(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】タイヤ及びタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60C 19/08 20060101AFI20240501BHJP
B60C 9/20 20060101ALI20240501BHJP
B29D 30/06 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B60C19/08
B60C9/20 L
B29D30/06
(21)【出願番号】P 2020081465
(22)【出願日】2020-05-01
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末吉 裕介
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-170303(JP,U)
【文献】特開2015-205528(JP,A)
【文献】特開2014-213747(JP,A)
【文献】特開2006-143208(JP,A)
【文献】特開2013-086724(JP,A)
【文献】特開2016-074807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/00-19/12
B29D 30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードと、
一方のビードと他方のビードとの間を架け渡すカーカスと、
径方向において、前記カーカスの外側に位置するベルトと、
径方向において、前記ベルトの外側に位置し、路面と接触するトレッドと、
軸方向において、前記ビードの外側に位置し、リムと接触する一対のクリンチと、
前記カーカスの軸方向外側において、前記ベルトと前記クリンチとの間に位置する一対のサイドウォールと、
少なくとも1本の導電糸と
を備え、
少なくとも一方の前記サイドウォールの内部に、前記導電糸が組み込まれ、
前記導電糸が、前記サイドウォールの前記ベルト側の第一端部と、前記ビード側の第二端部との間を架け渡し、
最大幅位置を通り、軸方向に延びる直線に沿って計測される、前記サイドウォールの厚さの中心が第一基準位置であり、
前記第一基準位置から前記導電糸の基準位置までの距離が0.5mm以下であり、
前記最大幅位置において、前記導電糸が前記カーカスに触れていない、タイヤ。
【請求項2】
赤道を通り軸方向に延びる直線から径方向内側に23.5mm離れた、外面上の位置を通る、前記カーカスの法線に沿って計測される、前記サイドウォールの厚さの中心が第二基準位置であり、
前記第二基準位置から前記導電糸の基準位置までの距離が0.5mm以下である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記導電糸全体が前記カーカスに触れていない、
請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記導電糸が、導電性の撚り線、又は、導電性のシングルワイヤである、請求項1から
3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
軸方向に離して配置される一対のクッションを備え、
前記クッションが前記ベルトの端部と前記カーカスとの間に位置し、
前記サイドウォールが、前記ベルト側の第一端部において、前記クッションと繋がる、請求項1から
4のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
一対のビードと、
一方のビードと他方のビードとの間を架け渡すカーカスと、
径方向において、前記カーカスの外側に位置するベルトと、
径方向において、前記ベルトの外側に位置し、路面と接触するトレッドと、
軸方向において、前記ビードの外側に位置し、リムと接触する一対のクリンチと、
前記カーカスの軸方向外側において、前記ベルトと前記クリンチとの間に位置する一対のサイドウォールと、
少なくとも1本の導電糸と
を備え、
少なくとも一方の前記サイドウォールの内部に、前記導電糸が組み込まれ、
前記導電糸が、前記サイドウォールの前記ベルト側の第一端部と、前記ビード側の第二端部との間を架け渡し、
赤道を通り軸方向に延びる直線から径方向内側に23.5mm離れた、外面上の位置を通る、前記カーカスの法線に沿って計測される、前記サイドウォールの厚さの中心が第二基準位置であり、
前記第二基準位置から前記導電糸の基準位置までの距離が0.5mm以下であり、
最大幅位置において、前記導電糸が前記カーカスに触れていない、タイヤ。
【請求項7】
一対のビードと、
一方のビードと他方のビードとの間を架け渡すカーカスと、
径方向において、前記カーカスの外側に位置するベルトと、
径方向において、前記ベルトの外側に位置し、路面と接触するトレッドと、
軸方向において、前記ビードの外側に位置し、リムと接触する一対のクリンチと、
前記カーカスの軸方向外側において、前記ベルトと前記クリンチとの間に位置する一対のサイドウォールと、
軸方向に離して配置される一対のクッションと、
少なくとも1本の導電糸と
を備え、
少なくとも一方の前記サイドウォールの内部に、前記導電糸が組み込まれ、
前記導電糸が、前記サイドウォールの前記ベルト側の第一端部と、前記ビード側の第二端部との間を架け渡し、
前記クッションが前記ベルトの端部と前記カーカスとの間に位置し、
前記サイドウォールが、前記ベルト側の第一端部において、前記クッションと繋がり、
最大幅位置において、前記導電糸が前記カーカスに触れていない、タイヤ。
