(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】車両の制御装置、プログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/045 20120101AFI20240501BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240501BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B60W30/045
B60L15/20 S
B62D6/00
(21)【出願番号】P 2020077286
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2023-03-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【氏名又は名称】鎌田 徹
(72)【発明者】
【氏名】河野 雅樹
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-216877(JP,A)
【文献】特開平08-324449(JP,A)
【文献】特開2017-105395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/045
B60L 15/20
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータ(32a,32b)から車輪(11a,11b)にトルクを伝達することにより走行する車両を制御する制御装置であって、
前記電動モータのトルクをトルク指令値に制御するモータ制御部(62a,62b)と、
前記車輪の転舵角が転舵角指令値となるように転舵装置(23)を制御する転舵制御部(63)と、
前記車両のステアリングホイールの回転角度である操舵角を検出する操舵角検出部(22)と、
前記転舵角指令値及び前記トルク指令値を演算する目標値演算部(61)と、を備え、
前記電動モータは、前記転舵装置により転舵される前記車輪にトルクを伝達するものであり、
前記目標値演算部は、
前記操舵角に基づいて、
前記車両の重心位置を旋回中心点として前記車両を旋回させるために前記車輪のタイヤに付与すべき旋回力を設定し、
前記旋回力を、前記車両の前後方向に平行な方向を有する力の成分である第1方向力成分と、前記車両の横方向に平行な方向を有する力の成分である第2方向力成分とに分解し、
前記第2方向力成分に基づいて前記転舵角指令値を演算し、
前記車輪の転舵角をθwとし、前記車両のホイールベース長の半分の長さをHとし、前記車両のトレッド幅の半分の長さをWとするとき、所定角度βを次式
β=180°-(θw+arctan(H/W)+90°)
により演算し、
前記旋回力と前記所定角度とに基づいて前記トルク指令値を演算する
車両の制御装置。
【請求項2】
前記旋回力には、右車輪のタイヤに付与すべき第1旋回力と、左車輪のタイヤに付与すべき第2旋回力とが含まれ、
前記目標値演算部は、
前記操舵角に基づいて、前記車両を旋回させるために前記車両に付与すべき旋回力である車両旋回力を設定するとともに、
前記車両旋回力を所定の分配比率で前記第1旋回力と前記第2旋回力とに分配する
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記目標値演算部は、前記右車輪及び前記左車輪の加重差又は加重比に基づいて前記所定の分配比率を設定する
請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
電動モータ(32a,32b)から車輪(11a,11b)にトルクを伝達することにより走行する車両を制御するプログラムであって、
少なくとも一つの処理部(60)に、
前記電動モータのトルクをトルク指令値に制御させ、
前記車輪の転舵角が転舵角指令値となるように転舵装置(23)を制御せさ、
前記車両のステアリングホイールの回転角度である操舵角を検出させ、
前記転舵角指令値及び前記トルク指令値を演算させ、
前記電動モータは、前記転舵装置により転舵される前記車輪にトルクを伝達するものであり、
前記操舵角に基づいて、
前記車両の重心位置を旋回中心点として前記車両を旋回させるために前記車輪のタイヤに付与すべき旋回力を設定させ、
前記旋回力を、前記車両の前後方向に平行な方向を有する力の成分である第1方向力成分と、前記車両の横方向に平行な方向を有する力の成分である第2方向力成分とに分解させ、
前記第2方向力成分に基づいて前記転舵角指令値を演算させ、
前記車輪の転舵角をθwとし、前記車両のホイールベース長の半分の長さをHとし、前記車両のトレッド幅の半分の長さをWとするとき、所定角度βを次式
β=180°-(θw+arctan(H/W)+90°)
により演算させ、
