - 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布の製造方法であって、
溶融した熱可塑性樹脂をフィラメントから構成されるフィラメント集合体として押し出す紡糸工程と、
冷却エアーを前記フィラメント集合体に送風し冷却する冷却工程と、
前記フィラメント集合体をイジェクター内のスリットから、矩形形状の断面を有する貫通路へと噴射する高圧エアーにより延伸する延伸工程と、
を備え、
前記延伸工程において、
前記貫通路内には、垂直方向からみて、前記貫通路の長辺の内壁に複数配置されるとともに、垂直方向に延在する整流子が設けられており、
垂直方向からみた、前記貫通路の長辺方向における、前記貫通路の幅をW、前記整流子の平均中心間隔をw1とし、前記貫通路の短辺方向における、前記貫通路の奥行をD、前記整流子の奥行をd1とし、前記整流子の総断面積をAとしたときに、
a) 0.3≦d1/D≦0.75、
b) 20≦W/w1≦50、
c) 0.01≦A/(D×W)≦0.2、
となることを特徴とする不織布の製造方法。
【請求項2】
前記貫通路内における前記整流子は、前記貫通路と比べ、垂直方向の長さが短いことを特徴とする請求項1に記載の不織布の製造方法。
【請求項3】
前記整流子は、垂直方向からみて、前記貫通路の一対の長辺の少なくとも一方の内壁に、等間隔に設けられていることを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の不織布の製造方法。
【請求項4】
前記整流子は、垂直方向からみて、前記貫通路の一対の長辺の内壁に、千鳥状に配列されていることを特徴とする請求項3に記載の不織布の製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の不織布の製造方法。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂、またはポリプロピレンーエチレン共重合体を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメント集合体を空気力学的に延伸させる延伸工程を備える不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布の製造方法において、フィラメントから不織布を形成するものがある。例えば、その製造方法の一つであるスパンボンド製法においては、紡糸工程により、紡糸口金の多数の紡糸孔から熱可塑性樹脂を溶融紡糸して、フィラメントの束であるフィラメント集合体を形成する。このフィラメント集合体は、冷却工程により、制御された一様流である冷却エアーが水平方向から送風され、所望の硬さに冷却された後に、延伸工程により、垂直方向に引っ張られる。その後、搬送工程により、直接捕集ベルト上に堆積するフィラメント集合体が搬送されるとともに、絡合工程により、フィラメント集合体同士を絡合させ不織布を形成している。
【0003】
ここで、延伸工程としては、空気力学的にフィラメント集合体を垂直方向に牽引するイジェクターが広く採用されている。このイジェクターは、フィラメント集合体を細繊化するために、極めて狭いスリットから比較的高圧の駆動流体を一様に噴射させて、フィラメント集合体の牽引速度を大きくするものである。
【0004】
また、近年、不織布における肌触りを向上させること、つまり、地合の均一性を向上させることが要望されている。これに対して、特許文献1には、イジェクターの吐出口のみに設けた一対の吐出口幅規定部材を微少変形させることにより、フィラメント集合体の引っ掛かりを抑制するとともに、フィラメント集合体の偏りを調整し、地合の均一性を向上させるものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このイジェクターにおいて、フィラメント集合体を牽引する駆動流体は、スリットから噴射された直後においては、それほど大規模な乱流とはなっていない。しかしながら、本発明者らは、噴射された高圧エアーが、内部通路を下流側へと移動するにつれて、非定常的でかつ大規模な渦を伴う乱流へと遷移することを見出した。よって、特許文献1においても同様に、駆動流体は、非定常的でかつ大規模な渦を伴う乱流へと遷移するため、イジェクターの吐出口の幅のみを微少変形させても、フィラメント集合体の偏りが生じてしまうという問題点を有していた。以下、この問題点を「乱流によるフィラメント集合体の偏り」という。
【0007】
