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  • 特許-ピラーガーニッシュ 図1
  • 特許-ピラーガーニッシュ 図2
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  • 特許-ピラーガーニッシュ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】ピラーガーニッシュ
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/00 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
B60R13/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020078882
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021172260
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】梅田 正史
(72)【発明者】
【氏名】中根 康樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 敏光
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-008844(JP,A)
【文献】特開2018-062225(JP,A)
【文献】特開2002-154323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/04
B60R 13/02
B62D 17/00 - 25/08
B62D 25/14 - 29/04
B60J 1/02
B60J 10/00 - 10/90
B60R 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントピラーの外面側に設けられる、上下方向に長尺のガーニッシュ本体と、
前記ガーニッシュ本体のフロントガラスの車幅方向端部に対向する車幅方向内側端部の裏面側のみに上下方向に沿って貼り付けられるモールと、
を備え、
前記ガーニッシュ本体は、前記ガーニッシュ本体の内側端部の裏面側から突出して前記モールの貼り付け位置を規定する係止突部を有し、
前記モールは、前記係止突部よりも車幅方向外側で前記ガーニッシュ本体の内側端部の裏面側に貼り付けられる基部と、前記基部から車両の表面側に延びて前記係止突部に当接して係止される係止リップと、前記基部から前記フロントガラス側に延びて前記フロントガラスに接触する当接リップと、を有し、
前記係止突部は、前記係止リップの根元部分と前記基部のみに当接しているピラーガーニッシュ。
【請求項2】
前記係止突部が、車幅方向内側に向かうにつれて前記フロントガラス側に突出している
請求項1に記載のピラーガーニッシュ。
【請求項3】
前記ガーニッシュ本体が、車両の表面側に設けられるアウタ部材と、前記アウタ部材の裏面側に設けられるインナ部材と、から構成され、前記アウタ部材の内側端部が前記インナ部材の内側端部よりも内側に突出しており、前記係止突部が前記インナ部材の内側端部により構成されている
請求項1又は2に記載のピラーガーニッシュ。
【請求項4】
前記係止リップの先端が、前記アウタ部材の裏面に当接している
請求項3に記載のピラーガーニッシュ。
【請求項5】
前記係止突部による前記係止リップの係止位置よりも、前記アウタ部材への前記係止リップの当接位置の方が内側にある
請求項4に記載のピラーガーニッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のピラーに設けられるピラーガーニッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントガラスの左右両端部とフロントピラーガーニッシュとの間の隙間から走行中に風が入り込むことに起因する空力騒音の発生や、その隙間からの水の浸入の防止、あるいは、見栄えの向上等を目的として、フロントピラーガーニッシュの裏面前端側にモールを取り付けて、その隙間を塞ぐ構成が採用されることがある。このモールの取り付けに際しては、モールの取り付け位置を示すケガキ線をフロントピラーガーニッシュの裏面側に予め線引きした上で、目視でそのケガキ線にモールを合わせて両面テープ等の固定手段で固定することが多い。ところが、この方法は、モールの取り付け作業に多くの時間を必要とするため生産性が低く、しかも高い取り付け位置精度を保つのが困難であるという問題があった。