【請求項8】
一対のビードと、一方のビードと他方のビードとの間を架け渡すカーカスと、径方向において、前記カーカスの外側に位置するベルトと、径方向において、前記ベルトの外側に位置し、路面と接触するトレッドと、軸方向において、前記ビードの外側に位置し、リムと接触する一対のクリンチと、前記カーカスの軸方向外側において、前記ベルトと前記クリンチとの間に位置する一対のサイドウォールと、少なくとも1本の導電糸とを備え、少なくとも一方の前記サイドウォールの内部に前記導電糸が組み込まれ、前記導電糸が、前記サイドウォールの前記ベルト側の第一端部と、前記ビード側の第二端部との間を架け渡し、最大幅位置において、前記導電糸が前記カーカスに触れていない、タイヤを製造するための方法であって、
前記タイヤのための生タイヤを準備する工程と、
前記生タイヤを加圧及び加熱する工程と
を含み、
少なくとも一方の前記サイドウォールが、厚さ方向に積層されたサイドウォール内側部と、サイドウォール外側部とからなり、
前記生タイヤを準備する工程において、
前記カーカスの外側に前記サイドウォール内側部を形成し、前記サイドウォール内側部に前記導電糸を付けた後、前記サイドウォール外側部が形成される、タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ及びタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境への配慮から、低い転がり抵抗を有するタイヤが求められている。転がり抵抗を低減させるために、例えば、低発熱性のゴムが使用される。低発熱性のゴムは補強剤としてシリカを多く含む。低発熱性ゴムを使用したタイヤでは、導電性が低下し、走行中に発生する静電気が蓄積することが懸念される。低発熱性ゴムを使用しても導電性を確保できるよう、様々な検討が行われている(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤの導電性を確保するために、導電性を有する糸(以下、導電糸とも称される。)の採用が検討されている。前述の特許文献1では、カーカスプライのトッピングゴムに沿って一方のコアと他方のコアとの間をトロイド状に延びる導電糸が採用されている。
【0005】
走行状態のタイヤでは、撓みと復元とが繰り返される。これによりタイヤの内部には応力が生じる。このため、導電経路として導電糸を採用した場合、この応力によって導電糸が切れる恐れがある。この場合、導電糸は導電経路として機能できない。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、導電経路を安定的に確保できるタイヤ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るタイヤは、一対のビードと、一方のビードと他方のビードとの間を架け渡すカーカスと、径方向において、前記カーカスの外側に位置するベルトと、径方向において、前記ベルトの外側に位置し、路面と接触するトレッドと、軸方向において、前記ビードの外側に位置し、リムと接触する一対のクリンチと、前記カーカスの軸方向外側において、前記ベルトと前記クリンチとの間に位置する一対のサイドウォールと、少なくとも1本の導電糸とを備える。少なくとも一方の前記サイドウォールの内部に、前記導電糸は組み込まれる。前記導電糸は、前記サイドウォールの前記ベルト側の第一端部と、前記ビード側の第二端部との間を架け渡す。最大幅位置において、前記導電糸は前記カーカスに触れていない。
【0008】
好ましくは、このタイヤでは、最大幅位置を通り、軸方向に延びる直線に沿って計測される、前記サイドウォールの厚さの中心が第一基準位置であり、前記第一基準位置から前記導電糸の基準位置までの距離は0.5mm以下である。
【0009】
好ましくは、このタイヤでは、赤道を通り軸方向に延びる直線から径方向内側に23.5mm離れた、外面上の位置を通る、前記カーカスの法線に沿って計測される、前記サイドウォールの厚さの中心が第二基準位置であり、前記第二基準位置から前記導電糸の基準位置までの距離は0.5mm以下である。
【0010】
好ましくは、このタイヤでは、前記導電糸全体が前記カーカスに触れていない。
【0011】
好ましくは、このタイヤでは、前記導電糸は、導電性の撚り線、又は、導電性のシングルワイヤである。
【0012】
好ましくは、このタイヤは、軸方向に離して配置される一対のクッションを備える。前記クッションは前記ベルトの端部と前記カーカスとの間に位置する。前記サイドウォールは、前記ベルト側の第一端部において、前記クッションと繋がる。
【0013】
本発明の一態様に係るタイヤの製造方法は、一対のビードと、一方のビードと他方のビードとの間を架け渡すカーカスと、径方向において、前記カーカスの外側に位置するベルトと、径方向において、前記ベルトの外側に位置し、路面と接触するトレッドと、軸方向において、前記ビードの外側に位置し、リムと接触する一対のクリンチと、前記カーカスの軸方向外側において、前記ベルトと前記クリンチとの間に位置する一対のサイドウォールと、少なくとも1本の導電糸とを備え、少なくとも一方の前記サイドウォールの内部に前記導電糸が組み込まれ、前記導電糸が、前記サイドウォールの前記ベルト側の第一端部と、前記ビード側の第二端部との間を架け渡し、最大幅位置において、前記導電糸が前記カーカスに触れていない、タイヤを製造するための方法である。この製造方法は、
(1)前記タイヤのための生タイヤを準備する工程、及び
(2)前記生タイヤを加圧及び加熱する工程