本発明の目的は、フィラメント集合体の引っ掛かりを抑制するとともに、フィラメント集合体の偏りを抑制する不織布の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、不織布の製造方法は、溶融した熱可塑性樹脂をフィラメントから構成されるフィラメント集合体として押し出す紡糸工程と、冷却エアーを前記フィラメント集合体に送風し冷却する冷却工程と、前記フィラメント集合体をイジェクター内のスリットから、矩形形状の断面を有する貫通路へと噴射する高圧エアーにより延伸する延伸工程と、を備え、前記延伸工程において、前記貫通路内には、垂直方向からみて、前記貫通路の長辺の内壁に複数配置されるとともに、垂直方向に延在する整流子が設けられており、垂直方向からみた、前記貫通路の長辺方向における、前記貫通路の幅をW、前記整流子の平均中心間隔をw1とし、前記貫通路の短辺方向における、前記貫通路の奥行をD、前記整流子の奥行をd1とし、前記整流子の総断面積をAとしたときに、a) 0.3≦d1/D≦0.75、b) 20≦W/w1≦50、c) 0.01≦A/(D×W)≦0.2、となるものである。
【0009】
また、上記不織布の製造方法は、前記貫通路内における前記整流子は、前記貫通路と比べ、垂直方向の長さが短いものとしてもよい。
【0010】
また、上記不織布の製造方法は、前記整流子は、垂直方向からみて、前記貫通路の一対の長辺の少なくとも一方の内壁に、等間隔に設けられているものとしてもよい。
【0011】
また、上記不織布の製造方法は、前記整流子は、垂直方向からみて、前記貫通路の一対の長辺の内壁に、千鳥状に配列されているものとしてもよい。
【0012】
また、上記不織布の製造方法は、前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂であるものとしてもよい。
【0013】
また、上記不織布の製造方法は、前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂、またはポリプロピレンーエチレン共重合体を含むものとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フィラメント集合体の引っ掛かりを抑制するとともに、フィラメント集合体の偏りを抑制する不織布の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスパンボンド不織布製造装置の概略図である。
【
図2】
図1に示されるイジェクターの詳細を説明する斜視図である。
【
図3】
図2のIII-III断面線で切断した断面図である。
【
図4】
図2の矢印D方向から撮影した画像情報を示す図である。(a)、(b)、(c)が付記された図は、それぞれ、整流子なしの状態、整流子ありの状態、整流子を最適化させた状態、をそれぞれ表す。また、(1)、(2)が付記された図は、
図2の矢印G方向から高速度カメラにより撮像領域を撮影した時間経過の一部を示す撮像画像、撮影時間に対する平均輝度値を示す図、をそれぞれ表す。
【
図5】
図3に対応するその他の整流子の様態を説明する断面図であり、(a)半円形状、(b)三角形状、(c)矩形形状、(d)平板形状、をそれぞれ表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、
図1から
図5を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は本実施形態の態様に限定されるものではない。
【0017】
<不織布製造装置>
本実施形態による複数のフィラメントの束(以下、「フィラメント集合体」という)3,4及びこれを含む不織布5は、特別な装置を用いることなく、通常の複合溶融紡糸法による不織布製造装置により得ることができる。中でも、生産性に優れるスパンボンド法による不織布製造装置が好ましく用いられる。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るスパンボンド不織布製造装置(以下、「不織布製造装置」という)100における概略図を、限定目的ではなく例示目的で示す。図中の白抜きの矢印A、矢印B、矢印C及び矢印Dは、フィラメント集合体3の紡出方向、フィラメント集合体3の延伸方向、捕集ベルト51の搬送方向(以下、「MD方向」ともいう)及び捕集ベルト51の周回方向をそれぞれ表している。また、図中のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、搬送方向C(MD方向)、捕集ベルト51におけるMD方向と直交する方向(以下、「CD方向」ともいう)、及び、X軸方向及びY軸方向と直交する垂直方向を示すものである。
【0019】
不織布製造装置100は、第1及び第2の押出機11,12(紡糸工程)と、紡糸口金(紡糸工程)20と、冷却用送風機(冷却工程)30と、イジェクター(延伸工程)40と、捕集コンベア50と、熱エンボスロール60と、ワインダー70と、から構成される。以下、それらの概要を順に説明する。
【0020】