【0003】
そこで、モールの取り付け位置精度を高めるべく、例えば下記特許文献1においては、クリップ2を用いて、ピラーカバー4にモール1を固定する構成が提案されている。このクリップ2の取り付け基部20の表面には係止ピン21が突設してあり、この取り付け基部20の一端には係合溝23を有する係合部22が形成されている。その一方で、ピラーカバー4のカバー内板4bには複数の係合穴43が形成されており、モール1には板状の支持脚部11が形成されている。そして、クリップ2に形成された係止ピン21を係合穴43に挿通するとともに、係合部22の係合溝23に支持脚部11を嵌合することにより、ピラーカバー4にモール1が取り付けられる(特許文献1の段落0012~0022、図1~3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-279991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る構成によると、クリップ2を用いてピラーカバー4にモール1を固定しているため、所定の取り付け位置精度は確保できると考えられるが、複数のクリップ2にピラーカバー4とモール1を接続しなければならないため手間を要し、作業性に優れるとは言い難い。しかも、ピラーカバー4とモール1のそれぞれに穴あけ等の加工を行う必要があるとともに、特殊形状のクリップ2を必要とするため、コスト高となる可能性が高い。
【0006】
そこで、この発明は、簡便な構成で、フロントピラーガーニッシュへのモールの取り付け精度を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、この発明においては、
車両のフロントピラーの外面側に設けられる、上下方向に長尺のガーニッシュ本体と、
前記ガーニッシュ本体のフロントガラスの車幅方向端部に対向する車幅方向内側端部の裏面側に上下方向に沿って取り付けられるモールと、
を備え、
前記ガーニッシュ本体は、前記ガーニッシュ本体の内側端部の裏面側から突出して前記モールの取り付け位置を規定する係止突部を有し、
前記モールは、前記係止突部よりも車幅方向外側で前記ガーニッシュ本体の内側端部の裏面側に取り付けられる基部と、前記基部から車両の表面側に延びて前記係止突部に当接して係止される係止リップと、前記基部から前記フロントガラス側に延びて前記フロントガラスに接触する当接リップと、を有するピラーガーニッシュを構成した。
【0008】
前記構成においては、
前記係止突部が、車幅方向内側に向かうにつれて前記フロントガラス側に突出している構成とするのが好ましい。
【0009】
前記構成においては、
前記ガーニッシュ本体が、車両の表面側に設けられるアウタ部材と、前記アウタ部材の裏面側に設けられるインナ部材と、から構成され、前記アウタ部材の内側端部が前記インナ部材の内側端部よりも内側に突出しており、前記係止突部が前記インナ部材の内側端部により構成されている構成とするのが好ましい。
【0010】
前記構成においては、
前記係止リップの先端が、前記アウタ部材の裏面に当接している構成とするのが好ましい。
【0011】
前記構成においては、
前記係止突部による前記係止リップの係止位置よりも、前記アウタ部材への前記係止リップの当接位置の方が内側にある構成とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
この発明では、上記のような構成とすることにより、ガーニッシュ本体に形成された係止突部に、モールに形成された係止リップを突き当てるだけで、このモールを位置決めすることができるため、簡便な構成で、フロントピラーガーニッシュへのモールの取り付け精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明に係るピラーガーニッシュの第一実施形態(フロントピラーに取り付けた状態)を示す斜視図である。
図2図1中のII-II線に沿う断面図である。
図3図1に示すピラーガーニッシュの分解斜視図である。
図4】この発明に係るピラーガーニッシュの第二実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明に係るピラーガーニッシュ1は、図1に示すように、車両のフロントピラーPに設けられる。このピラーガーニッシュ1の第一実施形態を図2及び図3を用いて説明する。なお、以下の説明においては、図1に示すようにピラーガーニッシュ1を車両に取り付けた状態において、車両のルーフRに近い側を「上」、その反対側を「下」、フロントガラスGに近い側を「内」、及び、その反対側を「外」と称する。このピラーガーニッシュ1は、ガーニッシュ本体2と、モール3(以下、このモール3を内側モール3と称する。)と、を主要な構成要素としている。