前記旋回力と前記所定角度とに基づいて前記トルク指令値を演算させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載の車両の制御装置がある。特許文献1に記載の車両の制御装置は、目標転舵量算出手段と、タイヤ力算出手段と、限界タイヤ力推定手段と、操舵力制御手段と、制駆動力制御手段と、制御分担比設定手段とを有している。目標転舵量算出手段は、自車両前方の環境に基づいて自車両の目標転舵量を算出する。タイヤ力算出手段は、操舵輪タイヤが発生するタイヤ力を算出する。限界タイヤ力推定手段は、操舵輪タイヤの限界タイヤ力を推定する。操舵力制御手段は、操舵機構に付与される操舵力を制御する。制駆動力制御手段は、左右輪の制駆動力差を制御する。制御分担比設定手段は、目標転舵量を所定の制御分担比で割り振ることにより操舵力制御手段の目標操舵力及び制駆動力制御手段の目標制駆動力差を設定するとともに、タイヤ力の限界タイヤ力への接近に応じて、制駆動力制御手段の操舵力制御手段に対する制御分担比を増加させる。これにより、タイヤ力に十分な余裕がある状態では主に操舵力制御で車両を転舵し、制駆動力の介入によって加減速が生じて運転者に違和感を与えることを防止できる。また、タイヤ力に余裕が乏しい場合には、制駆動力制御の制御分担比を増加させて車両を確実に転舵することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるように操舵力及び制駆動力差を利用して車両を転舵させる制御装置においては、操舵角及び制駆動力が、その都度の車両の状況に応じて成り行きで制御されることが多い。車両が旋回する際にタイヤに加わる力を効率的に利用できるように転舵角及び制駆動力を制御することができれば、車両の旋回性を高めることができるため、車両のドライバビリティを更に向上させる等の効果を期待できる。
【0005】
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の旋回性を向上させることが可能な車両の制御装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両の制御装置は、電動モータ(32a,32b)から車輪(11a,11b)にトルクを伝達することにより走行する車両を制御する制御装置である。制御装置は、モータ制御部(62a,62b)と、転舵制御部(63)と、転舵情報検出部(22)と、操舵角検出部(22)と、目標値演算部(61)と、を備える。モータ制御部は、電動モータのトルクをトルク指令値に制御する。転舵制御部は、車輪の転舵角が転舵角指令値となるように転舵装置(23)を制御する。操舵角検出部は、車両のステアリングホイールの回転角度である操舵角を検出する。目標値演算部は、転舵角指令値及びトルク指令値を演算する。電動モータは、転舵装置により転舵される車輪にトルクを伝達するものである。目標値演算部は、操舵角に基づいて、車両の重心位置を旋回中心点として車両を旋回させるために車輪のタイヤに付与すべき旋回力を設定し、旋回力を、車両の前後方向に平行な方向を有する力の成分である第1方向力成分と、車両の横方向に平行な方向を有する力の成分である第2方向力成分とに分解し、第2方向力成分に基づいて転舵角指令値を演算し、車輪の転舵角をθwとし、車両のホイールベース長の半分の長さをHとし、車両のトレッド幅の半分の長さをWとするとき、所定角度βを次式
β=180°-(θw+arctan(H/W)+90°)
により演算し、旋回力と所定角度とに基づいてトルク指令値を演算する。
上記課題を解決するプログラムは、電動モータ(32a,32b)から車輪(11a,11b)にトルクを伝達することにより走行する車両を制御するプログラムであって、少なくとも一つの処理部(60)に、電動モータのトルクをトルク指令値に制御させ、車輪の転舵角が転舵角指令値となるように転舵装置(23)を制御せさ、車両のステアリングホイールの回転角度である操舵角を検出させ、転舵角指令値及びトルク指令値を演算させ、電動モータは、転舵装置により転舵される車輪にトルクを伝達するものであり、操舵角に基づいて、車両の重心位置を旋回中心点として車両を旋回させるために車輪のタイヤに付与すべき旋回力を設定させ、旋回力を、車両の前後方向に平行な方向を有する力の成分である第1方向力成分と、車両の横方向に平行な方向を有する力の成分である第2方向力成分とに分解させ、第2方向力成分に基づいて転舵角指令値を演算させ、車輪の転舵角をθwとし、車両のホイールベース長の半分の長さをHとし、車両のトレッド幅の半分の長さをWとするとき、所定角度βを次式
β=180°-(θw+arctan(H/W)+90°)
により演算させ、旋回力と所定角度とに基づいてトルク指令値を演算させる。
【0007】
この構成のように、車輪のタイヤに付与すべき旋回力を演算した上で、この旋回ベクトルに基づいて最適な転舵角指令値及びトルク指令値を設定すれば、タイヤ横力を効率的に活用することが可能な旋回力をタイヤに付与することができる。よって、車両の旋回性を向上させることができる。
【0008】