第1の押出機11は、第1の原料樹脂1を溶融しながら、螺旋状の第1のローター13の回転により、所定流量の溶融物を紡糸口金20へと送液する。同様に、第2の押出機12は、第2の原料樹脂2を溶融しながら、螺旋状の第2のローター14の回転により、所定流量の溶融物を紡糸口金20へと送液する。
【0021】
(第1の原料樹脂)
第1の原料樹脂1は、熱可塑性樹脂を主成分とする。すなわち、第1の原料樹脂1は、第1の原料樹脂1の全固形分を基準にして90質量%以上100質量%以下の量で熱可塑性樹脂を含むことができる。第1の原料樹脂1に適用可能な熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレンーエチレン共重合体等のポリオレフィン系の樹脂が化学的に安定していて安全性が高いため、衛生材の用途として好ましく使用される。複合繊維からなるフィラメントの紡糸性等の観点から、熱可塑性樹脂には、ポリプロピレン(PP)がより好ましく使用される。
【0022】
(第2の原料樹脂)
第2の原料樹脂2は、熱可塑性樹脂を主成分とする。詳細には、第2の原料樹脂2は、第2の原料樹脂2の全固形分を基準にして90質量%以上100質量%以下の量で熱可塑性樹脂を含む。
【0023】
第2の原料樹脂2の主成分に適用可能な熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレンーエチレン共重合体等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類を使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。複合繊維からなるフィラメントの触り心地などの風合いの観点から、熱可塑性樹脂には、ポリエチレン(PE)を好ましく使用することができる。
【0024】
(添加物)
複合繊維からなるフィラメントは、第1の原料樹脂1及び第2の原料樹脂2のそれぞれにおいて、熱可塑性樹脂に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて添加物を含有していてもよい。安全性を確保しつつ必要な機能を発揮させるために、添加物は第1の原料樹脂1及び第2の原料樹脂2を合わせた全固形分を基準にして1質量%以下とすることが好ましい。
【0025】
添加物の原料としては、例えば、公知の耐熱安定剤及び耐候安定剤などの各種の安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス等が挙げられる。
【0026】
安定剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)等の老化防止剤;テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、2,2’-オキザミドビス[エチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、1,2-ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩;グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート等の多価アルコール脂肪酸エステルなどを挙げることができる。また、これらを組み合わせて用いることもできる。
【0027】
滑剤としては、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0028】
また、シリカ、ケイ藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデン等の充填剤を含有していてもよい。
【0029】
紡糸口金20は、所望の繊維構造を形成して吐出するように構成された複数の複合紡糸ノズル(不図示)を有する。このノズルより、第1の押出機11及び第2の押出機12からのそれぞれ溶融物が複合した複合繊維からなるフィラメント集合体3を重力方向に紡出する。
【0030】
冷却用送風機30は、一対の冷却用送風機30L,30Rからなるオープン型であり、紡出されたフィラメント集合体3に対し、紡出方向Aと直交する方向であるX軸方向から冷却エアー31を送風し、フィラメント集合体3を冷却する。また、フィラメント集合体3から排気される高温の分離ガス32は、紡出方向Aに沿わず、冷却用送風機30の上方へと排気されることから、フィラメント集合体3を効率的に冷却することができる。
【0031】
イジェクター(延伸工程)40は、オープン型であり、ボディー42(
図2参照)と、複数の整流子45(