【0015】
ガーニッシュ本体2は、車両のフロントピラーPの外面側に設けられる上下方向に長尺の部材である。この実施形態に係るガーニッシュ本体2は、車両の表面側に設けられるアウタ部材4と、アウタ部材4の裏面側に設けられるインナ部材5と、から構成されている。
【0016】
アウタ部材4の表面には、車両の見栄えを高めるための塗装が施されている。また、アウタ部材4の内側には、このアウタ部材4の裏面がフロントガラスGに近付くように傾斜することによって、その内側ほど肉厚が増加する厚肉部6が形成されている。インナ部材5には、複数の貫通孔7が形成されている。この貫通孔7には、ガーニッシュ本体2をフロントピラーPに固定するクリップ8及びトリムクリップ9が取り付けられる。また、インナ部材5の裏面の内側下端には、ゴム製のモール(以下、このモールを内側リップモール10と称する。)が設けられている。
【0017】
アウタ部材4の内側端部は、インナ部材5の内側端部よりも内側に突出しており、アウタ部材4の内側端部とインナ部材5の内側端部との間には段差が形成されている。前記段差(インナ部材5の内側端部)が、内側モール3の取り付け位置を規定する係止突部11として作用する。係止突部11は、車幅方向内側に向かうにつれて、フロントガラスG側に突出している。
【0018】
インナ部材5の表面上端と表面下端には、アウタ部材4との間に挟み込まれるようにゴム製のモール(以下、これらのモールをそれぞれ上端リップモール12、下端リップモール13と称する。)が設けられている。上端リップモール12によって、車両のルーフRとフロントピラーPの間、下端リップモール13によって、フロントフェンダーFとフロントピラーPの間において生じる空力騒音の低減と水密性の向上を図っている。アウタ部材4とインナ部材5は、両面テープ14等の一体化手段によって一体化される。硬質ゴム15及びパッド16は、インナ部材5の裏面側に貼り付けられる。この硬質ゴム15等は、フロントピラーPの緩衝材として、ピラーガーニッシュ1の姿勢を保つ役目を有する。また、この硬質ゴム15等を設けることによって、フロントピラーPとピラーガーニッシュ1が接触することにより発生する異雑音の防止を図っている。
【0019】
本実施形態のようにガーニッシュ本体2をアウタ部材4とインナ部材5の2枚構造とすると、このインナ部材5にフロントピラーPへの固定用のクリップ8等を取り付けることができるため好適である。
【0020】
内側モール3は、ガーニッシュ本体2のフロントガラスGの車幅方向端部に対向する車幅方向内側端部の裏面側に上下方向に沿って取り付けられる、ゴム等の弾性材からなる部材である。この内側モール3は、図2に示すように、基部17と、係止リップ18と、当接リップ19と、を有している。
【0021】
図2及び図3に示すように、基部17は、係止突部11よりも車幅方向外側で、ガーニッシュ本体2の内側端部の裏面側に、両面テープ等の固定手段20によって取り付けられる。この基部17の内側は、係止突部11に沿うようにフロントガラスGに向かって若干屈曲している。
【0022】
係止リップ18は、基部17から車両の表面側(アウタ部材4側)に向かって延びている。係止突部11(インナ部材5の先端)は、フロントガラスG側への突出部分において、係止リップ18の根元部分と基部17の両方に当接している。この当接によって、この係止リップ18(内側モール3)が所定の取り付け位置に位置決めされる。このようにすると、ガーニッシュ本体2(インナ部材5の裏面)に位置決めのためのケガキ線を線引きする必要がなく、ガーニッシュ本体2に形成された係止突部11に、内側モール3に形成された係止リップ18を突き当てるだけで、この内側モール3を位置決めすることができるため、簡便な構成で、ピラーガーニッシュ1への内側モール3の取り付け精度を確保することができる。係止リップ18の先端は、アウタ部材4に形成された厚肉部6の裏面に対してほぼ垂直に当接している。
【0023】
アウタ部材4への係止リップ18の当接位置は、インナ部材5の係止突部11による係止リップ18の係止位置よりも前方に位置している。このようにすると、フロントガラスGとの当接に伴って、当接リップ19から基部17の先端に向けて反力が作用したときに、この反力がインナ部材5とアウタ部材4の両方に適度に分散される。このため、内側モール3の一部(特に、基部17と係止リップ18の分岐部分)にその反力が集中して、この内側モール3の耐久性が低下するのを防止することができる。
【0024】