なお、上記手段、特許請求の範囲に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の車両の制御装置及びプログラムによれば、車両の旋回性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態の車両の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態の車両の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、比較例の車両の旋回時にタイヤに加わる力を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態の車両の旋回時にタイヤに加わる力を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態のECUにより実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態のECUの構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、実施形態の目標値演算部により実行される処理の手順を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、実施形態の目標値演算部により用いられる操舵角θsと車両旋回力τとの関係を示すマップである。
【
図9】
図9は、他の実施形態の車両の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、車両の制御装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
はじめに、
図1を参照して、本実施形態の車両10の概略構成について説明する。
図1に示されるように、車両10は、操舵装置20と、インバータ装置31a,31bと、モータジェネレータ32a,32bとを備えている。
【0012】
操舵装置20は、運転者により操作されるステアリングホイール21と車輪11a,11bとが機械的に連結されていない構成からなる、いわゆるステアバイワイヤ式の操舵装置である。操舵装置20は操舵角センサ22と転舵装置23とを備えている。操舵角センサ22は、ステアリングホイール21の回転角度である操舵角θsを検出するとともに、検出された操舵角θsに応じた信号を出力する。本実施形態では、操舵角センサ22が車輪の転舵に関連する情報を検出する転舵情報検出部に相当する。転舵装置23は、操舵角センサ22により検出される操舵角θsに基づいて車輪11a,11bのそれぞれの転舵角を変化させる。このような構成により、ステアリングホイール21と車輪11a,11bとが機械的に連結されていないにも関わらず、運転者のステアリングホイール21の操作に応じて車輪11a,11bのそれぞれの転舵角が変化する。また、ステアリングホイール21の操舵角に対して車輪11a,11bの転舵角を独立して制御できるため、ステアリングホイール21と車輪11a,11bとが機械的に連結されている、いわゆる機械式の操舵装置と比較すると、車輪11a,11bの制御性能を向上させることができる。なお、本実施形態の車両10では、車輪11a,11bのそれぞれの転舵角が同一の角度に制御されるようになっている。
【0013】
インバータ装置31a,31bは、車両10に搭載されるバッテリ15から供給される直流電力を三相交流電力に変換するとともに、変換した三相交流電力をモータジェネレータ32a,32bにそれぞれ供給する。
モータジェネレータ32a,32bは車両10の加速走行時に電動機として動作する。モータジェネレータ32a,32bは、電動機として動作する場合、インバータ装置31a,31bから供給される三相交流電力に基づいて駆動する。モータジェネレータ32a,32bの駆動力が車輪11a,11bにそれぞれ伝達されることにより車輪11a,11bが回転して車両10が加速走行する。
【0014】
また、モータジェネレータ32a,32bは車両10の減速走行時に発電機として動作する。モータジェネレータ32a,32bは、発電機として動作する場合、回生動作することにより発電する。このモータジェネレータ32a,32bの回生動作により車輪11a,11bに制動力がそれぞれ付与される。モータジェネレータ32a,32bの回生動作により発電される三相交流電力はインバータ装置31a,31bにより直流電力に変換されてバッテリ15に充電される。
【0015】
このように、車両10では、右前輪11a及び左前輪11bが駆動輪として機能し、右後輪11c及び左後輪11dが従動輪として機能する。以下では、右前輪11a及び左前輪11bをまとめて「駆動輪11a,11b」とも称する。本実施形態では、右前輪11aが右車輪に相当し、左前輪11bが左車輪に相当する。
【0016】
また、車両10の前後方向を「Xc方向」と称し、車両10の横方向を「Yc方向」と称する。さらに、車両10の前後方向Xcのうち、進行方向を「Xc1方向」と称し、後退方向を「Xc2方向」と称する。また、車両10の横方向Ycのうち、右方向を「Yc1方向」と称し、左方向を「Yc2方向」と称する。
【0017】
次に、
図2を参照して、車両10の電気的な構成について説明する。
図2に示されるように、車両10は、加速度センサ50と、車速センサ51と、車輪速センサ52a~52dと、アクセルポジションセンサ53と、転舵角センサ54と、電流センサ55a,55bと、ECU(Electronic Control Unit)60とを更に備えている。