図2参照)と、を備える。このボディー42は、吸引口42aと、吐出口42bと、吸引口42a及び吐出口42bを連通させる貫通路42cと、を有し、整流子45は、貫通路42c内に、垂直方向に延在するように複数配置される。このイジェクター40は、ボディー42内において、駆動流体であるイジェクター用高圧エアーFを延伸方向Bの成分をもたせて噴射させることにより、ボディー42内に低圧部を生成させる。この生成された低圧部により、フィラメント集合体3は、吸引口42aからボディー42の内部に吸引され、圧力回復された駆動流体である吐出エアーEとともに、吐出口42bから外部に吐出される。詳細は後述するが、この貫通路42c内に配置される複数の整流子45が、噴射されたイジェクター用高圧エアーFを整流するため、フィラメント集合体3に生じる揺れや偏りを抑制することができる。
【0032】
捕集コンベア50は、捕集ベルト51と、捕集ベルト51の逆台形型の周回軌道の頂点に掛け回される第1乃至第4のロール55~58と、上側周回軌道における捕集ベルト51の下方に対向配置される吸引ボックス59と、を備える。この捕集ベルト51は、第1乃至第4のロール55~58の少なくとも一つの駆動回転に伴い、時計回りに周回軌道を周回方向Dに移動する。イジェクター40により延伸されたフィラメント集合体3は、直接、捕集コンベア50の捕集ベルト51上に所定の厚さに堆積されるとともに、搬送方向Cにある熱エンボスロール60へと搬送される。
【0033】
熱エンボスロール60は、所定温度に加熱された凹凸の円筒面と、平らな円筒面とを有する一対の円筒ロールを備える。一対の円筒ロールは、堆積されたフィラメント集合体4を圧搾し、圧力と熱によりフィラメント集合体4の一部を絡合させ、不織布5を形成する。この交絡処理は、熱エンボス法ともいわれ、この方法により得られる不織布5は、表面にエンボスのパターンが現れる。
【0034】
本実施形態による不織布5には、熱エンボス法の他、繊維の交絡処理の方法として、ニードルパンチ、ウォータージェット、超音波等の手段を用いる方法、またはホットエアースルーにより熱融着させる方法を採用することができる。ニードルパンチ手段は、ニードルをフィラメント集合体4に差し込んで絡合させる方法である。ウォータージェット手段は、高圧の水をフィラメント集合体4に噴射して、絡合させる方法である。超音波手段は、超音波を利用して、一部のフィラメントを溶かして、絡合させる方法である。ホットエアースルーは、ホットエアーをフィラメント集合体4に吹き出して、一部のフィラメントを溶かして絡合させる方法である。
【0035】
(不織布)
本実施形態による不織布5は、フィラメント集合体4からなり、1つの層からなる単層構成を有していてもよく、また、複数の層からなる多層構成を有していてもよい。
【0036】
ワインダー70は、連続する不織布5に皺の発生させることなく、所定の巻き硬さで巻き取る。
【0037】
<イジェクターの詳細について>
図2は、
図1に示されるイジェクターの詳細を説明する斜視図である。
【0038】
イジェクター40は、吸引口42aと、吐出口42bと、吸引口42a及び吐出口42bを連通させる貫通路42cと、を有するボディー42を備える。ここで、吸引口42a、吐出口42b及び貫通路42cは、それぞれ、垂直方向に開口又は貫通し、Y軸方向に長辺及びX軸方向に短辺を有する矩形形状又は矩形形状の断面を有する。このイジェクター40は、ボディー42内において、駆動流体であるイジェクター用高圧エアーFを延伸方向Bの成分をもたせて噴射させることにより、内に低圧部を生成させる。この生成された低圧部により、フィラメント集合体3は、吸引口42aからボディー42の内部に吸引され、圧力回復された駆動流体である吐出エアーEとともに、吐出口42bから外部に吐出される。
【0039】
駆動流体は、貫通路42c内の長辺方向(Y軸方向)に延在するととともに、垂直方向(Z軸方向)に極めて狭い間隙を有する一対のスリット42d(
図2中には片側のみ図示)からイジェクター用高圧エアーFを一様に噴射させていることから、牽引速度は極めて大きくなっている。ここで、本発明者らは、駆動流体が、一対のスリット42dから噴射された直後においては、それほど大規模な乱流とはなっていないが、貫通路42cを下流側へと移動するにつれて、非定常的でかつ大規模な渦を伴う乱流へと遷移していることを見出した。さらに、本発明者らは、貫通路42cを下方に向けて移動する駆動流体は、短辺方向(X軸方向)と比べ長辺方向(Y軸方向)への自由度が大きいため、乱流の影響は、特に、長辺方向(Y軸方向)へと大きく表れることを見出した。具体的には、この乱流により、駆動流体により牽引されるフィラメント集合体3には、常に、長辺方向へと大きな揺れが生じており、捕集ベルト51上に堆積されるフィラメント集合体4、つまり、不織布5にはCD方向(Y軸方向)への偏りが生じていた。そこで、本実施形態におけるイジェクター40は、この乱流による影響を抑制するために、貫通路42c内に、長辺方向に複数配置されるとともに、吸引口42aから垂直方向に長さl1に延在する整流子45を備えるものである。