を含む。少なくとも一方の前記サイドウォールは、厚さ方向に積層されたサイドウォール内側部と、サイドウォール外側部とからなる。前記生タイヤを準備する工程において、前記カーカスの外側に前記サイドウォール内側部を形成し、前記サイドウォール内側部に前記導電糸を付けた後、前記サイドウォール外側部が形成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、導電経路を安定的に確保できるタイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のタイヤの一部が示された拡大断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のタイヤの一部が示された拡大断面図である。
【
図4】
図4は、
図1のタイヤの一部が示された拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0017】
本開示においては、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけない状態は、正規状態と称される。本開示では、特に言及がない限り、タイヤの各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
【0018】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0019】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤの正規内圧は、例えば、180kPaである。
【0020】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。乗用車用タイヤの正規荷重は、例えば、前記荷重の88%に相当する荷重である。
【0021】
本開示において、トレッド部とは、路面と接触する、タイヤの部位を意味する。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位を意味する。サイド部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位を意味する。タイヤは、部位として、トレッド部と、一対のビード部と、一対のサイド部とを備える。
【0022】
本開示において、導電経路とは、路面とリムとの間においてタイヤに構成された、電流が流れる経路を意味する。導電経路は、タイヤを構成する要素のうち、導電性を有する要素で構成される。導電性を有する要素とは、107Ω・cm未満の体積抵抗率を有する要素を意味する。
【0023】
本開示において、架橋ゴムからなる要素の体積抵抗率は、温度23℃及び相対湿度55%の恒温恒湿条件下で、印加電圧1000Vとし、それ以外についてはJIS K6271-1の規定に準拠して測定される。この測定では、シート状の架橋ゴム(以下、ゴムシートとも称される。)が用いられる。ゴムシート作製のために一般的に使用されるプレス成形機を用いて、ゴムシートは作製される。ゴムシート作製のための加熱温度は165℃、加熱時間は10分に設定される。
【0024】
本開示において、カーカスコードやベルトコードのようなコードからなる要素の体積抵抗率は、温度23℃及び相対湿度55%の恒温恒湿条件下で、JIS C2525の規定に準拠して測定される。
【0025】
本開示において、架橋ゴムとは、ゴム組成物を加圧及び加熱して得られるゴム組成物の成形体である。ゴム組成物は、バンバリーミキサー等の混錬機において、基材ゴム及び薬品を混合することにより得られる未架橋状態のゴムである。架橋ゴムは加硫ゴムとも称され、ゴム組成物は未加硫ゴムとも称される。
【0026】
基材ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)及びブチルゴム(IIR)が例示される。薬品としては、カーボンブラックやシリカのような補強剤、アロマチックオイル等のような可塑剤、酸化亜鉛等のような充填剤、ステアリン酸のような滑剤、老化防止剤、加工助剤、硫黄及び加硫促進剤が例示される。詳述しないが、基材ゴム及び薬品の選定、選定した薬品の含有量等は、ゴム組成物が適用される要素の仕様に応じて、適宜決められる。架橋ゴムの導電性は、カーボンブラックの種類及び含有量によってコントロールされる。
【0027】
本開示において、生タイヤとは、タイヤを得るために準備される、未加硫状態のタイヤを意味する。生タイヤは、未加硫タイヤ又はローカバーとも称される。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ2の一部を示す。
図1においてタイヤ2は、リムR(正規リム)に組まれており、正規状態にある。このタイヤ2は空気入りタイヤであり、乗用車に装着される。
【0029】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部を示す。この
図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この
図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。この
図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0030】
図1において、軸方向に延びる実線BBLはビードベースラインである。このビードベースラインは、リムRのリム径(JATMA等参照)を規定する線である。
【0031】