【0018】
加速度センサ50は、車両10の加速度Acを検出するとともに、検出された加速度Acに応じた信号をECU60に出力する。車速センサ51は、車両10の走行速度である車速Vcを検出するとともに、検出された車速Vcに応じた信号をECU60に出力する。車輪速センサ52a~52dは、車両10の車輪11a~11dの回転速度である車輪速ωwa~ωwdをそれぞれ検出するとともに、検出された車輪速ωwa~ωwdに応じた信号をECU60に出力する。アクセルポジションセンサ53は、アクセルペダルの操作位置であるアクセルポジションPaを検出するとともに、検出されたアクセルポジションPaに応じた信号をECU60に出力する。転舵角センサ54は、駆動輪11a,11bの転舵角θwを検出するとともに、検出された転舵角θwに応じた信号をECU60に出力する。本実施形態では、転舵角センサ54が転舵角検出部に相当する。電流センサ55a,55bは、インバータ装置31a,31bからモータジェネレータ32a,32bに供給される各相電流値Ia,Ibをそれぞれ検出するとともに、検出された各相電流値Ia,Ibに応じた信号をECU60に出力する。
【0019】
ECU60は、CPUやメモリ等を有するマイクロコンピュータを中心に構成されている。本実施形態では、ECU60が制御装置に相当する。ECU60は、そのメモリに予め記憶されたプログラムを実行することにより転舵装置23及びモータジェネレータ32a,32bを制御する。
【0020】
具体的には、ECU60には操舵角センサ22、加速度センサ50、車速センサ51、車輪速センサ52a~52d、アクセルポジションセンサ53、転舵角センサ54、及び電流センサ55a,55bのそれぞれの出力信号が取り込まれている。ECU60は、それらの出力信号に基づいてステアリングホイール21の操舵角θs、車両10の加速度Ac、車速Vc、各車輪11a~11dの車輪速ωwa~ωwd、アクセルポジションPa、転舵角θw、及びモータジェネレータ32a,32bのそれぞれの各相電流値Ia,Ibの情報を取得する。
【0021】
ECU60は、例えば操舵角センサ22により検出されるステアリングホイール21の操舵角θs等に基づいて、駆動輪11a,11bの転舵角θwの目標値である転舵角指令値θw*をマップや演算式等を用いて演算するとともに、演算された転舵角指令値θw*に基づいて転舵装置23を制御する。
【0022】
また、ECU60は、車速センサ51及びアクセルポジションセンサ53によりそれぞれ検出される車速Vc及びアクセルポジションPaに基づいて、モータジェネレータ32a,32bから駆動輪11a,11bにそれぞれ付与すべきトルクの目標値であるトルク指令値Ta*,Tb*をマップや演算式等を用いて演算する。そして、ECU60は、モータジェネレータ32a,32bの出力トルクがトルク指令値Ta*,Tb*となるようにインバータ装置31a,31bを通じてモータジェネレータ32a,32bのそれぞれの通電量を制御する。
【0023】
一方、本実施形態のECU60は、車両10が旋回する際に駆動輪11a,11bの転舵角θwを変化させるだけでなく、モータジェネレータ32a,32bから駆動輪11a,11bに駆動力又は制動力を付与する旋回制御を実行することにより車両10の旋回性を向上させる。
【0024】
次に、本実施形態の旋回制御について説明するに先立ち、その原理について先ずは説明する。
図3は、車両10が旋回する際に左前輪11bのタイヤTrに加わる力を矢印で図示したものである。
図3では、左前輪11bのタイヤTrの接地面の中心点が「Ct」で示されている。また、左前輪11bのタイヤTrの前後方向の軸線が「Xt」で示されるとともに、左前輪11bのタイヤの横方向の軸線が「Yt」で示されている。さらに、車両10の旋回中心点が「Cc」で示されている。車両10の旋回中心点Ccは車両10の重心位置に相当する。
【0025】
例えば車両10の旋回に伴って左前輪11bが所定の転舵角θwで転舵されているとすると、
図3に示されるように、左前輪11bのタイヤTrの横方向Ytは、車両の横方向Ycに平行な軸線m20に対してタイヤTrの接地中心点Ctを中心とする回転方向に転舵角θwだけずれた方向となる。このようにタイヤTrの横方向Ytが転舵角θwだけずれることにより、タイヤTrには、その横方向Ytに沿った方向の力であるタイヤ横力FLytが作用する。
【0026】
一方、タイヤTrの接地中心点Ct及び車両10の旋回中心点Ccを結ぶ線を基準線m10とすると、車両10の旋回に寄与する力である実効旋回力FLeの方向は、基準線m10が延びる方向と、タイヤTrのグリップ力の方向である鉛直方向との外積の方向となる。すなわち、
図3に示されるように基準線m10に直交する軸線を「m11」とすると、車両10の実効旋回力FLeの方向は軸線m11に平行な方向となる。
【0027】
したがって、仮にタイヤTrにタイヤ横力FLytが作用しているとすると、そのタイヤ横力FLytのうち、軸線m11に沿った方向の力成分FLeのみが車両10の旋回に寄与する力となる。結果的に、タイヤ横力FLytの一部が車両10の旋回に寄与しない力となるため、無駄な力になってしまう。