当接リップ19は、基部17からフロントガラスG側に延びて、その先端がフロントガラスGに接触する。このとき、当接リップ19には、フロントガラスGからの反力(図2中の矢印を参照)が作用し、この当接リップ19に対する回転力が生じることがある。この内側モール3は、係止リップ18の根元がインナ部材5の内側端部によって支持され、係止リップ18の先端がアウタ部材4(厚肉部6)の裏面に安定的に支持されているとともに、この内側モール3を支持する係止突部11が、車幅方向内側に向かうにつれてフロントガラスG側に突出しているため、前記回転力に対する抗力が確保されている。このため、当接リップ19は、フロントガラスGにしっかりと押さえ付けられた状態となっている。
【0025】
上記のように、係止リップ18がアウタ部材4の裏面に、当接リップ19がフロントガラスGにそれぞれ当接して、アウタ部材4とフロントガラスGの間の隙間が完全に塞がれているため、その隙間に起因する空力騒音を抑制することができる。また、内側モール3によってピラーガーニッシュ1の内部構成部品(主にインナー部材5)が隠されるため、外観上の見栄えを向上することができる。また、アウタ部材4とフロントガラスGとの間で係止リップ18と当接リップ19が互いに突っ張った状態となっており、しかも、基部17と係止リップ18の分岐部分が係止突部11に跨っている。このため、例えば、ワイパーでフロントガラスG上の雪や雨が掻き取られ、その雪や雨からの荷重によって内側モール3が外向きに押されたとしても、その荷重が係止突部11側に適度に分散し、基部17にその荷重が集中的に作用して内側モール3がインナ部材5から剥離する不具合を防止することができる。また、アウタ部材4とフロントガラスGの間の隙間に砂や泥等の異物が入り込みにくいため、容易に掃除を行うことができる。
【0026】
なお、上記においては、係止リップ18の先端がアウタ部材4に当接した構成について説明したが、この係止リップ18がインナ部材5の係止突部11に係止され、アウタ部材4には当接していない構成とすることもできる。この場合、少なくともガーニッシュ本体2(インナ部材5)に対する内側モール3の位置決め効果が発揮されるとともに、係止リップ18の長さ、係止リップ18とインナ部材5との当接面の大きさ等に対応して、所定の空力騒音の抑制効果、見栄え向上効果、内側モール3の剥がれ防止効果、異物の入り込み防止効果が発揮される。
【0027】
上記の実施形態のように、アウタ部材4の前端に厚肉部6を形成し、この厚肉部6に係止リップ18が垂直に突き当たるようにすることで、係止リップ18に安定的に抗力を付与できる点で好ましいが、この厚肉部6が形成されていない構成とすることもできる。
【0028】
この発明に係るピラーガーニッシュ1の第二実施形態を図4を用いて説明する。第二実施形態に係るピラーガーニッシュ1は、第一実施形態に係るピラーガーニッシュ1と同様に、ガーニッシュ本体2と、内側モール3と、を主要な構成要素とする点で共通するが、ガーニッシュ本体2が、アウタ部材4のみで構成されている点で相違している。
【0029】
アウタ部材4の内側端部の裏面側には、内向きに起立する係止突部11が形成されている。内側モール3は、第一実施形態と同様に、基部17と、係止リップ18、と当接リップ19と、を有している。
【0030】
図4に示すように、基部17は、係止突部11よりも車幅方向外側で、ガーニッシュ本体2の内側端部の裏面側に、両面テープ等の固定手段20によって取り付けられる。係止リップ18は、基部17から車両の表面側(アウタ部材4)に向かって延びている。係止リップ18の先端がアウタ部材4の裏面に当接するとともに、係止突部11が、係止リップ18と基部17の両方に当接している。この当接によって、この係止リップ18(内側モール3)が所定の取り付け位置に位置決めされる。このようにすると、第一実施形態と同様に、簡便な構成で、ピラーガーニッシュ1への内側モール3の取り付け精度を確保することができる。
【0031】
上記の各実施形態は、単なる例示に過ぎず、簡便な構成で、フロントピラーガーニッシュへ1へのモール3の取り付け精度を確保する、というこの発明の課題を解決し得る限りにおいて、各構成要素の形状、配置、材質等に適宜変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 ピラーガーニッシュ
2 ガーニッシュ本体
3 モール(内側モール)
4 アウタ部材
5 インナ部材
6 厚肉部
7 貫通孔
8 クリップ
9 トリムクリップ
10 内側リップモール
11 係止突部
12 上端リップモール
13 下端リップモール
14 両面テープ
15 硬質ゴム
16 パッド
17 基部
18 係止リップ
19 当接リップ
20 固定手段
R ルーフ
G フロントガラス
P フロントピラー
F フロントフェンダー
図1
図2
図3
図4