図1において、符号PWはタイヤ2の軸方向外端である。一方の外端PWから他方の外端PWまでの軸方向距離は、このタイヤ2の最大幅、すなわち断面幅(JATMA等参照)である。この外端PWは、このタイヤ2が最大幅を示す位置(以下、最大幅位置)である。最大幅位置PWは、タイヤ2の外面の輪郭に基づいて特定される。模様や文字等の装飾が外面にある場合、この最大幅位置PWは、この装飾がないと仮定して得られる仮想外面の輪郭に基づいて特定される。
【0032】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、バンド16、一対のクッション18、一対のチェーファー20、インナーライナー22及び導電糸24を備える。
【0033】
トレッド4は、径方向において、ベルト14及びバンド16の外側に位置する。トレッド4は、トレッド面26において路面と接触する。トレッド4は、路面と接触するトレッド面26を備える。このトレッド面26には、溝28が刻まれる。
【0034】
トレッド4は、耐摩耗性及びグリップが考慮された架橋ゴムからなる。トレッド4は、トレッド面26と内面30との間を架け渡す貫通部32を備える。貫通部32の頂面はトレッド面26の一部をなす。貫通部32の底面はトレッド4の内面30の一部をなす。この貫通部32は導電性を有する。このタイヤ2では、トレッド4の貫通部32以外の部分(以下、本体とも称される。)には、導電性は考慮されていない。
【0035】
図1において、符号PCで示される位置はトレッド面26と赤道面との交点である。この交点PCはタイヤ2の赤道である。
図1に示されるように、赤道面上に溝28が位置する場合には、溝28がないと仮定して得られる仮想トレッド面に基づいて、この赤道PCは特定される。
【0036】
図1において、実線CBLは赤道PCを通り軸方向に延びる直線である。符号PSは、直線CBLから径方向内側に23.5mm離れた、タイヤ2の外面上の位置である。この位置PSは、バットレス基準位置とも称される。
【0037】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4の径方向内側に位置する。サイドウォール6は、カーカス12の軸方向外側において、ベルト14とクリンチ8との間に位置する。サイドウォール6は、そのベルト14側の第一端部34において、クッション18と繋がる。サイドウォール6は、そのビード10側の第二端部36において、クリンチ8と繋がる。サイドウォール6は、耐カット性が考慮された架橋ゴムからなる。このサイドウォール6には、導電性は考慮されていない。
【0038】
それぞれのクリンチ8は、サイドウォール6の径方向内側に位置する。クリンチ8は、軸方向において、ビード10の外側に位置し、リムRと接触する。クリンチ8は、耐摩耗性が考慮された架橋ゴムからなる。クリンチ8は導電性を有する。
【0039】
図1において、符号PFで示される位置は、後述するカーカス12のプライ本体の法線に沿って計測されるクリンチ8の厚さが最大の厚さ(後述の厚さTF)を示す、タイヤ2の外面上の位置である。この位置PFは、クリンチ基準位置とも称される。
【0040】
それぞれのビード10は、クリンチ8の軸方向内側に位置する。前述したように、クリンチ8はサイドウォール6の径方向内側に位置する。ビード10は、サイドウォール6の径方向内側に位置する。
【0041】
ビード10は、コア38と、エイペックス40とを備える。コア38はリング状である。コア38はスチール製ワイヤを含む。エイペックス40は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。エイペックス40は導電性を有する。
【0042】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6及び一対のクリンチ8の内側に位置する。カーカス12は、一方のビード10と他方のビード10との間を架け渡す。カーカス12は、ラジアル構造を有する。カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ42を含む。
【0043】
このタイヤ2のカーカス12は、1枚のカーカスプライ42からなる。カーカスプライ42は、一方のコア38と他方のコア38との間を架け渡すプライ本体44と、このプライ本体44に連なりそれぞれのコア38の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部46とを有する。
【0044】
このタイヤ2では、折り返し部46の端は、径方向において、エイペックス40の端とコア38との間に位置する。このカーカス12は、ローターンアップ(LTU)構造を有する。
図1に示されるように、このタイヤ2では、折り返し部46の端は、エイペックス40と、後述するチェーファー20との間に挟まれる。
【0045】
図示されないが、カーカスプライ42は、並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードはトッピングゴムで覆われる。このタイヤ2では、有機繊維からなるコードがカーカスコードとして用いられる。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0046】
ベルト14は、径方向において、カーカス12の外側に位置し、バンド16の内側に位置する。このベルト14は、径方向に積層された少なくとも2つの層48で構成される。
【0047】
このタイヤ2のベルト14は、内側層48u及び外側層48sからなる、2つの層48で構成される。図示されないが、内側層48u及び外側層48sはそれぞれ、並列された多数のベルトコードを含む。これらベルトコードの材質はスチールである。ベルトコードはトッピングゴムで覆われる。トッピングゴムは導電性が考慮された架橋ゴムからなる。このベルト14は導電性を有する。