【0028】
これに対して、例えば
図4に示されるように、タイヤTrに対してタイヤ縦力FLxtを付与したとすると、タイヤ横力FLyt及びタイヤ縦力FLxtの合力FLがタイヤTrに作用することとなる。このとき、タイヤTrの合力FLの方向が軸線m11と平行な方向、換言すれば基準線m10に対して直交する方向であれば、タイヤTrの合力FLの方向が実効旋回力の方向と一致する。そのため、車両10の旋回に対してタイヤ横力FLytを最も効率的に活用することができるため、例えば車両10の旋回時の加速性や減速性を向上させることができたり、車両10の最小旋回半径をより小さい値に設定したりする等の効果が期待できる。すなわち車両10の旋回性を向上させることができる。なお、
図4に示される力FLは、
図3に示される力FLeと同一の方向及び大きさを有している。
【0029】
以上の左前輪11bにおいて成立する原理が右前輪11aでも同様に成立することは言うまでもない。
次に、
図5~
図7を参照して、以上の原理を利用してECU60により実行される車両10の旋回制御の具体的な手順について説明する。
【0030】
ECU60は、
図5に示される処理を所定の周期で繰り返し実行する。
図5に示されるように、ECU60は、まず、ステップS10の処理として、車速センサ51により検出される車速Vcが所定速度Vthよりも速いか否かを判断する。所定速度Vthは、車両10が走行中であるか否かを判定するための判定値であり、例えば「0[m/s]」に設定される。ECU60は、車速Vcが所定速度Vth以下である場合には、ステップS10の処理で否定的な判定を行って、
図5に示される処理を一旦終了する。
【0031】
ECU60は、車速Vcが所定速度Vthよりも速い場合には、ステップS10の処理で肯定的な判定を行って、続くステップS11の処理として、操舵角センサ22により検出される操舵角θsが所定角θthよりも大きいか否かを判断する。所定角θthは、運転者が車両10を旋回させる意志があるか否かを判定するための判定値である。なお、ステップS11の処理では、車両10の直進時に運転者が行うステアリングホイール21の微調整に関しては旋回の意志があるとみなさないことが望ましい。そのため、微調整時のステアリングホイール21の操舵角θsを学習させた上で、微調整時と旋回時とを切り分けることができるように所定角θthが定められている。本実施形態では、ステップS11の処理が、車輪の転舵に関連する情報を検出する処理に相当する。
【0032】
ECU60は、操舵角θsが所定角θth以下である場合には、ステップS11の処理で否定的な判定を行って、
図5に示される処理を一旦終了する。一方、ECU60は、操舵角θsが所定角θthよりも大きい場合には、ステップS12の処理として、旋回力分配制御を実行する。この制御の具体的な手順は以下の通りである。
【0033】
図6に示されるように、ECU60は、目標値演算部61と、モータ制御部62a,62bと、転舵制御部63とを備えている。
目標値演算部61は、モータジェネレータ32a,32bのそれぞれのトルク指令値Ta*,Tb*を演算するとともに、駆動輪11a,11bの転舵角指令値θw*を演算する部分である。
【0034】
具体的には、
図7に示されるように、目標値演算部61は、操舵角検出部610と、車両旋回力演算部611と、旋回力分配部612と、分力演算部613と、トルク指令値演算部614a,614bと、転舵角指令値演算部615とを有している。
操舵角検出部610は、操舵角センサ22の出力信号に基づいてステアリングホイール21の操舵角θsを演算するとともに、演算された操舵角θsを車両旋回力演算部611に出力する。
【0035】
車両旋回力演算部611は、操舵角検出部610により求められた操舵角θsに基づいて車両旋回力τを演算する。車両旋回力τは、車両10の旋回中心点Ccを中心とする回転方向の力であって、車両10を旋回させるために車両10に付与すべき旋回力の基礎値を示す。例えば、車両旋回力演算部611は、
図8に示されるようなマップを用いて操舵角θsから車両旋回力τを求める。
図8に示されるように、車両旋回力τは、操舵角θsが大きくなるほど、より大きな値に設定される。
図7に示されるように、車両旋回力演算部611は、演算された車両旋回力τを旋回力分配部612に出力する。
【0036】
旋回力分配部612は、車両旋回力τを、右前輪11aに付与すべき右前輪旋回力FRと、左前輪11bに付与すべき左前輪旋回力FLとに分配する部分である。具体的には、
図4に示されるように車両10の旋回中心点CcからタイヤTrの接地中心点Ctまでの距離を「L」とすると、車両旋回力τ、右前輪旋回力FR、及び左前輪旋回力FLには以下の式f1の関係が成立する。
【0037】
τ=L・(FL+FR) (f1)
一方、車両10が旋回する場合、その旋回軌跡の内側に位置する車輪の加重が、旋回軌跡の外側に位置する車輪に移動する、いわゆる加重移動が生じる。この加重移動量を「ΔW」とすると、例えば車両10が右旋回している場合には、路面に対して垂直な方向に作用する右前輪11aの垂直方向加重FRz及び左前輪11bの垂直方向加重FLzは以下の式f2及びf3により求めることができる。なお、式f2及びf3において「M」は車両の質量を示し、「g」は重力定数を示す。