【0040】
(整流子及び通過領域について)
図3を用いて、整流子45及び通過領域PAを説明する。まず、整流子45は、延伸方向B(垂直方向)からみて、円形状の断面を有するものとする。図中において、貫通路42cの長辺方向における、貫通路42cの幅をWとし、整流子45の平均中心間隔をw1とする。また、図中において、貫通路42cの短辺方向における、貫通路42cの奥行をDとし、整流子45の奥行をd1とする。さらに、図中において、整流子45の総断面積、つまり、各整流子45の断面積A1の合計をAとする。次に、通過領域PA(
図3中のドット領域参照)は、延伸方向B(垂直方向)からみた貫通路42cにおいて、整流子45が設けられていない領域、つまり、駆動流体及びフィラメント集合体3が通過する領域として定義される。
【0041】
(整流子について)
複数の整流子45は、
図2に示されるように、複数の整流子45は、全体として逆L字形状を有し、吸引口42aが設けられるボディー42の上端面に支持されるとともに、貫通路42cに垂下された状態で、一方の長辺の内壁に固定状態又は非固定状態で配置されている。本実施形態における複数の整流子45は、全体として直線形状を有し、長辺方向に沿って、整流子45の平均中心間隔w1を有し、貫通路42cに垂下された状態で、一方の長辺の内壁に固定状態で配置されていても良い。また、本実施形態における整流子45は、駆動流体により励振等を生じさせないために、剛性を高くすることが好ましい。さらに、本実施形態の貫通路42c内における複数の整流子45の垂直方向の長さl1は、貫通路42cの垂直方向の長さLと比べ、短く設定されている。つまり、複数の整流子45の下端は、貫通路42c内に配置されている。ここで、吐出口42bからフィラメント集合体3とともに、外部に吐出された吐出エアーEは、急激な圧力回復により、流路面積が拡大するため、フィラメント集合体3は、短辺方向(X軸方向)及び長辺方向に拡散される。したがって、複数の整流子45の下端を、貫通路42c内に配置することにより、フィラメント集合体3が整流子45の下端部に引っ掛かることを抑制することができる。なお、本実施形態における貫通路42cの垂直方向の長さLに対する整流子45の垂直方向の長さl1の割合l1/Lは、0.5以上、かつ、0.95以下とすることが好ましい。
【0042】
(通過領域について)
通過領域PAは、複数の整流子45により、長辺方向に区分される複数の区分領域PA1と、この複数の区分領域PA1が、垂直方向からみて閉じた領域とならないように、複数の区分領域PA1を長辺方向に互いに連通させる連通領域PA2と、から構成されている。つまり、複数の区分領域PA1及び連通領域PA2は、互いに連通し、長辺方向に連通する一つの領域を構成している。ここで、複数の区分領域PA1は、主に、駆動流体を整流する整流領域として機能する一方、連通領域PA2は、主に、複数の区分領域PA1内において生じた駆動流体の揺れを吸収する緩衝領域として機能する。
【0043】
(複数の区分領域について)
複数の区分領域PA1は、整流領域として機能している。具体的には、複数の区分領域PA1において、整流子45が、駆動流体における長辺方向への揺れを物理的に規制するため、駆動流体が整流され、駆動流体における乱流の遷移を大規模ではなく小規模なものに留めることができる。これにより、駆動流体により牽引されるフィラメント集合体3の揺れや、この揺れに起因して生じるフィラメント集合体3の偏りを効果的に抑制することができる。
【0044】
(連通領域について)
連通領域PA2は、緩衝領域として機能している。具体的には、連通領域PA2は、各区分領域PA1と比べ大きな面積を有しているため、区分領域PA1内における駆動流体の揺れが大きくなった場合などには、連通領域PA2において、この駆動流体の揺れをバッファーのように吸収することができる。これにより、フィラメント集合体3が大きく揺れて、整流子45の上端部に引っ掛かることを抑制することができる。
【0045】
本実施形態における複数の整流子45の配置は、通過領域PAが、長辺方向に区分される複数の区分領域PA1と、複数の区分領域PA1を長辺方向に互いに連通させる連通領域PA2と、から構成されるものであればよいため、以下に示すものも包含される。本実施形態における複数の整流子45の配置は、長辺方向に沿って、整流子45の平均中心間隔w1を有するものであるが、これに限らず、例えば、同一の整流子45の中心間隔を有するものであっても良い。また、本実施形態における複数の整流子45の配置は、一方(片側)の長辺の内壁に設けられる片側配列であるが、これに限らず、例えば、一対(両側)の長辺の内壁に千鳥状に設けられる千鳥状の両側配列であっても良い。さらに、本実施形態における複数の整流子45は、長辺の内壁と別体に設けられるものであるが、これに限らず、例えば、長辺の内壁に凹凸などを形成して一体的に設けられても良い。