【0048】
バンド16は、径方向において、トレッド4の内側に位置し、ベルト14の外側に位置する。このバンド16は、ベルト14全体を覆うフルバンド16Fと、このフルバンド16Fの端部を覆うエッジバンド16Eとで構成される。このバンド16が、ベルト14を覆うフルバンド16Fで構成されてもよく、ベルト14の端部を覆う一対のエッジバンド16Eで構成されてもよい。
【0049】
図示されないが、フルバンド16F及びエッジバンド16Eはそれぞれバンドコードを含む。バンド16において、バンドコードは周方向に螺旋状に巻かれる。有機繊維からなるコードがバンドコードとして用いられる。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。バンドコードはトッピングゴムで覆われる。トッピングゴムは導電性が考慮された架橋ゴムからなる。このバンド16は導電性を有する。
【0050】
それぞれのクッション18は、軸方向に離して配置される。クッション18は、ベルト14の端部とカーカス12との間に位置する。前述のサイドウォール6は、このクッション18からカーカス12に沿ってクリンチ8に向かって延びる。クッション18は軟質な架橋ゴムからなり、導電性を有する。
【0051】
それぞれのチェーファー20は、ビード10の径方向内側に位置する。チェーファー20はリムRと接触する。このタイヤ2では、チェーファー20は布とこの布に含浸したゴムとからなる。
【0052】
インナーライナー22は、カーカス12の内側に位置する。インナーライナー22は、タイヤ2の内面を構成する。このインナーライナー22は、気体透過係数が低い架橋ゴムからなる。インナーライナー22は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0053】
導電糸24は、導電性を有するコードである。導電糸24は、サイドウォール6の内部に組み込まれる。導電糸24は、サイドウォール6の第一端部34と第二端部36との間を架け渡す。
【0054】
このタイヤ2では、導電糸24は径方向に延びる。この導電糸24が径方向に対して傾斜するように、この導電糸24がサイドウォール6の内部に組み込まれてもよい。
【0055】
このタイヤ2では、導電糸24とクッション18とは、導電糸24の第一端50をクッション18と接触させることにより繋げられる。この導電糸24とクッション18とが、この導電糸24の第一端50をクッション18の内部に組み込むことにより繋げられてもよい。導電糸24とクリンチ8とは、導電糸24の第二端52をクリンチ8の内部に組み込むことにより繋げられる。この導電糸24とクリンチ8とが、導電糸24の第二端52をクリンチ8に接触させることにより繋げられてもよい。
【0056】
前述したように、このタイヤ2は一対のサイドウォール6を備える。このタイヤ2では、左右のサイドウォール6のうち、少なくとも一方のサイドウォール6に、導電糸24は組み込まれる。この導電糸24が、左右のサイドウォール6のそれぞれに組み込まれてもよい。
【0057】
このタイヤ2では、サイドウォール6は軸方向においてカーカス12の外側に位置する。導電糸24はこのサイドウォール6に組み込まれるので、カーカスコードの破断強度と同程度の破断強度を有し、導電性を有するコードが、導電糸24として用いられる。
【0058】
次に、このタイヤ2の製造方法について説明する。このタイヤ2の製造では、まず、成形機(図示されず)において、未加硫状態のトレッド4、サイドウォール6等の要素を組み合わせて、タイヤ2のための生タイヤが準備される。加硫機(図示されず)のモールド内において、生タイヤを加圧及び加熱することで、タイヤ2が得られる。このタイヤ2の製造方法は、タイヤ2のための生タイヤを準備する工程、及び、この生タイヤを加圧及び加熱する工程を含む。詳述しないが、このタイヤ2の製造では、製造設備に制限はなく、一般的な製造設備が用いられる。温度、圧力、時間等の加硫条件においても特に制限はなく、一般的な加硫条件が採用される。
【0059】
このタイヤ2の製造では、生タイヤの準備工程において行われる作業のうち、サイドウォール6の内部に導電糸24を組み込むこと以外の作業は、従来の準備工程と同様にして行われる。サイドウォール6の内部に導電糸24を組み込む方法が以下に説明される。
【0060】
このタイヤ2の製造では、サイドウォール6は、厚さ方向に二つに分けて形成される。詳細には、内面側のサイドウォール内側部と、外面側のサイドウォール外側部とに分けて、このサイドウォール6は形成される。このタイヤ2の製造では、準備工程において、シート状のカーカスプライ42を筒状に加工し、カーカス12が形成される。次いで、このカーカス12の外側にサイドウォール内側部が形成される。このサイドウォール内側部に導電糸24を付けた後、サイドウォール外側部が形成される。これにより、サイドウォール6の内部に導電糸24が組み込まれる。
【0061】
この準備工程では、サイドウォール6のためのゴム組成物からなる帯状のストリップを巻いて、所定の厚さを有するサイドウォール内側部が形成される。このサイドウォール内側部に導電糸24を付けた後、さらにこのストリップを巻いて所定の厚さを有するサイドウォール外側部が形成される。この準備工程では、サイドウォール内側部及びサイドウォール外側部のそれぞれに対応するシート状の成形物を準備し、サイドウォール内側部に対応するシート状の成形物をカーカス12に貼り付けて、サイドウォール内側部を形成し、このサイドウォール内側部に導電糸24を付けた後、サイドウォール外側部に対応するシート状の成形物を貼り付けて、サイドウォール外側部が形成されてもよい。
【0062】