【0038】
FRz=M・g/4-ΔW (f2)
FLz=M・g/4+ΔW (f3)
また、車両10が左旋回している場合には、右前輪11aの垂直方向加重FRz及び左前輪11bの垂直方向加重FLzは以下の式f4及びf5により求めることができる。
【0039】
FRz=M・g/4+ΔW (f4)
FLz=M・g/4-ΔW (f5)
なお、加重移動量ΔWは、以下の式f6に基づいて演算することが可能である。なお、式f6において、「Vc」は車速を示し、「R」は車両10の回転半径を示し、「h」は路面からの車輪の重心高を示し、「t」は右前輪11a及び左前輪11bのトレッド幅を示す。
【0040】
ΔW=(M・Vc2/R)・(h/t) (f6)
このようにして求められる右前輪11aの垂直方向加重FRz及び左前輪11bの垂直方向加重FLzを用いることにより、以下の式f7に示されるように右前輪旋回力FR及び左前輪旋回力FLの比が設定される。
【0041】
FLz:FRz=FL:FR (f7)
このように、本実施形態では、右前輪11aの垂直方向加重FRz及び左前輪11bの垂直方向加重FLzの比と同等となるように右前輪旋回力FR及び左前輪旋回力FLの比が設定される。本実施形態では、右前輪11aの垂直方向加重FRzと左前輪11bの垂直方向加重FLzとの比が所定の分配比率に相当する。
【0042】
旋回力分配部612は、これらの式f1~f7を用いて右前輪旋回力FR及び左前輪旋回力FLを演算する。具体的には、旋回力分配部612は、車両の質量M、車両10の回転半径R、車輪の重心高h、及びトレッド幅t、並びに車速センサ51により検出される車速Vcから上記の式f6に基づいて加重移動量ΔWを求める。なお、車両の質量M、車輪の重心高h、及びトレッド幅tの情報はECU60のメモリに予め記憶されている。また、旋回力分配部612は、例えば車両10に搭載されているナビゲーション装置に記憶されている地図情報から、車両10が現在走行している道路の車線形状を抽出するとともに、抽出された車線形状に基づいて回転半径Rを演算する。
【0043】
なお、上記の式f6の「M・Vc2/R」の項は、車両の質量M及び横加速度aを用いて「M・a」と置き換えることができる。したがって、車両10に横加速度センサが搭載されている場合、旋回力分配部612は、横加速度センサにより検出される車両10の横加速度と車両の質量Mとに基づいて加重移動量ΔWを求めることも可能である。
【0044】
また、旋回力分配部612は、求めた加重移動量ΔWと、車両の質量M及び重力定数gから上記の式f2~f5に基づいて右前輪11aの垂直方向加重FRz及び左前輪11bの垂直方向加重FLzを演算する。なお、旋回力分配部612は、車両10の旋回方向が右旋回方向である場合には式f2及びf3を用いる一方、車両10の旋回方向が左旋回方向である場合には式f4及びf5を用いる。
【0045】
旋回力分配部612は、このようにして求められる右前輪11aの垂直方向加重FRz及び左前輪11bの垂直方向加重FLz、車両旋回力演算部611により演算される車両旋回力τ、並びに車両10の旋回中心点CcからタイヤTrの接地中心点Ctまでの距離Lに基づいて上記の式f1,f7から右前輪旋回力FR及び左前輪旋回力FLを演算する。なお、距離Lの情報はECU60のメモリに予め記憶されている。旋回力分配部612は、演算された右前輪旋回力FR及び左前輪旋回力FLを分力演算部613に出力する。このようにして求められる左前輪旋回力FLが、
図4に示される軸線m11に沿った方向の力として用いられる。本実施形態では、右前輪旋回力FRが第1旋回力に相当し、左前輪旋回力FLが第2旋回力に相当する。
【0046】
図7に示されるように、分力演算部613は、旋回力分配部612により演算される左前輪旋回力FLから、その車両前後方向Xcの力成分FLxcと車両横方向Ycの力成分FLycとを以下の式f8及びf9に基づいて演算する。
FLxc=FL・sinα (f8)
FLyc=FL・cosα (f9)
なお、角度αは、
図4に示されるように、軸線m11と軸線m20とがなす角度であって、ECU60のメモリに予め記憶されている。
【0047】
分力演算部613は、同様に、旋回力分配部612により演算される右前輪旋回力FRから、右前輪11aに対応した車両前後方向Xcの力成分FRxcと車両横方向Ycの力成分FRycとを以下の式f10及びf11に基づいて演算する。
FRxc=FR・sinα (f10)
FRyc=FR・cosα (f11)
図7に示されるように、分力演算部613は、演算した右前輪11aの車両横方向力成分FRyc及び左前輪11bの車両横方向力成分FLycを転舵角指令値演算部615に出力する。また、分力演算部613は、演算した右前輪11aの車両前後方向力成分FRxc及び車両横方向力成分FRycを第1トルク指令値演算部614aに出力するとともに、演算した左前輪11bの車両前後方向力成分FLxc及び車両横方向力成分FLycを第2トルク指令値演算部614bに出力する。本実施形態では、車両前後方向力成分FRxc,FLxcが第1方向力成分に相当し、車両横方向力成分FRyc,FLycが第2方向力成分に相当する。