【0046】
<整流子の整流効果について>
図4を用いて、整流子45の整流効果について説明する。図中の(a)は、貫通路42c内に整流子45を配置しない状態(以下、「整流子なしの状態」という)を表す。図中の(b)は、貫通路42c内に整流子45を配置した状態(以下、「整流子ありの状態」という)(
図3参照)を表す。図中の(c)は、貫通路42c内における整流子45を最適化させた状態(表1中の実施例1乃至7参照)(以下、「整流子を最適化させた状態」という)を表す。また、図中の(1)は、
図2の矢印G方向から高速度カメラにより固定撮像領域(Y軸)を撮影した時間経過(t軸)の一部を示す撮像画像である。このY軸方向に幅を有し、時間軸方向に延在した複数の白い筋が、フィラメント集合体3の揺れを示す。さらに、図中の(2)は、撮影時間に対する平均輝度値を示す図であり、Y軸方向に隣接するピークの間隔Pp1,Pp2,Pp3が、フィラメント集合体3の揺れ幅(偏りの幅)を示す。このフィラメント集合体3の揺れ幅(偏りの幅)Pp1,Pp2,Pp3の算出は、撮像条件により、明確な輝度分布を有する撮像領域(Y軸)の中心付近に対して行った。なお、高速度カメラにおける撮像条件は、フレームレートを30000(fps)とし、撮像時間tを1833(msec)とした。
【0047】
(時間経過を示す撮像画像及び平均輝度値について)
各時間経過を示す撮像画像及び平均輝度値が示すように、複数の白い筋のY軸方向の幅、つまり、フィラメント集合体3の揺れが、(a)整流子なしの状態、(b)整流子ありの状態、(c)整流子を最適化させた状態の順で狭くなっていることが分かる。具体的なフィラメント集合体3の揺れ幅は、(a)整流子なしの状態において、Pp1=43.5(mm)、(b)整流子ありの状態において、Pp2=22.5(mm)、(c)整流子を最適化させた状態において、Pp3=12.9(mm)となっている。この結果は、貫通路42c内に複数の整流子45を配置することにより、噴射されたイジェクター用高圧エアーFが整流され、フィラメント集合体3に生じる揺れを抑制するという効果を奏することを示している。また、詳細は後述するが、貫通路42c内における整流子45を最適化(表1中の実施例1乃至7参照)させることにより、フィラメント集合体3に生じる揺れをさらに抑制するという効果を奏することができる。つまり、前述した特許文献1における問題点(乱流によるフィラメント集合体の偏り)を解消することができる。
【0048】
<その他の整流子の様態について>
図5を用いて、本実施形態におけるその他の整流子の様態について説明する。
図3においては、整流子45は、円形状の断面を有するものであったが、これに限らない。例えば、半円形状の整流子45a、三角形状の整流子45b、矩形形状の整流子45c、平板形状の整流子45dであっても良いし、これらの組み合わせでも良い。
【0049】
<整流子の比較評価について>
本発明の実施例1乃至実施例7の各実施例に係る整流子45において、物性に係る8個のパラメータについて、比較例1乃至6に対する比較評価を行った。この比較評価について、以下の表1に示す。ここで、比較評価における共通する条件として、フィラメント集合体3の材質は、ポリプロピレン樹脂とした。また、複数の整流子45は、
図3に示すように、それぞれ円形状の断面を有し、貫通路42cの一方(片側)の長辺の内壁に固定された片側配列として配置され、垂直方向の長さl1を、500(mm)としている。さらに、貫通路42cは、幅Wを、600(mm)とし、貫通路42cの奥行Dを、5(mm)とし、垂直方向の長さLを、580(mm)とした。加えて、イジェクター40のスリット42dから駆動流体として噴射されるY軸方向の単位長さ当たりの風量を、1583(Nm
3/h/m)とした。
【0050】
【0051】
<糸切れ難さの評価について>
フィラメントに糸切れが生じると、不織布5中に塊状のフィラメントとして出現する。よって、糸切れ難さの評価は、欠陥検出器(COGNEX社製のSmartView自動欠陥検査システム)を用いて、不織布5の面積120000m2当たりの塊状(凸状)のフィラメントの個数、つまり、欠陥数を測定する。この欠陥数が12個以上であれば、糸切れの発生が多いため「×」、8~11個であれば、糸切れの発生が少ないため「△」、3~7個であれば、糸切れの発生がほぼないため「○」、2個以下であれば、糸切れの発生がないため「◎」とした。
【0052】
<地合の均一性の評価について>
不織布には、フィラメントの太さのばらつきなどによりムラが生じる。よって、地合の均一性の評価は、地合計(野村商事株式会社製のFMT-MIII地合評価システム)を用いて、不織布5の光透過画像を取得し、地合指数(吸光度の変数係数であり、値が小さいほど地合が良好)を測定し、平均値を算出した。この平均値が400以上であれば「×」、平均値が350以上400未満であれば「△」、平均値が300以上350未満であれば「○」、平均値が300未満であれば「◎」とした。