前述したように、このタイヤ2では、導電糸24とクリンチ8とは、導電糸24の第二端52をクリンチ8の内部に組み込むことにより繋げられる。準備工程においては、このクリンチ8も、前述のサイドウォール6と同様にして、カーカス12の外側にクリンチ内側部が形成される。このクリンチ内側部に導電糸24を付けた後、クリンチ外側部が形成される。
【0063】
このタイヤ2では、導電糸24により、クッション18とクリンチ8とが電気的に繋げられる。クッション18は、路面と接触する貫通部32とバンド16及びベルト14によって電気的に繋げられる。前述したように、クリンチ8はリムRと接触する。このタイヤ2では、路面とリムRとが、貫通部32、バンド16、ベルト14、クッション18、導電糸24及びクリンチ8によって電気的に繋げられる。このタイヤ2では、貫通部32、バンド16、ベルト14、クッション18、導電糸24及びクリンチ8は、このタイヤ2の導電経路を構成する。
【0064】
このタイヤ2は、路面とリムRとが電気的に繋げられるので、小さな電気抵抗を有する。このタイヤ2を用いた車両では、静電気の蓄積が防止される。
【0065】
このタイヤ2の最大幅位置PWの部分には、タイヤ2が撓んだ際に歪が集中する傾向にある。このタイヤ2に作用する力によって導電糸24が切れ、路面とリムRとの間に構成した導電経路が遮断されることが懸念される
【0066】
前述したように、このタイヤ2では、導電糸24はサイドウォール6の内部に組み込まれる。
図1に示されるように、このタイヤ2では、その最大幅位置PWにおいて、導電糸24はカーカス12に触れていない。この導電糸24は、最大幅位置PWにおいてこのタイヤ2に作用する力の影響を受けにくい。このタイヤ2では、導電糸24の切断が防止される。このタイヤ2は、導電経路を安定的に確保できる。
【0067】
このタイヤ2では、導電糸24の切断を効果的に防止でき、導電経路を安定的に確保できる観点から、導電糸24全体がカーカス12から離して配置される、言い換えれば、導電糸24全体がカーカス12に触れていないのが好ましい。
【0068】
このタイヤ2では、左右のサイドウォール6のうち、一方のサイドウォール6の内部に1本の導電糸24が組み込まれる。このタイヤ2では、一方のサイドウォール6の内部に複数本の導電糸24が組み込まれてもよい。この場合、導電糸24は、周方向に等間隔に配置される。前述したように、このタイヤ2では、導電糸24の切断が防止される。したがって、このタイヤ2は、少なくとも一方のサイドウォール6の内部に少なくとも1本の導電糸24が組み込まれていれば、導電経路を安定的に確保できる。
【0069】
このタイヤ2では、導電糸24の切断防止の観点から、導電糸24の外径は0.05mm以上が好ましく、0.10mm以上がより好ましい。導電糸24による、サイドウォール6の亀裂の発生を防ぐ観点から、この導電糸24の外径は、0.50mm以下が好ましく、0.40mm以下がより好ましい。
【0070】
図2には、最大幅位置PWにおける導電糸24の配置の状況が示される。この
図2において、実線WBLは最大幅位置PWを通り軸方向に延びる直線である。両矢印TWで示される長さは、最大幅位置PWにおけるサイドウォール6の厚さである。この厚さTWは、直線WBLに沿って計測される。
【0071】
符号MWで示される位置は、最大幅位置PWにおける、サイドウォール6の厚さTWの中心である。このタイヤ2では、この厚さTWの中心MWは第一基準位置とも称される。
図2において、一点鎖線SLはサイドウォール6の中心線であり、この中心線SLは第一基準位置MWを通る。第一基準位置MWは、中心線SLと直線WBLとの交点である。
【0072】
図2(a)に示されるように、最大幅位置PWにおいて導電糸24は、サイドウォール6の中心線SLすなわち第一基準位置MW上に位置する。このタイヤ2では、最大幅位置PWにおいて導電糸24がカーカス12に触れなければ、この導電糸24は、
図2(b)に示されるように、この第一基準位置MWよりも内側に位置してもよく、
図2(c)に示されるように、この第一基準位置MWよりも外側に位置してもよい。
【0073】
図2(b)及び(c)において、符号FWは、直線WBLが導電糸24と交差する線分において、第一基準位置MWから遠い位置にある、この線分の端を表す。この線分の端FWは直線WBLにおける、導電糸24の基準位置である。両矢印DWは、第一基準位置MWから導電糸24の基準位置FWまでの距離を表す。この距離DWは、直線WBLに沿って計測される。なお、外径が0.5mm以下の導電糸24において、直線WBLがこの導電糸24と交差する線分に第一基準位置MWが含まれる場合には、便宜上、距離DWは0mmとして表される。
【0074】
このタイヤ2では、導電糸24の切断が効果的に防止され、導電経路が安定的に確保される観点から、直線WBLに沿って計測される、第一基準位置MWから導電糸24の基準位置FWまでの距離DWは0.5mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましい。
【0075】
図3には、バットレス基準位置PSにおける導電糸24の配置の状況が示される。この
図3において、実線SBLはバットレス基準位置PSを通る、カーカス12の法線、詳細には、プライ本体44の外面の法線である。両矢印TSで示される長さは、バットレス基準位置PSにおけるサイドウォール6の厚さである。この厚さTSは、法線SBLに沿って計測される。
【0076】
符号MSで示される位置は、バットレス基準位置PSにおける、サイドウォール6の厚さTSの中心である。このタイヤ2では、この厚さTSの中心MSは第二基準位置とも称される。この