【0048】
転舵角指令値演算部615は、分力演算部613により演算される右前輪11aの車両横方向力成分FRyc及び左前輪11bの車両横方向力成分FLycから以下の式f12に基づいて転舵角指令値θw*を演算する。なお、式f12において「K」は、車両10のコーナリングパワー(単位は[F/deg])を示す。
【0049】
(FRyc+FLyc)=K・Func・θw*/cos(θw*) (f12)
式f12において「Func」は、以下の式f13のように定義されている。なお、式f13において「M」は車両10の質量を示し、「LWB」は車両10のホイールベース長を示し、「K」は車両10のコーナリングパワーを示し、「Vc」は車速を示す。
【0050】
【数1】
式f12及びf13で用いられるコーナリングパワーK及び車両10のホイールベース長の情報はECU60のメモリに予め記憶されている。本実施形態では、コーナリングパワーKがタイヤの特性値に相当し、車両10の質量及びホイールベース長L
WBが車両10の諸元値に相当する。
【0051】
転舵角指令値演算部615は、演算した転舵角指令値θw*をトルク指令値演算部614a,614bにそれぞれ出力する。
第1トルク指令値演算部614aは、旋回力分配部612により演算される左前輪旋回力FLから以下の式f14に基づいて右前輪11aのタイヤ前後方向力成分FRmgを演算する。
【0052】
FRmg=FL・sinβ (f14)
式f14の所定角βは、
図4に示される角度である。
図4に示されるように、車両前後方向Xcにおける車両10の旋回中心点Ccから左前輪11bまでの距離を「H」とし、車両横方向Ycにおける車両10の旋回中心点Ccから左前輪11bまでの距離を「W」とするとき、所定角度βは、転舵角θwを用いて以下の式f15のように定義される。なお、距離Hは、車両10のホイールベース長L
WBの半分の長さに相当し、距離Wは、車両10のトレッド幅tの半分の長さに相当する。距離H,WはECU60のメモリに予め記憶されている。
【0053】
β=180°-(θw+arctan(H/W)+90°) (f15)
第1トルク指令値演算部614aは、右前輪11aのタイヤの接地面での力がタイヤ前後方向力成分FLmgとなるように、モータジェネレータ32aから右前輪11aに付与すべきトルクの目標値である第1トルク指令値Ta*を設定する。
【0054】
同様に、第2トルク指令値演算部614bは、第1トルク指令値演算部614aと類似の演算を行うことにより、モータジェネレータ32bから左前輪11bに付与すべきトルクの目標値である第2トルク指令値Tb*を設定する。
図7に示されるようにして演算された第1トルク指令値Ta*、第2トルク指令値Tb*、及び転舵角指令値θw*は、
図6に示されるように目標値演算部61からモータ制御部62a,62b及び転舵制御部63にそれぞれ出力される。
【0055】
第1モータ制御部62aは、第1トルク指令値Ta*に基づいて、モータジェネレータ32aに供給すべき通電量の目標値である通電制御値を演算する。そして、第1モータ制御部62aは、電流センサ55aにより検出されるモータジェネレータ32aの各相電流値Iaを通電制御値に追従させるようにインバータ装置31aを駆動させる。これによりモータジェネレータ32aの出力トルクが第1トルク指令値Ta*に制御される。
【0056】
第2モータ制御部62bは、第1モータ制御部62aと同様に、第2トルク指令値Tb*に基づいてインバータ装置31bを駆動させることにより、モータジェネレータ32aの通電制御を行う。これによりモータジェネレータ32bの出力トルクが第2トルク指令値Tb*に制御される。
【0057】
転舵制御部63は、転舵角センサ54により検出される転舵角θwを目標転舵角θw*に追従させるべく、それらの偏差に基づくフィードバック制御を転舵装置23に対して行う。これにより、駆動輪11a,11bの転舵角θwが目標転舵角θw*に制御される。
以上説明した本実施形態のECU60によれば、以下の(1)~(5)に示される作用及び効果を得ることができる。
【0058】
(1)
図7に示されるように、目標値演算部61は、操舵角θsに基づいて駆動輪11a,11bにそれぞれ付与すべき力を示す右前輪旋回力FR及び左前輪旋回力FLを演算するとともに、演算された旋回力FR,FLに基づいて転舵角指令値θw*及びトルク指令値Ta*,Tb*を演算する。
図6に示されるように、モータ制御部62a,62bは、モータジェネレータ32a,32bの出力トルクをトルク指令値Ta*,Tb*にそれぞれ制御する。また、転舵制御部63は、駆動輪11a,11bの転舵角θwが転舵角指令値θw*となるように転舵装置23を制御する。この構成によれば、
図4に示されるようなタイヤ横力FLyt及びタイヤ縦力FLxtが左前輪11bのタイヤTrに付与されるため、軸線m11に沿った方向を有する旋回力FLを左前輪11bに付与することができる。結果的に、タイヤ横力FLytを効率的に活用することが可能な旋回力FLを左前輪11bのタイヤTrに付与することができる。右前輪11aについても同様である。よって、車両10の旋回性を向上させることができる。