【0053】
<整流子について>
「整流子45の平均中心間隔w1(mm)」については、
図3に示すように、円形状の断面を有する整流子45の中心同士の長辺方向(Y軸方向)への離間距離を示す。
【0054】
「整流子45の奥行d1(mm)」については、
図3に示すように、円形状の断面を有する整流子45の短辺方向(X軸方向)の大きさを示す。
【0055】
「整流子45の総断面積A(mm
2)」については、
図3に示すように、各整流子45の断面積A1を合計した面積を示す。
【0056】
<貫通路における整流子について>
「貫通路42cに対する整流子45の奥行d1/D」については、
図3に示すように、長辺方向(Y軸方向)からみた、貫通路42cに対する整流子45の割合、つまり、通過領域PAに対する複数の区分領域PA1の割合を示すものである。この貫通路42cに対する整流子45の奥行d1/Dは、「糸切れ難さの評価」及び「地合の均一性の評価」に影響を及ぼすパラメータである。
【0057】
「整流子45の平均中心間隔に対する貫通路42cの幅W/w1」については、
図3に示すように、短辺方向(X軸方向)からみた、整流子45間に形成される区分領域PA1の個数を示すものである。この整流子45の平均中心間隔に対する貫通路42cの幅W/w1は、「糸切れ難さの評価」及び「地合の均一性の評価」に影響を及ぼすパラメータである。
【0058】
「貫通路42cの断面積に対する整流子45の総断面積A/(D×W)」については、
図3に示すように、延伸方向B(垂直方向)からみた、貫通路42cに占める整流子45の割合を示すものである。この「貫通路42cの断面積に対する整流子45の総断面積A/(D×W)は、「糸切れ難さの評価」及び「地合の均一性の評価」に影響を及ぼすパラメータである。
【0059】
本実施形態の貫通路42cに対する整流子45の奥行d1/D(表1参照)は、0.3~0.75であるのが好ましい。ここで、貫通路42cに対する整流子45の奥行d1/Dが0.3以上であれば、長辺方向(Y軸方向)からみた、通過領域PAに対する複数の区分領域PA1(整流領域として機能)の割合を高めることができ、噴射されたイジェクター用高圧エアーFを効果的に整流することができる。これにより、フィラメント集合体3に生じる揺れや偏りを抑制することができ、「地合の均一性の評価」を向上させることができる。他方、貫通路42cに対する整流子45の奥行d1/Dが0.75以下であれば、長辺方向(Y軸方向)からみた、通過領域PAに対する緩衝領域として機能する連通領域PA2(緩衝領域として機能)の割合を高めることができ、区分領域PA1内における駆動流体の揺れを効果的に吸収することができる。これにより、フィラメント集合体3が整流子45の上端部に引っ掛かることを抑制することができ、「糸切れ難さの評価」を向上させることができる。
【0060】
本実施形態の整流子45の平均中心間隔に対する貫通路42cの幅W/w1(表1参照)は、20~50であるのが好ましい。ここで、整流子45の平均中心間隔に対する貫通路42cの幅W/w1が20以上であれば、短辺方向(X軸方向)からみた、整流子45間に形成される区分領域PA1(整流領域として機能)の個数を多くすることができ、噴射されたイジェクター用高圧エアーFを効果的に整流することができる。これにより、フィラメント集合体3に生じる揺れや偏りを抑制することができ、「地合の均一性の評価」を向上させることができる。他方、整流子45の平均中心間隔に対する貫通路42cの幅W/w1が50以下であれば、短辺方向(X軸方向)からみた、整流子45間に形成される区分領域PA1(整流領域として機能)の個数を制限できるため、連通領域PA2(緩衝領域として機能)において、各区分領域PA1からの駆動流体の揺れが互いに干渉し合うことを抑制し、駆動流体の揺れを効果的に吸収することができる。これにより、フィラメント集合体3が整流子45の上端部に引っ掛かることを抑制することができ、「糸切れ難さの評価」を向上させることができる。
【0061】
本実施形態の貫通路42cの断面積に対する整流子45の総断面積A/(D×W)(表1参照)は、0.01~0.2であるのが好ましい。ここで、貫通路42cの断面積に対する整流子45の総断面積A/(D×W)が0.01以上であれば、垂直方向からみた、貫通路42cに占める整流子45の割合を高めることができ、噴射されたイジェクター用高圧エアーFを効果的に整流することができる。これにより、フィラメント集合体3に生じる揺れや偏りを抑制することができ、「地合の均一性の評価」を向上させることができる。他方、貫通路42cの断面積に対する整流子45の総断面積A/(D×W)が0.2以下であれば、垂直方向からみた、貫通路42cに占める通過領域PAの割合を高めることができ、駆動流体及びフィラメント集合体3の通過をスムーズに行うことができる。これにより、フィラメント集合体3が整流子45の上端部に引っ掛かることを抑制することができ、「糸切れ難さの評価」を向上させることができる。