図3に示されるように、サイドウォール6の中心線SLは第二基準位置MSを通る。第二基準位置MSは、中心線SLと法線SBLとの交点である。
【0077】
図3(a)に示されるように、バットレス基準位置PSにおいて導電糸24は、サイドウォール6の中心線SLすなわち第二基準位置MS上に位置する。このタイヤ2では、バットレス基準位置PSにおいて導電糸24がカーカス12に触れなければ、この導電糸24は、
図3(b)に示されるように、この第二基準位置MSよりも内側に位置してもよく、
図3(c)に示されるように、この第二基準位置MSよりも外側に位置してもよい。
【0078】
図3(b)及び(c)において、符号FSは、法線SBLが導電糸24と交差する線分において、第二基準位置MSから遠い位置にある、この線分の端を表す。この線分の端FSは法線SBLにおける、導電糸24の基準位置である。両矢印DSは、第二基準位置MSから導電糸24の基準位置FSまでの距離を表す。この距離DSは、法線SBLに沿って計測される。なお、外径が0.5mm以下の導電糸24において、法線SBLがこの導電糸24と交差する線分に第二基準位置MSが含まれる場合には、便宜上、距離DSは0mmとして表される。
【0079】
このタイヤ2では、導電糸24の切断が効果的に防止され、導電経路が安定的に確保される観点から、法線SBLに沿って計測される、第二基準位置MSから導電糸24の基準位置FSまでの距離DSは0.5mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましい。
【0080】
図4には、クリンチ基準位置PFにおける導電糸24の配置の状況が示される。
図4において、実線FBLはクリンチ基準位置PFを通る、カーカス12の法線、詳細には、プライ本体44の外面の法線である。両矢印TFで示される長さは、クリンチ基準位置PFにおけるクリンチ8の厚さである。この厚さTFは、法線FBLに沿って計測される。
【0081】
符号MFで示される位置は、クリンチ基準位置PFにおける、クリンチ8の厚さTFの中心である。このタイヤ2では、この厚さTFの中心MFは第三基準位置とも称される。この
図4に示されるように、クリンチ8の中心線FLは第三基準位置MFを通る。第三基準位置MFは、中心線FLと法線FBLとの交点である。
【0082】
このタイヤ2では、タイヤ2の外面の一部をなす側面は、サイドウォール6とクリンチ8とで構成される。クリンチ8の中心線FLは、前述のサイドウォール6の中心線SLに連続する。
【0083】
図4(a)に示されるように、クリンチ基準位置PFにおいて導電糸24は、クリンチ8の中心線FLすなわち第三基準位置MF上に位置する。このタイヤ2では、クリンチ基準位置PFにおいて導電糸24がエイペックス40に触れなければ、この導電糸24は、
図4(b)に示されるように、この第三基準位置MFよりも内側に位置してもよく、
図4(c)に示されるように、この第三基準位置MFよりも外側に位置してもよい。
【0084】
図4(b)及び(c)において、符号FFは、法線FBLが導電糸24と交差する線分において、第三基準位置MFから遠い位置にある、この線分の端を表す。この線分の端FFは法線FBLにおける、導電糸24の基準位置である。両矢印DFは、第三基準位置MFから導電糸24の基準位置FFまでの距離を表す。この距離DFは、法線FBLに沿って計測される。なお、外径が0.5mm以下の導電糸24において、法線FBLがこの導電糸24と交差する線分に第三基準位置MFが含まれる場合には、便宜上、距離DFは0mmとして表される。
【0085】
このタイヤ2では、導電糸24の切断が効果的に防止され、導電経路が安定的に確保される観点から、法線FBLに沿って計測される、第三基準位置MFから導電糸24の基準位置FFまでの距離DFは0.5mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましい。
【0086】
前述したように、導電糸24は導電性を有するコードである。この導電糸24としては、導電性の撚り線及び導電性のシングルワイヤが挙げられる。
【0087】
導電性の撚り線は、導電性のフィラメントを含む複数のフィラメントを撚り合わせて構成される。この導電性の撚り線としては、複数のフィラメントが全て導電性フィラメントで構成された撚り線であってもよく、複数のフィラメントの一部が導電性フィラメントで構成されたハイブリッドタイプの撚り線であってもよい。導電性のフィラメントとしては、鋼、ステンレス鋼等の金属繊維からなるフィラメント及び炭素繊維からなるフィラメントが挙げられる。耐久性及び汎用性の観点から、ステンレス鋼からなるフィラメントが好ましい。ハイブリッドタイプの撚り線においては、導電糸24の導電性を損なわない範囲で、導電性フィラメント以外のフィラメントとして、有機繊維からなるフィラメントが用いられる。この有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が挙げられる。
【0088】
導電性のシングルワイヤとしては、鋼からなるシングルワイヤ、ステンレス鋼からなるシングルワイヤ等の金属製のシングルワイヤが挙げられる。炭素繊維からなるシングルワイヤが導電性のシングルワイヤとして用いられてもよい。耐久性及び汎用性の観点から、ステンレス鋼からなるシングルワイヤが好ましい。
【0089】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、導電経路を安定的に確保できるタイヤ2が得られる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0091】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた乗用車用のタイヤ(タイヤサイズ=205/65R15)を得た。