【0059】
(2)
図7に示されるように、目標値演算部61は、右前輪旋回力FR及び左前輪旋回力FLを、車両前後方向Xcに平行な方向を有する力成分FRxc,FLxcと、車両横方向Ycに平行な方向を有する力成分FRyc,FLycとに分解する。また、目標値演算部61は、それらの力成分FRxc,FLxc,FRyc,FLycに基づいて転舵角指令値θw*及びトルク指令値Ta*,Tb*を演算する。この構成によれば、右前輪旋回力FR及び左前輪旋回力FLに応じた転舵角指令値θw*及びトルク指令値Ta*,Tb*を容易に演算することができる。
【0060】
(3)
図4に示されるように、左前輪旋回力FLの方向は、車両10の旋回中心点CcとタイヤTrの接地中心点Ctとを結ぶ基準線m10に対して90度をなす角度に設定されている。本実施形態では90度が所定角度に相当する。右前輪旋回力FRも同様に設定されている。この構成によれば、タイヤ横力を最も効率的に活用して車両10を旋回させることができるため、車両10の旋回性を更に向上させることができる。
【0061】
(4)
図7に示されるように、目標値演算部61は、操舵角θsに基づいて、車両10を旋回させるために車両10に付与すべき旋回力である車両旋回力τを設定する。また、目標値演算部61は、上記の式f7に示されるように右前輪11a及び左前輪11bの加重比からなる分配比率で車両旋回力τを右前輪旋回力FR及び左前輪旋回力FLに分配する。この構成によれば、車両旋回力τを右前輪旋回力FR及び左前輪旋回力FLに容易に分配することができる。
【0062】
(5)上記の式f12,13に示されるように、目標値演算部61は、右前輪11aの車両横方向力成分FRyc、左前輪11bの車両横方向力成分FLyc、車両10の諸元値である質量M及びホイールベース長LWB、並びにタイヤの特性値であるコーナリングパワーKに基づいて転舵角指令値θw*を演算する。この構成によれば、転舵角指令値θw*を容易に演算することができる。
【0063】
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・目標値演算部61は、車両10が旋回している際に加速又は減速した場合に、その加速度又は減速度に応じて車両旋回力τを補正してもよい。この構成によれば、車両10の加速又は減速に応じた、より適切な車両旋回力τを演算することが可能となる。
【0064】
・目標値演算部61は、タイヤの特性値であるコーナリングパワーKとして、メモリに予め記憶されている値を用いる方法に代えて、演算値を用いてもよい。例えば、目標値演算部61は、転舵角センサ54により検出される転舵角θwと、
図2に破線で示されるヨーレートセンサ55により検出される車両10のヨーレートγとに基づいてコーナリングパワーKを演算することができる。この場合、ヨーレートセンサ55がヨーレート検出部に相当する。
【0065】
・目標値演算部61は、右前輪旋回力FR及び左前輪旋回力FLの分配比率として、右前輪11a及び左前輪11bの加重比に代えて、例えばそれらの加重差を用いてもよい。
・操舵装置20を制御するECUと、モータジェネレータ41,42を制御するECUとが別々に設けられていてもよい。
【0066】
・
図9に示されるように、車両10は、右前輪11aを転舵させる転舵装置23aと、左前輪11bを転舵させる転舵装置23bとを別々に有するものであってもよい。
・本開示に記載のECU60及びその制御方法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された1つ又は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載のECU60及びその制御方法は、1つ又は複数の専用ハードウェア論理回路を含むプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載のECU60及びその制御方法は、1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと1つ又は複数のハードウェア論理回路を含むプロセッサとの組み合わせにより構成された1つ又は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。専用ハードウェア論理回路及びハードウェア論理回路は、複数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路により実現されてもよい。
【0067】
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0068】
10:車両
11a,11b:車輪
22:操舵角センサ(操舵角検出部,転舵情報検出部)
23:転舵装置
32a,32b:モータジェネレータ(電動モータ)
54:転舵角センサ(転舵角検出部)
55:ヨーレートセンサ(ヨーレート検出部)
60:ECU(制御装置)
61:目標値演算部
62a,62b:モータ制御部
63:転舵制御部