【0062】
<整流子についての比較評価結果>
実施例1乃至実施例7の評価の対比から明らかなように、貫通路42cに対する整流子45の奥行d1/D、整流子45の平均中心間隔に対する貫通路42cの幅W/w1、及び、貫通路42cの断面積に対する整流子45の総断面積A/(D×W)を、それぞれ好ましい数値範囲、つまり、貫通路42c内における整流子45を最適化させることにより、「糸切れ難さの評価」を「○」以上、かつ、「地合の均一性の評価」を「△」以上に向上させ得るとの結論を得た(実施例1乃至実施例7参照)。また、貫通路42cに対する整流子45の奥行d1/D、整流子45の平均中心間隔に対する貫通路42cの幅W/w1、及び、貫通路42cの断面積に対する整流子45の総断面積A/(D×W)が、それぞれ好ましい数値範囲の中央値よりの値であれば、「糸切れ難さの評価」及び「地合の均一性の評価」を「◎」へと、より一層向上させることができる(実施例1参照)。ここで、連通領域PA2には、整流子45が設けられていないものの、長辺方向に配置された複数の区分領域PA1との間で駆動流体の移動、つまり、短辺方向への移動が生じている。このため、連通領域PA2においても、長辺方向への駆動流体及びフィラメント集合体3の揺れが規制され、不織布5全体として、「糸切れ難さの評価」及び「地合の均一性の評価」が向上するものと考えられる。このように、本実施形態において、貫通路42c内における整流子45を最適化させることにより、フィラメント集合体3の糸切れを抑制するとともに、フィラメント集合体3の偏りを抑制するという効果を奏すること、つまり、前述した特許文献1における問題点(乱流によるフィラメント集合体の偏り)を解消することができる。
【0063】
以上に対し、比較例1では、貫通路42cに対する整流子45の奥行d1/Dが、比較例3では、整流子45の平均中心間隔に対する貫通路42cの幅W/w1が、比較例5では、貫通路42cの断面積に対する整流子45の総断面積A/(D×W)が、それぞれ好ましい数値範囲の下限値未満の値となっている。これにより、比較例1、3及び5では、複数の区分領域PA1を整流領域として効果的に機能させることや、整流子45により、噴射されたイジェクター用高圧エアーFを効果的に整流することができず、フィラメント集合体3に揺れ及び偏りが生じている。このため、「地合の均一性の評価」が「×」、「糸切れ難さの評価」が「△」へと低下している。また、比較例2では、貫通路42cに対する整流子45の奥行d1/Dが、比較例4では、整流子45の平均中心間隔に対する貫通路42cの幅W/w1が、比較例6では、貫通路42cの断面積に対する整流子45の総断面積A/(D×W)が、それぞれ好ましい数値範囲の上限値を超えた値となっている。これにより、比較例2、4及び6では、連通領域PA2を緩衝領域として効果的に機能させることや、駆動流体及びフィラメント集合体3をスムーズに通過させることができず、フィラメント集合体3が整流子45の上端部に引っ掛かることが生じている。このため、「糸切れ難さの評価」が「×」へと低下している。この際、比較例2、4及び6では、糸切れが多いため、エンボスが均一かつ十分にかからず、不織布を作成することができないため、「地合の均一性の評価」は、「-」(評価不能)となっている。
【0064】
<その他>
本発明は、上述した各形態や、各実施例、随所に述べた変形例に限られることなく、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、適宜の変更や変形が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 第1の原料樹脂
2 第2の原料樹脂
3 フィラメント集合体(延伸状態)
4 フィラメント集合体(搬送状態)
5 不織布
11 第1の押出機
12 第2の押出機
20 紡糸口金
30 冷却用送風機
40 イジェクター
42 ボディー
42a 吸引口
42b 吐出口
42c 貫通路
42d スリット
45,45a,45b,45c,45d 整流子
50 捕集コンベア
59 吸引ボックス
100 スパンボンド不織布製造装置
A 整流子の総断面積
A1 整流子の断面積
D 貫通路の奥行
d1 整流子の奥行
E 吐出エアー
F イジェクター用高圧エアー
L 貫通路の垂直方向の長さ
l1 整流子の垂直方向の長さ
PA 通過領域
PA1 区分領域
PA2 連通領域
W 貫通路の幅
w1 整流子の平均中心間隔