【0092】
この実施例1では、一方のサイドウォールの内部に1本の導電糸(外径=0.20mm)が組み込まれた。導電糸として、ハイブリッドタイプの撚り線(ポリエステル90%、ステンレス鋼10%の混紡糸)を用いた。このことが、表1の導電糸の欄に「H」で表されている。
【0093】
この実施例1では、最大幅位置PWでのサイドウォールの厚さTWは3.0mmであった。導電糸は、最大幅位置PWにおいて第一基準位置MW上にその中心が位置するように配置された。このことが、表1の位置の欄に「C」で表されている。導電糸の外径が0.5mm以下で、最大幅位置PWを通り軸方向に延びる直線WBLが導電糸と交差する線分に、第一基準位置MWが含まれるので、第一基準位置MWから導電糸の基準位置FWまでの距離DWは0mmで表されている。
【0094】
この実施例1では、導電糸は、バットレス基準位置PSにおいては、第二基準位置MS上にその中心が位置するように配置された。この導電糸は、クリンチ基準位置PFにおいては、第三基準位置MF上にその中心が位置するように配置された。
【0095】
[比較例1]
導電糸を設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。
【0096】
[比較例2]
導電糸をサイドウォールとカーカスとの間に設けた他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。
【0097】
[実施例2]
導電性のシングルワイヤ(材質=ステンレス鋼、外径=0.05mm)を導電糸として用いた他は実施例1と同様にして、実施例2のタイヤを得た。導電性のシングルワイヤを導電糸として用いたことが、表1の導電糸の欄に「M」で表されている。
【0098】
[実施例3-5]
導電糸の外径を下記の表1に示される通りとした他は実施例2と同様にして、実施例3-5のタイヤを得た。実施例5では、導電糸の外径が1.00mmであったので、距離DWは0.5mmで表されている。
【0099】
[実施例6-8]
最大幅位置PWにおいて、中心が第一基準位置MWよりも内面側に位置するように導電糸を配置させるとともに、距離DWを下記の表2に示される通りとした他は実施例2と同様にして、実施例6-8のタイヤを得た。最大幅位置PWにおいて、中心が第一基準位置MWよりも内面側に位置するように導電糸を配置させたことが、表2の位置の欄に「U」で表されている。
【0100】
[実施例9-11]
最大幅位置PWにおいて、中心が第一基準位置MWよりも外面側に位置するように導電糸を配置させるとともに、距離DWを下記の表2に示される通りとした他は実施例2と同様にして、実施例9-11のタイヤを得た。最大幅位置PWにおいて、中心が第一基準位置MWよりも外面側に位置するように導電糸を配置させたことが、表2の位置の欄に「S」で表されている。
【0101】
[電気抵抗]
タイヤをリム(サイズ=15×6.0J)に組み込み、タイヤに空気を充填して内圧を230kPaとした。リムを抵抗測定器の固定軸に固定して、タイヤを抵抗測定器に装着した。抵抗測定器においてタイヤを、絶縁板(電気抵抗値=1012Ω以上)上に設置された金属板に載せた。この状態で2時間放置した後、タイヤに0.5分間4.8kNの縦荷重を負荷した。荷重を一旦解放し、同様の荷重を0.5分間タイヤに負荷した。再度荷重を解放し、さらに2分間、同様の荷重をタイヤに負荷した。試験電圧(1000V)を印可し5分経過した後に、固定軸と金属板との間の電気抵抗を測定した。この結果が、比較例1を100とした指数で、下記の表1-2に示されている。数値が大きいほど、電気抵抗が小さく良好な導電性を有する。なお、測定は、その温度が25℃、その湿度が50%の環境下で実施された。測定には、予め表面の離型剤及び汚れが十分に除去され、十分に乾燥した状態にある新品のタイヤを用いた。
【0102】
[耐久性]
試作タイヤをリム(サイズ=15×6.0J)に組み、空気を充填しタイヤの内圧を230kPaに調整した。このタイヤをドラム式走行試験機に装着した。4.8kNの縦荷重をタイヤに負荷し、このタイヤをドラム上で走行させた。走行速度は100km/hに設定された。このタイヤを30000km走行させた後、前述の[電気測定]で示した要領にて、タイヤの電気抵抗を測定し、新品時の電気抵抗からの電気抵抗の上昇の有無を確認した。電気抵抗の上昇を示したタイヤについては、タイヤを解体し、導電糸の切断の有無を確認した。タイヤ10本について評価を行い、導電性が維持されたタイヤの本数の比率を得た。その結果が、下記の表1-2に指数で示されている。数値が大きいほど、導電性が維持され耐久性に優れる。
【0103】
【0104】
【0105】
表1-2に示されているように、実施例では、導電経路が安定的に確保されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上説明された、導電経路を安定的に確保するための技術は種々のタイヤにも適用されうる。
【符号の説明】
【0107】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・クリンチ
10・・・ビード
12・・・カーカス
14・・・ベルト
18・・・クッション
24・・・導電糸
34・・・サイドウォール6の第一端部
36・・・サイドウォール6の第二端部
38・・・コア
40・・・エイペックス
42・・・カーカスプライ
48、48u、48s・・・層
50・・・導電糸24の第一端
52・・・導電糸24の第二端